IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイエスピーの特許一覧

特許7296275ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群、及びポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群、及びポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20230615BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
C08J3/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019150661
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021031540
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】坂村 拓映
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-215438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0057387(US,A1)
【文献】特開2015-108030(JP,A)
【文献】特開2000-128999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有彩色の顔料を含む着色マスターバッチと、気泡調整剤と、ポリプロピレン系樹脂(A)とを溶融混錬することによってポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子を製造し、該着色樹脂粒子を密閉容器中にて分散媒に分散させるとともに、無機系物理発泡剤を含浸させて発泡性着色樹脂粒子とし、該発泡性着色樹脂粒子を分散媒とともに該密閉容器内より低圧の雰囲気下に放出して発泡させるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法であって、
該着色マスターバッチ中の該有彩色の顔料の濃度が、15~40重量%であるとともに、該着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)と該ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(I)との比[II/I]が1を超え3.5以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子中の前記有彩色の顔料の含有量が0.15~8重量%となるよう前記着色マスターバッチを配合することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)が10~25g/10minであるとともに、該着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)と前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(I)との比[II/I]が1.5~3.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(TmI)が125℃以上155℃未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(TmI)と前記着色マスターバッチの融点(TmII)との差[(TmI)-(TmII)]が-10℃~10℃であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記気泡調整剤がホウ酸亜鉛及びホウ酸マグネシウムより選択された1又は2以上のホウ酸金属塩であって、該ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の算術平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、かつ該ホウ酸金属塩の粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記顔料が赤色有機顔料を主成分とすることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
有彩色の顔料で着色されたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子からなる型内成形用の発泡粒子群であって、該発泡粒子の見掛け密度が15~300kg/mであり、発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径が50~200μmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子
発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径は、発泡粒子群を23℃、相対湿度50%、1atmの雰囲気下に2日間静置することにより、発泡粒子群の状態調節を行ってから、1つの発泡粒子を無作為に抽出し、該発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその切断面の写真を撮影し、得られた断面写真において、略円形の発泡粒子の円周の長さCを、該発泡粒子の円周に接する気泡の数nで除した値を該発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とし、この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均することにより求められる。
【請求項9】
前記発泡粒子中の前記有彩色の顔料の含有量が0.15~8重量%であることを特徴とする請求項8に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群。
【請求項10】
ホウ酸亜鉛及びホウ酸マグネシウムより選択される1又は2以上のホウ酸金属塩を含み、
該ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の算術平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、かつ該ホウ酸金属塩の粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有彩色の顔料で着色されたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法、該製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子、及び該発泡粒子の型内成形により得られたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、緩衝性、反発弾性、断熱性等に優れ、軽量で欠損しにくいといった理由から、包装材、緩衝材、断熱材、建築資材、自動車用部品等の広範な用途に使用されている。
【0003】
該発泡粒子成形体は発泡粒子本来の白色のままで用いられることが多い。しかし、近年、製品の高機能化の一様態として色鮮やかでカラフルな発泡粒子成形体が望まれるようになった。着色された発泡粒子成形体として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、顔料としてカーボンブラックを用いて着色された、黒色のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されている。また、引用文献3には、赤色有機顔料を用いて着色された、赤色の発泡粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-300537号公報
【文献】特開2005-23302号公報
