(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】湿式電気集塵機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/16 20060101AFI20230615BHJP
B03C 3/49 20060101ALI20230615BHJP
B03C 3/68 20060101ALI20230615BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20230615BHJP
B03C 3/36 20060101ALI20230615BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B03C3/16 B
B03C3/49
B03C3/68
B03C3/40 A
B03C3/36 A
B03C3/28
(21)【出願番号】P 2019089785
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【氏名又は名称】小原 弘揮
(72)【発明者】
【氏名】管 錦泉
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001602(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001822(JP,U)
【文献】特開昭51-131972(JP,A)
【文献】米国特許第06193782(US,B1)
【文献】特公昭53-044262(JP,B1)
【文献】韓国登録特許第10-2222556(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0507239(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1322825(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された排ガスから粉塵を除去する湿式電気集塵機において、
円筒状の外筒集塵電極と、
前記外筒集塵電極の中央に設けられた中心集塵電極と、
前記外筒集塵電極及び前記中心集塵電極の間に設けられた放電電極と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられた蓋と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられ、前記外筒集塵電極及び前記中心集塵電極の表面に処理水を供給する処理水供給部と、
凸型形状を有するようにして、前記蓋上に突出形成された頭部と、
少なくとも一部が前記頭部に収容され、下端が前記放電電極に接続された棒状の電圧印加電極と、
前記電圧印加電極のうち、前記頭部内に収容された部分に設けられた板状のバッファプレートと、
前記頭部に設けられ、前記頭部内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記頭部の開口部を覆うようにして、前記蓋の下面側に設けられ、前記電圧印加電極を挿通するための電極孔が中央部分に穿設された整流カバーと
を備え
、
前記パージガスの流量をC1、前記電極孔の内径をd
1、前記電圧印加電極の外径をd
2とすると、前記パージガスの流速V1は、式(1)によって表され、
(数1)
V1=C1/(πd
1
2/4-πd
2
2/4) (1)
前記排ガスの流量をC2、前記外筒集塵電極の内径をD
1、前記中心集塵電極の外径をD
2とすると、前記排ガスの流速V2は、式(2)によって表され、
(数2)
V2=C2/(πD
1
2/4-πD
2
2/4) (2)
前記電圧印加電極に対する乾燥効果を得るため、式(3)が成立するように構成された
(数3)
V1>V2 (3)
ことを特徴とする湿式電気集塵機。
【請求項2】
外部から供給された排ガスから粉塵を除去する湿式電気集塵機において、
円筒状の外筒集塵電極と、
前記外筒集塵電極の中央に設けられた放電電極と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられた蓋と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられ、前記外筒集塵電極の表面に処理水を供給する処理水供給部と、
凸型形状を有するようにして、前記蓋上に突出形成された頭部と、
少なくとも一部が前記頭部に収容され、下端が前記放電電極に接続された棒状の電圧印加電極と、
前記電圧印加電極のうち、前記頭部内に収容された部分に設けられた板状のバッファプレートと、
前記頭部に設けられ、前記頭部内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記頭部の開口部を覆うようにして、前記蓋の下面側に設けられ、前記電圧印加電極を挿通するための電極孔が中央部分に穿設された整流カバーと
を備え
、
前記パージガスの流量をC3、前記電極孔の内径をd
3、前記電圧印加電極の外径をd
4とすると、前記パージガスの流速V3は、式(4)によって表され、
(数4)
V3=C3/(πd
3
2/4-πd
4
2/4) (4)
前記排ガスの流量をC4、前記外筒集塵電極の内径をD
3とすると、前記排ガスの流速V4は、式(5)によって表され、
(数5)
V4=C4/(πD
3
2/4) (5)
前記電圧印加電極に対する乾燥効果を得るため、式(6)が成立するように構成された
(数6)
V3>V4 (6)
