(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】高周波インピーダンス検知を伴うマイクロ波アブレーションプローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61B18/18 100
(21)【出願番号】P 2021509858
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019047062
(87)【国際公開番号】W WO2020041195
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ホン
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-037775(JP,A)
【文献】特開2001-037776(JP,A)
【文献】特開2012-161603(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波アブレーションシステムであって、
長尺状マイクロ波アブレーションプローブであって、
マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性である放射窓を備えたプローブ本体と、
前記プローブ本体内のアンテナであって、前記プローブ本体の先端部分にマイクロ波エネルギーの放出のための放射部分を有し、前記放射部分が前記放射窓と位置合せされている、アンテナと、
少なくとも1つの導体を備えた、前記アンテナに接続された、前記プローブ本体内のケーブルと、
前記プローブ本体に沿って位置する第1電極と、
前記プローブ本体に沿って位置する第2電極と、
を備える長尺状マイクロ波アブレーションプローブと、
前記ケーブルを介して前記アンテナに接続されたマイクロ波エネルギー源と、
第1リードにより前記第1電極に接続されるとともに第2リードにより前記第2電極に接続された高周波エネルギー源と、
前記第1電極及び前記第2電極に接続された検知回路であって、組織のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成され、前記システムが、組織の前記インピーダンスを使用してマイクロ波アブレーションに起因する組織の変化を検出するように構成されている、検知回路と、
を備え、
前記第1電極が、前記放射窓に対して先端側で前記プローブ本体に沿って位置する第1先端側電極であり、前記第2電極が、前記放射窓に対して基端側で前記プローブ本体に沿って位置する第1基端側電極であり、
前記第1基端側電極が、前記プローブ本体の周囲に配置された前記長尺状マイクロ波アブレーションプローブのチョークである、マイクロ波アブレーションシステム。
【請求項2】
前記検知回路が、前記第1電極と前記第2電極との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記放射窓に対して先端側で前記プローブ本体に沿って位置する第2先端側電極をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記放射窓に対して基端側で前記プローブ本体に沿って位置する第2基端側電極をさらに備える、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記検知回路が、前記第1先端側電極と前記第1基端側電極との間の第2双極インピーダンスと、前記第1先端側電極と前記第2基端側電極との間の第3双極インピーダンスとを検知するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1電極又は前記第2電極が、前記プローブ本体の外面に位置するバンドを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記プローブ本体が、前記放射窓を画定するマイクロ波遮蔽構造体をさらに備え、前記第1リード及び前記第2リードが、前記アンテナから電気的に隔離されるとともに、
前記マイクロ波遮蔽構造体の下、又は
前記マイクロ波遮蔽構造体の外側且つ絶縁層の下、
にあるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記放射窓に対して基端側で前記プローブ本体に沿って位置する第2基端側電極をさらに備える、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項9】
前記プローブ本体が、前記放射窓を画定するマイクロ波遮蔽構造体をさらに備え、前記第1リード及び前記第2リードが、前記アンテナから電気的に隔離されるとともに、
第1リード及び前記第2リードが、前記マイクロ波遮蔽構造体の外面に導電性トレースを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、高周波インピーダンス検知を伴うマイクロ波アブレーションプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波アブレーション(MWA)は、肝臓、腎臓及び肺における軟組織病変部を含む多くの場所における身体処置のための低侵襲エネルギーモダリティである。マイクロ波アブレーションプローブは、モノポール又はダイポールアンテナ等のアンテナを使用して、加熱するために組織内にマイクロ波エネルギーを放射する。加熱のためにイオン移動及び摩擦に依存する高周波アブレーションとは異なり、マイクロ波アブレーションエネルギーは、水分子をその分子の極性により回転させ、ヒステリシスによって熱を発生させる。マイクロ波アブレーションエネルギーは、典型的には、500MHz~10GHz等の工業、科学及び医療(ISM)高周波帯で動作し、より具体的には、945MHz又は2.45GHzで動作することができる。マイクロ波アブレーションは、高速加熱等の利点を有し、プローブがより大きい焼灼巣を作成するように高温で動作するのを可能にし、過去10年間にわたり、組織アブレーションに関して高周波アブレーション(RFA)と比較して市場占有率を獲得してきた。
【発明の概要】
【0003】
開示する技術のいくつかの例は、長尺状マイクロ波アブレーションプローブを有するマイクロ波アブレーションシステムを提供する。いくつかの例では、アブレーションプローブは、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性である放射窓を備えたプローブ本体を含む。アブレーションプローブは、プローブ本体内のアンテナも含み、アンテナは、プローブ本体の先端部分にマイクロ波エネルギーの放出のための放射部分を有し、放射部分は、放射窓と位置合せされている。アブレーションプローブは、アンテナに接続されたプローブ本体内のケーブルをさらに含み、ケーブルは、少なくとも1つの導体を有する。アブレーションプローブは、放射窓に対して先端側でプローブ本体に沿って位置する第1先端側電極と、放射窓に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第1基端側電極と、ケーブルを介してアンテナに接続されたマイクロ波エネルギー源とをさらに含む。開示する技術は、第1先端側リードにより第1先端側電極に接続されるとともに第1基端側リードにより第1基端側電極に接続された高周波エネルギー源をさらに含む。本システムは、第1先端側電極及び第1基端側電極に接続された検知回路をさらに含む。検知回路は、組織のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成されている。
