(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】時限的に差動可能なファイナルドライブギア装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/24 20060101AFI20230615BHJP
F16H 48/34 20120101ALI20230615BHJP
F16D 11/04 20060101ALI20230615BHJP
F16D 11/10 20060101ALI20230615BHJP
F16D 27/09 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F16H48/24
F16H48/34
F16D11/04 Z
F16D11/10 Z
F16D27/09
(21)【出願番号】P 2021514713
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2019016456
(87)【国際公開番号】W WO2020213087
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】廣田 功
(72)【発明者】
【氏名】日向野 昇
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 学
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和弘
(72)【発明者】
【氏名】沼部 俊吾
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/135826(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/200276(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/24
F16H 48/34
F16D 11/04
F16D 11/10
F16D 27/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と第1および第2の車軸とを駆動的に結合するギア装置であって、
前記駆動軸とギア結合して軸周りに回転するケースと、
前記第1の車軸と結合可能なハブと、
前記ケースに係合し、前記ハブに脱噛合可能に噛合したクラッチ部材と、
前記クラッチ部材に当接したプランジャと、
前記クラッチ部材を前記ハブと噛合した位置に保持する付勢手段であって、
前記ケースに係合、嵌合、圧入あるいは接合したリングまたは前記ケースを支持するベアリングと、前記プランジャまたは前記クラッチ部材と、の間に介在して前記クラッチ部材を前記ハブに向けて付勢する第1のスプリングを含む付勢手段と、
前記ケースと前記第1および第2の車軸とをギア結合し、前記クラッチ部材によって前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の差動をロックされたデファレンシャルギア組と、
前記クラッチ部材を前記ハブから引き離す方向に付勢する第2のスプリングと、
を備えたギア装置。
【請求項2】
電力を投入したときにのみ作動して前記クラッチ部材を前記ハブから脱噛合する方向に駆動するアクチュエータを、
さらに備えた請求項1のギア装置。
【請求項3】
前記クラッチ部材に固定されて前記ケースの外に引き出されたフランジと、
前記フランジの軸方向位置を検出する検出装置と、
をさらに備えた請求項1のギア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、車両において一対の駆動輪を同一の回転速度で駆動するためのギア装置であって、特定の場合にのみ両駆動輪の間の差動を許容することができるギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車がカーブを切るときには左右の駆動輪は異なる長さの弧を描くために、駆動輪の間で回転速度の差を許容しなければならない。専ら舗装された道路を走行する自動車は、かかる速度差を許容しながら駆動輪にトルクを伝えるために、通常、デファレンシャルを包含するファイナルドライブを利用する。一時的に片方の駆動輪がトラクションを失った時にも残る駆動輪にトルクを伝えるべく、デファレンシャルの差動を制限する装置を包含し(いわゆるリミテッドスリップデフ)、あるいは差動をロックする装置を包含する(ロッキングないしロックアップデフ)ことがある。特許文献1は、関連する技術を開示する。
【0003】
全地形対応車(All Terrain Vehicle:略称ATV)と呼ばれる自動車は、専らダート路のごとき悪路を走行する目的で使用される。かかる自動車においては、走行中、片方または両方の車輪は頻繁にトラクションを失う。差動を許容することはトルクの伝達をむしろ妨げるし、また空転や差動制限が頻繁に繰り返されることはエンジンやドライブトレインに著しい負担をかけてしまう。それゆえ多くの場合、ATVはデファレンシャルを利用せずに、左右の車軸は直結されている。悪路において駆動輪は容易に滑ることができるので、回転速度の差は駆動輪の滑りが吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開2018/0195596A1
