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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20230615BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230615BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230615BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K35/74 A
A61P31/04
A23L33/135
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020514408
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2019016441
(87)【国際公開番号】W WO2019203260
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2018080756
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500580677
【氏名又は名称】ニュートリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】川口 晋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美穂
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179580(JP,A)
【文献】特開2003-261453(JP,A)
【文献】Food Science and Technology,2014年,Vol.59,p.26-34
【文献】J Bioprocess Biotech,2015年,Vol.5, No.8,p.1-9
【文献】能味 堂郎 ほか,マウス日和見感染モデルにおける乳酸菌Enterococcus casseliflavus菌体の感染予防効果,日本医真菌学会雑誌,1996年,第37巻, 第3号,p.175-179,DOI:10.3314/jjmm.37.175
【文献】吉田 晶子,内因性緑膿菌感染の発症予防および早期診断に関する研究 第1報:マウスモデルでのbiological response modifiersの感染防御効果および血中菌体抗原の検出,帝京医学雑誌,1995年,第18巻, 第4号,p.301-312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項2】
エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項1記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項3】
1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項4】
1日に1回以上、1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項6】
1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項7】
1日に1回以上、1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項8】
1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項9】
1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項10】
1日に1回以上、1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項11】
1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が経口投与されるように用いられる請求項10記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項12】
エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌が7日以上経口投与されるように用いられる請求項11のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項13】
緑膿菌感染症の予防に用いられる請求項1~12のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項14】
緑膿菌感染症の治療に用いられる請求項1~12のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項15】
エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用医薬品。
【請求項16】
エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株の死菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、グラム陰性桿菌で、水まわりなど生活環境中に広く常在するが、健常者には通常、病原性を示さない弱毒細菌の一つである。
【0003】
ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム薬に自然耐性を示し、テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質などの抗菌薬にも耐性を示す傾向が強く、古くより、感染防御能力の低下した患者において、術後感染症などの日和見感染症の起因菌として問題となっている。
【0004】
また、多剤耐性緑膿菌感染症も確認されており、抗微生物薬剤(抗生物質)の不適切使用による多剤耐性菌を生じることになり、特に免疫力の低下した患者の多い病院や老人施設などでは院内(日和見)感染症の発生が社会的な問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たな緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意努力した結果、エンテロコッカス属に属する乳酸菌が緑膿菌感染を予防及び/又は治療できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(2)エンテロコッカス属に属する菌が乳酸球菌である(1)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(3)乳酸球菌がエンテロコッカス・フェカリスである(2)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(4)エンテロコッカス・フェカリスがEF-2001株である(3)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(5)エンテロコッカス属に属する菌が死菌である(1)~(4)のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(6)エンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(1)~(5)のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(7)1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(6)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(8)1日に1回以上、1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(7)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(9)1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり1億~1,000億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(8)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(10)1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(6)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(11)1日に1回以上、1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(10)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(12)1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり10~500億 CFU/kg体重のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(11)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(13)1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(6)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(14)1日に1回以上、1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(13)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(15)1日に1回以上5回以下の回数で、1回あたり120億 CFU/kg体重以上のエンテロコッカス属に属する菌が経口投与されるように用いられる(14)記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(16)エンテロコッカス属に属する菌が7日以上経口投与されるように用いられる(6)~(15)のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(17)緑膿菌感染症の予防に用いられる(1)~(16)のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(18)緑膿菌感染症の治療に用いられる(1)~(16)のいずれかに記載の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤。
(19)エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用医薬品。
(20)エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用食品。
