IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン ディキンソン フランスの特許一覧

特許7296400医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール
<>
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図1
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図2
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図3
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図4
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図5
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図6
  • 特許-医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツール
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61M5/32 502
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555470
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019058910
(87)【国際公開番号】W WO2019197381
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】18305434.5
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヴァランタン
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0274151(US,A1)
【文献】国際公開第2017/089266(WO,A1)
【文献】特表2016-526996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体および前記本体から遠位に延びる針を含む医療用注入デバイスからキャップ(3)を取り外すためのツール(1)であって、前記キャップは針を覆い、前記ツールは、弾性インターフェース(12)によって接続される一対の対向するジョー(10、11)を含み、各ジョーは:
- 前記キャップの少なくとも一部を取り囲むように構成される遠位クランプを形成する遠位部分(10b、11b)と;
- 前記医療用注入デバイスの本体に軸方向に取り外し可能に固定されるように構成される近位クランプを形成する近位部分(10a、11a)と;を備え
前記弾性インターフェースは、前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)に半径方向内向きに加えられる狭持力が前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)を半径方向外向きに拡張させるように、前記遠位部分と前記近位部分との間に位置する支点(12)を形成し;
前記ツールは:
- 前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)が前記医療用注入デバイスの前記本体にしっかりと係合し、前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が前記キャップから離れている、静止位置と、および
- 前記遠位部分(10b、11b)が前記キャップに係合し、前記近位部分(10a、11a)が前記医療用注入デバイスの前記本体から外れるように、前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が挟まれる作動位置と、の間で操作可能である、
ことを特徴とするツール(1)。
【請求項2】
各ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が、その内面に延びる把持セクション(101)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記把持セクション(101)は、前記ツール(1)が前記作動位置にあるときに前記キャップとの摩擦係合を生成するように構成された軟質材料で作られた少なくとも1つのパッドを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のツール。
【請求項4】
