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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/272 20060101AFI20230615BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B60R21/272
B01J7/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019082163
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020179710
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】大中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】藤 才浩
(72)【発明者】
【氏名】高柳 一重
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-218990(JP,A)
【文献】特開2006-306218(JP,A)
【文献】特表2002-514145(JP,A)
【文献】特開平11-189122(JP,A)
【文献】特開2018-192965(JP,A)
【文献】特開2016-203968(JP,A)
【文献】特開2015-205644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0158934(US,A1)
【文献】米国特許第6116642(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0158455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガスが一部に封入されている筒状のハウジングと、前記加圧ガスを封入するために前記ハウジングの途中を仕切るように設けられた仕切部材と、前記ハウジングの他端部側の開口部を閉塞するように設けられ、前記仕切部材に向かって点火可能な点火器を保持しているホルダと、を備えたガス発生器であって、
前記仕切部材は、仕切った前記ハウジング内を連通させる連通孔と、前記連通孔を閉塞するように固定された固定部分を有しており、所定の圧力または熱量を受けることによって前記固定部分のうち一部が開裂可能な部位となっている破裂板とを有しており、
前記破裂板の開裂可能な部位および前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位のそれぞれは、前記破裂板から突出する突起部を有し、
前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位における前記突起部の前記破裂板からの高さを、前記破裂板の開裂可能な部位における前記突起部の前記破裂板からの高さよりも高く形成することによって、前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位の厚み、前記破裂板の開裂可能な部位よりも厚く形成ていることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記破裂板は、前記仕切部材に、レーザー溶接、摩擦圧接、または抵抗溶接によって固定されていることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記破裂板の開裂可能な部位と、前記破裂板の開裂可能な部位以外のその他の部位とがそれぞれ複数ある場合において、
前記破裂板の開裂可能な部位と、前記破裂板の開裂可能な部位以外のその他の部位とは、前記仕切部材の中心に対して略対称に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記破裂板は、前記仕切部材の加圧ガス室側に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ガスを利用するものであり、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧ガスを利用するガス発生器は、たとえば、運転席または助手席のエアバッグ装置、側面衝突用エアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーボルスター装置、インフレータブルシートベルト装置、および、歩行者保護のために車両外部に取り付けられる装置等、の自動車両の人員拘束装置に使用されており、たとえば、下記特許文献1に開示されているものが挙げられる。
【0003】