(21)エンテロコッカス属に属する菌を医薬的に有効な量で被験者に投与することを含む、緑膿菌感染症の予防及び/又は治療方法。
(22)緑膿菌感染症の予防及び/又は治療のための、エンテロコッカス属に属する菌の使用。
(23)緑膿菌感染症の予防及び/又は治療方法に使用するための、エンテロコッカス属に属する菌。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、緑膿菌感染を予防及び/又は治療できる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2018‐80756の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の試験結果(生存率(Kaplan-Meier plot の結果))を示す。
図2】実施例1の試験結果(直腸温度)を示す。
図3】実施例1の試験結果(体重)を示す。
図4】実施例1の試験結果(摂餌量)を示す。
図5】実施例1の試験結果(摂水量)を示す。
図6】実施例1の試験日程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0011】
本発明は、エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤を提供する。
【0012】
エンテロコッカス属に属する菌は、乳酸球菌であるとよく(例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)など)、生体応答調節物質(Biological Response Modifier, BRM)活性(薬学誌 112:919-925 1992;薬学誌 113:396-399 1992;動物臨床医学 3:11-20 1994 )を有するものが好ましい。エンテロコッカス・フェカリスは、BRM活性を有する乳酸球菌として知られている。エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株は日本ベルム株式会社(東京都千代田区永田町2-14-3)から入手できる。
【0013】
Enterococcus Faecalis-2001株は、正常の人の糞便から採取することができ、下記の性質を有している。
【0014】
グラム陽性球菌である。コロニーの形(トリプトソーヤ寒天培地、24時間培養):直径1.0mm,スムーズ、正円形、白色コロニー菌形態:球から卵円形(1.0×1.5μm)液体培地でよく連鎖する。芽胞非形成。通性嫌気性。グルコースを発酵し乳酸産生(最終pH4.3)。ガス非産生。カタラーゼ 陰性。10~45℃で増殖(最適は37℃)。pH9.6、6.5%NaCl、40%bileに増殖。0.04%亜テルルサンカリウム 陽性。0.01%テトラゾリウム 陽性。0.1%メチレンブルーミルク 陽性。アルギニンを加水分解。アミグダリン、セロビオース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、ラクトース、マルトース、マンノース、マンニトール、リボース、サリシン、シュークロース、メレチトース、ソルビトールを発酵して酸産生。60℃、30分 耐性。カゼイン、ゲラチンを消化。チロシンを脱炭酸しチラミンに。Lancefield抗原グループ D。GC% 35.0±1.0%
エンテロコッカス属に属する菌は、生菌であっても、死菌であってもよく、菌体には、破壊処理(ホモジナイズ処理、酵素処理、超音波処理など)、加熱、乾燥(凍結乾燥、噴霧乾燥など)等の処理が施されてもよい。加熱処理により、生菌が死菌となりうる。生菌には乳酸発酵による作用が期待でき、死菌には腸管免疫賦活作用が期待できる。菌体の粒径は、0.05μm~50μmであるとよく、好ましくは、0.08~20μmであり、より好ましくは、0.1~10μmである。菌体は、希釈剤と混合した後、糊料を添加して、顆粒状としてもよい。希釈剤や糊料は、食品や医薬品に添加するものとして許可されている材料から選択するとよい。
【0015】
本発明の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤は、緑膿菌感染防御に用いることができる。本明細書において、「感染防御」とは、感染の予防のみならず、治療も含む概念である。本発明の緑膿菌感染症の予防及び/又は治療剤は、医薬品として、あるいは、食品添加物として、使用することができる。緑膿菌は、多剤耐性緑膿菌であってもよい。
【0016】
本発明は、エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用医薬品を提供する。
【0017】
医薬として用いる場合には、エンテロコッカス属に属する菌を単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ、エアロゾル、坐剤、注射剤等に製剤化するとよい。賦形剤または担体は、当分野で常套的に使用され、医薬的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜選択される。例えば、液状担体としては水、植物油などが用いられる。固体担体としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、結晶セルロースなどのセルロース誘導体などが使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤等を添加してもよい。その他、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤等を添加してもよい。また、凍結乾燥製剤として用いたりすることもできる。
【0018】
