(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】熱交換器および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
(21)【出願番号】P 2019122687
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是澤 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】畠田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 亜由美
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-087484(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073719(WO,A1)
【文献】特開2016-205718(JP,A)
【文献】特開2013-113572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02,9/22
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に間隔を置いて並列配置された複数の熱交換チューブと、
筒状に形成され、中心軸が前記第1方向に延びるとともに、前記第1方向に直交する第2方向に相互に離間して並んで配置され、前記複数の熱交換チューブの端部が内部に開口する少なくとも2つのヘッダと、
前記ヘッダの少なくとも1つの内部を前記第1方向に仕切り、前記ヘッダの形成材料より熱伝導率の小さい断熱層を有する仕切部材と、を有
し、
前記仕切部材は、前記第1方向の両側に備わる一対の端板と、前記一対の端板を連結する連結部と、前記ヘッダの周壁を貫通する孔に挿入される突起と、を備え、
前記断熱層は、前記一対の端板の間に形成され、前記ヘッダの外周面の開口から外部に露出し、
前記断熱層は、前記第1方向における厚みが、前記端板の前記第1方向における厚みよりも大きく形成される、
熱交換器。
【請求項2】
前記端板は、前記ヘッダの形成材料と同じ材料で形成される、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記断熱層は、固体材料で形成さ
れる、
請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記ヘッダの少なくとも1つは、前記熱交換器の外部から冷媒を流入する流入口および前記熱交換器の外部に冷媒を流出する流出口を有し、
前記仕切部材は、前記流入口および前記流出口が開口する前記ヘッダの内部を仕切る、
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器を有する、
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱交換器および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器が利用されている。ヘッダ型の熱交換器は、複数の熱交換チューブと、ヘッダと、を持つ。複数の熱交換チューブは、上下方向に間隔を置いて並列配置される。ヘッダの内部には、複数の熱交換チューブの端部が開口する。熱交換量を増加させるため、ヘッダ内で冷媒を折り返して流通させる熱交換器がある。この熱交換器において、ヘッダの内部空間は、仕切部材により複数の小室に仕切られる。隣り合う小室の間で仕切部材を介して熱交換が行われると、熱交換器の外気との熱交換量が低下する。熱交換量の低下を抑制することができる熱交換器が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、熱交換量の低下を抑制することができる熱交換器および冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の熱交換器は、複数の熱交換チューブと、ヘッダと、仕切部材と、を持つ。複数の熱交換チューブは、第1方向に間隔を置いて並列配置される。ヘッダは、筒状に形成され、中心軸が第1方向に延びるとともに、第1方向に直交する第2方向に相互に離間して並んで配置される。少なくとも2つのヘッダの内部には、複数の熱交換チューブの端部が開口する。仕切部材は、ヘッダの少なくとも1つの内部を第1方向に仕切る。仕切部材は、ヘッダの形成材料より熱伝導率の小さい断熱層を有する。仕切部材は、一対の端板と、連結部と、突起と、を備える。一対の端板は、第1方向の両側に備わる。連結部は、一対の端板を連結する。突起は、ヘッダの周壁を貫通する孔に挿入される。断熱層は、一対の端板の間に形成され、ヘッダの外周面の開口から外部に露出する。断熱層は、第1方向における厚みが、端板の第1方向における厚みよりも大きく形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態における冷凍サイクル装置の概略構成図。