加圧ガスを利用するガス発生器においては、加圧ガス室となる筒状のハウジング内部にガスを封入するため、ハウジングの開口部は破裂板(ガス発生器作動時に、所定の衝撃で破裂または溶融、変形する部材)で閉塞されているが、車両の耐用年数(たとえば15年)の間、ガスを封入する必要があるため、破裂板の取り付けは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2009-51236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧ガスを利用するガス発生器においては、上述したとおり、ガス発生器作動時に、所定の衝撃で破裂板が破裂または溶融、変形するものであるが、この破裂板の破裂などした箇所から加圧ガスが流出するとともに破裂板の破片もエアバッグ内に流出し、エアバッグにダメージを及ぼす場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、加圧ガスを利用するガス発生器において、エアバッグにダメージを及ぼさないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、加圧ガスが一部に封入されている筒状のハウジングと、前記加圧ガスを封入するために前記ハウジングの途中を仕切るように設けられた仕切部材と、前記ハウジングの他端部側の開口部を閉塞するように設けられ、前記仕切部材に向かって点火可能な点火器を保持しているホルダと、を備えたガス発生器であって、前記仕切部材は、仕切った前記ハウジング内を連通させる連通孔と、前記連通孔を閉塞するように固定された固定部分を有しており、所定の圧力または熱量を受けることによって前記固定部分のうち一部が開裂可能な部位となっている破裂板とを有しており、前記破裂板の開裂可能な部位および前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位のそれぞれは、前記破裂板から突出する突起部を有し、前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位における前記突起部の前記破裂板からの高さを、前記破裂板の開裂可能な部位における前記突起部の前記破裂板からの高さよりも高く形成することによって、前記破裂板の開裂可能な部位以外のその他の部位の厚み、前記破裂板の開裂可能な部位よりも厚く形成ていることを特徴とする。
【0008】
上記(1)の構成によれば、一部が開裂可能な部位となって、その他の部位が固定された状態となる破裂板を有した仕切部材を備えているガス発生器を提供できる。したがって、本発明のガス発生器に係る破裂板は、破裂板が破裂して破片が飛散する状態にならないようにすることができる。この結果として、本発明によれば、加圧ガスを利用するガス発生器において、エアバッグにダメージを及ぼさないものとすることができる。
【0009】
(2) 上記(1)のガス発生器においては、前記破裂板は、前記仕切部材に、レーザー溶接、摩擦圧接、または抵抗溶接等の一般的な溶接によって固定されていることが好ましい。なお、抵抗溶接は、プロジェクション溶接またはスポット溶接であることが好ましい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、容易に仕切部材に破裂板を設けることができる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)のガス発生器においては、前記破裂板の開裂可能な部位と、前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位とがそれぞれ複数ある場合において、前記破裂板の開裂可能な部位と、前記破裂板の開裂可能な部位以外の部位とは、前記仕切部材の中心に対して略対称に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、作動した際、略対称に設けた破裂板の開裂可能な部位において、ガスの流出によって発生する力を相殺することができる。
【0013】
(4) 上記(1)~(3)のガス発生器において、前記破裂板は、前記仕切部材の加圧ガス室側に配置されていることが好ましい。
【0014】
破裂板は、通常時において加圧ガス室のガスから加圧されている状態となっている。したがって、上記(4)の構成によれば、たとえ剥がれることがあったとしても連通孔から送出されることを防止できる。また、仮に、破裂板を仕切部材の加圧ガス室側と反対側に配置する場合、加圧ガスの圧力に耐えた状態で剥がれ落ちないようにするため非常に強固な接合が求められるが、この場合、コストが比較的高くなる。しかしながら、上記(4)の構成によれば、所定以上の強度の接合(たとえば、次回の取替時まで加圧ガス室のガスが漏れないように保持される程度の強度の接合)でよいので、破裂板を仕切部材の加圧ガス室側と反対側に配置する場合と比べて、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一部を断面で表した本発明の実施の形態に係るガス発生器の内部構造を示す模式図である。
図2】(a)が図1のガス発生器における仕切り部材の平面図、(b)が(a)のA-A矢視断面図である。
図3図1のガス発生器の製造工程の一部を示す図である。
図4図1のガス発生器の製造工程の一部を示す図である。
図5】(a)が図1のガス発生器における仕切り部材の変形例1を示す平面図、(b)が(a)のB-B矢視断面図である。
図6】(a)が図1のガス発生器における仕切り部材の変形例2を示す平面図、(b)が(a)のC-C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図4を参照して、本発明の実施の形態に係るガス発生器の内部構造について説明する。
【0017】
(ガス発生器100の構成)
ガス発生器100は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング10と、ハウジング10の一方の開口端に取付けられているホルダ20と、ハウジング10の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10の他端部に取付けられている閉塞部材40と、を含んでいる。
【0018】
