(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】粒子状吸水剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20230615BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230615BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20230615BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230615BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/30
C08L33/02
C08K5/17
C08K3/30
(21)【出願番号】P 2021556147
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042263
(87)【国際公開番号】W WO2021095806
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019204870
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】津留 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】小林 大志
(72)【発明者】
【氏名】高木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053372(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170604(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129917(WO,A1)
【文献】特開2016-112475(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28;20/30-20/34
C08K 3/00-13/08;
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤であって、
下記(a)~(c)の手順によって算出されるキレート剤比率が、0.8~
1.2である、粒子状吸水剤:
(a)前記粒子状吸水剤に対して所定の衝撃試験を施す、
(b)前記衝撃試験が施された粒子状吸水剤を、JIS標準篩によって、粒子径が300μm未満の粒子群1と、300μm以上850μm未満の粒子群2とに篩分けする、
(c)前記粒子群1に存在するキレート剤の含有量C1および前記粒子群2に存在するキレート剤の含有量C2を定量した後、C1をC2で除す。
【請求項2】
初期色調試験における色調YIが、12以下である、請求項1に記載の粒子状吸水剤。
【請求項3】
前記粒子状吸水剤中のキレート剤の含有量C7が、10~5000ppmである、請求項1または2に記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
前記キレート剤が、アミノ多価カルボン酸およびアミノ多価リン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
前記無機還元剤が、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
キレート剤残存率が、50質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
残存モノマーの含有量が、700ppm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
前記無機還元剤の含有量が、1~3000ppmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
粒子径850μm未満の粒子の割合が、全体に対して90~100質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項10】
窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤の製造方法であって、
下記(a)~(c)の手順によって算出されるキレート剤比率が、0.8~
1.2となるようにする工程を有する、製造方法。
(a)前記粒子状吸水剤に対して所定の衝撃試験を施す、
(b)前記衝撃試験が施された粒子状吸水剤を、JIS標準篩によって、粒子径が300μm未満の粒子群1と、300μm以上850μm未満の粒子群2とに篩分けする、
(c)前記粒子群1に存在するキレート剤の含有量C1および前記粒子群2に存在するキレート剤の含有量C2を定量した後、C1をC2で除す。
【請求項11】
(メタ)アクリル酸(塩)と、過硫酸(塩)とを含む、単量体水溶液を調製する工程と、
前記単量体水溶液に含まれる単量体を重合し、含水ゲルを得る重合工程と、
必要に応じて、前記含水ゲルを粉砕し、粒子状含水ゲルを得るゲル粉砕工程と、
前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルを、乾燥し、乾燥重合体を得る乾燥工程と、
前記乾燥重合体を、粉砕または分級し、吸水性樹脂粉末を得る工程と、
前記吸水性樹脂粉末を、表面架橋し、吸水性樹脂粒子を得る表面架橋工程と、
を含み、
(i)前記単量体水溶液に、窒素原子を有するキレート剤を単量体成分の10~5,000ppm(単量体質量基準)添加する、および/または、(ii)前記キレート剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~5,000ppm添加する工程を含み、
(iii)硫黄原子を有する無機還元剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~50,000ppm添加する工程を含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項12】
前記粒子状吸水剤が、窒素原子を有するキレート剤を含む単量体水溶液の単量体を重合することによって得られ、
前記単量体水溶液に添加された前記キレート剤の添加量C3(対単量体固形分)が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加される前記キレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、
前記粒子状吸水剤の固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記粒子状吸水剤が、単量体水溶液の単量体を重合することによって得られる含水ゲルまたは当該含水ゲルを粉砕してなる粒子状含水ゲルに、窒素原子を有するキレート剤を添加することによって得られ、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加されるキレート剤の添加量C4が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、前記粒子状吸水剤の固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記(ii)にて前記キレート剤の添加を、0.01~20質量%の水溶液の形態で行う、請求項11~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記単量体水溶液に含まれる単量体を重合する重合時間が、30分以下である、請求項
11~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記重合時間が、10分以下である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥工程において、120~250℃の熱風による乾燥を行う、請求項11~16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記乾燥工程において、前記乾燥重合体の固形分量が80質量%となるまでの乾燥の時間が、30分以下である、請求項11~17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記無機還元剤の添加を、0.01~20質量%の水溶液の形態で行う、請求項11~18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記乾燥工程において、前記乾燥が、静置乾燥機およびバンド乾燥機から選択される乾燥機を用いて行われる、請求項11~19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、1~10cmである、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記無機還元剤を添加してから乾燥開始までの時間が30分以下、または、前記無機還元剤を添加してから乾燥開始までの前記含水ゲルの温度が0~55℃である、請求項11~21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記含水ゲルを粉砕するゲル粉砕工程を含む、請求項11~22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記含水ゲルの粉砕と同時に、前記無機還元剤を添加する、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記含水ゲルの粉砕と同時に、前記キレート剤を添加する、請求項23または24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記過硫酸(塩)を、前記単量体に対して0.02モル%以上添加する、請求項11~25のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項27】
前記粒子状吸水剤に、体積平均粒子径が0.2~3μmである水不溶性無機微粒子を添加する、請求項11~26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
体積平均粒子径が0.2~3μmである水不溶性無機微粒子が粒子表面に添加された、請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項29】
請求項1~9、28のいずれか1項に記載の粒子状吸水
剤を含む、吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキン等の吸収物品、さらには、農園芸用保水剤、工業用止水材等として、主に使い捨て用途に多用されている。
【0003】
このような吸水性樹脂は、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程等の製造工程を経て製造されるが、主用途である紙オムツの高性能化に伴って、吸水性樹脂についても多くの機能が要求されている。具体的には、単なる吸水倍率の高さに限らず、ゲル強度、吸水速度、加圧下吸水倍率、通液性、抗菌性、耐衝撃性、粉体流動性、消臭性、耐着色性(白色度)、低粉塵等の性能が挙げられる。
【0004】
吸水性樹脂の上記性能向上のために、添加剤が使用されることもあり、吸水性樹脂の色調安定性等の向上を目的として、吸水性樹脂にキレート剤を添加することが知られている(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/040530号
【文献】国際公開第2015/053372号
【文献】特開2003-206305号公報
【文献】特開2005-029751号公報
【文献】国際公開第2009/005114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、キレート剤添加の研究を進めている過程で、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する場合においては、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ難いことがあった。当該問題に係る原因として、重合工程等で添加したキレート剤の添加量に見合った量のキレート剤が、最終製品の吸水性樹脂に含まれていないことが判明した。さらに、所定量のキレート剤が最終製品の吸水性樹脂に含まれていない原因がキレート剤の分解であり、キレート剤の分解物が最終製品の吸水性樹脂の色調を悪化させる一因であることも判明した。一方、キレート剤を製造工程の下流に添加する、あるいは、キレート剤を不均一に分布させると最終製品の吸水性樹脂の色調安定性が不十分であることも判明した。
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一つを解決することを目的としてなされたものであり、キレート剤が均一に分布し、かつ、キレート剤の分解物が少ない粒子状吸水剤を提供する。あるいはキレート剤が均一に分布し、かつ、白色の粒子状吸水剤を提供する。あるいは、キレート剤が所望の効果(例えば色調安定性や尿劣化防止)を発揮する粒子状吸水剤を提供する。あるいは、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する形態において、最終製品である粒子状吸水剤中のキレート剤残存率の向上させる粒子状吸水剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、今回見出された上記課題を解決するために、その原因究明を行った。その結果、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤であって、下記(a)~(c)の手順によって算出されるキレート剤比率が、0.8~1.8である、粒子状吸水剤:(a)前記粒子状吸水剤に対して所定の衝撃試験を施す、(b)前記衝撃試験が施された粒子状吸水剤を、JIS標準篩によって、粒子径が300μm未満の粒子群1と、300μm以上850μm未満の粒子群2とに篩分けする、(c)前記粒子群1に存在するキレート剤の含有量C1および前記粒子群2に存在するキレート剤の含有量C2を定量した後、C1をC2で除す、との構成により、上記の課題の少なくとも一つを解決することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
また、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤の製造方法であって、前記キレート剤比率が、0.8~1.8となるようにする工程を有する、製造方法、との構成により、上記の課題の少なくとも一つを解決することができることを見出し、本発明の製造方法の完成に至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態によれば、キレート剤が均一に分布し、かつ、キレート剤の分解物が少ない粒子状吸水剤を提供することができる。あるいはキレート剤が均一に分布し、かつ、白色の粒子状吸水剤を提供する。あるいは、キレート剤が所望の効果(例えば色調安定性や尿劣化防止)を発揮する粒子状吸水剤を提供することができる。あるいは、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する形態において、最終製品である粒子状吸水剤中のキレート剤残存率の向上させる粒子状吸水剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るキレート剤を含む吸水性樹脂の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0012】
〔1〕各種定義
[1-1]吸水性樹脂
本明細書において「吸水性樹脂」とは、ERT441.2-02により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、およびERT441.2-02により規定される水不溶性(Ext)が50質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0013】
