(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】血管閉塞装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2019545760
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 US2018019532
(87)【国際公開番号】W WO2018156962
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514043104
【氏名又は名称】インセプタス メディカル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ラボック ポール
(72)【発明者】
【氏名】クイック リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブルース ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コックス ブライアン ジェイ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0330299(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324091(US,A1)
【文献】特表2007-520271(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105476686(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体管腔を閉塞させるための装置であって、
複数の編組フィラメントを含むメッシュ構造であって、前記メッシュ構造は近位端と遠位端との間に延在する縦軸を画定し、前記メッシュ構造の前記フィラメントは、前記近位端で近位ハブ内に、かつ前記遠位端で遠位ハブ内に固定されている、メッシュ構造を備え、
前記メッシュ構造は完全に拡張した弛緩構成から圧縮構成に半径方向に圧縮可能であり、前記管腔内に配備されると、前記圧縮構成から部分的に拡張した、制約構成に弾性的に拡張可能であり、
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は、前記縦軸に沿って間隔を置いた複数の半径方向に延出している閉塞領域を含み、前記閉塞領域の各々は、前記メッシュ構造の前記縦軸に対して70°~85°の角度を画定する側面を有し、前記閉塞領域の各々は、頂点を有し、
前記メッシュ構造の前記制約構成において、各半径方向に延出している閉塞領域は各フィラメントに対して前記管腔の2つの半径方向トラバースを画定し、半径方向トラバースの総数は720~2000の間であり、
前記頂点の各々は、前記縦軸に沿った厚さを有し、
前記頂点の組み合わされた厚さは前記半径方向に延出している閉塞領域の最近位のものと前記半径方向に延出している閉塞領域の最遠位のものの間の前記縦軸に沿った前記メッシュ構造の長さの50%よりも小さい、装置。
【請求項2】
前記メッシュ構造は単層の連続した管状編組構造である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各半径方向に延出している閉塞領域は第1の直径を有し、前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する前記メッシュ構造の連結領域によって、最も近い隣接した半径方向に延出している閉塞領域から分離されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は、少なくとも3つの半径方向に延出している閉塞領域を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記メッシュ構造は前記縦軸に沿って軸長を画定し、前記閉塞領域は、前記軸長の1センチメートルあたり4~10の間のメッシュ層を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記メッシュ構造が前記制約構成にある場合の前記角度は、前記メッシュ構造が前記弛緩構成にある場合の前記角度よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記頂点の各々は、前記閉塞領域の各々がせいぜい2mmの厚さを有する周辺縁を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は3~7の間の半径方向に延出している閉塞領域を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
縦軸に沿って近位端と遠位端との間に軸長を画定するメッシュ構造であって、前記メッシュ構造は前記近位端と前記遠位端との間に延在する編組フィラメントメッシュを含み、前記編組フィラメントメッシュは近位ハブ内の前記近位端および遠位ハブ内の前記遠位端で終了している複数の編組フィラメントを含む、メッシュ構造
を備え、
前記メッシュ構造は半径方向に圧縮した構成および半径方向に拡張した弛緩構成を有し、
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は、前記縦軸に沿って相互に間隔を置いた、第1の直径を有する複数の半径方向に延出している閉塞領域を有し、各半径方向に延出している閉塞領域は、前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する連結領域により、最も近い隣接した半径方向に延出している閉塞領域から軸方向に分離されており、各半径方向に延出している閉塞領域は、周辺縁で交わる近位側および遠位側を有し、
前記周辺縁の各々は、前記縦軸に沿った厚さを有し、前記周辺縁の組み合わされた厚さは、前記半径方向に延出している閉塞領域の最近位のものと前記半径方向に延出している閉塞領域の最遠位のものの間の
前記縦軸に沿った前記メッシュ構造の長さの50%よりも小さく、
前記閉塞領域は前記軸長の1センチメートルあたり4~10の間のメッシュ層を提供する、
身体管腔を閉塞させるための装置。
【請求項10】
前記メッシュ構造は単層の連続した編組構造である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は、少なくとも3つの半径方向に延出している閉塞領域を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記近位側および前記遠位側の少なくとも1つは、前記弛緩構成において前記縦軸に対して70°~85°の間の角度を画定する、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記メッシュ構造は前記身体管腔内で部分的に拡張した制約構成をとり、それにより、前記制約構成において、各半径方向に延出している閉塞領域は、各フィラメントに対して前記管腔の2つの半径方向トラバースを画定し、半径方向トラバースの総数は720~2000の間である、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記メッシュ構造は前記身体管腔内で部分的に拡張した制約構成をとり、前記角度は、前記メッシュ構造が前記制約構成にある場合、前記メッシュ構造が前記弛緩構成にある場合の前記角度よりも小さい、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記周辺縁の各々は、せいぜい2mmの厚さを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は3~7の間の半径方向に延出している閉塞領域を含み、それにより前記装置は、前記軸長の1センチメートルあたり2~4の間の周辺縁を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
腔内壁によって画定される身体管腔を閉塞させるための装置であって、前記装置は、
近位端と遠位端との間に縦軸を有するメッシュ構造であって、前記メッシュ構造は前記近位端と前記遠位端との間に延在する編組フィラメント状メッシュを含み、前記メッシュは複数の編組フィラメントを含み、その各々は近位ハブ内の前記近位端および遠位ハブ内の前記遠位端で終了する、メッシュ構造
を備え、
前記メッシュ構造は半径方向に圧縮した構成および弛緩構成を有し、
前記半径方向に圧縮した構成における前記メッシュ構造は、前記身体管腔内の標的部位への送達のために0.7mmを超えない外径を有し、
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は複数の半径方向に延出している閉塞領域を有し、各半径方向に延出している閉塞領域は、周辺縁で交わる近位側および遠位側を有し、前記近位側および前記遠位側の少なくとも1つは、前記弛緩構成における場合、前記メッシュ構造の前記縦軸に対して第1の角度を成し、前記メッシュ構造が前記周辺縁と前記腔内壁との間の接触によって半径方向に制約される場合、第2の角度は前記第1の角度より小さく、
