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特許7296432シートバックにおけるマット取付構造及び乗り物用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】シートバックにおけるマット取付構造及び乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20230615BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021136174
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2022099230
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】17/129989
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516303716
【氏名又は名称】アディエント・エンジニアリング・アンド・アイピー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ウイルキンソン フレデリック エル
(72)【発明者】
【氏名】オシンスキー ショーン エム
(72)【発明者】
【氏名】リ ユンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェンティン
(72)【発明者】
【氏名】小宮 直人
(72)【発明者】
【氏名】インディ ラクシミカント
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】池田 敬基
(72)【発明者】
【氏名】長友 広光
(72)【発明者】
【氏名】福田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 蒼平
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067173(JP,A)
【文献】特開2009-142484(JP,A)
【文献】特開2012-086611(JP,A)
【文献】特開2014-094597(JP,A)
【文献】特開2016-116250(JP,A)
【文献】特開2017-077329(JP,A)
【文献】米国特許第7131694(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0361350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックにもたせかけられた乗員の背からの力を受けるマットをシートバックフレームに取り付けるためのシートバックにおけるマット取付構造であって、
前記マットに取り付けられ、前記シートバックフレームの先端側又は根本側において前記シートバックフレームの長手方向に直状に延びる直状部を有する一対の腕部が形成されたガイドワイヤと、
貫通孔を有し、前記一対の腕部のそれぞれについて、前記直状部が前記貫通孔に挿通された一対のブッシュと、
前記シートバックフレームに形成され、前記一対のブッシュそれぞれを着脱可能に係合装着する一対の取り付け孔部と、
を備え
前記一対の取り付け孔部は、それぞれ第1の孔及び前記第1の孔に対して第1の方向の一方の側に形成された第2の孔を有し、前記一対のブッシュのそれぞれは、前記第1の孔の縁部が差し込まれることで前記第1の孔に係合する溝部と、前記第2の孔に入り込んで係合する爪部とを有し、
前記ブッシュは、前記取り付け孔部に係合装着した状態で、前記第1の方向の前記一方の側への移動が、前記第2の孔の縁部と前記爪部とが当接して規制され、前記第1の方向の他方の側への移動が、前記第1の孔の縁部と前記溝部とが当接して規制されることを特徴とするシートバックにおけるマット取付構造。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記第1の方向に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1記載のシートバックにおけるマット取付構造。
【請求項3】
シートクッションと、
シートバックと、
前記シートバックの内部に配置されたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームに対し請求項1又は請求項2記載のシートバックにおけるマット取付構造で取り付けられたマットと、
