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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】小管内溶解性涙点プラグ挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61F9/007 150
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021500491
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019023323
(87)【国際公開番号】W WO2019183322
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/646,538
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520364738
【氏名又は名称】アルファメッド インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHAMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グバシー、ジェームズ マイケル
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0023837(US,A1)
【文献】特表2011-502649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243763(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065601(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0068286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小管内プラグ挿入器デバイスであって、
(a)長手方向の軸を有する長尺状の本体であって、
開口部を有する挿入器端と、
長手方向において前記挿入器端の反対にある先端と、を有する本体と、
(b)プラグエジェクタであって、
スライダと、
前記スライダの第1端に結合されたロッドと、を備えるプラグエジェクタと、を備え、
前記プラグエジェクタは、前記挿入器端における開口部に隣接する第1位置と前記開口部からより遠い第2位置との間において移動可能であるように構成されており、
ラグ前記本体内に取り付けられ、前記プラグは前記挿入器端における前記開口部に隣接する前記ロッドの第1端に当接する、デバイス。
【請求項2】
前記ロッドは、前記スライダの前記第1端が前記挿入器端に向かって移動するとき、前記プラグを前記挿入器端における前記開口部から押し出すように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記プラグエジェクタは、前記本体の外に突出した第1側面と前記スライダに取り付けられた第2側面とを有する押下可能であるボタンをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ボタンの前記第2側面は、前記スライダの第1アームに対し留められた1対の脚部を備える、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ボタンは、前記スライダの前記第1アームにおけるロック手段により第1位置に実質的にロックされ、前記ロック手段は突出部および凹部を備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ボタンは、その両側に第1側壁と第2側壁とが配置されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記突出部および前記凹部は、前記第1側壁に隣接する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ボタンは、前記ボタンを押下して前記凹部から解放し、次いで前記スライダに沿って前記第2位置に向かって摺動させることによって、前記本体の前記長手方向の軸に沿って、前記第1側壁に隣接する前記ボタンの第1位置から前記第2側壁に隣接する第2位置まで移動するように構成されている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記本体の前記挿入器端に取り付けられたカバープラグに嵌合された取外し可能なキャップをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記本体の前記先端に配置された、涙点を拡張する手段をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記涙点を拡張する前記手段は、微細なチップを備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