【
図5】
図6のF5-F5線における仕切部材の周辺の正面断面図。
【
図6】
図5のF6-F6線における仕切部材の周辺の平面断面図。
【
図7】第1の実施形態の変形例における仕切部材の周辺の正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の熱交換器および冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
本願において、X方向、Y方向およびZ方向は、以下のように定義される。Z方向(第1方向)は、第1ヘッダおよび第2ヘッダの中心軸方向(延在方向)である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。X方向(第2方向)は、熱交換チューブの中心軸方向(延在方向)である。例えば、X方向は水平方向であり、+X方向は第1ヘッダから第2ヘッダに向かう方向である。Y方向は、X方向およびZ方向に垂直な方向である。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図1に示されるように、冷凍サイクル装置1は、圧縮機2と、四方弁3と、室外熱交換器(熱交換器)4と、膨張装置5と、室内熱交換器(熱交換器)6と、を有する。冷凍サイクル装置1の構成要素は、配管7によって順次接続されている。
図1では、冷房運転時の冷媒の流通方向が実線矢印で示され、暖房運転時の冷媒の流通方向が破線矢印で示される。
【0009】
圧縮機2は、圧縮機本体2Aと、アキュムレータ2Bと、を有する。圧縮機本体2Aは、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。アキュムレータ2Bは、気液二相冷媒を分離して、気体冷媒を圧縮機本体2Aに供給する。
【0010】
四方弁3は、冷媒の流通方向を逆転させ、冷房運転と暖房運転とを切り替える。冷房運転時に冷媒は、圧縮機2、四方弁3、室外熱交換器4、膨張装置5及び室内熱交換器6の順に流れる。このとき冷凍サイクル装置1は、室外熱交換器4を凝縮器として機能させ、室内熱交換器6を蒸発器として機能させ、室内を冷房する。暖房運転時に冷媒は、圧縮機2、四方弁3、室内熱交換器6、膨張装置5、室外熱交換器4の順に流れる。このとき冷凍サイクル装置1は、室内熱交換器6を凝縮器として機能させ、室外熱交換器4を蒸発器として機能させ、室内を暖房する。
【0011】
凝縮器は、圧縮機2から吐出される高温・高圧の気体冷媒を、外気へ放熱させて凝縮させることにより、高圧の液体冷媒にする。
膨張装置5は、凝縮器から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の気液二相冷媒にする。
蒸発器は、膨張装置5から送り込まれる低温・低圧の気液二相冷媒を、外気から吸熱させて気化させることにより、低圧の気体冷媒にする。
【0012】
このように、冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら循環する。冷媒は、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。冷凍サイクル装置1は、冷媒の放熱または吸熱を利用して、暖房や冷房、除霜などを行う。
【0013】
図2は、第1の実施形態の熱交換器の正面図である。実施形態の熱交換器4は、冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4および室内熱交換器6のうち一方または両方に使用される。以下、実施形態の熱交換器4が冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4として使用される場合を例にして説明する。
【0014】
図2に示されるように、熱交換器4は、第1ヘッダ10と、第2ヘッダ20と、熱交換チューブ(伝熱管)30と、フィン40と、を有する。
第1ヘッダ10は、アルミニウムやアルミニウム合金等の、熱伝導率が高く比重が小さい材料で形成される。第1ヘッダ10は、筒状に形成され、例えばZ方向に垂直な断面が円形状の円筒状に形成される。第1ヘッダ10の中心軸はZ方向に延びる。第1ヘッダ10のZ方向の両端部は閉塞される。第1ヘッダ10の外周面には、熱交換チューブ30が挿入される複数の貫通孔が形成される。
第2ヘッダ20は、第1ヘッダ10と同様に形成される。第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は、X方向に相互に離間して並んで配置される。
【0015】
図3は、
