IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機プラントエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-放射能汚染測定装置 図1
  • 特許-放射能汚染測定装置 図2
  • 特許-放射能汚染測定装置 図3
  • 特許-放射能汚染測定装置 図4
  • 特許-放射能汚染測定装置 図5
  • 特許-放射能汚染測定装置 図6
  • 特許-放射能汚染測定装置 図7
  • 特許-放射能汚染測定装置 図8
  • 特許-放射能汚染測定装置 図9
  • 特許-放射能汚染測定装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】放射能汚染測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/169 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
G01T1/169 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020209041
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096115
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599041606
【氏名又は名称】三菱電機プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慶一
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-034491(JP,A)
【文献】特開平06-186342(JP,A)
【文献】特開平07-151860(JP,A)
【文献】特開平07-294653(JP,A)
【文献】特開平10-090416(JP,A)
【文献】特開平11-194170(JP,A)
【文献】特開2005-049137(JP,A)
【文献】特開2006-023162(JP,A)
【文献】特開2013-053881(JP,A)
【文献】特開2014-179664(JP,A)
【文献】特開2015-121505(JP,A)
【文献】特開2015-210197(JP,A)
【文献】特表2015-513072(JP,A)
【文献】特開2016-211902(JP,A)
【文献】特開2016-217996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0101230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/169
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の放射性物質による表面汚染量を検出する放射線検出器を2個以上用いた放射線検出器集合体と、
前記検査対象物の表面形状を計測する形状計測部と、
前記放射線検出器のそれぞれの検出結果から、前記表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行するコントローラを備え、
前記放射線検出器のそれぞれは、複数の面を有感面とした立体構造を有し、前記複数の面の前記有感面のそれぞれにより同時に前記検出結果が取得可能であるとともに、全ての放射線検出器に共通する同一の移動軸方向に関して、個々に独立して移動可能な駆動系を有しており、
前記コントローラは、前記形状計測部による計測結果に基づいて、前記表面形状からの距離が許容距離範囲内になるように前記放射線検出器のそれぞれに対して、前記駆動系を介して位置決め制御を実行し、前記位置決め制御が完了した後に前記放射線検出器のそれぞれから取得した前記検出結果に基づいて前記判定処理を実行する
放射能汚染測定装置。
【請求項2】
前記検査対象物の前記表面形状を前記形状計測部によって計測するための形状計測エリア、および前記位置決め制御を実行するための検査エリアに、前記検査対象物を移動させる搬送機構をさらに備え、
前記コントローラは、
前記搬送機構を介して前記検査対象物を前記形状計測エリアに移動させ、前記形状計測部に対して計測指令を出力することで、前記計測指令の返答として、前記形状計測部による前記表面形状の計測結果を取得し、
前記表面形状の計測結果を取得した後に、前記搬送機構を介して前記検査対象物を前記検査エリアに移動させ、
前記表面形状の計測結果に基づいて、前記放射線検出器のそれぞれに対して移動指令を出力することで前記位置決め制御を実行し、