【0004】
本技術のいくつかの例では、検知回路は、第1先端側電極と身体の外面上の参照パッチとの間の第1インピーダンスと、第1基端側電極と参照パッチとの間の第2インピーダンスとを検知するように構成されている。本技術のいくつかの例では、検知回路は、第1先端側電極と第1基端側電極との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。本技術のいくつかの例では、システムは、放射窓に対して先端側でプローブ本体に沿って位置する第2先端側電極をさらに含む。本技術のいくつかの例では、検知回路は、第1先端側電極と第2先端側電極との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。本技術のいくつかの例では、システムは、放射窓に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第2基端側電極を含む。本技術のいくつかの例では、検知回路は、第1基端側電極と第2基端側電極との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。本技術のいくつかの例では、検知回路は、第1先端側電極と第1基端側電極との間の第2双極インピーダンスと、第1先端側電極と第2基端側電極との間の第3双極インピーダンスとを検知するように構成されている。本技術のいくつかの例では、第1基端側電極は、プローブ本体の周囲に配置されたマイクロ波アブレーションプローブのチョークである。本技術のいくつかの例では、第1先端側電極又は第1基端側電極は、プローブ本体の外面に位置するバンドを備える。本技術のいくつかの例では、プローブ本体は、放射窓を画定するマイクロ波遮蔽構造体をさらに備え、第1先端側リード及び第1基端側リードは、アンテナから電気的に隔離され、第1先端側リード及び第1基端側リードは、マイクロ波遮蔽構造体の下にあり、マイクロ波遮蔽構造体の外側且つ絶縁層の下にあり、又はマイクロ波遮蔽構造体の外面の上の導電性トレースであるように構成されている。
【0005】
開示する技術のいくつかのさらなる例は、長尺状マイクロ波アブレーションプローブを有するマイクロ波アブレーションシステムを提供し、マイクロ波アブレーションプローブは、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性である放射窓を備えたプローブ本体と、プローブ本体内のアンテナであって、プローブ本体の先端部分にマイクロ波エネルギーの放出のための放射部分を有し、放射部分が放射窓と位置合せされている、アンテナと、少なくとも1つの導体を備えた、アンテナに接続された、プローブ本体内のケーブルと、プローブ本体に沿って位置する第1電極と、プローブ本体に沿って位置する第2電極とを備える。開示する例は、ケーブルを介してアンテナに接続されたマイクロ波エネルギー源と、第1リードにより第1電極に接続されるとともに第2リードにより第2電極に接続された高周波エネルギー源と、第1電極及び第2電極に接続された検知回路であって、組織のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成され、本システムが、組織のインピーダンスを使用してマイクロ波アブレーションに起因する組織の変化を検出するように構成されている、検知回路とをさらに含む。
【0006】
本技術のいくつかの例では、第1電極は、放射窓に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第1基端側電極であり、第2電極は、放射窓に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第2基端側電極である。本技術のいくつかの例では、第1電極は、放射窓に対して先端側でプローブ本体に沿って位置する第1先端側電極であり、第2電極は、放射窓に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第1基端側電極である。
【0007】
開示する技術のいくつかのさらなる例は、マイクロ波アブレーションの方法を提供する。本方法は、マイクロ波アブレーションシステムを提供するステップを含み、このステップは、プローブ本体を有するプローブと、マイクロ波エネルギーの放出のための放射部分を有するアンテナであって、放射部分が、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性である窓部分と位置合せされる、アンテナと、窓部分に対して先端側でプローブ本体に沿って位置する第1先端側電極と、窓部分に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第1基端側電極とを提供することを含む。本方法は、放射部分にマイクロ波エネルギーを送達するステップと、第1先端側電極及び第1基端側電極に高周波エネルギーを送達するステップと、第1先端側電極に且つ第1基端側電極に接続された検知回路を使用して組織のインピーダンスを測定するステップとをさらに含む。本方法は、検知回路によって測定された組織のインピーダンスを使用して組織変化を決定するステップをさらに含む。
【0008】
本技術のいくつかの例は、第1時点で第1インピーダンスをサンプリングし、第2時点で第2インピーダンスをサンプリングし、第1インピーダンスを第2インピーダンスと比較するステップをさらに含む。本技術のいくつかの例は、第1インピーダンスの第2インピーダンスとの比較に基づきマイクロ波アブレーション処置エンドポイントを決定するステップをさらに含む。本技術のいくつかの例は、第1インピーダンスの第2インピーダンスとの比較に基づき治療パラメータを調整するステップをさらに含み、治療パラメータは、マイクロ波エネルギー源に提供される電力、又はアブレーション処置の時間長である。本技術のいくつかの例は、第1先端側電極と身体の外面上の参照パッチとの間の第1インピーダンスを測定し、第1基端側電極と参照パッチとの間の第2インピーダンスを測定するステップをさらに含む。本技術のいくつかの例は、第1先端側電極と第1基端側電極との間のインピーダンスを測定するステップをさらに含む。
【0009】
この概要は、本出願の教示のうちのいくつかの概説であって、本主題の排他的な又は網羅的な扱いであるようには意図されていない。さらなる詳細は、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲に記載されている。他の態様は、当業者であれば、以下の詳細な説明を読み且つ理解し、その一部を形成する図面を見ることで明らかであり、詳細な説明及び図面の各々は限定する意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションシステムの概略図。
【
図2】