図2のF4-F4線における部分断面図である。熱交換チューブ30は、アルミニウムやアルミニウム合金等の、熱伝導率が高く比重が小さい材料で形成される。熱交換チューブ30は、偏平管状に形成される。すなわち熱交換チューブ30は、Y方向に所定の幅を有し、Z方向に薄く、X方向に長く伸びる。
【0016】
熱交換チューブ30の外形は、長円形状に形成される。熱交換チューブ30の内部には、複数の冷媒流路34がY方向に並んで形成される。隣り合う冷媒流路34の間は、XZ平面と平行な流路壁35により仕切られる。複数の冷媒流路34は、熱交換チューブ30をX方向に貫通する。
【0017】
図2に示されるように、複数の熱交換チューブ30が、Z方向に間隔をおいて並列配置される。熱交換チューブ30の両端部は、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20の外周面に形成された貫通孔に挿入される。これにより、熱交換チューブ30の冷媒流路34の両端部は、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20の内部に開口する。
【0018】
第1ヘッダ10および第2ヘッダ20と熱交換チューブ30との隙間は、ロウ付け等により封止される。ロウ付けの具体的な手順は以下の通りである。第1ヘッダ10および第2ヘッダ20の内面にロウが塗布される。第1ヘッダ10および第2ヘッダ20に熱交換チューブ30が挿入されて、熱交換器4が組み立てられる。組み立てられた熱交換器4が、炉内で加熱される。加熱により、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20の内面のロウが溶融する。溶融したロウが、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20と熱交換チューブ30との隙間を塞ぐ。その後、熱交換器4が冷却されて、ロウが固化する。これにより、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20と熱交換チューブ30とが固定される。
【0019】
フィン40は、アルミニウムやアルミニウム合金等の、熱伝導率が高く比重が小さい材料で形成される。例えば、フィン40は、平板状に形成されたプレートフィンである。フィン40は、YZ平面と平行に配置される。フィン40は、コルゲートフィンでもよい。コルゲートフィンは波型に形成され、隣り合う熱交換チューブ30の間に配置される。
【0020】
図3に示されるように、フィン40のY方向の幅は、熱交換チューブ30のY方向の幅より大きい。フィン40の+Y方向の端辺から-Y方向にかけて、切欠き43が形成される。切欠き43には熱交換チューブ30が挿入される。熱交換チューブ30とフィン40との間は、前述されたロウ付けにより固定される。
図2に示されるように、複数のフィン40が、X方向に間隔をおいて配置される。
【0021】
隣り合う熱交換チューブ30の間および隣り合うフィン40の間には、Y方向に伸びる外気流路が形成される。熱交換器4は、送風ファン(不図示)等により外気流路に外気を流通させる。熱交換器4は、外気流路を流通する外気と、冷媒流路34を流通する冷媒との間で熱交換させる。熱交換は、熱交換チューブ30およびフィン40を介して、間接的に行われる。
【0022】
ヘッダの構造について説明する。
図2に示されるように、第1ヘッダ10は、仕切部材15,16を有する。仕切部材15,16は、XY平面と平行に配置され、第1ヘッダ10の内部空間をZ方向に仕切る。仕切部材15,16は、第1ヘッダ10の内部空間を、複数の小室に区分する。
図2の例では、2個の仕切部材15,16が、内部空間を3個の小室11,12,13に区分する。2個の仕切部材15,16は、+Z側の第1仕切部材15および-Z側の第2仕切部材16である。3個の小室11,12,13は、+Z側の第1小室11、中央の第2小室12および-Z側の第3小室13である。
図2の例では、第1小室11および第3小室13のZ方向の高さは同等であり、第2小室12は第1小室11および第3小室13よりもZ方向の高さが高い。
【0023】
第2ヘッダ20は、第1ヘッダ10と同様の仕切部材25を有する。仕切部材25が、第2ヘッダ20の内部空間を複数の小室に区分する。
図2の例では、1個の仕切部材25が、内部空間を2個の小室21,22に区分する。2個の小室21,22は、+Z側の第1小室21および-Z側の第2小室22である。
図2の例では、2個の小室21,22のZ方向の高さは同等である。
【0024】
熱交換チューブ30の-X方向の第1端部は、第1ヘッダ10の内部に開口する。第1ヘッダ10に形成された3個の小室11,12,13には、それぞれ複数の熱交換チューブ30が開口する。