前記周辺縁の各々は、前記縦軸に沿った厚さを有し、前記周辺縁の組み合わされた厚さは、前記半径方向に延出している閉塞領域の最近位のものと前記半径方向に延出している閉塞領域の最遠位のものの間の前記縦軸に沿った前記メッシュ構造の長さの50%よりも小さい、装置。
【請求項18】
前記メッシュ構造は単層の連続した編組構造である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記弛緩構成における前記メッシュ構造は、少なくとも3つの半径方向に延出している閉塞領域を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の角度は70°~85°の間であり、前記第2の角度は70°未満である、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記メッシュ構造は前記身体管腔内にある場合に部分的に拡張した制約構成をとり、それにより、前記制約構成において、各半径方向に延出している閉塞領域は、各フィラメントに対して前記管腔の2つの半径方向トラバースを画定し、半径方向トラバースの総数は720~2000の間である、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記メッシュ構造は前記縦軸に沿って軸長を画定し、前記閉塞領域は、前記軸長の1センチメートルあたり4~10の間のメッシュ層を提供する、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記閉塞領域の各々の前記周辺縁はせいぜい2mmの厚さを有する、請求項17に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は前記縦軸に沿った軸長を有し、前記装置は3~7の間の半径方向に延出している閉塞領域を含み、それにより前記装置は、前記軸長の1センチメートルあたり3~7の間の周辺縁を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
血管管腔を構成する管腔内壁を有する血管を塞栓させるための移植装置であって、該装置は、
前記移植装置が血管の血管管腔中の標的部位に位置決めされるときに、(a)圧縮送達状態から(b)拡張配備位置に半径方向に拡張するように構成されたメッシュ構造を含み、
送達状態において、
前記メッシュ構造は、円筒形形状を有し、
拡張状態において、
前記メッシュ構造は、
複数の半径方向に延びる領域を含み、
前記半径方向に延びる領域は、多孔性であり、前記移植装置および前記血管管腔を通る血流を遮るように構成されており、
前記半径方向に延びる領域の個々の領域は、前記血管管腔の管腔内壁に係合するように構成された頂点を含み、
前記頂点の各々は、
前記移植装置の縦軸に沿った厚さを有し、
前記頂点の組み合わされた厚さは、前記半径方向に延出している閉塞領域の最近位のものと前記半径方向に延出している閉塞領域の最遠位のものの間の前記縦軸に沿った前記メッシュ構造の長さの50%よりも小さい、装置。
【請求項26】
前記メッシュ構造は、カテーテルを通して前記標的部位に送達されるように構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記頂点の各々の厚さは
、1mmよりも小さい、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記頂点の各々は、0.10mm~0.40mmの間にある縁半径を有する、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記メッシュ構造は、複数のコア部を含み、前記コア部の個々のコア部は、隣接した対の前記半径方向に延びる部分の間にあり、前記コア部
は、円筒形形状を有する、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記コア部の個々のコア部は、0.25mm~3mmの間の直径を有し、前記半径方向に延びる個々の部分は、2mm~12mmの間の直径を有する、請求項29に記載の装置
【請求項31】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記頂点の組み合わされた厚さは、
前記半径方向に延出している領域の最近位のものと
前記半径方向に延出している領域の最遠位のものの間の
前記移植装置の縦軸に沿った前記メッシュ構造の長さの25%よりも小さい、請求項25に記載の装置。
【請求項32】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、隣接した対の前記頂点の間の距離は、0.7mm~4.5mmの間にある、請求項25に記載の装置。
【請求項33】
前記メッシュ構造の近位部分に結合された
取付け固定具をさらに含み、前記取付け固定具は、前記標的部位に前記メッシュ構造を送達するためのプッシャ要素に着脱可能に連結されるように構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項34】
前記メッシュ構造は、該メッシュ構造が配備状態に部分的に拡張されるように、
該メッシュ構造の配備状態において前記血管によって制約されており、前記メッシュ構造は、該メッシュ構造が前記血管によって制約されないときに、
該メッシュ構造の弛緩状態に半径方向に拡張されるようにさらに構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項35】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記半径方向に延びる領域の個々の領域は、
前記移植装置の縦軸に対する第1の角度を構成し、
前記メッシュ構造が、部分的に拡張した配備状態にあるときに、前記半径方向に延びる領域の個々の領域は、前記第1の角度よりも小さい
前記移植装置の縦軸に対する第2の角度を構成する、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記第2の角度は、20°~60°の間にある、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記半径方向に延びる領域の個々の領域は、
前記移植装置の縦軸と垂直に延びる平面に沿った円形の横断面形状を有する、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記メッシュ構造が拡張状態にあるときに、前記半径方向に延びる領域の個々の領域は、(a)前記頂点を通って、かつ、(b)
前記移植装置の縦軸と垂直に延びる平面の
まわりで対称的である、請求項35に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2017年2月24日に出願された、米国仮出願第62/463,498号、および2017年5月17日に出願された、米国仮出願第62/507,641号からの優先権を主張する。両方の仮出願の開示は、本明細書での開示と矛盾しない範囲で、本明細書に参照により明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府資金による研究または開発
適用されない。
【背景技術】
【0003】
本開示は、身体内の通路を閉鎖するための装置に関する。通路は自然の異常、疾病もしくは外傷に起因して生じたもの、または健常であるが望ましくない通路であり得る。本開示の主題は、組織内の開口、身体管腔、血管、中空器官、または他の体腔を閉鎖するための方法を含む。本開示は、循環器内の通路を閉鎖するための拡張可能な編組閉塞装置の低侵襲移植、具体的には、経皮的移植のための閉塞装置および方法にも関する。
【0004】
循環器は、身体全体に体液を循環させる、より大きな循環系の一部である。循環系は、循環器およびリンパ系の両方を含む。循環器は、血液を身体全体にわたって移動させ、リンパ系は、血液中の血漿に似た透明な体液である、リンパを移動させる。循環器は、心臓および血管(動脈、静脈、および毛細管)から成る。それは、酸素および栄養分を組織に送達し、老廃物を排出に責任のある器官に運搬する。動脈は、血液を心臓から身体の残りに搬送し、静脈は血液を心臓に戻す。
【0005】