本明細書において「吸水性樹脂」は、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである形態に限定されない。添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」は、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0014】
[1-2]吸水剤、粒子状吸水剤
本明細書において「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液(液)を吸収するための吸収ゲル化剤を意味する。ここで、上記水性液(液)とは水のみならず、水を含む液体であれば特に限定されない。
【0015】
本明細書において「粒子状吸水剤」とは、粒子状の吸水剤を意味する。「粒子状吸水剤」の概念には、一粒の粒子状吸水剤と、複数個の粒子状吸水剤の集合体との、いずれもが包含される。本明細書において「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味する。ここで、「粒子」とは、物質の比較的小さな分割体を指し、数Å~数mmの大きさを有している(「粒子」、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会 編『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、1929頁を参照)。なお、本明細書では、「粒子状吸水剤」を単に「吸水剤」と表記することがある。
【0016】
粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂を主成分として含む。上記粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂を、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上含む。上記粒子状吸水剤の残部は、水、添加剤(無機微粒子など)などを任意に含む吸水性樹脂組成物であってもよい。
【0017】
粒子状吸水剤中の吸水性樹脂の上限は、例えば、99.999質量%、99質量%、97質量%、95質量%、90質量%である。そして、好ましくは、吸水性樹脂以外に0~10質量%の成分、特に水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオン)などをさらに含む。
【0018】
なお、粒子状吸水剤の好ましい含水率は、0.2~30質量%である。水や添加剤などの成分が吸水性樹脂と一体化している吸水性樹脂組成物も、「粒子状吸水剤」に包含される。
【0019】
[1-3]ポリ(メタ)アクリル酸(塩)
本明細書において「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」とは、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはその塩を指す。また、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂とは、主成分として、(メタ)アクリル酸および/またはその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」と称する)由来の繰り返し単位を含み、任意成分としてグラフト成分をさらに含む、重合体である。上記ポリ(メタ)アクリル酸(塩)は、(メタ)アクリル酸(塩)の重合、ポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解、などによって得られる。好ましくは、上記ポリ(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸(塩)の重合によって得られる。ここで、「主成分として含む」とは、重合に用いられる単量体(ただし、内部架橋剤を除く)全体に対するアクリル酸(塩)の使用量が、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%であることをいう。
【0020】
[1-4]EDANAおよびERT
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。「ERT」は、EDANAが制定している、欧州標準(実質的な世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本明細書では、特に断りのない限り、2002年版のERTに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0021】
[1-5]その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。本明細書において、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「メートルトン(Metric ton)」を意味する。「ppm」は、「質量ppm」を意味する。「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」、「質量ppm」と「重量ppm」は、それぞれ同じ意味として扱う。本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」または「L」と表記する場合がある。「質量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D.(Non Detected)と表記する。また、未測定をN/A(Not Available)と表記する。
【0022】
〔2〕粒子状吸水剤
本発明の一形態の粒子状吸水剤は、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤であって、下記(a)~(c)の手順によって算出されるキレート剤比率が、0.8~1.8である、粒子状吸水剤である。ここで、当該手順としては、(a)前記粒子状吸水剤に対して所定の衝撃試験を施す、(b)前記衝撃試験が施された粒子状吸水剤を、JIS標準篩によって、粒子径が300μm未満の粒子群1と、300μm以上850μm未満の粒子群2とに篩分けする、(c)前記粒子群1に存在するキレート剤の含有量C1および前記粒子群2に存在するキレート剤の含有量C2を定量した後、C1をC2で除す。なお、前記所定の衝撃試験は、実施例に記載の[衝撃試験]の方法による。本発明においては、前記(b)の篩分けにより前記粒子群1と粒子群2が両方得られることが必須であり、そのためには粒子状吸水剤が後述の粒度を有していることが好ましい。また、吸水性樹脂は、通常、前記所定の衝撃試験で粒子群2が完全になくならない程度の強度を有する。また、キレート剤の含有量C1、C2はキレート剤がノニオン型の場合は添加時の有姿、キレート剤がアニオン型の場合には、粒子状吸水剤中で酸型として存在すると見なして計算した含有量である。
【0023】
本発明の一形態によれば、キレート剤比率(C1/C2)の下限は、0.8以上であるが、0.9以上、あるいは、1.0以上でもよい。一方、上限としては、必須に1.8以下であり、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、あるいは、1.1以下であることが好ましい。当該値が1.8超の場合には、吸水性樹脂の色調を改善することができない虞がある。なお、上記キレート剤比率が0.8~1.8ということは、平たく言うと、キレート剤が吸水性樹脂に均一に存在していることを意味する。キレート剤の存在の様子は吸水性樹脂の粒子表面から粒子内部に向かって吸水性樹脂を少しずつ削り取り、破砕くずを分析することによっても確認することができる。なお、本明細書中、「所定の衝撃試験」とは、本願の実施例に記載の方法による。
【0024】
[キレート剤]
本発明の一形態において、粒子状吸水剤は、窒素原子を有するキレート剤(本明細書中、単に「キレート剤」とも称する)を含む。キレート剤として窒素原子を含まないものも知られているが、かようなキレート剤を用いても、本発明の所期の効果を奏することはできない。
【0025】
本発明の一形態において、前記キレート剤は、アミノ多価カルボン酸およびアミノ多価リン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。なお、上記「多価」とは、1分子内に複数の官能基を有していることを指し、好ましくは2~30個、より好ましくは3~20個、さらに好ましくは4~10個、よりさらに好ましくは5~9個の官能基を有する。
【0026】
当該キレート剤は、重合への影響や、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、その分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは150~1000である。
【0027】
上記アミノ多価カルボン酸としては、具体的に、イミノ2酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ニトリロ3酢酸、ニトリロ3プロピオン酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン4酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ジアミノプロパノール4酢酸、エチレンジアミン2プロピオン酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、ジアミノプロパン4酢酸、N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-2酢酸、1,6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N’,N’-4酢酸およびそれらの塩等が挙げられる。
【0028】
上記アミノ多価リン酸としては、具体的に、エチレンジアミン-N,N’-ジ(メチレンホスフィン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン-N,N’-ジ酢酸-N,N’-ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン-N,N’-ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ポリメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびこれらの塩等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、着色の防止やゲル安定性の観点から、カルボキシル基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価カルボン酸系のキレート剤、または、ホスホン酸基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価リン酸系のキレート剤が好ましい。本発明の一形態において、着色の防止やゲル安定性の観点から、ジエチレントリアミン5酢酸、ニトリロ3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、およびそれらの塩がさらに好ましい。着色の防止や、キレート剤の残存率をより高める観点からジエチレントリアミン5酢酸またはその塩が特に好ましい。
【0030】
本発明の一形態において、キレート剤の塩としては、ナトリウムなどが挙げられるがこれに限られない。
【0031】
なお、本発明において、後述のキレート剤の含有量、添加量は、特に断りがない限り、キレート剤がノニオン型の場合は添加時の有姿、キレート剤がアニオン型の場合には、酸型として存在すると見なして計算した含有量である。
【0032】
[硫黄原子を有する無機還元剤]
硫黄原子を有する無機還元剤(本明細書において、単に「無機還元剤」とも称する)としては、還元性の硫黄原子を有する化合物が挙げられる。本発明の一形態において、無機還元剤の一分子中の硫黄原子の数としては、1~3個、1または2個、あるいは1個である。本発明の所期の効果を効率的に奏する観点から1個であることが好ましい。
【0033】
本発明の一形態において、上記無機還元剤は酸型でも塩型でもよいが、好ましくは塩型であり、より好ましくは一価または多価の金属塩、さらに好ましくは一価の金属塩である。中でも、下記に例示される含酸素還元性無機化合物、すなわち、硫黄が酸素と結合した無機還元剤が好ましく、含酸素還元性無機塩がより好ましい。
【0034】
本発明の一形態において、上記還元性の硫黄原子を有している無機還元剤としては、+4価の硫黄化合物(例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、または、ピロ亜硫酸塩)、+3価の硫黄化合物(例えば、亜二チオン酸塩)、+2価の硫黄化合物(例えば、スルホキシル酸塩)が挙げられる。なお、酸化数が+6価(正6価)の硫黄化合物が最も安定であり、一般的にそれ未満の酸化数を有する各原子は還元性を有する。
【0035】
本発明の一形態において、上記還元性硫黄原子を有する無機還元剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等のピロ亜硫酸塩;亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸アンモニウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸亜鉛等の亜二チオン酸塩;三チオン酸カリウム、三チオン酸ナトリウム等の三チオン酸塩;四チオン酸カリウム、四チオン酸ナトリウム等の四チオン酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩等の無機化合物が挙げられる。これらは水和物の形態であってもよい。
【0036】
本発明の一形態において、無機還元剤としては、取扱いのしやすさや、初期色調から、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩が好ましい。本発明の一形態において、塩としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属が好ましく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0037】
なお、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする」についての説明は、上記の[1-2]にて説明した内容が適用でき、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂の製造方法は、後述の〔3〕粒子状吸水剤の製造方法にて説明する内容が適用できる。
【0038】
[粒子状吸水剤の粒度]
本発明の一形態において、粒子状吸水剤の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200~600μm、より好ましくは200~550μm、さらに好ましくは250~500μmである。
【0039】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤中、粒子径150μm未満の粒子(微粒子)の割合は、5質量%以下、3質量%以下、あるいは、1質量%以下(下限は0質量%)に制御される。なお、粒子径850μm未満の粒子の割合は、全体に対して、通常90~100質量%、好ましくは95~100質量%である。ゆえに本発明のキレート剤比率の測定において用いられる粒子径が850μm未満の粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤の性状を代表する。
