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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20230615BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230615BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20230615BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G01N21/88 H
G03F1/84
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019182868
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060209
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥澤 允
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-020075(JP,A)
【文献】特開2014-081227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0078608(US,A1)
【文献】特開2002-328099(JP,A)
【文献】特開2013-044879(JP,A)
【文献】特開2009-003172(JP,A)
【文献】特開2015-127653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G03F 1/00 - G03F 1/92
G01B 11/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成する光源と、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部と、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記照明光を検査対象にスポット状に集光するとともに、前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を集光する対物レンズと、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成し、形成された前記画像に基づいて、前記検査対象を検査する処理部と、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記光源は、可視光を含む前記照明光を生成し、
前記ペリクルは、DUV光の透過率が前記可視光の前記透過率に比べて低い、
検査装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の前記画像と、前記ペリクルが貼り付けられた後の前記パターン面の前記画像と、を比較することによって、前記パターン面を検査する、
請求項に記載の検査装置。
【請求項3】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成する光源と、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部と、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記照明光を検査対象にスポット状に集光するとともに、前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を集光する対物レンズと、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成し、形成された前記画像に基づいて、前記検査対象を検査する処理部と、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記光源は、可視光を含む前記照明光を生成し、
前記処理部は、
前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の画像を前記可視光を含む前記照明光により取得した参照画像と、前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の画像をDUV光を含む照明光により取得した高分解参照画像と、を対応付け、
前記ペリクルが貼り付けられた後の前記パターン面の画像を前記可視光を含む前記照明光により取得した検査画像と、前記参照画像と、を比較することによって、前記パターン面を検査する、
検査装置。
【請求項4】
前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の前記画像は、光学条件が前記ペリクルと同じダミーペリクルを通して前記照明光で照明された前記パターン面の前記画像である、
請求項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記光源は、中心波長532nmの可視光を含む前記照明光を生成する、
請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記照明光の光軸に直交する断面における中央部を遮光して前記照明光を環状にする中央隠しフィルタをさらに備えた、
請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記偏光状態変換部は、前記一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換するとともに、前記ラジアル偏光を前記一方向の直線偏光に変換するラジアル偏光波長板である、
請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記偏光状態変換部は、前記一方向の直線偏光を円偏光に変換するとともに、前記円偏光を前記一方向と異なる他方向の直線偏光に変換するλ/4光波長板である、
請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記照明光を複数のビームに分割する回折格子をさらに備え、
前記対物レンズは、複数のビームを含む前記照明光が前記検査対象で反射した複数のビームを含む反射光を集光し、
前記受光素子は、前記反射光に含まれた各前記ビームを受光する複数の受光部を有し、
各受光部に対応するように、前記ピンホールは複数設けられた、
