(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20230615BHJP
F02B 29/08 20060101ALI20230615BHJP
F02M 26/02 20160101ALI20230615BHJP
【FI】
F02B29/04 E
F02B29/08 F
F02M26/02
(21)【出願番号】P 2019148279
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】越後 亮
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-247122(JP,A)
【文献】実開平03-092527(JP,U)
【文献】特開2017-008839(JP,A)
【文献】特開2018-076843(JP,A)
【文献】特開2013-160199(JP,A)
【文献】特開2016-121531(JP,A)
【文献】特開平10-061438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F02B 29/08
F02M 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気を圧縮する過給機と、
上記過給機の下流側に位置し、各気筒の吸気ポートに吸気を分配する吸気コレクタと、
一つの気筒に複数設けられた吸気弁と、
上記吸気コレクタの内部に配置されたインタークーラと、を有し、
上記インタークーラは、内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定され
、
上記吸気コレクタは、吸気ポートの入口部に対して上記インタークーラの出口部のうち当該入口部に対向する部分からのみ吸気が流入するように、上記インタークーラの出口部の下流側を仕切る複数の仕切り壁を有し、
上記仕切り壁には、貫通孔が形成され、
上記貫通孔には、当該貫通孔を開閉可能な制御弁が設けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
上記所定勾配は、所定運転条件において各吸気ポート内の吸気の流速分布が一様となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
上記所定勾配は、上記所定運転条件において、上記インタークーラの出口部における吸気の流速分布が気筒列方向に沿って一様となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
上記所定運転条件は、同一気筒の各吸気弁から流入する吸気ガスの筒内流動にシリンダ中心軸線に関して線対称性が求められる運転条件であることを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関。
【請求項5】
上記所定運転条件は、空燃比が理論空燃比よりもリーンとなる希薄燃焼を行う運転条件、またはEGRによる希釈燃焼を行う運転条件である請求項2~4のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
上記インタークーラは、気筒列方向に沿って内部の圧力損失が変化するよう設定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項7】
上記制御弁は、空燃比が理論空燃比よりもリーンとなる希薄燃焼またはEGRによる希釈燃焼を実施する際には、上記貫通孔を閉じることを特徴とする請求項
1~6のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項8】
上記制御弁は、上記希釈燃焼を実施しない際には、上記貫通孔を開くことを特徴とする請求項
7に記載の内燃機関。
【請求項9】
上記制御弁は、高出力運転を実施する際には、上記貫通孔を開くことを特徴とする請求項
1~8のいずれかに記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気コレクタにインタークーラが内蔵された内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、過給機の下流側に位置するサージタンクと、サージタンクから各気筒に吸気を供給する複数の接続管と、サージタンク内に配置されたインタークーラと、サージタンク内のインタークーラ下流側部分に過給機の上流側と連通するバイパス通路と、を備えた内燃機関が開示されている。
【0003】
インタークーラ下流側のサージタンク内の吸気流の圧力分布は、過給された吸気がインタークーラの電熱フィンのフィン列を通過することにより整流されることにより気筒列方向に沿って略均一となっている。
【0004】
この特許文献1においては、バイパス通路がサージタンク内に挿入された管状部材と接続されている。管状部材は、上記複数の接続管のサージタンクとの各接続口の配列と略平行になるように配置されている。