図2の例では、第1小室11および第3小室13に対して、それぞれ同数の熱交換チューブ30が開口し、第2小室12に対して、第1小室11および第3小室13の2倍の数の熱交換チューブ30が開口する。
熱交換チューブ30の+X方向の第2端部は、第2ヘッダ20の内部に開口する。第2ヘッダ20に形成された2個の小室21,22には、それぞれ複数の熱交換チューブ30が開口する。
図2の例では、2個の小室21,22に対して、それぞれ同数の熱交換チューブ30が開口する。
【0025】
第1ヘッダ10の内部には、冷媒ポート18,19が開口する。冷媒ポート18,19は、外部と熱交換器との間における冷媒の流入口および流出口である。第1ヘッダ10の第1小室11の-Z方向の端部には、第1冷媒ポート18が開口する。第1冷媒ポート18は、第1小室11の+Z方向の端部に開口してもよい。第1ヘッダ10の第3小室13の-Z方向の端部には、第2冷媒ポート19が開口する。
【0026】
図1に示される冷凍サイクル装置1が冷房運転を行うとき、室外熱交換器4は凝縮器として機能する。この場合には、圧縮機2から流出した気体冷媒が、室外熱交換器4に流入する。冷媒は、
図2に示される第1冷媒ポート18から、第1ヘッダ10の第1小室11に流入する。冷媒は、熱交換チューブ30を+X方向に流通して、第2ヘッダ20の第1小室21の上半部に流入する。冷媒は、第2ヘッダ20の第1小室21の下半部に移動する。冷媒は、熱交換チューブ30を-X方向に流通して、第1ヘッダ10の第2小室12の上半部に流入する。冷媒は、第1ヘッダ10の第2小室12の下半部に移動する。冷媒は、熱交換チューブ30を+X方向に流通して、第2ヘッダ20の第2小室22の上半部に流入する。冷媒は、第2ヘッダ20の第2小室22の下半部に移動する。冷媒は、熱交換チューブ30を-X方向に流通して、第1ヘッダ10の第3小室13に流入する。
【0027】
第1ヘッダ10の第1小室11に流入した気体冷媒は、熱交換チューブ30を流通する過程で外気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、液体冷媒となって、第1ヘッダ10の第3小室13に流入する。冷媒は、第2冷媒ポート19から熱交換器4の外部に流出する。
図1に示される冷凍サイクル装置1が暖房運転を行うとき、冷媒は上記と逆方向に流通する。つまり、液体冷媒が第2冷媒ポート19から第1ヘッダの第3小室13へ流入し、気液二相冷媒が第1冷媒ポート18から流出する。
【0028】
熱交換器4において、冷媒が気液二相の状態で流通する部分では、外気と交換した熱量が冷媒の相変化に利用されるため、冷媒の温度変化が小さい。冷媒が単相の状態で流通する部分では、外気と交換した熱量が冷媒の温度変化に利用されるため、冷媒の温度変化が大きい。気体冷媒が流通する第1ヘッダ10の第1小室11と、液体冷媒が流通する第1ヘッダ10の第3小室13は、冷媒が単相の状態で流通する部分である。一方、第1ヘッダ10の第2小室12は、冷媒が気液二相の状態で流通する部分である。そのため、第1ヘッダ10の第1小室11と第2小室12との温度差は大きい。第1ヘッダ10の第2小室12と第3小室13との温度差についても同様である。
【0029】
前述されたように、第1ヘッダ10の第1小室11と第2小室12との温度差は大きい。そのため、第1小室11を流通する冷媒と、第2小室12を流通する冷媒との間で、第1仕切部材15を介して熱交換が行われる可能性がある。第1仕切部材15を介して熱交換が行われると、冷媒と外気との間で交換される熱量が低下する。これにより、熱交換器4の熱交換量が低下する。第2仕切部材16についても同様である。また、第1仕切部材15を介して熱交換が行われると、各小室11,12を流通する冷媒の温度が、直前の熱交換チューブ30を流通する冷媒の温度から変化する。熱交換チューブ30を流通する冷媒の温度を検知するため、第1ヘッダ10に温度センサを配置すると、誤った冷媒の温度が検知される可能性がある。これに伴って、膨張装置5(
図1参照)の開度制御を誤る可能性がある。
【0030】
第1仕切部材15について詳細に説明する。第2仕切部材16は、第1仕切部材15と同様である。以下の説明において、第1仕切部材15は、単に仕切部材50と称される。
図4は、仕切部材の斜視図である。仕切部材50は、一対の端板51,51と、断熱層52と、を有する。
【0031】
端板51は、第1ヘッダ10の形成材料と同じ材料で形成される。すなわち、端板51は、アルミニウムやアルミニウム合金等の材料で形成される。
【0032】
端板51は、平面視において略円形状に形成される。端板51の-X方向の第1半円部54と+X方向の第2半円部56とは、半径が異なる。第1半円部54の半径は、第1ヘッダ10の外周面の半径と同等である。第2半円部56の半径は、第1ヘッダ10の内周面の半径と同等である。端板51の第1半円部54と第2半円部56との間には、段部55が形成される。段部55は、+X方向を向く平面を有する。第2半円部56の+X方向の端部には、突起57が形成される。突起57は、第2半円部56から+X方向に突出する。
