(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】金属異物検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/11 20060101AFI20230615BHJP
G01N 27/83 20060101ALI20230615BHJP
G01V 3/10 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G01V3/11 C
G01N27/83
G01V3/10 E
(21)【出願番号】P 2019216071
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】597010628
【氏名又は名称】協立電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰利
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-304348(JP,A)
【文献】特開2018-141722(JP,A)
【文献】特開昭58-153156(JP,A)
【文献】特開昭58-002772(JP,A)
【文献】特開昭56-117178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/72-27/9093
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出コイルを含む発振回路を有する複数のセンサ部
と、
前記複数のセンサ部が有する発振回路に同期信号を出力する基準発振器と、を備え
、
前記検出コイルのインピーダンス変動に基づいて金属異物の検出信号を前記センサ部から出力する金属異物検出装置であって、
前記検出コイルのインピーダンス変動がない状態では、前記複数のセンサ部の発振回路が同期して発振
し、
前記複数のセンサ部が有する発振回路は、前記同期信号に同期して発振するものであり、
前記センサ部は、前記基準発振器の同期信号に追従するように前記発振回路の発振状態を制御するPLL回路が形成されたものであり、
前記センサ部は、前記PLL回路のループフィルタからの出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置。
【請求項2】
検出コイルを含む発振回路を有する複数のセンサ部と、
前記複数のセンサ部が有する発振回路に同期信号を出力する基準発振器と、を備え、
前記検出コイルのインピーダンス変動に基づいて金属異物の検出信号を前記センサ部から出力する金属異物検出装置であって、
前記検出コイルのインピーダンス変動がない状態では、前記複数のセンサ部の発振回路が同期して発振し、
前記複数のセンサ部が有する発振回路は、前記同期信号に同期して発振するものであり、
前記センサ部は、前記基準発振器の同期信号に追従するように前記発振回路の発振状態を制御するPLL回路が形成されたものであり、
前記PLL回路のループフィルタは、検出対象が前記検出コイルを通過するときに前記ループフィルタへ入力される信号の周波数成分よりも遮断周波数が低いものであり、
前記センサ部は、前記発振回路の出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属異物に起因する発振周波数の変化を利用した金属異物検出装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載の金属異物検出装置を複数設けて検査範囲を広範囲にした場合、検出装置同士の発振状態の差異に基づいて隣接する検出装置でノイズが発生するため、検出精度が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、検査範囲を広くしつつも検出精度が低下しにくい金属異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための金属異物検出装置の第一の態様は、
検出コイルを含む発振回路を有する複数のセンサ部と、
前記複数のセンサ部が有する発振回路に同期信号を出力する基準発振器と、を備え、
前記検出コイルのインピーダンス変動に基づいて金属異物の検出信号を前記センサ部から出力する金属異物検出装置であって、
前記検出コイルのインピーダンス変動がない状態では、前記複数のセンサ部の発振回路が同期して発振し、
前記複数のセンサ部が有する発振回路は、前記同期信号に同期して発振するものであり、
前記センサ部は、前記基準発振器の同期信号に追従するように前記発振回路の発振状態を制御するPLL回路が形成されたものであり、
前記センサ部は、前記PLL回路のループフィルタからの出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする。
【0007】