血管および管腔を閉塞させるために、特に、症状が著しくて薬物療法が不十分であった場合、最初は開胸の、その後低侵襲の外科的処置が使用された。これらの術式は、多くの場合成功であったが、望ましいとは言えない罹患率および死亡率によって阻止され、多くの患者が、重症度およびこれらの手術に関連したリスクに起因して除外された。今日の診療では、閉塞装置は一般に、折り畳まれた状態で、蛍光透視もしくは超音波ガイダンス下で、脚または腕の血管から標的脈管部位もしくは欠損にカテーテルで経皮的に送達される。標的部位に配置されると、本装置は、生体内原位置で、移植のための拡張状態に拡張するのを許可される。これらの経皮的に送達される閉塞装置を使用して、罹患率および死亡率の低下が観察されている。それにもかかわらず、これらの装置は依然として、折り畳まれたときのカテーテルを通したナビゲーションの困難さ、小口径の導入器を通して血管を確実にナビゲートするのに十分な装置送達可撓性の維持、血管もしくは欠損の不十分な封着、装置の不十分な固定、最初に閉塞させた血管のその後の再オープン、ならびに移植後の天然組織の内殖および治癒に対する不十分な準備を含む、潜在的な欠陥に悩まされている。これらの欠陥およびその他は、本開示の主題に対する刺激を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
おおまかに、本開示は、いくつかの態様で、脈管欠損(例えば、瘻孔)を少なくとも部分的に閉鎖し、以前に移植した血管装置周囲の漏出を閉塞させるか、もしくは遮断するため、または健常であるが、望ましくない血管もしくは他の身体管腔の閉鎖のための、拡張可能なメッシュを含む医療機器に関する。
【0007】
いくつかの態様では、本開示に従った医療機器は、標的部位(例えば、標的脈管部位)を少なくとも部分的に閉鎖するための拡張可能な管状メッシュ構造を含み、拡張可能なメッシュは、自己拡張型フィラメント状編組(すなわち、金属ワイヤーまたは非金属ファイバー)から製作され、可撓性で再構成可能な円板状メッシュ閉塞領域の直線配列に形成されて、本装置が非制約の、半径方向に拡張した構成の場合、1センチメートルあたり4~10の間のメッシュ層を提供する。本装置が標的部位に配備されると、メッシュ閉塞領域は、最遠位と最近位閉塞領域との間で測定された約0.5cm~2.5cmの間の短い、局所閉塞を提供する直線距離内に再構成される。
【0008】
いくつかの態様では、本明細書で説明する、医療機器は、器質的脈管欠損を少なくとも部分的に閉鎖するための拡張可能な管状メッシュ構造を含み、拡張可能なメッシュ構造は、本明細書で説明する任意の材料を含む、自己拡張型編組から製作されて、約0.05mm~0.50mmの間、例えば、約0.10mm~0.30mmなど、の孔径となる。代替として、約0.10mm~2.0mmの範囲内の孔径が採用され得る。いくつかの実施形態では、孔径は、0.20mm~0.75mmの範囲内であり得る。
【0009】
いくつかの態様では、本明細書で説明するような、医療機器は、血管、瘻孔、動脈瘤、動脈管開存、心臓の左心耳、移植片(例えば、心臓弁)周囲の漏れ経路、または他の血管塞栓術標的などの、身体管腔を少なくとも部分的に閉鎖するための拡張可能な管状メッシュ構造を含み、拡張可能なメッシュは、管状の、自己拡張型または形状記憶編組メッシュ構造から製作される。
【0010】
いくつかの態様では、標的管腔(例えば、脈管)部位を少なくとも部分的に閉塞させる拡張可能なメッシュ構造を提供することにより、その部位に塞栓形成するための方法が説明され、装置は、その部位に関して、直径方向に約10%~150%の間だけ、オーバーサイズである。いくつかの実施形態では、オーバーサイズの量は、約25%~75%の間であり得る。
【0011】
いくつかの態様では、望ましくない血管、瘻孔、動脈瘤、動脈管開存、心臓の左心耳、移植片(例えば、心臓弁)周囲の漏れ経路、または他の血管塞栓術標的などの、標的脈管部位を少なくとも部分的に閉塞させる拡張可能なメッシュ構造を提供することにより血管状態を治療するための方法が説明される。
【0012】
いくつかの態様では、脈管部位を少なくとも部分的に閉塞させる拡張可能な管状メッシュ構造を提供することによって、その部位を治療するための方法が説明され、拡張可能なメッシュ構造は、編組ファイバー、フィラメント、または次の材料の少なくとも1つ:ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)、ステンレス鋼、コバルト-クロムの合金、ポリエステル、PTFE、ePTFE、TFE、ポリプロピレン、ナイロン、TPE、PGA、PGLA、PLA、ポリエチレン(PE)、高密度PE(HDPE)、および超高分子量PE(UHMWPE)(商標名「DYNEEMA」および「SPECTRA」で市販されているUMHWPEの配向性ストランド(oriented strand)を含む)、を含むワイヤーの自己拡張型メッシュから製作される。
【0013】
いくつかの態様では、標的脈管部位に塞栓形成するための方法が説明され、本方法は、拡張可能なメッシュ閉塞装置を標的部位に送達すること、および装置が拡張して標的部位を少なくとも部分的に閉塞できるようにすることを含み、拡張可能なメッシュは、ファイバー径が約0.013mm~0.080mmの間の範囲の自己拡張型編組メッシュから製作される。
【0014】
いくつかの態様では、血管に塞栓形成するための方法が説明され、本方法は、血管内の標的部位に拡張可能なメッシュ閉塞装置を送達すること、および装置が少なくとも部分的に血管を閉塞させるように拡張できるようにすることを含み、拡張可能なメッシュは、装置が、本質的に線形または管状構成を有する圧縮状態から、拡張もしくは弛緩した状態に拡張するのを可能にする自己拡張型編組メッシュから製作され、拡張もしくは弛緩した状態では、それは、複数の、軸方向に間隔を置いて、半径方向に拡張した閉塞領域、すなわち、半径方向に拡張した円板状閉塞領域の直線配列を含む、半径方向に拡張した状態をとる。いくつかの実施形態では、閉塞領域の各々の少なくとも一部は、装置が配備される身体管腔の内壁によって装置が制約されない場合、装置の縦軸に対して最適に約80°~90°の間の角度を成す。装置が配備されて、腔内壁によって制約される場合、この角度は減少する。閉塞領域は次いで、各円板が、共通の基部を共有して、周辺縁を画定する一対の結合された円錐を形成するように、軸方向に平板化された状態を有し得る。
【0015】
本明細書では、用語「閉塞装置(occlusion device)」は、別に制限されていない限り、単独で、または塞栓形成もしくは組織内殖のための補助としてのいずれかで、管腔を少なくとも部分的に閉塞させる目的で、身体管腔内に移植可能な任意の装置を包含すると解釈されるものとする。用語「身体管腔(bodily lumen)」は、血管および、閉塞のための標的部位を提供し得る管腔または通路を有する任意の他の器官もしくは構造を包含すると解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ヒトの循環器の一部の線図であり、本開示に従った閉塞装置など、移植片の血管内送達のための典型的な配置を示す。
【
図2】本開示に従った閉塞装置の血管内送達のための装置の概略図であり、血管内に配備されている装置を示す。
【
図3】本開示の実施形態に従った閉塞装置の立面図である。
【
図4】
図3の閉塞装置の立面図であり、標的部位まで血管内で送達されている装置を示す。
【
図5】本開示の態様に従った閉塞装置が作られるフィラメントを編むための装置の一部の概略図である。
【
図6】本開示の態様に従った閉塞装置のフィラメント状構造の概略図である。
【
図7】本開示の態様に従った閉塞装置の製造で使用されるフィラメントを平板化するプロセスを示す。
【
図8】本開示の態様に従った閉塞装置のフィラメント状構造の拡大詳細図である。
【
図9】本開示の実施形態に従った閉塞装置の立面図であり、脈管部位に配備された装置を示す。
【
図10】本開示の態様に従った閉塞装置を製造するための熱処理治具の一実施形態を示す。
【
図11】3.0mm~5.5mmのサイズのマンドレルをもつ直径が0.019mmのNiTiワイヤーの編組に対する編組角度の2つのエンベロープを示す。
【
図12】5.5mm~8.0mmのサイズのマンドレルをもつ直径が0.025mmのNiTiワイヤーの編組に対する編組角度の2つのエンベロープを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
身体管腔、具体的には、脈管部位および血管を、拡張可能な閉塞装置の経皮移植を含む、低侵襲移植によって、閉塞させるための方法および装置が提示される。いくつかの実施形態では、本装置は、細いフィラメント(すなわち、ファイバーまたはワイヤー)の編組などの、単一の管状メッシュ構造から形成された複数の半径方向に拡張した閉塞領域を含み得る。脈管部位の治療では、本装置は、カテーテルまたはカニューレなどの細長い管状送達装置を通してその部位まで送達され得、カテーテルまたはカニューレは、血管(大腿静脈または橈骨動脈など)を通して血管内に挿入されて、標的部位まで進められ得る。典型的には、装置送達および配備手順は、蛍光透視法、X線、MRIまたは同様のものなどの、外部撮像手段下で実施されるであろう。放射線不透過性マーカーが閉塞装置および/または送達装置に組み込まれて、画像ガイダンス下でさらなる視認性を提供するのを支援し得る。マーカー材料は、例えば、タングステン、タンタル、白金、パラジウム、金、イリジウムまたは他の適切な材料を含み得る。