【文献】特開2009-215438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の実施例においては、カーボンブラックを用いて黒色の発泡粒子を得ることについてのみ検討されており、赤色や青色といった有彩色の発泡粒子成形体を得ることについては検討されていない。また、特許文献3に記載の着色発泡粒子は、顔料の配合量が少なく、色の鮮やかさに劣るものであった。
【0006】
さらに、従来技術においては、色鮮やかな有彩色の発泡粒子成形体を得るために、顔料の添加量を単に増加させると、得られる発泡粒子成形体に、色むらが生じやすいという問題があった。特に、赤色や青色といった有彩色の発泡粒子を用いた発泡粒子成形体は黒色の発泡粒子と比較すると、成形体の色むらがより目立ちやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、色鮮やかで、色むらの抑制された有彩色の着色発泡粒子成形体を、型内成形により容易に得ることができる有彩色の着色発泡粒子を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示すポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子、及びポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体が提供される。
[1]有彩色の顔料を含む着色マスターバッチと、気泡調整剤と、ポリプロピレン系樹脂(A)とを溶融混錬することによってポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子を製造し、該着色樹脂粒子を密閉容器中にて分散媒に分散させるとともに、無機系物理発泡剤を含浸させて発泡性着色樹脂粒子とし、該発泡性着色樹脂粒子を分散媒とともに該密閉容器内より低圧の雰囲気下に放出して発泡させるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法であって、
該該着色マスターバッチ中の該有彩色の顔料の濃度が、15~40重量%であるとともに、該着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)と該ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(I)との比[II/I]が1を超え3.5以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[2]前記ポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子中の含有量が0.15~8重量%となるよう前記着色マスターバッチを配合することを特徴とする前記1に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[3]前記着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)が10~25g/10minであるとともに、該着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)と前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(I)との比[II/I]が1.5~3.5であることを特徴とする前記1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[4]前記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(TmI)が125℃以上155℃未満であることを特徴とする前記1~3のいずれか一に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[5]前記ポリプロピレン系樹脂の融点(TmI)と前記着色マスターバッチの融点(TmII)との差[(TmI)-(TmII)]が-10℃~10℃であることを特徴とする前記1~4のいずれか一に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[6]前記気泡調整剤がホウ酸亜鉛及びはホウ酸マグネシウムより選択された1又は2以上のホウ酸金属塩であって、該ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の算術平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、かつ該ホウ酸金属塩の粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であることを特徴とする前記1~5のいずれか一に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[7]前記顔料が赤色有機顔料であることを特徴とする前記1~6のいずれか一に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法。
[8]有彩色の顔料で着色されたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子からなる型内成形用の発泡粒子群であって、該発泡粒子の見掛け密度が15~300kg/mであり、発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径が50~200μmであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群。
発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径は、発泡粒子群を23℃、相対湿度50%、1atmの雰囲気下に2日間静置することにより、発泡粒子群の状態調節を行ってから、1つの発泡粒子を無作為に抽出し、該発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその切断面の写真を撮影し、得られた断面写真において、略円形の発泡粒子の円周の長さCを、該発泡粒子の円周に接する気泡の数nで除した値を該発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とし、この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均することにより求められる。
[9]前記発泡粒子中の有彩色の顔料の含有量が0.15~8重量%であることを特徴とする前記8に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子群。
[10]ホウ酸亜鉛及びホウ酸マグネシウムより選択される1又は2以上のホウ酸金属塩を含み、
該ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の算術平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、かつ該ホウ酸金属塩の粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であることを特徴とする前記8又は9に記載のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子
[11]前記8~10のいずれか一に記載の発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体。

【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、有彩色の顔料濃度と、メルトフローレイトとが特定範囲内に調整された着色マスターバッチを使用して発泡粒子を製造することにより、色鮮やかで、色むらの抑制された有彩色の発泡粒子成形体を型内成形可能な有彩色のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子、及び該着色発泡粒子の型内成形により得られるポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体について、この順で詳細に説明する。
【0011】
