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特許7296323樹脂製の容器部品の製造方法、金型ユニットおよびそれを備えるブロー成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】樹脂製の容器部品の製造方法、金型ユニットおよびそれを備えるブロー成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/06 20060101AFI20230615BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B29C49/06
B29C49/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019567151
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002280
(87)【国際公開番号】W WO2019146701
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2018011806
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-030830(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111728(WO,A1)
【文献】特表2010-521345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧によりブローキャビティ型に追随するように変形可能な保有熱を保持する肉厚の膨出部を底部に有する、樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出工程と、
前記プリフォームにブロー圧をかけることで前記プリフォームの胴部を延伸させる延伸工程、及び前記プリフォームの前記膨出部を上底型により押圧して前記ブローキャビティ型に追随させて変形させることで接合部を形成する押圧工程を含むブロー工程と、を含み、
前記ブローキャビティ型には、前記膨出部を前記上底型によって押圧することにより、容器部品の底部に前記接合部を形成するための接合部形成部が設けられていて、
前記容器部品は、前記接合部を介して他の容器部品と着脱可能に構成されており、
前記接合部形成部は、雌ネジ形状の凹部あるいはリング状の凹部が刻まれた部分であり、
前記プリフォームは、前記接合部形成部に設けられた凹部に追随して変形される、樹脂製の容器部品の製造方法。
【請求項2】
前記射出工程において、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型により形成される空間に樹脂を注入することで、前記プリフォームを形成し、
前記射出工程の後に、前記射出コア型と共に前記プリフォームを前記ブローキャビティ型へ収容し、
前記ブロー工程において、前記射出コア型からエアを導入して前記プリフォームの胴部を延伸させる、
請求項1に記載の容器部品の製造方法。
【請求項3】
前記射出コア型が、
前記プリフォームの胴部および底部の内面の形状を規定する第一のコア型と、
前記プリフォームの開口部の内面を規定する第二のコア型と、
前記第一のコア型および前記第二のコア型の外周の境界領域に設けられたエア吹出口と、
を有し、
前記ブロー工程において、前記エア吹出口からエアを導入して前記プリフォームの胴部を延伸させる、
請求項2に記載の容器部品の製造方法。
【請求項4】
前記ブロー工程において、前記第一のコア型を昇降させて前記エア吹出口を拡大または縮小させる、
請求項3に記載の容器部品の製造方法。
【請求項5】
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出工程に用いられる射出成形用金型と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製の容器部品を製造するブロー工程に用いられるブロー成形用金型と、を少なくとも含む金型ユニットであって、
前記射出成形用金型は、
前記プリフォームの内部形状を規定する射出コア型と、
前記プリフォームの外部形状を規定する射出キャビティ型と、を備え、
前記射出キャビティ型には、前記プリフォームの底部に肉厚の膨出部を形成するための膨出部形成部が設けられており、
前記ブロー成形用金型は、
前記容器部品の外部形状を規定するブローキャビティ型と、
前記プリフォームの前記膨出部に向かって昇降可能な上底型と、を備え、
前記ブローキャビティ型には、前記膨出部を上底型によって押圧することにより、前記容器部品の底部に、前記容器部品を他の容器部品と着脱可能とする接合部を形成するための接合部形成部が設けられており、
前記接合部形成部には、雌ネジ形状あるいはリング状の凹部が形成されている、金型ユニット。
【請求項6】
前記射出コア型がエア吹出口を有する、
請求項5に記載の金型ユニット。
【請求項7】
前記射出コア型が、
前記プリフォームの胴部および底部の内面の形状を規定する第一のコア型と、
前記プリフォームの開口部の内面を規定する第二のコア型と、
