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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】立入抑制装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020180488
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071493
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2022-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月13日に自社ウエブサイトにて発表 http://www.taiseirotec.co.jp/ http://www.taiseirotec.co.jp/info/ http://www.taiseirotec.co.jp/2020/07/13/コンクリート舗装工事での安全対策として注意喚/ http://www.taiseirotec.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/e673d65f4e6b51fec0d4197bd4d7392b.pdf http://www.taiseirotec.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/25a9906d3856d34733b34e431c82d020-1.pdf http://www.taiseirotec.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/47c569759f3f6549923935708ca2357a-1.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月13日に日刊建設工業新聞第3面「機械間の立ち入り防止」にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月13日に日刊建設産業新聞第2面「くるくるトラロープを導入」にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月13日に建設通信新聞第3面「コンクリ舗装の安全対策」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 隆行
(72)【発明者】
【氏名】上ノ原 英介
(72)【発明者】
【氏名】白井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勁太
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021410(JP,A)
【文献】特開昭48-053284(JP,A)
【文献】実開平03-012913(JP,U)
【文献】特開2002-188325(JP,A)
【文献】登録実用新案第3010501(JP,U)
【文献】実開平07-015813(JP,U)
【文献】実公昭41-014760(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01F 13/00-15/14
E01B 27/00-37/00
E01C 19/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦列して走行し、独立して前後進することができる一対の建設車両の間に張設されるロープと、
一方の前記建設車両に設けられ、前記建設車両同士の間隔に応じて前記ロープの巻き取り又は繰り出しを行う巻取部と、
他方の前記建設車両に設けられ、前記ロープの端部を他方の前記建設車両に接続する接続部と、を備え、
前記巻取部は、前記ロープを巻き取る方向に付勢力を発生し、
前記接続部は、前記ロープよりも破断強度が小さい破断部を介して前記ロープの端部を前記建設車両に接続し、前記ロープと他方の前記建設車両との間に前記破断部を跨いで設けられる弾性を呈する補助ロープを有する
立入抑制装置。
【請求項2】
前記巻取部は、弾性体の弾性力によって前記付勢力を発生する請求項1に記載の立入抑制装置。
【請求項3】
前記ロープは、腰から胸の高さに設けられている請求項1又は請求項2に記載の立入抑制装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記ロープの端部と他方の前記建設車両との間に接続される警報部を備え、
前記警報部は、前記ロープが所定値以上の力で引かれた場合に警報を発する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の立入抑制装置。
【請求項5】