を備えた乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックにおけるマット取付構造及び乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、乗り物用シートのシートバックにおいて、乗員の背中を支えるマットに取り付けられたガイドワイヤをシートバックフレームに形成した貫通孔に挿通させることで、マットを、シートバックフレームに対し前後動可能に取り付けるようにしたマットの取付構造が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたマットの取付構造は、シートバックフレームの貫通孔の周縁にバーリング加工などにより形成した突出部を有する。これにより、ガイドワイヤが挿通孔内を滑らかに上下動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-142393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたマットの取付構造は、貫通孔の突出部を、シートバックフレームを加工して一体的に形成している。貫通孔に挿入する、ガイドワイヤの太さ,挿通角度,及び前後動のストロークなどが特定される。そのため、一つのシートバックに、形状の異なる複数種類のマットを取り付けることが難しく、生産性を向上させる観点て改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、生産性が向上するシートバックにおけるマット取付構造及び乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) シートバックにもたせかけられた乗員の背からの力を受けるマットをシートバックフレームに取り付けるためのシートバックにおけるマット取付構造であって、
前記マットに取り付けられ、前記シートバックフレームの先端側又は根本側において前記シートバックフレームの長手方向に直状に延びる直状部を有する一対の腕部が形成されたガイドワイヤと、
貫通孔を有し、前記一対の腕部のそれぞれについて、前記直状部が前記貫通孔に挿通された一対のブッシュと、
前記シートバックフレームに形成され、前記一対のブッシュそれぞれを着脱可能に係合装着する一対の取り付け孔部と、
を備え
前記一対の取り付け孔部は、それぞれ第1の孔及び前記第1の孔に対して第1の方向の一方の側に形成された第2の孔を有し、前記一対のブッシュのそれぞれは、前記第1の孔の縁部が差し込まれることで前記第1の孔に係合する溝部と、前記第2の孔に入り込んで係合する爪部とを有し、
前記ブッシュは、前記取り付け孔部に係合装着した状態で、前記第1の方向の前記一方の側への移動が、前記第2の孔の縁部と前記爪部とが当接して規制され、前記第1の方向の他方の側への移動が、前記第1の孔の縁部と前記溝部とが当接して規制されることを特徴とするシートバックにおけるマット取付構造である。
2) 前記貫通孔は、前記第1の方向に傾斜して形成されていることを特徴とする1)に記載のシートバックにおけるマット取付構造である。
3) シートクッションと、
シートバックと、
前記シートバックの内部に配置されたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームに対し1)又は2)に記載のシートバックにおけるマット取付構造で取り付けられたマットと、
を備えた乗り物用シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性が向上する、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る乗り物用シートであるシートSTの構造を示す斜視図である。
図2図2は、シートSTにおけるマット取付構造TKの支持部SRを、上壁部21の表側(上方側)から見た斜視図である。
図3図3は、支持部SRを上壁部21の裏側(下方側)から見た斜視図である。
図4図4は、支持部SRの上壁部21に形成されたブッシュ取り付け孔部21Gを示す斜視図である。
図5図5は、ブッシュ7を示す斜視図である。
図6図6は、ブッシュ7の側面図である。
図7図7は、図5におけるS7-S7位置での断面図である。
図8図8は、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付ける手順を示す第1の斜視図である。
図9図9は、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付ける手順を示す第2の斜視図である。