【発明の概要】
【0005】
ATVであっても、ごく限られた機会、例えばトレーラに積み下ろしする機会や車庫に出し入れする機会には、舗装路や芝生等の上を走行することがある。差動がなければ舗装路上ではタイヤが損傷するし、芝生上であれば芝生を台無しにしてしまう。一方、ごく限られた機会のために上述の不利益を被り続けることは不合理であるし、差動のロックには例えば電力のごとき外部エネルギを装置に投入し続ける必要があるので、エネルギ効率を損なってしまう。以下に開示する装置はかかる問題を考慮してなされた。
【0006】
一局面によれば、駆動軸と第1および第2の車軸とを駆動的に結合するギア装置は、前記駆動軸とギア結合して軸周りに回転するケースと、前記第1の車軸と結合可能なハブと、前記ケースに係合し、前記ハブに脱噛合可能に噛合したクラッチ部材と、前記クラッチ部材に当接したプランジャと、前記クラッチ部材を前記ハブと噛合した位置に保持する付勢手段であって、前記ケースに係合、嵌合、圧入あるいは接合したリングまたは前記ケースを支持するベアリングと、前記プランジャまたは前記クラッチ部材と、の間に介在して前記クラッチ部材を前記ハブに向けて付勢する第1のスプリングを含む付勢手段と、前記ケースと前記第1および第2の車軸とをギア結合し、前記クラッチ部材によって前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の差動をロックされたデファレンシャルギア組と、前記クラッチ部材を前記ハブから引き離す方向に付勢する第2のスプリングと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態によるギア装置の立面断面図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態によるギア装置の立面断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のギア装置においてクラッチおよびアクチュエータ付近を拡大した部分立面断面図である。
【
図4】
図4は、変形例による部分立面断面図である。
【
図5】
図5は、他の変形例による部分立面断面図である。
【
図6】
図6は、さらに他の変形例による部分立面断面図である。
【
図7】
図7は、スイッチと組み合わせた例によるギア装置の部分立面断面図である。
【
図8】
図8は、クラッチ部材とケースの貫通孔との関係を主に表すギア装置の周方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照して以下に幾つかの例示的な実施形態を説明する。以下の説明および請求の範囲を通じて、特段の説明がなければ、軸は車軸の回転軸の意味であり、通常はギア装置の回転軸とも一致する。また軸方向はこれに平行な方向であり径方向はこれに直交する方向を意味し、周方向は軸の周りの方向を意味する。
【0009】
主に
図1を参照するに、本実施形態によるギア装置は、駆動軸から一対の車軸へトルクを伝達し、時限的にのみ差動を可能にするファイナルドライブとして利用することができ、特にATVに好適に利用することができる。かかるギア装置は、概して、軸Cの周りに回転するケース1と、定常状態では差動をロックされたデファレンシャルギア組3と、差動をロックするためのクラッチ5と、クラッチ5を駆動してロックを解除するためのアクチュエータ7と、駆動軸とギア結合するためのリングギア9と、を備える。
【0010】
ケース1は、軸C周りに概して円筒形であり、その全体が単一の部材によってもよい(ワンピース型)。かかる型の場合には、部品を内部に組み込む都合のために、ケース1の例えば周面には相応の寸法の開口を有する。あるいは
図2に示すごとく、ケース1は本体1Aと蓋体1Bとに分割可能であってもよい(ツーピース型)。かかる型においては、蓋体1Bを固定する前には本体1Aの内部は外部に向けて開放されるので、内部部品を導入するための開口は必要でない。もちろん3つ以上に分割可能であってもよい。
【0011】
ケース1の例えば外周にはリングギア9が固定されており、これは駆動軸にギア結合する。ケース1は、リングギア9と当接してこれを位置決めするべく、フランジ状に突出した部位を一体的に備えることができる。
図1に示すごとく、かかる部位とリングギア9との間の隙間である溶接部11に溶け込んだ溶接金属により互いが結合されていてもよい。溶接部11は、溶接の便宜のために開先を有していてもよい。また溶接を容易にするべく、
図1に示すごとく、溶接部11はケース1の一端において軸方向に露出していてもよく、あるいは径方向に外方に向いていてもよい。
【0012】
あるいは
図2に示すごとく、ケース1とリングギア9との間の固定はボルト11Bによる締結によってもよい。この場合、本体1Aと蓋体1Bとが対応するフランジ1AF,1BFを備え、ボルト11Bはリングギア9とこれらを共に固定するよう締結されていてもよい。あるいは本体1Aと蓋体1Bとの固定には、ボルト11Bからは独立した他の固定手段を利用してもよい。
【0013】
