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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】農薬乳剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20230615BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20230615BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20230615BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A01N25/04 101
A01N25/30
A01N43/90 102
A01P7/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019551072
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2018038824
(87)【国際公開番号】W WO2019087796
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2019-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017209304
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴裕
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】木村 敏康
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、非極性溶媒、LogPow値が1.6以下の極性溶媒、及びポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤を含有し、
農薬活性成分と非極性溶媒との合計量が、LogPow値が1.6以下の極性溶媒とポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤との合計量1重量部に対して、1.0~1.5重量部であり、且つ
アニオン界面活性剤を実質的に含有しない、
農薬乳剤組成物であって、
前記ポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤は、HLBが9~14である1種のノニオン界面活性剤であり、
前記農薬乳剤組成物全体に対して、それぞれ、前記農薬活性成分の含有量は、10~30質量%であり、前記非極性溶媒の含有量は、20~60質量%であり、前記極性溶媒の含有量は、10~40質量%であり、前記ノニオン界面活性剤の含有量は、10~30質量%である、
農薬乳剤組成物。
【請求項2】
農薬活性成分がアシノナピルである、請求項1に記載の農薬乳剤組成物。
【請求項3】
極性溶媒が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ブチルジグリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジプロピレングリコール、N-ブチルピロリドン、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルグリコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、及び5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタン酸メチルエステルからなる群から選ばれる少なくともひとつである、請求項1又は2に記載の農薬乳剤組成物。
【請求項4】
非極性溶媒は、LogPow値が1.6よりも大きい、請求項1~3のいずれかひとつに記載の農薬乳剤組成物。
【請求項5】
ポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、およびエトキシル化プロポキシル化トリスチリルフェノールからなる群から選ばれる、請求項1~4のいずれかひとつに記載の農薬乳剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬乳剤組成物に関する。より詳細に、本発明は、高硬度の水で希釈した時でも良好な乳化性を得ることができる農薬乳剤組成物に関する。
本願は、2017年10月30日に、日本に出願された特願2017-209304号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
水に溶けにくい農薬原体を有機溶媒に溶かし、さらにこれに乳化剤(界面活性剤)を加えてなる油状液体の製剤(農薬乳剤、agrochemicalemulsifiableconcentrate)は、水で希釈して使用される。農薬乳剤を水で希釈すると乳濁した状態になる。通常の水は、多少なりとも、Mg2+、Ca2+などの二価カチオン成分を含む。二価カチオン成分がアニオン界面活性剤2分子とイオン結合して金属セッケンと呼ばれる、水に不溶性の粘着性物質を生成させる。高硬度水は二価カチオンを多く含むので、高硬度水で希釈すると金属セッケンが多量に生成する。その結果、乳化性が低下して、油相と水相とが分離しやすい。
【0003】
一般に、ノニオン界面活性剤は、イオン化しない親水基を持っているので、水の硬度や電解質の影響を受けにくい。
例えば、特許文献1は、製剤例として、農薬活性成分30重量部、キシレン33重量部、ジメチルホルムアミド30重量部、およびポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル7重量部を混合溶解してなる乳剤を開示している。この乳剤組成物は、19°dH硬水で希釈すると水相と油相とが分離する。
特許文献2は、実施例として、農薬活性成分12.3重量部、芳香族炭化水素系非極性溶媒23重量部、シクロヘキサノン39.7重量部、POEトリスチリルフェニルエーテル15重量部、およびPOEオレイン酸エステル10重量部を混合溶解してなる農薬乳剤組成物を開示している。
【0004】
【文献】WO2011/105506A
【文献】WO2009/063608A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高硬度の水で希釈した時でも良好な乳化性を得ることができる農薬乳剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0007】
〔1〕 農薬活性成分、非極性溶媒、LogPow値が1.6以下の極性溶媒、及びポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤を含有し、
農薬活性成分と非極性溶媒との合計量が、LogPow値が1.6以下の極性溶媒とポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤との合計量1重量部に対して、1.0~1.6重量部であり、且つ