【0005】
この管状部材の管壁には、それぞれ軸線に平行に配列された貫通孔からなる4つの孔列が形成されている。そして、これら孔列の貫通孔は、管状部材通過後の吸気流の管状部材に沿った方向の圧力分布が略一様となるように、バイパス通路内流れ方向の下流側になるにつれて減少するよう形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において、インタークーラ上流側のサージタンク内の吸気の圧力分布が気筒列方向に沿って不均一になっていると、吸気がインタークーラのフィン列を通過することによって整流されたとしても、インタークーラ下流側のサージタンク内の吸気の圧力分布が気筒列方向に沿って不均一になる虞ある。
【0008】
つまり、特許文献1においては、インタークーラ上流側のサージタンク内の吸気流の圧力分布に関して十分に考慮されていない。
【0009】
そのため、特許文献1においては、インタークーラ上流側のサージタンク内の気筒列方向に沿った吸気の圧力分布が不均一になっていると、管状部材を通過後の吸気の気筒列方向に沿った圧力分布が不均一となり、上記複数の接続管内の流速分布に偏りが発生し、吸気ガスの筒内流動が悪化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内燃機関は、過給機と、各気筒の吸気ポートに吸気を分配する吸気コレクタと、上記吸気コレクタの内部に配置されたインタークーラと、を有し、上記インタークーラの内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定され、上記吸気コレクタは、吸気ポートの入口部に対して上記インタークーラの出口部のうち当該入口部に対向する部分からのみ吸気が流入するように、上記インタークーラの出口部の下流側を仕切る複数の仕切り壁を有し、上記仕切り壁には、貫通孔が形成され、上記貫通孔には、当該貫通孔を開閉可能な制御弁が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内燃機関は、インタークーラ上流側の吸気コレクタ内の吸気の流速分布及び圧力分布に偏りがあっても、インタークーラ下流側の吸気コレクタ内の吸気の流速分布及び圧力分布の偏りを小さくすることが可能となる。そのため、本発明の内燃機関は、複数の吸気弁を通過して筒内に流入する吸気の流量差を小さくすることが可能となり、筒内に所期のガス流動(例えば、スワール成分を極力抑えたタンブル流)を発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例の内燃機関を模式的に示した説明図。
【
図3】本発明の第2実施例の内燃機関を模式的に示した説明図。
【
図4】本発明の第3実施例の内燃機関における吸気コレクタとインタークーラを模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施例の内燃機関1を模式的に示した説明図である。
【0014】
内燃機関1の吸気通路2には、スロットル弁3よりも吸気流れ方向の下流側の位置に、EGR通路4が接続されている。EGR通路4は、図示せぬ排気通路から排気ガスの一部を吸気通路2に還流する排気還流(EGR)を可能にするものである。
【0015】
また。吸気通路2には、EGR通路4の接続位置よりも吸気流れ方向の下流側の位置に、吸気を圧縮する過給機5が配置されている。
【0016】
過給機5は、例えば、吸気通路に設けられたコンプレッサと排気通路に設けられた排気タービンとを同軸上に備えたターボ過給機である。なお、過給機5としては、吸気通路に設けられたコンプレッサを内燃機関によって駆動する機械式過給機(スーパーチャージャ)や、吸気通路内に設けられたコンプレッサを電動モータで駆動する電動過給機であってもよい。
【0017】
また、吸気通路2には、過給機5の下流側に一定量の容積を有する吸気コレクタ6が設けられている。吸気コレクタ6は、気筒列方向に沿って配置されている。
【0018】
吸気コレクタ6は、各気筒の吸気ポート7に吸気を分配している。吸気コレクタ6の下流側壁部6aには、吸気ポート7の入口部である上流側端部8が接続されている。下流側壁部6aは、気筒列方向に沿った壁部であり、吸気コレクタ6を構成する壁部のなかで吸気流れ方向の下流側に位置する壁部である。
【0019】
吸気ポート7は、吸気流れ方向の下流側が二股状に分岐している。吸気ポート7は、吸気流れ方向の下流側の端部が一対の下流側端部9、9となっている。一対の下流側端部9、9は、それぞれ吸気弁10を介して内燃機関1の燃焼室11(筒内)に接続されている。つまり、内燃機関1は、一つの気筒に二つの吸気弁10を有している。各吸気ポート7の上流側端部8は、上流側に向かって拡がるベルマウス部8aを有している。
【0020】