キットであって、
請求項1に記載の小管内プラグ挿入器デバイスと、
前記デバイスを収容するためのトレイと、
前記デバイスの使用説明書と、を備えるキット。
【請求項13】
小管内プラグ挿入器デバイスを組み立てる方法であって、
小管内プラグを提供する工程と、
前記小管内プラグを請求項1に係る小管内プラグ挿入器デバイス内に取り付ける工程と、
前記小管内プラグを前記デバイス上の定位置に固定して保持するように、前記挿入器端上にキャップを押し付ける工程と、備える方法。
【請求項14】
前記デバイスを、事前成型されたトレイに滅菌の障害蓋を用いて封止する工程をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トレイを滅菌する工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ドライアイの治療用のデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ症候群は、毎年数百万の人々に影響し、不快さ、赤み、角膜の炎症、およびコンタクトレンズ不耐性を生じる。涙は、通常、各まぶたの内側面にある2つの(上下の)涙の開口または涙点を通過し、次いで、垂直および水平の小管系を通じることにより、鼻腔へと流れ出る。ドライアイ症候群は、涙点閉鎖器を用いて涙点を閉鎖することにより、またはインプラントを小管系へと配置することにより、治療されることが可能である。
【0003】
プラグは、ドライアイを治療するのに用いられることが可能である、極小の生体適合性デバイスである。プラグの位置に応じた2つの一般的な種類のプラグが存在する。表面プラグは涙管の表面に着座し、涙管のちょうど外に見ることができる。その一方では、小管または小管内プラグは、小管(垂直または水平の小管系)の深く内側/内に配置される。
【0004】
現在では、小管内プラグは、1対の鉗子を用いて小管系へと押し込まれ、または挿入される。この処理は、非常に扱いにくい。例えば、眼医者(検眼医、眼科医または別のアイケア専門家など)は、細隙灯顕微鏡検査を行う間、小管プラグを含んだ包装をまず開く必要がある。これに、プラグを手に取り鉗子を用いて小管へと挿入することが続く。プラグは小さいデバイスであるため、プラグが小管へと挿入される前に、眼医者が不注意にプラグを落とすという、起こり得るシナリオが示される。いくつかの眼医者は、処置を行う経験を欠いている場合もあり、プラグを小管へと挿入しようとするときに、プラグの小さいサイズのため、畏縮し得る。
【0005】
特許文献1は、表面プラグを挿入するためのデバイスを開示している。デバイスは、金属ワイヤもしくはプラスチックワイヤまたは曲げられることができる任意の他のワイヤを備える。プラグは、ワイヤのチップに配置される。ワイヤは、ワイヤを定位置に保持するためのバックストップを有するトラフ内に埋め込まれる。接着剤が、ワイヤとワイヤを定位置に保持するためのトラフとの間の接触部の領域に付与される。ボタンが押下されたとき、ボタンはバックストップに近接したワイヤに対し下向きの力を加える。ワイヤの一端がバックストップにて定位置に保持されるため、ボタンにより加えられた下向きの力は、ワイヤに対し張力を生じ、ワイヤを内側に引き込む。プラグ押出器の完全な押下によって、プラグからのワイヤのチップの引き込みを生じ、それによってプラグを解放する。デバイスを伴う欠点は、プラグを保持するためのワイヤの使用を伴うことである。この特許取得済みのデバイスは、表面プラグを配置するように構成されている。そのデバイスは、小管の開口部に入るように構成されていないため、プラグを小管へと押し込むことはない。
【0006】
したがって、鉗子を使用せずに、またはプラグを保持するためのワイヤを備える挿入デバイスを使用せずに、小管内プラグの小管への配置を容易にすることが可能である便利なデバイスの必要性が存在する。理想的には、デバイスには、組込み済みのプラグが提供され、またデバイスは、組込み済みのプラグをデバイスに積むことについて、眼医者に依存することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8591484号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、小管内プラグを小管へと挿入するためのデバイスおよびドライアイの治療用の方法を含む。プラグは、ポリジオキサノンまたは任意の他の適切な材料など、適切な生体適合性材料から作られてよい。便利には、プラグは、デバイスに組込み済みである(または予め取り付けられている)ことが可能である。
【0009】