ことを特徴とする湿式電気集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉塵を除去するための湿式電気集塵機(WESP:Wet Electrostatic Precipitator)として、種々の湿式電気集塵機が開発及び提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来と比較して一段と集塵効率を向上させることができる湿式電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による湿式電気集塵機は、
外部から供給された排ガスから粉塵を除去する湿式電気集塵機において、
円筒状の外筒集塵電極と、
前記外筒集塵電極の中央に設けられた中心集塵電極と、
前記外筒集塵電極及び前記中心集塵電極の間に設けられた放電電極と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられた蓋と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられ、前記外筒集塵電極及び前記中心集塵電極の表面に処理水を供給する処理水供給部と、
凸型形状を有するようにして、前記蓋上に突出形成された頭部と、
少なくとも一部が前記頭部に収容され、下端が前記放電電極に接続された棒状の電圧印加電極と、
前記電圧印加電極のうち、前記頭部内に収容された部分に設けられた板状のバッファプレートと、
前記頭部に設けられ、前記頭部内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記頭部の開口部を覆うようにして、前記蓋の下面側に設けられ、前記電圧印加電極を挿通するための電極孔が中央部分に穿設された整流カバーと
を備える。
【0006】
また、本発明の一態様による湿式電気集塵機は、
外部から供給された排ガスから粉塵を除去する湿式電気集塵機において、
円筒状の外筒集塵電極と、
前記外筒集塵電極の中央に設けられた放電電極と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられた蓋と、
前記外筒集塵電極の上部に設けられ、前記外筒集塵電極の表面に処理水を供給する処理水供給部と、
凸型形状を有するようにして、前記蓋上に突出形成された頭部と、
少なくとも一部が前記頭部に収容され、下端が前記放電電極に接続された棒状の電圧印加電極と、
前記電圧印加電極のうち、前記頭部内に収容された部分に設けられた板状のバッファプレートと、
前記頭部に設けられ、前記頭部内にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記頭部の開口部を覆うようにして、前記蓋の下面側に設けられ、前記電圧印加電極を挿通するための電極孔が中央部分に穿設された整流カバーと
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿式電気集塵機によれば、従来と比較して一段と集塵効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態による湿式電気集塵機の構成を示す縦断面図である。
【
図2】同湿式電気集塵機の上部付近の断面構造を示す縦断面図である。
【
図3】比較例の湿式電気集塵機の上部付近の断面構造を示す縦断面図である。
【
図4】他の実施の形態による湿式電気集塵機の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態による湿式電気集塵機10の構成を示し、
図2は、湿式電気集塵機10の上部付近の構成を示す。一般に、半導体製造装置から排出された排ガスは、図示しない除害装置において、まず例えば燃焼式やプラズマ式などの除害処理(無害化処理)が行われる。湿式電気集塵機10は、この除害処理(無害化処理)が行われ、除害装置から排出された排ガスGから、粉塵を除去することを目的として使用される。
【0011】
具体的には、湿式電気集塵機10は、直方体状のドレインタンク20上に、円筒状の外筒集塵電極50を立設することにより形成され、これらドレインタンク20及び外筒集塵電極50は、連通するようにして一体成形されている。
【0012】
外筒集塵電極50の蓋30Hの中央には、円柱状の中心集塵電極40が吊設されると共に、中心集塵電極40及び外筒集塵電極50の間には、円筒状の放電電極60が設けられている。
【0013】
放電電極60の内側面及び外側面は、ぎざぎざ状(のこぎり歯状)に形成され、これにより、放電電極60のうち、内側面側は中心集塵電極40との間でコロナ放電を行い得ると共に、外側面側は外筒集塵電極50との間でコロナ放電を行い得る。
【0014】
外筒集塵電極50の上部には、図示しない処理水注入口を有する処理水供給部が設けられ、中心集塵電極40の外側面及び外筒集塵電極50の内側面に、処理水Wを霧状やカーテン状に注入し得るようになされている。
【0015】
半導体製造装置及び除害装置から順次排出された排ガスGは、図示しないトランスファーチューブを通じて、ドレインタンク20に導入された後、外筒集塵電極50内部を上昇する。
【0016】
その際、排ガスG中の粉塵は、コロナ放電によってマイナスイオンに帯電し、中心集塵電極40又は外筒集塵電極50に引き寄せられた後、処理水Wによって流し落とされ、ドレインタンク20に落下する。
【0017】
ドレインタンク20に溜まった処理水Wは、図示しない排水口から外部に排水される。一方、粉塵が除去された排ガスG中は、排気口70から図示しない配管を介して外部に排気される。
【0018】
蓋30H上であって、かつ排気口70の周囲には、円筒状の頭部80が、外筒集塵電極50から突出するようにして凸型形状に形成され、これら頭部80及び外筒集塵電極50は、連通するようにして一体成形されている。
【0019】
頭部蓋80Hの中央には、棒状の電圧印加電極90が頭部蓋80Hを貫通するようにして吊設され、電圧印加電極90の下端は放電電極60に接続されると共に、電圧印加電極90の上端は頭部80から露出するようになされている。