【0040】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤中、粒子径300μm未満の粒子と粒子径300μm以上850μm未満の粒子との質量比は、好ましくは70:30~10:90、より好ましくは60:40~15:85、さらに好ましくは50:50~20:80、特に好ましくは40:60~25:75である。なお、上記「粒子径300μm未満の粒子」とは、目開き300μmのJIS標準篩を通過する粒子状吸水剤であり、上記「粒子径300μm以上850μm未満の粒子」とは、目開き850μmのJIS標準篩を通過し、目開き300μmのJIS標準篩上に残留する粒子状吸水剤をそれぞれ指す。
【0041】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤のうち、JIS標準篩で規定される粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤の、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.45、さらに好ましくは0.27~0.40に制御される。
【0043】
[単量体添加比率]
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤は、窒素原子を有するキレート剤が添加された、窒素原子を有するキレート剤を含む単量体水溶液の単量体を重合することによって得られ、前記単量体水溶液に添加されたキレート剤の添加量C3(対単量体固形分)が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、前記粒子状吸水剤固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である。かかる形態によって、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する場合においては、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ易くなる。
【0044】
本形態において、前記C3は、前記C5に対して、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上、80質量%以上、あるいは、90質量%以上であることがさらに好ましい。かかる形態によって、前記キレート剤比率が、0.8~1.8の範囲になりうる。また、重合が安定するため高物性の粒子状吸水剤が得られやすい。なお、前記C3は、単量体水溶液に含まれる単量体固形分に対するキレート剤の添加量であり、前記C5は粒子状吸水剤の製造工程で添加されるキレート剤を、各添加時の単量体または吸水性樹脂の固形分に対する添加量に換算した、その合計量である。左記の「各添加時」について詳しく説明すると、キレート剤の添加量とは、添加する時点での吸水性樹脂または単量体の固形分に対する添加量の意味である。キレート剤の添加量は、製造工程中で、単量体水溶液と含水ゲルとに2回添加した場合は、単量体固形分に対する添加量(C3)と含水ゲル固形分に対する添加量(C4)を足した量とする。
【0045】
本形態において、前記C6は、前記C5の51質量%以上であることが好ましく、52質量%以上であることがより好ましく、53質量%以上であることがさらに好ましく、54質量%以上であることがよりさらに好ましく、55質量%以上であることがよりさらに好ましく、56質量%以上であることがよりさらに好ましく、57質量%以上であることがよりさらに好ましく、58質量%以上であることがよりさらに好ましく、59質量%以上であることがよりさらに好ましく、60質量%以上であることがよりさらに好ましく、61質量%以上であることがよりさらに好ましく、65質量%以上であることがよりさらに好ましく、70質量%以上であることがよりさらに好ましく、75質量%以上であることがよりさらに好ましく、80質量%以上であることがよりさらに好ましい。かかる形態によって、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ易くなる。本形態において、前記C6は、前記C5の例えば、90質量%以下、87質量%以下あるいは85質量%以下である。
【0046】
[ゲル添加比率]
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤は、単量体水溶液の単量体を重合することによって得られる含水ゲルまたは当該含水ゲルを粉砕してなる粒子状含水ゲルに、窒素原子を有するキレート剤を添加することを有することによって得られ、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加されるキレート剤の添加量C4が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、前記粒子状吸水剤の固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である。かかる形態によって、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する場合においては、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ易くなる。
【0047】
本形態において、前記C4が、前記C5に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。かかる形態によって、前記キレート剤比率が、0.8~1.8の範囲になりうる。なお、前記C4は、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの固形分に対する添加量である。
【0048】
本発明の一形態において、キレート剤残存率が、50質量%以上である。かかる形態によって、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ易くなる。ここで、キレート剤残存率とは、(含有量C6/全体量C5)×100で算出できる値である(添加量C3、添加量C4の制限は特にない)。本発明の一形態において、キレート剤残存率が、51質量%以上、52質量%以上、53質量%以上、54質量%以上、55質量%以上、56質量%以上、57質量%以上、58質量%以上、59質量%以上、60質量%以上、61質量%以上、61質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、あるいは、85質量%以上である。かかる形態によって、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られ易くなる。本発明の一形態において、キレート剤残存率が、95質量%以下、90質量%以下、87質量%以下あるいは85質量%以下である。かかる形態によって、粒子状吸水剤の初期色調が優れる、つまり白色である、との技術的効果がある。あるいは、キレート剤が残存することにより種々の技術的効果が見込まれる。
【0049】
なお、本発明の粒子状吸水剤は、本発明の目的を鑑みれば、キレート剤分解物の含有量で規定されるべきであるが、キレート剤分解物は様々な化合物が想定されるため、化合物を特定し、含有量を測定するのが困難である。そこで本発明では製造工程表現(プロダクト・バイ・プロセス)(製造工程中の添加量等)を含む「もの」表現を行う場合がある。
【0050】
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中に残存しているキレート剤の含有量(含有率)C7(質量ppm)が、10~5000ppm、100~5000ppm、200~3000ppm、あるいは、500~2000ppmである。かかる形態によって、経時着色防止、尿劣化防止との効果がある。
【0051】
本発明の一形態において、前記含有量C6が、前記粒子状吸水剤の固形分(質量)に対して、10~5000ppmであり、より好ましくは100~5000ppmであり、さらに好ましくは200~3000ppm、さらに好ましくは500~2000ppmである。かかる形態によって、経時着色防止、尿劣化防止との効果がある。
【0052】
本発明の一形態において、吸水性樹脂中または粒子状吸水剤中のキレート剤は、実施例に記載の方法により定量する。
【0053】
[無機還元剤濃度]
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中に残存している無機還元剤の含有量(含有率)が、好ましくは1~3000ppmであり、より好ましくは10~3000ppmであり、さらに好ましくは12~2000ppmである。かかる形態によって、キレート剤との相乗効果で、経時着色防止、尿劣化防止との効果がある。ここで、3000ppmを超えると、却って吸水性樹脂の劣化が起こる虞がある。本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中に残存している無機還元剤の含有量(含有率)が、20ppm以上、30ppm以上、40ppm以上、50ppm以上、60ppm以上、100ppm以上、500ppm以上、700ppm以上、800ppm以上、1000ppm以上、1200ppm以上、1300ppm以上、1500ppm以上、2000ppm以上、2200ppm以上、2300ppm以上、2500ppm以上、3000ppm以上、3200ppm以上、3300ppm以上、3500ppm以上、4000ppm以上、あるいは、4500ppm以上である。本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中に残存している無機還元剤の含有量(含有率)が、6000ppm以下、5000ppm以下、4500ppm以下、4000ppm以下、3500ppm以下、3000ppm以下、2500ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、あるいは、100ppm以下である。かような下限または上限を有することによって本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0054】
[粒子状吸水剤の残存モノマーの含有量(含有率)]
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中の残存モノマーの含有量が、1000ppm以下である。かかる形態によって、粒子状吸水剤を衛生材料に用いても皮膚低刺激性が期待できる。本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤中の残存モノマーの含有量(質量)が、700ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましい。残存モノマーの下限値としては1ppm程度であればよい。なお、中和率によらず、未中和のアクリル酸が存在するものとみなして含有量を求める。
【0055】
[粒子状吸水剤の初期色調]
本発明の一形態において、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤であって、当該粒子状吸水剤の初期色調に関し、ハンターLab表色系において、L値が好ましくは88以上、より好ましくは88.7以上、さらに好ましくは89以上、さらに好ましくは90以上である。上限は100であるが、現実的には例えば、97以下あるいは95以下である。
【0056】
本発明の一形態において、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤がハンターLab表色系において、a値は好ましくは-3~3、より好ましくは-2~2、さらに好ましくは-1~1である。さらに、b値は好ましくは0~6、より好ましくは0~5、さらに好ましくは0~4であり、さらに好ましくは0~3であり、さらに好ましくは0~2であり、さらに好ましくは0~1である。
【0057】
本発明の一形態において、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤が、ハンターLab表色系において、黄色度(YI)が、好ましい順に、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6.5以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下である。
【0058】
なお、上記L値は100に近づくほど白色度が増し、a値、b値、及び、黄色度は0に近づくほど低着色で実質的に白色となる。
【0059】
[粒子状吸水剤の粒子形状]
本発明の一形態において、粒子状吸水剤は、粒子形状が不定形破砕状である。かような形態であることによって、光の複雑な反射により視覚的にも白く輝いて見えやすい、との技術的効果を有する。ここで、不定形破砕状とは、形状が一定でない破砕状の粒子である。本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤は、好ましくは水溶液重合で得られた粉砕物である。一方、粉砕工程を経ない場合、代表的には逆相懸濁重合や重合単量体を噴霧または滴下し重合するような噴霧液滴重合等によって得られる球状の粒子または球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。本発明の一形態において、粒子状吸水剤の平均真円度は、0.83以下であることが好ましく、0.80以下であることがより好ましく、0.75以下であることがさらに好ましい。凝集体の場合は、一次粒子の平均真円度が上記範囲である。
【0060】
平均真円度の算出方法は以下のとおりである。ランダムに100個以上の粒子状吸水剤を選択し、各粒子状吸水剤を電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VE-9800)(倍率50倍)で撮影して粒子状吸水剤の画像を取得し、付属の画像解析ソフトを用いて粒子ごとに周囲長および面積を算出する。凝集体の場合は、観察しやすい正面の一次粒子に対しても同様に評価を行う。以下の式:
【0061】
【0062】
で各粒子の真円度を求め、得られた値の平均値を平均真円度として算出する。
【0063】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤における、CRCは、35g/g以上であることが好ましく、39g/g以上であることがより好ましく、40g/g以上であることがさらに好ましく、41g/g以上であることが特に好ましい。特に、41g/g以上であることによって、尿劣化防止と高吸水倍率という従来相反していた性質を両立できる。本発明の一形態において、粒子状吸水剤における、CRCは、60g/g以下、あるいは、50g/g以下でありうる。
【0064】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤における、AAP(ERT442.2-02で規定)は、10g/g以上であることが好ましく、15g/g以上であることがより好ましく、20g/g以上であることがさらに好ましい。本発明の一形態において、粒子状吸水剤における、AAPは、40g/g以下、あるいは、35g/g以下でありうる。
【0065】
[各種添加剤]
本発明の一形態において、粒子状吸水剤は、各種添加剤を含む。かかる形態により、粒子状吸水剤に所望する機能が付与されうる。本発明の一形態において、各種添加剤は、例えば、以下を含む。
【0066】
水不溶性無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物、リン酸カルシウム、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のケイ酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム等)、水溶性消臭剤(例えば、ツバキ科植物の葉っぱからの抽出物やその他公知のもの)、多価金属塩(例えば、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Alの中から選ばれる少なくとも1つ以上の金属(多価金属カチオン)を含む、有機酸塩または無機酸塩であって、具体的には、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ジルコニウム等)、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、塩類、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミン等の親水性高分子、パラフィン等の疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0067】