前記第一のコア型および前記第二のコア型の外周の境界領域に設けられたエア吹出口と、
を有する、
請求項5に記載の金型ユニット。
【請求項8】
前記第一のコア型が、前記エア吹出口を拡大または縮小させるように昇降可能に構成されている、
請求項7に記載の金型ユニット。
【請求項9】
請求項5~請求項8のいずれか一項に記載の金型ユニットを備える、ブロー成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の容器部品の製造方法、金型ユニットおよびそれを備えるブロー成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体底部に足部を一体に有するプリフォームを射出成形し、カップ成形キャビティにて延伸吹込成形をして足つきカップを成形する射出延伸吹込成形方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、容器部と足部及び台座が一体の部材(支持部)とで構成される飲用容器が開示されている。この飲用容器において、容器部に支持部と接続するための接合部が設けられ、支持部に容器部と接続するための別の接合部が設けられている。それぞれの接合部は雄ネジ部又は雌ネジ部のどちらかで構成することで、容器部と支持部を着脱自在としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特公平5-49016号公報
【文献】日本国特開2001-39445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、耐熱性や透明性等の機能が向上したコポリエステル樹脂が市場に出たこともあり、ガラスの代替に樹脂が利用できる製品範囲がますます拡大してきている。例えば、ワイングラスやテイスティンググラスの素材に樹脂が用いられる場合がある。樹脂製のワイングラスはガラス製より割れにくいため、アウトドアやカフェテラスで利用する際に利便性が高い。
【0006】
ワイングラスは一般的に、鉛直断面が略U字状で飲料が収容されるグラス部と、鉛直断面が略逆T字状で細長い足部とからなる。樹脂製のワイングラスの中にはグラス部と足部とが一体成形された1ピース式のものが存在する。その一方で、携帯や運送、保管スペースといった事情を考慮してグラス部と足部とを別体とした2ピース式のワイングラスも知られている。
【0007】
2ピース式の樹脂製ワイングラスでは、グラス部の接合部と足部(他部材)の被接合部との連結部分に強度が求められるが、従来のグラス部の製造方法では樹脂で接合部を形成する上で十分な強度を確保できているとは言い難く、改良の余地があった。また、グラス部の外観形状をガラス製品と同程度にまで成形する上でも改良の余地があった。
【0008】
本発明は、強度が高い接合部を有する容器部品を効率良く製造することができ、また、ガラス製品と同程度の外観形状の容器部品を成形することができる、樹脂製の容器部品の製造方法、金型ユニットおよびそれを備えるブロー成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明の樹脂製の容器部品の製造方法は、
押圧によりブローキャビティ型に追随するように変形可能な保有熱を保持する肉厚の膨出部を底部に有する、樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出工程と、
前記プリフォームにブロー圧をかけることで前記プリフォームの胴部を延伸させる延伸工程、及び前記プリフォームの前記膨出部を上底型により押圧して前記ブローキャビティ型に追随させて変形させることで接合部を形成する押圧工程を含むブロー工程と、を含む。
【0010】
当該製造方法によれば、高い保有熱をブロー工程直前まで保持させることができるように、射出工程において膨出部を肉厚で形成することにより、ブロー工程において肉厚で大きく、強度が高く、また形状が複雑な接合部を押圧により効率良く成形することができる。これにより、成形される容器部品(グラス部)とその他の部品(足部)との連結部分の強度及び安定度を向上させることができる。また、ブロー工程により容器部品の胴部を大径に腑形でき、ガラス製品と同等の外観形状を成形することが可能である。
【0011】
また、上記の容器部品の製造方法は、
前記射出工程において、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型により形成される空間に樹脂を注入することで、前記プリフォームを形成し、
前記射出工程の後に、前記射出コア型と共に前記プリフォームを前記ブローキャビティ型へ収容し、
前記ブロー工程において、前記射出コア型からエアを導入して前記プリフォームの胴部を延伸させる、
と好ましい。
【0012】
また、上記の容器部品の製造方法は、
前記射出コア型が、
前記プリフォームの胴部および底部の内面の形状を規定する第一のコア型と、
前記プリフォームの開口部の内面を規定する第二のコア型と、
前記第一のコア型および前記第二のコア型の外周の境界領域に設けられたエア吹出口と、
を有し、
前記ブロー工程において、前記エア吹出口からエアを導入して前記プリフォームの胴部を延伸させる、
と好ましい。