請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成する光源と、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部と、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記照明光を検査対象にスポット状に集光するとともに、前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を集光する対物レンズと、
前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光する受光素子と、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成し、形成された前記画像に基づいて、前記検査対象を検査する処理部と、
前記照明光の光軸に直交する断面における中央部を遮光して前記照明光を環状にする中央隠しフィルタと、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記偏光状態変換部は、前記一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換するとともに、前記ラジアル偏光を前記一方向の直線偏光に変換するラジアル偏光波長板である、
検査装置。
【請求項11】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成するステップと、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部に前記照明光を透過させ、前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記照明光を、対物レンズで検査対象にスポット状に集光させるステップと、
前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を、前記対物レンズで集光させるステップと、
前記偏光状態変換部に前記反射光を透過させ、前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光素子に受光させるステップと、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成するステップと、
前記検査対象の画像に基づいて、前記検査対象を検査するステップと、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記照明光を生成するステップにおいて、
可視光を含む前記照明光を生成し、
前記ペリクルは、DUV光の透過率が前記可視光の前記透過率に比べて低い、
検査方法。
【請求項12】
前記検査対象を検査するステップにおいて、
前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の前記画像と、前記ペリクルが貼り付けられた後の前記パターン面の前記画像と、を比較することによって、前記パターン面を検査する、
請求項11に記載の検査方法。
【請求項13】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成するステップと、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部に前記照明光を透過させ、前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記照明光を、対物レンズで検査対象にスポット状に集光させるステップと、
前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を、前記対物レンズで集光させるステップと、
前記偏光状態変換部に前記反射光を透過させ、前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光素子に受光させるステップと、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成するステップと、
前記検査対象の画像に基づいて、前記検査対象を検査するステップと、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記照明光を生成するステップにおいて、
可視光を含む前記照明光を生成し、
前記検査対象を検査するステップにおいて、
前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の画像を前記可視光を含む前記照明光により取得した参照画像と、前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の画像をDUV光を含む照明光により取得した高分解参照画像と、を対応付け、
前記ペリクルが貼り付けられた後の前記パターン面の画像を前記可視光を含む前記照明光により取得した検査画像と、前記参照画像と、を比較することによって、前記パターン面を検査する、
検査方法。
【請求項14】
前記ペリクルが貼り付けられる前の前記パターン面の前記画像は、光学条件が前記ペリクルと同じダミーペリクルを通して前記照明光で照明された前記パターン面の前記画像である、
請求項12に記載の検査方法。
【請求項15】
前記照明光を生成するステップにおいて、
中心波長532nmの可視光を含む前記照明光を生成する、
請求項11~14のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項16】
前記照明光の光軸に直交する断面における中央部を遮光する中央隠しフィルタによって、前記照明光を環状にするステップをさらに備えた、
請求項11~15のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項17】
前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、ラジアル偏光波長板であり、前記一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換し、
前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、前記ラジアル偏光波長板であり、前記ラジアル偏光を前記一方向の直線偏光に変換する、
請求項11~16のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項18】
前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、λ/4光波長板であり、前記一方向の直線偏光を円偏光に変換し、