前記巻取部による前記ロープの巻き取り動作を制動する制動部をさらに備え、
前記巻取部は、前記ロープを回転して巻き取る巻取軸と、前記巻取軸に固定され、前記巻取軸と共に回転する回転板とを有し、
前記制動部は、前記巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知して検知状態となる検知部を有し、前記検知状態において前記巻取部を制動する請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の立入抑制装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記回転板の周縁部に一端を固定された紐状の打撃部と、前記打撃部の打撃を受ける標的部とを有し、前記標的部が前記打撃部から受ける打撃力の大きさによって前記巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知する請求項5に記載の立入抑制装置。
【請求項7】
前記ロープから吊り下げられ、前記ロープに沿って略一定の間隔で並べられる標識旗をさらに備え、
前記略一定の間隔で並べられる標識旗の枚数は、引き出されている前記ロープの長短に対応して増減される請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の立入抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦列して走行する建設車両の間への立入りを抑制する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
危険区域等への人の立入りや車両の進入を抑制するために、ロープやテープを張って注意を喚起することが行われている。例えば特許文献1には、道路上で事故処理や補修作業を行っていることを知らせるために、道路上に設置する2つのコーンの間にテープを張った車両進入警報装置が記載されている。この車両進入警報装置は、テープの余った部分を巻き取ることができる巻取具を備えている。また、この車両進入警報装置は、車両がテープを押しながら進入した場合には、テープの先を差し込んでおいた箱からテープが引き抜かれて、スイッチが入り警報を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-74295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設現場では、建設車両が縦列して走行する場合があり、建設車両同士の間の区域に作業者等が立ち入ることは危険である。このような場合に、車両間にロープ等を張って注意を喚起することも考えられる。しかし、例えばセットフォーム工法によるコンクリート舗装の施工現場では、敷均し用車両と締固め用車両とが縦列に走行し、敷均し用車両は前後進を繰り返しながら施工を行う。すなわち、車両は車両同士の間隔を変化させながら走行する。車両同士が近づいた場合には、ロープ等が弛んでしまい、標識として機能させることができない。また、車両同士が離れた場合には、ロープ等が届かなくなって標識とならず、器材等の破損を招く恐れもある。このように、車両間にロープ等を張ったとしても、標識として機能させ続けることが難しいという問題があった。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、建設車両が車両同士の間隔を変化させながら縦列して走行しても、建設車両間のロープの張設を維持して、注意喚起を継続し、建設車両間への作業者の立入を抑制する立入抑制装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明に係る立入抑制装置は、一対の建設車両の間に張設されるロープと、一方の前記建設車両に設けられ、前記建設車両同士の間隔に応じて前記ロープの巻き取り又は繰り出しを行う巻取部と、他方の前記建設車両に設けられ、前記ロープの端部を前記建設車両に接続する接続部と、を備え、前記巻取部は、前記ロープを巻き取る方向に付勢力を発生する。
【0006】
この構成によれば、立入抑制装置は、ロープを巻き取る方向に付勢力を発生し、建設車両同士の間隔に応じてロープの巻き取り又は繰り出しを行う巻取部によって、一対の建設車両の間に張設されるロープの張設を維持して注意喚起を継続し、縦列して走行する建設車両の間への作業者の立入りを抑制することができる。
【0007】
本発明に係る立入抑制装置は、前記巻取部は、弾性体の弾性力によって前記付勢力を発生するのが好ましい。
この構成によれば、立入抑制装置は、弾性体の弾性力によって付勢力を発生する巻取部によって、モータやエンジン等の動力源を必要としない。
【0008】
本発明に係る立入抑制装置は、前記接続部は、前記ロープよりも破断強度が小さい破断部を介して前記ロープの端部を他方の前記建設車両に接続するのが好ましい。