ハウジング10は、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材40は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面はかしめ固定されている。また、閉塞部材40には、略中心部に貫通孔41が設けられている。この貫通孔41は、閉塞部材40の外部側に設けられた筒状部材42の内部空間と連通するように設けられているとともに、作動前は破裂板43によって閉塞されている。破裂板43は、貫通孔41を閉塞するように溶接されており、所定の圧力が加わった場合、破裂または開裂するようになっている。
【0019】
筒状部材42は、ハウジング10よりも径が小さいものであり、ガス噴出口44を有している。ガス噴出口44は、ガス発生器100の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、筒状部材42の周方向及び軸方向に沿って複数個設けられている。
【0020】
閉塞部材40および筒状部材42は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、所定の厚みを有する円盤状の部材からなる。そして、ハウジング10の一方の開口端に閉塞部材40が内挿された状態で、閉塞部材40の周面に対応する部分のハウジング10の周壁を径方向内側に縮径させ(かしめ)ることにより、ハウジング10に対する閉塞部材40のかしめ固定が行なわれている。または、閉塞部材40とハウジング10をレーザー溶接や摩擦圧接、抵抗溶接等の一般的な溶接で溶接固定が行なわれている。
【0021】
ホルダ20は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、ハウジング10の他方の開口端にホルダ20の一部が内挿された状態で、ホルダ20の外周面に対応する部分のハウジング10の周壁を径方向内側に縮径させ(かしめ)ることにより、ハウジング10に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれている。または、閉塞部材40とハウジング10をレーザー溶接や摩擦圧接、抵抗溶接等の一般的な溶接で溶接固定が行なわれている。
【0022】
また、ホルダ20には、ガス発生剤30の点火手段としての点火器21が配置されている。なお、点火器21及び点火器21を固定するホルダ20は、後述する粒状のガス発生剤30を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段としての機能を有している。
【0023】
点火器21は、ホルダ20の中空開口部に内挿された状態で、樹脂成形部22によって固定されている。
【0024】
より具体的には、点火器21は、一対の端子ピン23を挿通・保持する基枠と、基枠上に取付けられたスクイブカップ21aとを備えており、スクイブカップ21a内に挿入された端子ピン23の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むように又はこの抵抗体に接するようにスクイブカップ21a内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、スクイブカップ21a内には、点火薬だけでなくさらに伝火薬を充填してもよいが、点火薬と同時に配置され得る伝火薬としては、ホウ素/硝酸カリウム等に代表される金属/酸化剤からなる組成物、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、又は、ホウ素/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。スクイブカップは、一般に金属製又はプラスチック製である。
【0025】
衝突を検知した際には、端子ピン23を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップ21aを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器21が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0026】
図1に示すように、ハウジング10の内部空間は、ガス発生剤30が収容されている作動ガス生成室12と、加圧ガスが封入されている加圧ガス室13と、が設けられている。作動ガス生成室12と加圧ガス室13とは、仕切部材11によって仕切られている。
【0027】
ガス発生剤30は、図3に示したように、点火器21によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる長筒状の一体成型物である。また、ガス発生剤30は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属水酸化物、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0028】
仕切部材11は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製のものであり、図1図2に示したように、リング状の基材11aと、破裂板11bとを備えたものである。基材11aは、一方の面側に連通孔11cを有した平面円状のものであり、他方の面側には破裂板11bがプロジェクション溶接とスポット溶接とによって溶接箇所11dにおいて溶接固定されている。なお、破裂板11bの基材11aへの接合は、プロジェクション溶接のみでも、スポット溶接のみでもよい。
