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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】水栓ヘッド及び水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/08 20060101AFI20230615BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20230615BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20230615BHJP
   F16K 27/00 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
E03C1/08
E03C1/042 B
B05B1/18
F16K27/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019156326
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032028
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184941(JP,A)
【文献】特開2009-121205(JP,A)
【文献】特開2006-193923(JP,A)
【文献】特開平11-001946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1通水部材と、
前記第1通水部材の径方向外側から取り付けられて前記第1通水部材と共に弁機構を形成する第2通水部材と、
前記弁機構を操作する押しボタンユニットとを備え、水栓に取り付けられる水栓ヘッドであって、
前記第1通水部材には、当該第1通水部材の軸方向に沿って手前側からピン部材が取り付けられ、前記ピン部材が前記第2通水部材に係合することによって前記第1通水部材と前記第2通水部材は前記第1通水部材の径方向に分離不能に接続されており、
前記押しボタンユニットは、当該押しボタンユニットを押し込んだ際に、位置ずれしたピン部材を押圧して元の位置に戻す押圧部を有することを特徴とする水栓ヘッド。
【請求項2】
前記押しボタンユニットを押し込む方向と、前記ピン部材を取り付ける方向とが同一方向である請求項1に記載の水栓ヘッド。
【請求項3】
前記押しボタンユニットは、ボタン本体とガイド部材とを備え、
前記押圧部は、前記ボタン本体に一体に形成されている請求項1又は2に記載の水栓ヘッド。
【請求項4】
前記ピン部材は、一対の腕部と、前記腕部同士を接続する接続部とを備え、
前記押圧部は、前記接続部を押圧する請求項1~3のいずれか一項に記載の水栓ヘッド。
【請求項5】
前記第2通水部材にはシャワーフェイスが接続され、
前記弁機構によって、前記シャワーフェイスからの吐出形態が切り替えられる請求項1~4のいずれか一項に記載の水栓ヘッド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された水栓ヘッドを備える水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓ヘッド及び水栓ヘッドを備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水栓ヘッドについて記載している。
図11に示すように、水栓ヘッド90は、筒状の第1通水部材91と、第1通水部材91の径方向外側から第1通水部材91に取り付けられる第2通水部材92と、押しボタンユニット93とを備えている。第1通水部材91を流通する水は、第2通水部材92を流通して吐出される。第1通水部材91の内部には弁機構94が形成されており、押しボタンユニット93を操作することによって弁機構94を操作することができるように構成されている。弁機構94を操作することにより、第2通水部材92内の水の流路を切り替えている。第2通水部材92は、ビス(図示省略)を用いて第1通水部材91に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-121205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第2通水部材92を第1通水部材91に取り付ける際の作業性を向上させるために、第1通水部材91と第2通水部材92を接続位置に配置して第1通水部材91に軸方向手前側からピン部材(図示省略)を取り付けることが行われている。