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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】電動アシスト台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/06 20060101AFI20230615BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B62B5/06 A
B62B3/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019179590
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054271
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000201766
【氏名又は名称】ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】竹下 正敏
(72)【発明者】
【氏名】二橋 宣行
(72)【発明者】
【氏名】下川戸 一敏
(72)【発明者】
【氏名】平松 賢
(72)【発明者】
【氏名】藤本 悟史
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-106082(JP,A)
【文献】特開平08-268286(JP,A)
【文献】特開2001-180500(JP,A)
【文献】特開2011-001033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が押し方向および引き方向に入力するためのハンドルと、
前記ハンドルを前記押し方向および前記引き方向に揺動可能に支持する車体と、
前記車体を走行可能に支持する走行部と、
前記走行部を駆動する電動モータと、
前記ハンドルへの入力量に応じて前記電動モータが発生するアシスト力を制御する制御部と、
前記ハンドルへの入力がないときに前記ハンドルを中立位置に保持するために前記ハンドルと前記車体との間に設けられる第1弾性体と、
前記ハンドルへの前記押し方向の入力に応じて変形するが前記引き方向の入力があっても変形しないように前記ハンドルと前記車体との間に設けられる第2弾性体と、
前記ハンドルへの前記引き方向の入力に応じて変形するが前記押し方向の入力があっても変形しないように前記ハンドルと前記車体との間に設けられる第3弾性体とを備え、
前記ハンドルへの入力量が前記中立位置から前記押し方向および前記引き方向の所定範囲内では前記電動モータが前記アシスト力を発生しない中立領域を設けた、電動アシスト台車。
【請求項2】
前記ハンドルの揺動に伴って回動可能に前記ハンドルと前記車体との間に設けられる軸部と、
前記軸部とともに回動可能に前記軸部に取り付けられる第1回動部と、
前記軸部に対して回動可能に前記軸部に嵌められ、かつ前記ハンドルに対して前記押し方向に入力したときに前記第1回動部と同方向に回動する第2回動部と、
前記軸部に対して回動可能に前記軸部に嵌められ、かつ前記ハンドルに対して前記引き方向に入力したときに前記第1回動部と同方向に回動する第3回動部とをさらに含み、
前記第1弾性体は、前記第1回動部と前記車体との間に設けられ、
前記第2弾性体は、前記第2回動部と前記車体との間に設けられ、
前記第3弾性体は、前記第3回動部と前記車体との間に設けられる、請求項1に記載の電動アシスト台車。
【請求項3】
前記ハンドルに対して前記押し方向に入力したときに前記第2回動部が回動するように前記第2回動部に係合可能に前記第1回動部に設けられる第1係合部と、
前記ハンドルに対して前記引き方向に入力したときに前記第3回動部が回動するように前記第3回動部に係合可能に前記第1回動部に設けられる第2係合部とをさらに含む、請求項2に記載の電動アシスト台車。
【請求項4】
前記第2回動部が前記中立位置より前記引き方向に回転しないように前記車体に設けられる第1ストッパと、
前記第3回動部が前記中立位置より前記押し方向に回転しないように前記車体に設けられる第2ストッパとをさらに含む、請求項2または3に記載の電動アシスト台車。
【請求項5】
前記ハンドルへの入力がなくかつ前記ハンドルが中立位置にあるとき、