エンテロコッカス属に属する菌は、経口、経鼻、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内などの種々の経路によって投与できる。
【0019】
エンテロコッカス属に属する菌の製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常0.001~100質量%、好ましくは0.01~100質量%である。
【0020】
エンテロコッカス属に属する菌の投与量は、医薬的に有効な量、すなわち、緑膿菌感染の予防及び/又は治療効果が確認できる量であればよく、剤型、投与経路、患者の年齢、体重、疾患の重篤度などにより異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、エンテロコッカス属に属する菌の量に換算して、1億~1,000億 CFU/kg体重程度、好ましくは10億~500億 CFU/kg体重程度、より好ましくは60億~120億 CFU/kg体重程度とし、1日に1回から数回(例えば、2回、3回、4回、5回程度)投与するとよい。投与期間は、特に限定されないが、例えば、7日以上、10日以上、17日以上である。
【0021】
エンテロコッカス属に属する菌は、食品に添加してもよい。本発明は、エンテロコッカス属に属する菌を含有する緑膿菌感染症の予防及び/又は治療用食品を提供する。
【0022】
本発明の食品には、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムなどの一般成分、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラル類、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロムなどの微量元素、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、ビタミンD、ビタミンE、ビオチン、パントテン酸などのビタミン類、コエンザイムQ10、α-リポ酸、ガラクトオリゴ糖、食物繊維、賦形剤(水、カルボキシメチルセルロース、乳糖など)、甘味料、矯味剤(リンゴ酸、クエン酸、アミノ酸など)、香料などを添加してもよい。本発明の食品を液剤とする場合、食品成分を分散または溶解する液体として、水、生理食塩水、果汁等を用いることができ、経口投与における味覚向上の目的では、果汁を用いるとよい。
【0023】
本発明の食品は、粉末、顆粒、錠剤、液剤などのいかなる形状としてもよいが、病人や高齢者が容易に摂取可能とするためには、ゼリーなどのゲル状製品とすることが好ましい。
【0024】
ゲル化剤としては、デキストリン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチンなどの増粘多糖類、ジェランガム、サイリュームシードガム、タラガム、グアガム、グルコマンナンアルギン酸、タマリンドシードガム、セルロースなどを用いることができ、1種又は2種以上の増粘多糖類を用いることが好ましい。ゲル状製品のゲル強度は、5℃におけるゲル強度が7,000±2,000 N/m2であることが好ましく、また、ゲル強度が7,000±2,000 N/m2のとき、付着エネルギーが60±40 J/m3であり、凝集性が0.7±0.1 J/m3であることがより好ましい。このように付着性が低く、凝集性が高いゲルは優れた嚥下適性を有する。
【0025】
ゲル強度は、以下のようにして測定することができる。ゲル強度測定機器としては、山電テクスチュロメーター及びφ16mmのプランジャーを用い、測定温度25℃、圧縮速度(プランジャーを押し込む速度)10mm/s、測定歪率(試料の厚みに対する押し込み率)40.00%、プランジャーを押し込む距離10.00mm、プランジャーを押し込む回数2回にて測定を行う。
【0026】
付着エネルギーは上記ゲル強度測定において、1回押し込んだ後、プランジャーを引き抜くときの負のエネルギーとして測定する。
【0027】
凝集性は上記ゲル強度測定において、2回押し込んだ時に1回目と2回目のエネルギーの比率として測定する。
【0028】
エンテロコッカス属に属する菌の摂取量は、緑膿菌感染の予防及び/又は治療効果が確認できる量であればよく、剤型、投与経路、患者の年齢、体重、疾患の重篤度などにより異なるが、例えば1回当たりの摂取量は成人の場合、エンテロコッカス属に属する菌の量に換算して、1億~1,000億 CFU/kg体重程度、好ましくは10億~500億 CFU/kg体重程度、より好ましくは60億~120億 CFU/kg体重程度とし、1日に1回から数回(例えば、2回、3回、4回、5回程度)摂取するとよい。
【実施例
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
多剤耐性緑膿菌の全身感染モデルマウスを用いて、乳酸菌含有飲料を経口投与し、緑膿菌の感染防御に及ぼす影響を生存率等の指標にて評価した。
(試験日程)
図6に示す。
【0030】
(材料及び方法)
被験物質及び媒体
・被験物質
名称:乳酸菌粉末EF-2001(日本ベルム株式会社)(加熱殺菌したE. faecalis、径は500 nm=0.5μm)
性状:黄褐色の粉末
保管条件:室温、遮光、防湿
管理温度:18.0~28.0 °C
【0031】
・媒体
名称:注射用水
保管条件:室温
管理温度:18.0~28.0°C
製造元:株式会社大塚製薬工場
【0032】
検体
・被験物質の調製方法
乳酸菌粉末EF-2001を20 mg秤量(電子天秤:XP205DR、メトラー・トレド株式会社)し、注射用水に懸濁後、全量を125 mLにし、0.16 mg/mLとした。乳酸菌粉末は沈殿するため、良く撹拌し、懸濁した。用時調製とした。