第1通水部材91に取り付けられたピン部材が第2通水部材92に係合することによって、第1通水部材91と第2通水部材92は第1通水部材91の径方向に分離不能に接続される。しかし、水栓に加わる振動等によって、経時的にピン部材の位置がずれる虞があった。ピン部材の位置がずれると、第1通水部材91と第2通水部材92の接続状態が低下する虞があるという課題を有している。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1通水部材と第2通水部材の接続状態が良好な水栓ヘッド及び水栓ヘッドを備える水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための水栓ヘッドは、筒状の第1通水部材と、前記第1通水部材の径方向外側から取り付けられて前記第1通水部材と共に弁機構を形成する第2通水部材と、前記弁機構を操作する押しボタンユニットとを備え、水栓に取り付けられる水栓ヘッドであって、前記第1通水部材には、当該第1通水部材の軸方向に沿って手前側からピン部材が取り付けられ、前記ピン部材が前記第2通水部材に係合することによって前記第1通水部材と前記第2通水部材は前記第1通水部材の径方向に分離不能に接続されており、前記押しボタンユニットは、当該押しボタンユニットを押し込んだ際に、位置ずれしたピン部材を押圧して元の位置に戻す押圧部を有することを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、押しボタンユニットを押し込んだ際に、位置ずれしたピン部材を押圧して元の位置に戻す押圧部を有することにより、経時的なピン部材の位置ずれを抑制することができる。そのため、第1通水部材と第2通水部材の接続状態を良好に保つことができる。
【0008】
上記水栓ヘッドについて、前記押しボタンユニットを押し込む方向と、前記ピン部材を取り付ける方向とが同一方向であることが好ましい。この構成によれば、押しボタンユニットを押し込む動作によって、位置ずれしたピン部材を効率良く押圧して元の位置に戻すことができる。
【0009】
上記水栓ヘッドについて、前記押しボタンユニットは、ボタン本体とガイド部材とを備え、前記押圧部は、前記ボタン本体に一体に形成されていることが好ましい。この構成によれば、ボタン本体に連動して押圧部をより正確に移動させることができる。そのため、押しボタンユニットを押し込んだ際に、より確実に位置ずれしたピン部材を押圧することができる。
【0010】
上記水栓ヘッドについて、前記ピン部材は、一対の腕部と、前記腕部同士を接続する接続部とを備え、前記押圧部は、前記接続部を押圧することが好ましい。この構成によれば、ピン部材をバランス良く押圧することができる。
【0011】
上記水栓ヘッドについて、前記第2通水部材にはシャワーフェイスが接続され、前記弁機構によって、前記シャワーフェイスからの吐出形態が切り替えられることが好ましい。この構成によれば、第2通水部材を流通した水をシャワーフェイスから好適に吐出させることができる。
【0012】
上記水栓ヘッドを備える水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記水栓ヘッドの効果を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水栓ヘッドによれば、第1通水部材と第2通水部材の接続状態を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】水栓の斜視図。
図2】水栓ヘッドの分解斜視図。
図3】水栓ヘッドの別角度の分解斜視図。
図4】水栓ヘッドの断面図。
図5】(a)~(c)は第1通水部材、第2通水部材、及び、ピン部材の組み付け手順を示す斜視図。
図6】(a)~(c)は第1通水部材、第2通水部材、及び、ピン部材の組み付け手順を示す正面図。
図7】(a)~(c)は押しボタンユニットの組み付け手順を示す斜視図。
図8】(a)、(b)は、押圧部の動作を示す部分断面図。
図9】(a)、(b)は、変更例の水栓ヘッドの組み付け手順を示す斜視図、(c)は変更例の押圧部材を示す側面図。
図10】(a)~(d)は、変更例のピン部材の斜視図。
図11】従来技術の水栓ヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
水栓ヘッドの実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタである壁部11に設置されている。水栓10は、壁部11上に配置される筒状の水栓本体12と、水栓本体12の上部に取り付けられる操作レバー13と、水栓本体12の斜め上方に突出した状態で取り付けられる水栓ヘッド20とを備えており、シングルレバー水栓として構成されている。