図1のマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図3】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図4】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図5】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図6】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図7】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図8】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【
図9】いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態は、さまざまな変更形態及び代替形態が可能であるが、実施形態の詳細は、例及び図面により示されており、そうした詳細について詳しく説明する。しかしながら、本発明の範囲は、記載した特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。反対に、本発明の趣旨及び範囲内にある変更形態、均等物及び代替形態を包含することが意図されている。
【0012】
通常、医師は、アブレーションを制御するために電力及び時間を用いる。しかしながら、これは、実際の組織アブレーションプロセスを反映しない。高周波アブレーションでは、組織が水分を失い壊死するに従い、組織のインピーダンスは上昇する。高周波エネルギーは、高インピーダンスの組織に浸透することができず、それにより、高周波アブレーションで作成することができる焼灼巣のサイズに対する物理的限界がもたらされる。マイクロ波アブレーションでは、組織が水分を失っているか又は壊死した場合であってもマイクロ波エネルギーは伝播することができるため、こうした物理的限界はない。組織評価システムを備えたマイクロ波アブレーションプローブは、マイクロ波アブレーションの能力をより十分に利用することができる。
【0013】
本明細書に記載する技術は、マイクロ波アブレーションプローブのシャフトに1つ又は複数のインピーダンス検知電極を設ける。これらの電極により、電極の間で、又は電極と患者の身体上の接地パッドとの間で、高周波インピーダンスを測定することができる。このインピーダンス測定を使用して、マイクロ波アブレーション中に組織変化が監視され、マイクロ波アブレーション中のマイクロ波エネルギー送達が制御される。インピーダンスの変化は、単極検知の場合は個々の電極の周囲の、又は双極高周波検知の場合は2つの電極の間の組織の変化を表す。本明細書で使用する双極インピーダンスは、双極高周波検知を使用して測定されるインピーダンスを指し、単極インピーダンスは、単極高周波検知を使用して測定されるインピーダンスを指す。
【0014】
測定されたインピーダンス及び経時的なインピーダンスの変化により、本システムは、焼灼されている組織内の実際の組織変化に基づいてマイクロ波エネルギー送達を調整することができる。いくつかの例では、本システムは、マイクロ波アブレーション処置中にインピーダンスを監視し、測定されたインピーダンスが閾値測定値に達するとアブレーションを中断するように構成することができる。別法として、計算されたインピーダンスの変化が閾値に達したときに、処置のエンドポイントを決定することができる。
【0015】
開示する技術のいくつかの例では、マイクロ波アブレーションシステムは、マイクロ波エネルギーの放出のための放射部分を備えたマイクロ波アンテナを有するプローブを含む。
図1を参照すると、マイクロ波アブレーションシステム100は、基端部分112及び先端部分114を備えたプローブ本体111を有する長尺状マイクロ波アブレーションプローブ101を含む。プローブ101は、種々の長さで提供することができ、形状が長尺状である。プローブ本体111の長さは、その直径よりはるかに大きい。たとえば、長さは、直径の10倍以上、直径の50倍以上、直径の100倍以上、又は直径の200倍以上であり得る。長さは、いくつかの例では、少なくとも5センチメートル又は少なくとも10センチメートルであり得る。いくつかの例では、プローブ本体111は、ステンレス鋼で構成される。別法として、プローブ本体は、仏国コロンブに本社があるアルケマグループによって製造されている編組ペバックス(PEBAX)(登録商標)エラストマで構成することができる。ペバックス(PEBAX)(登録商標)エラストマは、硬質ポリアミドブロックと軟質ポリエーテルブロックとから構成されたブロックコポリマである。
【0016】
いくつかの例では、プローブ本体111の外径は、少なくとも約18ゲージ(1.02ミリメートル)、少なくとも約17ゲージ(1.15ミリメートル)又は少なくとも約16ゲージ(1.29ミリメートル)である。いくつかの例では、プローブ本体111の外径は、最大で約12ゲージ(2.01ミリメートル)、最大で約13ゲージ(1.83ミリメートル)又は最大で約14ゲージ(1.63ミリメートル)である。
【0017】
マイクロ波アブレーションプローブ101は、ハンドルと、制御システム169に接続するためのケーブル(図示せず)とをさらに含むことができる。プローブ101は、マイクロ波エネルギーに対して少なくとも部分的に透過性である窓115をさらに含む。窓115は、たとえば、フルオロポリマ、ウレタン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用して、構成することができる。
図1の例では、窓115は、プローブ本体111においてプローブ101の基端部112と先端部114との間に位置する。プローブ本体111の窓部分115の長さは、マイクロ波アブレーションプローブ101に使用される特定のアンテナに基づく。いくつかの例では、長さは、少なくとも約7ミリメートル、少なくとも約10ミリメートル又は少なくとも約13ミリメートルである。いくつかの例では、長さは、最大で約30ミリメートル又は最大で約20ミリメートルである。1つの例では、長さは約15ミリメートルである。
【0018】
本技術のいくつかの例では、プローブ101は、トロカールチップであり得る先端チップ117を有する。
本明細書で使用する基端及び先端という語は、2つの物体の間の空間的関係を記述する相対的な用語である。先端側であると記載される物体は、その先端側物体が先端部114の方に近いような空間的関係に位置決めされている。基端側であると記載される物体は、その基端側物体が基端部112の方に近いような空間的関係で位置決めされている。
【0019】
プローブ101は、プローブ本体111内にマイクロ波アンテナ103を含む。いくつかの例では、マイクロ波アンテナ103は、単極マイクロ波アブレーションアンテナである。マイクロ波アンテナ103は、放射部分105を有する。放射部分105は、放射部分105から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分115を通って焼灼すべき組織183内に進むことができるように、プローブ本体111の窓部分115と位置合せされている。放射部分105は、概して、プローブ本体111の先端部分114の近くに位置している。
【0020】