【0033】
病原微生物
・使用菌株
Pseudomonas aeruginosa P-45(以下多剤耐性緑膿菌)(国立感染症研究所より分与)
【0034】
・保存条件
超低温フリーザー(管理温度:-90 ~ -70°C、MDF-394AT、三洋電機株式会社)で使用時まで凍結保存した。
【0035】
・試薬
(1)ハートインフュージョン培地(栄研化学株式会社)
(2)NAC寒天平板培地(栄研化学株式会社)
(3)生理食塩液(株式会社大塚製薬工場)
【0036】
・前培養
多剤耐性緑膿菌の保存菌株を解凍し、ハートインフュージョン液体培地に接種し、37°C設定の振盪培養器(BR-23FP、タイテック株式会社、振盪数:200回/分)で約24時間振盪培養した。培養後、培養液を回収し、遠心分離(1000 rpm、5分間)し、上清を廃棄後、沈殿物を生理食塩液で10 mLにし、接種菌原液とした。接種菌原液は菌液接種日まで冷蔵庫(管理温度:2~8 °C 、UKS-3610DHC、日本フリーザー株式会社)に保管した。
【0037】
・接種菌原液中の生菌数確認
接種菌原液を生理食塩液で102、104、106倍希釈し、NAC寒天平板培地に104、106倍希釈液を塗沫後、37°C設定の恒温器(ILE800、ヤマト科学株式会社)で1日培養した。培養後のコロニー数をハンディコロニーカウンター(CC-1、アズワン株式会社)で計測し、接種菌原液1 mL中に含まれる生菌数を算出した。
【0038】
・接種菌液の調製
菌液接種日に接種菌原液を生理食塩液で希釈し、1×107 CFU/mLの濃度に調製した。調製した菌液を接種菌液とした。調製後の接種菌液中の生菌数を(接種菌原液中の生菌数確認)で示した方法に準じて測定した。
【0039】
試験系
・動物種、系統
動物種:マウス(SPF)
系統:BALB/c 系(BALB/c Cr Slc)
【0040】
・動物の性別、週齢、入手匹数
雌、4週齢、44匹
【0041】
・入手後1日の体重範囲
12.9~18.1 g
【0042】
・供給源
日本エスエルシー株式会社
【0043】
・予備飼育
入手した動物は5日間の予備飼育期間を設けた。この間に一般状態の観察を1日1回行い、電子天秤(MS3002S/02、PB3002-S/FACT、メトラー・トレド株式会社)で体重を2回(動物入手の翌日及び予備飼育期間終了日)測定し、体重推移及び一般状態に異常の認められない動物を群分けに用いた。
【0044】
・群分け方法
群分けはコンピュータプログラム(IBUKI、株式会社日本バイオリサーチセンター)を用いて、体重を層別に分けたのち、無作為抽出法により各群の平均体重及び分散がほぼ等しくなるように群分け日に行った。
【0045】
・個体識別法
動物は入手日に油性インクによる尾への記入法及び油性インクによる四肢への色素塗布法を併用して識別をした。群分け後には、油性インクを用いて尾への動物番号の記入により識別した。各ケージには、予備飼育期間中は試験番号、入手年月日、予備飼育動物番号を記入したラベルを、群分け後は試験番号、群名称及び動物番号を記入し、群ごとに色分けしたラベルを取り付けた。
【0046】
・環境条件及び飼育管理
管理温度:18~28°C(実測値:20~24°C)、管理湿度:30~80%(実測値:39~67%)、明暗各12 時間(照明:午前6時~午後6時)に維持された飼育室(木曽三川分室 飼育室3号室)で動物を飼育した。動物は予備飼育期間中及び群分け後とも、ステンレス製網ケージ(W:100 × D:160 × H:80 mm)を用いて個別飼育とした。
ケージ及び給餌器の交換は1 週間に1回以上、給水瓶及び受け皿の交換は1週間に2回以上行った。動物飼育室の清掃は、消毒液を浸したモップによる床の拭き消毒を毎日実施した。
【0047】
・飼料
製造後5ヵ月以内の固型飼料(CRF-1、オリエンタル酵母工業株式会社)を給餌器に入れて自由に摂取させた。
飼料の使用ロットについて、飼料中の汚染物質濃度、細菌数及び栄養成分含量が試験施設の許容基準に適合していることを確認した。
【0048】
・飲料水
上水道水を飲料水として給水瓶を用いて自由に摂取させた。飲料水中の汚染物質濃度及び細菌数をほぼ6ヵ月ごとに分析し、試験施設の許容基準に適合していることを確認した。
【0049】
投与
・投与経路:経口
【0050】
・投与方法
マウス用ゾンデ(有限会社 フチガミ器械)を装着した1 mL容ディスポーザブルシリンジ(テルモ株式会社)を用いて、強制的に経口投与した。なお、投与時には検体を攪拌して必要量を採取した。
【0051】
・投与液量、投与時刻、投与回数及び投与期間
投与液量:投与日の体重値を基に10 mL/kgで算出した。
投与時刻:午前11時に第1群から順次行った。
投与回数:第1、2及び3群は1日1回とした。第4群では菌液接種前7日間は1日1回、菌液接種日から10日間は1日3回とし、8時間間隔とした。
投与期間と内容:投与開始日を1日と起算した。第1群では菌液接種前7日間、菌液接種日から10日間媒体を投与した。第2群では菌液接種前7日間、菌液接種日から10日間、第3群及び第4群では菌液接種日から10日間被験物質を投与した。ただし、第3群及び第4群では菌液接種前7日間は媒体を投与した。
【0052】
・群構成
動物数及び群構成を下表に示した。
*:媒体である注射用水を投与した。
**:菌接種前7日間は注射用水を1日1回投与した。
乳酸菌粉末EF-2001を 80 mg/125mLの量で1日1回マウスに投与することは、120 億CFU/kg/日の投与量に相当する。
【0053】
シクロホスファミド投与方法及び菌液接種方法