また、吸気コレクタ6の内部には、気筒列方向に沿ってインタークーラ12が配置されている。インタークーラ12は、過給機5により圧縮された吸気を冷却して充填効率を向上させるものである。
【0021】
インタークーラ12は、所定運転条件において各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)となるように、内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定されている。換言すると、インタークーラ12は、気筒列方向に沿って内部の圧力損失が変化するように設定されている。
【0022】
詳述すると、インタークーラ12は、上記所定運転条件において、インタークーラ入口部12aの気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)ではなくても、インタークーラ出口部12bの気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)となって、各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)となるように、内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定されている。
【0023】
インタークーラ出口部12bから気筒への吸気の流れは、インタークーラ出口部12bの気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)になることで改善され、ベルマウス部8aでより剥離しにくくなる。
【0024】
インタークーラ入口部12aは、インタークーラ12の吸気流れ方向における上流端である。インタークーラ出口部12bは、インタークーラ12の吸気流れ方向における下流端である。
【0025】
例えば、インタークーラ12は、
図1に示すように、内部の圧力損失が相対的に高くなる高圧損の部分と、内部の圧力損失が相対的に低くなる低圧損の部分とが気筒列方向に沿って交互に存在するように構成されている。
【0026】
つまり、本願明細書において、インタークーラ12の内部の圧力損失が所定勾配を有するということは、インタークーラ12の内部の圧力損失が一様(均一)ではなく、インタークーラ12の内部に圧力損失の高い部分と圧力損失の低い部分とが形成されて圧力損失が気筒列方向に沿って変化しているということである。
【0027】
なお、気筒列方向に沿って配置された吸気コレクタ6には、気筒列方向の一端側から吸気が導入されている。そのため、この第1実施例において、インタークーラ12上流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の圧力は、気筒列方向で吸気コレクタ6の他端側の端部と中央部で吸気流の圧力が高くなり、気筒列方向で吸気コレクタ6の他端側の端部と中央部に挟まれた部分と、気筒列方向で吸気コレクタ6の中央部よりも一端側の部分とで吸気の圧力が低くなっている。つまり、吸気コレクタ6は、インタークーラ上流側の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)になっていない。
【0028】
インタークーラ12の内部の圧力損失は、インタークーラ12上流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布を考慮して設定される。例えば、インタークーラ12の内部の圧力損失は、吸気の流速が速い位置または吸気の圧力が高い位置からの吸気が流れ込む場所では高く設定し、吸気の流速が遅い位置または吸気の圧力が低い位置からの吸気が流れ込む場所では低く設定する。換言すれば、インタークーラ12の内部の圧力損失は、インタークーラ入口部12aにおいて吸気の流速が速い場所または吸気の圧力が高い場所では高く設定し、インタークーラ入口部12aにおいて吸気の流速が遅い場所または吸気の圧力が低い場所では低く設定する。
【0029】
上記所定運転条件は、同一気筒の2つの吸気弁10、10から流入する吸気ガスの筒内流動にシリンダ中心軸線に関して線対称性が求められる運転条件、すなわち吸気ガスの筒内流動に所期のガス流動(例えば、スワール成分を極力抑えたタンブル流)が求められる運転条件である。詳述すると、上記所定運転条件は、空燃比が理論空燃比よりもリーンとなる希薄燃焼を行う運転条件、またはEGRによる希釈燃焼を行う運転条件等である。
【0030】
なお、インタークーラ12上流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布や圧力分布は、吸気コレクタ6の形状、吸気コレクタ6の対する吸気の流入位置等により変化するものであり、上述した第1実施例とは異なるものでもよい。
【0031】
図2に示す比較例の内燃機関15は、上述した
図1に示す本願発明の内燃機関1と略同一構成となっているが、インタークーラ12の内部の圧力損失が一様(均一)となっているものである。なお、