プローブ101は、放射窓115に対して先端側である空間的関係でプローブ本体111に沿って位置する第1先端側電極131をさらに含む。プローブ101はまた、放射窓115に対して基端側である空間的関係でプローブ本体111に沿って位置する第1基端側電極141、及び、第1基端側電極141に対して基端側であるとともに放射窓115に対して基端側である空間的関係でプローブ本体111に沿って位置する第2基端側電極143もまた含む。
【0021】
本システムは、第1先端側リード136によって第1先端側電極131に接続されるとともに、第1基端側リード146によって第1基端側電極141に接続された、高周波エネルギー源153をさらに含む。第1先端側電極131及び第1基端側電極141に、検知回路153が接続されている。検知回路153は、組織181のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成されている。本システムは、第2基端側電極143に接続された第2先端側リード148をさらに含み得、第2先端側リード148もまた検知回路153に接続されている。
【0022】
図2を参照すると、プローブ101は、プローブ本体111内にケーブル218をさらに含む。ケーブル218は、少なくとも約0.5ミリメートル、少なくとも約0.7ミリメートル、最大で約2ミリメートル、最大で約5ミリメートル、約0.5~約5ミリメートルの範囲、又は約0.7~約2ミリメートルの範囲の外径を有する同軸ケーブルであり得る。ケーブル218は、アリゾナ州スコッツデールのマイクロコアックス(Micro-Coax)、カーライル・インターコネクト・テクノロジーズ社(Carlisle Interconnect Technologies Company)から品番UT-034として市販されている、約0.864ミリメートルの外径を有する同軸ケーブルであり得る。ケーブル218は、内部導体221であり得る少なくとも1本の導体を有する。ケーブル218は、誘電体232及び外部導体234を含む。
【0023】
ケーブル218は、アンテナ103に接続されている。ケーブル218は、アンテナ103をマイクロ波エネルギー源151に接続する。いくつかの例では、検知回路153は、第1先端側電極131と身体の外面192上の参照パッチ191との間の第1インピーダンスと、第1基端側電極141と参照パッチ191との間の第2インピーダンスとを検知するように構成されている。いくつかの例では、検知回路153は、第1先端側電極131と第1基端側電極141との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。いくつかの例では、第2基端側電極143が、放射窓115に対して基端側でプローブ本体111に沿って位置している。
【0024】
いくつかの例では、検知回路153は、第1基端側電極141と第2基端側電極143との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。さらなる例では、検知回路153は、第1先端側電極131と第1基端側電極141との間の第2双極インピーダンスと、第1先端側電極131と第2基端側電極143との間の第3双極インピーダンスとを検知するように構成されている。
【0025】
いくつかの例では、高周波エネルギー源153は、第2基端側リード148により第2基端側電極143に接続されている。いくつかの例では、検知回路153は、第1先端側電極131、第1基端側電極141及び第2基端側電極143の各組合せの間の組織181のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成されている。さらなる例では、検知回路153は、参照パッチ191と、第1先端側電極131、第1基端側電極141及び第2基端側電極143の各々との間の組織181のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成されている。プローブ本体111に沿った複数の箇所に検知電極を配置することにより、本システムは、焼灼すべき組織183の複数の部分における患者組織の状態に関する情報を提供することができる。
【0026】
放射線源からの放射線の強度が放射線源からの距離の二乗に反比例すると述べる、放射線強度の逆二乗則により、放射窓115の近くの組織は、相対的に大量のマイクロ波エネルギーを受ける。第1先端側電極131と第1基端側電極141との間の経時的なインピーダンス変化は、第1先端側電極131と第2基端側電極143との間の経時的なインピーダンス変化とは異なる可能性があり、後者は、第1基端側電極141と第2基端側電極143との間の経時的なインピーダンス変化とは異なる可能性がある。同様に、プローブ本体111に沿ったさまざまな電極と参照パッチ191との間の単極高周波検知を使用して測定される経時的なインピーダンス変化も異なる可能性がある。インピーダンス変化のこれらの複数の測定値により、本システムに、アブレーション処置中の患者組織及び組織壊死の変化のより細かい像が与えられる。
【0027】
図2は、
図1のマイクロ波アブレーションプローブの概略断面図である。いくつかの例では、第1先端側電極131、第1基端側電極141及び第2基端側電極143は、各々、プローブ本体111の外面275に位置するバンドを備える。いくつかの例では、これらのバンドは、プローブ本体111の周囲に延在する。電極は、約0.5ミリメートル~5ミリメートルの長さの白金マーカバンドであり得る。いくつかの例では、バンドの長さは約1ミリメートルであり得る。マイクロ波アブレーション処置中、電極131、141及び143の各々は、患者組織181の内側に存在する。いくつかの例では、マイクロ波アブレーション処置中、電極131、141、143の各々は、焼灼することが望まれる組織183の塊の内側に存在する。
【0028】
図3~
図7は、
図1のシステムで使用することができるマイクロ波アブレーションプローブの代替例を提供する。
図3は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ301の概略断面図である。プローブ301は、先端チップ317を有するプローブ本体311を備える。プローブ301は、先端部314及び基端部312を有する。同軸ケーブルであり得るケーブル318は、内部導体321及び外部導体334と、それら導体321、334を絶縁する誘電体332とを備える。
【0029】
プローブ301は、プローブ本体311内にマイクロ波アンテナ303を含む。マイクロ波アンテナ303は、放射部分305を有する。放射部分305は、放射部分305から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分315を通って焼灼すべき組織内に進むことができるように、プローブ本体311の窓部分315と位置合せされている。放射部分305は、概して、プローブ本体311の先端部分314の近くに位置している。
【0030】
プローブ301は、放射窓315に対して先端側である空間的関係でプローブ本体311に沿って位置する第1先端側電極331をさらに含む。プローブ301は、放射窓315に対して基端側である空間的関係でプローブ本体311に沿って位置する第1基端側電極341、及び、第1基端側電極341に対して基端側であるとともに放射窓315に対して基端側である空間的関係でプローブ本体311に沿って位置する第2基端側電極343もまた含む。
