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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】低強度砂杭造成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20230615BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 104
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021038499
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138557
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2021-12-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 光男
(72)【発明者】
【氏名】沼本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 元
(72)【発明者】
【氏名】橋本 則之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竹史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(72)【発明者】
【氏名】高田 英典
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-041852(JP,A)
【文献】特開2021-025289(JP,A)
【文献】特公昭50-12202(JP,B2)
【文献】特開2006-124962(JP,A)
【文献】特開2019-007159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良材料が充填された中空管を所定の深度まで貫入するI工程と、
中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の改良材料を排出するII工程とを有し、改良対象地盤中に低強度砂杭を造成する方法であって、
該低強度砂杭は、後工事で掘削されるものであり、
該改良材料は、砂杭材料と固化材を含む混合材料であり、
該後工事の掘削深さに対応する該低強度砂杭の少なくとも2点を採取するコアサンプリング(表層部を除く)を行い、採取された全ての試料の一軸圧縮強さが100~1,500kN/mであり、
該後工事での掘削が、アースドリル工法による場所打ち杭を建てるための掘削であり、該掘削による掘削穴壁の崩落を防止することを特徴とする低強度砂杭造成方法。
【請求項2】
該固化材が、セメント系固化材又は中性固化材であることを特徴とする請求項1記載の低強度砂杭造成方法。
【請求項3】
該固化材の配合量は、砂杭材料1mに対して、10~100kgであることを特徴とする請求項1又は2記載の低強度砂杭造成方法。
【請求項4】
該砂杭材料が、砂、砕石、再生砕石又は製鋼スラグであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の低強度砂杭造成方法。
【請求項5】
該I工程の前工程として、砂杭材料と固化材の配合比率を決定する事前室内試験を実施することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の低強度砂杭造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設杭などの掘削を行う後工事を行っても、砂杭の崩落がない低強度砂杭造成方法に関するものである。
【0002】
従来、砂地盤などの軟弱地盤中に砂杭を打設することにより、地盤を改良する工法として、締固め砂杭造成工法が知られている。この締固め砂杭造成工法は、砂杭材料が詰め込まれた中空管を所定の深度まで貫入した後、中空管を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜き工程と、中空管を再貫入する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成する工法である(特開2003-147756号公報)。締固め砂杭造成工法においては、軟弱地盤中に打設される砂杭材料を該砂杭材料の最適含水比近傍で締固めれば、最大の締固め効果を発揮することも知られている。