【0013】
また、上記の容器部品の製造方法は、
前記ブロー工程において、前記第一のコア型を昇降させて前記エア吹出口を拡大または縮小させる、
と好ましい。
【0014】
上記課題を解決することのできる本発明の金型ユニットは、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出工程に用いられる射出成形用金型と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製の容器部品を製造するブロー工程に用いられるブロー成形用金型と、を少なくとも含む金型ユニットであって、
前記射出成形用金型は、
前記プリフォームの内部形状を規定する射出コア型と、
前記プリフォームの外部形状を規定する射出キャビティ型と、を備え、
前記射出キャビティ型には、前記プリフォームの底部に肉厚の膨出部を形成するための膨出部形成部が設けられており、
前記ブロー成形用金型は、
前記容器部品の外部形状を規定するブローキャビティ型と、
前記プリフォームの前記膨出部に向かって昇降可能な上底型と、を備え、
前記ブローキャビティ型には、前記膨出部を上底型によって押圧することにより、前記容器部品の底部に接合部を形成するための接合部形成部が設けられている。
【0015】
当該金型ユニットを用いることで、底部に十分な肉厚を備え、強度が高い接合部を有する容器部品を効率良く製造することができる。特に、膨出部を肉厚で形成することにより、膨出部に高い保有熱をブロー工程直前まで保持させることができるので、ブロー工程において肉厚で大きい接合部を上底型の押圧により効率良く成形することができる。これにより成形される容器部品(グラス部)とその他の部品(足部)との連結部分の強度及び安定度を向上させることができる。また、ブロー工程により容器部品の胴部を大径に腑形でき、ガラス製品と同等の外観形状を成形することが可能である。
【0016】
また、上記の金型ユニットは、
前記射出コア型がエア吹出口を有する、
と好ましい。
【0017】
また、上記の金型ユニットは、
前記射出コア型が、
前記プリフォームの胴部および底部の内面の形状を規定する第一のコア型と、
前記プリフォームの開口部の内面を規定する第二のコア型と、
前記第一のコア型および前記第二のコア型の外周の境界領域に設けられたエア吹出口と、
を有する、
と好ましい。
【0018】
また、上記の金型ユニットは、
前記第一のコア型が、前記エア吹出口を拡大または縮小させるように昇降可能に構成されている、
と好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決することのできる本発明のブロー成形機は、上記の金型ユニットを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、強度が高い接合部を有する容器部品を効率良く製造することができ、また、ガラス製品と同程度の外観形状の容器部品を成形することができる、樹脂製の容器部品の製造方法、金型ユニットおよびそれを備えるブロー成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】射出成形用金型の断面概略図である。
図2】射出成形用金型でプリフォームを形成する様子を示す断面概略図である。
図3】ブロー成形用金型にプリフォームを収容した様子を示す断面概略図である。
図4】プリフォームから容器部品を形成する様子を示す断面概略図である。
図5】ブロー成形機の概略図である。
図6】容器部品の製造方法の概要を示す図である。
図7】ブロー成形用金型にプリフォームを収容した様子の別の例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。まず、図1図4を参照して、本実施形態に係る金型ユニットについて説明する。金型ユニットは、樹脂製の有底のプリフォーム20を射出成形するために用いられる射出成形用金型100と、プリフォーム20をブロー成形して樹脂製の容器部品10(ワイングラスのグラス部分を構成する部品)を製造するために用いられるブロー成形用金型200と、を含むものである。金型ユニットは、容器部品10を製造するためのブロー成形機に搭載されて使用される。
【0023】
ブロー成形機としては、例えば、図5に示されるブロー成形機1のような、ホットパリソン式ブロー成形機(射出ブロー成形機)の構成のものが利用できる。図5に示すように、ブロー成形機1は、プリフォーム20を製造するための射出成形部1aと、プリフォーム20をブローして容器部品10を製造するためのブロー成形部1bと、射出成形部1aの金型に成形樹脂原料を導入する射出装置1cと、プリフォーム20を射出成形部1aからブロー成形部1bに搬送する搬送手段1dと、を少なくとも有する。これらは、ブロー成形機1の機台1eの上方に設けられている。射出成形部1aとブロー成形部1bとは、搬送手段1dを中心として例えば180°回転した位置に配置されている。搬送手段1dは例えば回転盤等からなり、回転盤の下面に後述する射出コア型部材40が連結され、水平角で180°の間欠回転および上下移動が可能なように構成されている。搬送手段1dにより、プリフォーム20と射出コア型部材40は一体で、射出成形部1aからブロー成形部1bに回転搬送され、上下移動される。