アニオン界面活性剤を実質的に含有しない、
農薬乳剤組成物。
【0008】
〔2〕 農薬活性成分がアシノナピルである、〔1〕に記載の農薬乳剤組成物。
【0009】
〔3〕 極性溶媒が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ブチルジグリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジプロピレングリコール、N-ブチルピロリドン、ベンジルグリコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、及び5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタン酸メチルエステルからなる群から選ばれる少なくともひとつである、〔1〕又は〔2〕に記載の農薬乳剤組成物。
【0010】
〔4〕 非極性溶媒は、LogPow値が1.6よりも大きい、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の農薬乳剤組成物。
【0011】
〔5〕 ポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤は、HLBが9~14である、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の農薬乳剤組成物。
〔6〕 ポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、およびエトキシル化プロポキシル化トリスチリルフェノールからなる群から選ばれる少なくともひとつである、〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の農薬乳剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農薬乳剤組成物は、高硬度の水で希釈した時でも良好な乳化性を得ることができる。希釈された液は、水相と油相に分離し難いので、均一濃度で農園芸作物、圃場等に散布することができ、また散布の途中に希釈された液を均一にするための撹拌を行う必要がない。散布された希釈液の濃度に斑がないので、農園芸作物有害生物などの防除効果などを均一にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の農薬乳剤組成物は、農薬活性成分、非極性溶媒、極性溶媒、及びノニオン界面活性剤を含有する農薬乳剤組成物であって、アニオン界面活性剤を実質的に含有しない。
【0014】
(農薬活性成分)
本発明に用いられる農薬活性成分は、農薬活性を有する化合物である。農薬活性を有する化合物は、農薬登録された化合物、またはそれと同等の活性を有する化合物であることができる。また、農薬活性成分は、化合物形態、結晶形態などによって制限されず、例えば、塩を形成したものであってもよいし、2種以上の農薬活性成分からなる共結晶、1種以上の農薬活性成分と他の化合物とからなる共結晶などであってもよい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、マグネシウム塩などを挙げることができる。
【0015】
農薬活性成分としては、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長調整剤などを挙げることができる。農薬活性成分のより具体的な例としては、シプロジニル(cyprodinil)、メパニピリム(mepanipyrim)などのアニリノピリミジン系殺菌剤; イソチアニル(isotianil)、エタボキサム(ethaboxam)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、チフルザミド(thifluzamide)、フェンピラザミン(fenpyrazamine)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フラメトピル(furametpyr)、フルオピコリド(fluopicolide)、フルキサピロキサド(fluxapyroxad)、フルトラニル(flutolanil)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、ペンフルフェン(penflufen)、ボスカリド(boscalid)、マンジプロパミド(mandipropamid)、メタラキシル(metalaxyl)、メタラキシルM(metalaxyl-M)、メプロニル(mepronil)などのアミド系殺菌剤; イプロジオン(iprodione)、プロシミドン(procymidone)などのジカルボキシイミド系殺菌剤; イプコナゾール(ipconazole)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、オキスポコナゾールフマル酸塩(oxpoconazolefumarate)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、トリフルミゾール(triflumizole)、トリホリン(triforine)、フェナリモル(fenarimol)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、プロピコナゾール(propiconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、ペフラゾエート(pefurazoate)、ミクロブタニル(myclobutanil)、メトコナゾール(metconazole)などのステロール生合成阻害剤; アゾキシストロビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、ファモキサドン(famoxadone)、メトミノストロビン(metominostrobin)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)などのストロビルリン系殺菌剤; TPN(chlorothalonil)、アミスルブロム(amisulbrom)、アメトクトラジン(ametoctradin)、イミノクタジン(iminoctadine)、オキソリニック酸(oxolinicacid)、キャプタン(captan)、シアゾファミド(cyazofamid)、ジチアノン(dithianon)、ジメトモルフ(dimethomorph)、シモキサニル(cymoxanil)、フェリムゾン(ferimzone)、フルジオキソニル(fludioxonil)、フルチアニル(flutianil)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb-hydrochloride)、プロベナゾール(probenazole)、ペンシクロン(pencycuron)