【0003】
構造物の構築のため、締固め砂杭による地盤改良が実施され、締固め砂杭で改良された改良地盤では、その構造物支持用の新設杭のための掘削工事などが行われる。このため、締固め砂杭で改良された改良地盤は、新設杭などの掘削工事により、設計通り安定して掘削穴が掘られることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-147756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の締固め砂杭で改良された改良地盤において、構造物支持用の新設杭のための掘削が行われると、掘削による砂杭の崩落が発生することがある。これでは、新設杭の施工性や品質に悪影響がでてくる。このため、例えば、液状化対策として、締固め砂杭を造成しようとする地盤においては、新設杭などが構築される区画を外して、砂杭を造成することで対応していた。これでは、締固め砂杭の改良ピッチが設計よりも広くなる箇所と狭くなる箇所が発生し、改良率に一部の差異が生じることとなる。更に場合によっては、本来施工するべき砂杭の本数を減らさなければならない場合も発生する。加えて、改良ピッチが均等でない場合、施工機械の段取り替えを別途必要とし、施工性が著しく低下することもある。このため、新設杭を構築するための掘削が後工程としてあったとしても、砂杭の崩落がない締固め砂杭造成方法の開発が望まれていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、新設杭などの掘削を行う後工事を行う区画であっても、掘削による砂杭の崩落がない低強度砂杭造成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明(1)は、上記従来の課題を解決したものであり、改良材料が充填された中空管を所定の深度まで貫入するI工程と、中空管を適宜の長さ引き抜き該中空管内の改良材料を排出するII工程とを有し、改良対象地盤中に低強度砂杭を造成する方法であって、該改良材料は、砂杭材料と固化材を含む混合材料であり、該低強度砂杭の一軸圧縮強さが100~1,500kN/mであることを特徴とする低強度砂杭造成方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明(2)は、該固化材が、セメント系固化材又は中性固化材であることを特徴とする前記(1)記載の低強度砂杭造成方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明(3)は、該固化材の配合量は、砂杭材料1mに対して、10~100kgであることを特徴とする(1)又は(2)記載の低強度砂造成方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明(4)は、該砂杭材料が、砂、砕石、再生砕石又は製鋼スラグであることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載の低強度砂造成方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(5)は、該I工程の前工程として、砂杭材料と固化材の配合比率を決定する事前室内試験を実施することを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の低強度砂造成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新設杭などの掘削を行う後工事を行う区画であっても、掘削による砂杭の崩落がない低強度砂杭造成方法を提供することができる。このため、低強度砂杭は、設計通りの打設位置に、新設杭に与える影響を最小限として、施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】低強度砂杭の崩落しない強度を計算により求める際、計算の基礎となるモデル図である。
図2】左図は静止土圧状態(安定)を示し、右図は主働土圧状態(破壊)を示す。
図3】主働土圧状態のモールの応用円を示す。
図4】実施例における深度と一軸圧縮強さの関係を示すグラフである。