本発明は、溶解性小管内プラグが組込み済みである単一のデバイスを用いることによって、自然潤滑涙が眼から流れ出るのを一時的に制限するように、プラグを小管へと挿入するための一工程の治療処置を容易にする。これは、眼医者がプラグを別個の包装から取り出す必要を避け、プラグを小管または涙点へと保持し挿入するように鉗子を用いる扱いにくい処理を除去する。有利には、経験が少ないまたは経験がない眼医者でも、溶解性涙点プラグを小管へと容易に挿入することができる。その治療は、ドライアイ症候群と一般に呼ばれる特定の眼の状態、ならびに眼表面疾患および涙が不十分である他の状態のドライアイ構成要素の長期間治療用に用いられることが可能である。
【0010】
1つの実施形態では、小管内プラグ挿入器デバイスは、(a)長手方向の軸を有する長尺状の本体であって、開口部を有する挿入器端と、長手方向において前記挿入器端の反対にある先端と、を有する本体と、(b)プラグエジェクタであって、スライダと、前記スライダの第1端に結合されたロッドと、を備えるプラグインジェクタと、を備え、前記プラグエジェクタは、前記挿入器端における開口部に隣接する第1位置と前記開口部からより遠い第2位置との間において移動可能であるように構成されている。前記プラグは前記本体内に取り付けられ、前記挿入器端における前記開口部に隣接する前記ロッドの第1端に当接する。前記ロッドは、前記スライダの前記第1端が前記挿入器端に向かって移動するとき、前記プラグを前記挿入器端における前記開口部から押し出すように構成されている。前記プラグエジェクタは、前記本体の外に位置した第1(上)側面と前記スライダに取り付けられた第2側面とを有する押下可能であるボタンをさらに備える。前記ボタンは、その両側に第1側壁と第2側壁とが配置されている。前記ボタンの前記第2(下)側面は、前記スライダの第1アームに対し留められた1対の脚部を備える。前記ボタンは、前記スライダの前記第1アームに突出部および凹部を備えるロック手段により第1位置に実質的にロックされる。前記突出部は、前記第1側壁に隣接する。前記ボタンは、前記ボタンを押下して前記凹部から解放し、次いで前記スライドに沿って前記第2位置に向かって摺動させることによって、前記本体の前記長手方向の軸に沿って、前記ボタンの第1位置から前記第2側壁に隣接する第2位置まで移動するように構成されている。前記デバイスは、前記本体の前記挿入器端に取り付けられたカバープラグに嵌合された取外し可能なキャップをさらに備える。前記デバイスはまた、前記本体の前記先端に配置された、涙点を拡張する付属の手段をさらに備える。前記涙点を拡張する前記手段は、微細なチップを備える。
【0011】
別の実施形態では、小管内プラグ挿入器デバイスを備えるキットが提供される。キットは、前記デバイスを収容するためのトレイと、前記デバイスの使用説明書と、をさらに備える。
【0012】
さらに別の実施形態では、小管内プラグ挿入器デバイスを組み立てる方法が開示される。前記方法は、小管内プラグを提供する工程と、前記小管内プラグを前記小管内プラグ挿入器デバイス内に取り付ける工程と、前記小管内プラグを前記デバイス上の定位置に固定して保持するように、前記デバイスの前記挿入器端上にキャップを押し付ける工程と、備える。前記方法はまた、前記デバイスを、事前成型されたトレイに滅菌の障害蓋を用いて封止する工程を備える。前記方法は、前記トレイを滅菌する工程をさらに備える。
【0013】
別の実施形態では、ドライアイを治療する方法であって、本明細書に開示される前記小管内プラグ挿入器デバイスを提供する工程と、前記デバイスの前記挿入器端を患者の小管へと挿入する工程と、前記プラグが前記挿入器端における前記開口部から押し出されるように、前記デバイスの前記プラグエジェクタを作動させる工程と、を備える。前記方法は、前記プラグを挿入する前に、患者の前記涙点を拡張させる工程をさらに備える。前記デバイスの前記先端は、前記プラグをさらに前記小管へと押し込むように用いられることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の1または複数の実施形態に従う小管内プラグ挿入器デバイスの様々なビューを示す図。
図1B】本発明の1または複数の実施形態に従う小管内プラグ挿入器デバイスの様々なビューを示す図。
図1C】本発明の1または複数の実施形態に従う小管内プラグ挿入器デバイスの様々なビューを示す図。
図2A】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うデバイスおよびそのコンポーネントの様々なビューを示す図。
図2B】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うデバイスおよびそのコンポーネントの様々なビューを示す図。
図2C】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うデバイスおよびそのコンポーネントの様々なビューを示す図。
図2D】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うデバイスおよびそのコンポーネントの様々なビューを示す図。