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)などのその他の合成殺菌剤・天然物由来の殺菌剤; ジエトフェンカルブ(diethofencarb)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)などのベンゾイミダゾール系殺菌剤; トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、フサライド(fthalide)などのメラニン生合成阻害剤; イミノクタジン(iminoctadine)などの忌避剤・その他の合成殺菌剤・天然物由来の殺菌剤; オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)、カスガマイシン(kasugamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、バリダマイシン(validamycin)、ポリオキシン(polyoxins)などの抗生物質殺菌剤; イソプロチオラン(isoprothiolane)などの昆虫成長制御剤・その他の植物成長調整剤・忌避剤・その他の合成殺菌剤・天然物由来の殺菌剤; フルアジナム(fluazinam)などの殺ダニ剤・その他の合成殺菌剤・天然物由来の殺菌剤; ベノミル(benomyl)などの殺線虫剤・ベンゾイミダゾール系殺菌剤; ダゾメット(dazomet)などの殺線虫剤・土壌殺菌剤・ダイアジン系除草剤; フルスルファミド(flusulfamide)などの土壌殺菌剤; トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、ホセチル(fosetyl)などの有機リン系殺菌剤; アンバム(ambam)、マンゼブ(mancozeb)、マンネブ(maneb)などの有機硫黄殺菌剤; チウラム(thiuram)などの有機硫黄殺菌剤・忌避剤; トリチコナゾール(triticonazole)などのトリアゾール系殺菌剤; イソピラザム(isopyrazam)、トルピラレート(tolpyralate)などのピラゾール系殺菌剤; ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)などのテトラゾール系殺菌剤; オキサチアピプロリン(oxathiapiprolin)などのピペリジン・チアゾール・イソキサゾリン系 殺菌剤; イソフェタミド(isofetamid)などのチオフェンカルボキサミド系殺菌剤; プロピネブ(propineb)などのジチオカーバメート系殺菌剤; ピラジフルミド(pyraziflumid)などの殺菌剤;
【0016】
アジムスルフロン(azimsulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、エトキシスルフロン(ethoxysulfuron)、クロリムロンエチル(chlorimuron-ethyl)、シクロスルファムロン(cyclosulfamuron)、チフェンスルフロンメチル(thifensulfuron-methyl)、トリフロキシスルフロンナトリウム塩(trifloxysulfuron-sodium)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、ハロスルフロンメチル(halosulfuron-methyl)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、フラザスルフロン(flazasulfuron)、フルセトスルフロン(flucetosulfuron)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ホラムスルフロン(foramsulfuron)、メタゾスルフロン(metazosulfuron)、ヨードスルフロンメチルナトリウム塩(iodosulfuron-methyl-sodium)、リムスルフロン(rimsulfuron)などのアセト乳酸合成阻害除草剤(スルホニアウレア系); ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリフタリド(pyriftalid)、ピリミスルファン(pyrimisulfan)、ピリミノバックメチル(pyriminobac-methyl)、フロラスラム(florasulam)、ペノキススラム(penoxsulam)などの他のアセト乳酸合成阻害除草剤; アシュラム(asulam)、アラクロール(alachlor)、イソキサベン(isoxaben)、イプフェンカルバゾン(ipfencarbazone)、エトベンザニド(etobenzanid)、カフェンストロール(cafenstrole)、ジフルフェニカン(diflufenican)、ジメテナミド(dimethenamid)、ジメテナミドP(dimethenamid-P)、ナプロパミド(napropamide)、ブタクロール(butachlor)、フルフェナセット(flufenacet)、フルポキサム(flupoxam)、プレチラクロール(pretilachlor)、プロピザミド(propyzamide)、ブロモブチド(bromobutide)、メトラクロール(metolachlor)、S-メトラクロール(S-metolachlor)、メフェナセット(mefenacet)などのアミド系除草剤; グリホサート(glyphosate)、グルホシネート(glufosinate)、グルホシネートP(glufosinate-P)などのアミノ酸系除草剤; IPC、エスプロカルブ(esprocarb)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、プロスルホカルブ(prosulfocarb)、ベンチオカーブ(benthiocarb)、モリネート(molinate)などのカーバメート系除草剤; クレトジム(clethodim)、セトキシジム(sethoxydim)などのシクロヘキサンジオン系除草剤; オリザリン(oryzalin)、トリフルラリン(trifluralin)、プロジアミン(prodiamine)、ベスロジン(ベンフルラリン(benfluralin))などのジニトロアニリン系除草剤; ペンディメタリン(pendimethalin)などのジニトロアニリン系除草剤・その他の植物成長調整剤; ターバシル(terbacil)、ブロマシル(bromacil)、ベンタゾン(bentazone)、レナシル(lenacil)などのダイアジン系除草剤; アトラジン(atrazine)、インダジフラム(indaziflam)、シアナジン(cyanazine)、ジメタメトリン(dimethametryn)、シメトリン(simetryn)、トリアジフラム(triaziflam)、シマジン(simazine)(CAT)、メタミトロン(metamitron)などのトリアジン系除草剤; テフリルトリオン(tefuryltrione)、ベンゾビシクロン(benzobicyclon)、メソトリオン(mesotrione)、フェンキノトリオン(fenquinotrione)などのトリケトン系除草剤; DBNなどのニトリル系除草剤; トプラメゾン(topramezone)、ピラゾキシフェン(pyrazoxyfen)、ピラゾレート(ピラゾリネート、pyrazolynate)などのピラゾール系除草剤; クロルフタリム(chlorphthalim)などのフェニルフタルイミド系除草剤; 