図5】実施例1の砂杭崩落試験における低強度砂杭の掘削壁面の写真である。
図6】実施例2の砂杭崩落試験における低強度砂杭の掘削壁面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、低強度砂杭とは、地盤中に造成された砂杭の28日後の一軸圧縮強さが、100~1,500kN/m、好ましくは300~1,000kN/mのものを言う。28日後とは、造成後、28日及び28日以降の日を言う。低強度砂杭の一軸圧縮強さは、28日後、地盤中の低強度砂杭の深度方向の少なくとも2点、好ましくは3点以上を採取し、そのすべてが上記数値範囲を満たすことが好ましい。なお、一軸圧縮強さの数値範囲は、低強度砂杭の深度方向の全てにおいて必ずしも満たす必要はなく、新設杭の掘削深さにおいて、満たすものであればよい。例えば、深度12mの低強度砂杭において、後工程の掘削穴が8mであれば、低強度砂杭の8mを超える深度における一軸圧縮強さは、100kN/m未満であってもよい。なお、一軸圧縮強さの試験方法は、JIS A 1216:2020に準拠したものである。また、後工事などにより低強度砂杭の養生期間が確保できない場合は、造成した材料をモールドに詰めて供試体を作成し、28日後に一軸圧縮強さを確認する方法で代用してもよい。
【0015】
低強度砂杭の一軸圧縮強さが、100~1,500kN/mであれば、後工事における掘削が可能であると共に、低強度砂杭が崩落せず、後工事に支障をきたすことがない。すなわち、低強度砂杭の一軸圧縮強さが、100kN/m未満であれば、後工事の掘削において、掘削壁面を構成する砂杭の崩落が発生し易く、後工事に支障が生じることがある。また、低強度砂杭の一軸圧縮強さが、1,500kN/mを超えるものは、砂杭が固すぎて掘削が困難となり、後工事に支障が起きる。従来の締固め砂杭工法で造成された固化材の配合がない砂杭は、砂が密に締固められただけの状態であるため、一軸圧縮強さ試験用の供試体が採取できず、一軸圧縮強さの測定がそもそも困難である。
【0016】
本発明において、砂杭材料としては、従来の締固め砂杭造成工法で使用される砂杭材料と同様のものが使用でき、例えば、砂、砕石又は再生砕石及び製鋼スラグ等のリサイクル材などが挙げられる。砂は、粒度試験方法(JIS A 1204)で得られた粒径加積曲線の粒径が0.075mm以下の細粒分が3~5%以下で、最大粒径が40~50mm以下のものが望まれる。砕石は、粒度試験方法(JIS A 1204)で得られた粒度加積曲線の通算質量50%値が、最大30mmのものでも使用可能である。なお、含水比50~200%の粘性土である海上地盤改良工事で発生する盛り上がり土は、上記の粒度分布の範囲を満足しないので、砂杭材料から除外される。
【0017】
本発明において、固化材としては、セメント系固化材、石灰系固材、中性固化材が挙げられる。中性固化材としては、例えば、中性の半水石膏等を主成分とする石膏系固化材、石炭火力発電所の副産物である排煙脱硫石膏と加圧流動床石炭灰を主原料とした固化材、製紙スラッジなどの焼却灰を主原料とした固化材が挙げられ、その他、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなども使用できる。
【0018】
本発明において、中空管に中詰めされる改良材料は、砂杭材料、固化材及び含水比調整用水を含むものであり、均一に混合されたものが好ましい。固化材は、砂杭材料に対して少量添加される。具体的には、該固化材の配合量は、砂杭材料1mに対して、10~100kg、好ましくは30~70kgである。これにより、造成された砂杭の一軸圧縮強さを100~1,500kN/mの範囲とすることができる。
【0019】
本発明の低強度砂杭の一軸圧縮強さの下限値100kN/m、すなわち、新設杭の掘削があったとしても、砂杭が崩落しない強度は、施工機械等により異なるものの、数回の現場での実機試験及び机上の計算等から決定される。
【0020】
机上の計算方法としては、例えば、図1に示す通り、造成された低強度砂杭(図中、符号1)が新設杭施工の掘削により、砂杭の一部が削られた状態を想定する。通常、砂杭の削られた部分(図中、符号2)は削孔泥水で満たされているが、最も安全側で考え、そのまま空洞となった状態とする。
【0021】
土圧理論から、低強度砂杭は主働土圧状態と考えられる。ここで、主働土圧状態とは、鉛直応力が卓越して土が破壊するときの水平応力を言う。次に、ランキン(Rankine)の土圧理論から主働土圧の計算を行う。