図2においては、
図1に示す内燃機関1と同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
図2に示す比較例のように、インタークーラ12の内部の圧力損失が一様(均一)の場合には、インタークーラ12上流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布と、インタークーラ12下流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布とが同じとなる。すなわち、インタークーラ12の内部の圧力損失が一様(均一)の場合には、インタークーラ12上流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様ではないと、インタークーラ12下流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布も一様ではなくなる。
【0033】
インタークーラ12下流側の吸気コレクタ6内の気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様では無い場合には、インタークーラ12下流側の吸気コレクタ6内で吸気の流れが大きく乱れ、各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布が一様ではなくなるため、同一気筒の各吸気弁10、10から流入する吸気に流量差が生じ、吸気ガスの筒内流動が所期のガス流動とはならない虞がある。なお、各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布の偏りは、吸気の気筒分配が偏っていなくても発生する虞がある。
【0034】
上述した第1実施例の内燃機関1においては、インタークーラ12の内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定されている。
【0035】
具体的には、インタークーラ12は、所定条件において、インタークーラ出口部12bの気筒列方向に沿った吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)となって、各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)となるように、内部の圧力損失が所定勾配を有するように設定されている。
【0036】
これによって、内燃機関1は、同一気筒の各吸気弁10、10から燃焼室11(筒内)に流入する吸気に流量差が生じにくくなり、燃焼室11の吸気ガスに所期のガス流動(例えば、スワール成分を極力抑えたタンブル流)を発生させて、燃焼速度の向上及び希釈燃焼限界及び希薄燃焼限界を向上させることができる。
【0037】
また、燃焼室11に所期のガス流動(例えば、スワール成分を極力抑えたタンブル流)を発生させることが可能となるため、所定運転条件において、内燃機関1の燃焼安定性を向上させることができる。
【0038】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上述した第1実施例と同一の構成要素に対しては、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図3を用いて本発明の第2実施例を説明する。
図3は、本発明の第2実施例の内燃機関21を模式的に示した説明図である。
【0040】
第2実施例の内燃機関21は、上述した第1実施例の内燃機関1と略同一構成となっているが、インタークーラ12下流側の吸気コレクタ6内に、気筒数に応じた複数(2つ)の仕切り壁22を有している。すなわち、吸気コレクタ6は、インタークーラ出口部12bの下流側を仕切る複数(2つ)の仕切り壁22を有している。
【0041】
仕切り壁22は、隣接する吸気ポート7の上流側端部8の間を仕切るように形成されている。
【0042】
つまり、仕切り壁22は、吸気ポート7の上流側端部8に対してインタークーラ出口部12bのうち当該上流側端部8に対向する部分からのみ吸気が流入するように、吸気コレクタ6のインタークーラ12下流側の空間を仕切っている。
【0043】
仕切り壁22は、インタークーラ出口部12bから吸気ポート7の上流側端部8まで連続している。仕切り壁22は、吸気上流側端22aがインタークーラ出口部12bに突き当てられ、吸気下流側端22bが吸気コレクタ6の下流側壁部6aに接続されている。
【0044】
すなわち、仕切り壁22は、吸気ポート7の上流側端部8に対して直線的に、最短距離で吸気が流入するようにインタークーラ出口部12bの下流側を仕切っている。
【0045】
換言すれば、各吸気ポート7の上流側端部8が、それぞれインタークーラ出口部12bに直接接続された構成となっている。
【0046】