前記第1弾性体の変形量はゼロより大きく、前記第2弾性体および前記第3弾性体の変形量はゼロである、請求項1から4のいずれかに記載の電動アシスト台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電動アシスト台車に関し、より特定的には、操作者が歩行しながらハンドルを押し引きすることによって補助力が加わるパワーアシスト機能を備えた電動アシスト台車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例が特許文献1において開示されている。特許文献1には、歩行操作者が押し引きするハンドルと、ハンドルが取り付けられた荷物積載部を備えた車体と、車体を走行可能に支持する走行部と、走行部を駆動する電動モータと、押し引き方向に回動可能に取り付けられたハンドルの操作量に応じて出力される電気信号により電動モータの駆動を制御する制御装置とを備えた手押し搬送車が開示されている。この手押し搬送車では、ハンドルは、ばねによって非操作時には中立位置に釣り合わされた状態で弾性的に支持されており、制御装置が、ハンドルの操作量が中立位置の押し引き両側で中立領域にある間は電動モータの回転を停止させ、操作量が中立領域を越えると停止状態から加速して電動モータを正転または逆転駆動し、操作量が中立領域を越えた設定量に達すると電動モータを定速駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-106082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ハンドルが押し方向に操作され、ハンドルの操作量が中立領域を大きく越えて、電動モータの駆動によって手押し搬送車が定速走行されているときに、操作者がハンドルから手を放すとばねの反力によってハンドルが引き方向に大きく振れる。その際、ハンドルが中立領域を越えて振れてしまうと、手押し搬送車は慣性力によって押し方向に進んでいるにも拘わらず、電動モータは引き方向に駆動しようとする。これによって、手押し搬送車は急減速するため、操作者は操作しにくい。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、操作性がよい電動アシスト台車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、操作者が押し方向および引き方向に入力するためのハンドルと、ハンドルを押し方向および引き方向に揺動可能に支持する車体と、車体を走行可能に支持する走行部と、走行部を駆動する電動モータと、ハンドルへの入力量に応じて電動モータが発生するアシスト力を制御する制御部と、ハンドルへの入力がないときにハンドルを中立位置に保持するためにハンドルと車体との間に設けられる第1弾性体と、ハンドルへの押し方向の入力に応じて変形するが引き方向の入力があっても変形しないようにハンドルと車体との間に設けられる第2弾性体と、ハンドルへの引き方向の入力に応じて変形するが押し方向の入力があっても変形しないようにハンドルと車体との間に設けられる第3弾性体とを備え、ハンドルへの入力量が中立位置から押し方向および引き方向の所定範囲内では電動モータがアシスト力を発生しない中立領域を設けた、電動アシスト台車が提供される。
【0007】
この発明では、操作者がハンドルを押して台車をパワーアシスト走行させているときにハンドルから手を放しても、戻るハンドルが中立位置を過ぎると、第2弾性体の反力がなくなり、第3弾性体が変形することによって第3弾性体がない場合よりもハンドルの振れをより小さくして早く減衰させることができる。これによって、引き方向に、すなわち走行方向と反対方向に、電動モータのアシスト力が働かずに、ハンドルがより早く中立位置に戻り、第1弾性体によってハンドルは中立位置に保持される。同様に、操作者がハンドルを引いて台車をパワーアシスト走行させているときにハンドルから手を離しても、戻るハンドルが中立位置を過ぎると、第3弾性体の反力がなくなり、第2弾性体が変形することによって第2弾性体がない場合よりもハンドルの振れをより小さくして早く減衰させることができる。これによって、押し方向に、すなわち走行方向と反対方向に、電動モータのアシスト力が働かずに、ハンドルがより早く中立位置に戻り、第1弾性体によってハンドルは中立位置に保持される。したがって、電動アシスト台車は急減速しないので、操作性がよい。