【0016】
水栓本体12の内部には、いずれも図示しない給水路、給湯路、吐水路、及び、弁機構を備える。給水路を流通した水と給湯路を流通した湯とが弁機構で混合されて、吐水路を流通して水栓ヘッド20から吐出される。操作レバー13を操作することにより、弁機構を操作して水栓ヘッド20からの吐止水、湯水の切り替え、及び、湯水の混合の調節を行うことができるように構成されている。なお、説明の便宜上、水栓ヘッド20の上下、左右、前後方向を図1に示す方向として規定する。
【0017】
水栓ヘッド20について説明する。
図2、3に示すように、水栓ヘッド20は、円筒状のカバー部材30と、カバー部材30の内部に配置される筒状の第1通水部材40と、同じくカバー部材30の内部に配置される円筒状の第2通水部材50とを備えている。また、水栓ヘッド20は、第1通水部材40の軸方向手前側である前側に取り付けられる押しボタンユニット60と、第1通水部材40の軸方向奥側である後側に取り付けられてカバー部材30の内部に配置されるアダプタ70と、第2通水部材50の下側に取り付けられるシャワーフェイス80とを備えている。
【0018】
カバー部材30の横断面は、矩形状の四隅が曲線状に面取りされた略円形の形状を有している。すなわち、本実施形態における「円筒状」には、横断面が円形状である態様以外に、矩形状の四隅が曲線状に面取りされた形状、楕円形、オーバル形状等、円形に近い形状が含まれるものとする。
【0019】
図3に示すように、カバー部材30は、前寄り下側に開口(以下、「下側開口」ともいう。)31を有している。下側開口31の周囲には下方に延びる周壁32が形成されており、周壁32の内側にネジ溝33が形成されている。
【0020】
第1通水部材40の側壁41は角筒状に構成され、第1通水部材40の後側の端部40aにおいて、側壁41は円筒状に構成されている。第1通水部材40の中央部における下側には開口部(以下、単に「開口部」ともいう。)43が形成されている。第1通水部材40は、前側から側壁41に外嵌されたスライド部材44を有している。
【0021】
図4に示すように、第1通水部材40の内部には通水路としての第1通水路45が形成されている。第1通水路45は、第1通水部材40の後側の端部40aから前側に向かって延び、第1通水部材40の中央部において開口部43に連通している。
【0022】
図3に示すように、第2通水部材50は、カバー部材30の下側開口31からカバー部材30内に挿入されて、第1通水部材40の径方向外側である下側から第1通水部材40の開口部43に取り付けられる。
【0023】
図4に示すように、第2通水部材50の内部には通水路としての第2通水路51が形成されている。第2通水路51は、第2通水部材50の軸方向である上下方向に沿って延びており、第1通水路45に連通している。
【0024】
図2、3に示すように、押しボタンユニット60は、第1通水部材40のスライド部材44の前側に外嵌した状態で第1通水部材40に取り付けられている。
図1に示すように、第1通水部材40に押しボタンユニット60が取り付けられた状態で、押しボタンユニット60は、カバー部材30の前側の開口(以下、「前側開口」ともいう。)34から露出した状態となっている。
【0025】
図3に示すように、シャワーフェイス80は有底筒状に構成され、外周にネジ溝81が形成されている。このネジ溝81がカバー部材30の下側開口31における周壁32のネジ溝33に螺合した状態で、シャワーフェイス80はカバー部材30に接続されている。この状態で、シャワーフェイス80は第2通水部材50の下側に当接しており、第2通水部材50の下側に取り付けられた状態となる。
【0026】
水栓本体12の吐水路には、ホース(図示省略)が接続されており、このホースの一端がアダプタ70に接続されている。吐水路からホース内を流通した水がアダプタ70を経由して第1通水路45及び第2通水路51を流通し、シャワーフェイス80から吐出されるように構成されている。
【0027】
後述のように、第1通水部材40と第2通水部材50とがピン部材21で接続されることによって、水栓ヘッド20内に弁機構が形成されている。押しボタンユニット60を操作することにより、水栓ヘッド20内の弁機構を操作して、第2通水路51の流路を切り替えている。第2通水路51の流路を切り替えることによって、シャワーフェイス80からの吐出形態を切り替えることができるように構成されている。
【0028】
第1通水部材40と第2通水部材50の接続機構について説明する。