【0018】
本開示に従った閉塞装置は、身体管腔内の標的部位、具体的には、血管標的部位に、血管移植片の血管内配備のための既知の術式および手順によって、血管内送達するために構成される。このタイプの典型的な手順によれば、例えば、
図1に示すように、循環器をトラバースできるガイドワイヤー100が血管アクセス部位または穿刺102を通して患者に導入される。例えば、腔内の血管アクセス部位は、患者の大腿動脈もしくは静脈、腸骨動脈もしくは静脈または頸動脈もしくは静脈内に形成され得る。ガイドワイヤーを位置付けるこの方法は、インターベンショナル療法の技術に精通した医師には周知である。一旦、ガイドワイヤー100が位置付けられると、血管アクセス部位102が典型的には拡張されて送達カテーテル20がそこから入るのを可能にする。保護シーズ(図示せず)が血管構造を保護するために進められ得る。その後、ガイドワイヤー100が血管アクセス部位102から患者に導入されて、塞栓形成の部位または標的まで進められ得る。送達カテーテル20が次いで、その遠位端が標的部位に隣接して位置付けられるまで、ガイドワイヤー100の上を進められる。任意選択として、送達カテーテル20は、
図2に示すように、外カテーテルまたは「導入器」22によって先導され得、それを通って送達カテーテル20が挿入される。導入器22は、任意選択として、血管を通したナビゲーションを支援するために先細の遠位端部を備えて形成され得;代替として、可撓性があるか、または切り離し可能な拡張器(図示せず)が、周知のとおり、使用され得る。送達カテーテル20は同様に、先細の遠位端部を有することができる。
【0019】
引き続き
図2を参照すると、本開示に従った、閉塞装置10が、以下でさらに十分に説明するように、構成され、そのため、閉塞装置10は、弛緩または拡張した状態から送達のための圧縮状態に弾性的に圧縮され得、それは装置がどのようであるかが
図2に示されている。圧縮状態では、装置10は実質的に構成において線形であり得;すなわち、それは円筒または管に似ている。装置10は、分離機構を有する連結要素(図示せず)によってプッシャー要素24の遠位端に連結され、分離機構は当技術分野で周知の任意の適切なタイプであり得る。典型的には、可撓性ワイヤー、コイル、多糸(multi-stranded)螺旋ワイヤー管または棒の形の、またはそれらを含む、プッシャー要素24は、その圧縮構成に拘束された閉塞装置10と共に送達カテーテル20の近位端に挿入され得、圧縮構成では、それは送達カテーテル20の内壁表面によって課される拘束によって維持される。装置10をこのように圧縮状態で送達カテーテル20内に保持して、装置10は、プッシャー要素24を用いて、送達カテーテル20を通して、血管V(
図2)などの、身体管腔内の標的部位またはその近くになるまで、進められる。この時点で、送達カテーテル20は近位に引っ張られて、閉塞装置10をカテーテル20の拘束から解放し、それにより、以下でさらに説明するように、標的部位での配備および移植のために、閉塞装置10が、血管Vの腔内壁と係合するように、管腔内で半径方向に拡張できるようにする。装置10が標的部位に配備されると、それは、分離機構の操作により、プッシャー要素24から切り離される。
【0020】
外カテーテルまたは導入器22が使用される(例えば、
図2に示すように)場合、導入器22は、その遠位端が標的部位に近くなるまで、血管内を進められる。送達カテーテル20は、送達カテーテル20の遠位端が標的部位に位置付けられるまで導入器22を通して遠位に進められる。装置10は、送達カテーテル20の近位端に挿入され、送達カテーテルの長さに沿って遠位端まで、プッシャー要素24によって、押される。送達カテーテル20が引っ込められて、装置10は送達カテーテル20の遠位端から(例えば、プッシャー要素24によって)外に出され、それにより閉塞装置10全体が、標的部位において標的血管または管腔の壁と係合するために、適切な位置でその機能サイズに拡張できるようにする。一旦、装置10が適切に位置付けられると、それはプッシャー要素24からユーザーから切り離される。いくつかの実施形態では、分離は、装置の移動を最小限にするために、分離機構により装置に付与されている最小限の(好ましくはゼロまたはゼロに近い)力で達成される。いくつかの実施形態では、閉塞装置10は、テザー(図示せず)によってプッシャー要素24に取り付けられ、テザーの切り離しに必要な印加される力は好ましくは、例えば、0.2~0.8ニュートンなど、1ニュートン未満である。一旦、装置が切り離されると、送達システムは患者の脈管構造または患者の身体から引き抜かれ得る。
【0021】
本明細書で開示する閉塞装置の特定の実施形態は、好ましくは、当技術分野で「マイクロカテーテル」として知られる、直径が概ね約0.7mm未満の内部管腔を有する小さい血管内送達カテーテル20を通した送達のために設計される。マイクロカテーテルを通して送達可能な装置に対して、装置の折り畳んだ外形または直径は、少なくともカテーテルの内腔よりも若干小さい必要がある。加えて、本装置は、過度の摩擦または抵抗なしでマイクロカテーテルを通って進むのを可能にするために、十分な可撓性、および十分に小さい半径方向の外向きの力を有する必要がある。編組フィラメントで作られている装置について、マイクロカテーテルの送達可能性に対するこれらの送達制約は、編組装置が作られるフィラメントの数およびサイズを制限する。加えて、フィラメントの数およびそれらの直径は、装置の孔構造を決定し、それは、装置が血管または管腔をどれくらい迅速に閉塞させることができるかに直接影響を及ぼす。フィラメントおよび装置の形成された構造におけるそれらの結果として生じる幾何形状は、意図する閉塞部位の下流での遠位迷入(distal migration)および/または塞栓形成を防ぐために移植される場合、装置の安定性を提供するために十分な強度および半径方向剛性を提供する必要がある。それに応じて、本開示は、本明細書で説明する編組メッシュ構造閉塞装置が所望の送達および性能特性を達成するのを可能にする装置の構造パラメータの固有の相互関係を説明する。
【0022】
本開示に従った閉塞装置は好都合に、相互に関連した3つの性能基準を有する:それは、標的部位に送達可能でなければならない;それは、その標的部位にとどまる必要がある(すなわち、標的部位から下流に移動および/または塞栓形成しない);かつ、それは、標的部位内で閉塞する必要がある。
【0023】
好ましい送達可能性特性は次のとおりである:
【0024】
装置の圧縮した直径(DP)は次の式によって与えられる:
【0025】
DP=√NW
*1.14*W/η、式中、NWは装置を形成しているフィラメントの数であり、Wは各フィラメントの直径で、ηは構成フィラメントのパッキング密度である。
【0026】
フィラメントに対するパッキング密度は、パック化ワイヤーの外周の内側面積に対する各ワイヤーの断面積の合計である。丸フィラメントの折り畳まれた管状編組構造は、約0.75のパッキング密度を有することが示されている。
【0027】
内径DCのマイクロカテーテルを通して効率的に送達可能であるために、装置は次の条件を満足する必要がある:
【0028】
(DP+2*TH)<DC、式中THは、以下で説明するように、装置ハブの壁の厚さである。
【0029】
マイクロカテーテルを通過している装置の摩擦は、以下で説明するように、SrおよびNFに比例し、ここでSrは、装置の編組ワイヤー部の各表面特徴の半径方向剛性であり、NFは装置の半径方向に拡張した閉塞部分の表面特徴の数である。
【0030】
半径方向剛性Srは、同様に、NWおよびW4に比例し、以下で説明するように、それはαおよび1/REと正に相関し、ここでαは編組またはピック角度(以下で説明するとおり)であり、REは、各半径方向に拡張した閉塞領域の縁半径である。
【0031】
編組またはピック角度α=F(W,NW,Db)であることも推測され、式中Dbは、以下で説明するように、メッシュ構造がそれの上に形成されるマンドレルの直径である。
【0032】
編組長Bにおける変化に対する編組角度αの変化は、次のように表現され得る:
【0033】
αn=cos-1((Bn/Bi)cosαi)、式中iは初期値を示し、nは後続値である。
【0034】
これらのパラメータは、結果として生じる装置性能パラメータの全てを駆動する。目標は、特定の患者において懸念の解剖学的構造に対して適切なサイズのマイクロカテーテルを通して送達可能でありながら、閉塞して安定した血管閉塞装置を構築するのが可能な最大直径の多くのワイヤーを使用することである。
【0035】
いくつかの実施形態では、主要なパラメータのバランスを取るために、管状編組ワイヤーメッシュ構造が、本明細書で説明するような低張力編組システムを使用してマンドレル上に形成され、編組パラメータは、所与のワイヤー直径およびマンドレル直径に対して編組またはピック角度αを特定範囲内で得るために設定される。いくつかの実施形態では、編組角度は、