前記位置決め制御が完了した後に、前記放射線検出器のそれぞれに対して測定指令を出力することで、前記測定指令の返答として、前記放射線検出器のそれぞれから取得した前記検出結果に基づいて前記判定処理を実行する
請求項1に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項3】
互いに直交するX軸、Y軸、Z軸により規定される3次元空間において、前記同一の移動軸方向をZ軸方向としたときに、
前記放射線検出器集合体は、前記X軸および前記Y軸によって規定されるXY平面において、前記放射線検出器をマトリックス状に配列することで構成されている
請求項1または2に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項4】
前記マトリックス状に配列された前記放射線検出器に関して、隣接する2個以上の放射線検出器をグループ化し、それぞれのグループごとに放射線検出器の計数を加算する加算アンプをさらに備え、
前記コントローラは、前記それぞれのグループに対して得られた加算結果を前記検出結果として前記判定処理を実行する
請求項3に記載の放射能汚染測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、形状の異なる検査対象物の放射性物質による表面汚染を高精度に測定するための装置に関し、特に、複数の放射線検出器を用いた放射能汚染測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の放射性物質による表面汚染を検出するために、複数の放射線検出器を用いる従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る放射線検出器は、同じ構成(材料、形状、大きさ等)のシンチレータブロックを複数積層して、3次元積層シンチレータを形成し、量産性に優れた構成を実現している。
【0003】
特許文献1における3次元配列は、放射線の入射位置を特定するために高さ方向(z方向)においては、複数のシンチレータブロックが積層されて、z方向に一直線に配列されている。さらに、複数のシンチレータブロックがz方向に一直線に配列されたものを、x方向およびy方向に複数並列にした構成を有している。
【0004】
この結果、特許文献1における放射線検出器は、深さ方向(z方向)の位置分解性能に優れたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-140024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
電離放射線障害防止規則では、敷地境界の線量率がある値を超える放射能を取扱う場合には、管理区域を設置して、管理区域から物品を持ち出す際に、放射能による汚染の検査を行うことが規定されている。そのため、原子力関連施設では、放射能汚染測定装置が用いられている。
【0007】
放射能汚染測定装置として、特許文献1に係る放射線検出器を用いる場合を考える。この場合、放射線検出器に対して一定の距離を有する検査対象物、すなわち、xy平面における放射線検出器の有感面に対して、平らな検出対象に対しては、検出精度の向上を図ることが可能である。
【0008】
しかしながら、管理区域から持ち出す物品としては、梯子、足場材、足場パイプ等の長尺物も検査対象物となり、必ずしも表面形状が平らではない。従って、平らでない種々の表面形状を有する検査対象物に対しては、特許文献1のように検出器有感面の形状が固定の放射線検出器では、検査対象物に放射線検出器有感面を近づけることが難しく、検査対象物の表面汚染を高精度に測定することが困難であった。
【0009】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、種々の表面形状を有する検査対象物の表面汚染を高精度に、かつ迅速に測定することができる放射能汚染測定装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る放射能汚染測定装置は、検査対象物の放射性物質による表面汚染量を検出する放射線検出器を2個以上用いた放射線検出器集合体と、検査対象物の表面形状を計測する形状計測部と、放射線検出器のそれぞれの検出結果から、表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行するコントローラとを備え、放射線検出器のそれぞれは、複数の面を有感面とした立体構造を有し、複数の面の有感面のそれぞれにより同時に検出結果が取得可能であるとともに、全ての放射線検出器に共通する同一の移動軸方向に関して、個々に独立して移動可能な駆動系を有しており、コントローラは、形状計測部による計測結果に基づいて、表面形状からの距離が許容距離範囲内になるように放射線検出器のそれぞれに対して、駆動系を介して位置決め制御を実行し、位置決め制御が完了した後に放射線検出器のそれぞれから取得した検出結果に基づいて判定処理を実行するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、種々の表面形状を有する検査対象物の表面汚染を高精度に、かつ迅速に測定することができる放射能汚染測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1における放射線検出器の概略形状を示した説明図である。