本発明の一形態において、各種添加剤の添加時期としては、特に限定されず、例えば、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、および、各工程間の1以上である。
【0068】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤の製造工程においては、残存モノマーを低減するため、還元剤(例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩)は乾燥工程以降に添加される。このように、本発明の一形態において、粒子状吸水剤の製造工程においては、硫黄原子を有する無機還元剤を含水ゲルまたは粒子状含水ゲルに添加する工程と、還元剤(例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩)が乾燥工程以降に添加される工程とが併用される。
【0069】
本発明の一形態において、粒子状吸水剤は、体積平均粒子径が0.2~3μmである前記水不溶性無機微粒子が粒子状吸水剤の粒子表面に添加されたものであることが好ましい。そうすることで、初期色調の改善の技術的効果がある。前記水不溶性無機微粒子の種類は、白色の粉末であれば限定されないが、好ましくは酸化チタン、酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、または、水酸化アルミニウムから選ばれる1種以上である。前記水不溶性無機微粒子の体積平均粒子径は、より好ましくは0.3~2μmであり、さらに好ましくは0.4~1.5μmである。なお、前記体積平均粒子径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3000II粒度分析計を使用)で測定する。また、粒子状吸水剤の粒子表面に前記水不溶性無機微粒子が実際に存在することは、電子顕微鏡で5000倍に拡大して観察することで確認できる。なお初期色調の改善という観点では、水不溶性無機微粒子の粒子径は、従来技術で多用されるフュームドシリカ(例えばAEROSIL(商標))が有する粒子径(数十ナノメートル程度の粒子径)よりも上記に示されるように大きい方がよい。また、前記水不溶性無機微粒子の含有量は、粒子状吸水剤に対して好ましくは0.1~1質量%であり、より好ましくは0.2~0.8質量%である。
【0070】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
本発明の一形態において、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤の製造方法であって、前記キレート剤比率が、0.8~1.8となるようにする工程を有する、製造方法が提供される。かかる形態によれば、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する形態において、最終製品である粒子状吸水剤中のキレート剤残存率の向上させることができる。なお、「前記キレート剤比率が、0.8~1.8となるようにする工程」については、明細書中の説明(特に、上記の説明)が適用される。また、「主成分」は、[1-3]ポリアクリル酸(塩)で述べた内容と同義である。
【0071】
本発明の一形態において、(メタ)アクリル酸(塩)と、過硫酸(塩)とを含む、単量体水溶液を調製する工程と、前記単量体水溶液に含まれる単量体を重合し、含水ゲルを得る重合工程と、必要に応じて、前記含水ゲルを粉砕し、粒子状含水ゲルを得るゲル粉砕工程と、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルを、乾燥し、乾燥重合体を得る乾燥工程と、前記乾燥重合体を、粉砕または分級し、吸水性樹脂粉末を得る工程と、前記吸水性樹脂粉末を、表面架橋し、吸水性樹脂粒子を得る表面架橋工程と、を含み、(i)前記単量体水溶液に、前記キレート剤を単量体成分の10~5,000ppm(単量体質量基準)添加する、および/または、(ii)前記キレート剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~5,000ppm添加する工程を含み、(iii)硫黄原子を有する無機還元剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~50,000ppm添加する工程を含む、粒子状吸水剤の製造方法が提供される。以下、工程毎に仔細に説明する。本発明の一実施形態において、キレート剤残存率をさらに高める観点から、(i)および(ii)の工程を併用することも好ましい。
【0072】
[単量体水溶液の調製工程]
本工程は、(メタ)アクリル酸(塩)と、過硫酸(塩)とを含む、単量体水溶液を調製する工程である。
【0073】
本発明の一形態において、(メタ)アクリル酸(塩)は、重合禁止剤を含む。上記重合禁止剤として、好ましくはフェノール類、より好ましくはメトキシフェノール類、さらに好ましくはp-メトキシフェノールが挙げられる。その濃度は、重合抑制効果や得られる吸水性樹脂または粒子状吸水剤の色調の観点から、10~200ppmが好ましく、10~100ppmがより好ましい。なお、前記禁止剤はその一部または全部が最終製品である粒子状吸水剤にも残存していることが好ましい。
【0074】
本発明の一形態において、(メタ)アクリル酸は一部または全部中和される。その際に用いられる塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属の炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。より高物性の吸水性樹脂または粒子状吸水剤を得るという観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸を含む単量体水溶液と、塩基性物質とを混合する。本発明の一形態において、(メタ)アクリル酸(塩)の中和率は、好ましくは10~90モル%、より好ましくは40~85モル%、さらに好ましくは50~80モル%、特に好ましくは60~75モル%である。なお、前記中和率は最終製品である粒子状吸水剤の中和率にも適用される。そのため、(メタ)アクリル酸を中和せずに、または、前記中和率に対してより低い中和率で重合させる場合は、含水ゲル状架橋重合体に対して中和することもできる。
【0075】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液中の単量体濃度は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。また、本発明の一形態において、後述する水溶液重合の好ましい例としては、前記単量体水溶液中の単量体濃度を高濃度にして行う、高濃度重合が挙げられる。高濃度重合における、前記単量体水溶液中の単量体濃度は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは39質量%以上(上限は飽和濃度)である。かかる形態によって、乾燥工程を省力化でき、キレート剤残存率が向上するとの技術的効果がある。本発明の一形態において、高濃度重合と、後述する高温開始重合とは、併用することができる。
【0076】
本発明の一形態において、(メタ)アクリル酸を含む単量体水溶液と、内部架橋剤とを混合する。内部架橋剤としては、(メタ)アクリル酸と反応しうる置換基を2個以上有する化合物が挙げられる。具体的には、米国特許第6241928号の第14カラムに記載される内部架橋剤のうちの、1種または2種以上が使用されうる。本発明の一形態において、内部架橋剤としては、好ましくは2個以上の重合性不飽和基を有する化合物が用いられる。また、本発明の一形態において、内部架橋剤としては、好ましくは25℃の水に1質量%以上溶解できる水溶性化合物である。かかる形態によって、得られる吸水性樹脂または粒子状吸水剤の吸水性能が向上する。本発明の一形態において、上記内部架橋剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001~2モル%、より好ましくは0.005~1モル%、さらに好ましくは0.01~0.5モル%である。かかる形態によれば、所望する吸水特性を効率よく得ることができる。
【0077】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液に、前記キレート剤を10~5,000ppm(単量体質量基準)添加する。好ましくは、前記単量体水溶液に、前記キレート剤を100~5,000ppm、200~4,000ppm、300~3,800ppm、400~3,500ppm、500~3,000ppm、600~2,500ppm、700~2,000ppm、800~1,900ppm、860~1,800ppm、870~1,700ppm、あるいは、900~1,650ppm添加する。言い換えれば、本発明の一形態において、単量体水溶液が上記範囲でキレート剤を含んでいる。かかる形態によれば、重合の安定化との技術的効果を有する。鉄イオンや銅イオンなど、水、原料、重合容器からの溶出物に含まれるごく微量の遷移金属イオンが重合開始の遅延や急激な重合の原因となりうる。キレート剤が鉄イオンや銅イオンを捕捉することにより、前記効果が得られる。
【0078】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液が、前記キレート剤を、単量体質量基準で、800ppm以上、860ppm以上、870ppm以上、900ppm以上、1000ppm以上、1200ppm以上、1400ppm以上、1600ppm以上、1800ppm以上、2000ppm以上、2200ppm以上、2500ppm以上、あるいは、3000ppm以上含む。本発明の一形態において、前記単量体水溶液が、前記キレート剤を、単量体質量基準で、5,000ppm以下、4,000ppm以下、3,800ppm以下、3,500ppm以下、3,000ppm以下、あるいは、2,500ppm以下含む。
【0079】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液に、前記キレート剤としてジエチレントリアミン5酢酸またはその塩添加する場合、ジエチレントリアミン5酢酸またはその塩を2,500ppm以下添加する。
【0080】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液と、例えば単量体であるアクリル酸を中和するための塩基性物質とを混合すると、中和熱および溶解熱の少なくとも一方の作用によって、混合された溶液の温度が、40℃~沸点あるいは50℃~沸点となりうる。本形態において、例えば、40℃~沸点あるいは50~102℃の際、重合開始剤として過硫酸(塩)と混合する。かかる形態によれば、重合中の水の蒸発が促進され、乾燥工程を省力化でき、キレート剤残存率が向上するとの技術的効果を有する。本発明の一形態において、過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が好適である。
【0081】
本発明の一形態において、過硫酸(塩)の使用量は、前記単量体に対して、0.01モル%以上であることが好ましく、0.015モル%超であることがより好ましく、0.02モル%以上であることがより好ましく、0.03モル%以上であることがよりさらに好ましく、0.04モル%以上であることがよりさらに好ましい。過硫酸(塩)の使用量が、前記単量体に対して、0.01モル%未満であると、残存モノマーが多くなる虞がある。あるいは、本発明の所期の効果を効率的に奏することができない虞がある。本発明の一形態において、過硫酸(塩)の使用量は、前記単量体に対して、0.5モル%以下であることが好ましく、0.2モル%以下であることがより好ましく、0.15モル%以下であることがさらに好ましい。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果がある。
【0082】
なお、重合開始剤として前記過硫酸塩に加えて、光開始剤、アゾ開始剤、または、過酸化水素を用いてもよく、還元剤を用いてレドックス開始剤としてもよい。なお、単量体水溶液の調製工程で加えられた還元剤は通常重合工程で全て消費されるため、たとえ還元剤として硫黄原子を有する無機還元剤を用いたとしても本発明の課題は解決しない。
【0083】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液は、(メタ)アクリル酸以外の他の単量体を含んでもよい。当該他の単量体としては、例えば、水溶性または疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許出願公開第2005/215734号の段落[0035]に記載される単量体(ただし(メタ)アクリル酸を除く)のうち、1種または2種以上が目的に応じて使用される。
【0084】
本発明の一形態において、前記単量体水溶液は、上述した物質以外に下記の物質を添加することもできる。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)以外の水溶性樹脂または吸水性樹脂や、各種の発泡剤(例えば、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、連鎖移動剤等が挙げられる。かかる形態によれば、得られる吸水性樹脂または粒子状吸水剤の諸物性を改善しうる。本形態において、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)以外の水溶性樹脂または吸水性樹脂の使用量の上限は、前記単量体水溶液中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。本形態において、発泡剤(例えば、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、連鎖移動剤等の使用量の上限は、前記単量体水溶液中、5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。かかる形態によれば、得られる吸水性樹脂または粒子状吸水剤の諸物性を改善しうる。本発明の一形態において、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)以外の水溶性樹脂または吸水性樹脂の使用は、グラフト重合体または吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉-アクリル酸重合体、PVA-アクリル酸重合体等)を与えるが、これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と称する。
【0085】
[重合工程]
本工程は、前記単量体水溶液に含まれる単量体を重合し、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」とも称する)を得る工程である。
【0086】
本発明の一形態において、重合方法としては、好ましくは気相中の噴霧液滴重合、水溶液重合または疎水性溶媒中での逆相懸濁重合であり、より好ましくは水溶液重合または逆相懸濁重合であり、さらに好ましくは水溶液重合であり、特に好ましくは連続水溶液重合である。かかる形態によって、重合制御が容易となり、また、得られる吸水性樹脂の吸水特性が向上する。
【0087】
本発明の一形態において、水溶液重合の好ましい例として、高温開始重合が挙げられる。本発明の一形態において、高温開始重合の重合開始温度の下限は、40℃以上であるとよい。本発明の一形態において、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。かかる形態によって、重合時間が短縮でき、キレート剤残存率を向上させることができる。本発明の一形態において、高温開始重合の重合開始温度の上限は、沸点以下であることが好ましく、100℃以下、あるいは90℃以下であることがより好ましい。かかる形態によれば、重合の安定化との技術的効果がある。本発明の一形態において、前記重合の重合開始温度が、40~100℃である。かかる形態によれば、キレート剤残存率を向上させることができる。なお、本明細書中、重合開始温度は、重合熱による昇温開始での時点と定義する。例えば実施例1では、重合開始温度が95℃である。