駆動軸からリングギア9を介してトルクを受容することにより、ケース1は軸C周りに回転する。円滑な回転を可能にするべく、例えばケース1は、その両端付近においてそれぞれボールベアリングあるいはローラベアリング13A,13Bにより回転可能に支持される。ベアリングはケース1から軸方向に突出したボス部に嵌合していてもよいが、これに代えて、あるいは加えて、
図5に示すごとくケース1の外周に嵌合したベアリング13Cを利用することができる。ベアリング13Cの位置決めのために、例えばケース1の外周に嵌合、係合、圧入、あるいは接合されたピンないしリング85を利用することができる。
【0014】
デファレンシャルギア組3は、ケース1に支持されており、車軸にそれぞれ結合するサイドギア31A,31Bにギア結合し、以ってケース1からサイドギア31A,31Bへのトルクの伝達を仲介する。定常的にはクラッチ5によりロックされているので、デファレンシャルギア組3は両車軸を同一の回転速度で回転させるが、ロックが解除されたときにはサイドギア31A,31Bの間の差動を許容する。
図1,2はベベルギア式のデファレンシャルギア組3を例示するが、もちろん他の形式であってもよい。
【0015】
図1に組み合わせて主に
図3を参照するに、クラッチ5は、ドッグ歯53と、これに噛合するようクラッチ部材51に刻まれたドッグ歯55と、よりなる。また互いに噛合するドッグ歯に代えて、キー、スプライン、あるいはラグのごとき係合構造であってもよいし、あるいは他の制限手段であってもよい。
【0016】
ドッグ歯53、あるいは他の係合構造は、一方の車軸に結合するハブに刻まれ、ハブは例えばサイドギア31Aである。このような構成は装置の構造を簡素にできる点で有利だが、あるいはハブはサイドギア31Aからは独立したハブ部材であってもよい。かかるハブ部材はサイドギア31Aに、あるいは車軸に、係合または結合して差動を制限するが、あるいは一体化していてもよい。
【0017】
クラッチ部材51は図中に実線で表す噛合位置から、二点鎖線で表す脱噛合位置にまで軸方向に移動可能である。定常状態において後述の付勢手段によりクラッチ部材51は噛合位置に保持されてデファレンシャルギア組3をロックし、両車軸の間の差動をロックする。
【0018】
クラッチ部材51は、軸Cの周りの円盤状であり、その一面にドッグ歯55を備え、その反対面からは周方向に等間隔に一以上の脚が突出している。一方ケース1はこれらに対応して貫通孔15を有する。クラッチ部材51の脚はそれぞれ貫通孔15を通ってアクチュエータ7に面している。
【0019】
アクチュエータ7には、例えば電力の投入により作動する電磁アクチュエータを利用することができる。その一例は、以下に説明するように、電力により励磁されるソレノイド71がプランジャ75を駆動するものである。プランジャ75が軸方向に前進後退するのに応じてクラッチ部材51が前進後退する。あるいはこれに代えて、ソレノイド71自身が前進後退し、以ってクラッチ部材51が前進後退するものであってもよい。
【0020】
ソレノイド71は、好ましくは磁束を導くコア73を備える。コア73はケース1の一端に隣接するが、ソレノイド71と共にキャリアに対して回り止めされているので、ケース1に対しては相対的に回転する。
図3,5に示すごとく、コア73はケース1の端面に接して摺動してもよく、この場合にはまた、ケース1の端面をコア73の一部として利用することができる。あるいは
図4に示すごとく、コア73はケース1のボス部に向けて延長した延長部73Eを備え、かかる延長部73Eにより位置決めされ、以ってケース1の端面からは離れていてもよい。
図3,5に示す構造によればプランジャ75を駆動する反力およびケース1に漏れる磁束によりコア73とケース1との間に無視し得ない摩擦が生じるが、
図4に示す構造では摩擦はより軽減されるし、磁束の漏れによるエネルギロスもより小さくなる。
【0021】
プランジャ75は、クラッチ部材51の脚に当接するように配置される。また例えばコア73は磁束を跳躍させるギャップを備えることができ、プランジャ75はかかるギャップに沿うように配置される。プランジャ75はさらに、ケース1の例えばボス部に摺動可能に嵌合してもよい。通常、プランジャ75はケース1と共に回転するので、コア73に対しては相対的に回転する。
【0022】
プランジャ75は、圧入等により互いに一体化されたアウタリング77とインナリング79とよりなっていてもよい。コア73に面したアウタリング77は、磁束を導くべく炭素鋼のごとき磁性材よりなり、インナリング79は磁束の漏れを防ぐべく非磁性材よりなっていてもよい。
【0023】
電力が投入されていないとき、すなわち励磁されていないとき、プランジャ75はクラッチ部材51に当接して、これを噛合位置にしている。クラッチ部材51を噛合位置に保持するのを補助するべく、付勢手段を利用することができ、その一例はスプリング83である。
【0024】
図3に示されるごとく、例えばケース1のボス部にリング81を係合しておき、リング81とプランジャ75との間にスプリング83を弾発的に介在させておいてもよい。または
図5に示されるごとく、リング81はボス部に嵌合、圧入、あるいは接合されていてもよい。あるいは