図2E】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うデバイスおよびそのコンポーネントの様々なビューを示す図。
図3】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うスライダを示す図。
図4】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うボタンを示す図。
図5】本発明の一実施形態に係るボタンを有するデバイスの別のビューを示す図。
図6A】本発明の一実施形態に係るキットのビューを示す図。
図6B】本発明の一実施形態に係るキットのビューを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語および表現「発明」、「本発明」、「この発明」および本明細書において用いられる同様の用語および表現は、本主題を任意の単一の実施形態に限定するのではなく、むしろ記載されるすべての可能な実施形態を包含するように意図されるものである。
【0016】
本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、明細書を通して開示される特徴または工程のいずれか「を備える(comprise)」、「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」ことが可能である。本明細書および特許請求の範囲において用いられるように、語「備える(comprising)」(ならびに、「備える(comprise)」および「備える(comprises)」などの備える(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに、「有する(have)」および「有する(has)」などのhavingの任意の形態)、「含む(including)」(ならびに、「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)または「包含する(containing)」(ならびに、「包含する(contains)」および「包含する(contain)」などの包含する(containing)の任意の形態)は、包括的であるか制約がなく、本発明の特徴および工程を含むことが可能であり、本明細書に記載される他の特徴または工程を排除しない。語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「備える(comprising)」に関して用いられるとき、「1つ(one)」を意味し得るが、しかしながら、「1つまたは複数」、「1つ以上」および「1つか2つ以上」の意味とも一致する。本明細書で用いられるように、「から本質的になる(consist essentially of)」は、追加の特徴または工程が請求項に記載の発明の基本的および新規の特性を実質的に代替しない場合のみ以外は、本発明が、特徴または工程を、請求項に記載されるものに加えて含み得ることを意味する。
【0017】
本明細書に記載されるすべての範囲は端点を含み、2つの値の「間」の範囲を記載する端点を含む。「約」、「一般に」、「実質的に」などの用語は、絶対的でないように用語または値を変更するように解される。そうした用語は、それらの用語が当業者により理解されるように変更される状況および用語によって定義される。用語「ほぼ」およびその変形は、大きく定義されるが、当業者により理解されるよう特定されるもの全体である必要はなく、1つの非限定的な実施形態では、ほぼは0.5%~5%内の範囲を参照する。
【0018】
図1A図1Cは、ドライアイの治療用の組込み済みの小管内プラグ(以下、同じものを「プラグ」とも呼ぶ)を挿入するためのデバイス100の実施形態の様々な図を示す。デバイス100は、プラグ140用の単回使用の挿入器ツールとして構成される。プラグ140は、自然潤滑涙が眼から流れ出るのを一時的に制限するように構成される。デバイス100は、さらに、付属の拡張器手段130を有する。デバイス100は、人間工学設計を有し、扱いの容易性のため鉛筆サイズである。特定の実施形態では、デバイス100は、長さが5cm~25cmの間であることが可能である。また、鉛筆と同様に、デバイス100は、ユーザによって、片手の親指と人差し指と中指の側面との間にて保持され操作されることが可能である。軽量の手持ちデバイス100は、使用するのに便利であり、効率と、最終的に患者に渡り得るコストの節約とを容易にする。
【0019】
デバイス100は、ステンレス鋼、ポリカーボネート、プラスチック、それらの任意の組合せ、または別の適切な材料から製造されることが可能である。デバイス100は、長尺状の筐体または本体110を備え、本体は、挿入器端120と、その挿入器端と長手方向において反対にある先端130と、本体内に取り付けられたプラグ押出部200とを有する。プラグ押出部200は、組込み済みの小管内プラグ140を小管へと押し出すべく、付属のスライダ210とボタン300とを有するように構成される。デバイス100は、プラグ140を挿入器端120内に保護するためのカバーまたはキャップ400をさらに備える。