σha=σ・k-2c√k (式1)
(式1中、σhaは主働土圧(kN/m)、σは鉛直応力(kN/m)、2c=quで、一軸圧縮応力粘着力(kN/m)、kは主働土圧係数を示す(図2図4参照)。)
ここで、
主働土圧係数k=(1-sinφ)/(1+sinφ)=tan(45°―φ/2)(式2)
(式2中、φ=内部摩擦角(°)を示す。)
【0022】
式1、式2において、低強度砂杭の一部が空洞となっても崩壊しない場合(主働土圧が0)は、2c√k=σ・kであり、
低強度砂杭の一軸圧縮応力;qu=2c=σ・k/√k=γ・z・k/√k (式3)
(式3中、γは単位体積重量(砂の一般値;18kN/m)、zは深度(m)を示す。)
【0023】
低強度砂杭の内部摩擦角を以下の通り、定義する。すなわち、低強度砂杭が完全にc材として評価し、φ=0°の時、k=1(図4中の符号B)であり、低強度砂杭が完全にc材+φ材として評価し、φ=30°の時、k=0.33(図4中の符号A)である。この結果を図4に示す。安全側のk=1とした場合、深度10mにおける平均一軸圧縮強さは、90kN/m、深度12mにおける平均一軸圧縮強さは、108kN/mであり、この点からも、本願発明の低強度砂杭の一軸圧縮強さの下限値約100kN/mが導かれる。
【0024】
本発明の低強度砂杭の一軸圧縮強さの上限値1,500kN/mは、この数値を超えた場合、硬過ぎて、掘削が困難となる。これは、場所打ちコンクリート杭の施工において、一般的に掘削が可能な強度と言われる数値と同じである(例えば、「場所打ちコンクリート杭の施工((社)日本基礎建設協会、令和元年6月、204頁)等」。
【0025】
本発明において、低強度砂杭造成方法を実施する工法としては、無振動で締固めを行う静的締固め砂杭造成工法、振動による締固めを行うサンドコンパクションパイル工法が挙げられ、この内、既設構造物近接での施工が可能な静的締固め砂杭造成工法が好ましい。すなわち、本発明は、II工程後、中空管を打ち戻し、排出した改良材料の周囲の地盤を締め固める(IIA工程)。II工程及びIIA工程を順次、地表に至るまで細かく繰り返して、改良対象地盤中に拡径の低強度砂杭を造成する工程IIIを更に、有するものであってもよい。
【0026】
次に、本発明の実施の形態における低強度砂杭造成方法について説明する。先ず、本工程の前に、事前室内試験を実施する。事前室内試験は、対象地盤中に所定の一軸圧縮強さを有する低強度砂杭を確実に造成するため、砂杭材料と固化材の配合比率を決定する工程である。具体的には、土質試験、配合試験及び施工性確認試験などが挙げられる。
【0027】
土質試験は、砂杭材料の粒度試験及び砂の最小密度・最大密度試験(JIS A 1224)及び突固めによる土の締固め試験(JIS A 1210)が挙げられる。砂の最小密度・最大密度試験及び突固めによる土の締固め試験は、事前室内配合試験(や現場改良強度確認試験)で作成される一軸圧縮試験供試体の密度の決定に利用されるものであり、締固め砂杭が造成され、砂杭材料が最も効果的な締固めがされた時の、最大乾燥密度を想定している。
【0028】
配合試験は、固化材の配合比率を変えた試料について、締固めた供試体を作成し、28日後の一軸圧縮強さを測定し、固化材の配合量を決定する試験である。28日後の一軸圧縮強さにおいて、室内配合試験結果が、現場施工後の事後サンプリング結果に対して、高くでる傾向がある。これは両者の締固め砂杭のサイズの違い、締固め密度の違い、あるいは改良材料の均一度の違いなどが原因と思われる。このため、改良材料中の固化材比率は、室内配合試験で得られた固化材の配合比率に安全率を考慮して、決定することが好ましい。
【0029】
施工性確認試験は、中空管への改良材料の投入及び排出が可能かどうかを検証する試験である。事前室内試験における施工性確認試験は、改良材料の塑性指数を求めることで行われる。塑性指数は土の塑性状態と液性状態の境界の含水比(液性限界)と土の半固体状態と塑性状態の境界の含水比(塑性限界)の差で表される。塑性指数は透水係数と相関し、塑性係数が20以下の場合に所定の透水係数が確保され、これにより土の中空管からの排出が良好になる。逆に、塑性指数が20を越えるものは、所定の透水係数が確保できず、中空管からの材料の抜けが悪くなる傾向にある。この理由は、所定の透水係数が確保されると、土の中空管からの排出に必要とされる透気性が確保されるためである。塑性指数は、JIS A1205「土の液性限界・塑性限界試験方法」により求められる。また、改良材料の物性が上記範囲内であれば、砂杭施工で使用される中空管への投入や排出が容易であり、また、中空管内の移動が円滑となり、中詰め材料として好適なものとなる。塑性指数は0~20が好ましい。
