(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】マーカー取付け器具、及びマーカー取付け器具の取付け方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/38 20060101AFI20230615BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20230615BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20230615BHJP
G09B 9/00 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
A61C13/38
A61C19/04 Z
A61C1/08 Z
G09B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2019107259
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】397059652
【氏名又は名称】株式会社モリタ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】辻本 範幸
(72)【発明者】
【氏名】関岡 利孝
(72)【発明者】
【氏名】高木 智久
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/143497(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/38
A61C 19/04
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療器具の三次元位置情報を検出するためのマーカーを、前記診療器具に取付けるマーカー取付け器具であって、
前記マーカーを支持するとともに、前記診療器具に対して着脱自在に固定される器具本体部と、
前記診療器具の所望位置に前記器具本体部を位置させる位置決め部とで構成され
、
施術者が把持する前記診療器具の部分を把持部とし、該把持部の一端から延びて施術箇所に近接する部分を前記診療器具の先端部として、
前記位置決め部が、
前記診療器具の前記先端部に装着される先端装着部と、
前記所望位置において、前記器具本体部の移動を規制する規制部とで一体形成された
マーカー取付け器具。
【請求項2】
前記位置決め部が、
前記器具本体部に対して着脱自在に構成された
請求項1に記載のマーカー取付け器具。
【請求項3】
前記器具本体部が、
前記診療器具に固定される固定部と、
該固定部に対して着脱可能に取付けられるとともに、前記マーカーを支持するマーカー支持部とで構成された
請求項1または請求項2に記載のマーカー取付け器具。
【請求項4】
診療器具の三次元位置情報を検出するためのマーカーを、前記診療器具に取付けるマーカー取付け器具の取付け方法であって、
施術者が把持する前記診療器具の部分を把持部とし、該把持部の一端から延びて施術箇所に近接する部分を前記診療器具の先端部として、
前記診療器具の前記先端部に位置決め部の先端装着部を装着する工程と、
前記マーカーを支持する器具本体部を、
前記位置決め部
の規制部によって
移動規制して前記診療器具の所望位置に位置させる工程と、
前記診療器具に対して前記器具本体部を固定する工程とを備えた
マーカー取付け器具の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、医療分野における診療実習を支援する複合現実を用いた装置において、診療器具の三次元位置情報を検出するためのマーカーを、診療器具に取付けるようなマーカー取付け器具、及びマーカー取付け器具の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、歯科医療などの医療分野において、施術シミュレーションや診療実習を、仮想現実、拡張現実、あるいは複合現実を用いて支援する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、歯科診療におけるインプラント治療のシミュレーションを支援する施術支援システムとして、仮想現実を用いた技術が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の施術支援システムは、患者の治療箇所のCT画像に基づいて生成された治療箇所の三次元モデルと、施術者が把持して扱うハンドピースの三次元モデルと、人工歯根の三次元モデルとをディスプレイ上に重ね合せて表示し、実際に施術者が扱うハンドピースの動きに応じて、ハンドピースの三次元モデルを動作させるとともに、人工歯根の三次元モデルを治療箇所の三次元モデルに埋め込むことで、施術のシミュレーションを支援している。
【0004】
また、特許文献2には、歯科診療における診療実習を支援する歯科診療実習装置として、複合現実を用いた技術が提案されている。
具体的には、特許文献2の歯科診療実習装置は、実習者が装着したヘッドマウントディスプレイのカメラをとおして撮像した映像に、例えば、実習者から目視できない不可視部分の三次元画像を、実際に実習者が扱うハンドピースの動きに応じて重ね合せて、ヘッドマウントディスプレイに表示することで、診療実習を支援している。
【0005】
ところで、仮想現実、拡張現実、あるいは複合現実を用いた施術者の施術を支援する装置では、特許文献1、及び特許文献2のように、ハンドピースに取付けたマーカーを、赤外線カメラなどで撮像することで、ハンドピースの三次元位置を示す三次元位置情報を取得している。
これにより、仮想現実、拡張現実、あるいは複合現実を用いた施術者の施術を支援する装置は、診療器具の三次元モデルや診療器具の動きに応じた各種情報のディスプレイへの表示を容易にしている。
【0006】