2、4-PA、DCBN、MCPB(MCPB-ethyl)、MCPP(mecoprop)、キザロホップエチル(quizalofop-ethyl)、クロメプロップ(clomeprop)、シハロホップブチル(cyhalofop-butyl)、トリクロピル(triclopyr)、フルアジホップ(fluazifop)、フルアジホップP(fluazifop-P)、メコプロップP(mecoprop-P)、メタミホップ(metamifop)、フルアジホップブチル(fluazifop-butyl)などのフェノキシ酸系除草剤; DCMU、ダイムロン(daimuron)、リニュロン(linuron)、テブチウロン(tebuthiuron)などの尿素系除草剤; ACN(mecoprop-P-potassium)、MDBA、インダノファン(indanofan)、オキサジアゾン(oxadiazon)、オキサジアルギル(oxadiargyl)、オキサジクロメホン(oxaziclomefone)、カルフェントラゾンエチル(carfentrazone-ethyl)、ジチオピル(dithiopyr)、ピラクロニル(pyraclonil)、ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)、ピロキサスルホン(pyroxasulfone)、フェノキサスルホン(fenoxasulfone)、フェントラザミド(fentrazamide)、ブタミホス(butamifos)、ペントキサゾン(pentoxazone)、ベンフレセート(benfuresate)などのその他の合成除草剤・天然物由来の除草剤; エトフメセート(ethofumesate)などの非ホルモン型浸透移行性の除草剤; アミカルバゾン(amicarbazone)などのトリアゾリノン系除草剤; イマザピルイソプロピルアミン塩(イマザピル(imazapyr))、イマザモックスアンモニウム塩(imazamox-ammonium)などのイミダゾリノン系除草剤; クロリダゾン(chloridazon)(PAC)などのピリダジノン系除草剤; ジクワットジブロミド(ジクワット(diquat))などのビピリジウム系除草剤; トリアファモン(triafamone)などのスルホンアニリド系除草剤; エンドタール(endothal)、フルプロパネートナトリウム塩(flupropanate-sodium)などの除草剤;
【0017】
BPMC(fenobucarb)、MIPC(isoprocarb)、アラニカルブ(alanycarb)、オキサミル(oxamyl)、カルボスルファン(carbosulfan)、チオジカルブ(thiodicarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、メソミル(methomyl)、フェンメディファム(phenmedipham)などのカーバメート系殺虫剤; クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、フルベンジアミド(flubendiamide)などのジアミド系殺虫剤; スピネトラム(spinetoram)、スピノサドなどのスピノシン系殺虫剤; インドキサカルブ(indoxacarb)、インドキサカルブMP(indoxacarb-MP)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、ピメトロジン(pymetrozine)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、フロニカミド(flonicamid)、メタアルデヒド(metaldehyde)、メタフルミゾン(metaflumizone)などのその他の合成殺虫剤; アセタミプリド(acetamiprid)、イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(clothianidin)、ジノテフラン(dinotefuran)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ニテンピラム(nitenpyram)などのネオニコチノイド系殺虫剤; カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、ベンスルタップ(bensultap)などのネライストキシン系殺虫剤; アクリナトリン(acrinathrin)、エトフェンプロックス(etofenprox)、シハロトリン(cyhalothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、シラフルオフェン(silafluofen)、テフルトリン(tefluthrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フルバリネート(fluvalinate)、ペルメトリン(permethrin)、フェンバレレート(fenvalerate)などのピレスロイド系殺虫剤; エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)などのフェニルピラゾール系殺虫剤; アバメクチン(abamectin)、エマメクチン安息香酸塩(emamectin-benzoate)、レピメクチン(lepimectin)などのマクロライド系殺虫剤; ミルベメクチン(milbemectin)などのマクロライド系殺虫剤・殺ダニ剤; クロマフェノジド(chromafenozide)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、シロマジン(cyromazine)、テブフェノジド(tebufenozide)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、ノバルロン(novaluron)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ブプロフェジン(buprofezin)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、ルフェヌロン(lufenuron)などの昆虫成長制御剤; BPPS(propargite)、アセキノシル(acequinocyl)、アミトラズ(amitraz)、エトキサゾール(etoxazole)、ジエノクロル(dienochlor)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロテトラマト(spirotetramat)、スピロメシフェン(spiromesifen)、テトラジホン(tetradifon)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、ビフェナゼート(bifenazate)、ピフルブミド(pyflubumide)、ピリダベン(pyridaben)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、フェンピロキシメート(fenpyroximate)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アシノナピル(acynonapyr)などの殺ダニ剤; カーバムナトリウム塩(metam-sodium)、カズサホス(cadusafos)、ネマデクチン(nemadectin)、ホスチアゼート(fosthiazate)、酒石酸モランテル(morantel