【0008】
好ましくは、ハンドルの揺動に伴って回動可能にハンドルと車体との間に設けられる軸部と、軸部とともに回動可能に軸部に取り付けられる第1回動部と、軸部に対して回動可能に軸部に嵌められ、かつハンドルに対して押し方向に入力したときに第1回動部と同方向に回動する第2回動部と、軸部に対して回動可能に軸部に嵌められ、かつハンドルに対して引き方向に入力したときに第1回動部と同方向に回動する第3回動部とをさらに含み、第1弾性体は、第1回動部と車体との間に設けられ、第2弾性体は、第2回動部と車体との間に設けられ、第3弾性体は、第3回動部と車体との間に設けられる。この場合、ハンドルが中立位置から押し方向に揺動すると、それに伴ってハンドルの揺動方向と同方向に軸部および第1回動部が回動し、第1弾性体が変形する。すると、第2回動部も第1回動部と同方向に回動し、第2弾性体が変形する。このとき、第3回動部は回動せずかつ第3弾性体は変形しない。一方、ハンドルが中立位置から引き方向に揺動すると、それに伴ってハンドルの揺動方向と同方向に軸部および第1回動部が回動し、第1弾性体が変形する。すると、第3回動部も第1回動部と同方向に回動し、第3弾性体が変形する。このとき、第2回動部は回動せずかつ第2弾性体は変形しない。このように、軸部、第1回動部、第2回動部および第3回動部を用い、これらの部材の回動に応じて第1弾性体、第2弾性体および第3弾性体を変形させることによって、第1弾性体、第2弾性体および第3弾性体の配置位置の自由度を向上させることができる。
【0009】
また好ましくは、ハンドルに対して押し方向に入力したときに第2回動部が回動するように第2回動部に係合可能に第1回動部に設けられる第1係合部と、ハンドルに対して引き方向に入力したときに第3回動部が回動するように第3回動部に係合可能に第1回動部に設けられる第2係合部とをさらに含む。この場合、ハンドルに対して押し方向に入力したとき、第1回動部の回動を第1係合部を介して第2回動部に容易かつ確実に伝達でき、第2回動部を第1回動部と同方向に回動できる。また、ハンドルに対して引き方向に入力したとき、第1回動部の回動を第2係合部を介して第3回動部に容易かつ確実に伝達でき、第3回動部を第1回動部と同方向に回動できる。
【0010】
さらに好ましくは、第2回動部が中立位置より引き方向に回転しないように車体に設けられる第1ストッパと、第3回動部が中立位置より押し方向に回転しないように車体に設けられる第2ストッパとをさらに含む。この場合、ハンドルを中立位置に設定し易くなり、ハンドルへの押し方向の入力に応じて変形する第2弾性体の特性、およびハンドルへの引き方向の入力に応じて変形する第3弾性体の特性をそれぞれ調整し易くなる。
【0011】
好ましくは、ハンドルへの入力がなくかつハンドルが中立位置にあるとき、第1弾性体の変形量はゼロより大きく、第2弾性体および第3弾性体の変形量はゼロである。この場合、ハンドルが中立位置にあるとき、第2弾性体および第3弾性体の変形量はゼロである。したがって、操作者がハンドルを押して(または引いて)台車をパワーアシスト走行させているときにハンドルから手を放しても、戻るハンドルが中立位置を過ぎるときに第2弾性体(または第3弾性体)の反力が確実になくなるため、ハンドルの振れをさらに早く減衰させてハンドルを中立位置に静止させることができ、操作者はすぐにハンドルを把持することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、操作性がよい電動アシスト台車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態に係る電動アシスト台車を示す斜視図である。
図2図1に示す電動アシスト台車を示す正面図である。
図3図1に示す電動アシスト台車を示す平面図である。
図4図1に示す電動アシスト台車を示す側面図である。
図5図1に示す電動アシスト台車の要部を示すA-A線断面図解図である。
図6】ハンドルが中立位置にある場合の要部を示す後方斜視図である。
図7】ハンドルが中立位置にある場合の要部を示す前方斜視図である。
図8】ハンドルの位置と電動モータの出力との関係を示す特性図である。
図9】ハンドルが押された状態の要部を示す後方斜視図である。
図10】ハンドルが押された状態の要部を示す前方斜視図である。