図10図10は、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付ける手順を示す第3の斜視図である。
図11図11は、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付ける手順を示す第4の斜視図である。
図12図12は、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付ける手順を示す第5の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートを、実施例である乗り物用シートSTにより説明する。
図1は、乗り物用シートST(以下、単に、シートSTとも称する)のフレーム構造を説明するための斜視図である。以下の説明において、前後左右上下の各方向を、図1に示される矢印によって規定する。これらの方向は、シートSTが車両に搭載された状態に基づいている。左右方向はシートSTの幅方向である。
【0011】
図1において、シートSTは、シートクッションフレームFR1をクッション部材で覆ったシートクッションST1と、シートバックフレームFR2をクッション部材で覆ったシートバックST2と、を有する。すなわち、シートバックフレームFR2は、シートバックST2の内部に配置されている。
シートクッションフレームFR1の下部には、一対の可動レール62,62が取り付けられている。可動レール62,62は、乗り物の車両の床面C1に設置された固定部材としてのレール61,61に対し前後方向に移動可能に支持されている。これにより、シートSTは、レール61,61に対し前後にスライド可能となっている。
【0012】
シートバックフレームFR2は、シートクッションフレームFR1の後部において、左右に延びる回動軸線CLaまわりに回動可能に支持されている。
シートバックフレームFR2は、パネルによって枠状に形成された、いわゆるパネルフレームであり、根本と先端とを繋ぐ方向が長手方向となっている。
シートバックフレームFR2は、ロワパネル部1と、左サイドパネル部2L及び右サイドパネル部2Rと、アッパーパネル部2Tと、を有する。
具体的には、ロワパネル部1は、シートバックフレームFR2の下部において左右方向に延びる部位である。左サイドパネル部2L及び右サイドパネル部2Rは、ロワパネル部1の左右端から長手方向(図1における概ね上下方向)に立ち上がる部位である。アッパーパネル部2Tは、左サイドパネル部2Lと右サイドパネル部2Rの先端部を左右方向(幅方向)に連結する部位である。
アッパーパネル部2Tは、左右方向中央部に配置された左右方向に延びる中央壁部2T2と、中央壁部2T2から左下方向及び右下方向それぞれに斜めに延出した傾斜壁部2T1とを有する。中央壁部2T2には、ヘッドレスト(不図示)を支持するヘッドレスト支持部2Hが形成されている。
【0013】
中央壁部2T2及び左右一対の傾斜壁部2T1は、概ね前後方向に延在する面を有する上壁部21と、上壁部21の前端から下方に向け折れ曲がり、概ね上下方向に延在する前壁部22とを有する。
【0014】
シートバックフレームFR2の枠に囲まれた中央空間には、シートバックフレームFR2に支持されたガイドワイヤ6と、ガイドワイヤ6に取り付けられた薄板状のマット5と、が配置されている。マット5は、シートバックST2にもたせかけられた乗員の背からの力を受ける部材である。詳しくは、マット5は、弾性的に前後動可能に配置され、乗員の背中を良好な感触が得られるよう支持する。
ガイドワイヤ6は、シートバックフレームFR2に対し、上部の左右一対の傾斜壁部2T1,2T1それぞれにおける支持部SL,SRと、下部のロワパネル部1における支持部SBとにおいて支持されている。
【0015】
ガイドワイヤ6は、金属線状のバネ材で形成されている。ガイドワイヤ6は、表面に他部材と摺動性能を向上させる潤滑層が形成されていてもよい。
ガイドワイヤ6は、マット5の後面側において、上下に延び、左右に離隔して配置された一対の縦ワイヤ部6a,6aと、左右に延びて縦ワイヤ部6a,6aの上部及び下部をそれぞれ連結する上連結部6b及び下連結部6cとを有する。
ガイドワイヤ6は、さらに、上連結部6bと縦ワイヤ部6aとの連結部位から左右の斜め上方に延びる一対の腕部6d,6dを有する。
マット5は、縦ワイヤ部6a及び上連結部6bに対し、それぞれ複数のファスナ(不図示)によって、外力に対し分離せず互いが共に変形するように取り付けられている。
【0016】
下連結部6cは左右に延びる直状に形成され、ロワパネル部1に対し下連結部6cの軸線まわりに回動可能に取付られている。