本発明の製造方法は、有彩色に着色されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることを目的とし、該発泡粒子を用いて型内成形を行うことにより得られる、ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子成形体は、色鮮やかで、色むらの抑制されたものである。
【0012】
該製造方法においては、有彩色顔料を含む着色マスターバッチと、気泡調整剤とポリプロピレン系樹脂(A)とを溶融混錬することによってポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子を製造し(樹脂粒子製造工程)、該着色樹脂粒子を密閉容器中にて分散媒に分散させるとともに、加熱下で無機系物理発泡剤を含浸させて発泡性着色樹脂粒子とし(発泡剤含侵工程)、該着色樹脂粒子を分散媒とともに該密閉容器内より低圧の雰囲気下に放出して発泡させることにより、ポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子が製造される(発泡工程)。以下、該樹脂粒子製造工程、発泡剤含侵工程、発泡工程につき、この順で説明する。
【0013】
本発明方法の樹脂粒子製造工程においては、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と、有彩色の顔料を含む着色マスターバッチと、気泡調整剤とを押出機に供給して溶融混練してポリプロピレン系樹脂着色樹脂粒子(以下、単に「着色樹脂粒子」又は「樹脂粒子」ともいう。)が製造される。該樹脂粒子製造工程においては、従来公知の押出機を用いる方法を採用することができる。具体的には、押出機を用いて、基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂(A)と、着色マスターバッチとを押出機に供給して溶融混練し、ストランド状に押出して冷却後適宜の長さに切断する方法、又はストランドを適宜の長さに切断後または切断と同時に冷却する方法等により、着色樹脂粒子を得る方法を採用することができる。
【0014】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)としては、プロピレン単独重合体又はプロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン系共重合体が例示される。該共重合体としては、具体的には、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。なお、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。該プロピレン系樹脂系共重体は、プロピレンに由来する構造単位を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂(A)の曲げ弾性率は、発泡粒子の成形性と成形体の強度とを両立させる観点から800~1200MPaであることが好ましく、850~1100MPaであることがより好ましく、900~1000MPaであることが更に好ましい。
曲げ弾性率は、JIS K7171(2008)に基づき、求めることができる。
【0016】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)には、本発明の所期の効果を損なわない範囲内において、ポリプロピレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を添加することができる。ポリプロピレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂の添加量は、混合樹脂100重量%中、35重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが更に好ましく、5重量%以下であることが特に好ましく、プロピレン系樹脂(A)のみからなることが最も好ましい。
【0017】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
【0018】
本発明においては、有彩色の顔料を含む着色マスターバッチを用いることにより着色発泡粒子が製造される。
即ち、有彩色の顔料とポリプロピレン系樹脂等のベースレジンとを溶融混練し、造粒することにより、有彩色の顔料を含む着色マスターバッチを予め製造し、着色樹脂粒子製造工程において、得られた着色マスターバッチと、気泡調整剤と、ポリプロピレン系樹脂(A)とを押出機に供給して溶融混錬し、造粒することにより着色樹脂粒子とされる。
【0019】
有彩色の顔料を、着色マスターバッチを用いて添加することにより、基材樹脂中に顔料が均一に分散される。また、基材樹脂中の顔料の分散性を向上させる観点から、着色マスターバッチのベースレジンはポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0020】
本明細書において、前記有彩色とは、マンセル表色系における、色の三属性である色相・明度・彩度を併せ持つ色、すなわち黒・灰・白色以外の色をいう。
【0021】
本明細書において、有彩色の顔料とは、発泡粒子を有彩色に着色する顔料をいう。前記有彩色の顔料は、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、紫色顔料等が例示される。また、有彩色の顔料は、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であっても良い。無機系の顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、べんがら等の酸化物、群青等のケイ酸塩等を挙げることができる。又、有機系の顔料としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、又はフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の多環式顔料等を挙げることができる。なお、前記有彩色の顔料には、調色のために酸化チタンやカーボンブラック等が含まれていても良い。前記有彩色の顔料の中でも、有機系の顔料を用いることが好ましい。
【0022】
前記の顔料の中では、赤色有機顔料が好適に用いられる。赤色の発泡粒子成形体は包装材用に用いる場合の使用頻度が高く、本発明方法によれば、色むらが抑制され、鮮やかな色彩の赤色の発泡粒子成形体を型内成形可能な着色発泡粒子を容易に得ることが出来る。かかる観点から、アゾ系の赤色有機顔料を用いることがより好ましい。
【0023】
該有彩色顔料の着色マスターバッチ中の濃度は15~40重量%である。着色マスターバッチ中の顔料濃度が前記範囲内であることにより、色鮮やかで、色むらの抑制された有彩色の成形体を成形可能な発泡粒子を容易に得ることができる。該顔料濃度が小さすぎると、得られる発泡粒子成形体は色むらが発生しやすくなる。該顔料濃度が大きすぎると、顔料がマスターバッチ中で凝集して分散性が低下しすぎてしまい、発泡粒子成形体の色むらや外観不良等が生じるおそれがある。
【0024】
色鮮やかで、色むらの抑制された発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子をより容易に得るためには、該有彩色の顔料の着色マスターバッチ中の濃度は18~35重量%であることがより好ましく、20~30重量%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明者らの鋭意検討の結果、有彩色の顔料を、マスターバッチを用いて添加する場合において、発泡粒子中における有彩色の顔料の総配合量が同じであっても、用いるマスターバッチ中の顔料濃度によっては色むらが発生することがわかった。
【0026】
本発明によれば、顔料濃度が前記範囲内の着色マスターバッチを用いることにより、得られる発泡粒子成形体は色鮮やかで、色むらの抑制されたものとなる。その理由は、明らかでないが、発泡粒子中において顔料が微分散しすぎることなく、適度に粗く分散するためであると考えられる。即ち、着色マスターバッチ中の顔料濃度が小さすぎると、発泡粒子中で顔料が微分散しすぎることによって、色むらが生じやすいものであったと考えられる。また、発泡粒子中において顔料が微分散しすぎることなく、適度に粗く分散することにより、表面に位置する気泡が微細化することが抑制され、色むらが軽減されることも理由の一つとして考えられる。