【0020】
長尺状の本体110は、ほぼ長手方向の軸を有する。本体110の第1端はプラグ挿入器端120にて終端し、一方、本体の第2端は拡張器チップ135にて終端する。本体110は、眼医者の手における安定した把持を容易にするように、上昇したリッジ、スコアリング、または粗面を有することが可能である。1つまたは複数の実施形態では、本体110は、六角形の断面を有してよい。他の実施形態では、本体110は、円形または多角形の断面を有してよい。随意では、本体110のボタン部は、細長い溝115を備えてよい。溝115は、ほぼ本体の第1端120からほぼ本体の第2端130まで延びてよい。溝115は、デバイス100が軽量であることを保証し、また製造/組立処理中のプラグ押出器(エジェクタ)200およびプラグ140の挿入を容易にすることも可能である。本体110は、その中心に向かってより大きい直径を有してよく、または一様な直径を有してよい。
【0021】
プラグ140は、生体適合性材料から作られてよい。好ましくは、プラグは、コラーゲンなどの水溶性、溶解性材料から形成されるか、ポリジオキサノンプラグであってよいが、しかしながら、医学的適合性があり適切な材料から作られる他の種類の溶解性プラグを含むことも可能である。いくつかの実施形態では、プラグ140は、不透明であり、形状が円柱である。プラグ140は、涙の流れを遮るように、小管内にぴったりと嵌合するように設計される。大半の患者の涙点径は、直径が約0.4mm~0.5mmであるため、典型的なプラグは、直径が同様に約0.4mm~約0.5mmの間の範囲である。その結果、プラグが挿入されると、涙は眼の表面に長期間留まることが可能となり、それによって眼の自然潤滑を保証する。結果として、眼は潤ったまま、また快適なままとなる。
【0022】
本体の第1端120は、プラグを小管へと挿入するように構成されている。プラグ挿入器端120は、挿入器チップ125を備える。挿入器チップ125は、プラグ140を堅く保持するように構成される。1つの非限定的な実施形態では、図2A図2Dに示されるように、挿入器チップ125は「圧着」タイプの設計を有する。例えば、挿入器チップ125は、ほぼサイロ形または円錐形部125Aと、内側に向かってテーパーを有するチャネル125Bと、開口部127とを含む。チャネル125Bは、プラグ140の外面に対する密嵌を提供し、プラグ140が開口部127から押し出されるまで、プラグ140を摩擦により保持するように構成される。開口部127の直径は、プラグ140の直径にほぼ一致するように調節されてよい。
【0023】
図1Aおよび図1Cに示されるように、デバイス110は、カバーまたはキャップ400をさらに備える。キャップ400は、プラグ140を挿入器チップ125にて保護する。キャップ400は、プラグおよび挿入器チップ125を収容するためのドーム形筐体410と開口部420とを有する。キャップ400は、ポリカーボネートポリマーまたは任意の他の適切な材料から作られてよい。キャップ400は、挿入器チップ125にスナップするように構成される。特定の実施形態では、キャップは、プラグ140を約25.4μm(約1000分の1インチ)まで押し付けるための押付手段を備える。
【0024】
プラグ押出部200の断面図は、図1Cに示される。プラグ押出部200は、付属のスライダ210と押出手段300とを備える。スライダ210は、本体110の長手方向の溝115の中に取り付けられている。スライダ210は、第1端における開口部210Dによって分離された第1アーム210Aおよび210Bを有する。アーム210A,210Bは、テーパーを有する第2端210Cにて、ともに結合される。スライダ210は、曲がるように構成される(すなわち、硬質材料からは作られない)。スライダの2つのアーム210A,210Bは、デバイス110の組立中に本体110へと挿入されるとき、スライダの中心に向かって曲がることが可能である。アーム210A,210Bは、スライダが本体110内に挿入されると、アーム210A,210Bの当初の位置に戻って曲がるように(中心から離れるように)構成される。
【0025】
プラグ押出器200は、プランジャまたはロッド220をさらに備える。ロッド220の第1端230は、スライダの第2端210Cに取り付けられている。ロッド220の反対にある端部240は、チャネル125B内にて、プラグ140の第1端に当接するように(図1Cに示されるように)構成されている。有利には、ロッド220は、ロッド220がチャネル125B内に嵌合することが可能であるように、精密成型される。プラグ140の第2端は、挿入器チップの開口部127から出てわずかに延びるように構成されている。
【0026】