また、上述した第1実施例の内燃機関1は、吸気コレクタ6のインタークーラ12下流側の空間が仕切り壁22で仕切られていないため、インタークーラ出口部12bのうち吸気行程中の気筒の吸気ポート7の上流側端部8と対向しない部分から当該上流側端部8(吸気行程中の気筒の吸気ポート7の上流側端部8への吸気の流れが例えばS字形状に湾曲した流れとなり、吸気ポート7内の吸気の流速分布や圧力分布の偏りが抑制しきれない虞がある。
【0047】
そこで、第2実施例の内燃機関21は、吸気ポート7の上流側端部8に対してインタークーラ出口部12bのうち当該上流側端部8に対向する部分からのみ吸気が流入するように仕切り壁22を設けることで、吸気ポート7の上流側端部8に対して直線的に(最短距離で)吸気が流入するようになり、吸気ポート7内の吸気の流速分布や圧力分布の偏りを確実に抑制することができる。
【0048】
図4を用いて本発明の第3実施例を説明する。
図4は、本発明の第3実施例における内燃機関31の吸気コレクタ6とインタークーラ12を模式的に示した説明図である。
【0049】
第3実施例の内燃機関31は、上述した第2実施例の内燃機関21と略同一構成となっているが、仕切り壁22に貫通孔32が形成されているとともに、貫通孔32を開閉可能な制御弁33を有している。
【0050】
貫通孔は、各仕切り壁22に形成されている。制御弁33は、各貫通孔32に設けられている。各制御弁33、33は、気筒列方向に沿った回転軸34に固定され、図示せぬアクチュエータ等により回転軸34を回転させることで、各貫通孔32、32を同時に開閉するものである。なお、各制御弁33、33は、個別に開閉できるようにしてもよい。
【0051】
制御弁33は、空燃比が理論空燃比よりもリーンとなる希薄燃焼またはEGRによる希釈燃焼を実施する際には、貫通孔32を閉じるように制御される。
【0052】
また、制御弁33は、高出力運転を実施する際には、貫通孔32を開くように制御される。なお、前述の希釈燃焼を行わない場合は、出力の高低に関わらず貫通孔32を開くように制御弁33を制御しても良い。
【0053】
吸気コレクタ6は、インタークーラ12下流側に仕切り壁22を設けると、高出力運転を実施する高過給領域で圧力損失が大幅に増加する虞がある。
【0054】
過給圧が所定値以上となる高過給領域は、圧力損失を小さくして空気を筒内に押し込みたい運転領域であるこのような高過給領域では、吸気ガスの筒内流動要求は低く、仕切り壁22の必要性は低い。
【0055】
そこで、内燃機関31は、仕切り壁22に貫通孔32を設け、さらにこの貫通孔32を開閉可能な制御弁33を設けることで、高過給領域で制御弁33を開弁して貫通孔32を開口することで吸気コレクタ6の圧力損失を低減することができる。
【0056】
また、内燃機関31は、燃焼室11の吸気ガスに対する筒内流動要求が大きい場合(例えば、空燃比を理論空燃比よりもリーンする希薄燃焼や、EGRによる希釈燃焼を実施する場合)、制御弁33を閉弁して貫通孔32を塞ぐことで吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布を一様(均一)にすることができる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
本願発明の内燃機関1、21、31は、本質的には、同一気筒の吸気弁10、10から流入する吸気に流量差が無いようにして、燃焼室11(筒内)の吸気ガスに所期のガス流動(例えば、スワール成分を極力抑えたタンブル流)を発生させるものである。従って、内燃機関1、21、31は、各吸気ポート7の上流側端部8に流入する吸気の流速分布及び圧力分布が一様(均一)であれば、インタークーラ12を通過した吸気の吸気圧力が気筒列方向に沿って一様(均一)でなくてもよい。つまり、インタークーラ12の内部の圧力損失は、各吸気ポート7内の吸気の流速分布及び圧力分布を一様(均一)とするために、インタークーラ12を通過した吸気の吸気圧力が気筒列方向に沿って一様(均一)ではないように設定する場合もあり得る。
【0059】
また、上述した各実施例において、内燃機関1、21、31は、一つの気筒に二つの吸気弁10、10を有しているが、本発明は、一つの気筒に3以上の吸気弁を有する内燃機関にも適用可能である。
【0060】
上述した各実施例の内燃機関1、21、31は、直列3気筒エンジンであるが、本願発明は、3気筒以外の多気筒内燃機関や単気筒内燃機関にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…内燃機関
2…吸気通路
3…スロットル弁
4…EGR通路
5…過給機
6…吸気コレクタ
6a…下流側壁部
7…吸気ポート
8…上流側端部
8a…ベルマウス部
9…下流側端部
10…吸気弁
11…燃焼室
12…インタークーラ
12a…インタークーラ入口部
12b…インタークーラ出口部
21…内燃機関
22…仕切り壁
22a…吸気上流側端
22b…吸気下流側端
31…内燃機関
32…貫通孔
33…制御弁
34…回転軸