前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、前記λ/4光波長板であり、前記円偏光を前記一方向と異なる他方向の直線偏光に変換する、
請求項11~16のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項19】
前記照明光を回折格子によって、複数のビームに分割するステップをさらに備え、
前記対物レンズで集光させるステップにおいて、
複数のビームを含む前記照明光が前記検査対象で反射した複数のビームを含む前記反射光を、前記対物レンズで集光させ、
前記受光素子に受光させるステップにおいて、
前記反射光に含まれた各前記ビームを、各ビームに対応した前記ピンホールを通して前記受光素子の複数の受光部で受光させる、
請求項11~18のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項20】
一方向の直線偏光を含む照明光を生成するステップと、
前記照明光の光軸に直交する断面における中央部を遮光する中央隠しフィルタによって、前記照明光を環状にするステップと、
偏光状態を変換させる偏光状態変換部に前記照明光を透過させ、前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記照明光を、対物レンズで検査対象にスポット状に集光させるステップと、
前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を、前記対物レンズで集光させるステップと、
前記偏光状態変換部に前記反射光を透過させ、前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップと、
前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光素子に受光させるステップと、
前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成するステップと、
前記検査対象の画像に基づいて、前記検査対象を検査するステップと、
を備え
前記検査対象は、EUVマスクに貼り付けられたペリクルで覆われた前記EUVマスクのパターン面であり、
前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、ラジアル偏光波長板であり、前記一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換し、
前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップにおいて、
前記偏光状態変換部は、前記ラジアル偏光波長板であり、前記ラジアル偏光を前記一方向の直線偏光に変換する、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関するものであり、例えば、半導体装置の製造に用いられるマスクの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウェハにパターンを投影する際に用いられるフォトマスクのパターン面を検査する検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4543141号公報
【文献】特表2012-530929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パターンが形成されたEUV(Extreme Ultraviolet)マスクにペリクルを貼り付ける際に、パターン面に異物が付着することがある。パターン面に付着した異物の像は、ウェハに転写されて、レジストパターン欠陥の原因となる。よって、ペリクルをEUVマスクに貼り付けた後のパターン面の異物等の欠陥を検査する必要がある。
【0005】
EUVマスクに用いられるペリクルは、例えば、シリコンの薄膜で構成されている。シリコンの薄膜は、DUV(Deep Ultraviolet)光の吸収率が大きい。よって、シリコンの薄膜で構成されたペリクルは、DUV光の透過率が低いため、DUV光を用いてパターン面の異物等を検査することが困難である。
【0006】
EB(Electron Beam)を用いてパターン面を検査する場合にも、シリコンの薄膜は、電子を散乱及び吸収するため、DUV光を用いた検査と同様に困難である。よって、ペリクルを透過するEUV光を用いて、EUVマスクのパターン面を検査することが考えられる。しかしながら、EUV光を用いて、パターン面を検査する場合には、高価なEUV光学系を必要とするので、コストが増加する。
【0007】
シリコンの薄膜で構成されたペリクルは、可視光をある程度は透過させる。よって、可視光を用いて、EUVマスクのパターン面を検査することも考えられる。しかしながら、可視光を用いてパターン面を検査する場合には、可視光光学系は、微細なパターンを解像する分解能を有していない。また、シリコンの薄膜は、可視光の反射率が高い。よって、通常の可視光光学系を用いて得られる画像は、フレアが強く、不鮮明なものとなる。このため、パターン面の異物等を精度よく検査することができない。
【0008】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、パターン面の欠陥を低コストで精度よく検査することができる検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査装置は、一方向の直線偏光を含む照明光を生成する光源と、偏光状態を変換させる偏光状態変換部と、前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記照明光を検査対象にスポット状に集光するとともに、前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を集光する対物レンズと、前記偏光状態変換部を透過し前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光する受光素子と、前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成し、形成された前記画像に基づいて、前記検査対象を検査する処理部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る検査方法は、一方向の直線偏光を含む照明光を生成するステップと、偏光状態を変換させる偏光状態変換部に前記照明光を透過させ、前記照明光の前記偏光状態を変換させるステップと、前記偏光状態を変換された前記照明光を、対物レンズでスポット状に検査対象に集光させるステップと、前記照明光が前記検査対象で反射した反射光を、前記対物レンズで集光させるステップと、前記偏光状態変換部に前記反射光を透過させ、前記反射光の前記偏光状態を変換させるステップと、前記偏光状態を変換された前記反射光を、スポット状に集光した前記照明光で照明された前記検査対象と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光素子に受光させるステップと、前記受光素子が受光した前記反射光から前記検査対象の画像を形成するステップと、前記検査対象の画像に基づいて、前記検査対象を検査するステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン面の欠陥を低コストで精度よく検査することができる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。