前記軟質材料は、ゴム、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン ブロック コポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)およびポリウレタンから選択される、ことを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項5】
各ジョーの前記把持セクション(101)は、前記ツールが前記作動位置にあるときに前記キャップに把持するように構成された少なくとも1つのブレードを備える、ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のツール。
【請求項6】
前記ブレードがステンレス鋼でできている、ことを特徴とする請求項5に記載のツール。
【請求項7】
各ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が、その外面上に延びる把持ゾーン(102)を含む、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のツール。
【請求項8】
各ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が、前記遠位クランプを前記作動位置にロックするように構成されたロック機構を備える、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに一項に記載のツール。
【請求項9】
前記ロック機構は、前記遠位部分(10b、11b)上で互いに向き合うインターロック要素(13a、13b)から形成される、ことを特徴とする請求項8に記載のツール。
【請求項10】
各ジョーの前記近位部分(10a、11a)が、静止位置にある医療用注入デバイスの前記本体とスナップイン係合を提供するように構成される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のツール。
【請求項11】
前記ジョー(10、11)が、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン)またはPOM(ポリオキシメチレン)などの硬質ポリマー材料を含む、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のツール。
【請求項12】
医療用注入アセンブリであって:
- 本体、前記本体から遠位に延びる針、および前記針を覆うキャップ(3)を含む医療用注入デバイスと、および
- 請求項1から11のいずれかに記載のツール(1)と、を備え、
前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)が前記医療用注入デバイスの前記本体にしっかりと係合し、前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)が前記キャップから離れている、ことを特徴とする医療用注入アセンブリ。
【請求項13】
前記医療用注入デバイスが安全デバイス(2)を含み、前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)が前記安全デバイスの部分(22)と係合する、ことを特徴とする請求項12に記載の医療用注入アセンブリ。
【請求項14】
前記医療用注入デバイスがシリンジを含み、前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)が前記シリンジの一部と係合する、ことを特徴とする請求項13に記載の医療用注入アセンブリ。
【請求項15】
医療用注入デバイス(2)からキャップ(3)を取り外すための方法であって:
- 請求項1から11のいずれかに記載のツール(1)を提供するステップと;
- 前記キャップ(3)に接触することなく、前記ジョーの前記近位部分(10a、11a)を前記医療用注入デバイスの本体に係合させ、前記ツール(1)は静止位置にあるステップと;
- 前記キャップ(3)に係合するように前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)をつまみ、前記ツール(1)は作動位置にあるステップと;
- 前記医療用注入デバイスから前記キャップ(3)を取り外すために遠位方向に前記ジョーの前記遠位部分(10b、11b)を引っ張るステップと、を含む、
ことを特徴とする医療用注入デバイス(2)からキャップ(3)を取り外すための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
針を含む医療用注入デバイスは、一般に、外部の衝撃および/または汚染から針を保護し、医療用注入デバイスの内容物の流体密封閉鎖を確実にし、また針刺し損傷からユーザを保護するキャップによって閉じられる。用途に応じて、キャップは、ゴム、TPE(熱可塑性エラストマー)または別のエラストマーなどの軟質材料で作られた針シールド、プラスチックなどの実質的に硬質のある材料で作られた硬質シールド、または硬質シールドに配置された針シールドを含む硬質の針シールドであり得る。