【0027】
該着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)は、10~25g/10minであることが好ましい。メルトフローレイトがこの範囲内の着色マスターバッチはポリプロピレン系樹脂(A)中に適度に分散するので、得られた発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は色鮮やかな有彩色を示すとともに、色むらが抑制されたものとなる。かかる観点から、メルトフローレイト(II)は、11~20g/10minがより好ましく、12~18g/10minが更に好ましい。
【0028】
本発明においては、前記着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)と前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(I)との比[II/I]が1を超え3.5以下である。該比[II/I]が前記範囲内であれば、色鮮やかであるとともに、色むらが抑制された着色発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子を容易に製造することができる。これは、着色マスターバッチのメルトフローレイトが基材樹脂のメルトフローレイトよりも大きいことにより、基材樹脂中に着色マスターバッチが良好に分散しやすくなるためであると考えられる。該比[II/I]が大き過ぎると、顔料が微分散し、色むらが発生するおそれがある。かかる観点から、該比[II/I]は1.3~3.0であることが好ましく、より好ましくは1.5~2.5である。
【0029】
メルトフローレイト(MFR)の測定は、JIS K7210-1:2014に基づいて行うものとする(温度230℃、荷重2.16kg)。
【0030】
本発明方法においては、前記顔料濃度の着色マスターバッチを、着色発泡粒子中の顔料の含有量が0.15~8重量%となるように配合することが好ましい。着色発泡粒子中の顔料の含有量を前記範囲内となるよう着色マスターバッチを配合することにより、融着性を維持しつつ、発色性が良好で、色むらが抑制された成形体を成形可能な発泡粒子を得ることができる。かかる観点から、該着色発泡粒子中の顔料の含有量は、0.5~5重量%がより好ましく、更に好ましくは1~4重量%である。
【0031】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(TmI)は125以上155℃未満であることが好ましい。該融点が前記範囲内であると、発泡粒子は成形性、耐熱性等に優れるものとなる。かかる観点から、該融点(TmI)は130℃以上150℃未満であることが好ましく、更に好ましくは135℃以上145℃未満である。
【0032】
さらに、該ポリプロピレン系樹脂の融点(TmI)と前記着色マスターバッチの融点(TmII)との差[(TmI)-(TmII)]が-10℃~10℃であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の融点(TmI)と着色マスターバッチの融点(TmII)との差が小さいと、着色マスターバッチをポリプロピレン系樹脂(A)中により良好に分散させやすいので、発色性の低下や、色むらが生じることを抑制することがより容易になる。かかる観点から、該差[(TmI)-(TmII)]が-5℃~5℃であることがより好ましく、更に好ましくは-3℃~3℃である。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂及び該着色マスターバッチの融点の測定は次のように行う。
JIS K7121:2012に基づき、試験片の状態調節(2)一定の熱処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0034】
本発明方法の樹脂粒子製造工程においては、気泡調整剤が配合される。該気泡調整剤は、気泡生成時の核となり、気泡の数などを調整する機能を有する。
気泡調整剤としては、たとえばホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウムなどの無機粉体が例示される。これらの気泡調整剤は、樹脂粒子100重量部当り0.001~5重量部で使用されることが好ましく、0.01~3重量部で使用されることがより好ましく、更に好ましくは0.05~2重量部である。
【0035】
前記の気泡調整剤の中でも、ホウ酸亜鉛及びホウ酸マグネシウムより選択された1又は2以上のホウ酸金属塩を用いることが好ましい。ホウ酸亜鉛やホウ酸マグネシウムには種々の組成、構造の塩類があり、そのうち一種又は二種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0036】
前記ホウ酸亜鉛は、酸素と結合するホウ素および亜鉛を含む金属塩の総称である。ホウ酸亜鉛としては、メタホウ酸亜鉛〔Zn(BO〕や、塩基性ホウ酸亜鉛(ZnB・2ZnO〕等を挙げることができる。また、ホウ酸亜鉛としては、2ZnO・3B・3.5HOや、3ZnO・2B・5HO等の化学式で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0037】
前記ホウ酸マグネシウムは、酸素と結合するホウ素およびマグネシウムを含む金属塩の総称である。ホウ酸マグネシウムとしては、オルトホウ酸マグネシウム〔Mg(BO〕、二ホウ酸マグネシウム、ピロホウ酸マグネシウム〔(Mg)、又は、(2MgO・B)〕、メタホウ酸マグネシウム〔MgO・B〕、四ホウ酸三マグネシウム〔(Mg)、又は、(3MgO・2B)〕、四ホウ酸五マグネシウム〔Mg11〕、六ホウ酸マグネシウム〔MgB10〕等を挙げることができる。また、ホウ酸マグネシウムとしては、2MgO・3B・nHO(ここで、nは正の整数)、MgO・4B・3HOや、MgO・6B・18HO等の化学式で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
気泡調整剤としては、これらのホウ酸金属塩の中でも特に2ZnO・3B・3.5HOや、3ZnO・2B・5HO等の化学式で表されるホウ酸亜鉛が効果的に用いられる。
【0039】
本発明においては、前記のホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムの中でも、ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の算術平均粒子径が1μm以上5μm以下であり、かつ該ホウ酸金属塩の粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であるものが好ましい。
【0040】
ホウ酸金属塩の算術平均粒粒子径が前記範囲内であるとともに、粒度分布が前記範囲内であることにより、発泡粒子は気泡の均一性により優れたものとなり、発泡粒子の気泡のばらつきに起因する色むらがより抑制された発泡粒子成形体を得ることができる。また、気泡径を適度に拡大することができ、色むらがより抑制される。
【0041】
ホウ酸金属塩が基材樹脂中凝集することを抑制し、発泡粒子の気泡の均一性をより高める観点から、ホウ酸金属塩の平均粒子径は1.5μm以上4μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは2μm以上3μm以下である。
【0042】
また、発泡粒子の気泡ばらつきをより抑制する観点から、粒子径が5μm以上のホウ酸金属塩の粒子の個数基準の割合は15%以下であることがより好ましく、更に好ましくは12%以下である。
【0043】
ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の粒度分布の測定は次の様に行う。
レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算することにより、個数基準の粒度分布を得ることができる。そして、この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求めることができる。また、個数基準の粒度分布から粒子径5μm以上の粒子の個数割合を求めることができる。なお、前記粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0044】