図2】実施形態1に係る検査装置のラジアル偏光波長板、並びに、入射前及び透過後の照明光の偏光状態を例示した図である。
図3】実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
図4】実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である
図5】シリコン薄膜を含むペリクルをP偏光の照明光で照明した場合の透過率を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。
図6】シリコン薄膜を含むペリクルをP偏光の照明光で照明した場合の反射率を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。
図7】シリコン薄膜を含むペリクルをS偏光の照明光で照明した場合の透過率を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。
図8】シリコン薄膜を含むペリクルをS偏光の照明光で照明した場合の反射率を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。
図9】シリコン薄膜を含むペリクルに対して、P偏光及びS偏光を入射させた場合の入射角と、反射率及び透過率との関係を例示したグラフであり、横軸は、入射角を示し、縦軸は、反射率及び透過率を示す。
図10】シリコン薄膜を含むペリクルに対して、P偏光及びS偏光を入射させた場合の入射角と、反射率及び透過率との関係を例示したグラフであり、横軸は、入射角を示し、縦軸は、反射率及び透過率を示す。
図11】実施形態2に係る検査装置を例示した構成図である。
図12】実施形態3に係る検査装置を例示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0014】
(実施形態1)
実施形態1に係る検査装置を説明する。図1は、実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。図1に示すように、検査装置1は、光源10、中央隠しフィルタ11、レンズ21、レンズ22、光学部材23、ガルバノミラー24、レンズ26、レンズ27、偏光状態変換部30、対物レンズ40、ステージ50、受光素子60、処理部70を備えている。検査装置1の検査対象90は、例えば、ペリクル92で覆われたEUVマスク91のパターン面93である。
【0015】
光源10は、照明光Lを生成する。光源10は、一方向の直線偏光を含む照明光Lを生成する。直線偏光は、例えば、P偏光である。光源10は、照明光Lとして、例えば、可視光を生成する可視光レーザである。よって、光源10は、可視光を含む照明光Lを生成する。具体的には、光源10は、中心波長532[nm]、または、405[nm]の可視光を含む照明光Lを生成する。
【0016】
中央隠しフィルタ11は、照明光Lの光軸Cに直交する断面における中央部を遮光する。よって、中央隠しフィルタ11は、照明光Lを環状にする。したがって、中央隠しフィルタ11を透過した照明光Lの断面は環状である。中央隠しフィルタ11は、例えば、対物レンズ40の瞳と共役な位置に配置されている。中央隠しフィルタ11は、光源10とレンズ21との間であって、レンズ21の焦点に位置するように配置されている。
【0017】
レンズ21及びレンズ22は、中央隠しフィルタ11と、光学部材23との間に配置されている。レンズ21及びレンズ22は、リレーレンズである。レンズ21は、照明光Lを平行光にする。レンズ22は、平行な照明光Lをガルバノミラー24に集光する。
【0018】
光学部材23は、例えば、ハーフミラー23aまたはビームスプリッタ23bである。光学部材23は、レンズ22とガルバノミラー24との間に配置されている。光学部材23は、照明光Lの一部を反射し、一部を透過させる。光学部材23を透過した照明光Lは、ガルバノミラー24に集光する。
【0019】
ガルバノミラー24は、反射面25を有している。ガルバノミラー24は、反射面25に入射した照明光Lを反射させる。ガルバノミラー24は、反射面25を回転させることができる。ガルバノミラー24は、反射面25を回転させることにより、反射させた照明光LでEUVマスク91のパターン面93をスキャンさせる。なお、ガルバノミラー24の代わりに、ポリゴンミラー、または、音響光学素子等のスキャナーを用いてもよい。
【0020】
レンズ26及びレンズ27は、ガルバノミラー24と偏光状態変換部30との間に配置されている。レンズ26及びレンズ27は、リレーレンズである。レンズ26は、ガルバノミラー24で反射した照明光Lを平行光にする。レンズ27は、平行な照明光Lを集光させる。レンズ27の焦点で集光した照明光Lは、偏光状態変換部30に入射する。偏光状態変換部30を透過した照明光Lは、拡がるように進み、対物レンズ40に入射する。
【0021】
偏光状態変換部30は、レンズ27と、対物レンズ40との間に配置されている。偏光状態変換部30は、例えば、レンズ27の焦点に位置するように配置されている。偏光状態変換部30は、入射した光の偏光状態を変換させる。例えば、偏光状態変換部30は、ラジアル偏光波長板30aである。ラジアル偏光波長板30aは、一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換する。
【0022】
図2は、実施形態1に係る検査装置のラジアル偏光波長板、並びに、入射前及び透過後の照明光Lの偏光状態を例示した図である。図2に示すように、ラジアル偏光波長板30aは、光軸C方向から見て、液晶分子の向きにより、入射した照明光Lの位相を光軸Cの周りに少しづつずらす分割片が配置されている。図では、便宜的に、液晶分子の向きが8個の分割片に分割されている。なお、実際は、液晶分子の向きは連続的に変化している。
【0023】