図5、6では、便宜上、第1通水部材40、第2通水部材50、及び、ピン部材21のみを示し、水栓ヘッド20のその他の部材を省略している。
【0029】
図5(a)に示すように、第1通水部材40の開口部43はオーバル形状を有しており、開口部43の周囲に周壁46が形成されている。開口部43の周囲における周壁46よりも下側には、下側に突出するとともに、左右両側に突出した突出壁47が形成されている。
【0030】
図6(a)に示すように、第1通水部材40の前後方向から見て、突出壁47の先端部47aは、左右方向に延びており、先端部47aの上側には、前後方向に延びる空間(以下、「第1空間」ともいう。)S1を有している。
【0031】
第2通水部材50の上下両端部の外周には、Oリング52が配置されている。第2通水部材50の外周における上端部側のOリング52よりも下側の位置には、第2通水部材50の軸心を挟んだ両側に貫通孔53が2個形成されている。
【0032】
図6(a)に示すように、各貫通孔53は、第2通水部材50の軸方向に直交する方向である前後方向に延びるように形成されており、各貫通孔53の内部に空間(以下、「第2空間」ともいう。)S2を有している。
【0033】
図5(b)、6(b)に示すように、第2通水部材50の上端部を、第1通水部材40の開口部43に挿入する。第2通水部材50の上端部側のOリング52が、第1通水部材40の周壁46の内面に当接した状態で、第1通水部材40と第2通水部材50とは互いに接続位置に配置された状態となる。
【0034】
図6(b)に示すように、第1通水部材40と第2通水部材50とが互いに接続位置に配置された状態で、第1通水部材40の第1空間S1と、第2通水部材50の第2空間S2とが、前後方向に重なった状態となる。
【0035】
図5(c)、6(c)に示すように、第1通水部材40の軸方向に沿って手前側からピン部材21を取り付ける。ピン部材21は、横断面円形状の棒材で構成されている。ピン部材21は、一対の腕部22と、一対の腕部22同士を接続する接続部23とを備え、全体としてコの字状に構成されている。ピン部材21の腕部22を、第1通水部材40の第1空間S1と第2通水部材50の第2空間S2の両方に位置するように挿入する。具体的には、ピン部材21の腕部22を、第1通水部材40の突出壁47における先端部47aの上側に挿入するとともに、第2通水部材50の貫通孔53に挿入する。これにより、ピン部材21の腕部22が、第1通水部材40の突出壁47と第2通水部材50の貫通孔53の両方に係合した状態となるため、第1通水部材40と第2通水部材50は第1通水部材40の径方向に分離不能に接続された状態となる。
【0036】
ピン部材21の材質は特に限定されないが、金属製であると強度が高く、耐久性に優れるため好ましい。
押しボタンユニット60の取り付け機構について説明する。
【0037】
図2、3に示すように、第1通水部材40が有するスライド部材44は、角筒状の本体部44aと、本体部44aに連続して形成された天壁部44bとを備える。スライド部材44の本体部44aは、第1通水部材40の前側に外嵌した状態で取り付けられる。この状態で、スライド部材44の天壁部44bが、第1通水部材40の側壁41の上側を部分的に覆った状態となる。
【0038】
押しボタンユニット60は、スライド部材44の本体部44aに取り付けられている。押しボタンユニット60の操作として押しボタンユニット60を押し込むことによって、スライド部材44を第1通水部材40の軸方向にスライドさせることができるように構成されている。押しボタンユニット60を押し込む方向である第1通水部材40の軸方向は、ピン部材21の腕部22を挿入して取り付ける方向と同一方向となっている。
【0039】
図7(a)に示すように、押しボタンユニット60は、有底筒状のボタン本体61と、環状のガイド部材62とを備える。ガイド部材62は、環状部62aと、環状部62aの左右両側部から前方に向かって延びる板状の係止片62bと、環状部62aの下部から前方に向かって延びる板状の係止片62cとを有している。環状部62aは、スライド部材44の角筒状の本体部44aに外嵌することができるように構成されている。
【0040】