【0029】
破裂板11bは、図2(a)、(b)に示したように、円形状の縁部において半周ずつ、突起部11d1および突起部11d2を有している。突起部11d1および突起部11d2の位置は、溶接箇所11dに対応した位置となっている。また、突起部11d1の厚み(高さ)は0.7mm~1.1mm程度、突起部11d2の厚み(高さ)は0.8mm~1.2mm程度であり、突起部11d2の厚みは突起部11d1の厚みよりも厚く形成されている。したがって、破裂板11bの突起部11d1の溶接部位は、突起部11d2の溶接部位に比べて脆弱な部位となるため、破裂板11bにガスによる圧力が加わった場合、破裂板11bの突起部11d2の溶接部位よりも開裂しやすい(剥がれやすい)。
【0030】
加圧ガス室13には、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが最大圧90MPa程度で充填されている。また、加圧ガス室13は、作動時に破裂板43が破裂した場合、貫通孔41およびガス噴出口44を介して外部と通じることができるようになっている。
【0031】
なお、ガス発生器100のホルダ20が配置された方の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。この雌型コネクタは、ガス発生器100とは別途設けられる衝突検知手段からの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、ガス発生器100の搬送時等において静電放電等によってガス発生器100が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン23への接触が解除されるものである。
【0032】
次に、以上において説明したガス発生器100の製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、ハウジング10の他端側の開口部に閉塞部材40を圧入した後に、レーザー溶接や摩擦圧接、抵抗溶接等の一般的な溶接を用いて取り付ける。(図3(a)、(b))。そして、ハウジング10の一端側の開口部側から挿入した基材11aを、ハウジング10の内壁の部位10aに取り付ける(図3(a)、(b))。なお、ハウジング10の内壁は、部位10aにおいてハウジング10の一端側に対して縮径している。したがって、部位10aにおいて基材11aを押し込むことにより、基材11aはハウジング10の内壁に隙間なく食い込んだ状態で固定される(図3(c))。ここで、一変形例として、閉塞部材40の前に基材11aを設ける工程を採用してもよい。
【0034】
次に、抵抗溶接機50を用いて、破裂板11bを基材11aに溶接する。具体的には、以下の通りである。まず、ハウジング10の一端側の開口部に、抵抗溶接機50を設置する(図4(a))。続いて、電極部51の先端に一時的に固定された破裂板11bを基材11aに押し付けつつ、抵抗溶接を行う(図4(b))。
【0035】
なお、破裂板11bの基材11a側の円周部にリング状の突起部(図示せず)を設けておく。なお、この突起部は、半円周部ずつ高い方の突起部と低い方の突起部とに分けて形成されている。溶接をする際、突起部に熱集中させることにより軟化、圧着が進むとともに、低い方の突起部は突起部11d1として形成され、高い方の突起部は突起部11d2(図2参照)として形成される。
【0036】
次に、ハウジング10の一端側の開口部から、ガス発生剤30を装填(図4(c))した後、点火器21が取り付けられているホルダ20をハウジング10の一端側の開口部にかしめ固定する。これらの一連の工程により、図1に示したガス発生器100が完成する。
【0037】
次に、以上において説明したガス発生器100の作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器21が作動する。点火器21が作動すると、点火薬の燃焼によって点火器21内の圧力が上昇し、これによって点火器21のスクイブカップ21a先端が破裂し、火炎が点火器21のスクイブカップ21a先端から外部(作動ガス生成室12)へと流出する。
【0038】
このようにして流れ込んだ火炎により、ガス発生剤30は着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。このガス発生剤30の燃焼により、作動ガス生成室12内の圧力が上昇し、これによって発生したガスが、仕切部材11に設けられた破裂板11bの突起部11d1側の溶接箇所11dを開裂させる。ここで、破裂板11bの突起部11d2側の溶接箇所11dは開裂せず、固定されたままとなる。
【0039】
破裂板11bの開裂した部位から連通孔11cを介して、発生したガスは加圧ガス室13へと流れ込む。このとき、破裂板11bによって、該ガスに含まれているスラグが除去される。加圧ガス室13へ流れ込んだガスは、加圧ガス室13内の加圧ガスをさらに加圧して、破裂板43を破裂させる。そして、作動ガス生成室12で発生したガスおよび加圧ガス室13内の加圧ガスは、貫通孔41を介してガス噴出口44からガス発生器100の外部へと噴出される。このようにしてガス噴出口44から噴出されたガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
【0040】
(ガス発生器100の主な特徴)