ラジアル偏光波長板30aに入射前の照明光Lは、一方向の直線偏光を含んでいる。一方、ラジアル偏光波長板30aを透過後の照明光Lは、照明光Lの光軸Cから周辺に放射する方向のラジアル偏光を含んでいる。このように、ラジアル偏光波長板30aは、一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換する。また、ラジアル偏光波長板30aは、入射したラジアル偏光を一方向の直線偏光に変換する。
【0024】
対物レンズ40は、偏光状態変換部30を透過して偏光状態を変換された照明光Lを検査対象90にスポット状に集光する。また、対物レンズ40は、照明光Lが検査対象90で反射した反射光Rを透過させる。具体的には、ラジアル偏光波長板30aを透過してラジアル偏光に変換された照明光Lを、EUVマスク91のパターン面93に集光する。また、対物レンズ40は、照明光LがEUVマスク91のパターン面93で反射した反射光Rを透過させる。
【0025】
対物レンズ40を透過した反射光Rは、偏光状態変換部30に入射する。偏光状態変換部30は、入射した反射光Rの偏光状態を変換させる。偏光状態変換部30がラジアル偏光波長板30aの場合には、入射したラジアル偏光を一方向の直線偏光に変換する。
【0026】
偏光状態変換部30を透過して偏光状態を変換された反射光Rは、レンズ27及びレンズ26を介して、ガルバノミラー24で反射される。ガルバノミラー24で反射した反射光Rは、光学部材23に入射する。光学部材23は、入射した反射光Rの一部を反射し、一部を透過させる。光学部材23で反射した反射光Rは、レンズ28を介して、受光素子60に入射する。
【0027】
受光素子60は、反射光Rを受光する。反射光Rは、ピンホールを通過したものである。ピンホールは、スポット状に集光した照明光Lで照明された検査対象90と共役な結像位置に配置されている。よって、受光素子60は、スポット状に集光した照明光Lで照明された検査対象90と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して反射光Rを受光する。このように、検査装置1は、コンフォーカル光学系を構成する。コンフォーカル光学系では、スポット状に集光した照明光Lの焦点面からの反射光Rは、共役な結像位置に配置されたピンホールを通過する。これにより、受光素子60は、検査対象90の焦点面の反射光Rを受光することができる。
【0028】
一方、コンフォーカル光学系では、スポット状に集光した照明光Lの焦点面以外からの反射光Rは、ピンホール面で拡がっている。よって、ピンホールを通る焦点面以外からの反射光Rは低減する。これにより、検査対象90の焦点面以外の反射光Rが受光素子60に受光されないようにすることができる。
【0029】
例えば、検査対象90を、ペリクル92で覆われたEUVマスク91のパターン面93とし、パターン面93に焦点面を合わせた場合を想定する。コンフォーカル光学系では、スポット状に集光した照明光Lのパターン面93からの反射光Rは、ピンホールを通過する。これにより、受光素子60は、パターン面93からの反射光Rを受光し、パターン面93の画像を形成する。
【0030】
一方、コンフォーカル光学系では、スポット状に集光した照明光Lのパターン面93以外からの反射光Rは、ピンホール面で拡がる。例えば、焦点面以外であるペリクル92で反射した反射光Rは、ピンホール面で拡がる。これにより、ピンホールを通るペリクル92で反射した反射光Rは低減する。したがって、ペリクル92で反射した反射光Rが受光素子60に受光されないようにすることができる。よって、ペリクル92で反射した反射光Rによるフレアの発生を抑制することができる。
【0031】
なお、コンフォーカル光学系においても、瞳の中心を通る照明光Lがペリクル92で反射した反射光Rは、ピンホールの中心を通ることになる。そこで、本実施形態のように、中央隠しフィルタ11を用いることにより、ペリクル92で反射した反射光Rが受光素子60に受光されないようにすることができる。よって、受光素子60に到達するペリクル92からの反射光Rの影響をさらに低減することができる。
【0032】
受光素子60は、偏光状態変換部30を透過して偏光状態を変換された反射光Rを受光面61で受光する。受光素子60は、例えば、リニアイメージセンサーである。受光素子60は、ガルバノミラー24でスキャンされたEUVマスク91のパターン面93の反射光Rを受光する。
【0033】
処理部70は、受光素子60が受光した反射光Rから検査対象90の画像を形成する。そして、処理部70は、形成された検査対象90の画像に基づいて、検査対象90を検査する。具体的には、処理部70は、受光素子60が受光面61で受光した反射光Rから、EUVマスク91のパターン面93の画像を形成する。処理部70は、形成されたパターン面93の画像に基づいて、パターン面93を検査する。処理部70は、例えば、PCである。
【0034】
例えば、検査対象90は、EUVマスク91に貼り付けられたペリクル92で覆われたEUVマスク91のパターン面93である。その場合に、処理部70は、ペリクル92が貼り付けられる前のパターン面93の画像と、ペリクル92が貼り付けられた後のパターン面93の画像と、を比較することによって、パターン面93を検査する。
【0035】
ステージ50は、検査対象90を支持する。ステージ50は、ステージ50の上面に直交するZ軸方向及びステージ50の上面に平行なX軸方向及びY軸方向に移動可能である。ステージ50は、検査対象90に照明光Lが集光されるように検査対象90の位置を調整する。
【0036】
次に、検査装置1の動作として、検査方法を説明する。図3は、実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0037】
図3のステップS11に示すように、照明光Lを生成する。具体的には、光源10を用いて、一方向の直線偏光を含む照明光を生成する。直線偏光は、例えば、P偏光である。
【0038】
次に、ステップS12に示すように、照明光Lを環状にする。具体的には、照明光Lの光軸Cに直交する断面の中央部を遮光する中央隠しフィルタ11によって、照明光Lを環状にする。
【0039】
次に、ステップS13に示すように、照明光Lの偏光状態を変換させる。具体的には、レンズ21及びレンズ22のリレーレンズ、光学部材23、ガルバノミラー24、並びに、レンズ26及びレンズ27のリレーレンズを介して、照明光Lを偏光状態変換部30に入射させる。偏光状態変換部30は、偏光状態を変換させる。よって、偏光状態変換部30に照明光Lを透過させ、照明光Lの偏光状態を変換させる。例えば、偏光状態変換部30は、ラジアル偏光波長板30aであり、一方向の直線偏光をラジアル偏光に変換する。
【0040】
次に、ステップS14に示すように、照明光Lを対物レンズ40で集光する。具体的には、偏光状態を変換された照明光Lを、対物レンズ40で検査対象90にスポット状に集光させる。