図11】ハンドルが引かれた状態の要部を示す後方斜視図である。
図12】ハンドルが引かれた状態の要部を示す前方斜視図である。
図13】この発明の他の実施形態に係る電動アシスト台車を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の好ましい実施形態について説明する。なお、この発明の実施形態における、前後、左右、上下とは、電動アシスト台車10を牽引する状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。図中において、「Fr」は前方を示し、「Rr」は後方を示し、「R」は右方を示し、「L」は左方を示し、「U」は上方を示し、「Lo」は下方を示す。
【0015】
図1図4を参照して、この発明の一実施形態に係る電動アシスト台車10は、車体12を含む。車体12は、荷台14と、荷台14の前部から斜め前方に延びるフレーム16とを含む。車体12は、車輪18a,18bおよび補助輪20によって走行可能に支持される。車輪18a,18bはそれぞれ、取付板22a,22bを介して荷台14の左右両側に設けられる。補助輪20は、取付け板24を介して荷台14の前部に設けられる。車輪18a,18bにはそれぞれ、電動モータ26a,26bが設けられる。電動モータ26a,26bによって生成されたアシスト力はそれぞれ、車輪18a,18bに伝達され、車輪18a,18bが駆動される。この実施形態では、電動モータ26a,26bとしてインホイールモータが用いられる。荷台14には、電装ボックス28が配置される。電装ボックス28には、バッテリ30、充電器32および制御部34が収容される。なお、図面の理解を容易にするために、車輪18a,18bは簡略化して示されている。
【0016】
フレーム16は、荷台14の前部上面から斜め前方に延びる一対の支持フレーム部36a,36b、一対の支持フレーム部40a,40bおよび連結フレーム部38,42を含む。一対の支持フレーム部36a,36bは、相互に左右方向に間隔を開けて設けられ、それぞれの上端部は、左右方向に延びる連結フレーム部38によって連結される。支持フレーム部36a,36bの上部の外側にはそれぞれ、支持フレーム部40a,40bが斜め上方に延びるように取り付けられる。支持フレーム部40a,40bのそれぞれの上端部は、左右方向に延びる連結フレーム部42によって連結される。
【0017】
図5をも参照して、操作者が押し方向および引き方向に入力するための円筒状のハンドル44が、連結フレーム部42と平行に設けられる。ハンドル44の一端部は、アーム部46aを介して軸部48aに連結される。軸部48aは、円柱状の径大部50aと、径大部50aの軸方向一端部に設けられる円板状の突部52aと、径大部50aの軸方向他端部に設けられる円柱状の径小部54aとを含む。径大部50aと突部52aと径小部54aとは同軸上に形成される。アーム部46aは、径大部50aに接続される。
【0018】
軸部48aは、L字状のプレート部56a,58aを介して連結フレーム部42に支持される。プレート部56a,58aはそれぞれ、2つの締結部材60によって連結フレーム部42に取り付けられる。プレート部56aの貫通孔62aに軸部48aの突部52aが挿入され、締結部材64aによって軸部48aがプレート部56aに取り付けられる。このとき、軸部48aとプレート部56aとの間には、ブッシュ66aが介挿される。また、プレート部58aの貫通孔68aに軸部48aの径小部54aが挿入される。このとき、径小部54aとプレート部58aとの間には、ブッシュ70aが介挿される。このようにして軸部48aは、左右方向に延びるように形成され、連結フレーム部42に回動可能に支持される。すなわち、軸部48aは、ハンドル44の揺動に伴って回動可能にハンドル44と車体12との間に設けられる。言い換えれば、軸部48aにアーム部46aを介して連結されるハンドル44は、矢印Bで示す押し方向および矢印Cで示す引き方向に揺動可能に車体12によって支持される(図1および図4参照)。
【0019】