【0031】
マイクロ波アブレーションプローブ301のこの代替例では、第2基端側電極343は、外部導体334への導電経路351によりチョークとしても作用する。第2電極343は、プローブ本体311の周囲に配置されている。第2電極343は、導電経路351により外部導体334に電気的に接続されているため、マイクロ波エネルギー源に対して短絡を提供するチョークとして作用する。チョークは、マイクロ波エネルギーの逆伝播を防止し、これにより、プローブ本体311に沿った基端部312における望ましくない加熱が防止される。チョークの存在により、チョークが存在しなかった場合と比較して、アブレーション焼灼巣の形状をより丸い形状とすることも可能である。
【0032】
図3の例では、第1先端側電極331は、第1先端側リード336により検知回路に接続されている。第1基端側電極341は、第1基端側リード346により検知回路に接続されている。第2基端側電極343は、第2基端側リード348により検知回路に接続されている。電極331、341及び343の任意の組合せの間で、第1時点と第1時点より後の第2時点とにおいて、双極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0033】
電極343等、マイクロ波エネルギー源に対して短絡する電極は、チョーク及びインピーダンスセンサとして同時に機能しない。1つの方法は、電極の機能を、システムがアブレーションを実施している間はチョークとして作用し、アブレーションの前、アブレーションの後、又はアブレーションの前後の両方ではインピーダンスセンサとして作用するように交互にするというものである。いくつかの例では、電極は、医療処置中の時間の大部分にわたり、チョーク機能を実施する。別法として、検知及びマイクロ波アブレーション回路においてフィルタリングを使用して、干渉を回避することができる。
【0034】
これらの電極の各組合せに対して、患者組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。
図2の例と同様に、電極331、341及び343と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0035】
図8に示す代替例では、
図3のシステムは、先端側電極がなく、第1電極841及び第2電極843を備えたシステムとして実装することができる。
図8の例では、第1電極841は第1基端側電極であり、第2電極843は第2基端側電極である。3つ以上の基端側電極を設けることも可能である。
【0036】
この例では、先端側電極及び対応する先端側リードは不要である。第1基端側電極841と第2基端側電極843との間で、双極高周波インピーダンスを測定することができる。組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。電極841と患者の皮膚の上に位置する参照パッチ191(
図1を参照)との間、及び電極843と参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスもまた測定することができる。第2基端側電極843は、外部導体334への導電経路851によりチョークとしても作用する。
図3の例と同様に、電極843は、チョーク及びインピーダンスセンサとして同時に機能しない。この制限は、
図3を参照して上に詳述したように克服することができる。
図4は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ401の概略断面図である。プローブ401は、先端チップ417を有するプローブ本体411を備える。プローブ401は、先端部414及び基端部412を有する。同軸ケーブルであり得るケーブル418が、内部導体421及び外部導体434と、それら導体421、434を絶縁する誘電体432とを備える。
【0037】
プローブ401は、プローブ本体411内にマイクロ波アンテナ403を含む。マイクロ波アンテナ403は、放射部分405を有する。放射部分405は、放射部分405から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分415を通って焼灼すべき組織内に進むことができるように、プローブ本体411の窓部分415と位置合せされている。放射部分405は、概して、プローブ本体411の先端部分414の近くに位置している。
【0038】
プローブ401は、放射窓415に対して先端側である空間的関係でプローブ本体411に沿って位置する第1先端側電極431をさらに含む。プローブ401は、放射窓415に対して基端側である空間的関係でプローブ本体411に沿って位置する第1基端側電極441、及び、第1基端側電極441に対して基端側であるとともに放射窓415に対して基端側である空間的関係でプローブ本体411に沿って位置する第2基端側電極443もまた含む。
【0039】
マイクロ波アブレーションプローブ401のこの代替例では、第1基端側電極441は、外部電極434への導電経路451によりチョークとしても作用する。電極441は、プローブ本体411の周囲に配置されている。電極441は、導電経路451により外部電極434に電気的に接続されているため、チョークとして作用する。チョークは、マイクロ波エネルギーの逆伝播を防止し、これにより、プローブ本体411に沿った基端部412における望ましくない加熱が防止される。チョークの存在により、チョークがない場合より、アブレーション焼灼巣の形状をより丸い形状とすることも可能である。
図3の例と同様に、電極441は、チョーク及びインピーダンスセンサとして同時に機能しない。この制限は、
図3を参照して上で詳述したように克服することができる。
【0040】
図4の例では、第1先端側電極431は、第1先端側リード436により検知回路に接続されている。第1基端側電極441は、第1基端側リード446により検知回路に接続されている。第2基端側電極443は、第2基端側リード448により検知回路に接続されている。電極431、441及び443の任意の組合せの間で、第1時点と第1時点より後の第2時点とにおいて、双極高周波インピーダンスを測定することができる。これらの電極の各組合せに対して、患者組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。
図2の例と同様に、電極431、441及び443と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0041】
図5は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ501の概略断面図である。プローブ501は、先端チップ517を有するプローブ本体511を備える。プローブ501は、先端部514及び基端部512を有する。同軸ケーブルであり得るケーブル518が、内部導体521及び外部導体534と、それら導体521、534を絶縁する誘電体532とを備える。
【0042】