tartrate)などの殺線虫剤; CYAP(cyanophos)、DMTP(methidathion)、MEP(fenitrothion)、MPP(fenthion)、PAP(phenthoate)、アセフェート(acephate)、イソキサチオン(isoxathion)、エチルチオメトン(disulfoton)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、ダイアジノン(diazinon)、ピリミホスメチル(pirimiphos-methyl)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、マラソン(malathion)などの有機リン系殺虫剤; フルエンスルホン(fluensulfone)などのフルオロアルキルチオエーテル系殺虫剤; シクラニリプロール(cyclaniliprole)などのアントラニルアミド系殺虫剤; フルピラジフロン(flupyradifurone)などのブテノライド系殺虫剤; フロメトキン(flometoquin)などのキノリン系殺虫剤; ダイシルア(diashilure(pheromone))などの交尾阻害剤; ジフルメトリム(diflumetorim)などのアミノピリミジン系殺虫・殺菌剤; フルルプリミドール(flurprimidol)などのピリミジンメタノール系植物成長調整剤、ウニコナゾールP(uniconazole-P)、パクロブトラゾール(paclobutrazol)などのトリアゾール系植物成長調整剤、マレイン酸ヒドラジドカリウム(hydrazinocarbonylpropenoic acidpotassiumsalt)などの植物成長調整剤などを挙げることができる。
【0018】
本発明においては、これら農薬活性成分のうち、アシノナピルが好ましく用いられる。
アシノナピル(acynonapyr: 化合物名:(1R,5R,7S)-7-(2-プロポキシ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-9-{[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}-9-アザビシクロ[3.3.1]ノン-2-イン (英化合物名:(1R,5R,7S)-7-(2-propoxy-4-(trifluoromethyl)phenoxy)-9-[[5-(trifluoromethyl)pyridin-2-yl]oxy]-9-azabicyclo[3.3.1]non-2-yne)である。)は、殺ダニ活性を有する。
【0019】
本発明に用いられる農薬活性成分の量は、特に限定されないが、農薬乳剤組成物全体に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0020】
(非極性溶媒)
本発明に用いられる非極性溶媒は、農薬活性成分を溶解させ、水と混ざり合わないまたは水と混ざり合いにくい常温液体の有機化合物であれば、特に限定されない。非極性溶媒は水中に分散した微細な液滴を形成するために添加される。この液滴には農薬活性成分が溶質として含まれている。本発明に用いられる非極性溶媒は、LogPow値が1.6よりも大きいものが好ましい。本発明に用いられる非極性溶媒の例としては、キシレン、エチルベンゼン、オクタデシルベンゼン、ドデシルナフタレン、トリデシルナフタレン、フェニルキシリルエタン、デカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、1-ウンデセン、1-ヘンエイコセン、ソルベント ナフサ、ジ-n-ブチルカーボネート、アジピン酸ジイソブチル、ラウリン酸メチルなどを挙げることができる。これらのうち、ソルベント ナフサ、キシレン、ジ-n-ブチルカーボネート、アジピン酸ジイソブチル、またはラウリン酸メチルが好ましい。
本発明に用いられる非極性溶媒の量は、農薬活性成分を溶解させ得る量であれば特に限定されない。本発明に用いられる非極性溶媒の量は、例えば、農薬乳剤組成物全体に対して、好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0021】
(極性溶媒)
本発明に用いられる極性溶媒は、LogPow値が1.6以下である。極性溶媒は、水に混ざりやすい性質を有する常温液体の有機化合物である。本発明に用いられる極性溶媒の例としては、メタノール(LogPow値:-0.82)、エタノール(LogPow値:-0.32)、プロパノール(LogPow値:0.25)、ブタノール(LogPow値:0.9)、ペンタノール(LogPow値:1.51)、シクロヘキサノール(LogPow値:1.2)などのC1~C6アルコール類、アセトン(LogPow値:-0.24)、メチルエチルケトン(LogPow値:0.29)、シクロヘキサノン(LogPow値:0.86)などのC1~C6ケトン類、N-メチル-2-ピロリドン(LogPow値:-0.38)、N-ブチルピロリドン(LogPow値:1.27)などのC1~C6ラクタム類、γ-ブチルラクトン(LogPow値:-0.57)などのC1~C6ラクトン類、N,N-ジメチルホルムアミド(LogPow値:-0.87)、アセトアミド(LogPow値:-1.26)などのC2~C6アミド類、ブチルジグリコール(LogPow値:0.56)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(LogPow値:-1.18)、ジプロピレングリコール(LogPow値:-1.5)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(LogPow値:-0.342)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(LogPow値:-0.46)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(LogPow値:1.52)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(LogPow値:0.309)、ベンジルグリコール(LogPow値:1.11)などのグリコール類、プロピレンカーボネート(LogPow値:-0.5)、ジメチルスルホキシド(LogPow値:-1.35)、フェノキシエタノール(LogPow値:1.2)、フェノキシプロパノール(LogPow値:1.51)、5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタン酸メチルエステル(LogPow値:0.39)などを挙げることができる。これらのうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ブチルジグリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジプロピレングリコール、N-ブチルピロリドン、ベンジルグリコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、または5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタン酸メチルエステルが好ましい。なお、LogPow値は、n-オクタノールおよび水への分配係数Powの常用対数である(JISZ7260-107:2000参照)。
Pow=(C(1-オクタノール相中の濃度)/C(水相中の濃度))
本発明に用いられる極性溶媒の量は、例えば、農薬乳剤組成物全体に対して、好ましくは1~90質量%、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
【0022】
(ノニオン界面活性剤)
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン(POE)基を有するものである。ノニオン界面活性剤は、水に溶けてもイオン化しないので、希釈に用いられる水の硬度によって影響を受けにくい。本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、POE基とカルボキシル基とが結合して得られるエステル型ノニオン界面活性剤、POE基と水酸基とがエーテル結合して得られるエーテル型ノニオン界面活性剤などに大別できる。エステル型ノニオン界面活性剤としては、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE-ソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル等を挙げることができる。エーテル型ノニオン界面活性剤としては、POEアルキルフェニルエーテル、POEアルキルエーテル、POE・ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどを挙げることができる。その他のノニオン界面活性剤としては、テトラPOE・テトラポリオキシプロピレン-エチレンジアミン縮合物、POE-ヒマシ油誘導体、POE硬化ヒマシ油誘導体、POEミツロウ・ラノリン誘導体、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。本発明に用いられるノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、エトキシル化プロポキシル化トリスチリルフェノール(ETHO-PROPOXYLATEDTRISTYRYLPHENOLS)などを挙げることができる。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、HLB値が、好ましくは0~20、より好ましくは9~14である。なお、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤の量は、例えば、農薬乳剤組成物全体に対して、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは1~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0023】
(アニオン界面活性剤)
本発明の農薬乳剤組成物は、アニオン界面活性剤を実質的に含有しない。アニオン界面活性剤は、水に溶けたときにイオン化する親水性基を有する。アニオン界面活性剤は、カルボン酸型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、リン酸エステル型アニオン界面活性剤などに大別できる。
【0024】
(成分比)
本発明の農薬乳剤組成物は、前記農薬活性成分と前記非極性溶媒との合計量が、前記極性溶媒と前記ノニオン界面活性剤との合計量1重量部に対して、1.0~1.6重量部、好ましくは1.0~1.5重量部である。前記農薬活性成分と前記非極性溶媒との合計量が、多くなるほど、組成物全体の疎水性が高くなり、水で希釈したときの乳化性が低下する。
【0025】
(好ましい範囲)
本発明の農薬乳剤組成物の農薬活性成分、非極性溶媒、極性溶媒、及びノニオン界面活性剤の含有量は、農薬活性成分と非極性溶媒との合計量が、極性溶媒とノニオン界面活性剤との合計量1重量部に対して、1.0~1.6重量部の条件を満たせば、特に限定されないが、
好ましくは、農薬乳剤組成物全体に対して、それぞれ
農薬活性成分は 1~50質量%、
非極性溶媒は 5~90質量%、
極性溶媒は 1~90質量%、
ノニオン界面活性剤は 0.1~40質量%、
より好ましくは、農薬乳剤組成物全体に対して、それぞれ
農薬活性成分は 5~40質量%、
非極性溶媒は 10~70質量%、
極性溶媒は 5~60質量%、
ノニオン界面活性剤は 1~35質量%、
さらに好ましくは、農薬乳剤組成物全体に対して、それぞれ
農薬活性成分は 10~30質量%、
非極性溶媒は 20~60質量%、
極性溶媒は 10~40質量%、
ノニオン界面活性剤は 10~30質量%である。
【0026】
(その他の成分)
本発明の農薬乳剤組成物は、その他の成分として、pH調整剤、着色剤、消泡剤、比重調整剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、薬害軽減剤、ドリフト防止剤、混用改良剤、保湿剤、拡展剤、固着剤、キレート剤、香料等を含有することができる。その他の成分の合計の量は、農薬乳剤組成物全体に対して、0~10質量%、より好ましくは、0.01~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%であり、その他の成分の量は、農薬乳剤組成物全体に対して、それぞれ、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
【0027】
本発明の農薬乳剤組成物は、その調製方法によって、特に限定されない。例えば、農薬活性成分、非極性溶媒、ノニオン界面活性剤、極性溶媒を同時に混合して得てもよく、農薬活性成分を非極性溶媒に所定量を添加して溶解させて溶液Aを得、ノニオン界面活性剤を極性溶媒と混ぜ合わせて均一にして液Bを得、液Aと液Bとを混ぜ合わせることによって、本発明の農薬乳剤組成物を調製することができる。
【0028】