図6および図7をも参照して、軸部48aの外周面端部には、たとえば溶接によりボス72aと一体化されたカム状の第1回動部74aが取り付けられる。ボス72aがキー76aによって軸部48aの径小部54aに固定され、第1回動部74aは、軸部48aとともに回動可能に設けられる。軸部48aの径小部54aの外周部においてプレート部58aとボス72aとの間には、たとえば溶接によりボス78aと一体化されたカム状の第2回動部80aが、ブッシュ82aを介して設けられ、かつたとえば溶接によりボス84aと一体化されたカム状の第3回動部86aが、ブッシュ88aを介して設けられる。第3回動部86aは、第2回動部80aの外側に設けられる。このようにして、第2回動部80aおよび第3回動部86aはともに、軸部48aに対して回動可能に軸部48aに嵌められる。また、第1回動部74a、第2回動部80aおよび第3回動部86aが軸部48aから抜けないように、軸部48aの端部に締結部材90aが取り付けられる。
【0020】
第1回動部74aの上部には、第2回動部80aに係合可能なピン状の第1係合部92aが取り付けられ、第1回動部74aの下部には、第3回動部86aに係合可能なピン状の第2係合部94aが取り付けられる。ハンドル44に対して押し方向に入力したときに、第1係合部92aが第2回動部80aに係合することによって、第2回動部80aが第1回動部74aと同方向に回動する。一方、ハンドル44に対して引き方向に入力したときに、第2係合部94aが第3回動部86aに係合することによって、第3回動部86aが第1回動部74aと同方向に回動する。
【0021】
軸部48aの下方には、支持プレート部96aが複数の締結部材98によって支持フレーム部40aに取り付けられる。
【0022】
第1回動部74aの前部には、第1弾性体100aが取り付けられ、第1回動部74aの後部には、第1弾性体102aが取り付けられる。また、第2回動部80aの前部には、第2弾性体104aが取り付けられ、第3回動部86aの後部には、第3弾性体106aが取り付けられる。この実施形態では、第1弾性体100a,102a、第2弾性体104aおよび第3弾性体106aは、コイルばねからなる。支持プレート部96aには、弾性体の長さ(変形量)を調整可能とする長さ調整部材110a,112a,114a,116aが、締結部材108によって取り付けられる。第1弾性体100a,102a、第2弾性体104aおよび第3弾性体106aはそれぞれ、長さ調整部材110a,112a,114a,116aに接続される。このように、第1弾性体100a,102aは、第1回動部74aと車体12との間に設けられ、第2弾性体104aは、第2回動部80aと車体12との間に設けられ、第3弾性体106aは、第3回動部86aと車体12との間に設けられる。第1弾性体100a,102aは、ハンドル44への入力がないときにハンドル44を中立位置に保持するために、ハンドル44と車体12との間に設けられる。第2弾性体104aは、ハンドル44への押し方向の入力に応じて伸びるが引き方向の入力があっても伸び縮みしない(変形しない)ように、ハンドル44と車体12との間に設けられる。第3弾性体106aは、ハンドル44への引き方向の入力に応じて伸びるが押し方向の入力があっても伸び縮みしない(変形しない)ように、ハンドル44と車体12との間に設けられる。また、ハンドル44への入力がなくかつハンドル44が中立位置にあるとき、第1弾性体100a,102aの変形量はゼロより大きく、第2弾性体104aおよび第3弾性体106aの変形量はゼロ以上である。
【0023】
また、連結フレーム部42の一端部側上面には、プレート状部材118aが取り付けられ、プレート状部材118aには、第2回動部80aに係合可能な第1ストッパ120aと、第3回動部86aに係合可能な第2ストッパ122aとが取り付けられる。すなわち、第1ストッパ120aは、第2回動部80aが中立位置より引き方向に回転しないように、プレート状部材118aを介して車体12に設けられる。第2ストッパ122aは、第3回動部86aが中立位置より押し方向に回転しないように、プレート状部材118aを介して車体12に設けられる。
【0024】
さらに、支持フレーム部40aの内側上部には、センサ124aが締結部材126によって取り付けられ、その上方には磁石アーム130a(後述)用のストッパ128aが取り付けられる。軸部48aの径大部50aには、揺動可能な磁石アーム130aが取り付けられる。磁石アーム130aには、磁石132aを支持するプレート状部材134aが、複数の締結部材136によって取り付けられ、その上方にはストッパ128aと係合可能なストッパ138aが取り付けられる。ストッパ128aとストッパ138aとが係合することによって、磁石アーム130aの揺動が規制される。プレート状部材134aは、磁石アーム130aの揺動時に磁石132aがセンサ124aと対向可能な位置に設けられる。センサ124aは、磁石132aからの磁力を検出し、その磁力に基づいてハンドル44の中立位置からの位置(傾斜角度)、ひいてはハンドル44への入力量を検出する。