プローブ501は、プローブ本体511内にマイクロ波アンテナ503を含む。マイクロ波アンテナ503は、放射部分505を有する。放射部分505は、放射部分505から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分515を通って焼灼すべき組織内に進むことができるように、プローブ本体511の窓部分515と位置合せされている。放射部分505は、概して、プローブ本体511の先端部分514の近くに位置している。
【0043】
プローブ501は、放射窓515に対して先端側である空間的関係でプローブ本体511に沿って位置する第1先端側電極531をさらに含む。プローブ501は、放射窓515に対して基端側である空間的関係でプローブ本体511に沿って位置する第1基端側電極541もまた含む。いくつかの例(図示せず)では、基端側電極541はチョークであり得る。
【0044】
図5の例では、第1先端側電極531は、第1先端側リード536により検知回路に接続されている。第1基端側電極541は、第1基端側リード546により検知回路に接続されている。電極531、541の任意の組合せの間で、第1時点と第1時点より後の第2時点とにおいて、双極高周波インピーダンスを測定することができる。これらの電極の各組合せに対して、患者組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。
図2の例と同様に、電極531、541と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0045】
図6は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ601の概略断面図である。プローブ601は、先端チップ617を有するプローブ本体611を備える。プローブ601は、先端部614及び基端部612を有する。同軸ケーブルであり得るケーブル618が、内部導体621及び外部導体664と、それら導体621、664を絶縁する誘電体662とを備える。
【0046】
プローブ601は、プローブ本体611内にマイクロ波アンテナ606を含む。マイクロ波アンテナ606は、放射部分605を有する。放射部分605は、放射部分605から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分615を通って焼灼すべき組織内に進むことができるように、プローブ本体611の窓部分615と位置合せされている。放射部分605は、概して、プローブ本体611の先端部分614の近くに位置している。
【0047】
プローブ601は、放射窓615に対して先端側である空間的関係でプローブ本体611に沿って位置する第1先端側電極661と、第1先端側電極661に対して先端側であるとともに放射窓615に対して先端側である空間的関係でプローブ本体611に沿って位置する第2先端側電極663とをさらに含む。プローブ601は、放射窓615に対して基端側である空間的関係でプローブ本体611に沿って位置する第1基端側電極641もまた含む。いくつかの例(図示せず)では、基端側電極641はチョークであり得る。
【0048】
図6の例では、第1先端側電極661は、第1先端側リード636により検知回路に接続されている。第1基端側電極641は、第1基端側リード646により検知回路に接続されている。第2先端側電極663は、第2先端側リード668により検知回路に接続されている。電極661、641及び663の任意の組合せの間で、第1時点と第1時点より後の第2時点とにおいて、双極高周波インピーダンスを測定することができる。いくつかの例では、検知回路は、第1先端側電極661と第2先端側電極663との間の第1双極インピーダンスを検知するように構成されている。これらの電極の各組合せに対して、患者組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。
図2の例と同様に、電極661、663及び641と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0049】
図7は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ701の概略断面図である。プローブ701は、先端チップ717を有するプローブ本体711を備える。プローブ701は、先端部714及び基端部712を有する。同軸ケーブルであり得るケーブル718が、内部導体721及び外部導体774と、それら導体721、774を絶縁する誘電体772とを備える。
【0050】
プローブ701は、プローブ本体711内にマイクロ波アンテナ707を含む。マイクロ波アンテナ707は、放射部分705を有する。放射部分705は、放射部分705から放出されるマイクロ波エネルギーが窓部分715を通って焼灼すべき組織内に進むことができるように、プローブ本体711の窓部分715と位置合せされている。放射部分705は、概して、プローブ本体711の先端部分714の近くに位置している。
【0051】
プローブ701は、放射窓715に対して先端側である空間的関係でプローブ本体711に沿って位置する第1先端側電極771をさらに含む。プローブ701は、放射窓715に対して基端側である空間的関係でプローブ本体711に沿って位置する第1基端側電極741、及び、第1基端側電極741に対して基端側であるとともに放射窓715に対して基端側である空間的関係でプローブ本体711に沿って位置する第2基端側電極747も含む。いくつかの例では、プローブ701は、第2基端側電極747及び放射窓715に対して基端側でプローブ本体711に沿って位置する第3基端側電極749をさらに含む。いくつかの例(図示せず)では、基端側電極741、747、749のうちの1つはチョークであり得る。
【0052】
図7の例では、第1先端側電極771は、第1先端側リード776により検知回路に接続されている。第1基端側電極741は、第1基端側リード746により検知回路に接続されている。第2基端側電極747は、第2基端側リード748により検知回路に接続されている。第3基端側電極749は、第3基端側リード782により検知回路に接続されている。電極771、741、747及び749の任意の組合せの間で、第1時点と第1時点より後の第2時点とにおいて、双極高周波インピーダンスを測定することができる。これらの例では、検知回路は、第1先端側電極771、第1基端側電極741、第2基端側電極747及び第3基端側電極749の各組合せの間のインピーダンスを検知するように構成されている。これらの電極の各組合せに対して、患者組織の変化に対応するインピーダンスの変化を計算することができる。
図2の例と同様に、電極771、741、747、749と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間で、単極高周波インピーダンスを測定することができる。
【0053】
図9は、いくつかの例によるマイクロ波アブレーションプローブ901の概略断面図である。プローブ901は、
図2に関連して記載したプローブ101と同様であり、同様の特徴を含む。プローブ901は、放射部分905を有するダイポールマイクロ波アンテナ903を利用する。ダイポールマイクロ波アンテナ903は、内部導体921、外部導体934、及びそれら導体921、934を絶縁する誘電体932を有する同軸ケーブルであり得る、ケーブル918を備える。ダイポールマイクロ波アンテナ903は、アンテナ903の一部を形成する導電性端部部材909をさらに備える。プローブ901は、第1基端側電極141及び第2基端側電極143と先端側電極131とを有する。