この構成によれば、ロープよりも破断強度が小さい破断部を介して、ロープの端部が他方の建設車両に接続されることによって、ロープ及び破断部に大きな張力が作用した場合に、ロープよりも先に破断部が破断するため、破断箇所を予測して、安全対策を講じることができる。
【0009】
本発明に係る立入抑制装置は、前記接続部は、前記ロープと他方の前記建設車両との間に前記破断部を跨いで設けられる弾性を呈する補助ロープを有するのが好ましい。
この構成によれば、破断部が破断した場合には、破断部を跨いで設けられる補助ロープが張設された状態となって、応急的に立入抑制装置の動作を継続させることができる。また、補助ロープは、弾性を呈することによって、張設された状態となる際の衝撃を緩和して、立入抑制装置の保護を図ることができる。
【0010】
本発明に係る立入抑制装置は、前記接続部は、前記ロープの端部と他方の前記建設車両との間に接続される警報部を備え、前記警報部は、前記ロープが所定値以上の力で引かれた場合に警報を発するのが好ましい。
この構成によれば、例えば破断部が破断し、ロープの端部と建設車両とが所定の距離よりも離れたときに、ロープが所定値以上の力で引かれ、警報部が発する警報音によって、運転者に異常を知らせることができる。
【0011】
本発明に係る立入抑制装置は、前記巻取部による前記ロープの巻き取り動作を制動する制動部をさらに備え、前記巻取部は、前記ロープを回転して巻き取る巻取軸と、前記巻取軸に固定され、前記巻取軸と共に回転する回転板とを有し、前記制動部は、前記巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知して検知状態となる検知部を有するのが好ましい。
この構成によれば、制動部は、巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知する検知部によって、巻取部による過剰なロープの巻き取り動作を制動し、周囲の作業者等の安全を図ると共に、立入抑制装置の破損等を防ぐことができる。
【0012】
本発明に係る立入抑制装置は、前記検知部は、前記回転板の周縁部に一端を固定された紐状の打撃部と、前記打撃部の打撃を受ける標的部とを有し、前記標的部が前記打撃部から受ける打撃力の大きさによって前記巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知するのが好ましい。
この構成によれば、検知部は、回転板の周縁部に一端を固定された紐状の打撃部から標的部が受ける打撃力の大きさによって前記巻取軸の回転が所定の速さよりも速いことを検知するため、電力や電気回路等は不要であり、他の装置と組み合わせて使用しやすい。
【0013】
本発明に係る立入抑制装置は、前記ロープから吊り下げられ、前記ロープに沿って略一定の間隔で並べられる標識旗をさらに備え、前記略一定の間隔で並べられる標識旗の枚数は、引き出されている前記ロープの長短に対応して増減されるのが好ましい。
この構成によれば、ロープから吊り下げられ、ロープに沿って略一定の間隔で並べられる標識旗によって、さらなる注意喚起を図ることができる。また、略一定の間隔で並べられる標識旗の枚数が、引き出されている前記ロープの長短に対応して増減されることによって、引き出されているロープの長短によらず、安定した注意喚起効果を継続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、縦列して走行する一対の建設車両が車両同士の間隔を変化させながら走行しても、建設車両間のロープの張設を維持して、注意喚起を継続し、建設車両間への作業者の立入を抑制する立入抑制装置を実現することができる。そして、立入抑制装置の動作には、内燃機関や電力等を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一対の建設車両間に設けられている実施形態に係る立入抑制装置を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る立入抑制装置の側面図である。
図3A】制動部が起動される前の巻取部の一部及び制動部を示す斜視図である。
図3B】制動部が起動された後の巻取部の一部及び制動部を示す斜視図である。
図4】標識旗の一部が収納された状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る立入抑制装置100は、レール2上を独立して前後進することができる一対の建設車両1A、1Bの間に設けられる。立入抑制装置100は、建設車両1A、1Bの左右両側に設けるのが好ましい。なお、建設車両1A、1Bは、縦列して走行する車両であれば、レール2上を走行するものでなくてもよい。
例えば、建設車両1Aは、セットフォーム工法におけるコンクリート仕上げ装置であり、建設車両1Bは、コンクリート敷均し装置である。
【0017】