【0025】
このような電動アシスト台車10では、ハンドル44の位置と電動モータ26a,26bの出力とが図8に示す関係を有するように、制御部34によってアシスト動作が制御される。制御部34は、センサ124aが検出したハンドル44の一端部の位置、すなわちハンドル44の一端部への入力量に応じて、電動モータ26aが発生するアシスト力を制御する。このとき、制御部34は、センサ124aの検出結果に基づいて、バッテリ30からの電力を電動モータ26aに供給し、電動モータ26aは、与えられた電力に基づいて、車輪18aを駆動するためのアシスト力を生成する。ハンドル44を引いている場合には、電動アシスト台車10を前進させる(牽引する)アシスト力が生成され、一方、ハンドル44を押している場合には、電動アシスト台車10を後進させる(押進する)アシスト力が生成される。
【0026】
図8に示すように、ハンドル44の両端部の位置すなわちハンドル44の両端部への入力量が中立位置から押し方向および引き方向の所定範囲内では電動モータ26a,26bのそれぞれがアシスト力を発生しない中立領域が設けられ、ハンドル44の各端部が中立位置を含む中立領域にあれば、電動モータ26a,26bの各出力がゼロになる。また、ハンドル44の各端部が中立領域を超えるように押し引きされれば、ハンドル44の各端部の位置に比例して電動モータ26a,26bの各出力が変更される。さらに、ハンドル44の各端部の位置が所定の領域を超えると、電動モータ26a,26bの各出力が一定にされる。
【0027】
また、ハンドル44の一端部が中立位置にあれば、図6に示すように、第1係合部92aが第2回動部80aに係合され、かつ第2係合部94aが第3回動部86aに係合され、図7に示すように、第1ストッパ120aが第2回動部80aに係合され、かつ第2ストッパ122aが第3回動部86aに係合される。
【0028】
ハンドル44の一端部が中立位置より押し側にあれば、図9に示すように、第1係合部92aが第2回動部80aに係合され、かつ第2係合部94aは第3回動部86aから離れ、図10に示すように、第1ストッパ120aは第2回動部80aから離れ、かつ第2ストッパ122aが第3回動部86aに係合される。
【0029】
ハンドル44の一端部が中立位置より引き側にあれば、図11に示すように、第1係合部92aが第2回動部80aから離れ、かつ第2係合部94aが第3回動部86aに係合され、図12に示すように、第1ストッパ120aが第2回動部80aに係合され、かつ第2ストッパ122aが第3回動部86aから離れる。
【0030】
なお、ハンドル44および連結フレーム部42の他端部近傍においても、上述したハンドル44および連結フレーム部42の一端部近傍と同様に構成される。したがって、ハンドル44および連結フレーム部42の一端部近傍の構成要素と同一または末尾の「a」を「b」に変更した符号を、ハンドル44および連結フレーム部42の他端部近傍の構成要素に用いることで、その重複する説明は省略する。
【0031】
この実施形態では、車輪18a,18bが走行部に対応する。
【0032】
電動アシスト台車10によれば、操作者がハンドル44を押して電動アシスト台車10をパワーアシスト走行させているときにハンドル44から手を放しても、戻るハンドル44が中立位置を過ぎると、第2弾性体104a,104bの反力がなくなり、第3弾性体106a,106bが伸びることによって第3弾性体106a,106bがない場合よりもハンドル44の振れをより小さくして早く減衰させることができる。これによって、引き方向に、すなわち走行方向と反対方向に、電動モータ26a,26bのアシスト力が働かずに、ハンドル44がより早く中立位置に戻り、第1弾性体100a,100b,102a,102bによってハンドル44は中立位置に保持される。同様に、操作者がハンドル44を引いて電動アシスト台車10をパワーアシスト走行させているときにハンドル44から手を離しても、戻るハンドル44が中立位置を過ぎると、第3弾性体106a,106bの反力がなくなり、第2弾性体104a,104bが伸びることによって第2弾性体104a,104bがない場合よりもハンドル44の振れをより小さくして早く減衰させることができる。これによって、押し方向に、すなわち走行方向と反対方向に、電動モータ26a,26bのアシスト力が働かずに、ハンドル44がより早く中立位置に戻り、第1弾性体100a,100b,102a,102bによってハンドル44は中立位置に保持される。したがって、電動アシスト台車10は急減速しないので、操作性がよい。