【0041】
次に、ステップS15に示すように、照明光Lが検査対象90で反射した反射光Rを、対物レンズ40で集光させる。
【0042】
次に、ステップS16に示すように、反射光Rの偏光状態を変換させる。具体的には、偏光状態変換部30に反射光Rを透過させ、反射光Rの偏光状態を変換させる。例えば、偏光状態変換部30は、ラジアル偏光波長板30aであり、ラジアル偏光を一方向の直線偏光に変換する。
【0043】
次に、ステップS17に示すように、反射光Rを受光素子60で受光させる。具体的には、レンズ27及び26のリレーレンズ、ガルバノミラー24、光学部材23、並びに、レンズ28を介して、偏光状態を変換された反射光Rを、スポット状に集光した照明光Lで照明された検査対象90と共役な結像位置に配置されたピンホールを通して受光素子60に受光させる。
【0044】
次に、ステップS18に示すように、検査対象90の画像を取得する。具体的には、処理部70は、受光素子60が受光した反射光Rから検査対象90の画像を形成する。
【0045】
次に、ステップS19に示すように、検査対象90を検査する。具体的には、処理部70は、検査対象90の画像に基づいて、検査対象90を検査する。
【0046】
ステップS19における検査の際には、Mask to Mask方式、または、Die to Die方式を用いてもよい。以下で、EUVマスク91のパターン面93を検査する場合の検査アルゴリズムとして、Mask to Mask方式を説明する。図4は、実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0047】
図4のステップS21に示すように、参照用に検査対象90の参照画像を取得する。ペリクル92が貼り付けられたEUVマスク91のパターン面93を検査する場合には、参照用に用いる検査対象90は、ペリクル92をEUVマスク91に取り付ける前のパターン面93である。参照用の検査対象90について、図3のステップS11~ステップS18を行うことにより、参照用の検査対象90の参照画像を取得する。
【0048】
次に、ステップS22に示すように、検査用に検査対象90の検査画像を取得する。検査用に用いる検査対象90は、ペリクル92をEUVマスク91に取り付けた後のパターン面93である。検査用の検査対象90について、図3のステップS11~ステップS18を行うことにより、検査用の検査対象90の検査画像を取得する。
【0049】
次に、ステップS23に示すように、参照画像と検査画像とを比較して、検査対象90を検査する。すなわち、ペリクル92が貼り付けられる前のパターン面93の画像と、ペリクル92が貼り付けられた後のパターン面93の画像と、を比較することによって、パターン面93を検査する。
【0050】
このように、EUVマスク91のパターン面93を検査する場合に用いるMask to Mask方式は、参照画像と、検査画像とを比較する。比較の結果、差異があれば、異物等の欠陥として検出する。
【0051】
なお、ステップS21において、可視光を含む照明光Lによる参照画像に加えて、DUV光を含む照明光Lによる高分解能参照画像を取得してもよい。これにより、DUV光による高分解能の画像によっても欠陥が検出されない場合の高分解能参照画像と、可視光を用いた参照画像とを対応させることができる。その場合には、その参照画像は、欠陥が検出されていないことを高分解能参照画像により担保することができる。よって、その参照画像と検査画像との比較によって得られた検査結果の信頼性を向上させることができる。
【0052】
また、欠陥が検出されていないことを担保された参照画像を、検査画像との比較に用いることにより、低分解能及び低コントラストの可視光による検査画像であっても、精度よく欠陥を検査することができる。よって、低コストで検査することができる。
【0053】
また、Mask to Mask方式の場合において、ペリクル92を取り付ける前の参照画像を取得する際には、対物レンズ40とEUVマスク91との間に、光学条件がペリクル92と同等のダミーペリクルを配置してもよい。この場合には、ペリクル92が貼り付けられる前のパターン面93の画像は、光学条件がペリクル92と同じダミーペリクルを通して照明光Lで照明されたパターン面93の画像である。これにより、フレア等の光学条件を同等にすることができる。
【0054】
フレア等の光学条件とは、具体的には、例えば、レンズ内部のフレア等が原因のペリクル92の反射光Rによる影響である。参照画像を取得するEUVマスク91にペリクル92がないことにより、このようなレンズ内部のフレア等が原因のペリクル92の反射光Rによる影響が検査画像だけに反映される場合がある。そうすると、参照画像と検出画像との間に異物等の欠陥以外の差異も生じることになる。そこで、ダミーペリクルを用いた参照画像を取得することにより、参照画像と検出画像との間で、フレア等の光学条件を同等にする。よって、低コストで精度よく異物等の欠陥を検査することができる。
【0055】
EUVマスクがマルチダイレチクルの場合には、Die to Die方式を利用してもよい。複数のダイのうち、いずれかのダイの画像を参照画像とする。それ以外のダイの画像を検査画像とする。ダイ間で画像を比較して、差異があれば、付着異物等の欠陥として検出する。
【0056】
本実施形態において、検査対象90のEUVマスク91は、ペリクル92を貼り付けている。EUVマスク91に用いられるペリクル92は、例えば、シリコンの薄膜で構成されている。ペリクル92は、パターン面93にゴミ等の異物が付着するのを防ぐために貼り付けられる。
【0057】
しかしながら、ペリクル92をEUVマスク91上に貼り付ける際に、異物がパターン面93に付着する場合もある。したがって、ペリクル92越しにパターン面93を検査する必要がある。よって、パターン面93の検査には、ペリクル92を透過するEUV光、または、可視光(例えば、緑色光)を用いる。EUV光を用いる場合には、光学系をEUV光学系にするため、コストが増加する。一方、可視光を用いる場合には、EUV光学系ほど高価な光学系を必要としない。ただし、解像度は、EUV光を用いる場合に比べて低下する。
【0058】
図5は、シリコン薄膜を含むペリクルをP偏光の照明光で照明した場合の透過率(TP)を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図6は、シリコン薄膜を含むペリクルをP偏光の照明光で照明した場合の反射率(RP)を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図7は、シリコン薄膜を含むペリクルをS偏光の照明光で照明した場合の透過率(TS)を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図8は、シリコン薄膜を含むペリクルをS偏光の照明光で照明した場合の反射率(RS)を例示したグラフであり、横軸は、照明光の波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図5図8において、シリコン薄膜の厚さは、45[nm]である。キャッピングとして、両面にルテニウムが1[nm]付加したものを想定している。