【0003】
キャップが医療用注入デバイスに配置されると、針の先端は、もしあれば針シールドの遠位部分を貫通するか、または針シールドがない場合は硬質シールドの内面から離れている。その上、キャップの近位部分は、医療容器のバレルの遠位端と接触している。
【0004】
キャップは、一定の引き抜き力を取り除く必要があるように設計されている。前記引き抜き力は、キャップの偶発的な取り外しを回避するために十分に高くなければならない。しかしながら、引き抜き力が高すぎる場合、医療用注入デバイスは、患者または医療スタッフによる使用には不便である。実際、キャップの外面は実質的に滑らかであり、および/またはキャップが実質的に小さいので、ユーザはそれを適切に握ることができない。
【0005】
特に、医療用注入デバイスは、注入後に針先を保護することを目的とされた安全デバイスが備えられている場合、安全デバイス自体がキャップへのアクセスを妨げるかもしれない。
【0006】
キャップの取り外しを支援するために、キャップリムーバが提案されている。
【0007】
しかしながら、このようなキャップリムーバは十分ではない場合があり得る。特に、キャップリムーバは通常、近位方向へのキャップリムーバの軸方向の動きによってキャップと接触させられる。この動きの間、キャップリムーバは近位方向にキャップに力を加えられてもよい。その強度に応じて、そのような努力により、医療用注入デバイスが安全デバイスから引き抜かれ、針が軟質材料を突き刺し、軟質材料の小さな残留物を戻す可能性があり(この効果はコアリングと呼ばれる)、および/または針を変形させる。これにより、キャップと医療用注入デバイスとの間の気密性が失われる可能性もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、使いやすく、前記ツールの操作中に内部シールド(もしあれば)の任意のコアリングを防止する、キャップを取り外すためのツールを提供することである。
【0009】
そのために、本発明の目的は、本体および本体から遠位に延びる針を含む医療用注入デバイスからキャップを取り外すためのツールであって、キャップは針を覆い、前記ツールは、弾性インターフェースによって接続される一対の対向するジョーを含み、各ジョーは:
- キャップの少なくとも一部を取り囲むように構成される遠位クランプを形成する遠位部分と;
- 医療用注入デバイスの本体に軸方向に取り外し可能に固定されるように構成される近位クランプを形成する近位部分と; を備え、
弾性インターフェースは、ジョーの遠位部分に半径方向内向きに加えられる狭持力がジョーの近位部分を半径方向外向きに拡張させるように、遠位部分と近位部分との間に位置する支点を形成し;
ツールは:
- ジョーの近位部分が医療用注入デバイスの本体にしっかりと係合し、ジョーの遠位部分がキャップから離れている静止位置と、および
- ジョーの遠位部分が挟まれて、前記遠位部分がキャップに係合し、近位部分が医療用注入デバイスの本体から外れるような操作位置と、の間で操作可能である。
【0010】
本文において、「キャップを取り外すためのツール」、「キャップ取り外しツール」および「取り外しツール」という用語は、同じ物体を指す。
【0011】
本文では、キャップは、ゴムまたは別のエラストマーなどの軟質材料で作られた針シールド、プラスチックなどの実質的に硬質のある材料で作られた硬質シールド、または硬質シールドに配置される針シールドを含む硬質針シールド(rigid needle shield)(通常は頭字語RNSで示される)であり得る。
【0012】
本文では、医療用注入デバイスの遠位端は、医療用注入デバイスを取り扱うユーザの手から最も遠い端部を意味すると理解されるべきであり、近位端は、前記ユーザの手に最も近い端部を意味すると理解されなければならない。したがって、遠位方向は、ユーザの手からより遠い方向として理解されるべきであり、近位方向は、反対の方向、すなわち、ユーザの手に向かう方向である。近位方向と遠位方向は針に平行である。半径方向は、近位および遠位方向に垂直な方向として理解するべきである。キャップ取り外しツールに関する限り、「遠位」および「近位」という用語はまた、取り外しツールを操作するユーザの手に関してではなく、医療用注入デバイスに関して使用される。言い換えれば、キャップ取り外しツールの遠位端は、キャップ取り外しツールの近位端よりも医療用注入デバイスから最も遠いが、ユーザは、キャップ取り外しツールを使用するために前記遠位部分を取り扱ってもよい。
【0013】
そのようなキャップ取り外しツールは、キャップ取り外しツールが医療用注入デバイスに接続されているとき、またはキャップ取り外しツールを操作して医療用注入デバイスからキャップを取り外しするときに、近位方向にキャップに軸方向の力を加えないという利点を有する。
【0014】