ボタン本体61は、底壁61aと、底壁61aの外縁から底壁61aの厚さ方向に延びる周壁61bとを有している。周壁61bの外径は、ガイド部材62の環状部62aの外径よりも若干小さく構成されている。ボタン本体61の周壁61bには、ボタン本体61とガイド部材62とが組み付けられた際に、ガイド部材62の係止片62b、62cが係止する被係止部61cが形成されている。具体的には、被係止部61cは、周壁61bの内面において、周壁61bの内側に突出するとともに、周壁61bの軸方向に延びる凸部で構成されている。ボタン本体61とガイド部材62とが組み付けられた際に、周壁61bの内側においてガイド部材62の係止片62b、62cの両側に一対の被係止部61cが位置するように構成されている。言い換えれば、ガイド部材62の係止片62b、62cは、両側を一対の被係止部61cで挟み込まれた状態で係止されている。ここで、係止片62b、62cが一対の被係止部61cで挟み込まれた状態とは、一対の被係止部61cで係止片62b、62cが挟持された状態のみを意味するのではなく、一対の被係止部61cの間に所定の隙間を有した状態で係止片62b、62cが配置された態様を含むものとする。
【0041】
ボタン本体61は、底壁61aから底壁61aの厚さ方向に突出した板状の突出部61dを有している。突出部61dは、ボタン本体61に一体に形成されている。突出部61dの先端部には、突出部61dの厚さ方向である上側に突出した爪部61eを有する。後述のように、ボタン本体61の突出部61dによって押圧部が構成されている。
【0042】
図7(b)に示すように、ガイド部材62の係止片62b、62cをボタン本体61の被係止部61cに係止させた状態で、ボタン本体61とガイド部材62とを組み付ける。
図7(c)に示すように、ガイド部材62の環状部62aの後側を、第1通水部材40が有するスライド部材44の角筒状の本体部44aに外嵌することによって、押しボタンユニット60をスライド部材44に取り付ける。ボタン本体61の突出部61dの爪部61eが、スライド部材44の角筒状の本体部44aの後側の端部44c(図3参照)に係合することにより、押しボタンユニット60は、スライド部材44からの脱離が抑制された状態となる。
【0043】
図4に示すように、水栓ヘッド20を構成する各部材が組み付けられた状態で、ボタン本体61の前側部分がカバー部材30の前側開口34から露出した状態となる。ボタン本体61の周壁61bの外径が、ガイド部材62の環状部62aの外径よりも若干小さく構成されていることにより、押しボタンユニット60を押し込んだ際に、カバー部材30とボタン本体61の周壁61bとの干渉が抑制されている。
【0044】
水栓ヘッド20の弁機構について説明する。
図4に示すように、第1通水部材40の第1通水路45は、第1通水部材40の後側の端部40aから軸方向に沿って中央部まで延び、第1通水部材40の開口部43に連通している。第1通水部材40の中央部において、第1通水路45内には柱状の弁部材48が第1通水部材40の軸方向に沿って2個並設されている。弁部材48の先端側48aは、第1通水路45の内部において第1通水部材40の下側に向かって突出している。弁部材48の基端側48bは、第1通水部材40の側壁41を貫通して上側に突出し、スライド部材44の天壁部44bに接続されている。スライド部材44の天壁部44bと弁部材48の基端側48bとの接続箇所にカム機構が設けられていることにより、スライド部材44の軸方向の移動を、弁部材48の上下方向の移動に変換することができるように構成されている。
【0045】
押しボタンユニット60は、スプリング及びカム(いずれも図示省略)の作用によるプッシュオン・プッシュオフタイプであり、1回目の押しボタンユニット60に対する押し込みにより、同押しボタンユニット60は後退してその位置で保持される。また、2回目の押しボタンユニット60に対する押し込みにより、同押しボタンユニット60は突出位置に復帰するように構成されている。押しボタンユニット60を操作してスライド部材44を第1通水部材40の軸方向にスライドさせると、弁部材48における第1通水路45内での突出高さを交互に切り替えることができるように構成されている。
【0046】
図2に示すように、第2通水部材50は、円筒状の外側壁54を有している。第2通水部材50の軸方向の上側において、外側壁54の内側は空洞になっている。第2通水部材50の軸方向の中央部には径方向に延びる仕切壁55が設けられている。仕切壁55には円形の貫通孔55aが2個設けられている。
【0047】
図3に示すように、第2通水部材50の軸方向の下側には、仕切壁55から下側に延びる円筒状の内側壁56が設けられている。内側壁56と外側壁54は、一定の間隔を置いて形成されており、第2通水部材50の軸方向の下側は二重構造になっている。第2通水部材50の一方の貫通孔55aを流通した水は、第2通水部材50の外側壁54と内側壁56との間を流通してシャワーフェイス80の外周側のシャワー吐水孔80aに連通するように構成されている。第2通水部材50の他方の貫通孔55aを流通した水は、第2通水部材50の内側壁56の内側を流通してシャワーフェイス80の中央側のストレート吐水孔80bに連通するように構成されている。すなわち、第2通水部材50の第2通水路51は、シャワーフェイス80のシャワー吐水孔80aに連通する流路と、シャワーフェイス80のストレート吐水孔80bに連通する流路の2つの流路を有している。