プラグ押出器200は、押出器手段300をさらに備える。図4および図5にさらに示されるように、押出器手段300は、ボタン310、またはレバーなどの任意の他の適切な機構を備えることが可能である。ボタン310は、本体110の上部分に置かれ、任意の適切な形状を有するように構成されることが可能である。1つの実施形態では、ボタンの底部は、1対の脚部320を備える。脚部320は、スロット215を通じてスライダの第1アーム210Aに対し留められる。ボタンの上昇した部分330は、本体の上部分から外に突出する。上昇した部分330は、安定した把持を容易にするためのリッジまたは溝を有することが可能である。ボタン310は、本体110の上部分におけるチャネル110B内に位置することが可能である。チャネル110Bは、その両側に側壁110B’および110B”が配置される。ボタン310は、第1アーム210Aの突出部250および凹部150などのロック手段の相互作用によって、側壁110B”により第1位置にロックされる。ボタン310は、初めは定位置に押し付けられている。ボタン310を解放するため、ボタン310は、突出部250を凹部150から除くように押下されることが可能であり、次いで、ボタン310は、第1位置から、反対にある側壁110B’に近い第2位置まで、またはチャネル110B内における第1位置と第2位置との間の任意の位置まで移動することが可能である。
【0027】
使用時、眼医者は、ボタンをロック位置から解放するように、ボタンの頂部/上昇した部分330を徐々に押下することにより、プラグ押出器200を作動させることが可能である。ボタン330の頂部を押すことによって、ボタンの底部320が、第1スライダアーム210Bを第2スライダアーム210Bに向けて押し進める。ボタン300は、次いで、本体の軸に沿って、側壁110B”に沿った第1位置から側壁110B’に沿った第2位置まで移動することが可能である。これによって、スライダアーム210Aおよび210Bとロッド220とが、挿入器端における開口部127に向かって前方に摺動する。ロッド220は、プラグ140を、チャネル125Bを通じて移動させ、開口部127から出て小管へと押し出す。ロッドのチップ220Aは、開口部127と比較してわずかに小さい直径を有する。図5に示されるように、プラグ140が押し出された後、ロッドのチップ220Aの小さい部分は、開口部127を通じて突出してよい。
【0028】
ロッド220は、引込式に構成され、ボタン300が後方に押されたとき(すなわち、ボタンが挿入器チップから離れて移動したとき)、本体110内に戻るように摺動することが可能である。挿入器端は、襟状部を備えることも可能である。襟上部は、堅い把持を容易にするように、衝撃を和らげられてよい。
【0029】
本体の先端130は、長手方向において反対にある挿入器端120に位置する。図1Aおよび図2Eに示されるように、先端130は、非常に小さく微細なチップ/点135へとテーパーを有することが可能である。チップ135は、本体110の長手方向の軸に対して傾いてよい。例えば、チップ135は、上方または下方に向くように構成されてよい。特定の実施形態では、チップは、本体110の長手方向の軸とほぼ一致する長手方向の軸を有することも可能である。
【0030】
いくつかの例では、患者の涙点は、プラグを挿入する前に拡張される必要があり得る。拡張は、鉗子または他の専門化した拡張ツールの使用を含んでよい。これは、複雑さ/扱いにくさと治療処置の費用とを増す。
【0031】
チップ135は、涙点を拡張するように便利に用いられることが可能である。拡張器チップ135のサイズおよび形状は、カスタマイズされることが可能である。例として、拡張器チップ135のサイズは、ほぼ涙点径にカスタマイズされることが可能である。したがって、デバイス100は、涙点を拡張する手段により、組込み済みのプラグを涙点へと挿入する手段を組み合わせる。便利には、チップ135は、デバイスによって小管へと押し出された後に、挿入されたプラグをさらに小管へと押し込むように構成されることも可能である。
【0032】
しかしながら、拡張器と挿入器との組合せは治療処置中の複数のデバイスの無駄遣いを除去するが、拡張器チップを備えないデバイスもまた本発明の範囲内であることが理解される。
【0033】
本発明は、図面に示されるデバイス100の特定の設計に限定されず、形状、サイズおよび構成における変形は本発明の範囲内である。
1つまたは複数の実施形態では、デバイス100は、複数の色にて製造されてよい。各色は、組込み済みのプラグの特定のサイズまたは直径に関連してよい。さらに別の実施形態では、デバイス100は、プラグ挿入器端120に近接したプラグについての直径情報を含んでよい。他の実施形態では、直径情報は、色分けされたシステムと結合されてよい。
【0034】