【0033】
一対の端板51,51が、Z方向に間隔をおいて平行に配置される。一対の端板51,51の形状は同等である。仕切部材50は、一対の端板51,51をZ方向に連結する連結部58を有する。連結部58は、一対の端板51,51を、段部55、第2半円部56の外周部および突起57において、相互に連結する。仕切部材50における一対の端板51,51および連結部58は、射出成型等により一体に形成される。
【0034】
断熱層52は、Z方向における一対の端板51,51の間に形成される。すなわち、断熱層52のZ方向の両側に一対の端板51,51が配置される。
図4に示されるように、断熱層52は、一対の端板51,51の間のスペースが、第1ヘッダ10の開口10wから外部に開放され、中空部として形成される。したがって、断熱層52は空気層である。第1ヘッダ10の形成材料であるアルミニウムやアルミニウム合金の熱伝導率は、240W/mk程度である。空気の熱伝導率は、0.2W/mk程度である。すなわち、断熱層52は、第1ヘッダ10の形成材料よりも熱伝導率が小さくなっている。
【0035】
図5は、
図6のF5-F5線における仕切部材の周辺の正面断面図である。
図6は、
図5のF6-F6線(
図2のF6-F6線)における仕切部材の周辺の平面断面図である。
図5に示されるように、第1ヘッダ10には、周壁を貫通する開口10wが形成される。仕切部材50は、第1ヘッダ10の径方向の外側(-X方向)から、開口10wを通って、第1ヘッダ10の内側に挿入される。開口10wのZ方向の高さは、仕切部材50のZ方向の高さと同等である。
図6に示されるように、第1ヘッダ10の開口10wは、第1ヘッダ10の中心軸より-X方向に形成される。開口10wは、第1ヘッダ10の周方向の半周にわたって形成される。
【0036】
図6に示されるように、第1ヘッダ10の+X方向の端部には、周壁を貫通する孔10hが形成される。仕切部材50の突起57が、第1ヘッダ10の孔10hに挿入される。これにより、第1ヘッダ10の周方向において仕切部材50が位置決めされる。仕切部材50の第2半円部56の外周は、第1ヘッダ10の内周面に当接する。仕切部材50の段部55は、第1ヘッダ10の周方向における開口10wの端部に当接する。仕切部材50の第1半円部54の外周は、第1ヘッダ10の外周面に沿って配置される。仕切部材50と第1ヘッダ10との隙間は、前述されたロウ付けにより封止される。
【0037】
図5に示されるように、仕切部材50は、第1ヘッダ10の内部を第1小室11および第2小室12に仕切る。仕切部材50は、Z方向の中央部に断熱層52を有する。断熱層52は、第1ヘッダ10の形成材料より熱伝導率の小さい材料で形成される。
これにより、第1小室11を流通する冷媒と、第2小室12を流通する冷媒との間で、仕切部材50を介した熱交換が行われるのを抑制することができる。そのため、冷媒は外気との間で熱交換する。したがって、熱交換器の熱交換量の低下を抑制することができる。
【0038】
仕切部材50は、断熱層52のZ方向の両側に端板51を有する。端板51は、第1ヘッダ10の形成材料と同じ材料で形成される。
仕切部材50は第1ヘッダ10に当接して、第1ヘッダ10の内部を仕切る。第1ヘッダ10および端板51が同じ材料で形成されるので、両者の電蝕が抑制される。両者の膨張率が同じになるので、ロウ付け時の加熱による隙間の発生が抑制される。両者の融点が同じになるので、ロウ付け時の加熱による端板51の変形が抑制される。
【0039】
第1の実施形態において、仕切部材50は、第1ヘッダ10の第1仕切部材15および第2仕切部材16に適用される。これに対して、仕切部材50は、第2ヘッダ20の仕切部材25に適用されてもよい。
【0040】
第1の実施形態において、第1ヘッダ10は、2個の仕切部材15,16により3個の小室11,12,13に区分される。第2ヘッダ20は、1個の仕切部材25により2個の小室21,22に区分される。これに対して、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は、他の個数の仕切部材により他の個数の小室に区分されてもよい。
【0041】
第1ヘッダ10は、熱交換器4の外部から冷媒を流入する流入口および熱交換器4の外部に冷媒を流出する流出口として、第1冷媒ポート18および第2冷媒ポート19を有する。仕切部材50は、第1冷媒ポート18および第2冷媒ポート19が開口する第1ヘッダ10の内部の第1小室11および第3小室13を仕切る。