【0088】
本発明の一形態において、重合工程における重合時間は、30分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。かかる形態によれば、キレート剤残存率を向上させることができる。本発明の一形態において、重合工程における重合時間は、10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることがさらに好ましい。かかる形態によれば、重合の制御のしやすさとの技術的効果を有する。なお、本明細書中、重合時間は、重合熱による昇温開始を始点とし、重合容器からの取り出し、または、乾燥(重合熱による水分の蒸発は除く)の開始のうち早い方を終点としたときの時間と定義する。
【0089】
本発明の一形態において、重合工程は、空気雰囲気下で実施してもよいし、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施してもよい。窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施する場合、酸素濃度を好ましくは1容積%以下に制御する。単量体または単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで十分に置換(例えば、溶存酸素1(mg/l)未満)しておくことが好ましい。本発明の一形態において、上記単量体水溶液中に気泡(特に上記不活性ガス等)や各種発泡剤(特に炭酸塩)を分散させて重合する、発泡重合とすることもできる。
【0090】
[ゲル粉砕工程]
本発明の一形態の製造方法は、ゲル粉砕工程を有することが好ましい。
【0091】
本工程は、上記重合工程で得られる含水ゲルを粉砕し、粒子状含水ゲルを得る工程である。ゲル粉砕工程における粉砕の方式は特に制限はないが、ニーダー、ミートチョッパーまたはカッターミル等のゲル粉砕機が好適である。本発明の一形態において、ゲル粉砕は、国際公開第2011/126079号に記載されるゲル粉砕方法が好ましく適用される。
【0092】
本発明の一形態において、前記キレート剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~5,000ppm添加する工程を含む。本発明の一形態において、前記キレート剤を前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の100~5,000ppm、200~4,000ppm、300~3,800ppm、400~3,500ppm、500~3,000ppm、500~2,000ppm、600~1,900ppm、700~1,850ppm、800~1,800ppm、860~1,800ppm、870~1,700ppm、あるいは、900~1,650ppm添加する工程を含む。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。但し、単量体水溶液にキレート剤を添加する場合に比べてキレート剤の分布が不均一になりやすく、C1/C2は1.8の上限近くになりやすい。
【0093】
本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加されうるキレート剤は、キレート剤がノニオン型の場合は添加時の有姿、キレート剤がアニオン型の場合には、粒子状吸水剤中で酸型として存在すると見なして計算した濃度として、好ましくは0.01~20質量%の水溶液の形態であり、より好ましくは0.01~10質量%の水溶液の形態であり、さらに好ましくは0.1~5質量%、あるいは、0.1~1質量%の水溶液の形態である。かかる形態によれば、本発明の所期のキレート剤比率の範囲とすることができる。
【0094】
本発明の一形態において、硫黄原子を有する無機還元剤を、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の10~50,000ppm添加する工程を含む。本形態は、前記硫黄原子を有する無機還元剤を100~50,000ppm添加する工程であってもよい。
【0095】
本発明の一形態において、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)に対する添加量としては、200~50,000ppm、300~48,000ppm、400~47,000ppm、500~46,000ppm、520~46,000ppm、550~45,500ppm、600~45,000ppm、700~44,000ppm、900~42,000ppm、1,000~40,000ppm、1,100~39,000ppm、2,000~38,000ppm、2,200~37,500ppm、2,500~37,000ppm、3,000~36,000ppm、3,200~35,800ppm、4,500~35,600ppm、4,000~35,400ppm、4,100~35,400ppm、5,000~35,000ppm、5,200~35,000ppm、5,500~35,000ppm、6,000~35,000ppm、6,200~35,000ppm、7,000~34,000ppm、7,500~30,000ppm、8,000~30,000ppm、9,000~25,000ppm、9,500~23,000ppm、10,500~23,000ppm、12,000~23,000ppm、13,500~23,000ppm、15,000~23,000ppm、15,000~23,000ppm、あるいは、18,000~22,000ppmである。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上および初期色調との技術的効果を有する。
【0096】
本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加される前記硫黄原子を有する無機還元剤は、好ましくは0.01~30質量%の水溶液の形態であり、より好ましくは0.01~20質量%の水溶液の形態であり、さらに好ましくは0.02~20質量%の水溶液の形態であり、0.03~10質量%の水溶液の形態であってもよく、0.03~5質量%の水溶液の形態であってもよい。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加される前記硫黄原子を有する無機還元剤は、0.5質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2.2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、5.5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、7質量%以上、あるいは、7.5質量%以上の水溶液の形態である。本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加される前記硫黄原子を有する無機還元剤は、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%未満、9質量%以下、あるいは、8.5質量%以下の水溶液の形態である。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。
【0097】
本発明の一形態において、前記含水ゲルの粉砕と同時に、前記無機還元剤を添加する。ここで「同時」とは、含水ゲルの粉砕の開始時点と、無機還元剤の添加時点とが同じでなければならないという意味ではなく、前記含水ゲルの粉砕を行いながら、前記無機還元剤を練りこんでいくとの意味である。粉砕している時間と、添加している時間とが一部でも重複すればよい。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。
【0098】
本発明の一形態において、前記含水ゲルの粉砕と同時に、前記キレート剤を添加する。かかる形態の意味も、前記含水ゲルの粉砕を行いながら、前記キレート剤を練りこんでいくとの意味である。粉砕している時間と、添加している時間とが一部でも重複すればよい。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。
【0099】
[乾燥工程]
本工程は、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルを乾燥し、乾燥重合体を得る工程である。本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルを乾燥し、所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る。当該樹脂固形分量は、乾燥減量(試料1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化)から求められる値であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85~99質量%、さらに好ましくは90~98質量%、特に好ましくは92~97質量%である。
【0100】
本発明の一形態において、乾燥方法は、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルが、上記樹脂固形分となるまで乾燥できる方法である。本発明の一形態において、乾燥方法として、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水乾燥または高温水蒸気による高湿乾燥等が挙げられる。乾燥工程は、1種の乾燥方法によって行ってもよい。乾燥工程は、適宜選択された2種の乾燥方法によって行ってもよい。
【0101】
本発明の一形態において、上述した乾燥方法の中でも、乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましい。本発明の一形態において、ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。本発明の一形態において、前記乾燥が、好ましくは120~250℃の熱風による乾燥であり、より好ましくは140~220℃の熱風による乾燥であり、さらに好ましくは160~200℃の熱風による乾燥である。かかる形態によれば、乾燥時間を短縮でき、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。
【0102】
本発明の一形態において、乾燥時間が、好ましくは120分以下であり、より好ましくは80分以下であり、さらに好ましくは60分以下である。かかる形態によれば、初期色調の向上との技術的効果を有する。本発明の一形態において、前記乾燥の時間が、現実的には1分以上であり、3分以上であり、さらには5分以上である。
【0103】
本発明の一形態において、前記乾燥のうち、固形分量が80質量%となるまでの乾燥時間が、好ましくは30分以下であり、より好ましくは20分以下であり、さらに好ましくは15分以下である。かかる形態によれば、キレート剤残存率の向上との技術的効果を有する。本発明の一形態において、固形分量が80質量%となるまでの乾燥時間が、現実的には1分以上であり、3分以上である。
【0104】
本発明の一形態において、バンド乾燥を行う場合には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される、バンド乾燥条件が好ましく適用される。
【0105】
本発明の一形態において、前記乾燥が、静置乾燥機およびバンド乾燥機から選択される乾燥機で行われる。かかる形態によって、大量生産においても短時間で乾燥できるとの技術的効果がある。
【0106】
本発明の一形態において、前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、1~10cmである。粒子状含水ゲルの層高が過度に高いと、キレート剤残存率が低下する虞がある。本発明の一形態において、前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、2~6cmである。かかる形態によって、キレート剤残存率を向上させることができる。本発明の一形態において、前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、11cm未満、10cm以下、6cm未満、5cm以下、4.5cm以下、あるいは、4cm以下である。本発明の一形態において、前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、1cm以上、あるいは、2cm以上である。なお、含水ゲルまたは粒子状含水ゲルの層高とは、バッチ式の乾燥の場合、積層された含水ゲルまたは粒子状含水ゲルの層高をランダムに5点以上測定し平均したものであり、連続式のバンド乾燥の場合積層完了地点において、乾燥ベルトの進行方向に対して直交する方向に切った際の断面でのゲル層高を等間隔に5点測定し、さらに数秒ごとに測定を繰り返して、全ての測定結果を平均したものとする。測定装置として例えばレーザー式距離計やレーザー式変位計などを用いて測定することができる。
【0107】
なお、所望の層高にする方法については、例えば、乾燥機にベルトによって前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルを搬送する際のベルトの速度を調整する方法等が好適であるがこれに制限されない。
【0108】
本発明の一形態において、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの時間が120分以下、120分未満、100分以下、80分以下、60分以下、45分以下、あるいは、30分以下、または、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの前記含水ゲルの温度が0~55℃である。かかる形態によって、無機還元剤による劣化や着色を抑制することができる。本形態において、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの時間が、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下である。本形態において、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの時間が、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上である。また、本形態において、前記含水ゲルまたは粒子状含水ゲルの温度は、好ましくは0~60℃であり、より好ましくは0℃超60℃未満であり、40~50℃であってもよい。上記形態は、無機還元剤を添加した時点から乾燥開始までの間、含水ゲルまたは粒子状含水ゲルの温度を保温手段等により0~55℃に保つことを意味する。
【0109】
[粉砕工程および分級工程]
本工程は、前記乾燥重合体を、粉砕または分級し、吸水性樹脂粉末を得る工程である。本発明の一形態において、本工程は、上記乾燥工程で得られる乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
【0110】
本発明の一形態において、当該粉砕工程で使用される機器としては、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリュウーミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。これらは、必要に応じて、併用されてもよい。
【0111】
本発明の一形態において、分級工程での粒度調整方法としては、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程(例えば、造粒工程)で、適宜実施することができる。
【0112】
本発明の一形態において、吸水性樹脂粉末の重量平均粒子径(D50)を、好ましくは200~600μm、より好ましくは200~550μm、さらに好ましくは250~500μmに制御する。
【0113】