しかしながら、例えば、ハンドピースなどの診療器具に対するマーカーの位置が、望ましい相対位置関係から位置ズレしている場合、診療器具の三次元モデルや診療器具の動きに応じた各種情報が、実際の診療器具の動きとは異なるタイミングでディスプレイに表示されるおそれがある。このため、三次元位置情報を検出するためのマーカーは、診療器具に対する位置ズレを抑えて取付ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/088146号公報
【文献】特開2018-155815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、診療器具に対するマーカーの位置ズレを抑えられるマーカー取付け器具、及びマーカー取付け器具の取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、診療器具の三次元位置情報を検出するためのマーカーを、前記診療器具に取付けるマーカー取付け器具であって、前記マーカーを支持するとともに、前記診療器具に対して着脱自在に固定される器具本体部と、前記診療器具の所望位置に前記器具本体部を位置させる位置決め部とで構成され、施術者が把持する前記診療器具の部分を把持部とし、該把持部の一端から延びて施術箇所に近接する部分を前記診療器具の先端部として、前記位置決め部が、前記診療器具の前記先端部に装着される先端装着部と、前記所望位置において、前記器具本体部の移動を規制する規制部とで一体形成されたことを特徴とする。
【0010】
上記診療器具とは、施術者が把持して扱う診療器具であって、例えば、歯科診療におけるハンドピース、エアタービンハンドピース、レーザハンドピース、スケーラハンドピース、バキューム、口腔内カメラ、あるいは三次元口腔内スキャナなどのことをいう。
【0011】
この発明により、診療器具の所望位置に器具本体部を確実に固定できるため、診療器具に対するマーカーの位置ズレを抑えることができる。
さらに、器具本体部が診療器具に対して着脱自在に構成されているため、マーカー取付け器具は、実際の診療で施術者が把持して扱う診療器具へのマーカーの取付けを容易にすることができる。
【0012】
さらにこの発明は、施術者が把持する前記診療器具の部分を把持部とし、該把持部の一端から延びて施術箇所に近接する部分を前記診療器具の先端部として、前記位置決め部が、前記診療器具の前記先端部に装着される先端装着部と、前記所望位置において、前記器具本体部の移動を規制する規制部とで一体形成されたことを特徴とする。
【0013】
この発明により、マーカー取付け器具は、診療器具への組付け性を向上できるとともに、診療器具に対するマーカーの位置ズレをより抑えることができる。
具体的には、診療器具の先端部と所望位置との相対位置が既知であるため、マーカー取付け器具は、先端装着部を有する位置決め部によって、診療器具の先端部とマーカーとの位置ズレを抑えることができる。
【0014】
このため、例えば、複合現実を用いた診療実習において、マーカー取付け器具は、マーカーから離間した位置にある診療器具の先端部における三次元位置を、器具本体部に装着されたマーカーに基づいて精度良く検出可能にすることができる。
【0015】
さらに、マーカー取付け器具は、先端装着部を診療器具の先端部に装着することで、器具本体部の移動を規制する規制部を適切に配設することができる。このため、マーカー取付け器具は、診療器具の所望位置に器具本体部を容易に位置させることができる。
【0016】
従って、マーカー取付け器具は、診療器具の先端部に装着される先端装着部、及び器具本体部の移動を規制する規制部を有する位置決め部によって、診療器具への組付け性を向上できるとともに、診療器具に対するマーカーの位置ズレをより抑えることができる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記位置決め部が、前記器具本体部に対して着脱自在に構成されてもよい。
この発明により、マーカー取付け器具は、施術者が診療器具を把持して扱う際には、診療器具に固定された器具本体部から、位置決め部を取外すことができる。
【0018】
このため、マーカー取付け器具は、診療器具を患者に近接させた際、位置決め部が患者に接触するなどして、施術者の動きが阻害されることを防止できる。
さらに、位置決め部による診療器具の重量増加を抑制できるため、マーカー取付け器具は、例えば、複合現実を用いた診療実習において、施術者が診療器具を取り扱う感覚を、実際の診療において、施術者が診療器具を取り扱う感覚により近づけることができる。
【0019】
これにより、マーカー取付け器具は、診療器具への組付け性と、マーカーが取付けられた状態における診療器具の操作性とを両立して向上することができる。
加えて、例えば、複数の診療器具における把持部が同一形状であれば、マーカー取付け器具は、位置決め部を診療器具に応じて変更することで、器具本体部を複数の診療器具で共用することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記器具本体部が、前記診療器具に固定される固定部と、該固定部に対して着脱可能に取付けられるとともに、前記マーカーを支持するマーカー支持部とで構成されてもよい。
【0021】
この発明により、マーカー取付け器具は、器具本体部のマーカー支持部を取外した状態で、器具本体部の固定部を診療器具に取付けることができるため、固定部にマーカー支持部が一体形成された器具本体部に比べて、診療器具への組付け性を向上することができる。
【0022】
さらに、例えば、位置決め部が器具本体部に対して着脱自在の場合、マーカー取付け器具は、器具本体部の固定部に設けた取付け箇所に、マーカー支持部または位置決め部を択一的に取付け可能にすることで、診療器具に対するマーカーの位置ズレをより確実に抑えることができる。
【0023】