本実施の形態によれば、一部が開裂可能な部位となって、その他の部位が固定されたままとなる破裂板11bを有した仕切部材11を備えているガス発生器100を提供できる。したがって、ガス発生器100に係る破裂板11bは、破裂して破片が発生する状態にならないようにすることができる。この結果として、ガス発生器100によれば、作動時において、エアバッグにダメージを及ぼさないものとすることができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、容易に基材11aに破裂板11bを設けることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、加圧ガスだけでなくガス発生剤を利用したハイブリッド型のガス発生器100を提供できる。なお、ガス発生器100の作動時においてガス発生剤30を点火器21によって燃焼させた場合、スラグ(残渣)が発生するが、破裂板11bの一部が開裂するだけであるので、開裂した破裂板にスラグ(残渣)が衝突し、捕捉されることになる。そのため、本発明のガス発生器によれば、スラグ(残渣)を捕集することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
例えば、破裂板の開裂可能な部位と、破裂板の開裂可能な部位以外の部位とがそれぞれ複数ある場合において、破裂板の開裂可能な部位と、破裂板の開裂可能な部位以外のその他の部位とは、仕切部材の中心に対して略対称に設けられているものであってもよい。具体例としては、図5または図6に示したものが挙げられるが、以下において、それぞれ具体的に説明する。なお、図5および図6において、特に説明しない限り、上記実施の形態の仕切部材11と同様の部位の説明は省略する。
【0045】
図5に示した仕切部材111においては、中心に対して、対向する2つの突起部111d1と、対向する2つの突起部111d2とが形成されている点、および、突起部111d1と突起部111d2とが円周上に交互に並列している点で、上記実施の形態と異なっている。仕切部材111を使用したガス発生器が作動した際、破裂板において略対称に設けた開裂可能な部位(2つの突起部111d1の溶接部位)が開裂した場合において、ガスの流出によって発生する力(ガスの噴出によって発生する力)を相殺することができる。
【0046】
図6に示した仕切部材211においては、中心に対して、複数の対向する一対の突起部211d1と、複数の一対の突起部211d2が対向するように形成されている点、および、複数の突起部211d1と複数の突起部211d2とが円周上に交互に並列している点で、上記実施の形態と異なっている。仕切部材211を使用したガス発生器が作動した際、破裂板において略対称に設けた開裂可能な部位(複数の一対の突起部211d1の溶接部位)が開裂した場合において、ガスの流出によって発生する力(ガスの噴出によって発生する力)を相殺することができる。
【0047】
また、上記実施の形態においては、ガス発生剤を用いるものであったが、これに限られない。たとえば、点火器の作動によって発生する火炎の熱および圧力で破裂板の開裂可能な部位を開裂させるもの(いわゆるストアード方式)であってもよいし、点火器でガス発生剤を燃焼させて得たガス圧を利用してピストンなどを動作させ、この動作したピストンで物理的に破裂板の開裂可能な部位を開裂させるもの(いわゆるリバースフロー方式)であってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態における破裂板43の代わりに、破裂板11bと同様のものを適用してもよい。
【0049】
また、上記実施の形態における破裂板11bの周囲形状は円形状であったが、これに限られず、たとえば、楕円形状、三角形、四角形などの多角形状などであってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態における破裂板11bは、作動ガス生成室12側において基材11aに溶接したが、この代わりに、基材11aの加圧ガス室13側において溶接して設けてもよい。これにより、通常時において破裂板11bがたとえ剥がれたとしても連通孔11cから送出されることを防止できる。また、仮に、破裂板11bを基材11aの加圧ガス室側と反対側(作動ガス生成室12側)に配置する場合、加圧ガスの圧力に耐えた状態で剥がれ落ちないようにするため非常に強固な接合が求められるが、この場合、コストが比較的高くなる。しかしながら、破裂板11bを基材11aの加圧ガス室側に設ける構成にすれば、所定以上の強度の接合(たとえば、次回の取替時まで加圧ガス室13のガスが漏れないように保持される程度の強度の接合)でよいので、破裂板11bを基材11aの加圧ガス室13側と反対側(作動ガス生成室12側)に配置する場合と比べて、コストを抑制することができる。
【0051】
また、上記実施の形態における破裂板11bは、基材11aに溶接してハウジング10に設けるものであったが、この代わりに、基材11aを用いずに、直接ハウジング10の内壁に溶接して設けるものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 ハウジング
11、111、211 仕切部材
11a 基材
11b 破裂板
11c 連通孔
11d 溶接箇所
11d1、11d2、111d1、111d2、211d1、211d2 突起部
12 作動ガス生成室
13 加圧ガス室
20 ホルダ
21 点火器
21a スクイブカップ
22 樹脂成形部
23 端子ピン
30 ガス発生剤
40 閉塞部材
41 貫通孔
42 筒状部材
43 破裂板
44 ガス噴出口
50 プロジェクション溶接機
51 電極部
100 ガス発生器
図1
図2
図3
図4
図5
図6