群分け4日後(菌液接種3日前)被験物質及び媒体の投与後に、シクロホスファミド(注射用エンドキサン(登録商標)100 mg、塩野義製薬株式会社)200 mg/kgを腹腔内投与(液量:10 mL/kg)した。群分け7日後(シクロホスファミド投与の3日後)に接種菌液0.5 mL(5×106CFU)を腹腔内に接種した。なお、接種ごとに接種菌液を攪拌して用いた。菌液は、被験物質及び媒体投与の2時間前に接種した。
播種菌数設定理由:参考文献1)を参考に設定した。
【0054】
観察及び検査
・一般状態の観察
群分け日から菌液接種前日までは、1日1回被験物質及び媒体投与前に一般状態を観察した。菌液接種日から接種3日後までは午前午後各2回(午前2回は被験物質及び媒体投与前)の計4回、接種4日後以降は午前午後(午前は被験物質及び媒体投与前)の計2回観察し、観察終了日は午前1回観察した。なお、菌液接種日は、菌液の接種前に午前1回目を行った。
【0055】
・直腸温の測定
群分け日以降の被験物質及び媒体投与前に、直腸温を測定(Physitemp、Model BAT-12、PHYSITEMP INSTRUMENTS INC.)した。測定する際は、センサーにワセリンを塗って、マウスの肛門に挿入し、測定した。
【0056】
・体重測定
群分け日以降は毎日、一般状態確認後に体重を測定(電子天秤:MS3002S/02、PB3002-S/FACT、メトラー・トレド株式会社)した。
【0057】
・摂餌量及び摂水量の測定
群分け日以降、毎日給餌器及び給水瓶ごと給餌量及び給水量を測定(電子天秤:MS3002S/02、PB3002-S/FACT、メトラー・トレド株式会社)し、翌日に残量を測定した。給餌量及び給水量とそれぞれの残量の差から、1日あたりの摂餌量及び摂水量を算出した。
【0058】
統計学的方法
各群で生存率を算出した。直腸温度、体重、摂餌量及び摂水量は各群の平均値及び標準誤差を算出した。
有意差検定は生存率では、観察日ごとに対照群と各群間でFisher正確確率検定を用いた。観察期間全体についてはKaplan-Meier plotを実施し一般化Wilcoxon検定を行い、群間比較については多重性の調整をするためHolm補正をした。
直腸温度、体重、摂餌量及び摂水量の有意差検定は、多重比較検定を用いた。すなわち、Bartlett法による等分散性の検定を行い、等分散の場合にはTukey検定を用いて行った。一方、等分散と認められなかった場合は、Steel-Dwass検定を用いて行った。
危険率は5%とし、それぞれ5%未満及び1%未満に分けて表示した。
なお、統計解析は市販の統計プログラム(SASシステム:SASインスティチュートジャパン)を用いた。
ただし、対照群については接種1日後以降の生存例は1例となり、群の平均値を表しているとは考えにくいため、接種1日後以降の有意差の「あり」の結果は、評価及び考察から除外した。
【0059】
(試験成績)
一般状態
観察結果を表1に示した。生存率については、Kaplan-Meier plotを図1に示した。
(表1)


【0060】
一般状態を観察すると、全群において立毛及び自発運動の低下がみられ、全期間投与群、菌接種後投与群及び菌接種後3回投与群で低体温がみられた。また、全群において接種1日後から2日後にかけて死亡が見られた。
対照群では、菌液接種日に自発運動の低下及び立毛が9/10例みられ、接種1日後に9/10例が死亡した。接種1日後~2日後まで立毛が1/1例でみられたが、接種3日後以降には異常は認められなかった。生存率は10%であった。
全期間投与群では、接種日に立毛及び自発運動の低下が1/10例みられた。接種1日後の午前1回目の観察では立毛及び低体温が3/10例、自発運動の低下が9/10例がみられ、午後の2回目の観察までに3/10例が死亡した。接種2日後には2/7例が死亡し、生存例に立毛あるいは自発運動の低下がみられたが、接種3日後以降には異常は認められなかった。生存率は50%であり、対照群と比較して、接種1日後に有意な高値(Fisher正確確率検定)がみられ、観察期間全体(一般化Wilcoxon)に有意な高値が認められた。
菌接種後1回投与群では、接種日に立毛及び自発運動の低下が1/10例みられた。接種1日後の午前1回目の観察では立毛及び低体温が3/10例、自発運動の低下が9/10例がみられ、午後の2回目の観察までに3/10例が死亡した。接種2日後には4/7例が死亡し、生存例に立毛あるいは自発運動の低下がみられた。接種3日後に自発運動の低下がみられたが、接種4日後以降には異常は認められなかった。生存率は30%であり、対照群と比較して、接種1日後に有意な高値(Fisher正確確率検定)がみられ、観察期間全体(一般化Wilcoxon)に有意な高値が認められた。
菌接種後3回投与群では、接種日に異常はみられなかったが、接種1日後の午前1回目の観察では立毛が6/10例、自発運動の低下が10/10例、低体温が4/10例みられ、午後の2回目の観察までに4/10例が死亡した。接種2日後には2/6例が死亡し、生存例に自発運動の低下あるいは立毛がみられたが、接種3日後以降には異常は認められなかった。生存率は40%であり、対照群と比較して、観察期間全体(一般化Wilcoxon)に有意な高値が認められた。
【0061】
直腸温測定
測定結果を図2に示した。
対照群では、平均直腸温が接種日から接種2日後に続けて下降し、2日間で0.5°C低下した(対照群の接種1日後以降の生存例(n)は1例であった)。
全期間投与群では、平均直腸温が接種日から接種1日後に3.1°C低下した。ただし、死亡を免れた5例では、接種1日後の体温は上昇しており(接種日:37.6°C、接種1日後:38.3°C)、以降は接種日の体温に近似して推移した。