デバイス100は、別個にラッピングされた滅菌または非滅菌包装にて販売されてよい。滅菌包装として販売されるとき、デバイス100は、封止トレイであって各々が組込み済みのプラグ140を有する単一デバイス100を固定して保持する2つの封止トレイを有する滅菌キットとして販売されてよい。トレイは、障害(バリヤ)蓋を有することが可能である。トレイおよびデバイス100は、エチレンオキシドなどの適切な薬剤を用いて事前に滅菌されることが可能である。エチレンオキシド滅菌は、封止チャンバ内の真空下においてトレイおよびデバイス100をエチレンオキシド気体に晒すことを含む。滅菌は、安全かつ滅菌のデバイス100がアイケアの専門家に提供されることを保証することが可能である。
【0035】
1つの特定の実施形態では、図6Aおよび図6Bに示されるように、キット500は、その各々が、プラグが組込み済みであるデバイス100を有する1つまたは複数の滅菌トレイ510と、使用説明書(“IFU”)とを備える。1つまたは複数のトレイおよびIFUは、小袋に真空封止されることが可能である。次いで、小袋は、箱などの容器の中に配置されることが可能である。1つまたは複数のトレイおよび箱は、その表面に、製品のしるし、およびプラグのサイズなどの他の必要な情報を含むことが可能である。
【0036】
一実施形態によれば、デバイスを組み立てる方法が開示される。その方法は、小管内プラグ(プラグ140など)を提供することを含む。プラグは、封止された小袋に提供され得る滅菌または非滅菌プラグであってよい。方法は、本明細書に開示されるデバイス100の本体110をさらに提供することを含む。方法は、小袋からプラグを取り出すことと、プラグを挿入器チップ125のチャネル125Bに取り付けることとを含む。これに、ロッドのチップがプラグの一端に当接するように、またプラグの他端が挿入器チップの開口部から出て突出するように、本体110に対しプラグ押出器200にスナップすることが続いてよい。次いで、方法は、プラグをデバイス100上の定位置に保持するように、キャップを挿入器チップに対し押し付けることを含む。次いで、デバイス100は、滅菌の障害蓋により事前成型されたトレイ/容器に封止される。トレイおよびデバイス100は、エチレンオキシドを用いて滅菌されることが可能である。
【0037】
別の実施形態では、ドライアイを治療する方法が本明細書に開示される。その方法は、本明細書に開示されるように、小管内プラグが組込み済みであるデバイス100を提供することを含む。方法は、挿入器チップからの保護キャップの取外しを含む。次いで、眼医者は、挿入器チップが患者の涙点に向くようにデバイスを位置決めすることが可能である。次いで、挿入器チップは、小管へと挿入される。これに、ボタンを徐々に押下し、次いで、挿入器チップに向かってボタンを前方に動かすことが続く。これによって、ロッドが、プラグを挿入器チップにおける開口部から小管へと押し出す。眼医者は、プラグを小管内の所望の位置へとさらに押し込むように、デバイス100の拡張器端を用いることが可能である。
【0038】
多くの患者では、0.5mmの涙点径が一般的である。いくつかの実施形態では、眼医者は、挿入器チップを小管へと挿入する前に涙点を拡張するように、デバイス100の拡張器端を用いてよい。これは、より容易なプラグの挿入を可能とする。しかしながら、特定の実施形態では、拡張工程は随意であってよい。涙点が拡張されると、医者は、組込み済みのプラグを小管へと挿入するために挿入器端が患者の涙点に向くよう、デバイスを180°回転させることが可能である。
【0039】
本発明の実施形態は、プラグがすでにデバイスに組込み済みであるため、単一工程の挿入処理を含む。デバイス100は、便利には、プラグを解放するための任意のワイヤの使用を含まない。さらに、挿入器のアセンブリは、任意の接着剤またはエポキシを含まない。プラグおよびキャップなどの様々なコンポーネントは、それを充分に機能させる挿入器とするように、ともにスナップすることも可能である。便利には、デバイス100は、様々なサイズのプラグを収容するように構成されることが可能である。
【0040】
デバイス100は、アイケア医師ならびに眼科医、検眼医および他の医療従事者などの専門家により用いられてよい。デバイス100は、処方を必要とし得る医療デバイスである。本発明の1つまたは複数の実施形態は、眼医者が、一元または単一のデバイスを利用して涙点を拡張し涙点プラグを挿入する機能を行うことを可能とする。デバイスは手持ちであってよく、また眼医者により片手を用いて操作されることができてよく、それによって便利さと効率を保証する。単一装置の利用は、最終的に患者に渡り得るコストの節約にもなり得る。
【0041】
本発明は、好ましい実施形態に関連して記載されている一方、その好ましい実施形態は本発明の範囲を説明された特定の形態に限定することを意図するものではないが、反対に、好ましい実施形態は、本発明の趣旨および範囲内であり得るように、そうした代替、修正および均等に及ぶことが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6A
図6B