本発明の一形態において、粒子径850μm以上の粒子(粗大粒子)の割合を、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下(下限は0質量%)にそれぞれ制御する。
【0114】
本発明の一形態において、粒子径850μm未満の粒子の割合は、全体に対して、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%である。
【0115】
本発明において、通常、粒子状吸水剤に含まれる粒子径150μm未満の粒子(微粒子)は前記のように少ない方がよいが、微粒子にはキレート剤が高濃度で含まれている場合があるので、前記分級工程で微粒子を取り除かずに、表面架橋工程以降に微粒子と他の粒子を凝集させて大きい粒子にする工程(造粒工程)を設けることもできる。また、前記分級工程で微粒子を取り除いた場合は、微粒子同士を凝集させて大きい粒子にする微粉造粒工程を設けることがよい。好ましい微粉造粒工程は、米国特許第7153910号(温水を用いた微粉造粒)や米国特許第8598254号(水と水蒸気を用いた微粉造粒)記載の方法が適用される。本発明の一形態においては、乾燥重合体を粉砕したもの(吸水性樹脂粉末)に対して粒子径150μm未満の粒子(微粒子)を取り除かない。あるいは、 粒子状吸水剤中、粒子径150μm未満の粒子(微粒子)の割合は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、あるいは、0.5質量%以上であってよい。
【0116】
上記各粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2-02に記載されている測定方法に準拠して、JIS標準篩を用いて測定される。また、上記粒度は、表面架橋後の吸水樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する)についても適用される。したがって、上記粒度を維持するように、表面架橋されることが好ましい。
【0117】
[表面架橋工程]
本工程は、前記吸水性樹脂粉末を表面架橋し、吸水性樹脂粒子を得る工程である。本発明の一形態において、本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、架橋密度の高い部分を形成する工程であり、好ましくは、以下の、(1)および(2)、あるいは、(1)~(3)の工程から構成されている。当該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末の表面層でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等によって、表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0118】
(1)混合工程
本発明の一形態において、表面架橋工程で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、種々の有機または無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂または粒子状吸水剤の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応して共有結合を形成する有機表面架橋剤が好ましい。具体的には、米国特許第7183456号の第9~10カラムに記載される表面架橋剤のうち、1種または2種以上が使用される。本発明の一形態において、表面架橋剤の使用量(2種以上使用される場合はその合計使用量)としては、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部である。本発明の一形態において、表面架橋剤を吸水性樹脂粉末に添加する際、水を使用することが好ましく、水溶液として添加されることがより好ましい。その場合、水の使用量としては、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。本発明の一形態において、表面架橋剤と、必要に応じて添加される水とともに、親水性有機溶媒も使用される。親水性有機溶媒としては、特に制限はないが、炭素数1~3のモノアルコール、または、グリコールが好適である。なお、グリコールは表面架橋剤としても使用され得るが、後述の加熱処理工程の加熱温度が150℃未満であれば、親水性有機溶媒として作用している。本発明の一形態において、親水性有機溶媒の使用量としては、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。2種以上使用する場合はその合計量である。本発明の一形態において、上記表面架橋剤の添加・混合方法は、特に限定されないが、表面架橋剤および溶媒としての水、親水性有機溶媒またはこれらの混合物を予め用意した後、吸水性樹脂粉末に対して、噴霧または滴下して添加し混合することが好ましく、噴霧して添加し混合することがより好ましい。本発明の一形態において、表面架橋剤と吸水性樹脂粉末との混合に使用される混合装置は、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは連続式高速撹拌型混合機が挙げられる。
【0119】
(2)加熱処理工程
本発明の一形態において、上述した表面架橋剤と吸水性樹脂粉末との混合物は加熱処理することで、表面架橋反応を起こし、表面が架橋された吸水性樹脂粒子が得られる。本発明の一形態において、当該加熱処理には公知の乾燥機が適用されるが、好ましくはパドルドライヤーである。その際の加熱温度(熱媒温度)としては、好ましくは80~250℃、より好ましくは100~220℃である。また、加熱時間としては、好ましくは1~120分、より好ましくは5~90分、さらに好ましくは10~60分である。
【0120】
(3)冷却工程
本発明の一形態において、加熱処理工程後、冷却工程が設けられる。冷却工程によって、述した表面架橋反応の停止がなされうる。または、次工程への搬送を容易にする。本発明の一形態において、当該冷却処理には、加熱処理工程で使用される公知の乾燥機と同一形式の装置が適用される。その際の冷却温度(冷媒温度)としては、好ましくは0~90℃、より好ましくは20~85℃、さらに好ましくは40~80℃である。
【0121】
以上のようにして、窒素原子を有するキレート剤と、硫黄原子を有する無機還元剤とを含む、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤であって、所定のキレート剤比率が、0.8~1.8である、粒子状吸水剤が製造されうる。
【0122】
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤が、窒素原子を有するキレート剤を含む単量体水溶液の単量体を重合することによって得られ、前記単量体水溶液に添加されたキレート剤の添加量C3(対単量体固形分)が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、前記粒子状吸水剤の固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である、製造方法が提供される。かかる形態によれば、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する形態において、最終製品である粒子状吸水剤中のキレート剤残存率の向上させることができる。なお、かかる形態の詳細な説明は〔2〕粒子状吸水剤において行っておりその説明が同様に妥当するので、ここでは省略する。
【0123】
本発明の一形態において、前記粒子状吸水剤が、単量体水溶液の単量体を重合することによって得られる含水ゲルまたはそれを粉砕してなる粒子状含水ゲルに、窒素原子を有するキレート剤を添加することによって得られ、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加されるキレート剤の添加量C4が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上であり、前記粒子状吸水剤の固形分に対するキレート剤の含有量C6が、前記C5の50質量%以上である製造方法が提供される。かかる形態によれば、製造工程の上流の工程、例えば、重合工程等でキレート剤を添加する形態において、最終製品である粒子状吸水剤中のキレート剤残存率の向上させることができる。なお、かかる形態の詳細な説明は〔2〕粒子状吸水剤において行っておりその説明が同様に妥当するので、ここでは省略する。
【0124】
〔4〕粒子状吸水剤の用途
本発明の一形態において、上記粒子状吸水剤、あるいは、上記製造方法によって得られた粒子状吸水剤の用途は特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の吸水性物品に使用される。
【0125】
〔5〕特に好ましい形態の組み合わせ
本明細書において開示されている形態は、単独の形態はもちろんのこと、その形態の全ての組み合わせの形態も開示されているとみなされる。つまり適法な補正の根拠となりうるが、特に好ましい形態の組み合わせを説明する。以下のとおり、(i)~(xi)の少なくとも2つの形態は特に好ましい形態の組み合わせとして本願明細書にて提供される。
【0126】
(i)本発明の一形態においては、キレート剤が、カルボキシル基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価カルボン酸系のキレート剤、または、ホスホン酸基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価リン酸系のキレート剤である。
【0127】
(ii)本発明の一形態においては、キレート剤が、カルボキシル基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価カルボン酸系のキレート剤、または、ホスホン酸基を4個以上(または5個以上)有するアミノ多価リン酸系のキレート剤である。
【0128】
(iii)本発明の一形態において、無機還元剤の一分子中の硫黄原子の数としては、1~3個、1または2個、あるいは1個である。
【0129】
(iv)本発明の一形態において、前記単量体水溶液が、前記キレート剤を、単量体質量基準で、870ppm以上、あるいは、900ppm以上含む。
【0130】
(v)本発明の一形態において、前記単量体水溶液が、前記キレート剤としてジエチレントリアミン5酢酸またはその塩を含む場合、ジエチレントリアミン5酢酸またはその塩を2,500ppm以下含む。
【0131】
(vi)本発明の一形態において、過硫酸(塩)の使用量は、前記単量体に対して、0.02モル%以上である。
【0132】
(vii)本発明の一形態において、硫黄原子を有する無機還元剤を、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、添加する工程を含み、前記C3が、前記C5に対して、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、あるいは、90質量%以上である場合、当該添加量としては、上記のうち600ppm以上であり、前記C4が、前記C5に対して、70質量%以上、80質量%以上、あるいは、90質量%以上である場合、当該添加量としては、上記のうち400ppm以上である。
【0133】
(viii)本発明の一形態において、硫黄原子を有する無機還元剤を、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに、当該含水ゲルまたは当該粒子状含水ゲルの固形分(質量)の4,000ppm以上添加する工程を含む。
【0134】
(ix)本発明の一形態において、前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルに添加される前記硫黄原子を有する無機還元剤は、3.5質量%以上10質量%未満の水溶液の形態である。
【0135】
(x)本発明の一形態において、前記乾燥機に積層される前記含水ゲルまたは前記粒子状含水ゲルの層高が、11cm未満、あるいは、6cm未満である。
【0136】
(xi)本発明の一形態において、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの時間が30分以下、または、前記無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの前記含水ゲルの温度が0~55℃である。
【実施例】
【0137】
本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、特に記載のない限り、室温(20~25℃)、湿度50RH%の条件下で、EDANA法および以下の測定法に従って求めた。さらに、実施例および比較例に提示される電気機器は、200Vまたは100V、60Hzの電源を使用した。なお、便宜上「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記すことがある。また特に記述のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0138】
〔粒子状吸水剤の製造〕
[実施例1]
(単量体水溶液の調製工程)
アクリル酸(216.2g)に、内部架橋剤である10質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量;523)水溶液(3.13g、アクリル酸に対して0.02モル%)、および、キレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩の水溶液(1.32g)を添加した溶液(A)と、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液(180.6g)を50℃に調温した脱イオン水(209.9g)で希釈した溶液(B)とを、容量1.5L、内径80mmのポリプロピレン製の容器にそれぞれ調製した。マグネチックスターラーを用いて上記溶液(A)を攪拌しながら、上記溶液(B)を加えて混合することで、溶液(C)を調製した。なお、溶液(C)の温度は、混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、101℃まで上昇した。
【0139】
その後、上記溶液(C)の攪拌を継続し、溶液(C)の温度が95℃となった時点で、溶液(C)に、重合開始剤として10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(3.6g、アクリル酸(ナトリウム)に対して0.05モル%、0.12g/mol)を加えて、約3秒間攪拌し、単量体水溶液(1)とした。なお、単量体水溶液(1)の、酸型として換算したときのキレート剤含有量、即ちジエチレントリアミン5酢酸の含有量は856ppm(対単量体)である。
【0140】
(重合工程)
単量体水溶液(1)の中和率は73モル%、単量体濃度は43質量%であった。次に、上記単量体水溶液(1)をバット型容器に、大気開放系で流し込んだ。なお、当該バット型容器は、底面の大きさが250mm×250mm、上面の大きさが640mm×640mm、高さが50mm、中心断面が台形状であり、内面にテフロン(登録商標)シートを貼付した容器であった。また、当該バット型容器は、100℃に加熱されたホットプレート上に載置し、プレヒートしておいた。上記単量体水溶液(1)を上記バット型容器に流し込んだ後、約5秒後に重合反応が開始し単量体水溶液が昇温した。重合開始温度は93℃であった。当該重合反応は、水蒸気を発生しながら上方に向かって単量体水溶液(1)が四方八方に膨張、発泡しながら進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで、得られた含水ゲル(1)が収縮して終了した。なお、当該重合反応(膨張、収縮)は約1分間以内に終了したが、その後、2分間はバット型容器内に含水ゲル(1)の状態を保持した。当該重合反応によって、気泡を含む含水ゲル(1)を得た。重合時間は、3分であった。
【0141】
(ゲル粉砕工程)