【0048】
図2、3に示すように、第2通水部材50の仕切壁55の上部には、パッキン57が配置されている。パッキン57には、第2通水部材50の貫通孔55aと略同じ位置となるように貫通孔57aが形成されている。
【0049】
図4に示すように、第1通水路45内において、弁部材48の先端側48aが第2通水路51内のパッキン57に当接するように構成されている。具体的には、押しボタンユニット60を操作してスライド部材44をスライドさせると、2個の弁部材48の一方が下側に突出してパッキン57に当接し、パッキン57の一方の貫通孔57aを塞ぐ。また、2個の弁部材48の他方が上側に後退してパッキン57から離間し、パッキン57の他方の貫通孔57aを開放する。2個の弁部材48の一方がパッキン57に当接することによって、第2通水部材50の一方の貫通孔55aが塞がれるとともに、2個の弁部材48の他方がパッキン57から離間することによって、第2通水部材50の他方の貫通孔55aが開放される。
【0050】
第2通水部材50の一方の貫通孔55aが開放されると、第1通水部材40を流通する水が第2通水部材50の一方の貫通孔55aを流通してシャワーフェイス80のシャワー吐水孔80aからシャワー吐水が吐出される。第2通水部材50の他方の貫通孔55aが開放されると、第1通水部材40を流通する水が第2通水部材50の他方の貫通孔55aを流通してシャワーフェイス80のストレート吐水孔80bからストレート吐水が吐出される。そのため、第2通水部材50のパッキン57は、第1通水部材40の弁部材48を受ける弁座として機能している。第1通水部材40の弁部材48、第2通水部材50の仕切壁55に設けられた貫通孔55a、及び、パッキン57によって水栓ヘッド20の弁機構が構成されている。
【0051】
以上のように押しボタンユニット60を操作することにより、水栓ヘッド20内の弁機構を操作して、第2通水路51の流路を切り替えることができる。第2通水路51の流路を切り替えることによって、シャワーフェイス80からの吐出形態を切り替えることができるように構成されている。
【0052】
本実施形態の作用について説明する。
図8(a)、(b)に、第1通水部材40、第2通水部材50、押しボタンユニット60、及び、ピン部材21の側面図を示す。便宜上、押しボタンユニット60と、第1通水部材40のスライド部材44の一部を断面図で示している。
【0053】
図8(a)に示すように、押しボタンユニット60を押し込む前の状態において、第1通水部材40の径方向である左右方向から見て、ボタン本体61の突出部61dと、ピン部材21の接続部23との間には、所定の隙間Tが形成されている。また、第1通水部材40の軸方向である前後方向から見て、ボタン本体61の突出部61dと、ピン部材21の接続部23とは重なる位置に配置されている。
【0054】
図8(b)に示すように、押しボタンユニット60を押し込むと、ボタン本体61の突出部61dがピン部材21の接続部23に当接する。ピン部材21の経時的な位置ずれによってピン部材21が第1通水部材40の前側へ移動していると、ボタン本体61の突出部61dが位置ずれしたピン部材21の接続部23を押圧して、元の位置に戻すことができるように構成されている。そのため、ボタン本体61の突出部61dは、位置ずれしたピン部材21を押圧して元の位置に戻す押圧部として機能している。
【0055】
本実施形態の効果について説明する。
(1)押しボタンユニット60を押し込んだ際に、位置ずれしたピン部材21を押圧して元の位置に戻す押圧部を有する。したがって、経時的なピン部材21の位置ずれを抑制することができるため、第1通水部材40と第2通水部材50の接続状態を良好に保つことができる。
【0056】
また、押しボタンユニット60を押し込むという水栓ヘッド20の使用時に繰り返し行われる動作を利用してピン部材21の位置ずれを抑制しているため、ピン部材の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0057】
(2)押しボタンユニット60を押し込む方向と、ピン部材21を取り付ける方向とが同一方向である。したがって、押しボタンユニット60を押し込む動作によって、位置ずれしたピン部材21を効率良く押圧して元の位置に戻すことができる。
【0058】