本発明方法においては、基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂(A)に、所望に応じて各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、滑剤剤等が挙げられる。
【0045】
これらの添加剤は、通常、必要最小限の量で使用される。またこれらの添加剤は例えば、押出機により押出したストランドを切断する等して本発明で使用される樹脂粒子を製造する際に、押出機内で溶融した基材樹脂に添加、混練することによって樹脂粒子中に含有させることができる。
【0046】
前記樹脂粒子製造工程において得られた着色樹脂粒子は、発泡剤含浸工程において、発泡性着色樹脂粒子とされ、該発泡性着色樹脂粒子は、発泡工程において着色発泡粒子とされる。
【0047】
該発泡剤含浸工程においては、前記着色樹脂粒子を密閉容器(例えばオートクレーブ)中にて水等の分散媒に分散させるとともに、加熱下で該着色樹脂粒子に無機系物理発泡剤を含侵させて発泡性着色樹脂粒子とされる。続く発泡工程においては、該発泡性着色樹脂粒子を分散媒とともに該密閉容器内より低圧の雰囲気下に放出して発泡させることにより、着色発泡粒子が製造される(以下、発泡剤含浸と発泡を連続して行う発泡方法を「分散媒放出発泡方法」ともいう。)。該分散媒放出発泡方法は、着色発泡粒子を短時間で効率よく生産できる方法である。該密閉容器としては、通常オートクレーブが使用され、分散媒としては、通常水が使用される。
【0048】
密閉容器内で樹脂粒子を分散媒中に分散させる際には、分散剤を分散媒中に添加することができる。分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカなどの水に難溶性の無機物質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子系保護コロイド剤等が挙げられる。これらは、一種または二種以上の組合せで用いられる。
また、密閉容器内で樹脂粒子を分散媒中に分散させる際には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤等の界面活性剤を使用することができる。
【0049】
また、分散助剤を分散媒体中に添加してもよい。このような分散強化剤としては、たとえば、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等が例示される。
【0050】
通常、着色樹脂粒子100重量部当り、分散剤は0.0001~5重量部程度で使用され、分散助剤は0.001~1重量部程度で使用される。
【0051】
分散媒放出発泡方法においては、前記密閉容器内で、前記着色樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させ発泡性着色樹脂粒子とする。
密閉容器内への物理発泡剤の添加は、着色樹脂粒子を発泡させる前までに行わればよく、例えば物理発泡剤として二酸化炭素が使用される場合には、ドライアイスの形態で樹脂粒子と共に分散媒に添加してもよく、気体状態で密閉容器内に圧入してもよい。
樹脂粒子への物理発泡剤の含浸は、加熱・加圧下で行われることが好ましい。
【0052】
前記無機系物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
これらの無機系物理発泡剤は単独で用いても、或いは二種以上併用してもよい。これらの発泡剤のうち、二酸化炭素、窒素、空気を用いることが好ましく、より好ましくは、二酸化炭素である。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲内で物理発泡剤として有機物理発泡剤が含まれてもよい。
【0053】
該無機系物理発泡剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の見掛け密度等に応じて適宜選択されるものである。例えば、無機系物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素の添加量は、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部に対して好ましくは0.1質量部~30質量部、より好ましくは0.5質量部~15質量部、さらに好ましくは1質量部~10質量部である。
【0054】
分散媒放出発泡方法においては、密閉容器から、発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に、密閉容器内よりも低圧域に放出することにより、前記発泡性着色樹脂粒子を発泡させて着色発泡粒子を得る。ここで、着色樹脂粒子に気泡調整剤として前記した、特定範囲の算術平均粒子径を有し、かつ特定範囲の粒度分布を有するホウ酸金属塩を気泡調整剤として使用すると、気泡径の均一性が高く、気泡のばらつきに起因する色むらがより抑制された発泡粒子成形体を得ることができる。その理由として、ホウ酸金属塩に吸収された水性分散媒が気泡の成長に寄与し、さらに水性分散媒の気泡成長への作用を均等化させることで、気泡径の均一性の高い発泡粒子が得られると考えられる。
【0055】
分散媒放出発泡方法においては、発泡性樹脂粒子を発泡させる前に、密閉容器内で着色樹脂粒子を分散媒内で特定温度範囲内に保持して熱処理を行い、所謂高温ピークを生成させる結晶化工程を設けることが好ましい。該熱処理は、発泡剤含浸前、含浸中及び含浸後のいずれのタイミングであっても、これら2以上のタイミングに行われてもよい。この熱処理により、ポリプロピレン系樹脂固有の結晶に由来する融解ピーク(固有ピーク)と、該固有ピークよりも高温側に位置する融解ピーク(高温ピーク)を示す結晶構造を有する発泡粒子を製造することができる。
【0056】
該熱処理は、例えば次の様に行われる。着色樹脂粒子の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂の融点付近の温度で、より具体的には融点(TmI)より15℃低い温度(TmI-15℃)以上、融解終了温度(TeI)未満の範囲内の任意の温度で、樹脂粒子を十分な時間(好ましくは5分~60分程度)保持することにより、ポリプロピレン系樹脂固有の結晶の一部又は全部を融解させ、融解した結晶の一部を再結晶化させて、ラメラの厚い高ポテンシャルの結晶を生成させる。その後、該発泡温度にて、この高ポテンシャルの結晶を有する発泡性樹脂粒子を発泡させると、発泡時の冷却により融解している結晶が結晶化した結晶(固有の結晶)と高ポテンシャルの結晶とを有する結晶構造の発泡粒子を得ることができる。
【0057】
その後、発泡性樹脂粒子を低圧の雰囲気下に放出することにより発泡粒子を得ることができる。密閉容器から水性分散媒と共に発泡性樹脂粒子を放出する際の密閉容器内の内容物の温度、すなわち、発泡性樹脂粒子を発泡させる温度(発泡温度)は、ポリプロピレン系樹脂の融点をTmとしたとき、融点(TmI)より15℃低い温度(TmI-15℃)から融解終了温度より10℃高い温度(TeI+10℃)までの範囲であることが好ましい。また、密閉容器内の圧力と、放出雰囲気の圧力との差は、好ましくは1.0MPa~7.0MPa、より好ましくは1.5MPa~5.0MPaである。
【0058】
該ポリプロピレン系樹脂の融点(TmI)は前記した方法により求められる。該融解終了温度(TeI)は、JIS K7121:2012に記載の熱流束示差走査熱量測定に基づき測定される補外融解終了温度を意味する。試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度としては共に10℃/分を採用する。
【0059】
密閉容器から発泡性樹脂粒子を分散媒と共に放出する際には、二酸化炭素、窒素などで密閉容器内を加圧して、解放した密閉容器の圧力を一定に保持するか、徐々に高めるように圧力調整することが好ましい。
【0060】