また、この発明は、診療器具の三次元位置情報を検出するためのマーカーを、前記診療器具に取付けるマーカー取付け器具の取付け方法であって、施術者が把持する前記診療器具の部分を把持部とし、該把持部の一端から延びて施術箇所に近接する部分を前記診療器具の先端部として、前記診療器具の前記先端部に位置決め部の先端装着部を装着する工程と、前記マーカーを支持する器具本体部を、前記位置決め部の規制部によって移動規制して前記診療器具の所望位置に位置させる工程と、前記診療器具に対して前記器具本体部を固定する工程とを備えたことを特徴とする。
この発明により、診療器具の所望位置に器具本体部を確実に固定できるため、診療器具に対するマーカーの位置ズレを抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、診療器具に対するマーカーの位置ズレを抑えられるマーカー取付け器具、及びマーカー取付け器具の取付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】歯科診療における実習システムの概略を示す概略図。
【
図2】取付け状態におけるHMD用マーカー取付け器具の外観を示す外観斜視図。
【
図3】HMD用マーカー取付け器具の外観を示す外観斜視図。
【
図4】取付け状態におけるマーカー取付け器具を説明する説明図。
【
図5】マーカー取付け器具の外観を示す外観斜視図。
【
図6】位置決め部が取付けられた状態のマーカー取付け器具を説明する説明図。
【
図7】マーカー取付け器具の取付け工程を側面視で説明する説明図。
【
図8】
参考例におけるマーカー取付け器具を説明する説明図。
【
図9】
参考例におけるマーカー取付け器具の外観を示す外観斜視図。
【
図10】別の実施形態におけるマーカー取付け器具の外観を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施形態のマーカー取付け器具は、一例として、複合現実を用いた歯科診療の実習システムにおいて、ハンドピースの三次元位置を検出するためのマーカーを、実習者が把持して扱うハンドピースに取付ける器具である。このようなハンドピース用マーカー取付け器具について、
図1から
図7を用いて説明する。
【0028】
なお、
図1は歯科診療における実習システム1の概略図を示し、
図2は取付け状態におけるHMD用マーカー取付け器具40の外観斜視図を示し、
図3はHMD用マーカー取付け器具40の外観斜視図を示し、
図4は取付け状態におけるマーカー取付け器具30を説明する説明図を示し、
図5はマーカー取付け器具30の外観斜視図を示し、
図6は位置決め部34が取付けられた状態のマーカー取付け器具30を説明する説明図を示している。
【0029】
また、
図4及び
図6中において、
図4(a)及び
図6(a)はマーカー取付け器具30の側面図を示し、
図4(b)及び
図6(b)はマーカー取付け器具30の平面図を示している。
また、図中の矢印Xは診療器具17の長手方向(以下、「長手方向X」とする)を示し、長手方向Xにおける診療器具17の先端部174側を前方、その逆方向を後方とする。さらに、図中の上側を上方とし、図中の下側を下方とする。
【0030】
まず、複合現実を用いた歯科診療の実習システム1について、
図1を用いて、簡単に説明する。歯科診療の実習システム1は、
図1に示すように、歯科診療実習装置10と、模擬患者体20とで構成されている。
歯科診療実習装置10は、
図1に示すように、チェアユニット11と、施術者である実習者2が装着するヘッドマウントディスプレイ12と、後述するマーカーを撮像する複数のカメラ13と、これらの動作を制御する制御ユニット(図示省略)とで構成されている。
【0031】
チェアユニット11は、
図1に示すように、背もたれの傾動、及び座面の昇降が可能な診療椅子14と、うがい鉢や給水装置、及び吸引装置が装備されたベースンユニット15と、患者の口腔内を照らすオペレーティングライト16と、複数の診療器具17と、実習者2による各種操作を受付けるフットコントローラーなどの操作受付部18とを備えている。
【0032】
診療器具17は、実際の歯科診療において用いられるハンドピースやバキュームなど器具である。このような診療器具17には、実習者2の動きに応じた三次元位置を検出するための複数のマーカー31が、マーカー取付け器具30(
図4参照)を介して取付けられている。なお、マーカー取付け器具30については、後ほど詳述する。
【0033】
また、ヘッドマウントディスプレイ12は、
図1及び
図2に示すように、実習者2の頭部に装着されるディスプレイ装置であって、有線または無線で制御ユニットに接続されている。このヘッドマウントディスプレイ12は、各種情報を表示するディスプレイ部(図示省略)と、前方空間を撮像するステレオカメラ12aなどを備えている。
【0034】
さらに、ヘッドマウントディスプレイ12は、ステレオカメラ12aで撮像した動画像を制御ユニットに出力する機能と、制御ユニットから取得した各種情報を表示する機能とを有している。
そして、このヘッドマウントディスプレイ12には、実習者2の動きに応じた三次元位置を検出するための複数のマーカー41が、HMD用マーカー取付け器具40を介して取付けられている。なお、HMD用マーカー取付け器具40については、後ほど詳述する。
【0035】
カメラ13は、
図1に示すように、チェアユニット11よりも上方の位置に配設され、上方から実習者2及び模擬患者体20を撮像する機能と、撮像した動画像を制御ユニットに出力する機能とを有している。
制御ユニットは、CPUやメモリなどのハードウェアと、システムプログラムなどのソフトウェアとで構成され、各種情報を記憶する機能、実習者2による操作に対する各種処理機能、及び上述した各部の動作を制御する機能などを有している。
【0036】
具体的には、制御ユニットは、診療器具17に関する各種情報、患者に関する各種情報、施術方法に関する各種情報、CT画像に基づいて生成された三次元モデル情報などを記憶する機能と、操作受付部18からの信号に基づいて、チェアユニット11、オペレーティングライト16、及び診療器具17の動作を制御する機能とを有している。
【0037】