次に、上記重合反応で得られた含水ゲル(1)を16等分した後、多孔板を有する卓上型ミートチョッパー(MEAT-CHOPPER TYPE:12VR-400KSOX、飯塚工業株式会社製)を用い、含水ゲルの投入と同時に、25℃の0.04質量%の亜硫酸ナトリウム水溶液を含水ゲルに、含水ゲルの固形分100質量部(265g)に対して25質量部添加しながらゲル粉砕を行った。従って添加する亜硫酸ナトリウムは含水ゲルの固形分に対して100ppm添加されている。
【0142】
上記ゲル粉砕で得られた粒子状含水ゲル(1)は、重量平均粒子径(D50)が1.2mmであった。
【0143】
(乾燥工程)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)450gを目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げて載せ、静置乾燥機内に入れた。その際、当該静置乾燥機(通気流回分乾燥機71-S6型(サタケ化学機械工業(株) 製))にて積層される前記粒子状含水ゲルの層高を5箇所測定し平均したところ3cmであった。
【0144】
一方で、ゲル粉砕工程にて無機還元剤の添加タイミングを予め計測しており、その無機還元剤を添加後、5分経過した時点で180℃の熱風の通気を開始した。なお、前記ゲル粉砕直後の含水ゲルの温度は50℃であることを確認した。
【0145】
なお、同様の乾燥において、一時的に乾燥機から半乾燥物を取り出して質量を測定する操作を繰り返すことにより、10分で固形分量が80質量%に達することが分かっている。
【0146】
熱風の通気の開始から30分経過した時点で熱風の通気を終了させた。そうすることで粒子状の乾燥重合体(1)を得た。この際、乾燥重合体固形分量が95質量%であった
(粉砕、分級工程)
続いて、当該乾燥重合体(1)をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕し、その後、目開き850μmおよび150μmの二種類のJIS標準篩を用いて、ロータップ式篩分級機で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂(1)を得た。
【0147】
(表面架橋工程)
次に、エチレングリコールジグリシジルエーテル(0.05質量部)、プロピレングリコール(1質量部)、脱イオン水(3.0質量部)およびイソプロピルアルコール(1質量部)からなる表面架橋剤溶液(1)を、上記不定形破砕状の吸水性樹脂(1)(100質量部)に添加し、スパチュラで均一になるまで混合することで、加湿混合物(1)を得た。続いて、当該加湿混合物(1)をステンレス製の容器(直径9cm、高さ約1cm)に均一に入れ、180℃で40分間加熱処理し、表面架橋された吸水性樹脂(1)を得た。
【0148】
その後、表面架橋された吸水性樹脂(1)を目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで、最終製品である粒子状吸水剤(1)を得た。結果を下記表に示す。
【0149】
[実施例2]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を0.2質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、500ppmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(2)を製造した。結果を下記表に示す。
【0150】
[実施例3]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を0.8質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、2000ppmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(3)を製造した。結果を下記表に示す。
【0151】
[実施例4]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を2.0質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、5000ppmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(4)を製造した。結果を下記表に示す。
【0152】
[実施例5]
上記実施例1において、単量体水溶液(1)に対するジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩の添加量を酸型として43ppm(対単量体)に変更し、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を0.2質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を500ppmに変更し、また、上記亜硫酸ナトリウム水溶液中にジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩を酸型として813ppm(対含水ゲルの固形分)添加してゲル粉砕工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(5)を製造した。結果を下記表に示す。
【0153】
[実施例6]
上記実施例5において、目開き150μmのJIS標準篩を用いて分級しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、粒子状吸水剤(6)を製造した。結果を下記表に示す。
【0154】
[実施例7]
上記実施例5において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を2.4質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を6000ppmにしたこと以外は、実施例5と同様にして、粒子状吸水剤(7)を製造した。結果を下記表に示す。
【0155】
[実施例8]
上記実施例7において、目開き150μmのJIS標準篩を用いて分級しなかったこと以外は、実施例6と同様にして、粒子状吸水剤(8)を製造した。結果を下記表に示す。
【0156】
[実施例9]
上記実施例1において、アクリル酸ナトリウムに対する過硫酸ナトリウム水溶液の添加量を0.055モル%(0.13g/mol)に変え、重合開始温度を77℃に変え、重合原料の質量を2倍にして重合し、亜硫酸ナトリウムを含水ゲルに含水ゲルの固形分に対して100ppm添加したことに変えて、亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を4質量%として亜硫酸水素ナトリウムを含水ゲルの固形分に対して10000ppm添加し、粒子状含水ゲル1kgを積層して乾燥したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(9)を製造した。結果を下記表に示す。なお、粒子状含水ゲルのゲル層高は5cmであった。
【0157】
[実施例10]
上記実施例9において、亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を8質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸水素ナトリウムの添加量を、20,000ppmにしたこと以外は、実施例9と同様にして、粒子状吸水剤(10)を製造した。結果を下記表に示す。
【0158】
[実施例11]
上記実施例9において、ジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩を酸型として856ppm添加したことに変えて、エチレンジアミン四酢酸を1910ppm添加し、また、亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を1.2質量%として含水ゲルの固形分に対する亜硫酸水素ナトリウムの添加量を3000ppmにしたこと以外は、実施例9と同様にして、粒子状吸水剤(11)を製造した。結果を下記表に示す。
【0159】
[実施例12]
上記実施例11において、アクリル酸に対してエチレンジアミン四酢酸を1910ppm添加したことに変えて、ニトリロトリ酢酸を1250ppm添加したこと以外は、実施例11と同様にして、粒子状吸水剤(12)を製造した。結果を下記表に示す。
【0160】
[実施例13]
上記実施例11において、エチレンジアミン四酢酸を1910ppm添加したことに変えて、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のナトリウム塩を酸型として799ppm添加したこと以外は、実施例11と同様にして、粒子状吸水剤(13)を製造した。結果を下記表に示す。
【0161】
[実施例14]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を1.2質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、6000ppmに変更し、無機還元剤を添加後、熱風の通気の開始までの時間を120分に変更し、無機還元剤を添加してから乾燥開始までの粒子状含水ゲルを水分が蒸発しないように袋に入れて無風オーブンで60℃に保つように変更した以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(14)を製造した。結果を下記表に示す。なお、熟成工程は、実施例14のみ行われており、それ以外の実施例、比較例(後述の実施例21~41も含む)は、無機還元剤を添加した時点を起点として乾燥開始までの時間は、5~30分の間で行われた。
【0162】
[実施例15]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウムを含水ゲルに含水ゲルの固形分に対して100ppm添加したことに変えて、チオ硫酸ナトリウム五水和物水溶液の濃度を4.7質量%とし、チオ硫酸ナトリウム五水和物を含水ゲルに、含水ゲルの固形分に対して11800ppm添加したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(15)を製造した。結果を下記表に示す。
【0163】
[実施例16]
上記実施例2において、アクリル酸ナトリウムに対する過硫酸ナトリウム水溶液の添加量を0.015モル%(0.04g/mol)に変更した以外は、実施例2と同様にして、粒子状吸水剤(16)を製造した。結果を下記表に示す。
【0164】
[実施例17]
上記実施例16において、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を2.4質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、6000ppmに変更したこと以外は、実施例16と同様にして、粒子状吸水剤(17)を製造した。結果を下記表に示す。
【0165】
[実施例18]
上記実施例1において、乾燥時の粒子状含水ゲルの層高を6cmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(18)を製造した。結果を下記表に示す。
【0166】
[実施例19]
上記実施例18において、乾燥時の粒子状含水ゲルの層高を11cmにしたこと以外は、実施例18と同様にして、粒子状吸水剤(19)を製造した。結果を下記表に示す。
【0167】
[実施例20]
上記実施例1において、含水ゲルに対する脱イオン水の添加量を含水ゲルの固形分に対して6gに変更し、亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を10質量%とし、含水ゲルの固形分に対する亜硫酸ナトリウムの添加量を、6000ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(20)を製造した。結果を下記表に示す。
【0168】
[比較例1]
上記実施例1において、亜硫酸ナトリウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較粒子状吸水剤(1)を製造した。結果を下記表に示す。
【0169】
[比較例2]
国際公開第2011/040530号に記載の実施例1-7に従って、比較粒子状吸水剤(2)を製造した。結果を下記表に示す。
【0170】
[比較例3]
国際公開第2015/053372号に記載の実施例6に従って、比較粒子状吸水剤(3)を製造した。結果を下記表に示す。
【0171】
[比較例4]
特開2003-206305号公報に記載の実施例1に従って、比較粒子状吸水剤(4)を製造した。結果を下記表に示す。
【0172】
[比較例5]
特開2003-206305号公報に記載の実施例2に従って、比較粒子状吸水剤(5)を製造した。結果を下記表に示す。
【0173】
[比較例6]
上記実施例1において、含水ゲルの固形分に対して亜硫酸ナトリウムを100ppm添加したことに変えて、シュウ酸2水和物を6000ppm添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較粒子状吸水剤(6)を製造した。結果を下記表に示す。
【0174】
[比較例7]
上記実施例5において、含水ゲルにジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩を添加せず、表面架橋工程において表面架橋剤溶液(1)にジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩を酸型として0.0813質量部を加え、脱イオン水を2.9質量部に変更した表面架橋剤溶液(2)を用い、不定形破砕状の吸水性樹脂100質量部に添加したこと以外は、実施例5と同様にして、比較粒子状吸水剤(7)を製造した。結果を下記表に示す。
【0175】
〔各種測定〕
[吸水性樹脂の固形分量]
吸水性樹脂において、180℃で揮発しない成分が占める割合を固形分量として表す。固形分量と含水率との関係は、以下の通りである;
固形分量(質量%)=100-含水率(質量%)
固形分量の測定方法は、以下の通りである。底面の直径が約5cmのアルミニウム製カップ(質量W0)に、約1gの吸水性樹脂を量り取り(質量W1)、180℃の無風乾燥機内に3時間静置して、乾燥させた。乾燥後の「アルミニウム製カップ+吸水性樹脂」の質量(W2)を測定し、下記式:
固形分量(質量%)=((W2-W0)/W1)×100
によって固形分量を求めた。なお、ブロック状の乾燥重合体は、様々な位置からサンプルを5点取得し、粒子径が5mnm以下になるように砕いてから測定し、平均値を採用した。
【0176】
[含水ゲルの固形分量]
上記「吸水性樹脂の固形分」の測定方法と同様の方法で、粒子状の含水ゲルの固形分を測定した。但し、含水ゲルの量を約2g、乾燥温度を180℃、乾燥時間を24時間に、それぞれ変更した。
【0177】
[残存モノマー]
残存モノマーは、EDANA法(ERT410.2-02)に準拠して測定した。
【0178】
[キレート剤の含有量、残存量および残存率]
国際公開第2015/053372号パンフレットに記載の手法で、粒子状吸水剤中のキレート剤を抽出し、分析した。
【0179】
具体的には、各実施例、比較例で得られた粒子状吸水剤1gを0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液100gに添加し、室温下で1時間攪拌(攪拌回転数:500±50rpm)することで、キレート剤を0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に抽出した。その後、膨潤したゲルを濾紙(No.2/JIS P 3801で規定する保留粒子径;5μm/トーヨー濾紙株式会社製)を用いて濾過した。次いで、得られた濾液を、HPLCサンプル前処理用フィルター(クロマトディスク25A/水系タイプ、ポアサイズ;0.45μm/倉敷紡績株式会社製)に通過させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、濾液中のキレート剤の含有量を測定した。粒子状吸水剤中のキレート剤の含有量は、既知濃度のキレート剤標準液を測定して得られた検量線を外部標準として、粒子状吸水剤の0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対する希釈率を考慮して求めた。そして、HPLCの測定条件は、キレート剤の種類によって適宜変更した。具体的には、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、およびニトリロ3酢酸(NTA)に関しては下記測定条件1に従い、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)に関しては下記測定条件2に従い、それぞれ定量を行った。