この金属異物検出装置によれば、センサ部を複数設けたことで検査範囲を広くすることができる。また、センサ部間の発振状態を基準発振器に同期させることで、検出精度を低下しにくくすることができる。また、PLL回路によってセンサ部間の発振状態を基準発振器に同期させることができる。そして、発振回路の発振状態を基準発振器に同期させる際のループフィルタからの出力の変化を金属異物の検出信号に用いることができる。
【0014】
上記課題を解決するための金属異物検出装置の第二の態様は、
検出コイルを含む発振回路を有する複数のセンサ部と、
前記複数のセンサ部が有する発振回路に同期信号を出力する基準発振器と、を備え、
前記検出コイルのインピーダンス変動に基づいて金属異物の検出信号を前記センサ部から出力する金属異物検出装置であって、
前記検出コイルのインピーダンス変動がない状態では、前記複数のセンサ部の発振回路が同期して発振し、
前記複数のセンサ部が有する発振回路は、前記同期信号に同期して発振するものであり、
前記センサ部は、前記基準発振器の同期信号に追従するように前記発振回路の発振状態を制御するPLL回路が形成されたものであり、
前記PLL回路のループフィルタは、検出対象が前記検出コイルを通過するときに前記ループフィルタへ入力される信号の周波数成分よりも遮断周波数が低いものであり、
前記センサ部は、前記発振回路の出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする。
【0015】
この金属異物検出装置によれば、センサ部を複数設けたことで検査範囲を広くすることができる。また、センサ部間の発振状態を基準発振器に同期させることで、検出精度を低下しにくくすることができる。また、PLL回路によってセンサ部間の発振状態を基準発振器に同期させることができる。そして、検出対象が検出コイルを通過する際に発振回路の発振状態を基準発振器に同期しないようにしつつ、その発振回路の出力の変化を金属異物の検出信号に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記の金属異物検出装置の態様によれば、検査範囲を広くしつつも検出精度が低下しにくい金属異物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施形態の金属異物検出装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】第二実施形態の金属異物検出装置2の構成を示すブロック図である。
【
図3】第三実施形態の金属異物検出装置3の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一実施形態]
[第一実施形態(金属異物検出装置1)の概要]
以下、図面を用いて第一実施形態の金属異物検出装置について説明する。
図1は、第一実施形態の金属異物検出装置1の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように第一実施形態の金属異物検出装置1は、第一センサ部10A、第二センサ部10B、およびこれらのセンサ部に同じ周波数の信号を送る基準発振器11とを有するものである。二つのセンサ部10A、10Bは、検出コイル101A、101Bのインピーダンスが変化することによる発振器102A、102Bの状態変化を利用して金属異物検出の信号を出力するものであり、双方とも同じ構成のものである。なお、以下の説明では、二つのセンサ部10A、10Bのうちのいずれの構成かを区別するために、第一センサ部10Aの構成については符号Aを用い、第二センサ部10Bについては符号Bを用いている。以下、二つのセンサ部10A、10Bのうち、第一センサ部10Aについて説明する。なお、第二センサ部10Bについては第一センサ部10Aと同じ構成であるため説明を省略する。
【0020】
[第一センサ部10A(1:発振周波数を基準発振器11に追従させるPLL回路)]
第一センサ部10Aでは、検出コイル101Aとバラクタ103Aに接続された発振器102Aを有しており、これらの組み合わせによっていわゆるLC発振回路が形成されている。さらに第一センサ部10Aでは、発振器102Aからの出力を基準発振器11に追従させるPLL回路が形成されている。以下、このPLL回路について説明する。
【0021】
発振器102Aは、検出コイル101Aおよび発振器102A内のキャパシタとの共振によって発振するが、このキャパシタ分はバラクタ103Aの制御電圧によって変化する。これらの発振器102A、検出コイル101A、バラクタ103Aの組み合わせによって電圧制御発振器(VCO)が形成されている。
【0022】
発振器102Aからの出力は、二値化回路104Aによって二値化され、さらに分周器105Aを通過して分周(1/N)された後に位相比較器106Aに入力される。この位相比較器106Aには、分周器105Aからの信号の他、基準発振器11からの信号を分周器107Aによって分周(1/M)した信号が入力され、これらの信号の位相差に応じた信号が出力される。この位相比較器106Aからの出力がループフィルタ108Aを通過してバラクタ103Aの制御電圧となる。なお、ループフィルタ108Aについては、金属異物通過時に位相比較器106Aから出力される信号の周波数よりも、遮断周波数が高くなるように設計する。