さらに、制御ユニットは、ヘッドマウントディスプレイ12(実習者2の頭部)の三次元位置を示す三次元位置情報と、実習者2が把持して扱う診療器具17の三次元位置を示す三次元位置情報と、後述する模擬患者体20の歯牙模型の三次元位置を示す三次元位置情報とを、カメラ13から取得した動画像に基づいて取得する機能とを有している。
【0038】
加えて、制御ユニットは、ヘッドマウントディスプレイ12から取得した動画像に、施術方法に関する情報や三次元モデル情報などの各種情報を重ね合せた合成動画像を生成する機能と、生成した合成動画像をヘッドマウントディスプレイ12に出力する機能とを有している。
【0039】
例えば、制御ユニットは、ヘッドマウントディスプレイ12のステレオカメラ12aで撮像した動画像に、実習者2から目視できない不可視部分の三次元モデル情報を重ね合せた合成動画像を、ヘッドマウントディスプレイ12に出力する。この際、制御ユニットは、ヘッドマウントディスプレイ12の位置、実際に実習者2が扱う診療器具17の位置、及び後述する模擬患者体20の歯牙模型の位置に応じた三次元モデル情報を、ステレオカメラ12aで撮像した動画像に重ね合せて出力する。
【0040】
一方、模擬患者体20は、詳細な図示を省略するが、チェアユニット11の診療椅子14に配設された頭部模型で構成されている。この頭部模型である模擬患者体20には、口腔内に配設された顎模型に、歯牙模型が歯列弓に沿って着脱可能に固定されている。さらに、模擬患者体20には、歯牙模型の三次元位置を検出するためのマーカーが取付けられている。
【0041】
次に、このような歯科診療の実習システム1において、ヘッドマウントディスプレイ12にマーカー41を装着するためのHMD用マーカー取付け器具40、及び診療器具17にマーカー31を装着するためのマーカー取付け器具30について、説明する。
【0042】
HMD用マーカー取付け器具40は、
図2及び
図3に示すように、実習者2の動きに応じたヘッドマウントディスプレイ12の三次元位置を検出するための複数のマーカー41と、ヘッドマウントディスプレイ12に装着される器具本体42と、マーカー41を支持する一対のマーカー支持部材43とで構成されている。
【0043】
器具本体42は、
図2及び
図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ12の上面に載置されるとともに、平面視略円弧状に延びる円弧部421と、円弧部421の両端からヘッドマウントディスプレイ12の側面に沿って延設されるとともに、ヘッドマウントディスプレイ12の下面に係止される係止脚部422とで一体形成されている。
【0044】
さらに、器具本体42の円弧部421における両端の上面には、
図3に示すように、マーカー支持部材43が嵌合する平面視略L字状の嵌合突部421aが突設されている。
一方、マーカー支持部材43は、
図2及び
図3に示すように、器具本体42の嵌合突部421aに嵌合する嵌合孔(図示省略)が底面に凹設された略円柱状の基部431と、基部431から延びる4つの支持腕部432とで一体形成されている。
【0045】
この4つの支持腕部432は、略円柱状の棒材を屈曲させた形状に形成され、その先端にマーカー41が螺合するネジ山が形成されている。なお、4つの支持腕部432は、例えば、実習者2の頭部の向きに関わらず、常に、少なくとも3つのマーカー41がカメラ13に撮像されるように、基部431からそれぞれ異なる方向へ向けて延設されている。
【0046】
より詳しくは、4つの支持腕部432は、
図2及び
図3に示すように、基部431から上方へ向けて延びる第1支持腕部432aと、他方のマーカー支持部材43へ向けて延びる第2支持腕部432bと、第2支持腕部432bとは略逆方向へ向けて延びる第3支持腕部432cと、前方へ向けて延びる第4支持腕部432dとで構成されている。
【0047】
また、診療器具17に取付けられるマーカー取付け器具30は、
図4に示すように、診療器具17の一端側に装着固定されている。
ここで、本実施形態における診療器具17について簡単に説明する。なお、本実施形態では、診療器具17の一例として、先端に切削工具が装着されたハンドピースを用いて説明する。
【0048】
診療器具17は、
図4に示すように、制御ユニットに接続されたコード171aを有する後端部171と、後端部171から所定方向に延びる略円柱状で、実習者2が把持する部分である把持部172と、把持部172から延びる首部173と、首部173の先端に設けられるとともに、患者の患部(本実施形態では模擬患者体20の歯牙模型)に近接する部分である先端部174とで構成されている。
【0049】
なお、本実施例では、把持部172の延設方向である所定方向を、診療器具17の長手方向Xとして、長手方向Xの先端部174側を前方とし、その逆方向である後端部171側を後方側として説明する。
【0050】
診療器具17の後端部171は、把持部172に対して着脱自在に設けられている。
また、診療器具17の首部173は、
図4(a)に示すように、長手方向Xに対して側面視略交差する方向へ向けて、把持部172の前端から延設されている。
【0051】
さらに、首部173は、把持部172から先端部174へ向かうほど、その外径が漸次小径になるように形成されている。
また、診療器具17の先端部174は、
図4(a)に示すように、首部173の延設方向に対して側面視略直交する方向に延びる略柱状体であって、その下面に切削工具174aが装着されている。
【0052】
このような診療器具17に取付けられるマーカー取付け器具30は、
図4及び
図5に示すように、実習者2の動きに応じた診療器具17の三次元位置を検出するための複数のマーカー31と、診療器具17の把持部172に対して着脱自在に取付けられた固定部32と、固定部32に取付けられるとともに、4つのマーカー31を支持する一対のマーカー支持部33と、診療器具17の所望位置に固定部32を位置させる位置決め部34とで構成されている。
【0053】