図2】本開示の実施の形態1において、1個の放射線検出器を用いた場合の検査に関する説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、図1(b)に示した放射線検出器をマトリックス状に並べた場合の検査に関する説明図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る放射線検出器を複数個並べた3つの構成例を示した図である。
図5】本開示の実施の形態1において、複数の放射線検出器をマトリックス状に並べた場合の2つの検査手法を示した図である。
図6】本開示の実施の形態1における1つの放射線検出器に関する具体的な構成を示した説明図である。
図7】本開示の放射能汚染測定装置の全体構成を説明するための図である。
図8】本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置による一連処理を模式的に示した説明図である。
図9】本開示の実施の形態1における放射能汚染測定装置による検査対象物の放射性物質による表面汚染状態を定量的に求める一連手順をまとめた説明図である。
図10】本開示の実施の形態1における複数の放射線検出器のそれぞれの駆動状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の放射能汚染測定装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
まず初めに、本開示に係る放射能汚染測定装置が有するべき特徴について説明する。
検査対象物が単純な塊形状であれば、上下・左右・前後から放射線検出器を近づければ、検査対象物の全表面の検査を行うことが可能である。しかしながら、管理区域から持ち出す多くの検査対象物は、塊形状とは限られず、U字形のような内側面を持った形状をしている。
【0015】
さらに、上面だけでなく、両側面および前後面に放射線検出器を近づけるためには、両側面および前後にも、放射線検出装置を設置することが必要になる。そこで、検査対象物の底面を除く全表面の検査が迅速に行える放射線検出器の構造と検査方法について、以下に検討結果をまとめる。
【0016】
(1)放射線検出器の構造について
図1は、本開示の実施の形態1における放射線検出器の概略形状を示した説明図である。具体的には、図1(a)は、一般的な放射線検出器110である現状のプラスチックシンチレーション検出器の概略形状を示している。また、図1(b)は、本実施の形態1に係る放射線検出器10である立体有感面を有する放射線検出器の概略形状を示している。
【0017】
図1(a)に示したように、一般的な放射線検出器110の有感面111は、単純な2次元平面となっている。有感面111が1面の放射線検出器110で検査対象物の全表面の検査を行うためには、放射線検出器110を複数方向(通常は、上下、左右、前後の6方向)から検査対象物に近づけることが必要である。
【0018】
このような動作を実現するためには、放射線検出器110を動かす複数の駆動装置および多関節ロボットが必要になる。しかしながら、駆動装置が増えると装置が大型になり、数台の多関節ロボットを用いたとしても、検査対象物の表面形状が複雑な場合には、全表面を走査するためには多大な時間がかかり、現実的ではない。
【0019】
この解決策として、本実施の形態1に係る放射線検出器10は、図1(b)に示したような概略形状を有している。具体的には、直方体の放射線検出器10の5面を有感面11とした立体構造を採用している。この結果、一方向から検査対象物の形状に沿って放射線検出器10を近づけることで、放射線検出器10の向きを変えずに、検査対象物の底面を除く全表面に5面の有感面11を近づけることができる。
【0020】
(2)検査方法について
立体構造の有感面11を持つ放射線検出器10を用いることで、複数の表面の検査を同時に実施することができる。図2は、本開示の実施の形態1において、1個の放射線検出器10を用いた場合の検査に関する説明図である。図2では、検査対象物1がL字形状を有している場合を例示している。この場合、放射線検出器10は、底面に設けられた有感面11と、左側面に設けられた有感面11とを用いて、L字形状の検査対象物1の2面を同時に検査することができる。