図11および
図12に示す好ましいエンベロープa内であろう。
図11は、3.0mm~5.5mmの様々なマンドレルサイズに対して直径が0.019mm(0.00075″)のNiTiワイヤーの編組に対する編組角度の2つの好ましいエンベロープ(AおよびB)を示す。
図12は、5.5mm~8.0mmの様々なマンドレルサイズに対して直径が0.025mm(0.001″)のNiTiワイヤーの編組に対する編組角度の2つの好ましいエンベロープ(CおよびD)を示す。初期成形後、編組は二次的に、典型的には本明細書で説明する熱処理によって、最終形態に成形され得る。一実施形態では、約0.017mm~0.021mmの間の平均直径をもち、エンベロープAの範囲内に位置する編組角度を有する管状メッシュ構造に成形された、複数のワイヤーを含む、編組は次いで、複数の円板状閉塞領域をもつ閉塞装置に形成でき、本装置は、望ましい半径方向剛性およびマイクロカテーテルを通した必要な送達可能性の両方を有するであろう。別の実施形態では、各々が約0.022mm~0.028mmの間の平均直径をもち、エンベロープCの範囲内に位置する編組角度を有する管状編組メッシュ構造に成形された、複数のワイヤーを含む、編組メッシュは次いで、複数の半径方向に拡張した円板状閉塞領域をもつ閉塞装置に形成でき、本装置は、望ましい半径方向剛性および所与の内径のカテーテルを通した必要な送達可能性の両方を有するであろう。
【0036】
図3に示すように、本開示の例示的な実施形態に従った閉塞装置10は、管状編組構造を含み、それは、弛緩または拡張した状態で、複数の半径方向に拡張した、従って、半径方向に延出している閉塞領域12を有し、それは、いくつかの実施形態では、前述のように、構成において円板状である。閉塞領域12は、装置の長さに沿って軸方向に間隔が置かれている;すなわち、装置は、かかる閉塞領域12の直線配列を含む。各半径方向に延出している閉塞領域12(以下、単に簡単にするために、かついかなる制限する方法でもなく、「円板(disc)」)は、閉塞領域12と比べて縮小された半径の管状編組連結領域またはコア部14によって、最も近い隣接した半径方向に延出している円板12から分離される。コア部14は、例えば、約0.5mm~2.5mmの間など、好都合に約3.0mm未満であるコア長によって、円板12の各隣接した対を分離する。
【0037】
図3に示すように、装置10は、遠位端(図の左側)と近位端(図の右側)との間に縦軸Xを画定する。編組メッシュ構造は、近位端および遠位端の各々でまとめられ、そこでメッシュのフィラメントが終了し、それぞれ、近位ハブ26および遠位ハブ28によって保持される。アタッチメント治具29は好都合に、分離機構によるプッシャー要素24への切り離し可能な連結のために、近位ハブ26に取り付けられるか、または近位ハブ26と一体にされ得、それは、前述のとおり、好都合に切り離し可能テザー(図示せず)を含み得る。
【0038】
各円板12は好都合に、丸みを帯びた周辺縁または「頂点(apex)」16と共に構成され得、連続する円板12の頂点16は、「ピッチ」と呼ばれ得る距離で、ねじ山のように分離されている。いくつかの実施形態では、最終的な、その弛緩した状態において成形されたとおりの閉塞装置10は、
図3に示すように、例えば、約0.7mm~4.5mmの間など、約0.5mm~5mmの間の、間隔またはピッチ(頂点から頂点への)距離で、複数の円板12を画定し得る。
【0039】
引き続き
図3を参照すると、装置10の弛緩または半径方向に拡張した状態で、各円板は、近位または後方側17および遠位または先行側19を含み、周辺縁または頂点16で交わる。第1の円板角度θ
1は、各半径方向に延出している円板12の近位側17または遠位側19のいずれかと、縦軸Xとの間で画定される。装置10がその弛緩または拡張した状態にある場合、角度θ
1は好都合に、70°~90°の間であり得るが、いくつかの実施形態では、用途に応じて、もっと小さい角度(例えば、85°以下)も十分であり得る。
図4に示すように、装置が身体管腔内に配備されて、円板12の周辺縁16の腔内壁との係合のために装置が部分的に制約される場合、円板角度は、第1の円板角度θ
1より小さい第2の円板角度θ
2に減少される。第2の円板角度θ
2は、25°くらい小さい可能性があるが、より大きな角度は総閉塞長または「着地ゾーン(landing zone)」をより小さいか、もしくはよりコンパクトにし、従って、医師が閉塞を所望の位置でより局所的に保持するのを可能にするので、第2の円板角度θ
2を最大で約70°にすることは有益であり得る。加えて、装置がよりコンパクトであればそれだけ、半径方向に延出している円板が相互により近くなって、装置がより効率的に機能し得、それにより、血流が初期メッシュ層によって妨害および減速された後、層流に戻る前に、血流に作用する後続の層のフィラメントのために、閉塞をより迅速に達成する。
【0040】
編組の効果的なサイズは、血液がメッシュの各層を通過するにつれて縮小され得る。初期層の孔径は50ミクロン~500ミクロンの間の範囲である。効果的な孔径は各後続の層で縮小され得る。
【0041】
半径方向に延出している円板12は、円形(図のとおり)、卵形、長方形、ひし形、または任意形状を含むが、それらに制限されない、様々な半径方向断面をもつ様々な形状を有することができる。加えて、円板12は、概ね同じ直径(図のとおり)、または異なる直径を持つことができる。それらは同様の厚さ、およびそれらの間の間隔、または異なる厚さ、およびそれらの間の間隔を有し得る。いくつかの実施形態では、円板直径は、制約されていない場合、最も厚い点でのそれらの厚さの約5倍を上回る。閉塞装置10は、いくつかの実施形態では、例えば、3~5の円板など、2~8の間の円板を含み得る。各円板12は、血管または塞栓形成部位の断面に概ね従う、2つの層(メッシュ構造)を含み得、結果として、内腔に微多孔のフローディスラプタ(flow disruptor)が広がる。いくつかの実施形態では、狭くて間隔の詰まった円板は、ごく近接した多数のメッシュ層を提供し得、それは、改善された止血を提供し得る。いくつかの実施形態では、制約されていない場合、閉塞装置は、6~12のメッシュ層(各円板は2つの層を含む)を約10mm未満の、また、他の実施形態では、約25mm未満の、直線距離内に含み得る。いくつかの実施形態では、円板間の直線距離と最大円板直径の割合は、約0.7~2の間であり得る。いくつかの実施形態では、本装置は、1センチメートルあたり少なくとも約4メッシュ層を提供し、いくつかの実施形態では、1センチメートルあたり4~10のメッシュ層を提供する。任意選択として、近位および遠位円板から延出して、円板12間の編組のコア部14を形成する編組の小さい直径部分は、実質的に均一な円筒形状を有し得;代替として、コア部14は異なる直径を有し得る。
【0042】
短くて、より局所的な閉塞は、閉塞が望ましくない血管枝から閉塞ゾーンを離しておくことにより有益であり得る。いくつかの実施形態では、前述のとおり、本装置が、標的部位に配備されて、その一部制約された構成をとる場合、本装置は、各々が、約25°~70°の間、好ましくは、40°~60°の間である、閉塞装置10の縦軸Xに対する第2の円板角度θ2を画定する高密度のメッシュ層を提供し得る。いくつかの実施形態では、移植された状態で、第2の円板角度θ2(配備時に部分的に制約された状態)は、第1の円板角度θ1(弛緩または拡張した状態)より約20°~60°だけ小さい可能性がある。
【0043】
装置10が標的部位に配備される(移植される)場合、
図4に示すように、円板12の各々は、周辺縁16と血管壁との間に、短くて、実質的に円形の接触領域を作り得る。それに応じて、装置10は、複数の短くて、間隔の詰まった実質的に円形の接触領域を提供し得る。いくつかの実施形態では、例えば、3~7のかかる接触領域が、血管内で約1cm~3cmの間、好ましくは、約2.5cm未満の直線距離内にあり得る。いくつかの実施形態では、例えば、1cmあたり2~4の接触領域があり得る。実質的に円形の接触領域は、各円板12の周辺縁16の厚さによって画定され、縦軸Xに沿った非常に短い長さに応じて、典型的には約2mm未満、好ましくは約1mm未満である。
図4に示すように、装置10が身体管腔内に移植される場合、管腔内の閉塞ゾーンZは、最遠位と最近位閉塞円板12との間の管腔の長さ(それらそれぞれの周辺縁16間を測定)として画定され得る。閉塞ゾーンZの長さに対して接触領域(上で定義されるとおり)のサイズが小さいため、装置10が移植される場合、閉塞ゾーンZの表面積の比較的ごく一部だけが装置によって接触される。いくつかの実施形態では、例えば、接触する表面積は、閉塞ゾーンZの総表面積の約25%未満である。血管内で装置10によって提供される総閉塞ゾーンは、従って、これまで標準であったものよりも短くてより局所的であり、それにより、比較的長い閉塞ゾーンおよび大きい血管接触面積を提供する装置に対して、前述の優位性をもたらす。