このマーカー取付け器具30の固定部32、一対のマーカー支持部33、及び位置決め部34は、それぞれ別体の部材として構成されている。すなわち、マーカー取付け器具30は、固定部32が固定部材として構成され、一対のマーカー支持部33が一対のマーカー支持部材として構成され、位置決め部34が位置決め部材として構成されている。
なお、マーカー取付け器具30のうち、位置決め部34は、実際に実習者2が診療器具17を把持して扱う際には、診療器具17、及び固定部32から取外されるものとする。
【0054】
より詳しくは、固定部32は、後述する位置決め部34によって、診療器具17の把持部172における所望位置に着脱自在に固定されている。この固定部32は、
図4及び
図5に示すように、診療器具17の長手方向Xを軸方向とする略円筒状の円筒部321と、円筒部321の外周面から径方向外側へ突出するとともに、マーカー支持部33が嵌合する2つの被嵌合部322とで一体形成されている。
【0055】
円筒部321は、診療器具17の把持部172における直径よりも僅かに小径で、把持部172に対して嵌合固定可能な内径を有する略円筒状に形成されている。さらに、円筒部321には、
図4から
図6に示すように、平面視において、前端縁を後方へ向けて平面視略矩形に切り欠くとともに、位置決め部34の後端(後述する第2規制部344)が嵌合する切欠き部分321aが形成されている。
【0056】
被嵌合部322は、
図4及び
図5に示すように、切欠き部分321aを挟んで、円筒部321の周方向に離間した位置において、円筒部321の径方向外側へ向けて突設されている。この被嵌合部322の端面には、
図5に示すように、マーカー支持部33の先端が嵌合する略台形状の嵌合孔322aが凹設されている。
【0057】
また、一対のマーカー支持部33は、例えば、診療器具17の位置、及び向きに関わらず、常に、少なくとも3つのマーカー31がカメラ13に撮像されるように、4つのマーカー31を支持している。
具体的には、一対のマーカー支持部33は、
図4及び
図5に示すように、それぞれ2つのマーカー31が装着されている。
【0058】
このマーカー支持部33は、固定部32の嵌合孔322aに径方向外側から嵌合する嵌合突部331と、嵌合突部331から長手方向Xに延設された略角柱状の支持本体部332と、支持本体部332の後端から延びるとともに、先端にマーカー31が装着される2つの支持腕部333とで一体形成されている。
【0059】
一対のマーカー支持部33のうち、一方のマーカー支持部33における2つの支持腕部333は、
図4(a)に示すように、側面視において、支持本体部332の後端から前方上方へ向けて延びる略円柱状の第1支持腕部333aと、支持本体部332の後端から後方上方へ向けて延びる略円柱状の第2支持腕部333bとで構成されている。
【0060】
この第1支持腕部333a、及び第2支持腕部333bは、
図4(b)に示すように、平面視において、支持本体部332の後端から、固定部32の径方向外側へ向けて延設されている。
なお、第1支持腕部333a、及び第2支持腕部333bには、
図4及び
図5に示すように、その先端にマーカー31が螺合するネジ山が形成されている。
【0061】
一方、一対のマーカー支持部33のうち、他方のマーカー支持部33における2つの支持腕部333は、
図4(a)に示すように、支持本体部332の後端から前方上方へ向けて延びる略円柱状の第3支持腕部333cと、支持本体部332の後端から後方上方へ向けて延びる略円柱状の第4支持腕部333dとで構成されている。
【0062】
この第3支持腕部333c、及び第4支持腕部333dは、
図4(b)に示すように、平面視において、第1支持腕部333a、及び第2支持腕部333bとは逆向きの径方向外側へ向けて、支持本体部332の後端から延設されている。
なお、第3支持腕部333c、及び第4支持腕部333dには、
図4及び
図5に示すように、その先端にマーカー31が螺合するネジ山が形成されている。
【0063】
また、位置決め部34は、
図5及び
図6に示すように、診療器具17の先端部174に覆い被さるように装着される先端装着部341と、診療器具17の首部173を保持する保持部342と、固定部32の移動を規制する第1規制部343、及び第2規制部344と、先端装着部341から延設されるとともに、保持部342、第1規制部343、及び第2規制部344を前方からこの順番で連結する延設部345とで一体形成されている。
【0064】
先端装着部341は、
図5及び
図6に示すように、上面を有する略円筒形状における周面の後部を切欠いた形状に形成されている。
保持部342は、
図5及び
図6に示すように、位置決め部34が診療器具17に取付けられた状態において、診療器具17の首部173における長手方向Xの略中央近傍を保持するように形成されている。
【0065】
この保持部342は、診療器具17の首部173に対して着脱自在な形状に形成されている。より詳しくは、保持部342は、診療器具17の首部173に嵌合可能な内径を有するとともに、下方が開口した正面視略C字状に形成されている。
【0066】
第1規制部343は、
図5及び
図6に示すように、診療器具17の所望位置に位置した固定部32が、長手方向Xの前方へ向けて移動することを規制している。
具体的には、第1規制部343は、所望位置に位置する固定部32の前端面に略同じ長手方向Xの位置に、後端面が位置するように形成されている。この第1規制部343は、診療器具17の把持部172に嵌合可能内径を有するとともに、下方が開口した正面視略半円状に形成されている。
【0067】
第2規制部344は、
図5及び
図6に示すように、固定部32の切欠き部分321aとの協働によって、長手方向Xを回転中心とする固定部32の回動を規制している。
具体的には、第2規制部344は、
図5及び
図6に示すように、固定部32の切欠き部分321aに嵌合する大きさで、延設部345に連続するように第1規制部343の上部から後方へ突設されている。
【0068】
延設部345は、
図5及び