特に低見掛け密度(高発泡倍率)の発泡粒子を得るに際しては、前記の方法で得られた発泡粒子を加圧可能な密閉容器に貯留し、空気などの気体を該容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子の気泡内の内圧を高める操作を行った後、該発泡粒子を該容器内から取り出し、スチームや熱風を用いて加熱することにより再度発泡させて、低見掛け密度の着色発泡粒子を得ることができる。
【0061】
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子について説明する。本発明の着色発泡粒子は例えば、前記本発明方法により得ることができる。
【0062】
該着色発泡粒子は、有彩色の顔料を0.15~8重量%含むことが好ましい。発泡粒子の中の顔料の含有量が前記範囲内であることにより、見掛け密度の小さな発泡粒子を成形した場合であっても、成形体の色がぼやけたり、色むらが発生することが抑制される。発泡粒子中の顔料の含有量が小さすぎると、発色性の低下や、色むら等が生じるおそれがある。多すぎると、型内成形時における融着不良等を生じるおそれがある。かかる観点から、該着色発泡粒子中の顔料の含有量は、0.5~5重量%が好ましく、より好ましくは1~4重量%である。
【0063】
該着色発泡粒子は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)を基材樹脂とし、前記有彩色の顔料を含む着色マスターバッチを用いて製造されたものであることにより、赤色や青色などの有彩色に着色されたものである。該顔料として、前記したように、赤色有機顔料を用いることが好ましいことから、該発泡粒子は、赤色に着色されたポリプロピレン系樹脂着色発泡粒子であることが好ましい。
【0064】
発泡粒子の見掛け密度は、15~300kg/mである。該見掛け密度が小さすぎると、機械的強度が低下して包装材や緩衝材等の用途に好適に使用できなくなるおそれがある。該見掛け密度が大きすぎると、軽量性や緩衝性が損なわれるおそれがある。前記観点から、発泡粒子の見掛け密度は18~200kg/mであることが好ましく、より好ましくは20~150kg/mである。
【0065】
発泡粒子の見掛け密度は、次のようにして測定される。先ず、発泡粒子を相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置して発泡粒子の状態調節を行う。次いで、温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子(発泡粒子の質量W1)を前記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の体積V1[L]を測定する。発泡粒子の質量W1[g]を体積V1[L]で除し(W1/V1)、単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度[kg/m]を求めることができる。
【0066】
該着色発泡粒子においては、その最表面に位置する気泡の平均気泡径が50~200μmである。該平均気泡径が前記範囲内であると、発泡粒子は融着性に優れるとともに、色むらの抑制された成形体を成形可能な発泡粒子となる。特に、該平均気泡径が小さすぎると、白っぽい色に見える傾向にあるため、得られる発泡粒子成形体に色むらが発生しやすいおそれがある。また、成形性が損なわれるおそれがある。かかる観点から、該平均気泡径は、80μm以上180μm以下であることが好ましく、100μm以上160μm以下であることがより好ましい。
【0067】
発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径は次のようにして求められる。まず、発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡などを用いてその切断面の写真を撮影する。得られた断面写真において、略円形の発泡粒子の円周の長さCを、該発泡粒子の円周に接する気泡の数nで除した値を1つの発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とする。この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均した値を、本明細書における発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とする。
【0068】
本発明の発泡粒子全体の気泡径(D)の平均値は50μm以上200μm以下であることが好ましく、55μm以上150μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは60μm以上120μm以下である。該発泡粒子全体の気泡径(D)の平均値が前記範囲内であると、発泡粒子は成形性、機械強度等に優れるものとなる。
【0069】
発泡粒子の気泡径の平均値は次のようにして求められる。発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡などを用いてその切断面の写真を撮影する。得られた断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引く。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除した値を1つの発泡粒子の平均気泡径とする。この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均した値を、本明細書における発泡粒子の平均気泡径とする。
【0070】
該着色発泡粒子の平均重量は、好ましくは0.5~10mg/個、より好ましくは1~5mg/個である。該平均重量が前記範囲内であると、発泡粒子は成形性により優れるものとなる。
【0071】
本発明の着色発泡粒子は、前記した、ホウ酸亜鉛及びホウ酸マグネシウムより選択されるホウ酸金属塩を含むことが好ましい。該着色発泡粒子の基材樹脂がホウ酸金属塩を含有していると、ホウ酸金属塩の気泡調整剤としての働きにより、得られた着色発泡粒子は、気泡径が適度に拡大されるとともに、気泡径がより均一なものとなり、色むらがより抑制された成形体が成形可能なものとなる。前記観点から、該ホウ酸金属塩においては、その粒子中の個数基準の算術平均粒子径は1μm以上5μm以下であることが好ましく、かつその粒子中の粒子径5μm以上の粒子の個数割合が20%以下であることが好ましい。なお、前記粒子径は前記ホウ酸金属塩の一次粒子の粒子径を意味する。
【0072】
発泡粒子の気泡径がより均一なものとするために、ホウ酸金属塩の平均粒子径は1.5μm以上4μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは好ましくは2μm以上3μm以下である。
さらに、同様の観点から、粒子径が5μm以上のホウ酸金属塩の粒子の個数基準の割合は15%以下であることがより好ましく、更に好ましくは12%以下である。
【0073】
ホウ酸金属塩の粒子の個数基準の粒度分布の測定は、前記の様に行う。
【0074】
該ホウ酸金属塩の着色発泡粒子中の含有量は、発泡粒子100重量部当たり0.001~5重量部であることが好ましい。発泡粒子中のホウ酸金属塩の含有量が前記範囲内であると、気泡調整剤としてより効果的に作用するとともに、着色発泡粒子がより均一な気泡構造を有するものとなる。前記観点から、該ホウ酸金属塩の着色発泡粒子中の含有量は、発泡粒子100重量部当たり0.01~3重量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.05~2重量部である。
【0075】
本発明の着色発泡粒子は、DSC曲線において、所謂高温ピークを有するものであることが好ましい。
即ち、該発泡粒子は、JIS K7122:2012に準拠し、発泡粒子1~3mgを測定サンプルとし、10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱して得られるDSC曲線において、ポリプロピレン系樹脂に固有の融解ピーク(固有ピーク)と、固有ピークよりも高温側に位置する融解ピーク(高温ピーク)とが現れる結晶構造を有することが好ましい。
【0076】
該着色発泡粒子の高温ピークの融解熱量(高温ピーク熱量)は、成形性、機械強度等の観点から、5~40J/gであることが好ましく、7~30J/gであることがより好ましく、更に好ましくは10~20J/gである。