一実施形態によれば、各ジョーの遠位部分は、その内面に延びる把持セクションを含む。そのような把持セクションは、キャップ取り外しツールが遠位方向に引っ張られたときにキャップの取り外しを容易にするように、遠位クランプとキャップとの十分な係合を確実にする。
【0015】
一実施形態によれば、前記把持セクションは、ツールが操作位置にあるときにキャップとの摩擦係合を生成するように構成された軟質材料で作られた少なくとも1つのパッドを含む。前記軟質材料は、ゴム、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)およびポリウレタンから選択され得る。
【0016】
あるいは、各ジョーの把持セクションは、ツールが操作位置にあるときにキャップに把持するように構成される少なくとも1つのブレードを備える。前記ブレードはステンレス鋼でできていてもよい。
【0017】
一実施形態によれば、各ジョーの遠位部分は、その外面上に延びる把持ゾーンを含む。前記把持ゾーンは、特にキャップ取り外しツールを遠位方向に引っ張るときに、ユーザによるキャップ取り外しツールのより良い取り扱いを提供するように構成される。
【0018】
一実施形態によれば、各ジョーの遠位部分は、遠位クランプを操作位置にロックするように構成されたロック機構を備える。このようなロック機構のおかげで、ユーザは、キャップを取り外すために、遠位方向に遠位クランプに引っ張る力を加えるだけでよい。前記ロック機構は、ジョーの前記遠位部分上で互いに向き合うインターロック要素から形成され得る。
【0019】
一実施形態によれば、各ジョーの近位部分は、静止位置にある医療用注入デバイスの本体とのスナップイン係合を提供するように構成される。
【0020】
一実施形態によれば、ジョーは、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン)またはPOM(ポリオキシメチレン)などの硬質ポリマー材料を含む。
【0021】
本発明の別の目的は、本体、本体から遠位に延びる針および針を覆うキャップ、ならびにジョーの近位部分が堅固にある上記のようなキャップ取り外しツールを含む医療注入デバイスを含む医療注入アセンブリであり、医療用注入デバイスの本体に係合し、ジョーの遠位部分がキャップから離れている。
【0022】
一実施形態によれば、医療用注入デバイスは安全デバイスを含み、ジョーの近位部分は前記安全デバイスの一部と係合する。
【0023】
別の実施形態によれば、医療用注入デバイスはシリンジを含み、ジョーの近位部分は前記シリンジの一部と係合する。
【0024】
本発明の別の目的は、医療用注入デバイスからキャップを取り外すための方法である。前記方法は、:
- 上記のようなキャップ取り外しツールを提供するステップと;
- キャップに接触することなく、ジョーの近位部分を医療用注入デバイスの本体に係合させ、ツールは静止位置にあるステップと;
- キャップとかみ合うようにジョーの遠位部分をつまんで、ツールは作動位置にあるステップと;
- ジョーの遠位部分を遠位方向に引っ張り、医療用注入デバイスからキャップを取り外すステップと、を含む。
【0025】
本発明のさらなる特徴、効果および利点は、添付の図面に基づいて、以下の詳細な説明に現れるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、安全デバイスに組み立てる前の、本発明の一実施形態によるキャップ取り外しツールを示す;
図2図2は、安全デバイスへの組み立て中の図1のキャップ取り外しツールを示す;
図3図3は、キャップを備えた医療用注入デバイスに結合する前の図2のアセンブリを示す;
図4図4は、それに結合されたアセンブリを備えた図3の医療用注入デバイスを示す;
図5図5は、図4のキャップ取り外しツールの遠位部分への狭持力の適用を示す;
図6図6は、図5の医療用注入デバイスからのキャップの取り外しを示す;
図7図7は、本発明の別の実施形態によるキャップ取り外しツールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
キャップ取り外しツールは、それらが旋回可能である弾性インターフェースによって接続される一対の反対側のジョーを含む。
【0028】
各ジョーは、キャップの少なくとも一部を取り囲むように構成された遠位部分と、キャップとは異なる医療用注入デバイスの一部と協働するように構成された近位部分とを備える。より正確には、医療用注入デバイスは、好ましくは、針が遠位に延びる本体を含む。本体は、シリンジのバレル、シリンジのバレルを取り囲む安全デバイスのハウジング、シリンジのバレルを受け入れるように構成されたシリンジのハウジング、人間工学的シェルなどであり得る。
【0029】
ジョーの近位部分は、好ましくは、取り外しツールを医療用注入デバイスの本体に軸方向に取り付けるように構成された接続手段を含む。接続手段は、取り外しツールを本体に軸方向に固定するように構成されている。接続手段は、以下の要素のうちの1つまたはいくつか:スナップ機能、1つまたは複数のフック、1つまたはいくつかの突起を含み得る。このようなアタッチメントはリバーシブルであり、つまり、取り外しツールを医療用注入デバイスの本体から取り外すことができる。