【0054】
マイクロ波アブレーション法
アブレーション処置中、医師は、所望のアブレーション焼灼巣を作成するように、マイクロ波アブレーションシステムにおける複数のパラメータを調整することができる。パラメータは、別法として、コンピュータシステムにおけるコントローラにより自動的に調整することができる。マイクロ波エネルギー源に提供される電力の量を調整することができる。供給されるより大量又は少量の電力により、組織に入るマイクロ波放射線の強度が上昇又は低下する。高電力でのアブレーションにより、大きい焼灼巣を有効に作成することができる。電力が高すぎる場合、組織炭化等の悪影響が発生する可能性がある。本システムは、マイクロ波放射線が組織に送達される時間の量も調整することができる。時間が短いほど組織の炭化に対する低いリスクに関連するが、アブレーション処置が終了するのが早過ぎる場合、処置により、焼灼することが望まれる組織のすべてが十分に焼灼されない可能性がある。
【0055】
組織のインピーダンスは、組織が熱アブレーション中に加熱されている間に変化する。組織の温度が、典型的には約90℃を超える一定の点に達すると、組織のインピーダンスは、組織内の水分の損失に起因して上昇し始める。
【0056】
いくつかの使用シナリオでは、本システムは、複数の電極場所におけるインピーダンスの変化に応答して、システムへのマイクロ波電力送達を調整することができる。これにより、本システムは、これらの場所における最適な組織アブレーションを達成して、過熱(炭化)及び加熱不足(不十分な組織アブレーション)の両方を回避することができる。インピーダンス変化が、組織が過熱されていることを示す場合、マイクロ波アブレーションシステムは、電力を低減させるか又はマイクロ波エネルギーの送達を終了することができる。インピーダンス変化が、熱が血管の存在に起因して離れて伝達される場合等、組織が十分に加熱されていないことを示す場合、マイクロ波アブレーションシステムは、電力を増大させてこの追加の対流を補償することができる。
【0057】
本開示のマイクロ波アブレーションシステムを使用して、方法を実施することができる。マイクロ波アブレーションシステムは、マイクロ波アブレーションプローブと、マイクロ波エネルギーを放出する放射部分を備えたアンテナとを含む。プローブは、少なくとも部分的にマイクロ波エネルギーに対して透過性である放射窓部分を備えたプローブ本体を有する。放射部分は、プローブ本体の窓部分と位置合せされている。プローブは、窓部分に対して先端側でプローブ本体に沿って位置する第1先端側電極と、放射窓部分に対して基端側でプローブ本体に沿って位置する第1基端側電極とを含む。
【0058】
本方法において、マイクロ波アブレーションプローブのプローブ本体は、患者組織内に挿入され、焼灼すべき組織の場所に位置決めされる。マイクロ波エネルギーが発生器によって発生し、その後、マイクロ波エネルギーは、プローブの放射部分に伝送される。マイクロ波エネルギーは、プローブ本体の内側から、プローブの透過性窓部分を介してプローブの外側に放出される。マイクロ波エネルギーが組織を浸透するに従い、組織は加熱され、焼灼巣が形成される。
【0059】
記載したマイクロ波アブレーション法では、第1時点で、組織のインピーダンスが測定される。たとえば、アブレーションが開始する前に又は処置の開始の直前に、インピーダンスを測定することができる。後に、第2時点で、組織のインピーダンスが測定される。第2測定は、たとえば、所定量の時間の後に行うことができる。処置を通して定期的にインピーダンス測定を行うことも可能である。別法として、インピーダンス測定を連続的に監視することができる。第1インピーダンスが第2インピーダンスと比較されて、インピーダンスの変化が発生したか否かが判断される。組織が焼灼巣を形成し始めたか又は組織が炭化した場合等、インピーダンスが変化した場合、治療パラメータを変更するように処置をとることができる。
【0060】
インピーダンス測定は、本明細書に記載するさまざまな例により複数の異なる方法で行うことができる。1つの例では、高周波エネルギーが電極に送達され、その電極と患者の皮膚の上の参照パッチとの間でインピーダンスが測定される。この場合、本システムは単極システムである。双極システムも使用することができる。たとえば、第1電極及び第2電極に高周波エネルギーを送達することができ、第1電極と第2電極との間のインピーダンスを測定することができる。インピーダンスは、
図1を参照して上述したような検知回路を使用して測定することができる。
【0061】
患者の身体の内側の組織の実際の変化のより明確な像を展開するために、複数の検知電極を使用することができる。参照パッチと組み合わせて1つの先端側電極及び2つの基端側電極を備えたシステムでは、第1先端側電極と参照パッチとの間、第1基端側電極と参照パッチとの間、及び第2基端側電極と参照パッチとの間の単極検知を使用して、インピーダンスを測定することができる。さらに、第1先端側電極と第1基端側電極との間、第1先端側電極と第2基端側電極との間、及び第1基端側電極と第2基端側電極との間の双極検知を使用して、インピーダンスを測定することができる。これらのインピーダンス測定のうちの1つ又は複数が行われる。そして、その測定値は、コンピュータメモリ等のメモリに保存される。
【0062】
後の時点で、1回又は複数回のインピーダンス測定が再度行われる。特定の患者と適用されている特定の処置とに応じて、異なるインピーダンス測定値は異なる速度で変化する可能性がある。インピーダンスの変化の相違により、本システムに、処置の進行に関する情報を与えることができる。インピーダンスが一定の閾値を越えて上昇したことが分かると、アブレーション処置を終了することができる。
【0063】
電極リード
放射窓は、マイクロ波遮蔽構造体によって画定することができる。
図2~
図7を参照して上に詳述したように、マイクロ波アブレーションプローブは、1つ又は複数の先端検知電極に接続された1本又は複数本の先端側リードと、1つ又は複数の基端検知電極に接続された1本又は複数本の基端側リードとを含む。これらのリードの各々は、マイクロ波アブレーションアンテナから電気的に隔離されている。いくつかの例では、リードは、マイクロ波遮蔽構造体の下にあるように構成されている。代替例では、リードは、マイクロ波遮蔽構造体の外側且つ絶縁層の下にあり得る。さらに又は別法として、リードは、マイクロ波遮蔽構造体の外面に導電性トレースを含むことができる。1つの例では、リードは、絶縁層の下のマイクロ波遮蔽物の外面の上に導電性トレースを含む。絶縁層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリイミド(PI)又はこれらの材料の組合せから作製された材料を含むことができる。
【0064】
マイクロ波アブレーションアンテナ
図1~