【0023】
上記のPLL回路では、発振器102Aからの出力が基準発振器11からの信号に追従し、その周波数が基準発振器11の発振周波数のN/M倍になるように制御される。ここで、検出コイル101Aの近傍や内側を金属異物が通過すると、検出コイル101Aのインピーダンス(インダクタンスと寄生キャパシタンス)が変化し、発振器102Aの発振状態(発振周波数、発振ゲイン)が変化して、分周器105Aからの信号と分周器107Aからの信号に位相差が生じる。この位相差に応じた信号が位相比較器106Aからループフィルタ108Aを通過してバラクタ103Aに制御電圧としてフィードバックされ、発振器102Aからの信号が基準発振器11からの信号に追従するように制御される(発振器102Aの発振周波数が基準発振器11の発振周波数のN/M倍になる)。なお、この制御の一方で、発振器102Aの発振ゲインについては、検出コイル101Aのインピーダンスの変化と、バラクタ103Aの制御電圧の変化により、金属異物がない状態における発振ゲインと異なる大きさになる。
【0024】
[第一センサ部10A(2:金属異物の検出信号を出力する回路)]
次に、第一センサ部10Aにおける金属異物の検出信号を出力する回路について説明する。
【0025】
第一センサ部10Aでは、検出コイル101Aの近傍や内側を金属異物が通過することにより、発振器102Aの発振ゲインが変化する。第一センサ部10Aは、発振器102Aの発振ゲインの変化を用いて金属異物検出の信号を出力するものである。
【0026】
まず、発振器102Aからの出力は包絡線検波器111Aによって処理される。この包絡線検波器111Aにおける包絡線検波にあたっては、発振器102Aの発振周波数の成分が含まれる場合があるため、これを除去するためのフィルタ112Aを通過させる。なお、発振器102Aの周波数は通常数百kHz以上であるのに対し、金属異物を検出するときの信号成分は数十~数百Hzであって周波数の隔たりが大きいことから、フィルタ112Aは簡素な構成とすることができる。
【0027】
フィルタ112Aの通過後に得られる信号は増幅器113Aによって扱いやすいレベルに増幅され、さらに、金属異物の検出に関与しない周波数分を除去するためフィルタ114Aを通過させる。こうして得られた信号が、金属異物が検出された信号なのか、それともノイズによるものなのかを判定するため、比較器115Aにおいて異物検出時の出力レベルとして設定された閾値との大きさが比較される。フィルタ114Aを通過した信号がこの閾値を超えた(あるいは下回った)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号を出力し、閾値を超えない(あるいは下回らない)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号は出力されない。
【0028】
[金属異物検出装置1の効果およびその他の構成]
第一実施形態の金属異物検出装置1では、二つのセンサ部10A、10Bを有しており、センサ部が一つの場合と比較してより広い範囲を検査することができる。
【0029】
また、第一実施形態の金属異物検出装置1では、金属異物による影響の有無に関わらず、二つのセンサ部10A、10Bの発振器102A、102Bが双方とも基準発振器11に追従して発振し、センサ部同士で発振が同期する。仮に、センサ部同士で発振が同期する構成を用いることなくセンサ部を複数設けた場合には、センサ部同士で発振周波数や位相が異なる状態となり、これに起因してビートノイズが生じることでセンサが誤検出する虞がある。第一実施形態では、センサ部同士で発振が同期するため、発振周波数や位相が異なることに起因するノイズが生じないようにすることができる。
【0030】
また、第一実施形態では、第一センサ部10Aと第二センサ部10Bの発振回路を基準発振器11からの信号に同期して発振させる構成を採用しているが、センサ部同士で発振を同期させる構成とするにあたってはこの構成に限定されるものではなく、例えば、基準発振器11のような外部発振器を用いずに、第二センサ部10Bの発振器102Bを、第一センサ部10Aの発振器102Aの発振出力に同期させる構成としてもよい。具体的な構成としては、金属異物検出装置1において基準発振器11を削除し、さらに第一センサ部10Aの二値化回路104Aからループフィルタ108Aまでを削除して発振器102Aが単独で発振するようにした上で、この発振器102Aからの出力を第二センサ部10Bの分周器107Bに入力するといった構成が挙げられる。
【0031】
なお、センサ部同士で発振を同期させる構成を採用するにあたり、センサ部の数は第一実施形態の金属異物検出装置1のセンサ部の数に限られるものではなく、例えばセンサ部が3つ以上であってもよい。
【0032】
[第二実施形態]
[第二実施形態(金属異物検出装置2)の概要]
以下、図面を用いて第二実施形態の金属異物検出装置について説明する。
図2は、第二実施形態の金属異物検出装置2の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態の金属異物検出装置1と共通する構成については同じ符号を用いている。