【0030】
ジョーの遠位部分は、好ましくは、キャップを把持するように構成された把持セクションを含む。
【0031】
ジョーの遠位部分に半径方向内向きに加えられる狭持力がジョーの近位部分を半径方向外向きに拡張させるように、弾性インターフェースは、遠位部分と近位部分との間に位置する支点を形成している。逆に、ジョーの近位部分に半径方向内向きに加えられる狭持力は、ジョーの遠位部分を半径方向外向きに拡張させる。言い換えれば、ジョーの近位部分は一緒に近位クランプを形成し、一方、ジョーの遠位部分は一緒に遠位クランプを形成し、前記クランプは互いに反対に作動する。近位クランプが閉じているとき、遠位クランプは開いており、逆に、近位クランプが開いているとき、遠位クランプは閉じている。
【0032】
この構造のおかげで、キャップ取り外しツールは次の位置の間で操作可能であり:
- ジョーの近位部分が医療用注入デバイスの一部に軸方向に固定され(近位クランプが閉じている)、ジョーの遠位部分がキャップから離れている(遠位クランプが開いている)静止位置、および
- ジョーの遠位部分がキャップに係合し(遠位クランプが閉じている)、ジョーの近位部分が医療用注入デバイスから外れるように(近位クランプが開いている)、ジョーの遠位部分が挟まれる作動位置、である。
【0033】
静止位置では、近位クランプが閉じられ、接続手段が本体に係合し、取り外しツールが本体に対して軸方向に固定され、遠位クランプが開いて、取り外しツールがキャップに接触しない。作動位置では、近位クランプは開いており、接続手段は医療用注入デバイスの本体に係合せず、遠位クランプは閉じて把持セクションがキャップに係合し、取り外しツールが軸方向に引っ張られたときにキャップが取り外しツールと一緒に軸方向に引っ張られる。
【0034】
静止位置では、近位クランプと医療用注入デバイスの本体との間の接続は、近位方向で医療用注入デバイスの本体に対してキャップ取り外しツールに軸方向の橋台を提供する。前記接続は、フック、スナップイン接続、バヨネットなどのような、キャップ取り外しツールの医療用注入デバイスへの軸方向固定を提供する任意の適切な手段によって提供され得る。
【0035】
作動位置では、遠位クランプは、キャップをつまむように構成されているので、取り外しツールが医療用注入デバイスから引き出されると、キャップは取り外しツールで引っ張られる。一実施形態によれば、静止位置は、ユーザが注入の準備をするまで、医療用注入デバイスが保管されているときのキャップ取り外しツールの位置である。次に、キャップ取り外しツールを作動位置に移動して、医療用注入デバイスからキャップを取り外し、注入を実行するために針先を露出させる。
【0036】
キャップ取り外しツールは、任意の医療用注入デバイスで使用してもよい。いくつかの実施形態では、医療用注入デバイスはシリンジのみであり得る。他の実施形態では、医療用注入デバイスは、任意のタイプの安全デバイスを備えた、またはシリンジの少なくとも一部を取り囲む任意のシェルを備えたシリンジであり得る。例えば、シェルは、シリンジの操作を容易にするように構成された人間工学的シェルであり得る。医療用注入デバイスはまた、自動注入器または手動注入器であり得る。
【0037】
図1~6は、医療容器にクリップで留められることを意図した人間工学的シェルと協働するように設計された、本発明によるキャップ取り外しツールの実施形態を示す。図1を参照すると、キャップ取り外しツール1は、最初に人間工学的シェル2とは別に提供される。シェル2は、シリンジ(図4を参照)の近位端に結合されるように適合される近位部分21と、ラジアルフランジ22を含む遠位部分20とを備える。
【0038】
キャップ取り外しツール1は、一対の対向するジョー10、11を備える。各ジョー10、11は、シェル2の遠位端に結合されることを意図される、それぞれの遠位部分10b、11bおよびそれぞれの近位部分10a、11aを備える。各ジョーの遠位部分と近位部分の間の接合部は剛性があり、ツールの操作中に変形しないことを意味している。遠位部分と近位部分との間のジョーを接続するインターフェース12は弾性であり、ジョーが回転可能である支点を形成する。
【0039】
ジョーの遠位部分10b、11bは一緒になって、開位置と閉位置との間で操作することができる遠位クランプを形成する。同様に、ジョーの近位部分10a、11aは一緒になって、遠位クランプの位置と反対の開位置と閉位置との間で操作することができる近位クランプを形成する。
【0040】