【0020】
なお、電圧印加電極90には、-24kVの電圧が印加される一方、中心集塵電極40は、グランドに接続されている。
【0021】
電圧印加電極90のうち、頭部80に収容される部分には、別部品で構成される絶縁性のある材料で作られた円盤状のバッファプレート(じゃま板)100が長手方向に沿って所定間隔毎に設けられ、これにより、処理水Wが水滴の状態だけでなく、ミストとなった場合でも、頭部80内に侵入したり、上昇することを防止している。
【0022】
頭部80の上部には、パージガス孔を有するパージガス供給部110が設けられ、パージガス供給部110から頭部80内にパージガス(乾燥空気)PGを供給することにより、電圧印加電極90からの、予期しない異常放電の発生を防止している。
【0023】
本実施の形態の場合、蓋30Hの下面側には、頭部80の開口部130を覆うようにして、断面コ字状の整流カバー120が、下方に突出して凸型形状に設けられている。この整流カバー120の下面中央には、電圧印加電極90を挿通するための電極孔120Hが穿設されている。
【0024】
なお、整流カバー120は、例えば、絶縁性や耐熱性に優れたフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)などが使用される。
【0025】
ところで、
図2との対応部分に同一符号を付した
図3に示す比較例のように、整流カバー120を設けない場合には、
図3中の領域Rにおいて、前述のバッファプレート100が存在する為に、パージガスが頭部80の内壁面付近を流れてしまい、電圧印加用電極90に対して、上昇してくる水分を含んだ排ガスGを十分にパージすることができず、予期しない異常放電の発生を避け得ない。更に、パージが十分に出来ない為に、円板状のバッファプレート100と電圧印加電極90との間の僅かな隙間を通って、水分を含んだ排ガスGが上昇して来るため、バッファプレート100と電圧印加電極90根元での異常放電が発生し、湿式電気集塵機10全体にとって重大な問題を引き起こす恐れがある。
【0026】
これに対して、本実施の形態のように整流カバー120を設け、パージガスPGの流れを整えれば、電圧印加電極90のうち、蓋30Hの下面側部分も十分にパージ及び乾燥させることができる。これにより、予期しない異常放電の発生を防止することができ、電圧印加電極90の焼損を防ぐことができる。また、エネルギーを無駄に消費することを防止し、集塵効率を向上させることができる。
【0027】
因みに、パージガスPGの流量をC1、電極孔120Hの内径をd1、電圧印加電極90の外径をd2とすると、パージガスPGの流速V1は、式(1)によって表される。
(数1)
V1=C1/(πd1
2/4-πd2
2/4) (1)
【0028】
一方、排ガスGの流量をC2、外筒集塵電極50の内径をD1、中心集塵電極40の外径をD2とすると、排ガスGの流速V2は、式(2)によって表される。
(数2)
V2=C2/(πD1
2/4-πD2
2/4) (2)
【0029】
電圧印加電極90に対する乾燥効果を得るため、湿式電気集塵機10は、式(3)が成立するように構成されている。
(数3)
V1>V2 (3)
【0030】
なお、上述の実施の形態においては、本発明を湿式電気集塵機10の1つの集塵電極に適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図4に示した、湿式電気集塵機200でも良い。外部から供給された排ガスGから粉塵を除去する湿式電気集塵機200であって、円筒状の外筒集塵電極220と、外筒集塵電極220の中央に設けられた放電電極60と、外筒集塵電極220の周縁に設けられた蓋30Hと、外筒集塵電極220の上部に設けられ、外筒集塵電極220の表面に処理水を供給する処理水供給部と、凸型形状を有するようにして、蓋30H上に突出形成された頭部80と、少なくとも一部が頭部80に収容され、下端が放電電極60に接続された棒状の電圧印加電極90と、電圧印加電極90のうち、頭部80内に収容された部分に設けられた板状のバッファプレート100と、頭部80に設けられ、頭部80内にパージガスを供給するパージガス供給部110と、頭部80の開口部130を覆うようにして、蓋30Hの下面側に設けられ、電圧印加電極90を挿通するための電極孔120Hが中央部分に穿設された整流カバー120とを備える他の種々の湿式電気集塵機に本発明を広く適用し得る。
【0031】
図4に示した、中心集塵電極40を設けない構造の場合の関係式は、排ガスGの流量をC4、外筒集塵電極220の内径をD
3とすると、排ガスGの流速V4は、式(4)によって表される。
(数4)
V4=C4/(πD
3
2/4) (4)
【0032】
C3=C1、V3=V1であり、電圧印加電極90に対する乾燥効果を得るため、湿式電気集塵機200は、式(5)が成立するように構成されている。
(数5)
V3>V4 (5)
【0033】
上述の実施の形態においては、中心集塵電極40を設けない湿式電気集塵機200に本発明を適用した。
【0034】
また、上述の実施の形態においては、凸型形状を有するようにして、蓋30H上に頭部80を突出形成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば蓋と頭部が一体になるように形成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
10、200 湿式電気集塵機
20 ドレインタンク
30H 蓋
40 中心集塵電極
50、220 外筒集塵電極
60、210 放電電極
70 排気口
80 頭部
80H 頭部蓋
90 電圧印加電極
100 バッファプレート
110 パージガス供給部
120 整流カバー
120H 電極孔
130 開口部