本発明の農薬乳剤組成物は、水で希釈して使用する。希釈のために用いる水としては、例えば、水道水、工業用水、井戸水、川の水、地下水等を挙げることができる。
なお、WHOは、硬度60mg/l未満の水を軟水、硬度60mg/l以上120mg/l未満の水を中程度の硬水、硬度120mg/l以上180mg/l未満の水を硬水、硬度180mg/l以上の水を非常な硬水に分類している。
硬度[mg/l]=(カルシウム量[mg/l]×2.5)+(マグネシウム量[mg/l]×4.1)
また、国際農薬分析法協議会(Collaborative InternationalPesticidesAnalyticalCouncilLimited:CIPAC)では標準水(StandardWaters)を定義していて、標準水Dは342ppm硬度である。WHO標準硬水は標準水Dと同じである。342ppm硬度は、ドイツ硬度に変換すると、342ppm÷100×56÷10≒19°dHである。
【0029】
希釈された本発明の農薬乳剤組成物は、所定量を農園芸作物、圃場等に散布することができる。これにより、農薬活性成分の効果が発揮される。
【実施例
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
農薬乳剤組成物実施例の記載に先立ち、農薬乳剤組成物の評価方法を説明する。
(農薬乳剤組成物の評価方法)
本実施例等で得られた農薬乳剤組成物を以下のようにして評価した。
農薬乳剤組成物500μlを100ml容のガラス管に入れ、これに25℃の19°dH硬水100mlを添加した。ガラス管を30回、転倒させて、均一な乳化液を得た。乳化状態を以下の評価基準にて目視で「初期乳化」の評価を行った。
評価基準(初期乳化)
○:転倒30回後、均一な白濁液となり、分離や沈殿物は見られなかった。
×:転倒30回後、粗い乳化粒子が観測された。または、分離し、白濁しなかった。
【0032】
次いで、乳化液を25℃の環境下に24時間静置した。再度、以下の評価基準にて目視で「24時間後」の評価を行った。
評価基準(24時間後)
○:均一な乳化状態を保っていた。(分離した油滴は0.1mL未満)。
△:分離し、分離した油滴が0.1mL程度であった。
×:分離し、分離した油滴が0.2mL以上であった。または、液面や底部にオイルが分離していた。
【0033】
本実施例等で使用した物質は以下のとおりである。
農薬活性成分(A-1) :アシノナピル、日本曹達株式会社製
【0034】
非極性溶媒(B-1) :ソルベントナフサ、JXTGエネルギー株式会社社製T-SOL 150、LogPow=3.80
非極性溶媒(B-2) :キシレン、LogPow=3.15
非極性溶媒(B-3) :ジ-n-ブチルカーボネート、Huntsman社製JEFFSOL AG1560、LogPow=3.47
非極性溶媒(B-4) :アジピン酸ジイソブチル、花王株式会社製ビニサイザー40、LogPow=3.70
非極性溶媒(B-5) :ラウリン酸メチル、花王株式会社製エキセパール ML-85、LogPow=5.41
【0035】
極性溶媒(C-1) :ジエチレングリコールモノメチルエーテル、東邦化学工業株式会社製ハイソルブ DM、LogPow=-1.18
極性溶媒(C-2) :N,N-ジメチルホルムアミド、LogPow=-0.87
極性溶媒(C-3) :ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、Dow ChemicalJapanLimited製ダワノールDPNB、 LogPow=1.52
極性溶媒(C-4) :シクロヘキサノール、LogPow=1.2
極性溶媒(C-5) :シクロヘキサノン、LogPow=0.86
極性溶媒(C-6) :ブチルジグリコール、LogPow=0.56
極性溶媒(C-7) :トリプロピレングリコールメチルエーテル、Dow ChemicalJapanLimited製ダワノールTPM、LogPow=0.309
極性溶媒(C-8) :エタノール、LogPow=-0.31
極性溶媒(C-9) :プロピレングリコールモノメチルエーテル、東邦化学工業株式会社製ハイソルブ MP、LogPow=-0.342
極性溶媒(C-10) :N-メチル-2-ピロリドン、LogPow=-0.38
極性溶媒(C-11) :ジプロピレングリコールメチルエーテル、Dow ChemicalJapanLimited製ダワノールDPM、LogPow=-0.46
極性溶媒(C-12) :プロピレンカーボネート、Huntsman社製JEFFSOL 1555、LogPow=-0.5
極性溶媒(C-13) :γ-ブチロラクトン、LogPow=-0.566
極性溶媒(C-14) :ジメチルスルホキシド、LogPow=-1.35
極性溶媒(C-15) :ジプロピレングリコール、日本乳化剤株式会社製DPG、LogPow=-1.5
極性溶媒(C-16) :N-ブチルピロリドン、Clariant社製Genagen NBP、LogPow=1.27
極性溶媒(C-17) :トリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant社製METHYLTRIGLYCOL、LogPow=-1.12
極性溶媒(C-18) :フェノキシエタノール、LogPow=1.2
極性溶媒(C-19) :フェノキシプロパノール、LogPow=1.51
極性溶媒(C-20) :ベンジルグリコール、LogPow=1.11
極性溶媒(C-21) :5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタン酸メチルエステル、RHODIASOLV POLARCLEAN、LogPow=0.39
【0036】
極性溶媒(C-22) :オレイン酸メチル、花王株式会社製エキセパール M-OL、LogPow=7.45
極性溶媒(C-23) :アジピン酸ジイソブチル、花王株式会社製ビニサイザー 40、LogPow=3.70
極性溶媒(C-24) :オクタノール、LogPow=3
極性溶媒(C-25) :ヘキサノール、LogPow=2.03
極性溶媒(C-26) :酢酸ブチル、LogPow=1.82
極性溶媒(C-27) :ジブチルジグリコール、日本乳化剤株式会社製DBDG、LogPow=1.92
極性溶媒(C-28) :2-エチルヘキシルジグリコール、日本乳化剤株式会社製EHDG、LogPow=2
【0037】
ノニオン界面活性剤(D-1) :ポリオキシエチレントリデシルエーテル、日本乳化剤株式会社製ニューコール NT-5
ノニオン界面活性剤(D-2) :ETHO-PROPOXYLATED TRISTYRYLPHENOLS、SOLVAY社製Soprophor TSP/724、CAS:70880-56-7、HLB=12.3
ノニオン界面活性剤(D-3) :ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、東邦化学工業株式会社製ソルポールT-10、HLB=10
ノニオン界面活性剤(D-4) :ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレート、花王株式会社製レオドール430、HLB=10.5