【0059】
図5に示すように、450~750[nm]の波長におけるP偏光のシリコン薄膜に対する透過率(TP)は、入射角が大きくなるほど増加する傾向にある。ただし、入射角85[deg]の場合には、65[deg]及び75[deg]よりも低くなる部分がある。図6に示すように、450~750[nm]の波長におけるP偏光のシリコン薄膜に対する反射率(RP)は、入射角が大きくなるほど減少する傾向にある。ただし、入射角85[deg]の場合には、55[deg]~75[deg]よりも高くなる部分がある。
【0060】
図7に示すように、450~750[nm]の波長におけるS偏光のシリコン薄膜に対する透過率(TS)は、入射角が大きくなるほど減少する傾向にある。S偏光の透過率は、P偏光に比べて、格段に低い値となっている。図8に示すように、450~750[nm]の波長におけるS偏光のシリコン薄膜に対する反射率(RS)は、入射角が大きくなるほど増加する傾向にある。S偏光の反射率は、P偏光に比べて、格段に高い値となっている。
【0061】
図9及び図10は、シリコン薄膜を含むペリクルに対して、P偏光及びS偏光を入射させた場合の入射角と、反射率及び透過率との関係を例示したグラフであり、横軸は、入射角を示し、縦軸は、反射率及び透過率を示す。図9では、キャッピングとして、両面にルテニウムが1[nm]付加している。図10では、キャッピングとして、両面にルテニウムが2[nm]付加している。
【0062】
図9に示すように、P偏光及びS偏光の透過率は、入射角が0[deg]において、等しく0.28程度である。P偏光の透過率は、入射角が80[deg]程度までは、入射角が大きくなるほど、大きくなる。入射角が80[deg]で、0.8程度である。入射角が80[deg]よりも大きくなると、急激に減少する。一方、S偏光の透過率は、入射角が大きくなるほど、単調に小さくなる。
【0063】
また、P偏光及びS偏光の反射率は、入射角が0[deg]において、等しく0.53程度である。P偏光の反射率は、入射角が80[deg]程度までは、入射角が大きくなるほど、小さくなる。入射角が80[deg]で、0.0程度である。入射角が80[deg]よりも大きくなると、急激に増加する。一方、S偏光の反射率は、入射角が大きくなるほど、単調に大きくなる。図10に示めされる傾向は、図9と同様である。
【0064】
本実施形態では、照明光Lとして、例えば、P偏光を含んでいる。よって、ペリクル92を透過する透過率を大きくさせることができる。
【0065】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の検査装置1は、コンフォーカル光学系を用いている。このため、フレアを抑制することができる。具体的には、検査装置1の受光素子60は、ピンホールを通した検査対象90の焦点面の反射光Rを受光する一方、焦点面以外からの反射光Rの大部分をピンホール面により受光しないようにすることができる。よって、パターン面93の欠陥を低コストで精度よく検査することができる。
【0066】
また、検査装置1は、照明光Lとして、ラジアル偏光ビームを用いている。このため、対物レンズ40の瞳の周辺の光を、P偏光を含むようにすることができる。よって、照明光Lがペリクル92を透過する透過率を大きくすることができる。また、照明光Lがペリクル92で反射する反射率を小さくすることができる。
【0067】
中央部隠しフィルタ11によって、照明光Lの断面の中央部を遮光している。照明光Lの中央部は、ペリクル92に対して、垂直入射及び垂直反射する。そうすると、フォーカスをずらしたとしても、ペリクル92で反射した反射光は受光素子60に入射する。よって、フレアが大きくなる。本実施形態では、中央隠しフィルタ11によって、照明光Lの中央部を遮光して、環状にしている。これにより、ペリクル92に対して比較的大きな角度を有するように入射及び反射する。よって、ペリクル92で反射した反射光は受光素子60に入射しないので、フレアを抑制することができる。また、入射角を大きくすることができるので、P偏光の透過率を大きくすることができる。さらに、ペリクル92で反射した反射光Rが受光素子60に受光されないようにすることができる。よって、受光素子60に到達するペリクル92からの反射光Rの影響をさらに低減することができる。
【0068】
検査対象90を検査する際に、Mask to Mask方式を用いる場合には、ペリクル92を貼り付ける前の参照画像とペリクル92を貼り付けた後の検査画像とを比較する。比較した結果、検出された欠陥には、疑似欠陥が含まれる場合がある。疑似欠陥は、欠陥ではないが、欠陥のように検出される差異である。このような疑似欠陥は低減されることが望ましい。そこで、参照画像を取得する場合に、光学系にダミーペリクルを挿入する。ダミーペリクルは、ペリクル92と同じ材料を含む。また、ダミーペリクルを挿入する場合には、ペリクルを貼り付けた場合と同等の光学条件になるようにする。例えば、レンズ内部のフレア等が原因のペリクル92の反射光Rによる影響を同等にすることができる。これにより、参照画像と検査画像とを同じ光学条件で取得することができる。このため、両者の画像の差異を小さくすることができ、疑似欠陥を低減することができる。
【0069】
本実施形態の検査装置は、比較的安価な可視光の光学系を用いることができる。よって、検査対象90の欠陥を低コストで高精度に検査することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る検査装置を説明する。図11は、実施形態2に係る検査装置を例示した構成図である。図11に示すように、検査装置2は、検査装置1の構成と、光学部材23及び偏光状態変換部30が異なっている。
【0071】
検査装置2の光学部材23は、検査装置1のハーフミラー23aまたはビームスプリッタ23bに代わって、PBS(Polarized Beam Splitter)23cである。検査装置2の偏光状態変換部30は、検査装置1のラジアル偏光波長板30aに代わって、λ/4波長板30bである。
【0072】
PBS23cは、例えば、P偏光を透過させ、S偏光を反射させる。λ/4波長板30bは、一方向の直線偏光を円偏光に変換する。例えば、P偏光を円偏光に変換する。また、λ/4波長板30bは、円偏光を一方向と異なる他方向の直線偏光に変換する。例えば、円偏光をS偏光に変換する。