菌接種後1回投与群では、平均直腸温が接種日から接種1日後に3.2°C低下した。ただし、死亡を免れた3例では、接種1日後の体温は上昇したが(接種日:37.4°C、接種1日後:38.8°C)、以降は接種日の体温に近似して推移した。接種6日後に全期間投与群と比較して、有意な低値が認められた。
菌接種後3回投与群では、平均直腸温が接種日から接種1日後に9.3°C低下した。ただし、死亡を免れた4例のうち3例(F04457除く)では、接種1日後の体温は上昇したが(接種日:37.0°C、接種1日後:37.9°C)、以降は接種日の体温に近似して推移した。対照群と比較して、接種7日後、9日後及び10日後に有意な高値が認められ、また接種6日後に菌接種後1回投与群と比較して、有意な高値が認められた。
【0062】
体重
体重を図3に示した。
対照群では、平均体重は順調に推移した(対照群の接種1日後以降の生存例(n)は1例であった)。
全期間投与群では、平均体重が接種1日後に1.9 g減少したが、死亡を免れた5例では、減少は小さかった(接種日:17.5 g、接種1日後:16.3 g)。その後は順調に推移した。
菌接種後1回投与群では、平均体重が接種1日後に2.0 g減少したが、死亡を免れた3例では、減少は小さかった(接種日:17.3 g、接種1日後:15.9 g)。その後は順調に推移した。
菌接種後3回投与群では、平均体重が接種1日後に2.2 g減少したが、死亡を免れた4例では、減少は小さかった(接種日:17.1 g、接種1日後:15.6 g)。その後は順調に推移した。
【0063】
摂餌量
測定結果を図4に示した。
対照群では、平均摂餌量の変動は小さかった(対照群の接種1日後以降の生存例(n)は1例であった)。
全期間投与群では、平均摂餌量が接種1日後に2.2 g減少したが、その後は回復した。対照群と比較して、接種2日後に有意な低値が認められた。
菌接種後1回投与群では、平均摂餌量が接種1日後に2.4 g減少したが、その後は回復した。対照群と比較して、接種2日後に有意な低値が認められた。
菌接種後3回投与群では、平均摂餌量が接種1日後に2.3 g減少したが、その後は回復した。対照群と比較して、接種2日後に有意な低値が認められた。
【0064】
摂水量
測定結果を図5に示した。
対照群では、平均摂水量の変動は小さかった(対照群の接種1日後以降の生存例(n)は1例であった)。
全期間投与群では、接種1日後に平均摂水量が0.8 mL減少したが、その後は回復した。
菌接種後1回投与群では、接種1日後に平均摂水量が0.4 mL減少したが、その後は回復した。対照群と比較して、接種5日前及び3日前に有意な低値が認められた。また全期間投与群と比較して、接種5日後に有意な低値が認められ、その他に接種5日前及び3日前に有意な低値がみられた。
菌接種後3回投与群では、接種1日後に平均摂水量の減少はなかった。対照群と比較して、接種5日前及び3日前に有意な低値と接種2日前及び9日後に有意な高値がみられた。また全期間投与群と比較して、接種6日後及び9日後に有意な高値が認められ、その他に接種5日前及び3日前に有意な低値がみられた。菌接種後1回投与群と比較して、接種6日後、7日後及び9日後に有意な高値が認められた。
【0065】
(考察)
多剤耐性緑膿菌全身感染モデルマウスを用いて、乳酸菌含有飲料を経口投与し、緑膿菌の感染と投与開始時期のタイミングや投与量が感染防御に及ぼす影響を生存率等の指標にて評価し、最も効果的な摂取条件を検討した。
対照群で緑膿菌接種日に一般状態の異常が9/10例みられたのに対し、乳酸菌粉末を投与した3群とも接種日の一般状態の異常は0/10例あるいは1/10例とごく少数例の発現であった。他方、発現した症状の消失時期は、対照群が接種3日後、乳酸菌粉末群は接種3日後と差異はなかった。また、乳酸菌粉末群間に差異はなかった。
生存率は、対照群が10%(9/10例死亡)に対し、全期間投与群が50%(5/10例死亡)、菌接種後1回投与群が30%(7/10例死亡)、菌接種後3回投与群が40%(6/10例死亡)であり、全ての乳酸菌粉末群ともに有意な上昇がみられた。
体重、直腸温、摂餌量及び摂水量は、接種1日後の対照群の生存例は1例のみであり、この期間中(接種1日後以降)の体重、直腸温、摂餌量及び摂水量における対照群との比較については正確性が低いため、乳酸菌粉末の投与に起因した影響とは判断しなかった。体重及び直腸温の低下については、その影響は死亡例で強く、生存例では弱かった。体重、直腸温、摂餌量及び摂水量の変化では、乳酸菌粉末群間に差異はなかった。
このように、感染防御に及ぼす影響に乳酸菌粉末群間の差異が認められたのは生存率であった。生存率は、全期間投与群、菌接種後3回投与群、菌接種後1回投与群の順に高かった。よって、最も効果的な摂取条件は、感染前から感染後までの継続投与であった。次に、死亡が1例のみの差ではあるものの、1.6 mg/kg/day(菌接種後1回投与)の1回投与に比べて、4.8 mg/kg/day(菌接種後3回投与)の方が効果的と判断した。
以上から、乳酸菌含有飲料の成分である乳酸菌粉末EF-2001の摂取は、多剤耐性緑膿菌感染前から開始し、感染後も継続することが感染防御に最も効果的であることが示された。他方、感染後の摂取でも、投与量に応じた有効性が認められたが、感染前からの開始に比べると効果は限定的であった。
【0066】
(文献)
1)平井 敏朗,他.献血由来静注用人免疫グロブリン製剤(IVIG)についての薬効薬理作用-II. 好中球減少マウスにおける実験的緑膿菌感染症に対するIVIGの感染防御効果-.薬理と臨床.16(2). 141~149.2006.
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、緑膿菌の感染の予防及び/又は治療に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6