【0030】
次に、施工現場に、原料である砂杭材料、固化材などを搬入する。次いで、土質改良機などの混合機を使用し、これら原料を混合して均一混合物の改良材料を得る。混合比率は、事前室内試験において、決定された配合比率で行う。
【0031】
次いで、低強度砂杭造成方法のI工程及びII工程、あるいはI、II、IIA及びIII工程を行う。低強度砂杭造成方法は、例えば、強制昇降装置、回転駆動装置及び中空管を備えた公知の静的締固め砂杭工法で使用される施工機により行われる。中空管を所定の位置に据え、貫入抵抗に耐え得る一定量の改良材料を投入する。すなわち、ホッパーから中空管に投入された所定量の改良材料は、その落下力、別途に供給される圧縮空気による管内圧力及び振動などにより、貫入抵抗に耐え得るほどに締め固められる。次いで、中空管を回転させながら、地中の所定の深度まで貫入する(I工程)。貫入が難しい中間層が存在する場合は、エジェクター吐出を併用しながら貫入してもよい。次いで、中空管を適宜の長さ引き抜き、中空管内の改良材料を排出する(II工程)。次いで、中空管を打ち戻し、排出した改良材料の周囲の地盤を締め固める(IIA工程)。II工程及びIIA工程を順次、地表に至るまで細かく繰り返して、改良対象地盤中に拡径の低強度砂杭を造成する(III工程)。この低強度砂杭は、最大杭長25m、杭径700mmであり、所定の改良区画において、所定の間隔(ピッチ)にて、多数、造成される。これにより、改良地盤は、改良前地盤に比して、N値が上昇し、改良率に応じた地盤強度を得ることができる。上記低強度砂杭造成方法は、中詰め材料が改良材料である以外、従来の締固め砂杭造成方法と同じである。
【0032】
なお、低強度砂杭造成方法は、サンドコンパクションパイル工法においても実施できる。すなわち、バイブロハンマー、バイブロハンマーと施工機本体を接続するワイヤー及び中空管を備えた公知のサンドコンパクションパイル施工機により行われる。中空管を所定の位置に据え、貫入抵抗に耐え得る一定量の改良材料を投入する。次いで、振動機による起振力により、中空管を地中の所定の深度まで貫入する(I工程)。次いで、中空管を適宜の長さ引き抜き、中空管内の改良材料を排出する(II工程)。次いで、中空管を打ち戻し、排出した改良材料の周囲の地盤を締め固める(IIA工程)。II工程及びIIA工程を順次、地表に至るまで繰り返して、改良対象地盤中に拡径の低強度砂杭を造成する(III工程)。なお、I、II、IIA及びIII工程を行う際、IIA工程及びIII工程が省略されることがある。すなわち、静的締固め砂杭工法やサンドコンパクションパイル工法等の締固め砂杭造成方法においては、地表部において中空管の打ち戻しを行わないドレーン部が存在する。また、砂杭の深度方向の下部や中間部において中空管の打ち戻しを行わないドレーン部が存在していてもよい。
【0033】
次いで、事後調査を行う。改良材料調製後、すなわち、砂杭材料と固化材の配合後の28日経過後、造成された改良砂杭についてコアサンプリングを行う。コアサンプリングは、低強度砂杭の径方向の中心近傍であって、深度方向の少なくとも2点、好ましくは3点以上を採取することが好ましい。コアサンプリングにて採取された試料に対して、一軸圧縮試験を実施することで一軸圧縮強さが測定される。これにより、低強度砂杭の深度方向の連続性を確認することができる。新設杭長さに相当する深度におけるコアサンプリングの一軸圧縮強さが、100~1,500kN/mの範囲であれば、掘削を伴う後工事に引き渡しが可能となる。また、必要に応じて、周辺地盤の標準貫入試験を実施し、締固め効果を確認する。
【0034】
本発明によれば、改良地盤中の砂杭は、半固化杭あるいは微固化杭であり、従来の砂杭材料に固化材が少量添加された低強度砂杭であるため、掘削ができないほど、固化しておらず、後工事において容易に掘削ができる。一方、改良地盤に対して、構造物の鋼管基礎杭、あるいはケーシングパイプ等で穴壁を保護しないで掘削する、例えばアースドリル工法による場所打ち杭等の新設杭を建てるための掘削穴が掘削されても、掘削穴壁は崩落せず、後工事に支障をきたすことがない。