【0017】
ガイドワイヤ6の一対の腕部6d,6d及び支持部SL,SRは、左右対称形状であり、以下、右側の腕部6d及び支持部SRについて説明する。
腕部6dは、上連結部6bと縦ワイヤ部6aとが連結する部位から斜上に延びる傾斜延部6d1と、傾斜延部6d1の端部から曲がって概ね上方へ直状に延びる直状部6d2とを有する。すなわち、腕部6dは、先端側の部位として直状部6d2を有している。
【0018】
次に支持部SRについて、図2図7を参照して詳述する。
図2は、図1における支持部SRを上壁部21の表側(上方側)から見た斜視図であり、図3は、支持部SRを上壁部21の裏側(下方側)から見た斜視図である。
図4は、支持部SRの上壁部21に形成されたブッシュ取り付け孔部21Gを示す斜視図である。
図5は、ブッシュ取り付け孔部21Gに取り付けられるブッシュ7を示す斜視図であり、図6は、ブッシュ7の側面図であり、図7は、図5におけるS7-S7位置での断面図である。
【0019】
図5図7において、説明の便宜上、X,Y,Zの各方向を図の矢印の方向に規定する。また、各方向の向きは(+),(-)を付して規定する。
【0020】
シートバックフレームFR2は、アッパーパネル部2Tにおける傾斜壁部2T1の上壁部21に、図4に示されるブッシュ取り付け孔部21Gを有する。
ブッシュ取り付け孔部21Gは、第1の孔である基部係合孔21aと、第2の孔である爪係合孔21bとを有する。上壁部21において、爪係合孔21bは、基部係合孔21aに対して下方側(外方側)に形成されている。
【0021】
基部係合孔21aは、傾斜壁部2T1において長手方向を図4の矢印K1方向とする概ね長方形に形成されている。爪係合孔21bは、基部係合孔21aに対し、長手方向の一方の側に形成されている。
基部係合孔21aは、短手方向に対向する対向縁部における長手方向K1の中央よりも爪係合孔21b側に寄った位置に、一部分の幅を一定の幅で狭くするよう突出した一対の突出部21a1を有する。
基部係合孔21aは、突出部21a1に対し爪係合孔21b側となる部分を第1開口部21a2と称し、爪係合孔21bの反対側となる部分を第2開口部21a3と称する。
基部係合孔21aの、第1開口部21a2における長手方向の縁部を、縁部21a4とし、第2開口部21a3における長手方向の縁部を、縁部21a5とする。
【0022】
爪係合孔21bは、基部係合孔21aの短手方向に延びる細長い長孔として形成されている。基部係合孔21aにおける爪係合孔21b側の縁部21a4と、爪係合孔21bにおける基部係合孔21a側の縁部21b1との間の距離を距離L21とする。
【0023】
図5図7に示されるブッシュ7は、ブッシュ取り付け孔部21Gに取り付けられる樹脂製の部材である。
ブッシュ7は、樹脂の射出成形により形成される。樹脂例はPOM(ポリアセタール)である。ブッシュ7は、基部71,トップベース72,腕部73,ガイド部75,及び貫通孔76を有する。
【0024】
基部71は、概ね矩形の平板状に形成されている。
トップベース72は、基部71のZ(+)側に連接して形成された平板状の部位である。
腕部73は、基部71の長手方向(X方向)の第1端部であるX(-)側の端部から、基部71よりも細い幅でさらにX(-)方向に延出した短冊状部位である。腕部73の先端部には、腕部73からトップベース72が形成されたZ(+)側に突出する第2の係合部である爪部74が形成されている。
爪部74は、X(+)側の面が、長手方向に直交する平面の当接面74aとされている。
【0025】
ガイド部75は、基部71の長手方向の第2端部であるX(+)側の端部から、基部71と同じ幅で、X(+)方向に向かうほどZ(-)方向に向かうよう傾いて延出した部位である。
貫通孔76は、軸線CL76が、Z方向に対し図7における時計回り方向に角度θaだけ傾いた孔として形成されている。貫通孔76は、ガイドワイヤ6の直状部6d2をシートバックフレームFR2の長手方向に挿通可能とする孔である。
貫通孔76には、ガイドワイヤ6の直状部6d2がZ(-)側からZ(+)側へ挿通される。
角度θaは、ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付け、ガイドワイヤ6の直状部6d2をZ(-)側から貫通孔76に挿通したときに、直状部6d2が概ね上下方向に延びる姿勢となるように設定される。
貫通孔76の開口縁部は、全周にわたり、エッジとならないようにR付けされた面取り部76a(図7参照)となっている。
【0026】
トップベース72は、長手方向の中央よりもX(-)側に寄った位置に、幅方向であるY方向の両縁部が互いに接近するようY方向に抉られた凹部72aを有する。