近位部分10a、11aは、有利には、シェル2、またはより一般的には医療用注入デバイスの本体とのスナップイン係合を提供するように構成される。その目的のために、近位端10a、11aは、フランジ22との機械的接続を提供するフック形状を提示する。フック形状は、ラジアルフランジ22の形状に実質的に対応することが好ましい。しかしながら、他の実施形態では、シェルはそのようなフランジを含まなくてもよい。例えば、医療用注入デバイスの本体は、その外面に形成された溝または穴を含み得、近位部分10a、11aは、前記溝または穴と係合するように構成され得る。医療用注入デバイスの本体が任意のスナップイン機能を含まない場合、ジョーの近位部分は、本体の外面に適用されるように単純に構成してもよい。
【0041】
図1に示す最初の位置では、遠位クランプと近位クランプの両方が半分開いている。
【0042】
図2を参照すると、キャップ取り外しツール1をシェル2に組み立てるために、キャップ取り外しツール1がシェルの遠位端に押し込まれる。この押し付け力の下で、近位部分10a、11aによって形成されたクランプは、フックがフランジ22を通過するまで開き、一方、遠位部分10b、11bによって形成されたクランプは閉じる。次に、フックがフランジ22の周囲を越えて延びると(図3を参照)、遠位部分10b、11bによって形成されたクランプが再び開く。
【0043】
図3は、キャップ取り外しツール1の静止位置を表す。この位置では、取り外しツールはシェルに軸方向に固定されている。ジョーの遠位部分10b、11bは、ジョーの遠位部分10b、11bに半径方向に接触することなく、キャップが取り外しツールに挿入され得るように、互いに間隔を置いて配置されている。
【0044】
取り外しツール1がシェルに結合された後、針(図示せず)と針を保護するキャップ3とを含むシリンジ4と、シリンジに結合された安全デバイス5とを含むアセンブリがシェルに挿入される。有利には、安全デバイス5はシェル2にクリップで留められる。シリンジ、キャップおよび安全デバイスを含むアセンブリは、取り外しツールがシェルに固定されている限りキャップに接触しないように構成されているので、シェルおよび取り外しツールを含むセットに挿入してもよい。
【0045】
図4を参照すると、安全デバイス5およびシリンジを含むアセンブリがシェル2に組み立てられると、ジョー10、11の遠位部分10b、11bは、キャップ3に接触することなく、キャップ3の周りに延びる。取り外しツール1の内部寸法は、取り外しツール1が静止位置にあるときにキャップ3との任意の接触を回避するように選択される。特に、安全デバイスとシリンジを含むアセンブリのスピン運動がプランジャ6(矢印で示される)によって与えられる場合でさえ、取り外しツール1によってキャップに力が加えられることはない。
【0046】
図3の組み立て工程においても、取り外しツール1はキャップ3と接触しないことに留意されたい。特に、ジョーの近位部分によって形成されたフックは、近位方向に取り外しツール1に軸方向の橋台を提供し、それにより、取り外しツール1によって引き起こされるキャップの軸方向の動きを回避する。
【0047】
したがって、針の変形、針シールド(もしあれば)のコアリング、および結果として生じる気密性の喪失のリスクがそれによって防止される。
【0048】
有利なことに、キャップは、ジョーの間に配置された開口部を通して視覚化してもよい。
【0049】
図5を参照すると、ユーザが注入を行うことを意図するとき、彼/彼女は、ジョーの遠位部分10b、11bをつまんで、それらを半径方向(矢印で示される)に互いに近づけ、一方、近位部分10a、11aは、互いに離れている。
【0050】
その場合、キャップ取り外しツール1は作動位置にある。
【0051】
有利な実施形態によれば、遠位部分は、遠位部分10b、11bを作動位置にロックするように構成されたロック機構を備える。
【0052】
例えば、前記ロック機構は、相補的な形状を備えた、前記部材10b、11b上で互いに向き合うインターロック要素13a、13bから形成されてもよい。しかしながら、他のロック機能を使用されてもよい。インターロック要素は、図1に示されるようにジョーの端部に配置されてもよく、および/またはそれらは、ジョーの両側に配置されてもよい。
【0053】
ロックは、可逆的(すなわち、遠位部分のロック解除を可能にする)であってもなくてもよい。
【0054】
取り外しツール1が作動位置にあるとき、遠位部分10b、11bはキャップ3に係合する。この係合は、取り外しツール1の相対的な軸方向の動きを意味するのではなく、遠位部分10b、11bによって加えられる半径方向の圧力のみを意味することに留意されたい。針の変形、内部シールド(存在する場合)のコアリング、および結果として生じる気密性の喪失のリスクが防止される。
【0055】
好ましくは、遠位部分10b、11bは、その内面上に延びる把持セクション101を含む。
【0056】
一実施形態によれば、前記把持セクションは、ツールが作動位置にあるときにキャップとの摩擦係合を生成するように構成された軟質材料で作られた少なくとも1つのパッドを含み、パッドは部分10b、11bによってキャップに押し付けられる。例えば、前記軟質材料は、ゴム、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)およびポリウレタンから選択され得る。パッドは、キャップとの接触面が十分に大きくなるように設計されている。