【0033】
図2に示すように第二実施形態の金属異物検出装置2は、第一センサ部20A、第二センサ部20B、およびこれらのセンサ部に同じ周波数の信号を送る基準発振器11とを有するものである。二つのセンサ部20A、20Bは、検出コイル101A、101Bのインピーダンスが変化することによる発振器102A、102Bの状態変化を利用して金属異物検出の信号を出力するものであり、双方とも同じ構成のものである。なお、以下の説明では、二つのセンサ部20A、20Bのうちのいずれの構成かを区別するために、第一センサ部20Aの構成については符号Aを用い、第二センサ部20Bについては符号Bを用いている。以下、二つのセンサ部20A、20Bのうち、第一センサ部20Aについて説明する。なお、第二センサ部20Bについては第一センサ部20Aと同じ構成であるため説明を省略する。
【0034】
[第一センサ部20A(1:発振周波数を基準発振器11に追従させるPLL回路)]
第一センサ部20Aでは、第一実施形態と同様に検出コイル101Aとバラクタ103Aに接続された発振器102Aを有しており、これらの組み合わせによっていわゆるLC発振回路が形成されている。さらに第一センサ部20Aでは、発振器102Aからの出力を基準発振器11に追従させるPLL回路が形成されている。このPLL回路については、第一実施形態と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0035】
[第一センサ部20A(2:金属異物の検出信号を出力する回路)]
次に、第一センサ部20Aにおける金属異物の検出信号を出力する回路について説明する。
【0036】
第一センサ部20Aでは、検出コイル101Aの近傍や内側を金属異物が通過することにより、バラクタ103Aの制御電圧が変化する。第一センサ部20Aは、バラクタ103Aの制御電圧(ループフィルタ108Aの出力)の変化を用いて金属異物検出の信号を出力するものである。
【0037】
まず、ループフィルタ108Aからの出力は、発振器102Aの発振周波数の成分が含まれる場合があるため、これを除去するためのフィルタ201Aを通過させる。なお、発振器102Aの周波数は通常数百kHz以上であるのに対し、金属異物を検出するときの信号成分は数十~数百Hzであって周波数の隔たりが大きいことから、フィルタ201Aは簡素な構成とすることができる。
【0038】
フィルタ201Aの通過後に得られる信号は増幅器202Aによって扱いやすいレベルに増幅され、さらに、金属異物の検出に関与しない周波数分を除去するためフィルタ203Aを通過させる。こうして得られた信号が、金属異物が検出された信号なのか、それともノイズによるものなのかを判定するため、比較器204Aにおいて異物検出時の出力レベルとして設定された閾値との大きさが比較される。フィルタ203Aを通過した信号がこの閾値を超えた(あるいは下回った)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号を出力し、閾値を超えない(あるいは下回らない)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号は出力されない。
【0039】
[金属異物検出装置2の効果およびその他の構成]
第二実施形態の金属異物検出装置2では、二つのセンサ部20A、20Bを有しており、センサ部が一つの場合と比較してより広い範囲を検査することができる。
【0040】
また、第二実施形態の金属異物検出装置2では、金属異物による影響の有無に関わらず、二つのセンサ部20A、20Bの発振器102A、102Bが双方とも基準発振器11に追従して発振し、センサ部同士で発振が同期する。仮に、センサ部同士で発振が同期する構成を用いることなくセンサ部を複数設けた場合には、センサ部同士で発振周波数や位相が異なる状態となり、これに起因してビートノイズが生じることでセンサが誤検出する虞がある。第二実施形態では、センサ部同士で発振が同期するため、発振周波数や位相が異なることに起因するノイズが生じないようにすることができる。
【0041】
なお、センサ部同士で発振を同期させる構成を採用するにあたり、センサ部の数は第一実施形態の金属異物検出装置2のセンサ部の数に限られるものではなく、例えばセンサ部が3つ以上であってもよい。
【0042】
[第三実施形態]
[第三実施形態(金属異物検出装置3)の概要]
以下、図面を用いて第三実施形態の金属異物検出装置について説明する。
図3は、第三実施形態の金属異物検出装置3の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態の金属異物検出装置1と共通する構成については同じ符号を用いている。
【0043】