【0024】
図1は本実施形態に係る射出成形用金型100の断面概略図であり、図2は射出成形用金型100でプリフォーム20を形成する様子を示す断面概略図である。図1及び図2に示すように、射出成形用金型100は、プリフォーム20の内部形状を規定する射出コア型120と、プリフォーム20の外部形状を規定する射出キャビティ型140と、を備えている。
【0025】
射出コア型120は、ネック型30を一体に備える射出コア型部材40の一部を構成している。射出コア型120は、プリフォーム20の胴部と底部との内面の形状を少なくとも規定(形成)する第一のコア型120aと、プリフォーム20の開口部の内面を少なくとも規定する第二のコア型120bと、を有する。第二のコア型120bは必要に応じ、プリフォーム20の開口部の上端面の少なくとも一部を規定するように構成されていても良い。また、必須ではないが、第二のコア型120bのプリフォーム20の開口部の内面に対応する領域に環状の凸状部120eを設け、ブロー成形時にプリフォーム20が第二のコア型120bから脱落するのを防止させても良い。ネック型30はプリフォーム20の開口部を規定し、本実施形態ではプリフォーム20の開口部の上端面の少なくとも一部を規定している。
【0026】
射出コア型120の外周、具体的には第一のコア型120aおよび第二のコア型120bの外周の境界領域には、スリット状のエア吹出口120dが設けられている。また、第二のコア型120bの上部には、第一のコア型120aに温調媒体または冷却媒体を送る媒体供給回路やエア吹出口120dに圧縮空気を送るエア供給回路を内包する、ロッド状部材120cが連設されている。射出コア型120が固定される射出型保持固定部材120fは、射出コア型120を構成する部材の上方に配置され、搬送手段1d(回転盤)に固定される。射出型保持固定部材120fに、第一のコア型120a、第二のコア型120b、ロッド状部材120cおよびネック型30の各々が連結され、射出コア型部材40を構成している。なお、ネック型30は一対の割型であり、その各々がネック型30の固定板31を介して射出型保持固定部材120fにスライド可能に固定されていても構わない。この射出コア型部材40によりプリフォーム20が保持され、射出成形部1aからブロー成形部1bに搬送される。
【0027】
射出キャビティ型140は水平方向に開閉しない単一の金型で構成されている。ただし、アンダーカットを備えたプリフォーム20を成形する場合は水平方向に開閉可能な割型の構成としても良い。射出キャビティ型140は、射出装置1cからホットランナーを介して射出キャビティ型140と射出コア型120およびネック型30とが形成する空間A0に注入される樹脂原料の注入口であるゲート60と連通している。射出キャビティ型140には、プリフォーム20の底部に肉厚の膨出部24を形成するための膨出部形成部142が設けられている。膨出部形成部142と射出コア型120とで形成される空間A1の射出コア型120に対する垂直方向の長さd1は、プリフォーム20の胴部22を形成するための胴部形成部144と射出コア型120とで形成される空間A2の当該長さd2よりも、大きくなるように構成されている。膨出部形成部142の端部はゲート60と連通している。射出キャビティ型140の外側には、射出キャビティ型140を少なくとも一つ以上収容している射出キャビティ型ブロック50が設けられている。なお、射出キャビティ型140は、プリフォームの胴部22を形成する第一の射出キャビティ型と膨出部形成部142を成形する第二の射出キャビティ型とが分離された分割型の構成になっていても良い。このような構成にすると、膨出部24のサイズや形状の変更が容易に行えるようになるため、成形調整時の利便性を高めることができる。
【0028】
射出コア型120と射出キャビティ型140との内部には、冷却または温調処理を行う流体が循環する、図示しない流体循環回路が設けられている。流体の温度は、射出コア型120と射出キャビティ型140のそれぞれで必要な冷却強度に応じて適宜設定される。プリフォーム20の樹脂原料は例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の一般的なポリエステル系樹脂や、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の汎用的なポリオレフィン系樹脂の外、ポリカーボネート(PC)や、ポリスチレン(PS)や、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA)や、環状オレフィン系ポリマー(COP/COC)や、ポリエーテルスルホン(PES)や、ポリフェニルスルホン(PPSU)や、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、アクリル樹脂)や、トライタン(Tritan、商品名)等を用いることができる。樹脂材料にトライタンを用いる場合は、例えば、射出コア型120の流体の温度を60±10℃、射出キャビティ型140の流体の温度を70±10℃に設定し、射出コア型120よりも射出キャビティ型140の流体の温度を相対的に高くする。これにより、プリフォーム20の胴部等の成形性を向上させ、外観良好な容器部品10の製造が可能になる。