立入抑制装置100は、図1に示すように、一対の建設車両1A、1Bの間に張設されるロープ10と、一方の建設車両1Aに設けられる巻取部20と、他方の建設車両1Bに設けられる接続部60とを備え、巻取部20と接続部60との間にロープ10が張設されている。
【0018】
(ロープ)
ロープ10は、危険区域であることを示す注意喚起標識となる部材である。ロープ10は、黄色と黒色を交互に配した注意喚起用のロープ(トラロープ)を使用することができる。また、危険区域に誤って立ち入りそうになった場合に足を取られるといった危険が生じないように、ロープ10は、腰から胸の高さに略水平に張られていることが好ましい。
【0019】
(巻取部)
巻取部20は、建設車両1A、1Bの間隔に応じてロープ10の巻き取り又は繰り出しを行う装置である。巻取部20は、ロープ10を巻き取る方向に付勢力を発生し、ロープ10を引き出そうとする外力が付勢力よりも大きければロープ10は繰り出される。すなわち、建設車両1A、1Bが近づけば付勢力によってロープ10を巻き取り、建設車両1A、1Bが離れれば、建設車両1A、1Bの駆動力がロープ10を引き出す外力となって、ロープ10は繰り出される。このため、建設車両1A、1Bの間隔が変化しても、ロープ10の張設が維持される。
【0020】
巻取部20の付勢力は、弾性力により生じるものであり、例えばぜんまいばねを内蔵して発生させることができる。弾性力を利用することによって、立入抑制装置100は、外部の動力源や電気配線の引込みが不要となり、場所を選ばず設置できる。そして、電力等の供給なしに安定して注意喚起を行うことができる。
【0021】
(接続部)
接続部60は、図1に示すように、一対の建設車両1A、1Bのうち巻取部20を設けない方に、ロープ10の端部11を接続する装置である。建設車両1A、1Bとロープ10の端部11との接続は、取付け及び取外しが容易で、確実に掛止できる方法であれば、方法を問わない。例えば、建設車両1Bにフック等を設け、ロープ10の端部11をリング状として掛止することができる。
【0022】
立入抑制装置100では、図2に示すように、接続部60は、破断部62を介してロープ10の端部11を建設車両1Bに接続している。破断部62は、例えば樹脂製のチェーン(鎖)等で構成されている。破断部62の破断強度は、ロープ10よりも小さい。このため、ロープ10及び破断部62に大きな引張負荷がかかった場合、ロープ10よりも先に破断部62が破断する。破断部62を設けておくことによって、破断箇所を前もって予測することができる。
【0023】
接続部60は、ロープ10と建設車両1Bとの間に、破断部62を跨ぐように補助ロープ63を有している。補助ロープ63は、一例として、弛緩した状態で設けられている。破断部62が破断した場合には、補助ロープ63が張設された状態となって、ロープ10の張設を維持することができる。なお、補助ロープ63は、弛緩した状態で設けられていなくてもよい。
補助ロープ63は、伸長変形に対し弾性を呈する。補助ロープ63は、例えばゴムを材料とするロープであり、金属製のばねを含むロープでもよい。補助ロープ63が弾性を呈することで、補助ロープ63が張設された状態となる際の衝撃が緩和され、立入抑制装置100の保護を図ることができる。
【0024】
ロープ10の端部11と建設車両1Bとの間には、警報部64が接続されている。警報部64は、ロープ10の端部11と建設車両1Bとが所定の距離よりも離れたときに、警報音を発する装置である。警報部64は、本体部65に引き紐66の一端が接続されており、引き紐66を所定値以上の力で引くと、本体部65から警報音を発する。引き紐66の他端はロープ10の端部11に固定されており、本体部65は建設車両1Bに接続されている。このため、端部11と建設車両1Bとが所定の距離よりも離れるときに、引き紐66が所定値以上の力で引かれ、本体部65から警報音が発せられる。
警報部64の警報音によって異常を知らされて、建設車両1A、1Bの運転者は建設車両1A、1Bを停止させることができ、周囲の作業者はその場から離れる等の対応を取ることができる。警報部64として、例えば紐を引き出すとスイッチが入るタイプや、ピンを引き抜くとスイッチが入るタイプの防犯ブザーを使用することができる。
【0025】
(制動部)
制動部30は、巻取部20によるロープ10の巻き取り動作を制動する装置である。図3Aに示すように、巻取部20の巻取軸21を支持する支持部25は、床23に固定されている。制動部30は、床23上に設けられ、検知部35と起動部40と押出部45とで構成されている。なお、床23には巻取軸21に平行に壁24が設けられ、壁24の上部の同じ高さの位置に、壁24を貫通する2つの穴26が設けられている。
【0026】