【0021】
次に、図3は、本開示の実施の形態1において、図1(b)に示した放射線検出器10をマトリックス状に並べた場合の検査に関する説明図である。図3では、検査対象物1の表面が複雑な形状を有しており、マトリックス状に並べた放射線検出器10により、検査対象物の表面を検査する場合の一断面を示している。マトリックス状に並べた放射線検出器10のことを、放射線検出器集合体100として図示している。
【0022】
図3に示したように、放射線検出器10を多数マトリックス状に並べて、検査対象物1の形状に合わせて、適切な位置に放射線検出器10を動かす(挿入する)ことで、放射線検出器10を検査対象物1の表面に沿って走査させることなく、検査対象物1の内側面も外側面も迅速に検査を行うことが可能となる。図3において、両矢印の方向として示された矢印D1は、全ての放射線検出器10に共通する同一の移動軸方向に相当する。
【0023】
図4は、本開示の実施の形態1に係る放射線検出器10を複数個並べた3つの構成例を示した図である。図4(a)~図4(c)では、それぞれ以下のような構成を示している。なお、図4では、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸により規定される3次元空間において、全ての放射線検出器10に関する同一の移動軸方向をZ軸方向としたときに、放射線検出器10が、X軸およびY軸によって規定されるXY平面において、マトリックス状に配列されている場合を例示している。
【0024】
図4(a):マトリックス状に放射線検出器10を並べ、一度に検査対象物1を検査する構成
図4(b):マトリックス状に放射線検出器10を並べ、2回以上に分けて、放射線検出器10を移動させながら検査対象物1を検査する構成
図4(c):一列に放射線検出器10を並べ、列ごとに分けて、放射線検出器10を移動させながら検査対象物1を検査する構成
【0025】
いずれの構成においても、複数の放射線検出器10を停止させた状態で、検査対象物1の表面形状にあわせてそれぞれの放射線検出器10をz方向に移動させ、1回の測定を行う。そして、図4(b)あるいは図4(c)の構成では、2回目以降の検査を行うために、複数の放射線検出器10を初期位置に移動させた後に、次の検査位置に移動し、検査対象物1の表面形状にあわせてそれぞれの放射線検出器10をz方向に移動させる動作を、必要な回数分、繰り返すこととなる。
【0026】
放射線検出器10の数が多いほど、検査時間は短くなるが、コストは増大することとなる。従って、検査対象物1の大きさ、検査数等に応じて、コスト-パフォーマンスの観点から、放射線検出器10の最適な配列構成が選定されることとなる。
【0027】
図5は、本開示の実施の形態1において、複数の放射線検出器10をマトリックス状に並べた場合の2つの検査手法を示した図である。図5(a)、図5(b)では、それぞれ以下のような検査手法を示している。
図5(a):小型の放射線検出器10をマトリックス状に並べ、各検出器の計数を独立で行う検査手法(以下、検査手法1と称す)
図5(b):小型の放射線検出器10をマトリックス状に並べ、隣接する2個以上の検出器をグループ化し、それぞれのグループごとの計数を加算アンプ101で加算する検査手法(以下、検査手法2と称す)
【0028】
検査手法2を採用した場合には、汚染場所検知の分解能に関しては、検査手法1と比較して低下するものの、検査時間に関しては、加算結果を使用することで、検査手法1と比較して高速化できることとなる。従って、検査対象物1で必要とされる検査分解能および検査速度に応じて、適切な検査手法が選定されることとなる。
【0029】
次に、本実施の形態1で採用する小型の放射線検出器10の構成、および放射線検出器10を複数用いた放射線検出器集合体100として構成される放射能汚染測定装置の具体的な構成、機能について、図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
図6は、本開示の実施の形態1における1つの放射線検出器10に関する具体的な構成を示した説明図である。図6に示した1つの放射線検出器10は、有感面11、バンパーセンサ12、距離センサ13、および信号処理部14を備え、駆動ガイド15が駆動されることで、z方向の上下動が可能な構成となっている。
【0031】
有感面11は、直方体の形状を備えた検出器本体の4つの側面および底面の合計5面に設けられている。バンパーセンサ12は、検査対象物1までの距離が、あらかじめ設定した距離以内に近づいたか否かをON/OFF信号として出力するセンサである。距離センサ13は、検査対象物1までの距離をアナログ値として出力するセンサである。
【0032】