【0044】
任意の、または全部の円板の側面の一方または両方が凹面または凸面であり得る。いくつかの実施形態では、
図9に示すように、1つまたは複数の円板12´は、下流に向いたコップ様形状に成形された凹面31を含み得、そのため塞栓形成すべき脈管部位内の血流および血圧は本装置を適所に保持する摩擦力を強化し得る血管に対する外向きの力を増大する傾向があり、それ故、その安定性を改善し、装置が下流に移動するリスクを低減する。代替として、円板は、単純な平面構造を有するか、または、
図3に示すように、それらが頂点16におけるよりも基部において厚くなるように、小さい角形成を有し得る。円板およびコア部の直径、形状および寸法は、広範な欠損サイズおよび形状を含めるために異なる。いくつかの実施形態では、円板直径は、2mm~12mmの間の範囲であり得、コア部直径は、0.25mm~3mmの間の範囲であり得る。
【0045】
図3に示すように、いくつかの実施形態では、閉塞装置の半径方向に延出している円板12の周辺縁または頂点16は好都合に、約0.10mm~0.40mmの間の縁半径R
Eを有し得る。隣接した円板間のコア部14は好都合に、約0.25mm~1.0mmの間のR
cのコア半径を画定し得る。閉塞装置に対する円板の縁半径およびコア半径のこれら特定の範囲は、これまで知られていない、送達可能性と円板の近接した間隔の維持の望ましいバランスをもたらし得る。半径が小さくなれば、蛇行状で小さい血管標的の治療のために必要であり得るマイクロカテーテルを通した送達に必要な力が増加する。逆に、円板縁半径が大きくなれば、特に、移植された場合に、より長い移植片およびあまり局所的でない閉塞となり得る。より短い装置およびより局所的な閉塞は一般に、ユーザー(医師)にとって望ましい。さらに、円板の間隔が大きくなれば、閉塞時間が長くなる結果となり得る。
【0046】
本明細書で説明する実施形態のいずれでも、装置構成要素は、多孔性織物または構造を形成するために構成されているワイヤー、フィラメント、糸、縫合糸、ファイバーまたは同様のもの(本明細書では「フィラメント30」と呼ぶ)のメッシュを含み得る。フィラメント30は、金属、ポリマー、合成物、および/または生物由来物質を使用して作成され得る。ポリマー材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、PTFE、ePTFE、TFE、PET、TPE、PGA、PGLA、またはPLAなどのポリマーも含み得る。弾性移植片の技術で周知の他の適切な材料が使用され得る。金属材料には、ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)、白金、Elgiloyなどのコバルト-クロムの合金、ステンレス鋼、タングステン、またはチタンを含み得るが、それらに制限されない。
【0047】
いくつかの場合、延伸充填管ワイヤーまたはフィラメントの特定の構築は、閉塞装置の外部可視化を強化し、かつ/または所望の性能特性を維持するために重要であり得る。より具体的には、組成の剛性、弾性および放射線不透過性のバランスを取ることは重要であり得る。特に、白金などの、延性のある放射線不透過性物質の内部ワイヤー、およびNiTiなどの弾性または超弾性材料の外管を含む延伸充填管フィラメント実施形態に対して、フィラメントの全体的な断面積に関する内部ワイヤーのパーセント断面積の比率のバランスを取ることが必要(少なくとも好都合)であり得る。かかる比率は、「充填率(fill ratio)」と呼ばれ得る。一実施形態が外部管材料に対して、少な過ぎる放射線不透過性内部管材料しか含まない場合、十分な放射線不透過性および可視性がない可能性がある。他方、一実施形態が弾性外部管に対して多過ぎる内部ワイヤー材料を含む場合、延性のある放射線不透過性物質の力学的特性は、外管材料の弾性特性を圧倒し得、またフィラメントは、圧縮後などに処理される傾向があり、永久変形となり得る。いくつかの実施形態に対して、所望の合成物または延伸充填管フィラメントは、約10%~約50%の間、より具体的には、約20%~約40%の間、さらにもっと具体的には、約25%~約35%の間の、全体的な複合フィラメントの断面積に対する内部充填ワイヤーの断面積の充填率で作成され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、患者の脈管構造の治療のための装置は、フィラメントの総数に対して少なくとも約25%の複合フィラメントを有し得、いくつかの実施形態では、かかる装置は、装置内のフィラメントの総数に対して少なくとも約40%の複合フィラメントを有し得る。例えば、細長い弾性フィラメントの第1のサブセットは、各々が高度に放射線不透過性材料および高強度材料の組合せを有する、複合材料を含み得、細長い弾性フィラメントの第2のサブセットは、大部分は高強度材料を含み得る。例えば、高度に放射線不透過性材料は、白金、90%白金/10%イリジウムなどの白金合金、または金、またはタンタルを含み得る。高強度材料は、NiTiを含み得る。複合ワイヤーは強化された可視化および/または力学的特性を提供し得るが、それらは、いくつかの構成では、同様の直径のNiTiワイヤーと比較すると、低下した引張り強度を有し得る。他の構成では、それらの直径に応じて、複合ワイヤーは、装置の折り畳まれたか、または圧縮された外形を増大させ得る。従って、複合ワイヤーの数を最小限にすることは有益であり得る。複合ワイヤーの割合がより低ければ、特に、撮像が頭蓋骨を通して行われる神経血管用途では、現在の撮像機器で十分には可視でない可能性がある。加えて、複合ワイヤー(または、極めて高い充填率の複合ワイヤー)が多すぎると、CTまたはMRI撮像において過度のアーチファクトのある装置となり得る。高度に放射線不透過性材料の説明した割合および量は、装置の周辺が経頭蓋蛍光透視下でちょうど可視である神経血管移植片に対して固有の状況を提供するが、実質的に白金または白金合金で作られている従来の塞栓用コイルと同様に、装置の被撮像領域は完全には抹消されない(すなわち、アーチファクトに起因して)。所望の程度の放射線不透過性を達成する1つの方法は、複合フィラメントの充填率およびワイヤーの総数に関する複合フィラメントの割合の特定の組合せを選択することによる。例えば、編組構造における、放射線不透過性白金の総割合は、約15%~30%の間であり得る。
【0049】
本明細書で説明する編組フィラメントのいずれでも、断面は、円形、卵形、長方形、または正方形であり得る。いくつかの実施形態では、フィラメント30は、
図7に示すように、最初は円形断面で形成され、次いで回転または部分的に平板化されて、丸みの付いた角のある概ね長方形断面を有する平板化フィラメント30´を形成する。この構成は、編組角度および孔構造の所望の構成を編むための改善された能力を提供し得る。
【0050】
具体的には、所与のフィラメントの厚さに対して、「ピック長」(フィラメント交差間の距離)が大きくなればそれだけ、フィラメント変位に対するビーム長が長くなり、変位によって生き起こされるフィラメントにおける応力が低くなる。また、所与のピック長に対して、フィラメントの厚さが小さくなればそれだけ、ピック長が大きくなり、フィラメント変位に対するビーム長が長くなって、変位によって引き起こされるフィラメントにおける応力が低くなる。円形フィラメントがその後その軸に沿って平板化されて、フィラメント軸に関して対称な2つの平行面を形成する場合、フィラメントの厚さは、フィラメントの断面および、従って引張り強度を減少することなく、減少されるであろう。
【0051】
フィラメントを平板化すると、編組を形成するためにより少ないビーム変位しか必要としない。従って、所与のフィラメント張力に対してより小さいピック長を予期できる。それに応じて、ピック長を縮小すると、織り方の「孔(pore)」径が縮小する。また、平板化したフィラメントは円形フィラメントの直径よりも「幅が広く」、そのため、任意の同一のピック長に対してより多くの孔表面積を占めて、孔径をさらに縮小する。
【0052】
曲げ剛性はE*Iであり、式中、Eは引張係数で、Iは曲げ軸に垂直な断面の極慣性モーメントである。Eは平板化(楕円形)および円形のフィラメントの両方に対して同一である。平板化したフィラメントのIの値は同じ断面積の円形フィラメントの22%である。従って、平板化したフィラメントは22%だけ硬い。同じ引張荷重下で、ピック長はこの要因だけに基づいて縮小されるであろう。円形フィラメントを平板化すると、より小さい曲げ変位、より広い断面、および低減された曲げ剛性に起因して、編組孔径が縮小する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本装置は細いフィラメントの編組メッシュを含み得る。いくつかの実施形態では、編組メッシュは、管状編組製造の技術で周知であり、