【0029】
図3は本実施形態に係るブロー成形用金型200にプリフォーム20を収容した様子を示す断面概略図であり、図4はプリフォーム20から容器部品10を形成する様子を示す断面概略図である。図3及び図4に示すように、ブロー成形用金型200は、容器部品10の外部形状を規定するブローキャビティ型240と、プリフォーム20の膨出部24に向かって昇降可能な上底型260と、を備えている。
【0030】
ブローキャビティ型240は水平方向に開閉可能な一対の割型である。なお、図3および図4では、紙面と直交する方向が、ブローキャビティ型240が開閉する水平方向を示している。ブローキャビティ型240には、プリフォーム20の膨出部24を上底型260によって押圧することにより、容器部品10の底部に接合部14を形成するための接合部形成部242が設けられている。接合部形成部242は、雌ネジ形状の凹部やリング状(環状フランジ状)の凹部が刻まれた部分である。例えば、図3では雌ネジ形状の凹部の接合部形成部242が示されているが、図7に示すようにリング状の凹部の接合部形成部342としてもよい。ここで、図7はブロー成形用金型にプリフォームを収容した様子の別の例を示す断面概略図である。ブローキャビティ型240が閉じた状態で接合部形成部242によって囲まれる空間B1(図7では空間C1)が、プリフォーム20の膨出部24を収容できる大きさになるように、接合部形成部242(図7では接合部形成部342)は構成されている。
【0031】
ブローキャビティ型240の接合部形成部242の下部には、位置決め部244が設けられている。位置決め部244は、上底型260がプリフォーム20方向に上昇する際に、上底型260に設けられた係止部262と接して上底型260の上昇を止めるように構成されている。ブローキャビティ型240の開閉方向の外側(図3図7では紙面の奥側)にはブローベース52が設けられ、水平方向に移動可能な型締め板に連結されている。また、ブローキャビティ型240の横側には圧受け板53が設けられている。ブローキャビティ型240と圧受け板53はブローベース52に固定されている。上底型260は、ブロー成形機の昇降機によりプリフォーム20の膨出部24に向かって昇降可能とされている。なお、ブローキャビティ型240は、容器部品10のグラス部12を形成する第一のブローキャビティ型と接合部形成部242を成形する第二のブローキャビティ型とが分離された分割型の構成になっていても良い。このような構成にすると、接合部14のサイズや形状の変更が容易に行えるため、成形調整や仕様変更における利便性が高まる。
【0032】
続いて、図1図4および図6を参照して、本実施形態に係る樹脂製の容器部品10の製造方法について説明する。当該製造方法は、図6に示すように、プリフォーム20を射出成形する射出工程S1と、プリフォーム20から容器部品10を形成するブロー工程S2とを含む。
【0033】
射出工程S1では、成形機の搬送手段1dに接続(固定)された射出コア型部材40の射出コア型120を下降させて射出キャビティ型140の内側に配置する。そして、射出コア型120と射出キャビティ型140とが型締めされた状態で(図1)、射出装置1cから樹脂原料を射出する。射出された樹脂原料は、ホットランナーを通り、ゲート60を通過して、射出コア型120と射出キャビティ型140との間に形成された空間A0内に充填される(図2)。充填が完了してから一定期間経過後に射出コア型120を上昇させて型開きを行い、射出コア型120の外周に形成されたプリフォーム20を射出キャビティ型140から開放する。以上により胴部22及び膨出部24を備えるプリフォーム20が形成される。
【0034】
射出工程S1では、膨出部形成部142と射出コア型120とで形成される空間A1の射出コア型120に対する垂直方向の長さd1が、胴部形成部144と射出コア型120とで形成される空間A2の当該長さd2よりも、大きくなるように構成されていることで、ブロー工程S2において押圧によりブローキャビティ型240に追随するように(倣って)変形可能な保有熱を保持する肉厚の膨出部24を底部に有するプリフォーム20が形成される。
【0035】
続いて、ブロー工程S2が行われる。射出工程S1で得られたプリフォーム20が外周に形成されている射出コア型120を、搬送手段を水平方向に180°回転させ下降させることにより、ブローキャビティ型240の内側に配置する。そして、ブローキャビティ型240を閉じて型締めする(図3)。その後、射出コア型120からエアを導入してプリフォーム20にブロー圧をかけることでプリフォーム20の胴部22を横方向(外径方向)に延伸させて容器部品10のグラス部12を形成し(延伸工程S21)、また上底型260をプリフォーム20の膨出部24に対して上昇させて膨出部24を押圧して接合部形成部242に追随させて変形させて接合部14を形成する(押圧工程S22)(図4)。このとき、ロッド状部材120cをその上方に位置する押下げ部材により若干下降させ、エア吹出口120dの隙間を若干広げると、ブローエアの給気や排気がスムーズに行え、特にブロー成形後に、容器部品10に残存したエアによる射出コア型120からの意図しない離型や位置ズレを抑止できる。