検知部35は、巻取軸21の回転が所定の速さよりも速いことを検知して検知状態となる。検知部35は、回転板22の周縁部に一端を固定された紐状の打撃部36と、打撃部36によって打撃される標的部37を有する。標的部37が打撃部36から受ける打撃力は、巻取軸21の回転が速くなると大きくなる。このため、検知部35は、標的部37が打撃部36から受ける打撃力の大きさによって、巻取軸21の回転が所定の速さよりも速いことを検知することができる。打撃部36は、直線状に伸びたときに、標的部37の回転板22側の端部を打撃する長さとするのが好ましい。これにより、打撃部36の打撃力を効率よく標的部37に与えることができる。また、打撃部36は、例えばアラミド繊維などの強固で簡単に切れない材料とするのが好ましい。
【0027】
標的部37は板状の部材であり、壁24の上端に蝶番で回動可能に固定されている。標的部37は、板面に平行に巻取部20と反対側に突き出て、標的部37と一体に回動する伝達ピン38を有している。伝達ピン38の先端は、後記する起動部40の起動ピン41に掛止されている。
【0028】
起動部40は、検知部35が検知状態となったときに、後記する押出部45を起動する。起動部40は、第1状態から第2状態に付勢される引込部42を有している。図3Aに示すように、引込部42が壁24の穴26に近い位置にある状態が第1状態であり、図3Bに示すように、壁24の穴26に遠い位置にある状態が第2状態である。第1状態から第2状態への付勢は、弾性体の弾性力や重力を利用することができる。弾性体としては、例えば捩りコイルばねを使用することができる。立入抑制装置100では、捩りコイルばねを捩った位置を第1状態としている。引込部42は、捩りコイルばねの弾性力によって、固定軸44を中心に回動して第1状態から第2状態へと至る。
起動部40は、第1状態にある引込部42に掛止される起動ピン41と、起動ピン41を支える係止具43とをさらに有している。引込部42は、起動ピン41によって、第1状態から第2状態への付勢に抗し、第1状態に維持されている。
【0029】
押出部45は、起動部40によって起動され、摩擦材48を回転板22に押し当てるように動作する。巻取軸21及び回転板22は、摩擦材48と回転板22と間の摩擦力によって回転を制動される。押出部45は、床23に一端をそれぞれ固定された2本の紐47と、紐47の上に置かれ、床23上を転がることができる円柱状の摩擦材48とを有している。紐47は、床23の固定点46から床23を這って壁24に至り、壁24に沿って壁24を登るように配置されている。そして、紐47は、壁24上部の穴26を通って壁24の反対面にある起動部40の引込部42に結束されている。摩擦材48は、紐47の上に乗せられて、床23及び壁24に接して置かれている。摩擦材48は、圧縮変形に対し弾性を有する材料で、表面が滑りにくいものが好ましい。摩擦材48として、例えば円柱状のウレタンスポンジを使用することができる。
【0030】
(制動部の動作)
次に、制動部30の動作を説明する。
立入抑制装置100が通常の動作をしているときの巻取部20及び制動部30の状態を図3Aに示す。巻取部20は、建設車両1A、1Bの動きに合わせて、ロープ10の巻き取り及び繰り出しを行い、ロープ10の張設を維持している。図3Aでは、巻取軸21及び回転板22はD1方向に回転しているが、回転の向きは建設車両1A、1Bの動きに合わせて刻々変化している。通常動作時においては回転が遅いため、打撃部36の打撃力は弱い。このため、板状の標的部37は、打撃部36に下向きの力で打撃されても、略水平方向を向いた状態を保っている。
【0031】
ロープ10が引き出されている状態で、例えば何らかのトラブルで、ロープ10が切断されると、ロープ10を引き出そうとする外力がない状態となる。このとき、巻取部20は、自身の付勢力によってロープ10を巻き取ろうとし、巻取軸21及び回転板22は、巻取方向であるD1方向の回転を継続する。このため、回転が速くなり、打撃部36の打撃力は強くなる。そして、標的部37は、打撃部36に下向きの打撃力で打撃され、打撃力が所定の大きさよりも大きいことによって、図3Bに示すように、蝶番を中心に下方向に回動した検知状態となる。
【0032】
通常動作時において、引込部42は、起動ピン41に掛止されて第1状態にある。標的部37が下方向を向くと、伝達ピン38は標的部37と一体に回動し、起動ピン41を上に引き抜く。起動ピン41が引き抜かれると、引込部42は、第1状態から第2状態への付勢に抗する力がなくなって、第2状態に移動する。
引込部42の位置が第1状態から第2状態へと移動すると、引込部42に結束されている紐47の一端は引込部42と一体に移動する。このため、壁24の巻取部20側において、紐47が短くなり、紐47は床23及び壁24から離れる。この紐47の動きによって、紐47の上に置かれている摩擦材48が巻取部20の方向に押し出される。
【0033】
押し出された摩擦材48は、巻取部20の方向へ床23上を転がって回転板22に接触し、回転板22の回転に巻き込まれながら回転板22の下に入り込み、支持部25に制止される。そして、摩擦材48と回転板22との間に発生する摩擦力によって、巻取軸21及び回転板22の回転が制動される。