図4に示されるごとく、スプリング83はコア73あるいはその延長部73Eとプランジャ75との間に介在してもよい。さらにあるいはスプリング83は、例えばケース1の内面とクラッチ部材51との間に介在してもよい。
【0025】
スプリング83の反力は、
図5に示されるごとく、リング81のみにより支持してもよいが、
図3,4に示されるごとく、ベアリング13Aにも負担させるべく、ベアリング13Aをリング81または延長部73Eに当接させてもよい。あるいは、
図6に示されるごとく、ベアリング13Aのみが負担してもよい。またスプリング83は、クラッチ部材51に直接に当接してこれを押圧してもよい。
【0026】
かかるスプリング83は、プランジャ75を介して、または直接に、定常的にクラッチ部材51を押圧してこれを噛合位置に保持するのに役立つ。また既に述べたように、ソレノイド71自身が前進後退する構造の場合には、スプリング83はソレノイド71を付勢するように配置されていてもよい。
【0027】
スプリング83に加えて、または代えて、他の付勢手段を利用することができる。
図8はカム機構による例であって、クラッチ部材51の脚の側面と、ケース1の貫通孔15の側面とは、対応して傾斜を有し、以って一種のカム機構を構成する。ケース1が回転運動R
Dをすると、傾斜した側面同士が当接し、トルクを部分的に軸方向のスラスト力Fに変換する。クラッチ部材51はかかるスラスト力Fを受けて噛合位置に保持される。もちろんカムは脚と貫通孔15との組み合わせによらず、他の適宜の構造によることができる。
【0028】
電力が投入されるとソレノイド71が生ずる磁束はコア73を流れ、ギャップを跳躍する磁束に引かれてプランジャ75は軸方向に後退し、クラッチ部材51は脱噛合位置へ移動する。クラッチ5が脱噛合するのを補助するべく、スプリング57を利用してもよい。
図3ないし5に例示される通り、スプリング57は例えばサイドギア31Aとクラッチ部材51との間に弾発的に介在していてもよいし、あるいは他の部位に介在してもよい。またクラッチ部材51をケース1に向けて引っ張るようにスプリング57を配置してもよい。
【0029】
あるいはスプリング57に代えて、または加えて、アクチュエータ7が積極的にクラッチ部材51を引き出す構成を採用することができる。
図6はその一例であって、クラッチ部材51は、その脚からさらに延長された延長部51Eを一体または別体に備え、プランジャ75がその一端付近に係合していてもよい。係合のために、延長部51Eに嵌合、係合、圧入、あるいは接合されたピンないしリング87を利用することができる。電力が投入されるとギャップを跳躍する磁束に引かれてプランジャ75は軸方向に移動し、延長部51Eに係合してクラッチ部材51を引き出し、以ってクラッチ5は脱噛合する。かかる構造によれば、スプリング57を省くことができる。かかる延長部51Eは、また、スプリング83による付勢力を受けるのに利用することができる。
【0030】
上述の各実施形態は、電磁的にクラッチ部材を駆動するアクチュエータを利用する例だが、電磁アクチュエータに代えて他の駆動装置、例えば油圧のごとき液圧によりピストンを駆動し、以ってクラッチ部材を駆動する装置を利用してもよい。あるいは液圧に代えて空圧を利用する装置であってもよいし、さらにあるいはモータ駆動されたギアないしカム機構等をアクチュエータ7に採用してもよい。何れによっても、アクチュエータ7に電力を投入しない限り、クラッチ5は噛合したままであり、デファレンシャルギア組3の差動は禁止され、悪路においても常に両方の駆動輪にトルクが伝達される。差動の禁止に電力を消費することはなく、エネルギ効率が損なわれることはない。舗装路や芝生のごとき特定の場面で差動を必要とするときには、その時にのみアクチュエータ7に電力を投入すれば、駆動輪の間で差動が許容され、タイヤや路面を損なうことはない。
【0031】
クラッチ部材51が脱噛合位置にあるか噛合位置にあるかは、アクチュエータ7への電力投入の有無により判断することができるが、これに追加して、ギア装置はクラッチ部材51の位置を検出するための装置を備えることができる。例えば
図7に示されるごとく、ネジ等によりクラッチ部材51に固定されてケース1外に引き出されたフランジ19を、ギア装置は備えることができる。かかるフランジ19の軸方向位置は、メカニカルスイッチ、光学センサ、あるいは静電容量、電場または磁場の変化を利用した近接センサ等を利用して検出することができる。これらの検出装置は、ギア装置に付属していてもよいし、車体の何れかに付属していてもよい。
【0032】
図7は、キャリアの壁面25に固定されたプルスイッチ21を利用する例であって、そのロッド23の先端は傘状に開いた頭部23Hを備え、フランジ19の縁が頭部23Hに摺動的に係合している。噛合位置ではロッド23は引き出されてスイッチがオンになるが、脱噛合位置ではロッド23は後退してスイッチはオフになる。もちろんロッドの位置とオンオフの関係はこれと反対でもよいし、またプルスイッチに代えてプッシュスイッチを利用してもよい。さらに、ロッドを付勢するスプリングにスプリング57,83の何れかを補助させ、あるいは代替させることができる。
【0033】
幾つかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正ないし変形をすることが可能である。