信号処理部14は、検出器本体の上面に設けられ、5面に設けられた有感面により検出された信号の総量を、フォトマル(図示せず)を介して受信し、光信号に変換して出力する。
【0033】
本開示におけるマトリックス状の放射線検出器10は、図6に示した1つの放射線検出器10をマトリックス状に配列することで複数の放射線検出器10が一体化されて、放射線検出器集合体100として構成され、かつ、個々の放射線検出器10が個別にz方向に上下動できる構成となっている。ここで、z方向とは、全ての放射線検出器10に共通する同一の移動軸方向に相当する。
【0034】
図7は、本開示の放射能汚染測定装置の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る放射能汚染測定装置は、複数の放射線検出器10、駆動部20、形状計測部30、コントローラ40、および搬送機構50を備えて構成されている。
【0035】
図7の各構成について説明する。
形状計測部30は、放射能汚染量の測定対象である検査対象物1の表面形状を計測する。形状計測部30は、公知の3次元形状認識方式を用いて、種々の表面形状を計測することができる。
【0036】
具体的な3次元形状認識方式としては、以下のものが挙げられる。
<方式1:TOF(Time of Flight)法>
方式1は、レーザパルスを検査対象物1に照射し、検査対象物1から反射光が戻るまでの時間を測定して、測定した時間に光速を乗じることで、検査対象物1までの距離を認識するものである。
【0037】
<方式2:光切断法(三角測量法)>
方式2は、ラインレーザを検査対象物1に照射し、検査対象物1から反射光が結像する位置に基づいて、三角測量の原理で検査対象物1の位置を認識するものである。
【0038】
<方式3:画像処理(パターン投影法)>
方式3は、縞状のパターンを検査対象物1に投影し、投影されたそれぞれの縞の状態を4台のカメラで撮像し、検査対象物1の表面形状によって変形した縞模様の変形量から検査対象物1の3次元形状を得るものである。
【0039】
<方式4:画像処理(ステレオカメラ)>
方式4は、焦点距離が同一の2台のカメラで検査対象物1を撮影し、撮影された2つの映像の視差により、検査対象物までの距離を認識するものである。
【0040】
従って、形状計測部30は、手法1~手法4のいずれかによる認識結果(計測結果)、あるいは複数の認識結果(計測結果)の組合せから、検査対象物1の表面形状を計測することができる。
【0041】
コントローラ40は、形状計測部30に対して、検査対象物1の表面形状を計測するための計測指令を出力し、その返答として、形状計測部30により計測された表面形状を受信することができる。
【0042】
駆動部20は、コントローラ40からの移動指令に基づいて、複数の放射線検出器10に設けられた各駆動ガイド15を駆動させることで、複数の放射線検出器10のz方向の駆動を行う。
【0043】
コントローラ40は、検査対象物1の表面形状に合わせた移動が完了したそれぞれの放射線検出器10に対して、測定指令を出力し、その返答として検出結果を受信する。そして、コントローラ40は、複数の放射線検出器10から得られた検出結果に基づいて、検査対象物1の放射性物質による表面汚染量を定量的に求めることとなる。すなわち、コントローラ40は、放射線検出器のそれぞれから取得した検出結果から、表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行する。
【0044】
図8は、本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置による一連処理を模式的に示した説明図である。図8に示すように、コントローラ40は、搬送機構50を駆動することで、検査対象物1を形状計測エリアZ1および検査エリアZ2に移動させることができる。なお、図8では、検査対象物1を矢印D2の方向に移動させているが、形状計測エリアZ1と検査エリアZ2とを重複したエリアとして設定することも可能である。
【0045】
まず始めに、コントローラ40は、検査対象物1を形状計測エリアZ1に搬送した後、形状計測部30に対して計測指令を出力し、その返答として形状計測部30により特定された表面形状データを受信する。
【0046】
次に、コントローラ40は、表面形状の特定を終えた検査対象物1を、検査エリアZ2に搬送する。さらに、コントローラ40は、複数の放射線検出器10を用いて、検査対象物1の放射性物質による表面汚染量を定量的に求めることとなる。
【0047】
図9は、本開示の実施の形態1における放射能汚染測定装置による検査対象物の放射性物質による表面汚染状態を定量的に求める一連手順をまとめた説明図である。図1では、検査エリアZ2に検査対象物1が移動完了した後の一連処理が示されている。また、図1のステップ1、ステップ2、ステップ4における各図は、断面図を示している。