トップベース72は、Z(-)側の端部側が、第1の係合部である第1張り出し部72bとして、X(-)方向及びY方向に張り出している。また、Z(+)側の端部が、第2張り出し部72cとして、X(+)方向及びY方向に張り出している。
【0027】
これにより、図6において明らかなように、第1張り出し部72b及び第2張り出し部72cと基部71との間に、それぞれ第1溝部77及び第2溝部78が形成されている。
詳しくは、第1溝部77は、X(-)側と、Y(+)及びY(-)側とに形成されている。第2溝部78は、X(+)側と、Y(+)及びY(-)側とに形成されている。
第1溝部77及び第2溝部78それぞれのZ方向の幅Wa及び幅Wbは、等しく、アッパーパネル部2Tの上壁部21の厚さt21(図4参照)に対しわずかに大きく設定されている。
【0028】
ブッシュ7において、図6に示される第1溝部77の奥壁77aと、爪部74の当接面74aとの間のX方向の距離L7は、ブッシュ取り付け孔部21Gにおける距離L21(図4参照)に対し、同じ又はわずかに大きい。
【0029】
上述のブッシュ7は、図8図12に示される手順で、ブッシュ取り付け孔部21Gに装着することができるように、形状及び寸法の詳細が設定されている。図8図12は、構造を容易に把握できるよう縦断面図で示されている。
【0030】
(手順1)図8参照
ブッシュ7を、ブッシュ取り付け孔部21Gの第2開口部21a3に対し、第2開口部21a3の長手方向の縁部21a5がトップベース72の第2張り出し部72cとガイド部75との間に入るように、上壁部21の裏側から斜めに差し込む(矢印DRa)。
【0031】
(手順2)図9参照
ブッシュ7をさらに差し込んで(矢印DRb)、ブッシュ7の第2張り出し部72cを上壁部21の表側に出しつつ、第2溝部78に第2開口部21a3の縁部21a5を差し込む。
【0032】
(手順3)図10参照
第2開口部21a3の縁部21a5を第2溝部78の奥にしっかり差し込んだ状態で、ブッシュ7を、第2溝部78の最奥位置を回動中心Paとして腕部73が上壁部21に接近するように回動させる(矢印DRc)。このとき、基部係合孔21aの突出部21a1は、ブッシュ7の凹部71aに対応した位置にあるのでブッシュ7に干渉しない。これにより、ブッシュ7の回動は許容される。
【0033】
(手順4)図11参照
トップベース72の第1の係合部である第1張り出し部72bは、第1の孔である基部係合孔21aの第1開口部21a2を通過可能になっている。そのため、ブッシュ7の回動をさらに進めると(矢印DRd)、トップベース72全体が基部係合孔21aを通過して上壁部21の表側に抜ける。そして、ブッシュ7は、第1溝部77に第1開口部21a2の縁部21a4が対向する姿勢となる。
この姿勢において、腕部73は、爪部74が上壁部21の裏面に当接して回動が規制され、矢印DReに示されるように撓んだ状態となっている。
【0034】
(手順5)図12参照
ブッシュ7を、縁部21a4が第1溝部77に差し込まれるように上壁部21に沿って移動させる(矢印Drf)。
これにより、第1の係合部である第1張り出し部72bが、第1の孔である基部係合孔21aの縁部21a4の周りに係合する。
また、既述のように、第1溝部77の奥壁77aと、爪部74の当接面74aとの間のX方向の距離L7は、ブッシュ取り付け孔部21Gにおける距離L21(図4参照)に対し、同じ又はわずかに大きく形成されている。そのため、第2の係合部である爪部74は、第2の孔である爪係合孔21bに入り込んで係合し、腕部73の撓みは解消する。
【0035】
上述の手順1~手順5によって、ブッシュ7は、上壁部21のブッシュ取り付け孔部21Gに取り付けられる。
ブッシュ7のブッシュ取付孔部21Gからの取り外しは、逆の手順で行う。
すなわち、手などにより腕部73を撓ませて爪部74を爪係合孔21bから離脱させ、ブッシュ7の全体を、上壁部21に沿って図12の矢印DRfとは反対方向に直動させる。
【0036】
そして、縁部21a5を第2溝部78の奥まで差し込んだ状態で、ブッシュ7を図10の矢印DRcとは反対方向に回動させ、第1張り出し部72bを第1開口部21a2から裏側へ抜く。そして、図9の矢印DRbとは反対方向に移動させて第2張り出し部72cを基部係合孔21aから上壁部21の裏側へと抜きとる。
【0037】
ブッシュ7をブッシュ取り付け孔部21Gに取り付けた状態で、ブッシュ7の図12における下方への移動は、第1張り出し部72b及び第2張り出し部72cが、上壁部21の突出部21a1(図12において不図示)、並びに、縁部21a4及び縁部21a5の近傍部位に当接して規制される。