【0057】
代替の実施形態によれば、把持セクションは、取り外しツールが作動位置にあるときにキャップに把持するように構成された少なくとも1つの剛性ブレードを含む。例えば、前記ブレードはステンレス鋼でできていてもよい。ブレードは、単一の連続した鋭いエッジまたは複数の歯を有し得る。ブレードは、ブレードとキャップの相対的な滑りを回避するために、遠位方向に垂直な平面内で半径方向に配置されることが好ましい。前記作動位置では、近位クランプは、シェル2のフランジ22を解放するのに十分に開く。
【0058】
したがって、図6を参照すると、ユーザは、取り外しツール1を遠位方向(矢印で表される)に引くことによって、医療用注入デバイスからキャップ3を引き抜き得る。キャップ3は、遠位クランプによって加えられる半径方向の圧力によって、取り外しツール1内で依然として維持されている。
【0059】
有利には、ジョーの遠位部分10b、11bは、その外面上に延在し、おそらくわずかな突起を形成する把持ゾーン102を備える。前記把持ゾーンは、ゴム、SBS、SEBSまたはポリウレタンなどの軟質材料でできていてもよい。把持ゾーンは、キャップを取り外すときにユーザの指をよりよく把持する。
【0060】
遠位クランプの人間工学のおかげで、取り外しツール1は、キャップ自体よりも簡単にアクセスでき、把持が優れているため、キャップを取り外するために便利なツールである。
【0061】
さらに、遠位クランプのロック機構により、取り外しツールが作動位置に入ると、ユーザは遠位方向に単純な軸方向の動きを実行するだけで済む。
【0062】
そのようなロック機構がない場合、ユーザは、キャップを把持するためのピンチ動作と、医療用注入デバイスからキャップを引き抜くための軸方向動作とを組み合わせて実行しなければならない。
【0063】
さらに、遠位クランプのロック機構には、医療用注入デバイスからの引き抜き後、取り外しツール内のキャップを維持するという利点もある。
【0064】
ジョー10、11は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン)またはPOM(ポリオキシメチレン)などのポリマー材料でできていてもよい。インターフェース12は、好ましくは、ジョーと同じ材料であり、必要な弾性を提供するように適合された形状および厚さを有する。したがって、ジョーおよびインターフェースは、例えば射出成形によって作製された単一の部品で作製され得る。
【0065】
該当する場合、把持セクションおよび/または把持ゾーンは、例えば、二成分注入またはオーバーモールドによって、遠位部分と一体であり得る。さもなければ、把持セクションおよび/または把持ゾーンは、各ジョーの遠位部分が形成された後、例えば、結合または溶接によって、遠位部分に固定されてもよい。
【0066】
図7は、安全デバイス自体と協働するように適合され、シリンジが安全デバイスにクリップで留められている、本発明による取り外しツールの別の実施形態を示している。図1-6にすでに存在する参照記号は、同じコンポーネントを表している。
【0067】
取り外しツール1の設計は、安全デバイス5の設計に対応するためにわずかに異なる。しかしながら、上記と同じように動作する。
【0068】
もちろん、このデバイスは、他の種類の医療用注入デバイスまたは安全デバイスと一緒に使用され得る。当業者は、シリンジ、シェル、または安全デバイスと係合できるように、キャップ取り外しツールの近位部分を設計することができる。
【0069】
有利なことに、ユーザに提供される製品は、シリンジ、安全デバイス(もしあれば)、シェル(もしあれば)(すべてが医療用注入デバイスを形成する)、キャップ、およびすでに一緒に組み立てられたキャップ取り外しツールを保護パッケージに含む。
【0070】
一実施形態によれば、キャップ取り外しツールは静止位置(図4に示されるように)にある。したがって、ユーザは、遠位部分をつまんで遠位クランプを閉じてから、キャップを医療用注入デバイスから引き抜かなければならない。
【0071】
あるいは、キャップ取り外しツールは、製造工場での組み立て中に(図5に示されるように)作動位置にロックされてもよい。したがって、ユーザは、キャップを取り外すために遠位方向に引っ張る力を加えるだけでよい。キャップ取り外しツールがユーザに配送される前にキャップと接触していても、アセンブリは保護パッケージに入っているため、キャップに軸方向の力がかからず、キャップが損傷したり、完全性や気密性が失われたりするリスクは低い。
【0072】
図示されていないが、キャップ取り外しツールは、シリンジに直接接続することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7