図5に示すように、マンドレル40の上に形成され得る。メッシュは、マンドレル40の縦軸Yに対する編組角度αで形成される。編組角度αは、フィラメント編組の技術で周知の様々な手段によって制御され得る。メッシュ構成要素に対する編組は、構成要素の長さに関して概ね一定の編組角度αを有し得るか、または編組角度αは、孔径および半径方向剛性の異なるゾーンを提供するために異なり得る。「孔径」は、
図8に破線の円Pで示されているように、交差したフィラメントによって形成されたひし形の内部に内接され得る最大円として定義される。
【0054】
いくつかの実施形態では、
図6に示されるように、実質的に非構造的なフィラメント状またはファイバー状部材32が装置の一部の構造的フィラメント30に取り付けられるか、または編み込まれて、メッシュ構造を通した血流に対する抵抗を高めるか、または血栓の形成および/もしくは装置の周辺組織の治癒を強化し得る。いくつかの実施形態では、
図6に示すように、1本または複数本のファイバーまたは編み糸32が編組メッシュに編み込まれるか、または織り交ぜられ得る。非構造的ファイバー32は、編組プロセス中またはプロセス後に、編組メッシュに織り交ぜられ得る。マイクロファイバーまたは任意の他の適切なファイバーであり得る、非構造的ファイバー32は、重合体であり得、メッシュフィラメントよりも有益に血栓形成性であり得る。非構造的ファイバー32は、本明細書で説明する任意の材料を含み得るが、それらに制限されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、管状編組フィラメントメッシュ構造は、編組機によって形成できる。多くの従来の編組機に特有である、ボビンまたは他のフィラメント巻取りおよび引っ張り機構は、非常に細いフィラメントの編組および異なるフィラメント直径の混合をより困難にするので、それらの機構を採用しない、編組機を利用することは、好都合であり得る。低張力編組機は、フィラメントの破損を減少でき、入り混じった直径のフィラメント編組に対してより修正可能である。いくつかの実施形態では、編組フィラメントメッシュ構造は、次の1つまたは複数で説明される方法および装置を使用して編むことができる:「BRAIDING MECHANISM AND METHOD OF USE」というタイトルの米国特許第8,833,224号;「BRAIDING MECHANISM AND METHOD OF USE」というタイトルの、米国特許第8,826,791号;「BRAIDING MECHANISM AND METHOD OF USE」というタイトルの、米国特許第8,261,648号;「BRAIDING MECHANISM AND METHOD OF USE」というタイトルの、米国特許第8,820,207号;および「BRAIDING MECHANISM AND METHOD OF USE」というタイトルの、米国特許公開第2014/0318354号。前述の特許の全部の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
管状編組メッシュは次いで、熱処理プロセスを使用してさらに成形され得る。ニチノールワイヤーの熱処理技術で周知のように、編組管状構造をその所望の構成に保持するために、治具、マンドレルまたは型が使用され、次いで適切な熱処理を受け得、それにより編組管状部材の弾性フィラメントは、マンドレルもしくは型のアウター外形をとるか、またはそうでなければアウター外形に形状設定される。従来の熱処理治具50が
図10に示されており、その中にメッシュ装置または構成要素10が保持される。治具50は、装置または構成要素を所望の形状に保持するために構成され、装置または構成要素は、構造を形状設定するために約475~525℃で約5~30分間、そのように保持されている間に、加熱される。熱処理プロセスは、周知のとおり、炉または流動床炉内で実行され得る。いくつかの実施形態では、熱処理プロセスは、不活性ガス環境で行われ得る。いくつかの実施形態では、装置を熱処理するためのシステムは、浴媒体(bath media)を含むように構成されたチャンバ、チャンバ内で、装置を保持するように構成された容器、チャンバの流体的上流で、ガス源に連結してガスをチャンバに流入させて浴媒体を流動化させるように構成された空気吸入口ゲート、および空気吸入口ゲートとチャンバとの間の発熱体を含む。浴媒体は好都合に、かつ任意選択として、砂を含み得る。ガス源には、空気、窒素、水素、一酸化炭素、またはそれらの任意の組合せを含み得る。本システムは、温度調節装置に電気的に接続された熱センサーをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、装置を熱処理するためのシステムは、浴媒体を含むように構成されたチャンバ、およびチャンバ内で、装置を保持するように構成された容器を含む。浴媒体を流動化するためにチャンバへのガス流が供給される。
【0057】
いくつかの実施形態では、装置は少なくとも一部、弾性フィラメントの円筒状編組から成形できる。それ故、編組は、塑性変形なしで半径方向に拘束され得、半径方向の拘束が解除されると自己拡張する。弾性フィラメントのかかる編組は本明細書では「自己拡張型編組」と呼ぶ。本開示によれば、現在の閉塞装置よりも概ね小さいフィラメントの編組が好ましくは使用される。いくつかの実施形態では、編組フィラメントの厚さは、約0.10mm未満であろう。いくつかの実施形態では、編組は、約0.015mm~約0.080mmの範囲の直径のワイヤーから製作され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、編組フィラメントの直径は、約0.5mm未満であり得る。他の実施形態では、フィラメント直径は約0.01mm~約0.40mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、剛性、弾性、構造、半径方向力、孔径、閉塞能力、および/または他の特徴を含む、異なる特性を与えるために、異なる直径の編組フィラメントがメッシュに混ぜ合わされ得る。いくつかの実施形態では、より大きな、構造的フィラメントが、約0.025mm~約0.25mmの範囲の直径のワイヤーから製作され得る。いくつかの実施形態では、より小さい編組フィラメントの厚さは約0.01mm~約0.05mmの間であろう。小フィラメントの数の大フィラメントの数に対する比は、例えば、4~12の間など、約2~20の間であり得る。2つの異なるサイズ(断面積)のフィラメントを含む例示的な実施形態が、例えば、
図8に示されており、
図8では、大きいフィラメント30Lの配列が小さいフィラメント30Sの配列に組み込まれている。
【0059】
治療の前に、塞栓形成すべき部位のサイズおよび形態に基づいて装置サイズが選択される。一般に、装置は概ね、拡張した状態でのその閉塞領域の直径が部位の直径または最大寸法よりも大きく、従って、オーバーサイズになるように選択されて、残留半径方向力を提供し、装置に対して安定性を与える。脈管部位に、オーバーサイズで少なくとも部分的に圧縮した状態で配備されると、装置は制約された構成をとり、その構成で円板12の形状は、装置の拡張または弛緩した状態と比べて軸方向に引き伸ばされ、それにより、前述のとおり、装置の縦軸に対する円板角度が減少する。本装置は標的の血管直径に対して直径方向に、いくつかの実施形態では、約10%~100%の間、好ましくは、約25%~75%の間だけ、オーバーサイズであり得る。オーバーサイズで、従って部分的に圧縮した状態で配備されると、円板は制約された構成をとって、複数のメッシュ層(すなわち、各円板12に対して2)を形成し、その構成で各円板12の外表面の少なくとも一部は、装置の縦軸X(それは一般に、脈管部位、例えば、血管、の局所的な縦軸と一致する)に関して前述した第2の円板角度θ
2を形成する。前述のとおり、第2の円板角度θ
2は典型的には、装置の縦軸Xに対して、例えば、約40°~60°の間など、70°より明らかに小さい。いくつかの実施形態では、装置10は、
図4に示すように、閉塞装置が移植された場合に最遠位と最近位円板12の頂点16との間を測定したときに、長さが約2.5cm未満、例えば、約0.5cm~2.0cmの間など、の短くて局所的な閉塞ゾーンZを提供する直線距離内にパック化または構成された複数の層を有する。
【0060】
本装置の形状および多孔性は、血管閉塞および生体適合性骨格(scaffold)を提供するように相乗的に機能して新しい組織の内部成長を促す。これらの機能には、材料の単位長さあたりのピックカウント(絡交(interlacing)の数)として一般に説明される「孔径」または「織り密度」によって影響を与えることができる。本開示に従った装置は一般に、現在の閉塞装置よりも高いワイヤーカウント、および従って小さい孔径を提供して、改善された閉塞性能をもたらし、従って、凝血塊形成に起因した血栓塞栓症リスクを増大し、同時に装置の折り畳んだ外形または直径も増加させ得る、ポリマー織物構成要素の必要性を除去し得る。約0.05mm~0.50mmの範囲内の孔径が利用され得る。いくつかの実施形態では、孔径は、0.10mm~0.25mmの範囲内であり得る。比較的高いワイヤーカウントは、閉塞されている標的血管の多数のフィラメントまたはワイヤーの半径方向トラバースを提供する。各円板は、中央のコア部から円板の頂点への2本のフィラメントの半径方向トラバースを提供するので、装置内のワイヤーの半径方向トラバースの総数は、フィラメントまたはワイヤー数×円板数×2に等しい。いくつかの実施形態では、各半径方向に延出している閉塞領域または円板は、各ワイヤーに対して2つの半径方向トラバースを画定し、本装置に対する半径方向トラバースの総数は、720~2000の間である。