【0048】
ステップ1において、コントローラ40は、形状計測部30から受信した表面形状データに基づいて、複数の放射線検出器10のそれぞれについて、検査対象物1の表面形状に接近した所望の位置で停止させるためのz方向の目標位置を算出する。さらに、コントローラ40は、駆動部20に対して移動指令を出力することで、複数の放射線検出器10からなる放射線検出器集合体100を、全体的に検査対象物1に接近させる。
【0049】
ステップ2において、コントローラ40は、さらに、複数の放射線検出器10のそれぞれを目標位置に向けて個別に移動させ、許容距離範囲内で停止させる。この際に、コントローラ40は、先の図6で示したバンパーセンサ12および距離センサ13による検出結果を活用することで、それぞれの放射線検出器10を許容距離範囲内で停止させるための位置決め制御を行うことができる。この結果、複数の放射線検出器10のそれぞれを、検査対象物1の表面形状に沿って挿入することができる。
【0050】
次に、ステップ3において、コントローラ40は、それぞれの放射線検出器10に関するz方向の位置決め制御が完了した後に、それぞれの放射線検出器10に対して、測定指令を出力して放射性物質による表面汚染状態の測定処理を実行するとともに、その返答として検出結果を受信する。
【0051】
図10は、本開示の実施の形態1における複数の放射線検出器10のそれぞれの駆動状態を示す概念図である。図10(a)~図10(e)は、位置決め制御が完了したことで、複数の放射線検出器10のそれぞれが検査対象物1の表面形状に沿って挿入された状態を、z方向で検査対象物1を見下ろした状態の概念図として示している。また、図10(f)は、図10(e)に示す断面における断面図を示している。
【0052】
また、図10(a)~図10(e)において、正方形の四角は、それぞれの放射線検出器10を示している。また、正方形の四角のうち、太線枠で囲まれた四角は、側面に配置された有感面11のみによる検出を行う放射線検出器10を示しており、太線枠で囲まれた四角の内側のグレー部分が検査対象物1を示している。
【0053】
さらに、四角内の数字は、それぞれの放射線検出器10の底面のエリア内における検査対象物1の最大高さを示している。図10(e)と図10(f)との比較から判るように、最大高さの数値が小さいほど、放射線検出器10は、z方向の下方向に挿入されて、位置決めされることとなる。
【0054】
上述した本実施の形態1に係る放射能汚染測定装置に関して、技術的特徴をまとめると以下のようになる。
・特徴1:複数の有感面11(例えば、直方体の6面のうち、信号取り出し部を除く5面の有感面11)を持つ放射線検出器10をマトリックス状に配置した放射線検出器集合体100を用意する点。すなわち、複数の有感面11を有する放射線検出器10を2個以上用いた放射線検出器集合体100を用いる点。
・特徴2:放射線検出器集合体100において、個々の放射線検出器10は、独立にz方向に移動可能な構成とする点。すなわち、全ての放射線検出器10に共通する同一の移動軸方向に関して、個々に独立して移動可能な駆動系を有している点。
・特徴3:検査対象物1の表面形状を計測する点。
【0055】
・特徴4:計測結果に基づいて、検査対象物1の表面形状にフィットするように個々の放射線検出器10の挿入位置(停止目標位置)を計算する点。
・特徴5:個々の放射線検出器10を計算した停止目標位置に移動させる位置決め制御を実施する点。
・特徴6:放射線検出器集合体100を用いて、複数の放射線検出器10による放射線測定を一括して実施する点。
【0056】
上述したような特徴1~特徴6を備えることで、本実施の形態1に係る放射能汚染測定装置は、以下のような顕著な効果を実現できる。
・効果1:測定の迅速化
複雑な形状の検査対象物1からの放射線を、迅速に測定可能とすることができる。
特に、放射線検出器10を検査対象物1の表面形状に沿って複数並べて、一括して測定することができる。さらに、複数の有感面11を有する放射線検出器10を、一方向から検査対象物1に近づけることで、近づける方向と反対面以外の全ての面に放射線検出器10の有感面11を近づけることができる。
【0057】
このため、検査対象物1の表面に沿って放射線検出器10を走査させることが不要となり、複雑な表面形状を有する検査対象物1のほぼすべての面の測定を一括して実施することが可能となる。
・効果2:コスト・パフォーマンスの最適化
放射線検出器集合体100を構成する個々の放射線検出器10の大きさを小さくすれば、検査対象物1に放射線検出器10をより近づけることができる。この結果、有感面11と検査対象物1の表面との距離がより短くなることで、測定時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