図3に示すように第三実施形態の金属異物検出装置3は、第一センサ部30A、第二センサ部30B、およびこれらのセンサ部に同じ周波数の信号を送る基準発振器11とを有するものである。二つのセンサ部30A、30Bは、検出コイル101A、101Bのインピーダンスが変化することによる発振器102A、102Bの状態変化を利用して金属異物検出の信号を出力するものであり、双方とも同じ構成のものである。なお、以下の説明では、二つのセンサ部30A、30Bのうちのいずれの構成かを区別するために、第一センサ部30Aの構成については符号Aを用い、第二センサ部30Bについては符号Bを用いている。以下、二つのセンサ部30A、30Bのうち、第一センサ部30Aについて説明する。なお、第二センサ部30Bについては第一センサ部30Aと同じ構成であるため説明を省略する。
【0044】
[第一センサ部30A(1:金属異物通過時の発振周波数を基準発振器11に追従させないPLL回路)]
第一センサ部30Aでは、検出コイル101Aとバラクタ103Aに接続された発振器102Aを有しており、第一実施形態と同様にこれらの組み合わせによっていわゆるLC発振回路が形成されている。さらに第一センサ部30Aでは、発振器102Aからの出力を基準発振器11に追従させるPLL回路が形成されている。このPLL回路については、ループフィルタ108Aの遮断周波数が第一実施形態とは異なるものであり、これによって金属異物通過時において発振器102Aからの出力が基準発振器11に追従しない(あるいは追従しにくくなる)ように構成されている。以下、このPLL回路について説明する。
【0045】
発振器102Aは、検出コイル101Aおよび発振器102A内のキャパシタとの共振によって発振するが、このキャパシタ分はバラクタ103Aの制御電圧によって変化する。これらの発振器102A、検出コイル101A、バラクタ103Aの組み合わせによって電圧制御発振器(VCO)が形成されている。
【0046】
発振器102Aからの出力は、二値化回路104Aによって二値化され、さらに分周器105Aを通過して分周(1/N)された後に位相比較器106Aに入力される。この位相比較器106Aには、分周器105Aからの信号の他、基準発振器11からの信号を分周器107Aによって分周(1/M)した信号が入力され、これらの信号の位相差に応じた信号が出力される。この位相比較器106Aからの出力がループフィルタ108Aを通過してバラクタ103Aの制御電圧となる。なお、ループフィルタ108Aについては、金属異物通過時に位相比較器106Aから出力される信号の周波数成分(例えば、10~150Hz)よりも、遮断周波数が低くなるように(例えば、1Hz)設計する。また、金属異物がない状態で位相比較器106Aから出力される信号の周波数成分が、ループフィルタ108Aの遮断周波数よりも低くなるように、上記LC回路の発振周波数および基準発振器11を設計する。一例として、LC回路の発振周波数の1/Nと、基準発振器11の発振周波数の1/Mとが等しくなるように設計する。
【0047】
上記のPLL回路では、金属異物がない状態では、発振器102Aからの出力が基準発振器11からの信号に追従し、その周波数が基準発振器11の発振周波数のN/M倍になるように制御される。ここで、検出コイル101Aの近傍や内側を金属異物が通過すると、検出コイル101Aのインピーダンス(インダクタンスと寄生キャパシタンス)が変化し、発振器102Aの発振状態(発振周波数、発振ゲイン)が変化して、分周器105Aからの信号と分周器107Aからの信号に位相差が生じる。しかし、この位相差に応じた信号が位相比較器106Aからループフィルタ108Aに出力されるものの、ループフィルタ108Aでは金属異物通過時に位相比較器106Aから出力される信号の周波数よりも遮断周波数が低いため、バラクタ103Aの制御電圧としてフィードバックされない。その結果、発振器102Aからの信号が基準発振器11からの信号に追従するように制御されず、発振状態が変化したままになる。
【0048】
[第一センサ部30A(2:金属異物の検出信号を出力する回路)]
次に、第一センサ部30Aにおける金属異物の検出信号を出力する回路について説明する。
【0049】
第一センサ部30Aでは、検出コイル101Aの近傍や内側を金属異物が通過することにより、発振器102Aの発振状態が変化する。第一センサ部30Aは、発振器102Aの発振状態の変化を用いて金属異物検出の信号を出力するものである。
【0050】
まず、発振器102Aからの出力は位相検波器301Aに入力され、基準発振器11からの出力と乗算される。位相検波器301Aからの出力は増幅器302Aによって扱いやすいレベルに増幅され、さらに、金属異物の検出に関与しない周波数分を除去するためフィルタ303Aを通過させる。こうして得られた信号が、金属異物が検出された信号なのか、それともノイズによるものなのかを判定するため、比較器304Aにおいて異物検出時の出力レベルとして設定された閾値との大きさが比較される。フィルタ303Aを通過した信号がこの閾値を超えた(あるいは下回った)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号を出力し、閾値を超えない(あるいは下回らない)場合には、金属異物が検出されたことを示す信号は出力されない。
【0051】
[金属異物検出装置3の効果およびその他の構成]
第三実施形態の金属異物検出装置3では、二つのセンサ部30A、30Bを有しており、センサ部が一つの場合と比較してより広い範囲を検査することができる。