図6に示すように、側面視において、診療器具17の上端縁に沿って延びるとともに、保持部342の上部、及び第1規制部343の上部を連結する略柱状体に形成されている。
【0069】
具体的には、延設部345は、
図5及び
図6(a)に示すように、側面視において、診療器具17における首部173の上端縁に沿って、先端装着部341から後方へ向けて延設された前方延設部分345aと、診療器具17における把持部172の上端縁に沿って、前方延設部分345aから後方へ向けて延設された後方延設部分345bとで構成されている。
【0070】
この延設部345は、上述したように、位置決め部34、及び第1規制部343を前方からのこの順番で連結するとともに、第1規制部343よりもさらに後方へ、後方延設部分345bを延設した部分で、上述した第2規制部344を構成している。
【0071】
次に、上述した構成のマーカー取付け器具30を、実際の診療に用いる器具である診療器具17に取付ける取付け方法について、
図7を用いて説明する。
なお、
図7はマーカー取付け器具30の取付け工程を側面視で説明する説明図を示している。
【0072】
まず、実際の診療に用いる診療器具17に対して、
図7(a)に示すように、マーカー取付け器具30の位置決め部34を取付ける。この際、マーカー取付け器具30の先端装着部341を、上方から覆い被せるように診療器具17の先端部174に取付けるとともに、マーカー取付け器具30の保持部342を、診療器具17の首部173に嵌合させる。
【0073】
その後、後端部171を取外した診療器具17の把持部172に対して、
図7(b)に示すように、後方からマーカー取付け器具30の固定部32を挿通させる。この際、固定部32の切欠き部分321aが、位置決め部34の第2規制部344に嵌合するように、周方向の位置を合わせて挿通させる。
【0074】
そして、固定部32の前端面が、
図7(c)に示すように、位置決め部34における第1規制部343の後端面に当接する位置まで挿通させて、診療器具17の把持部172にマーカー取付け器具30の固定部32を嵌合固定する。
【0075】
さらに、マーカー取付け器具30の固定部32が、診療器具17の所望位置に位置した状態において、
図4に示すように、マーカー31が螺着された一対のマーカー支持部33を、固定部32の被嵌合部322に嵌合する。
【0076】
マーカー31、固定部32、及び一対のマーカー支持部33が、診療器具17に装着された状態において、位置決め部34を、診療器具17、及び固定部32から取外して、診療器具17を使用可能な状態にする。
【0077】
このようにして、マーカー31、固定部32、及びマーカー支持部33が装着された診療器具17を、実習者2は、例えば、複合現実を用いた歯科診療実習において、把持して取り扱いながら歯科診療実習を行なう。
【0078】
以上のように、診療器具17の三次元位置情報を検出するためのマーカー31を、診療器具17に取付けるマーカー取付け器具30は、マーカー31を支持するとともに、診療器具17に対して着脱自在に固定される器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)と、診療器具17の所望位置に器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を位置させる位置決め部34とで構成されたことにより、診療器具17の所望位置に器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を確実に固定できるため、診療器具17に対するマーカー31の位置ズレを抑えることができる。
【0079】
さらに、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)が診療器具17に対して着脱自在に構成されているため、マーカー取付け器具30は、実際の診療で実習者2が把持して扱う診療器具17へのマーカー31の取付けを容易にすることができる。
【0080】
また、位置決め部34が、診療器具17の先端部174に装着される先端装着部341と、所望位置において、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)の移動を規制する規制部(第1規制部343、第2規制部344)とで一体形成されたことにより、マーカー取付け器具30は、診療器具17への組付け性を向上できるとともに、診療器具17に対するマーカー31の位置ズレをより抑えることができる。
【0081】
具体的には、診療器具17の先端部174と所望位置との相対位置が既知であるため、マーカー取付け器具30は、先端装着部341を有する位置決め部34によって、診療器具17の先端部174とマーカー31との位置ズレを抑えることができる。
【0082】
このため、例えば、複合現実を用いた診療実習において、マーカー取付け器具30は、マーカー31から離間した位置にある診療器具17の先端部174における三次元位置を、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)に装着されたマーカー31に基づいて精度良く検出可能にすることができる。
【0083】
さらに、マーカー取付け器具30は、先端装着部341を診療器具17の先端部174に装着することで、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)の移動を規制する規制部(第1規制部343、第2規制部344)を適切に配設することができる。このため、マーカー取付け器具30は、診療器具17の所望位置に器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を容易に位置させることができる。
【0084】
従って、マーカー取付け器具30は、診療器具17の先端部174に装着される先端装着部341、及び器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)の移動を規制する規制部(第1規制部343、第2規制部344)を有する位置決め部34によって、診療器具17への組付け性を向上できるとともに、診療器具17に対するマーカー31の位置ズレをより抑えることができる。