【0034】
立入抑制装置100は、建設車両1A、1Bの間にロープ10が張設された状態で、破断部62が切断されると、警報部64が警報音を発して異常を周囲に知らせる。そして、補助ロープ63が張設された状態となって、ロープ10の張設を維持し、注意喚起を継続することができる。しかし、さらに補助ロープ63が切断されると、ロープ10を引き出そうとする外力、すなわち、巻取部20のロープ10を巻き取る方向の付勢力に抗する力がない状態となる。このため、巻取部20は、巻き取り動作のみを継続し、巻取軸21及び回転板22の回転は速くなる。この状態は、ロープ10やロープ10の端部11、それらの周辺の部材等が、予測困難な動きをする場合があり危険である。制動部30は、巻き取りのみを継続しようとする巻取部20の動作を制動し、立入抑制装置100の安全性を高めることができる。また、制動部30は、電力や電気回路等は不要であり、他の装置と組み合わせて使用しやすい。制動部30は、外部の動力源や電気配線の引込みを設けていない立入抑制装置100にも、そのまま組み込んで使用することができる。
【0035】
(標識旗)
標識旗71は、ロープ10による注意喚起の効果をさらに高めるための追加の標識である。標識旗71は、図2に示すように、ロープ10からリング75を介して吊り下げられている。各標識旗71は、右側の端を右隣りの標識旗71に、左側の端を左隣の標識旗71に、連結ロープ72によって連結されている。なお、巻取部20に最も近い標識旗71の一端は、巻取部20を備える建設車両1Aに連結されている。
ロープ10の端部11に最も近い標識旗71の端部11側には、標識旗71が吊り下げられていない先頭リング74があり、端部11に最も近い標識旗71の一端と連結ロープ72によって連結されている。先頭リング74のさらに端部11側には、ロープ10に固定されている磁石73がある。先頭リング74は、例えば鉄等の磁石につく材料のものを使用している。これに対し、標識旗71が吊り下げられているリング75は、例えばプラスチック等の磁石につかない材料のものを使用している。
【0036】
ロープ10が引き出されていないとき、標識旗71は、磁石73、先頭リング74及びリング75と共に、建設車両1Aの側に重なって収納されている。ロープ10が引き出されると、ロープ10に固定された磁石73が引き出され、磁石73によって先頭リング74が引き出され、連結ロープ72によって標識旗71が引き出される。このため、ロープ10を短く引き出せば、引き出される標識旗71の枚数は少なく、ロープ10を長く引き出せば、多くの枚数の標識旗71が引き出される。ロープ10をさらに引き出すと、標識旗71が全て引き出された状態となって、先頭リング74は磁石73から離れる。このため、連結ロープ72及び標識旗71には、それ以上の引張負荷はかからない。
【0037】
引き出されたロープ10が巻き取られるときには、巻取部20に近い側の標識旗71から順に、建設車両1Aの側に重なって収納される。そして、再びロープ10が引き出されると、収納された標識旗71が再び引き出される。すなわち、引き出されている標識旗71の枚数は、引き出されているロープ10の長短に対応して増減される。また、隣り合う標識旗71同士を連結する連結ロープ72は、同じ長さであるため、引き出されている標識旗71は略一定の間隔となる。略一定の間隔で並べられる標識旗71の枚数は、引き出されているロープ10の長短に対応して増減される。このため、標識旗71は、引き出されているロープ10の長短によらず、安定した注意喚起効果を継続することができる。
【0038】
標識旗71には表裏があり、図4に示すように、隣り合う標識旗71の表面同士を連結する連結ロープ72と、裏面同士を連結する連結ロープ72とが交互に並ぶようにしている。このため、ロープ10が巻き取られていくと、巻取部20に近い側の標識旗71から順に表面同士、裏面同士がそれぞれ向かい合うようにして重なって収納される。標識旗71が乱雑に収納されると、標識旗71及び連結ロープ72が絡み合って切断等の原因となる場合がある。このように規則性をもって収納されることによって、標識旗71は、引出し及び収納を安定して繰り返すことができる。
【符号の説明】
【0039】
1A、1B 建設車両
2 レール
10 ロープ
11 端部
20 巻取部
21 巻取軸
22 回転板
23 床
24 壁
25 支持部
26 穴
30 制動部
35 検知部
36 打撃部
37 標的部
38 伝達ピン
40 起動部
41 起動ピン
42 引込部
43 係止具
44 固定軸
45 押出部
46 固定点
47 紐
48 摩擦材
60 接続部
62 破断部
63 補助ロープ
64 警報部
71 標識旗
72 連結ロープ
73 磁石
74 先頭リング
75 リング
図1
図2
図3A
図3B
図4