(3)押圧部としての突出部61dは、ボタン本体61に一体に形成されている。したがって、ボタン本体61に連動して突出部61dをより正確に移動させることができるため、押しボタンユニット60を押し込んだ際に、より確実に位置ずれしたピン部材21を押圧することができる。
【0059】
(4)ピン部材21は、一対の腕部22と、腕部22同士を接続する接続部23とを備え、押圧部としての突出部61dは、接続部23を押圧する。したがって、ピン部材21をバランス良く押圧することができる。
【0060】
(5)ピン部材21の一対の腕部22によって、第1通水部材40と第2通水部材50とが接続されている。第1通水部材40と第2通水部材50とを2箇所でバランス良く接続することが可能になるため、第1通水部材40と第2通水部材50が1箇所で接続された態様に比べて接続状態を良好に保持しやすくなる。
【0061】
(6)第2通水部材50にはシャワーフェイス80が接続され、弁機構によって、シャワーフェイス80からの吐出形態が切り替えられる。したがって、第2通水部材50を流通した水をシャワーフェイス80から好適に吐出させることができる。
【0062】
(7)ボタン本体61の突出部61dが押圧部として機能している。スライド部材44からの押しボタンユニット60の離脱を抑制するために形成された突出部61dを、位置ずれしたピン部材21を押圧する押圧部として用いることにより、ボタン本体61の構造を有効利用してボタン本体61の構造を簡略化することができる。
【0063】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・カバー部材30は円筒状に限定されない。例えば、カバー部材30は、角筒状に構成されていてもよい。第2通水部材50も同様に、角筒状に構成されていてもよい。
【0064】
・本実施形態において、押圧部としてのボタン本体61の突出部61dはボタン本体61に一体に形成されていたが、この態様に限定されない。例えば、ガイド部材62に押圧部としての突出部が一体に形成されていてもよいし、ボタン本体61及びガイド部材62とは別体で突出部が形成されていてもよい。すなわち、押しボタンユニット60が、ボタン本体61及びガイド部材62とは別の部材を有しており、この別の部材に押圧部としての突出部が形成されていてもよい。
【0065】
・押圧部は、突出部61d以外の部材で構成されていてもよい。すなわち、押圧部としては、位置ずれしたピン部材21を押圧することができる任意の部材を採用することができる。例えば、押圧部は、ボタン本体61の周壁61bで構成されていてもよいし、ガイド部材62の環状部62aで構成されていてもよい。
【0066】
・本実施形態では、押しボタンユニット60を押し込む方向と、ピン部材21を取り付ける方向とが同一方向であったが、押しボタンユニット60を押し込む方向と、ピン部材21を取り付ける方向とが異なる方向であってもよい。
【0067】
図9(a)に示すように、例えば、筒状の第1通水部材40bが前寄り上側に開口部40cを有しており、この開口部40cに上側から円筒状の第2通水部材50aを取り付けてもよい。この状態で、第1通水部材40bの側壁に形成された一対の貫通孔40dに、コの字状のピン部材21を挿入する。一対の貫通孔40dは、第1通水部材40bの軸方向に沿って延びつつ、開口部40cに連通している。第2通水部材50aは、軸方向である上下方向の中央部において、径方向外側に突出した段部50bを有している。第1通水部材40bの貫通孔40dに挿入されたピン部材21の腕部22は、第2通水部材50aの段部50bの上側に位置する。ピン部材21の腕部22が第2通水部材50aの段部50bの上側に当接することにより、第1通水部材40bと第2通水部材50aとが第1通水部材40bの径方向に分離不能に接続される。第1通水部材40bと第2通水部材50aとによって弁機構が形成されており、第2通水部材50aの上部には、弁機構を操作するための押しボタンユニット60aが取り付けられている。押しボタンユニット60aは、有底筒状のボタン本体60bを有している。押しボタンユニット60aを押し込んで上下方向に移動させることにより、弁機構を操作して、第1通水部材40bの手前側からの水の吐水と止水を切り替えることができるように構成されている。
【0068】