【0077】
また、前記高温ピーク熱量と、DSC曲線の全融解ピークの融解熱量(全融解熱量)の比(高温ピーク熱量/全融解熱量)は、好ましくは0.05~0.3、より好ましくは0.1~0.25、更に好ましくは0.15~0.2である。高温ピーク熱量と全融解熱量との比をこのような範囲にすることで、高温ピークとして表れる二次結晶の存在により、発泡粒子は特に機械的強度に優れると共に、型内成形性に優れるものとなる。
発泡粒子の全融解熱量は基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂が有する結晶の量により定まるものであり、全融解熱量に対する高温ピーク熱量の比は、発泡粒子の製造時に前記した結晶化工程の温度条件及び保持時間を調整することにより制御することができる。
【0078】
DSC曲線における全融解熱量、高温ピーク熱量は、従来公知の方法により求めることができる。具体的には、実施例に記載した方法により求めることができる。
【0079】
本発明の着色発泡粒子成形体は、前記着色発泡粒子を用いて型内成形することにより、得ることができる。
即ち、該着色発泡粒子を成形型内に充填してスチームなどの加熱媒体で加熱することにより、着色発泡粒子を二次発泡させると共に相互に融着させ、成形型どおりの所望の形状に形成された着色発泡粒子成形体を得ることができる。そして、得られた着色発泡粒子成形体は、有色であって、色むらの発生が抑制されているものとなる。色むらの発生は、有彩色に着色された発泡粒子成形体において特に顕著となるが、本発明によって得られた着色発泡粒子からなる着色発泡粒子成形体では、発泡粒子成形体が有彩色に着色されたものであっても色むらの発生が効果的に抑制されている。
【実施例1】
【0080】
次に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0081】
ポリプロピレン系樹脂(A)として、次に示すものを用いた。
略称「樹脂1」:エチレン-プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量3.1質量%、融点(TmI)142℃、メルトフローレイト(I)8.0g/10min、曲げ弾性率980MPa)
【0082】
(ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(TmI))
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987に準拠して求めた。具体的には、ペレット状の基材樹脂2mgを試験片としてJIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる吸熱ピークの頂点温度を基材樹脂の融点とした。なお、測定装置は、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
【0083】
(ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(I))
ポリプロピレン系樹脂及び着色マスターバッチのメルトフローレイトは、温度190℃、荷重2.16kgの条件でJIS K7210-1:2014に準拠して測定した。
【0084】
(ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率)
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に準拠して求めた。試験片は、発泡粒子を230℃でヒートプレスして4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用した。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとした。
【0085】
有彩色の顔料を含む着色マスターバッチとして、表1に示す赤色顔料マスターバッチを用いた。着色マスターバッチのメルトフローレイト(II)及び融点(TmII)は前記ポリプロピレン系樹脂(A)と同様の方法により測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
ホウ酸金属塩として、表2に示すホウ酸亜鉛(ZnB)を用いた。
【0088】
【表2】
【0089】
(ホウ酸金属塩の粒度分布)
前記方法に基づき、Microtrac社製MT3000を用いて、ホウ酸金属塩の粒度分布を測定した。水100gにホウ酸金属塩1g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1%水溶液1gを加え、超音波振とう機を用いて5分間分散処理を行ったものを測定用サンプルとして用いた。サンプル屈折率を1.81とした。
【0090】
物理発泡剤として、二酸化炭素を用いた。
【0091】
実施例1~3、及び比較例1、2
(気泡調整剤マスターバッチの製造)
樹脂1と、表2に示す種類のホウ酸金属塩とを加圧ニーダーによって溶融混練し、ホウ酸金属塩濃度10質量%の気泡調整剤マスターバッチを製造した。
【0092】
(着色樹脂粒子の製造)
表3に示す配合量の樹脂1と、表3に示す配合量の気泡調整剤マスターバッチと、表3に示す配合量の着色マスターバッチとを押出機に供給し、押出機内でこれらを溶融混練して溶融樹脂とし、該溶融樹脂をダイを通してストランド状に押し出し、水中で冷却した後、ペレタイザーにて切断し、1個当たりの平均質量が1.3mgの着色樹脂粒子を得た。
【0093】
(着色発泡粒子の製造)
内容積2mのオートクレーブに、分散媒としての水1050Lを仕込み、分散媒中に500kgの前記樹脂粒子を分散させた。さらに、分散媒中に分散剤としてのカオリン2kg(樹脂粒子100質量部に対して0.4質量部)、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30g(0.006質量部)、分散助剤として硫酸アルミニウム65g(0.013質量部)を添加した。オートクレーブ中の内容物を攪拌しながら、表4に示す発泡温度まで加熱しつつ、表4に示すオートクレーブ内圧力となるまでオートクレーブ中に物理発泡剤としての二酸化炭素を圧入した。その温度で10分間保持した後に、加圧した二酸化炭素により表4に記載のオートクレーブ内圧力を保持した状態で、オートクレーブの一端を開放して、樹脂粒子を分散媒と共に、大気圧下に放出して樹脂粒子を発泡せしめて赤色の発泡粒子を得た。発泡させる際のオートクレーブ中の内容物の温度を発泡温度として表4中に示した。得られた着色発泡粒子を遠心分離機を用いて脱水し、その後、大気圧の雰囲気下で養生することにより、着色発泡粒子の気泡内の圧力を回復させた。
【0094】
得られた着色発泡粒子の見掛け密度、発泡粒子の全体平均気泡径(D)、最表面に位置する気泡の平均気泡径(Ds)、高温ピーク熱量及び前融解熱量を測定した。結果を表4に示す。なお、発泡粒子を23℃、相対湿度50%、1atmの雰囲気下に2日間載置することにより、発泡粒子の状態調節を行ってから、これらの測定を行った。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
(着色発泡粒子の見掛け密度の測定)
200mLのメスシリンダーに23℃の水100mLを入れ、かさ体積約50mLの発泡粒子を、その質量(W1)を測定してから、メスシリンダー内の水中に金網を使用して沈めた。金網の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の体積V1[L]を測定した。この操作を異なる発泡粒子サンプルを対象として5回行い、それぞれの測定値からそれぞれの発泡粒子サンプルの見掛け密度を求め、これらの算術平均値を発泡粒子の見掛け密度(kg/m)とした。
【0098】
(着色発泡粒子全体の平均気泡径(D)の測定)
発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその切断面の写真を撮影した。得られた断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引いた。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除した値を1つの発泡粒子の平均気泡径とした。この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均した値を、本明細書における発泡粒子の平均気泡径とした。