ノニオン界面活性剤(D-5) :ポリオキシエチレンソルビタンエステル、CRODA社製TWEEN81、HLB=10
ノニオン界面活性剤(D-6) :ポリオキシエチレンアルキルエーテル、日本乳化剤株式会社製ニューコール2305、HLB=10.5
ノニオン界面活性剤(D-7) :ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、日本乳化剤株式会社製ニューコール2607、HLB=11.2
ノニオン界面活性剤(D-8) :ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、日本乳化剤株式会社製FNN-08505、HLB=10.0
ノニオン界面活性剤(D-9) :ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、日光ケミカルズ株式会社製PBC-44、HLB=12.5
ノニオン界面活性剤(D-10) :ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、STEPAN社製TOXIMUL8315、HLB=13
ノニオン界面活性剤(D-11) :ポリオキシエチレンひまし油、Huntsman社製TERMUL1284、HLB=12.6
ノニオン界面活性剤(D-12) :ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、日本乳化剤株式会社製ニューコール560、HLB=10.9
【0038】
ノニオン界面活性剤(D-13) :ソルビタンオレエート、日本乳化剤株式会社製ニューコール80、HLB=6.4
ノニオン界面活性剤(D-14) :ソルビタン脂肪酸エステル、日光ケミカルズ株式会社製SL-10、HLB=8.6
ノニオン界面活性剤(D-15) :ショ糖ステアリン酸エステル、東邦化学工業株式会社製DKエステルF-70、HLB=8
ノニオン界面活性剤(D-16) :ショ糖ステアリン酸エステル、東邦化学工業株式会社製DKエステルF-110、HLB=11
ノニオン界面活性剤(D-17) :ショ糖ステアリン酸エステル、東邦化学工業株式会社製DKエステルF-160、HLB=15
ノニオン界面活性剤(D-18) :Polymeric Ester、CRODA社製ATLOX4916、HLB=6
ノニオン界面活性剤(D-19) :脂肪酸グリコールエステル、竹本油脂株式会社製TG-30、HLB=6.1
ノニオン界面活性剤(D-20) :Alcohol Alkoxylate、Huntsman社製TERMUL5500、HLB=14.5
【0039】
アニオン界面活性剤(E-1) :ドデシルベンゼンスルホン酸Ca塩(21.8%)/ソルベントナフサ、竹本油脂株式会社製14179TX
アニオン界面活性剤(E-2) :ジオクチルスルホコハク酸Mg塩(61.4%)/ソルベントナフサ、竹本油脂株式会社製14178TX
【0040】
実施例1
農薬活性成分(A-1)20質量部、非極性溶媒(B-1)35質量部、極性溶媒(C-1)30質量部、およびノニオン界面活性剤(D-1)15質量部を同時に均一になるまで混合して農薬乳剤組成物1を得た。評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例2
非極性溶媒(B-1)の量を30質量部に変え、ノニオン界面活性剤(D-1)の量を20質量部に変えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物2を得た。評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例3~6
非極性溶媒(B-1)を非極性溶媒(B-2)~非極性溶媒(B-5)に代えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物3~6を得た。評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例7~26
極性溶媒(C-1)を極性溶媒(C-2)~極性溶媒(C-21)に代えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物7~26を得た。評価結果を表1および2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
実施例27~36
ノニオン界面活性剤(D-1)をノニオン界面活性剤(D-2)~ノニオン界面活性剤(D-11)に代えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物27~36を得た。評価結果を表3に示す。
【0047】
実施例37
農薬活性成分(A-1)の量を25質量部に変え、非極性溶媒(B-1)の量を30質量部に変えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物37を得た。評価結果を表3に示す。
【0048】
実施例38
非極性溶媒(B-1)の量を40質量部に変え、極性溶媒(C-1)の量を25質量部に変えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物38を得た。評価結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
比較例1
農薬活性成分(A-1)30質量部、非極性溶媒(B-2)33質量部、極性溶媒(C-2)30質量部、およびノニオン界面活性剤(D-12)7質量部を均一になるまで混合して農薬乳剤組成物39を得た。評価結果を表4に示す。
【0051】
比較例2~26
表4および表5に示す成分組成に変えた以外は実施例1と同じ方法で農薬乳剤組成物40~64を得た。評価結果を表4および表5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
以上の結果のとおり、農薬活性成分、非極性溶媒、LogPow値が1.6以下の極性溶媒、及びポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤を含有し、農薬活性成分と非極性溶媒との合計量が、LogPow値が1.6以下の極性溶媒とポリオキシエチレン基を有するノニオン界面活性剤との合計量1重量部に対して、1.0~1.6重量部であり、且つアニオン界面活性剤を実質的に含有しない、農薬乳剤組成物は、高硬度の水で希釈した時でも良好な乳化性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の農薬乳剤組成物は、高硬度の水で希釈した時でも良好な乳化性を得ることができる。希釈された液は、水相と油相に分離し難いので、均一濃度で農園芸作物、圃場等に散布することができ、また散布の途中に希釈された液を均一にするための撹拌を行う必要がない。散布された希釈液の濃度に斑がないので、農園芸作物有害生物などの防除効果などを均一にすることができる。