【0085】
また、位置決め部34が、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)に対して着脱自在に構成されたことにより、マーカー取付け器具30は、実習者2が診療器具17を把持して扱う際には、診療器具17に固定された器具本体部から、位置決め部34を取外すことができる。
【0086】
このため、マーカー取付け器具30は、診療器具17を患者に近接させた際、位置決め部34が患者に接触するなどして、実習者2の動きが阻害されることを防止できる。
さらに、位置決め部34による診療器具17の重量増加を抑制できるため、マーカー取付け器具30は、例えば、複合現実を用いた診療実習において、実習者2が診療器具17を取り扱う感覚を、実際の診療において、実習者2が診療器具17を取り扱う感覚により近づけることができる。
【0087】
これにより、マーカー取付け器具30は、診療器具17への組付け性と、マーカー31が取付けられた状態における診療器具17の操作性とを両立して向上することができる。
加えて、例えば、複数の診療器具17における把持部172が同一形状であれば、マーカー取付け器具30は、位置決め部34を診療器具17に応じて変更することで、器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を複数の診療器具17で共用することができる。
【0088】
また、器具本体部が、診療器具17に固定される固定部32と、固定部32に対して着脱可能に取付けられるとともに、マーカー31を支持するマーカー支持部33とで構成されたことにより、マーカー取付け器具30は、器具本体部のマーカー支持部33を取外した状態で、器具本体部の固定部32を診療器具17に取付けることができるため、固定部32にマーカー支持部33が一体形成された器具本体部に比べて、診療器具17への組付け性を向上することができる。
【0089】
また、診療器具17の三次元位置情報を検出するためのマーカー31を、診療器具17に取付けるマーカー取付け器具30の取付け方法は、マーカー31を支持する器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を、位置決め部34によって診療器具17の所望位置に位置させる工程と、診療器具17に対して器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を固定する工程とを備えたことにより、診療器具17の所望位置に器具本体部(固定部32、マーカー支持部33)を確実に固定できるため、診療器具17に対するマーカー31の位置ズレを抑えることができる。
【0090】
<参考例>
上述した実施例1のマーカー取付け器具30に対して、診療器具17に対する位置決め部の構成が異なるマーカー取付け器具50について、
図8及び
図9を用いて説明する。
なお、上述した実施例1と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
また、
図8は
参考例におけるマーカー取付け器具50を説明する説明図を示し、
図9は
参考例におけるマーカー取付け器具50の外観斜視図を示している。
【0091】
参考例のマーカー取付け器具50は、
図8に示すように、診療器具17における把持部172の後部に設けた開口孔172aに対して係止することで、診療器具17の所望位置に位置決めされている。
【0092】
なお、診療器具17の開口孔172aは、例えば、マーカー取付け器具50を係止させるための開口孔、あるいは排気口として開口された開口孔であって、把持部172の径方向で対向する位置に形成されているものとする。
【0093】
より詳しくは、マーカー取付け器具50は、
図8(a)及び
図9に示すように、実習者2の動きに応じた診療器具17の三次元位置を検出するための複数のマーカー51と、診療器具17の把持部172に対して着脱自在に取付けられた固定部52と、固定部52に取付けられるとともに、4つのマーカー(図示省略)を支持する一対のマーカー支持部53とで構成されている。
【0094】
固定部52は、
図8及び
図9に示すように、診療器具17の把持部172における所望位置に着脱自在に固定されている。この固定部52は、
図8及び
図9に示すように、診療器具17の長手方向Xを軸方向とする略円筒状の円筒部521と、円筒部521の外周面から突出するとともに、マーカー支持部53が嵌合する2つの被嵌合部522とで一体形成されている。
【0095】
円筒部521は、診療器具17の把持部172における直径よりも僅かに大径の内径を有する略円筒状に形成されている。
さらに、円筒部521は、
図9に示すように、径方向に弾性変形可能な一対の弾性片部分521aが、円筒部521の径方向で対向する位置に形成されている。
【0096】
弾性片部分521aは、
図9に示すように、周方向に所定間隔を隔てて位置で、円筒部521の周面を、前端から後方へスリット状に切り欠いて形成されている。この弾性片部分521aには、
図9に示すように、固定部52が所望位置に位置する状態において、診療器具17の開口孔172aに係止される一対の係止爪521bが、径方向内側へ向けて突設されている。
【0097】
このため、係止爪521bを有する弾性片部分521aは、診療器具17の開口孔172aに係止爪521bが係止された状態において、固定部32の長手方向Xへの移動と、長手方向Xを回転軸とした周方向への回動とを規制している。つまり、係止爪521bを有する弾性片部分521aは、診療器具17の把持部172に対して固定部52を着脱自在にするとともに、診療器具17の所望位置に固定部52を位置させる位置決め部として機能している。
【0098】