【0036】
第二のコア型120bに凸状部120eを設けている場合は、ブロー成形後だけでなくブロー成形時においても、ブローエアによるプリフォーム20または容器部品10の射出コア型120からの離型や位置ズレを効果的に抑止することができる。ブロー工程S2の完了後、押下げ部材を上昇させ、ブロー工程S2の前の位置に戻すことで、エア吹出口120dの隙間を狭めて元の状態に戻すことができる。
【0037】
なお、押圧工程S22はブローキャビティ型240を閉じる際に同時に上底型260を膨出部24に対して上昇させて実施してもよい。押圧工程S22において、膨出部24は上底型260が上昇するにつれて上底型260と射出コア型120により挟まれて、接合部形成部242の凹部に広がるように変形する。一定期間延伸工程S21及び押圧工程S22を実施した後に、ブローキャビティ型240を開いて、容器部品10を開放する。以上により、グラス部12及び接合部14を備える容器部品10が形成される。
【0038】
本実施形態の製造方法によれば、高い保有熱をブロー工程S2直前まで保持させることができるように、射出工程S1において膨出部24を肉厚で形成することにより、ブロー工程S2において肉厚で大きく、強度が高く、また形状が複雑な接合部14を押圧により効率良く成形することができる。これにより、成形される容器部品10(グラス部12)とその他の部品(足部)との連結部分の強度及び安定度を向上させることができる。また、ブロー工程S2により容器部品10の胴部(グラス部12)を大径に腑形でき、ガラス製品と同等の外観形状を成形することが可能である。
【0039】
また、本実施形態の金型ユニットを用いることで、底部に十分な肉厚を備え、強度が高い接合部14を有する容器部品10を効率良く製造することができる。特に、膨出部24を肉厚で形成することにより、膨出部24に高い保有熱をブロー工程S2直前まで保持させることができるので、ブロー工程S2において肉厚で大きい接合部14を上底型260の押圧により効率良く成形することができる。これにより成形される容器部品10(グラス部12)とその他の部品(足部)との連結部分の強度及び安定度を向上させることができる。また、ブロー工程S2により容器部品10の胴部(グラス部12)を大径に腑形でき、ガラス製品と同等の外観形状を成形することが可能である。
【0040】
具体的には、プリフォーム20を射出キャビティ型140から外してブローキャビティ型240に収容する間、保有熱を保持可能な肉厚の膨出部24はプリフォーム20の胴部22と比較して冷めにくい。そのため、膨出部24は内壁が複雑な形状に構成されているブローキャビティ型240の接合部形成部242に追随して変形しやすくなり、高い歩留まりで容器部品10を製造することが可能である。
【0041】
また、射出コア型120を射出工程S1及びブロー工程S2の両方で使用するインジェクションブロー成形法であれば、ブロー工程S2において延伸ロッドを別途使用する場合と比べて、早く膨出部24の押圧を実施でき、より高い歩留まりで容器部品10を製造することが可能である。すなわち、射出工程S1の後に、射出コア型120と共にプリフォーム20をブローキャビティ型240へ収容し、ブロー工程S2において、射出コア型120からエアを導入してプリフォーム20の胴部22を延伸させることにより、ブロー工程S2において別部材を使用することなく迅速に延伸および膨出部24の押圧を実施できる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
例えば、上記の実施形態ではインジェクションブロー成形法による態様を説明したが、例えば射出延伸ブロー成形法等の別の態様のものにも応用することが可能である。ただし、インジェクションブロー成形法では、上記したようにより高い歩留まりで容器部品10を製造することが可能である。
【0044】
また、上述のブロー成形機1または金型ユニットは、射出コア型120を1つ以上備えていてもよい。上記実施形態において、射出コア型120が射出成形用金型100の一部を構成することを説明したが、上述のように射出コア型120は、ブロー成形用金型200と組み合わされてブロー工程S2においても使用されてもよい。射出コア型120が2つ以上設けられている場合、射出工程S1とブロー工程S2を並行して実施することができ、生産効率を向上させることができる。
【0045】
なお、本願は、2018年1月26日付で出願された日本国特許出願(特願2018-11806)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0046】
1:ブロー成形機、10:容器部品、12:グラス部、14:接合部、20:プリフォーム、22:胴部、24:膨出部、30:ネック型、40:射出コア型部材、50:射出キャビティ型ブロック、52:ブローベース、60:ゲート、100:射出成形用金型、120:射出コア型、140:射出キャビティ型、142:膨出部形成部、144:胴部形成部、200:ブロー成形用金型、240:ブローキャビティ型、242:接合部形成部、244:位置決め部、260:上底型、262:係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7