【0099】
(着色発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径(Ds)の測定)
発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径は次のようにして求めた。まず、発泡粒子の中心部分を通るように発泡粒子を略二分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその切断面の写真を撮影した。得られた断面写真において、略円形の発泡粒子の円周の長さCを、該発泡粒子の円周に接する気泡の数nで除した値を1つの発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とした。この操作を無作為に抽出した10個の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた値を相加平均した値を、本明細書における発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径とした。
【0100】
(着色発泡粒子の高温ピーク熱量、全融解熱量の測定)
発泡粒子約3mgを採取し、示差熱走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC .Q1000)によって23℃から200℃まで10℃/分で昇温測定を行い、1つ以上の融解ピークを有するDSC曲線を得る。次の説明における樹脂固有ピークをA、それより高温側に現れる高温ピークをBとする。該DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α-β)を引く。なお、前記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。次に前記の樹脂固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をδとする。樹脂固有ピークAの面積は、DSC曲線の樹脂固有ピークA部分の曲線と、線分(α-δ)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを樹脂固有ピークの融解熱量とした。
高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを高温ピーク熱量とした。
全融解ピークの面積は、DSC曲線の樹脂固有ピークA部分の曲線と高温ピークB部分の曲線と、線分(α-β)とによって囲まれる部分の面積であり、これを全融解熱量とした。
【0101】
(着色発泡粒子成形体の製造)
成形型として、縦方向寸法300mm×横方向寸法250mm×厚み方向寸法25mmの内寸法を持つ直方体状の成形キャビティを有する金型を用いた。
金型を完全に閉じた状態から5mm開いた状態で、成形キャビティ内に発泡粒子を充填し、充填完了後、金型を完全に閉じた(クラッキング量5mm、20%)。その後、0.20~0.38MPa(G)のスチームを成形キャビティ内に供給して発泡粒子を加熱して、発泡粒子を二次発泡させると共に融着させることで着色発泡粒子成形体を得た。金型内の着色発泡粒子成形体の面圧が0.04MPa(G)となるまで金型を水冷し、金型を開いて、金型から着色発泡粒子成形体を取り出した。得られた着色発泡粒子成形体を大気圧、温度80℃の雰囲気下で12時間養生した。
【0102】
(着色発泡粒子の型内成形性(成形可能範囲)の評価)
前記(着色発泡粒子成形体の製造)の方法で、成形スチーム圧を0.20~0.38MPaの間で0.02MPa変化させて発泡粒子成形体を成形し、得られた成形体の融着性、表面外観(間隙=ボイドの度合い)、回復性(型内成形後の膨張または収縮の回復性)の項目について、型内成形性を評価し、下記で示した基準に達したものを合格とし、全ての項目で合格となったスチーム圧を成形可能なスチーム圧とした。成形可能なスチーム圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、成形可能範囲が広く、好適である。
なお、表4に示した成形体の評価は、成形可能範囲の下限成形圧で成形した成形体で評価した。
【0103】
(融着性)
発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、前記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を5回行い、それぞれの材料破壊率を求め、それらを算術平均した材料破壊率が90%以上であるときを合格とした。
【0104】
(表面外観)
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの正方形を描き、該正方形の一の角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、ボイドの数が5個未満であり、かつ表面に凹凸がないときを合格とした。
【0105】
(回復性)
型内成形で用いた縦300mm、横250mm、厚み25mmの平板形状の金型の寸法に対応する発泡粒子成形体における四隅部付近(角より中心方向に10mm内側)の厚みと中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みをそれぞれ計測した。次いで、四隅部付近のうち最も厚みの厚い箇所の厚みに対する中心部の厚みの比(%)を算出し、比が95%以上であるときを合格とした。
【0106】
成形体の収縮率は、以下の方法で測定した。なお、発泡粒子成形体の収縮率は、養生後の発泡粒子成形体の長手方向の寸法を測定し、成形金型の長手方向の寸法に対する、成形金型の長手方向の寸法と発泡粒子成形体の長手方向の寸法との差の比率から求めた。
【0107】
得られた着色発泡粒子成形体の色の鮮やかさを次の基準で評価した。評価結果を表4に示す。目視にて、発泡粒子成形体の色が薄く、鮮やかでないと感じる(1点)から色が濃く、鮮やかに感じる(5点)までの5段階評価で色むらの評価を行い、5人の観者の評価の平均値をもとに以下の基準で発泡粒子成形体の色むらを評価した。
◎:4点以上
〇:3.5点以上4点未満
△:3点以上3.5点未満
×:3点未満
【0108】
得られた着色発泡粒子成形体の色ムラを次の基準で評価した。評価結果を表4に示す。目視にて、発泡粒子成形体の板面に著しい色むらがある(1点)から色むらがない(5点)までの5段階評価で色むらの評価を行い、5人の観者の評価の平均値をもとに以下の基準で発泡粒子成形体の色むらを評価した。
◎:4点以上
〇:3.5点以上4点未満
△:3点以上3.5点未満
×:3点未満
【0109】
実施例1~3の発泡粒子は、表3に示したように、顔料濃度及びメルトフローレイトが前記特定の範囲内である着色マスターバッチ(略称:着色MB)を用いて製造されており、表4に示したように、色鮮やかで、色むらの抑制された赤色の発泡粒子成形体を成形可能なものであった。特に、実施例1の発泡粒子は、表3に示したように、気泡調整剤として個数基準の平均粒子径及び粒径5μm以上の粒子の個数割合が前記特定のホウ酸亜鉛を用いて製造されており、成形体の色むらがより一層抑制されたものであった。
【0110】
さらに、表4に示したように、実施例1~3の発泡粒子は、比較例1、2の発泡粒子と比較して成形可能範囲が低圧にシフトしているとともに、成形可能範囲が広いものであった。本発明の発泡粒子がこのような成形性に優れるものとなる理由は明らかではないが、発泡粒子の最表面に位置する気泡の平均気泡径が前記好ましい範囲に調整されたためであると考えられる。
【0111】
一方、比較例1の発泡粒子は、表3に示すように、顔料濃度の低い着色マスターバッチを用いて製造されており、表4に示すように、成形体には色むらが観察された。また、比較例2において、表3に示すように、顔料マスターバッチの配合量を増加させて発泡粒子を製造したが、表4に示すように、成形体の色むらは改善されなかった。これは、マスターバッチ中の顔料濃度が低すぎて発泡粒子中で顔料が微分散しすぎたこと、発泡粒子の最表面に位置する気泡の気泡径が微細化したこと等が原因であると考えられる。