【0035】
(実施例1)
<砂A>
粒度試験方法(JIS A 1204)で得られた粒径加積曲線において、通過質量百分率10%が0.137mm、30%が0.219mm、50%が0.285mm、60%が0.321mm、最大粒径が19.0mmの砂A(砂杭材料)を使用した。
【0036】
<改良材料A>
砂A 1mに対して30kgの高炉セメントB種(粉末状)を均一に混合して改良材料Aを調製した。この改良材料Aの室内配合試験における一軸圧縮強さ(28日後)は、480kN/mであった。
【0037】
<締固め砂杭造成方法A>
砂地盤に対して、静的締固め砂杭施工機を使用し、改良材料Aを用いて、上記I、IIIIA及びIII工程の締固め砂杭造成方法を実施することで、砂径700mm、深度9.5mの砂杭Aを地中に形成した。なお、改良材料Aは、締固め試験の最大乾燥密度1.57g/cmにおける含水比10.0%で中空管に投入された。施工後(混合後)28日において、砂杭A中、深度方向における10箇所においてコアサンプリングを行い、一軸圧縮強さを測定した。その結果を図に示す。図において、10箇所の採取土の一軸圧縮強さは、最小値は深度2.4mの180kN/m(但し、表層部を除く)、最大値は深度8.5mの720kN/mであった。なお、図には、ランキンの土圧理論におけるφ=0°、ka=1の理論曲線(符号B)及びφ=30°、ka=0.33の理論曲線(符号A)を併記した。
【0038】
<砂杭崩落試験A>
施工後(混合後)28日における砂杭Aに対して、掘削機(バックホー)を使用して砂杭の一部を削るように掘削穴を掘った。掘削は、砂杭Aの径方向の半分(平面視で半円)で、且つ深度1mを削り取ったものである。掘削により残った砂杭Aの杭壁は、崩落することなく、起立状の杭壁面を保持したままであった(図5の写真参照)。
【0039】
(実施例2)
<砂A及び改良材料B>
実施例1と同様の砂Aを使用した。また、砂A 1mに対して40kgの高炉セメントB種(粉末状)を均一に混合して改良材料Bを調製した。この室内配合の改良材料Bの一軸圧縮強さ(28日後)は、900kN/mであった。
【0040】
<締固め砂杭造成方法B>
改良材料Aに代えて、改良材料Bとし、砂径700mm、深度9.5mの砂杭を地中に形成した以外は、実施例1と同様の締固め砂杭造成方法Bを行った。施工後(混合後)28日において、砂杭B中、深度方向における9箇所においてコアサンプリングを行い、一軸圧縮強さを測定した。その結果を図に示す。図において、9箇所の採取土の一軸圧縮強さは、最小値は深度9.5mの180kN/m、最大値は深度4.3mの1,250kN/mであった。
【0041】
<砂杭崩落試験B>
砂杭崩落試験Aの砂杭Aに代えて、砂杭Bとした以外は、実施例1と同様の砂杭崩落試験Bを行った。その結果、掘削により残った砂杭Bの杭壁は、崩落することなく、起立状の杭壁面を保持したままであった(図6の写真参照)。
【0042】
(比較例1)
<砂A>
実施例1と同じ砂Aを使用した。砂Aは固化材(高炉セメントB種)を配合することなく、そのまま砂杭材料として使用した。
【0043】
<締固め砂杭造成方法C>
締固め砂杭造成方法Aの改良材料Aに代えて、砂Aを用いた以外は、実施例1と同様の締固め砂杭造成方法Cを行い、砂杭Cを造成した。施工後(混合後)28日において、砂杭C中、深度方向における2箇所においてコアサンプリングを行い、一軸圧縮強さを測定した。その結果、一軸圧縮強さ試験用のコア材が強度不足により作成できず、測定不能であった。
【0044】
<砂杭崩落試験C>
砂杭崩落試験Aの砂杭Aに代えて、砂杭Cとした以外は、実施例1と同様の砂杭崩落試験Cを行った。その結果、砂杭Cの杭壁は、掘削と同時に、崩落して杭壁面を保持することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、新設杭などの掘削を行う後工事を行う区画であっても、掘削による砂杭の崩落がない低強度砂杭造成方法を提供することができる。このため、新設杭の施工に支障がなく、後工事を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 削られた低強度砂杭
2 新設杭用の掘削穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6