ブッシュ7の図12における上方への移動は、基部71及び腕部73が、基部係合孔21aの周縁近傍部位に当接して規制される。
ブッシュ7の図12における左方への移動は、爪部74の当接面74aが爪係合孔21bの縁部21b1(図4参照)に当接して規制される。
ブッシュ7の図12における右方への移動は、ブッシュ7の第1溝部77が基部係合孔21aの縁部21a4に当接することで規制される。
ブッシュ7の幅方向の移動は、ブッシュ7のトップベース72に、基部係合孔21aの一対の突出部21a1の一方が当接することで規制される。
【0038】
マット5の支持部SL,SRへの取付は、上述のように上壁部21に取り付けたブッシュ7の貫通孔76に、図7に示されるように、ガイドワイヤ6の直状部6d2を挿通することで行われる。
【0039】
マット5の前後動に伴い、ガイドワイヤ6の直状部6d2は上下動する。すなわち、貫通孔76内を貫通孔76の軸方向に往復動する。
ガイドワイヤ6は金属製であるが、ブッシュ7は樹脂製であるから、ガイドワイヤ6の貫通孔76内の往復動は滑らかである。また、貫通孔76の開口縁部には、面取り部76aが形成されている。
これにより、ガイドワイヤ6の往復動の回数が増加してもガイドワイヤ6の表面に傷はつきにくく、往復動に伴う摺動性は、実用上で支障のない程度で高度に維持される。
【0040】
ブッシュ7は、人手によって容易に、上壁部21に係合装着可能であると共に上壁部21から離脱可能である。
これにより、乗り物用シートの組み立てが容易であり、生産性が向上する。
また、マット取付構造TKにおいて、ブッシュ7のシートバックフレームFR2の上壁部21に対する離脱は、ブッシュ7の回動及び直動という二つの異なる移動態様を含む一連の動作によって行われる。そのため、上壁部21に取り付けられたブッシュ7に対し、一方向の力が付与されただけではブッシュ7は上壁部21から離脱しない。
これにより、マット取付構造TKは、外力に対する高い耐性を有する。
【0041】
また、ガイドワイヤ6の太さ、上壁部21に対する配置角度、及びマット5の前後動に伴うガイドワイヤの移動ストローク、など、マット5及びガイドワイヤ6の異なる仕様に対応した複数種類のブッシュ7を、共通のブッシュ取り付け孔部21Gに着脱可能な形状で作成する。
これにより、シートバックフレームFR2を、異なる仕様の複数種類のマット5に対し共有部材として利用でき、生産性がより向上する。
【0042】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
実施例として説明したマット取付構造TKは、ガイドワイヤ6の上部を腕部6dとし、上壁部21において支持部SL,SRで挿通支持されるものとし、下部に下連結部6cを形成して支持部SBでフレーム側に支持される構造であるが、上下逆であってもよい。
すなわち、ガイドワイヤ6の上部に左右に延びる直状の連結部を形成し支持部SBとしてシートバックフレームFR2の先端側に支持されるものとし、下部に腕部6dを形成して支持部SL,SRによりシートバックフレームFR2の根本側に挿通支持されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ロワパネル部
2H ヘッドレスト支持部
2L 左サイドパネル部
2R 右サイドパネル部
2T アッパーパネル部
2T1 傾斜壁部
2T2 中央壁部
21 上壁部
21a 基部係合孔
21a1 突出部
21a2 第1開口部
21a3 第2開口部
21a4,21a5 縁部
21b 爪係合孔
21b1 縁部
21G ブッシュ取り付け孔部
22 前壁部
5 マット
6 ガイドワイヤ
6a 縦ワイヤ部
6b 上連結部
6c 下連結部
6d 腕部
6d1 傾斜延部
6d2 直状部
7 ブッシュ
71 基部
71a 凹部
72b 第1張り出し部
72c 第2張り出し部
72 トップベース
73 腕部
74 爪部
74a 当接面
75 ガイド部
76 貫通孔
76a 面取り部
77 第1溝部
77a 奥壁
78 第2溝部
61 レール
62 可動レール
CLa 回動軸線
C1 床面
FR1 シートクッションフレーム
FR2 シートバックフレーム
L21,L7 距離
Pa 回動中心
SB,SL,SR 支持部
ST シート(乗り物用シート)
ST1 シートクッション
ST2 シートバック
TK マット取付構造
t21 厚さ
Wa,Wb 幅
θa 角度
図1
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図12