なお、参考例における固定部52の被嵌合部522、及びマーカー支持部53は、上述した実施例1における固定部32の被嵌合部322、及びマーカー支持部33と略同じ構成のため、その詳細な説明を省略する。
【0099】
以上のような構成により、マーカー取付け器具50は、診療器具17の所望位置に器具本体部(固定部52、マーカー支持部53)を確実に固定できるため、診療器具17に対するマーカー51の位置ズレを抑えることができる。
【0100】
また、固定部52が、診療器具17に設けた開口孔172aに係止される係止爪521bを備え、位置決め部が、固定部52の係止爪521bで構成されたことにより、マーカー取付け器具50は、部品点数の増加を抑えて、診療器具17の所望位置に固定部52を精度よく固定することができる。
【0101】
さらに、固定部52の係止爪521bが、診療器具17の開口孔172aに係止されるため、マーカー取付け器具50は、例えば、診療器具17に対して巻着され固定部に比べて、診療器具17の長手方向X、及び長手方向に略交差する周方向への固定部52の位置ズレをより確実に防止することができる。
このため、マーカー取付け器具50は、診療器具17への組付け性を損なうことなく、診療器具17に対するマーカー51の位置ズレをより確実に抑えることができる。
【0102】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の器具本体部は、実施形態の固定部32,52、及びマーカー支持部33,53に対応し、
以下同様に、
施術者は、実習者2に対応し、
規制部は、第1規制部343、及び第2規制部344に対応し、
被係止部分は、開口孔172aに対応し、
係止部分は、係止爪521bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0103】
例えば、上述した実施形態において、複合現実を用いた歯科診療の実習システム1におけるマーカー取付け器具30としたが、これに限定せず、仮想現実、または拡張現実を用いた診療装置におけるマーカー取付け器具であってもよい。
また、歯科診療に用いられる診療器具17を用いて説明したが、施術者が把持して扱う診療器具であれば、歯科診療以外の診療に用いられる診療器具であってもよい。
【0104】
また、歯科診療における診療器具17として、切削工具174aが先端に装着されたハンドピースを用いて説明したが、これに限定せず、実習者2が把持して扱う診療器具17であれば、エアタービンハンドピース、レーザー光を照射するレーザハンドピース、スケーラハンドピース、バキューム、口腔内カメラ、あるいは三次元口腔内スキャナなどであってもよい。
【0105】
また、マーカー取付け器具30,50のマーカー支持部33,53を、固定部32,52とは別体で構成したが、これに限定せず、マーカー支持部33,53が固定部32,52に一体形成されたマーカー取付け器具であってもよい。
また、実施例1において、マーカー取付け器具30の固定部32が、嵌合によって診療器具17の把持部172に固定される構成としたが、これに限定せず、診療器具17の所望位置に固定可能であれば、例えば、締付けによって診療器具17に固定されるなど、適宜の構成で固定される固定部32であってもよい。
【0106】
また、実施例1において、マーカー取付け器具30の固定部32と位置決め部34とを別体で構成したが、これに限定せず、固定部32と位置決め部34とが一体形成されたマーカー取付け器具であってもよい。
【0107】
この場合、固定部32を所望位置に位置させる長さで、先端装着部341から延設されるとともに、固定部32に接続された延設部を、第1規制部343、及び第2規制部344にかえて備えたマーカー取付け器具とする。これにより、マーカー取付け器具は、固定部32の長手方向Xへの移動と、長手方向Xを回転軸とした固定部32の回動とを規制する規制部として、延設部を機能させることができる。
【0108】
また、実施例1のマーカー取付け器具30において、固定部32の前方への移動と、固定部32の周方向への回動とを、別々の規制部で規制したが、これに限定せず、1つの規制部で、固定部32の前方への移動と、固定部32の周方向への回動とを規制してもよい。
【0109】
例えば、第1規制部343の後端面に、固定部32の切欠き部分321aにおける後端面を当接させることで、所望位置に位置した固定部32の前方への移動と、周方向への回動とを規制してもよい。
【0110】
また、実施例1のマーカー取付け器具30において、固定部32の被嵌合部322にマーカー支持部33が嵌合し、固定部32の切欠き部分321aに位置決め部34が嵌合する構成としたが、これに限定せず、例えば、別の実施形態におけるマーカー取付け器具60の外観斜視図を示す
図10のように、固定部61において、位置決め部63が嵌合する部分に、マーカー支持部62が嵌合する構成であってもよい。
【0111】
具体的には、マーカー取付け器具60の固定部61は、
図10に示すように、円筒部611と、円筒部611の外周面から径方向外側へ向けて突設した1つの被嵌合部612とで一体形成されている。この被嵌合部612には、
図10に示すように、マーカー支持部62の前端に設けた平面視略T字状の嵌合突部621、または位置決め部63の後端に設けた平面視略矩形の第2規制部631が、択一的に嵌合可能な平面視略T字状の嵌合孔612aが凹設されている。
【0112】
このように、マーカー取付け器具60は、固定部61に設けた嵌合孔612aに、マーカー支持部62または位置決め部63を択一的に取付け可能にしている。これにより、マーカー取付け器具60は、診療器具17に対するマーカーの位置ズレをより確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0113】
2…実習者
17…診療器具
30,50,60…マーカー取付け器具
31…マーカー
32,52,61…固定部
33,53,62…マーカー支持部
34,63…位置決め部
172…把持部
172a…開口孔
174…先端部
341…先端装着部
343…第1規制部
344…第2規制部
521b…係止爪