【0073】
PBS23cは、P偏光の照明光Lを透過させる。PBS23cを透過した照明光Lは、ガルバノミラー24に集光する。ガルバノミラー24で反射した照明光Lは、レンズ26及びレンズ27を介して、偏光状態変換部30に入射する。
【0074】
偏光状態変換部30のλ/4波長板30bは、P偏光の照明光Lを円偏光に変換する。対物レンズ40は、λ/4波長板30bを透過して円偏光に変換された照明光Lを検査対象90にスポット状に集光する。また、対物レンズ40は、照明光Lが検査対象90で反射した反射光Rを透過させる。対物レンズ40を透過した反射光Rは、λ/4波長板30bに入射する。λ/4波長板30bは、入射した円偏光をS偏光に変換する。
【0075】
S偏光に変換された反射光Rは、レンズ27及びレンズ26を介して、ガルバノミラー24で反射される。ガルバノミラー24で反射した反射光Rは、PBS23cに入射する。PBS23cは、入射したS偏光を含む反射光Rを反射させる。PBS23cで反射した反射光Rは、レンズ28を介して、受光素子60に入射する。
【0076】
受光素子60及び処理部70の動作は、実施形態1の検査装置1と同様である。また、検査装置2を用いた検査方法は、図3におけるステップS13及びステップ16以外は、実施形態1と同様である。具体的には、ステップS13の照明光Lの偏光状態を変換させるステップにおいて、偏光状態変換部30は、λ/4光波長板30bであり、一方向の直線偏光を円偏光に変換する。例えば、λ/4光波長板30bは、P偏光を円偏光に変換する。ステップS16の反射光Rの偏光状態を変換させるステップにおいて、偏光状態変換部30は、λ/4光波長板30bであり、円偏光を一方向と異なる他方向の直線偏光に変換する。例えば、λ/4光波長板30bは、円偏光をS偏光に変換する。
【0077】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の検査装置2は、PBS23c及びλ/4波長板30bを用いている。よって、PBS23cは、P偏光を含む照明光Lのほとんどを透過させて、検査対象90の照明に用いるようにする。また、PBS23cは、λ/4波長板30bによって変換されたS偏光を含む反射光Rのほとんどを反射させて、受光素子60に受光させるようにする。これにより、照明光L及び反射光Rの効率を向上させ、検査に用いる光量を増加させることができる。その結果、検査の精度を向上させることができる。これ以外の構成、動作及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0078】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る検査装置を説明する。実施形態3の検査装置は、照明光をマルチビームとしたものである。図12は、実施形態3に係る検査装置を例示した構成図である。図12に示すように、検査装置3は、回折格子12をさらに備えている。回折格子12は、中央隠しフィルタ11に並ぶように光軸C上に配置されている。例えば、回折格子12は、中央隠しフィルタ11とレンズ21との間に配置されている。なお、回折格子12は、光源10と中央隠しフィルタ11との間に配置されてもよい。回折格子12は、例えば、対物レンズ40の瞳と共役な位置に配置されている。具体的には、回折格子12は、レンズ21の焦点に位置するように配置されている。
【0079】
回折格子12は、照明光Lを複数のビームに分割する。具体的には、回折格子12は、入射した照明光Lを、紙面に垂直なX軸方向に並んだ複数のビームに分割する。したがって、照明光Lは、X軸方向に並ぶように分割された複数のビームを含んだ状態で、対物レンズ40に到達する。
【0080】
対物レンズ40は、複数のビームを含む照明光Lを検査対象90にスポット状に集光する。また、対物レンズ40は、複数のビームを含む照明光Lが検査対象90で反射した複数のビームを含む反射光Rを集光する。
【0081】
反射光Rは、X軸方向に並ぶように分割された複数のビームを含んだ状態で、受光素子60aに到達する。
【0082】
受光素子60aは、反射光Rに含まれた各ビームを受光する複数の受光部62を有している。図では、複数の受光部62は、X軸に直交する方向に並んでいるが、実際は、X軸方向に並んでいる。また、各受光部62に対応するように、ピンホールは複数設けられている。よって、各受光部62は、反射光Rに含まれた各ビームを、各ピンホールを通して受光する。各受光部62で受光された反射光Rに含まれた各ビームの情報は、処理部70に出力される。処理部70は、反射光Rに含まれた各ビームから、検査対象90の画像を形成する。
【0083】
検査装置3の光学部材23は、ハーフミラー23a、ビームスプリッタ23b及びPBS23cのいずれでもよい。偏光状態変換部30は、光学部材23がハーフミラー23aまたはビームスプリッタ23bの場合には、ラジアル偏光波長板30aであり、光学部材23がPBS23cの場合には、λ/4波長板30bである。これ以外の構成及び動作は、検査装置1及び2の構成と同様である。
【0084】
本実施形態の検査装置3によれば、照明光Lを回折格子12によって、複数のビームに分割している。複数のビームを含む照明光Lは、検査対象90の複数の箇所を同時に照明する。よって、照明光Lが検査対象90で反射した反射光Rも、複数のビームを含む。これに対応するように、受光素子60aは、複数の受光部62を有するようにしている。したがって、複数のビームを含む反射光Rを用いて画像を形成するので、高速に画像を形成することができる。これにより、検査を高速化することができる。このように、マルチビームとすることで、高速検査を実現できる検査装置3となる。これ以外の効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態1~3の各構成を組み合わせた実施形態も、発明の詳細な説明に記載の技術的思想に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1、2、3 検査装置
10 光源
11 中央隠しフィルタ
12 回折格子
21、22 レンズ
23 光学部材
23a ハーフミラー
23b ビームスプリッタ
23c PBS
24 ガルバノミラー
25 反射面
26、27、28 レンズ
30 偏光状態変換部
30a ラジアル偏光波長板
30b λ/4波長板
40 対物レンズ
50 ステージ
60、60a 受光素子
61 受光面
62 受光部
70 処理部
90 検査対象
91 EUVマスク
92 ペリクル
93 パターン面
C 光軸
L 照明光
R 反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12