熱交換器4の流入口および流出口が開口する第1小室11および第3小室13は、冷媒が単相の状態で流通する部分である。第1小室11と第2小室12との温度差は大きく、第2小室12と第3小室13との温度差は大きい。仕切部材50は、第1小室11と第2小室12との間および第2小室12と第3小室13との間を仕切る。これにより、仕切部材50を介した熱交換が行われるのを抑制することができる。したがって、熱交換器の熱交換量の低下を抑制することができる。
【0042】
第1の実施形態において、第1冷媒ポート18および第2冷媒ポート19は、第1ヘッダ10の内部に開口する。これに対して、第1冷媒ポート18および第2冷媒ポート19の一方または両方は、第2ヘッダ20の内部に開口してもよい。いずれの場合でも、冷媒の流入口および流出口である第1冷媒ポート18および第2冷媒ポート19が開口する小室の仕切部材として、第1の実施形態の仕切部材50が適用される。
【0043】
前述された実施形態の仕切部材50は、第1ヘッダ10の外側から開口10wを通って内側に挿入される。これに対して、仕切部材は、第1ヘッダ10の軸方向の端部から内部に挿入されてもよい。この場合には、第1ヘッダ10の開口10wが不要になる。
【0044】
前述された実施形態の仕切部材50では、一対の端板51,51が連結部58により連結されている。このように一体に形成された仕切部材50が、第1ヘッダ10の開口10wに挿入される。これに対して、仕切部材は、一対の端板51,51のみで形成されてもよい。この場合には、一対の端板51,51が、Z方向に間隔を置いて別々に、第1ヘッダ10の開口10wに挿入される。第1ヘッダ10にはそれぞれの端板51,51の位置に孔10hが形成される。
【0045】
第1の実施形態の変形例について説明する。
図7は、第1の実施形態の変形例における仕切部材の周辺の正面断面図である。
図7は、
図6のF5-F5線に相当する部分における断面図である。変形例の仕切部材150は、断熱層152が固体材料で形成される点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての変形例の説明は省略される。
【0046】
断熱層152は、固体材料で形成される。例えば、固体材料は、エポキシ系やシリコン系の樹脂材料である。これらの樹脂材料の熱伝導率は、1から10W/mk程度であり、第1ヘッダ10の形成材料であるアルミニウムやアルミニウム合金の熱伝導率より小さい。したがって、仕切部材150を介した熱交換が抑制される。
例えば、断熱層152は、第1の実施形態の断熱層52である空気層に、樹脂パテ剤を充填して硬化させることにより形成される。樹脂パテ剤の充填は、仕切部材150と第1ヘッダ10とをロウ付けにより固定した後に実施される。
【0047】
第1の実施形態の仕切部材50は、第1ヘッダ10の外周面の開口10wから内部に挿入される。第1の実施形態の断熱層52は、第1ヘッダ10の開口10wから外部に露出している。そのため、断熱層52の両側の端板51に雨水や結露水が付着する。これにより、仕切部材50が腐食する可能性がある。
変形例の断熱層152は、固体材料で形成される。これにより、断熱層152の両側の端板51に雨水や結露水が付着しないので、仕切部材150の腐食が抑制される。
【0048】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態における仕切部材の斜視図である。第2の実施形態の仕切部材250は、連結部258が一対の端板51,51を第1半円部54の外周部において連結する点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての第2の実施形態の説明は省略される。
【0049】
仕切部材250は、一対の端板51,51をZ方向に連結する連結部258を有する。連結部258は、一対の端板51,51を、第1半円部54および段部55において、相互に連結する。第1ヘッダ10の開口10w(
図5および
図6参照)は、一対の端板51,51および連結部258により覆われる。そのため、断熱層52である空気層は、開口10wから外部に露出しない。これにより、断熱層52の両側の端板51に対する雨水や結露水の付着が抑制される。したがって、仕切部材250の腐食が抑制される。
【0050】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、熱交換器4の第1ヘッダ10は、断熱層52を有する仕切部材50を持つ。これにより、熱交換器4の熱交換量の低下を抑制することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…冷凍サイクル装置、4…室外熱交換器(熱交換器)、10…第1ヘッダ(ヘッダ)、10w…開口、15…第1仕切部材(仕切部材)、16…第2仕切部材(仕切部材)、18…第1冷媒ポート(流入口、流出口)、19…第2冷媒ポート(流出口、流入口)、30…熱交換チューブ、50,150,250…仕切部材、51…端板、52,152…断熱層。