【0052】
また、第三実施形態の金属異物検出装置3では、金属異物がない状態では、二つのセンサ部30A、30Bの発振器102A、102Bが双方とも基準発振器11に追従して発振し、センサ部同士で発振が同期する。仮に、センサ部同士で発振が同期する構成を用いることなくセンサ部を複数設けた場合には、センサ部同士で発振周波数や位相が異なる状態となり、これに起因してビートノイズが生じることでセンサが誤検出する虞がある。第三実施形態では、金属異物がない状態ではセンサ部同士で発振が同期するため、発振周波数や位相が異なることに起因するノイズが生じないようにすることができる。
【0053】
なお、第三実施形態では発振器102Aの出力と基準発振器11の出力を位相検波器301Aに入力する構成を採用しているが、発振器102Aの発振状態の変化に応じた出力を得るにあたってはこの構成に限定されるものではなく、例えば、FM検波回路(F-V変換器)を用いるといった構成にしてもよい。
【0054】
なお、センサ部同士で発振を同期させる構成を採用するにあたり、センサ部の数は第一実施形態の金属異物検出装置3のセンサ部の数に限られるものではなく、例えばセンサ部が3つ以上であってもよい。
【0055】
[その他]
上記説明した金属異物検出装置1~3の構成については、使用状況等に応じて適宜構成を変更してもよく、例えば、分周器やフィルタ等の回路については適宜追加(あるいは削除)してもよい。また、上記の例では分周比M、Nの数値は特定の数値に限定されるものではない。
【0056】
以下、上記説明した発明の構成について記載する。なお、発明の構成と対応する上記実施形態の構成については括弧書きで記載する。
【0057】
以上の説明では、
検出コイル(例えば、検出コイル101A、101B)を含む発振回路(例えば、発振器102A、102B、バラクタ103A、103Bを含むLC発振回路)を有する複数のセンサ部(例えば、第一センサ部10A、20A、30A、第二センサ部10B,20B,30B)を備え、前記検出コイルのインピーダンス変動に基づいて金属異物の検出信号を前記センサ部から出力する金属異物検出装置(例えば、金属異物検出装置1、2、3)であって、
前記検出コイルのインピーダンス変動がない状態では、前記複数のセンサ部の発振回路が同期して発振する(例えば、金属異物検出装置1、2では基準発振器11(変形例では一方のセンサ部の発振回路に他方のセンサ部の発振回路が追従)に追従して発振、金属異物検出装置3では金属異物がない状態で基準発振器11に追従して発振)、
ことを特徴とする金属異物検出装置、が記載されている。
【0058】
また、上記記載の金属異物検出装置であって、
前記複数のセンサ部が有する発振回路に同期信号を出力する基準発振器(例えば、基準発振器11)を備え、
前記複数のセンサ部が有する発振回路は、前記同期信号に同期して発振するものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置、が記載されている。
【0059】
また、上記記載の金属異物検出装置であって、
前記センサ部は、前記基準発振器の同期信号に追従するように前記発振回路の発振状態を制御するPLL回路が形成されたものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置(各実施形態参照)、が記載されている。
【0060】
また、上記記載の金属異物検出装置であって、
前記センサ部は、前記PLL回路のループフィルタからの出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置(例えば、金属異物検出装置2)、が記載されている。
【0061】
また、上記記載の金属異物検出装置であって、
前記PLL回路のループフィルタは、検出対象が前記検出コイルを通過するときに前記ループフィルタへ入力される信号の周波数成分よりも遮断周波数が低いものであり、
前記センサ部は、前記発振回路の出力を用いて金属異物の検出信号を出力するものである、
ことを特徴とする金属異物検出装置(例えば、金属異物検出装置3)、が記載されている。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3 金属異物検出装置
10A,20A,30A 第一センサ部
10B,20B,30B 第二センサ部
11 基準発振器
101A,101B 検出コイル
102A,102B 発振器
103A,103B バラクタ
104A,104B 二値化回路
105A,105B 分周器
106A,106B 位相比較器
107A,107B 分周器
108A,108B ループフィルタ
111A,111B 包絡線検波器
112A,112B,114A,114B フィルタ
113A,113B 増幅器
115A,115B 比較器
201A,201B,203A,203B フィルタ
202A,202B 増幅器
204A,204B 比較器
301A,301B 位相検波器
302A,302B 増幅器
303A,303B フィルタ
304A,304B 比較器