図9(b)、(c)に示すように、ボタン本体60bには、径方向外側に突出する突起部60cが形成されており、突起部60cの下側には、ボタン本体60bから離間するにつれて斜め下方に延びる傾斜部60dを有している。傾斜部60dは、ピン部材21の接続部23の上側に位置しており、押しボタンユニット60aを上下方向に移動させると、傾斜部60dが位置ずれしたピン部材21の接続部23を押圧して、第1通水部材40bの後側に付勢し、ピン部材21を元の位置に戻すことができるように構成されている。この態様では、突起部60cが押圧部として機能している。押しボタンユニット60aを押し込む方向が上下方向であるのに対し、ピン部材21を取り付ける方向は前後方向であり、両者の方向が異なっている。
【0069】
・本実施形態において、ピン部材21はコの字状に構成されていたが、ピン部材21の形状はコの字状に限定されない。
図10(a)、(b)に示すように、例えば、ピン部材21はU字状やV字状であってもよい。この態様では、押しボタンユニット60の押圧部で、ピン部材21の前側における左右方向の中央部24を押圧することにより、位置ずれしたピン部材21を押圧することができる。
【0070】
図10(c)に示すように、例えば、ピン部材21は棒状の部材25で構成されていてもよい。棒状の部材を2本取り付けることにより、第1通水部材40と第2通水部材50をバランス良く接続することができる。この態様では、押しボタンユニット60の押圧部で、棒状の部材25の前側の端部25aを押圧することにより、位置ずれした棒状の部材25を押圧することができる。棒状の部材25は、1本のみが取り付けられるように構成されていてもよい。棒状の部材25は、L字状に構成されていてもよい。
【0071】
・本実施形態において、ピン部材21は、横断面円形状の棒材で構成されていたが、この態様に限定されない。ピン部材21の横断面は矩形状に構成されていてもよい。
図10(d)に示すように、例えば、ピン部材21は、コの字状に形成された長尺状の板材で構成されていてもよい。板材の横断面における上下方向の長さを、左右方向の長さよりも長くすることにより、ピン部材21における上下方向の強度を相対的に大きくすることができる。
【0072】
・第1通水部材40に形成された突出壁47の形状は、本実施形態の形状に限定されない。上側に、前後方向に延びる第1空間S1を有する形状を適宜採用することができる。突出壁47に代えて、貫通孔が形成されていてもよい。同様に、第2通水部材50に形成された貫通孔53bに代えて、下側に、前後方向に延びる第2空間S2を有する壁部を採用してもよい。
【0073】
・本実施形態の押しボタンユニット60は、ガイド部材62を有することなく構成されていてもよい。すなわち、押しボタンユニット60がボタン本体61のみで構成されていてもよい。また、ボタン本体61とガイド部材62とが一体に構成されていてもよい。
【0074】
・本実施形態の水栓ヘッド20は、シャワーフェイス80を備えることなく構成されていてもよい。例えば、水栓ヘッド20の弁機構が、第2通水部材50からのストレート吐水の吐止水を切り替える構成である場合、シャワーフェイス80を省略することができる。
【0075】
・シャワーフェイス80は、第2通水部材50に直接接続されていてもよいし、第2通水部材50に一体に形成されていてもよい。
・本実施形態の水栓ヘッド20は、アダプタ70を備えることなく構成されていてもよい。例えば、第1通水部材40にアダプタ70を介することなくホースが接続されていてもよい。
【0076】
・本実施形態の水栓ヘッド20は、カバー部材30を備えることなく構成されていてもよい。例えば、第1通水部材40、第2通水部材50、押しボタンユニット60、アダプタ70、及び、シャワーフェイス80が外部に露出した状態で水栓ヘッド20を構成していてもよい。
【0077】
・本実施形態では、押しボタンユニット60を押し込むと、ボタン本体61の突出部61dがピン部材21の接続部23に当接するように構成されていた。すなわち、ピン部材21の位置ずれの有無に関わらず、押しボタンユニット60を押し込んだ際にボタン本体61の突出部61dがピン部材21の接続部23を押圧するように構成されていたが、この態様に限定されない。ピン部材21が位置ずれしていない状態では、ボタン本体61の突出部61dはピン部材21に当接しないように構成されていてもよい。
【0078】
・本実施形態の水栓ヘッド20が取り付けられる水栓10は、キッチン用のシングルレバー水栓に限定されない。例えば、浴室用や洗面化粧室用の水栓に取り付けられていてもよい。給湯路を有さず、給水路のみを有する水栓に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…水栓、20…水栓ヘッド、21…ピン部材、40…第1通水部材、50…第2通水部材、60…押しボタンユニット。
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