【0061】
本明細書での実施形態のいずれでも、装置10は、血管壁または他の組織に対する装置の追加の固定を提供するのを支援するために構造に組み込まれ得る、少なくとも1つのタイン(tine)、返し(barb)、フック、ピンまたはアンカー(以下、「返し」と呼ぶ、図示せず)を含み得る。返しの長さは、約0.25~3mm、および好ましくは、約0.5~2mmの間であり得る。
【0062】
任意選択として、閉塞装置は、1つまたは複数の有益な薬物および/または他の生理活性物質の血液または周辺組織への溶出または送達を提供するように構築され得る。任意選択として、本装置は、その性能、固定、および/または生体適合性を強化するために様々なポリマーでコーティングされ得る。任意選択として、本装置は、固定、封着、漏出の低減または治癒を促進するために、細胞および/または他の生物由来物質を組み込み得る。前述の実施形態のいずれでも、本装置は、装置の性能ならびに/または標的部位および近くの組織の治癒を強化するために、薬物または生物活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、本装置の少なくとも一部は:アスピリンを含むが、それに制限されない、抗血小板薬;糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害薬(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン、フラダフィバン、クロマフィバン、トキシフィバン(toxifiban)、XV454、レフラダフィバン、クレルバル(klerval)、ロトラフィバン、オルボフィバン、およびゼミロフィバンの1つまたは複数を含む)、ジピリダモール、アポ-ジピリダモール、ペルサンチン、プロスタサイクリン、チクロピジン、クロピドグレル、クロマフィバン、シロスタゾール、および/または一酸化窒素を含み得る。前述の実施形態のいずれでも、本装置は、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヒルジン、ワルファリン、ビバリルジン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、キシメラガトラン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、合成抗トロンビン、Vasoflux、アルガトロバン、エフェガトラン、ダニ抗凝固ペプチド、Ppack、HMG-CoA還元酵素阻害薬、ならびにトロンボキサンA2受容体阻害薬などの、抗凝血剤を含み得る。本明細書の装置実施形態は、一部、側面、または全表面上の表面処理またはコーティングを含み得、表面処理またはコーティングは、血栓、凝血、治癒、もしくは他の塞栓形成性能の手段を促進または抑制する。表面処理またはコーティングは、合成、生物、またはそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態に対して、本装置の表面の少なくとも一部分は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸もしくはそれらの共重合体などの、生分解性または生体再吸収性材料から成る、表面処理あるいはコーティングを有し得る。装置の塞栓形成性能を強化し得る別の表面処理またはコーティング材料は、アルギン酸ベースの材料など、多糖類を含む。いくつかのコーティング実施形態は、ECMタンパク質などの、細胞外基質タンパク質を含み得る。かかるコーティングの一例は、米国ミネソタ州、エデンプレイリーのSurmodics Inc.から市販されているFinale Prohealingコーティングであり得る。別の例示的なコーティングは、米国ジョージア州、ニューナンのCeloNovo BioSciences,Inc.から市販されているPolyzene-Fであり得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、フィラメントの横寸法の約25%未満の厚さで適用され得る。
【0063】
用語「形成された(formed)」、「事前形成された(preformed)」および「製作された(fabricated)」は、本装置の構成要素で使用される弾性、超弾性または形状記憶材料もしくは複数の材料において形状、幾何形状、屈曲、湾曲、スリット、刻み、スカラップ、空隙、孔を与えるために設計される型またはツールの使用を含み得る。これらの型またはツールは、かかる特徴を指定された温度または熱処理で与え得る。
【0064】
例示的な低力切り離し(low force detachment)システムは、身体管腔内の移植片のような本開示に従った閉塞装置を配備するための機能を含み得、移植片は、移植片の近位端がフィラメント状テザー(図示せず)によって切り離し可能に連結される遠位端を有するプッシャー器具を用いて、カテーテルを通して管腔部位に送達される。テザーは第1の端部から、装置の近位端上の「開窓(fenestration)特徴」(例えば、小穴またはループ)を通して、第2の端部まで延在する。テザーの第1の端部は、テザー制御装置内のテザー巻取り組立体に連結され、テザーの第2の端部は、装置が配備されると第2の端部を解放するように動作可能なテザー保持組立体によってテザー制御装置内に解放可能に捕捉される。保持組立体によって第2の端部が解放されると、巻取り組立体は、テザーが開窓特徴からはずれるまで、開窓特徴を通してテザーを引き込む。本システムは好ましくは、装置を即座に、またはほぼ即座に、すなわち約1秒未満で、切り離し得る。本システムは好ましくは、装置を、機械的手段によってであるが、送達カテーテルまたはプッシャー内、もしくはそれを通したトルクの伝達なしで、切り離し得る。いくつかの実施形態では、本システムは、好ましくは、移動の引込フェーズ中に移植片プッシャーガイドワイヤーにだけ作用して、ガイドワイヤーの再挿入なしで引込のための引込装置の再設定を可能にする、引込装置への単一の動作を通して、ユーザーが閉塞装置の係合を解除できる、連動ループ切り離しシステムを含み得る。一実施形態では、本システムは、近位端および遠位端を含み、第1のループがその近位端に取り付けられた、移植片;近位端および遠位端を含み、第2のループがその遠位端近くに取り付けられた、シース;近位端および遠位端を有するシース内に摺動自在に配置されたガイドワイヤー;ガイドワイヤーは、第1および第2のループを通して係合されると、ガイドワイヤーの引込によって解放できるシースへの移植片の解放可能な連結を提供し;シースの近位端およびガイドワイヤーを受け取るように適合された引込機構を含む取っ手ハンドピース;フィンガーアクチュエータ、ラチェット装置、第1のばね部材および第2のばね部材を含む引込機構;回転可能レバー、保持差し込み(gripping insert)、アンビル、ガイドアームおよびガイドランプ(guide ramp)を含むラチェット装置;第1のばね部材は回転可能レバーをガイドワイヤーに対して偏向させて、第2のばね部材は付勢力をフィンガーアクチュエータの引込に対して供給し;保持差し込みは、フィンガーアクチュエータによって作動されると、ガイドワイヤーに作用して、ガイドワイヤーをシース内に引き込んで移植片を解放する、を含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態に対して、送達システムの送達器具からの装置の切り離しは、装置と送達器具との間の接合または解放機構へのエネルギー(例えば、電流、熱、無線周波数、超音波、振動、またはレーザー)の供給によって達成され得る。
【0066】
本明細書で開示されるのは、開示する主題の様々な例証される実施形態の詳細な説明である。この説明は、制限する意味で行われるのではなく、かかる主題の一般的な原理の例証目的のためにだけ行われる。本開示の主題のさらなる特徴および利点は、添付の図面と一緒に検討される場合、開示する実施形態の説明を考慮すると、当業者にとって明らかになるであろう。
【0067】
本開示の主題のいくつかの実施形態は特定の実施形態および用途に関して説明されているが、当業者は、この教示に照らせば、本開示の精神から逸脱することも範囲を超えることもなく、追加の実施形態および修正を生成できる。その結果、本明細書の図面および説明は、本開示の理解を促進するために例として提案されており、その範囲を制限すると解釈すべきではない。