【0033】
ハンドル44が中立位置から押し方向に揺動すると、それに伴ってハンドル44の揺動方向と同方向に軸部48a,48bおよび第1回動部74a,74bが回動し、第1弾性体100a,100b,102a,102bが変形する。すると、第2回動部80a,80bも第1回動部74a,74bと同方向に回動し、第2弾性体104a,104bが伸びる。このとき、第3回動部86a,86bは回動せずかつ第3弾性体106a,106bは変形しない。一方、ハンドル44が中立位置から引き方向に揺動すると、それに伴ってハンドル44の揺動方向と同方向に軸部48a,48bおよび第1回動部74a,74bが回動し、第1弾性体100a,100b,102a,102bが変形する。すると、第3回動部86a,86bも第1回動部74a,74bと同方向に回動し、第3弾性体106a,106bが伸びる。このとき、第2回動部80a,80bは回動せずかつ第2弾性体104a,104bは変形しない。このように、軸部48a,48b、第1回動部74a,74b、第2回動部80a,80bおよび第3回動部86a,86bを用い、これらの部材の回動に応じて第1弾性体100a,100b,102a,102b、第2弾性体104a,104bおよび第3弾性体106a,106bを変形させることによって、第1弾性体100a,100b,102a,102b、第2弾性体104a,104bおよび第3弾性体106a,106bの配置位置の自由度を向上させることができる。つまり、第1回動部74a,74b、第2回動部80a,80bおよび第3回動部86a,86bを回動させる構成にしたことによって、第1弾性体100a,100b,102a,102b、第2弾性体104a,104bおよび第3弾性体106a,106bをコンパクトに配置することができる。
【0034】
ハンドル44に対して押し方向に入力したとき、第1回動部74a,74bの回動を第1係合部92a,92bを介して第2回動部80a,80bに容易かつ確実に伝達でき、第2回動部80a,80bを第1回動部74a,74bと同方向に回動できる。また、ハンドル44に対して引き方向に入力したとき、第1回動部74a,74bの回動を第2係合部94a,94bを介して第3回動部86a,86bに容易かつ確実に伝達でき、第3回動部86a,86bを第1回動部74a,74bと同方向に回動できる。
【0035】
第1ストッパ120a,120bおよび第2ストッパ122a,122bを用いることによって、ハンドル44を中立位置に設定し易くなり、ハンドル44への押し方向の入力に応じて変形する第2弾性体104a,104bの特性、およびハンドル44への引き方向の入力に応じて変形する第3弾性体106a,106bの特性をそれぞれ調整し易くなる。
【0036】
ハンドル44が中立位置にあるとき、第2弾性体104a,104bおよび第3弾性体106a,106bの変形量はゼロに設定されてもよい。この場合、操作者がハンドル44を押して(または引いて)電動アシスト台車10をパワーアシスト走行させているときにハンドル44から手を放しても、戻るハンドル44が中立位置を過ぎるときに第2弾性体104a,104b(または第3弾性体106a,106b)の反力が確実になくなるため、ハンドル44の振れをさらに早く減衰させてハンドル44を中立位置に静止させることができ、操作者はすぐにハンドル44を把持することができる。
【0037】
また、水平状態で補助輪20を平面(路面)から浮かせるようにしてもよい。これによって、操作者がハンドル44を押して(または引いて)電動アシスト台車10をパワーアシスト走行させているときに、車輪18a,18bのトラクションを十分に発生させることができる。
【0038】
ついで、図13に、この発明の他の実施形態に係る電動アシスト台車10aを示す。
【0039】