図7に提供する例では、マイクロ波アブレーションアンテナは、同軸モノポールアンテナである。しかしながら、代替的なアンテナ設計が企図される。本システムは別法として、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、3軸アンテナ又はチョーク付きスロットアンテナを使用することができる。こうしたシステムは、ブレース(Brace)著、「マイクロ波組織アブレーション:生物物理学、技術及び応用(Microwave Tissue Ablation:Biophysics,Technology,and Applications)」クリティカル・レビューズ・イン・バイオメディカル・エンジニアリング(Critical Reviews(商標) in Biomedical Engineering)、第38巻、1号、p.65~78(2010年)に詳述されており、この文献の全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、インピーダンスセンサとして使用される電極は、干渉を回避するためにアンテナ放射セクション内に配置されない。
【0065】
アブレーション及び検知制御システム
図1を参照すると、マイクロ波アブレーション及び高周波検知制御システム169が提供されている。制御システム169は、ユーザ入力部163及びディスプレイ165を備え、医師又は他の医療専門家が制御システム169を監視するとともに制御システム169と対話するのを可能にする。コントローラ161が、制御システム169のさまざまな機能を動作させるように構成されている。制御システム169は、アブレーション処置中にマイクロ波アブレーションプローブ101にマイクロ波エネルギーを提供するマイクロ波エネルギー源151を有する。制御システム169は、マイクロ波エネルギー源151とは別個の高周波エネルギー源153をさらに含む。高周波エネルギー源153は、プローブ101内の検知電極に高周波エネルギーを提供するように構成されている。高周波エネルギー源153は、双極検知、単極検知又は両方で使用することができる。利用可能なマイクロ波アブレーション発生器は、仏国ネロンのサイレム(Sairem)によって製造される、200W及び2450MHzで動作するサイレム(Sairem)GMS固体発生器である。別法として、英国スコットランドのエンブレーション・マイクロウェーブ(Emblation Microwave)、エンブレーション・リミテッド社(Emblation Limited Company)によって製造される、100W及び2450MHzで動作するエンブレーション・マイクロウェーブMSYS245メディカル・システム(Emblation Microwave MSYS245 Medical System)を使用することができる。これらの市販のシステム及び任意の組合せを使用して、本明細書に記載するシステムを実施することができる。これらの機能は、マイクロ波発生器及び高周波インピーダンス測定機能の両方を備えた専用システムによって具現化することも可能である。
【0066】
さらに又は別法として、制御システムは、マイクロ波アブレーションに起因する組織の変化を検出するために、インピーダンス検知回路からの組織のインピーダンスを使用するように構成される。
【0067】
高周波インピーダンス検知回路
例示の目的で、さまざまな図は、少なくとも2つの電極を示す。各電極は、高周波インピーダンス検知回路に配線され且つ接続されている。検知回路は、組織のインピーダンスに対応する少なくとも1つの信号を発生させるように構成されている。
【0068】
いくつかの例では、約5kHz~10MHzの周波数で作動する高周波エネルギーが使用される。いくつかの例では、高周波インピーダンス検知回路は、約20kHzの周波数で動作させることができる。
【0069】
いくつかの実施態様では、検知回路は、10μA~10mAの範囲の間の小電流を生成し、双極検知電極間、又は単極検知電極と患者の皮膚の上に位置する参照パッチとの間の電圧を測定する。別法として、検知回路は、1ミリボルト~1ボルトの小電圧を印加し、電極間の電流を測定することができる。電圧及び電流を使用して、抵抗及びリアクタンスの両方、又はインピーダンス振幅及び位相角が計算される。
【0070】
利用可能な高周波測定システムは、カリフォルニア州サンタローザのキーサイト(Keysight)によって製造されるキーサイトE4980AプレシジョンLCRメータ(Keysight E4980A Precision LCR Meter)である。別の利用可能な高周波測定システムは、ニュージャージー州クランベリーのヒオキUSAコーポレーション(Hioki USA Corporation)のヒオキLCRメータIM3536(Hioki LCR Meter IM3536)である。別法として、マイクロ波アブレーションプローブを制御する専用システムに、高周波測定装置を組み込むことができる。
【0071】
マイクロ波アブレーションプローブのための冷却システム
マイクロ波アブレーションシステム100は、冷却システム(図示せず)をさらに含むことができる。冷却システムは、たとえば、閉ループシステムとすることができ、そこでは、冷却流体は、プローブの外側からプローブの先端部に向かってプローブ本体に沿って送られ、その後、プローブの基端部に向かって戻されプローブから出る。別法として、冷却システムは開放灌流(オープンイリゲーション)システムとすることができ、そこでは、生理食塩水溶液等の冷却流体が、プローブの外側からプローブ本体を通して送られ、プローブの先端部114においてプローブから出る。開放灌流システムは、マイクロ波アンテナの放射部分に対して基端側に、マイクロ波アンテナの放射部分に対して先端側に、又は両方に灌流を提供することができる。
【0072】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈において明確な別段の指示がない限り複数の対象物を含むことが留意されるべきである。「又は」という用語は、文脈において明確な別段の指示がない限り、概して、「及び/又は」を含む意味で採用されることも留意されるべきである。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する「構成された」という言い回しは、特定の作業を実施するか又は特定の構成を採用するように構築又は構成されているシステム、装置又は他の構造体を述べることも留意されるべきである。「構成された」という言い回しは、配置及び構成された、構築及び配置された、構築、製造及び配置された等、他の同様の言い回しと同義で使用することができる。
【0074】
本明細書におけるすべての刊行物及び特許出願は、本開示の技術が関連する技術分野における通常技術の水準を示す。すべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的に且つ個々に示されている場合と同程度まで、参照により本明細書に援用される。
【0075】
本明細書に記載する実施形態は、網羅的であるようにも、開示する技術を以下の詳細な説明に開示する正確な形態に限定するようにも意図されていない。むしろ、実施形態は、当業者が、これらの原理を認識及び理解し、実施することができるように、選択され且つ記載されている。したがって、さまざまな具体的且つ好ましい実施形態及び技法に関して態様が記載されている。しかしながら、本明細書の趣旨及び範囲内にありながら、多くの変形形態及び変更形態を作成することができることが理解されるべきである。