また、測定時間に余裕がある場合には、放射線検出器集合体100を小さくして、測定部位を移動させながら、複数回測定することも可能となる。このようにして、個々の放射線検出器10のサイズ、および放射線検出器集合体100のサイズを、ニーズに応じて最適化することで、コスト・パフォーマンスの最適化を容易に行うことができる。
【0059】
最後に、本実施の形態1で説明した放射能汚染測定装置に基づく派生技術について説明する。
・派生技術1:個々の放射線検出器10の断面形状
上述した実施の形態1では、放射線検出器10が直方体であり、断面形状が四角形の場合を例に説明したが、本開示に係る放射線検出器10の断面形状は、四角形以外であってもよく、多角形、円等が考えられる。断面形状により製造の難易さ、検査対象物1への接近可能性の程度等に差が出るが、いずれの場合も、同等の効果が得られる。
【0060】
・派生技術2:有感面11の数
有感面数(検出器のどの面を有感面にするか)は検査対象物1の形状によって決まる。
(1)複雑な形状(凹凸がある検査対象物、あるいはドーナツ形状の内側の測定が必要な検査対象物)を検査対象物とする場合には、直方体の5面を使用することが必要となる。
(2)一方、検査対象物1の天井面の測定、およびくぼみの底面の測定が不要な場合には、直方体の底面を有感面11にする必要はない。
(3)検査対象物1が円柱、直方体のように、表面に凹凸がない場合には、有感面11を1~2面に絞ることができる。
【0061】
・派生技術3:個々の放射線検出器10のサイズ
測定時間の要求仕様から、放射線検出器10と検査対象物1(面)の距離が決まるが、要求される距離に応じて、個々の放射線検出器10のサイズが決まってくる。
【0062】
・派生技術4:個々の放射線検出器10のグループ化
個々の放射線検出器10のサイズを小さくしていくと、検査対象物1に接近しやすくなる。しかしながら、放射線検出器10に入射する放射線量は減少するため、計数率の揺らぎによる誤差が大きくなってしまう。
【0063】
この対策として、汚染があった場合の汚染場所の同定(位置の分解能)は悪くなるが、先の図5で説明したように、複数の放射線検出器10をグループ化し、それらの出力を加算して、計数率を増やすような対策を行えば揺らぎ誤差は小さくすることができる。従って、位置の分解能と誤差量の最適値でグループ化する放射線検出器数を決めることができる。
【0064】
・派生技術5:放射線検出器集合体100のサイズ
検査対象物1を一度に測定してしまう場合には、放射線検出器集合体100で検査対象物1の表面を全てカバーできる大きさにすることが必要となる。一方、測定時間に余裕がある場合、あるいは装置のコストを抑えたい場合には、先の図4(b)、図4(c)で説明したように、放射線検出器集合体100を小さくして、複数回測定することで大型の検査対象物1の測定も可能となる。なお、放射線検出器集合体100は、2台以上の放射線検出器10の組合せとして定義される。
【0065】
・派生技術6:放射線検出器10を移動する(挿入する)方向
放射線検出器10は、上から下に向けて挿入するのが駆動系の負担が小さくなり、最も自然であるが、挿入方向は上下方向に限定されない。ただし、下、横、斜めから放射線検出器10を挿入させる場合には、挿入方向と反対の面、および底面が測定できないが、それ以外の面の測定は可能である。
【0066】
・派生技術7:検査対象物1の形状認識
3次元形状認識方式の3つの具体例の概要に関しては、実施の形態1の中で説明したが、本開示に係る放射能汚染測定装置においては、表面形状を計測可能な種々の技術を適用することができる。例えば、3Dスキャナー、画像処理、接触検知など、種々の技術の適用が考えられる。
【0067】
・派生技術8:挿入方向と反対の面の検査
本実施の形態1で説明した方式では、放射線検出器10の挿入方向と反対の面は、測定できない。しかしながら、上から放射線検出器10を挿入する場合には、検査対象物1が搭載される搬送機構50の面を、放射線遮蔽効果が少ない物質(網やフィルム等)で構成し、搬送機構50の下部に放射線検出器10を置いておくことで、検査対象物1の底面の測定を行うことが考えられる。
【0068】
また、一度、測定した後に、検査対象物1を裏返しにして、底面を上面側にして再度測定する方法も考えられる。
【符号の説明】
【0069】
1 検査対象物、10 放射線検出器、11 有感面、12 バンパーセンサ、13 距離センサ、14 信号処理部、15 駆動ガイド、20 駆動部、30 形状計測部、40 コントローラ、50 搬送機構、100 放射線検出器集合体(マトリックス状の放射線検出器)、101 加算アンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10