電動アシスト台車10aは、ハンドル44に代えて、ハンドル44a,44bを用いる点において電動アシスト台車10と異なる。ハンドル44a,44bはそれぞれ、アーム部46a,46bに取り付けられる。電動アシスト台車10aのその他の構成については、電動アシスト台車10と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0040】
電動アシスト台車10aによれば、相互に独立して設けられたハンドル44a,44bを用いることによって、舵が切りやすくなり、操作性がさらに向上する。たとえば、両ハンドル44a,44bの押し引きの方向を逆にすれば、左右の電動モータ26a,26bが相互に逆方向に回転し、電動アシスト台車10aを、その場所で旋回させることができる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、第1ストッパ120a,120bおよび第2ストッパ122a,122bが設けられたが、これに限定されない。第1ストッパ120a,120bおよび第2ストッパ122a,122bは設けられなくてもよい。この場合、ハンドル44が中立位置にあるとき、第1弾性体100aと第1弾性体102a、第1弾性体100bと第1弾性体102bのそれぞれが釣り合い、第2弾性体104a,104bおよび第3弾性体106a,106bの変形量をゼロに設定するのが望ましい。
【0042】
図1に示す実施形態では、ハンドル44および連結フレーム部42の両端部近傍のそれぞれにおいて、第1~第3弾性体等を含みハンドル44の振れを減衰させる減衰機構が設けられたが、これに限定されない。当該減衰機構は、ハンドル44および連結フレーム部42の一方の端部近傍にのみ設けられてもよく、また、ハンドル44および連結フレーム部42の幅方向の中央部近傍にのみ設けられてもよい。この場合、ハンドル44への入力量に応じて、電動モータ26aと電動モータ26bとが発生するアシスト力を同じになるように制御する。さらに、第1弾性体の数は、当該減衰機構毎に、1つでも3つ以上であってもよい。
【0043】
第1弾性体、第2弾性体および第3弾性体は、ハンドルに直接設けられてもよい。第1弾性体、第2弾性体および第3弾性体は、皿ばねまたはガススプリング(シリンダとピストンとを含む)でもよい。この場合、皿ばねまたはガススプリングの圧縮方向の変形によって、戻るハンドルの振れを減衰させるのが望ましい。
【0044】
上述の実施形態では、第1回動部に、第2回動部に係合可能な第1係合部と、第3回動部に係合可能な第2係合部とが設けられたが、これに限定されない。第2回動部および第3回動部の両方に係合可能で第1係合部および第2係合部の両方の役割を兼ねる1つの係合部が第1回動部に設けられてもよい。
【0045】
第1係合部および第2係合部は、軸部に設けられてもよい。
【0046】
走行部は車輪18a,18bに限定されず、無限軌道であってもよい。
【0047】
上述した実施形態では、電動アシスト台車10,10aが、充電器32を含む場合について説明したが、これに限定されない。電動アシスト台車は、充電器32に代えて、エンジン発電機を含んでもよい。
【0048】
上述した実施形態では、電動アシスト台車10,10aが、バッテリ30および充電器32を含む場合について説明したが、これに限定されない。電動アシスト台車は、バッテリ30および充電器32に代えて、エンジン発電機を含んでもよい。
【0049】
上述した実施形態では、電動モータ26a,26bとしてインホイールモータが用いられたが、これに限定されず、その他のモータが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10,10a 電動アシスト台車
12 車体
18a,18b 車輪
26a,26b 電動モータ
30 バッテリ
32 充電器
34 制御部
44,44a,44b ハンドル
48a,48b 軸部
74a,74b 第1回動部
80a,80b 第2回動部
86a,86b 第3回動部
92a,92b 第1係合部
94a,94b 第2係合部
100a,100b,102a,102b 第1弾性体
104a,104b 第2弾性体
106a,106b 第3弾性体
120a,120b 第1ストッパ
122a,122b 第2ストッパ
124a,124b センサ
132a,132b 磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13