【0180】
測定条件1:
<溶離液>;0.4モル/Lのミョウバン水溶液0.3ml、0.1Nの水酸化カリウム水溶液450ml、0.4モル/Lの水酸化テトラn-ブチルアンモニウム水溶液3ml、硫酸3ml、エチレングリコール1.5ml、およびイオン交換水2550mlの混合溶液
<カラム>;LichroCART 250-4 Superspher 100 RP-18e(4μm)(メルク株式会社製)
<カラム温度>;23±2℃
<流量>;1ml/min
<検出器>;UV、波長258nm。
【0181】
測定条件2:
<溶離液>;0.003モル/Lの硫酸水溶液
<カラム>;Shodex IC NI-424(昭和電工株式会社製)
<カラム温度>;40℃
<流量>;1ml/min
<検出器>;RI。
【0182】
上記キレート剤の含有量は含水率の影響を受けるため、本発明のキレート剤の含有量C6では、含水率補正した値であり、粒子状吸水剤の固形分に対して換算した値である。本発明のキレート剤の含有量C1、C2、C7は、含水率補正しない値である。キレート剤がアニオン型の場合には、吸水性樹脂及び粒子状吸水剤中で酸型として存在するものと見なし、検量線は添加したキレート剤標準液で作成し、分子量を用いた計算により酸型への換算を行った。
【0183】
[無機還元剤濃度]
国際公開第2011/040530号パンフレットに記載の手法で、粒子状吸水剤中の無機還元剤を抽出し、分析した。
【0184】
具体的には、200mlのビーカーにイオン交換水50gと吸水性樹脂0.5gを入れ1時間放置する。次に、メタノール50gを加えた後、マラカイトグリーン2mmolを後述の溶離液に溶解した溶液2.5gを添加する。この溶液を約30分間攪拌した後、濾過し、濾液を高速液体クロマトグラフィーで分析することによって粒子状吸水剤に含まれる還元剤の量を求める。尚、溶離液はメタノール400ml、n-ヘキサン6ml、0.0M-2-N-morpholino-ethanesulfonic acid, sodium salt 100mlに比で調整した。また、検量線は還元剤を含まない粒子状吸水剤に還元剤をスパイクしたものを分析することで作成した。上記の分析による無機還元剤の検出限界は5ppmであった。
【0185】
[着色評価]
吸水性樹脂の初期色調の評価は、日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ-Σ80COLOR MEASURING SYSTEMを用いて行った。測定の設定条件は、反射測定が選択され、内径30mmで且つ高さ12mmである付属の粉末・ペースト試料台が用いられ、標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2が用いられ、30Φ投光パイプが用いられた。備え付けの試料台に約5gの実施例、比較例で得られた粒子状吸水剤を充填した。この充填は、備え付け試料台を約6割程度充填する状態であった。室温(20~25℃)および湿度50RH%の条件下で、上記分光式色差計にて表面のハンターLab表色系におけるL値(Lightness:明度指数)およびYI値(黄色度;イエローネスインデックス)を測定した。L値は高い程良く、また、YI値は小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。同じ装置の同じ測定法によって、同時に他の尺度の物体色a、b値(色度)も測定できる。a、b値は小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。
【0186】
[着色促進試験]
吸水性樹脂の着色促進試験は、上記初期色調の評価で用いた、約5gの吸水性樹脂が入った粉末・ペースト試料台を70℃、湿度65%に調整した恒温恒湿器に入れて、7日間保管することにより行った。なお、着色促進試験後の色調は、恒温恒湿器に入れた粉末・ペースト試料台をそのまま初期色調と同じ分光式色差計に置いて、同じ測定条件でおこなった。
【0187】
[衝撃試験]
各実施例、比較例において得られた粒子状吸水剤30gおよび直径6mmのガラスビーズ10gを、ガラス製容器(直径6cm、高さ11cm)に入れ、ペイントシェーカー(製品No.488試験用分散機/株式会社東洋製機製作所製)を用いて、粒子状吸水剤の解砕を行った。なお、上記解砕は、ペイントシェーカーを800(cycle/min)(CPM)で30分間、振とうすることで行った。上記振とう後、目開き2mmのJIS標準篩を用いてガラスビーズを除去した。また、ペイントシェーカー(分散機)の詳細は特開平9-235378号公報に開示されている。
【0188】
前記衝撃試験が施された粒子状吸水剤を、JIS標準篩によって、粒子径が300μm未満の粒子群1と、300μm以上850μm未満の粒子群2とに篩分けした。
【0189】
前記粒子群1に存在するキレート剤の含有量C1および前記粒子群2に存在するキレート剤の含有量C2を定量した後、C1をC2で除すことで、キレート剤比率(C1/C2)を得た。結果を下記表に示す。
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
〔考察〕
実施例1~6においては、製造工程の上流の工程でキレート剤を添加しているが、キレート剤残存率が良好であった。これに対し比較例1は、キレート剤残存率は不良であった。
【0197】
また、実施例1~4、9~20は、粒子状吸水剤が、窒素原子を有するキレート剤を含む単量体水溶液の単量体を重合することを有することによって得られ、前記単量体水溶液に含まれるキレート剤の添加量C3(対単量体固形分)が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して50質量%以上である。しかし、キレート剤残存率は50%以上であることが確認できた。また、実施例5~8は、粒子状吸水剤が、単量体水溶液の単量体を重合することによって得られる含水ゲルを粉砕してなる粒子状含水ゲルに、窒素原子を有するキレート剤を添加することを有することによって得られ、前記粒子状含水ゲルに添加されるキレート剤の添加量C4が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%以上である。しかし、キレート剤残存率は50%を超えていることが確認できた。以上より、最終製品でキレート剤の添加量に見合った十分な効果が得られていることが示唆される。また、キレート剤比率が、各実施例において、0.8~1.8であった。
【0198】
これに対し、比較例1(還元剤不使用)、6(シュウ酸使用)は、粒子状吸水剤が、窒素原子を有するキレート剤を含む単量体水溶液の単量体を重合することを有することによって得られ、前記単量体水溶液に含まれるキレート剤の添加量C3(対単量体固形分)が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して50質量%以上である。結果、キレート剤残存率は50%未満であることが確認できた。これは、硫黄原子を有する無機還元剤が粒子状吸水剤の製造工程で添加されなかったためと推測される。
【0199】
比較例3は、前記単量体水溶液に含まれるキレート剤の添加量C3が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して50質量%未満で、前記粒子状含水ゲルに添加されるキレート剤の添加量C4が、粒子状吸水剤の製造の工程で添加されるキレート剤の全体量C5に対して、50質量%未満であり、窒素原子を有するキレート剤を粒子状吸水剤の製造工程の下流の工程にて多く添加しているのでキレート剤比率が2.1と高い。比較例4、5は、含水ゲルにキレート剤を添加しているが、キレート剤比率が1.9~2.0である。これは添加するキレート剤溶液の濃度が高すぎるためと推定される。
【0200】
ここで、実施例2(キレート剤単量体添加)、実施例5(キレート剤含水ゲル添加)、および、比較例7(キレート剤表面架橋時添加)の着色促進試験後の色調を比較すると、キレート剤比率が2.0である比較例7に対して、キレート剤比率が0.8~1.8の範囲内である実施例2、5は着色が少ないことが分かる。即ち、色調安定性のためにはキレート剤比率が0.8~1.8であることが好ましいことが示された。
【0201】
[実施例21]
(単量体水溶液の調整工程)
アクリル酸(1258g)に、10質量%ポリエチレングリコールジアクリレート水溶液(9.19g、アクリル酸に対して0.01モル%)、および、キレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸のナトリウム塩の水溶液(7.74g)を添加した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液(1058g)を脱イオン水(1245g)で希釈した溶液(B)とを、容量5L、内経175mmのポリプロピレン製の容器にそれぞれ調製した。マグネチックスターラーを用いて上記溶液(A)を攪拌しながら、上記溶液(B)を加えて混合することで、溶液(C)を調製した。なお、溶液(C)の温度は、混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、82℃まで上昇した。
【0202】
その後、上記溶液(C)の攪拌を継続し、溶液(C)の温度が80℃となった時点で、溶液(C)に、重合開始剤として10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(22.3g、アクリル酸(ナトリウム)に対して0.055モル%、0.13g/mol)を加えて、約3秒間攪拌し、単量体水溶液(2)とした。なお、単量体水溶液(2)の、酸型として換算したときのキレート剤含有量は856ppm(対単量体)である。
【0203】
(重合工程)
単量体水溶液(2)の中和率は73モル%、単量体濃度は43質量%であった。次に、上記単量体水溶液(2)をバット型容器に、大気開放系で流し込んだ。なお、当該バット型容器は、底面の大きさが520mm×520mm、上面の大きさが940mm×940mm、高さが300mm、中心断面が台形状であり、内面にテフロン(登録商標)シートを貼付した容器であった。また、当該バット型容器は、100℃に加熱されたホットプレート上に載置し、予め加熱しておいた。上記単量体水溶液(2)を上記バット型容器に流し込んだ後、約45秒後に重合反応が開始し単量体水溶液が昇温した。重合開始温度は78℃であった。当該重合反応は、水蒸気を発生しながら上方に向かって単量体水溶液(2)が四方八方に膨張、発泡しながら進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで、得られた含水ゲル(2)が収縮して終了した。なお、当該重合反応(膨張、収縮)は約1分間以内に終了したが、その後、1.5分間はバット型容器内に含水ゲル(2)の状態を保持した。当該重合反応によって、気泡を含む含水ゲル(2)を得た。重合時間は、2.5分であった。
【0204】
(ゲル粉砕工程)
次に、上記重合反応で得られた含水ゲル(2)を25等分した後、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数31個、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を115rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640g/minで、同時に、0.2質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液を含水ゲルの固形分に対して100ppmとなるように、蒸気を108g/minでそれぞれ供給した。
【0205】
上記ゲル粉砕で得られた粒子状含水ゲル(2)は、重量平均粒子径(D50)が3.0mmであった。
【0206】
(乾燥工程)
次に、上記粒子状含水ゲル(2)1kgを目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げて載せ、静置乾燥機内に入れた。その際、当該静置乾燥機にて積層される前記粒子状含水ゲルの層高を5箇所測定し平均したところ5cmであった。
【0207】
一方で、ゲル粉砕工程にて無機還元剤の添加タイミングを予め計測しており、その無機還元剤を添加後、5分経過した時点で190℃の熱風の通気を開始した。なお、前記ゲル粉砕直後の含水ゲルの温度は50℃であることを確認した。
【0208】
なお、同様の乾燥において、一時的に乾燥機から半乾燥物を取り出して質量を測定する操作を繰り返すことにより、10分で固形分量が80質量%に達することが分かっている。
【0209】
熱風の通気の開始から30分経過した時点で熱風の通気を終了させた。そうすることで粒子状の乾燥重合体(2)を得た。この際、乾燥重合体固形分量が95質量%であった。
【0210】
(粉砕、分級工程)
続いて、当該乾燥重合体(2)をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕し、その後、目開き850μmおよび150μmの二種類のJIS標準篩を用いて、ロータップ式篩分級機で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂(2)を得た。
【0211】
(表面架橋工程)
次に、エチレングリコールジグリシジルエーテル(0.05質量部)、プロピレングリコール(1質量部)、脱イオン水(3.0質量部)およびイソプロピルアルコール(1質量部)からなる表面架橋剤溶液(1)を、上記不定形破砕状の吸水性樹脂(2)(100質量部)に添加し、スパチュラで均一になるまで混合することで、加湿混合物(2)を得た。続いて、当該加湿混合物(2)をステンレス製の容器(幅約22cm、奥行き約28cm、高さ約5cm)に均一に入れ、100℃で40分間加熱処理し、表面架橋された吸水性樹脂(2)を得た。
【0212】
その後、表面架橋された吸水性樹脂(2)を目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで、最終製品である粒子状吸水剤(21)を得た。結果を下記表に示す。
【0213】
[実施例22~41]
上記実施例21において、単量体水溶液の調製、それに用いる薬剤(キレート剤)、およびゲル粉砕工程で添加する無機還元剤を表に示す値に変更したこと以外は、実施例21と同様にして、粒子状吸水剤(22~41)を製造した。結果を下記表に示す。
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
〔考察〕
実施例21~41においても、実施例1~20と同様の傾向が見られた。
【0223】
[実施例42]
実施例22の粒子状吸水剤(22)100質量部に10質量%の亜硫酸ナトリウム水溶液を1質量部添加し、スパチュラで均一になるまで混合し、続いてステンレス製の容器(幅約22cm、奥行き約28cm、高さ約5cm)に均一に入れ、80℃で30分間加熱した。その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで、最終製品である粒子状吸水剤(42)を得た。キレート剤比率は粒子状吸水剤(22)と同様に1.0、粒子状吸水剤(42)の初期色調YIは11.1、残存モノマーは345ppm、還元剤濃度は980ppmであった。
【0224】
[実施例43]
実施例42の粒子状吸水剤(42)100質量部にハイドロタルサイト(製品名DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3質量部を混合することにより、最終製品である粒子状吸水剤(43)を得た。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(製品No.488試験用分散機/東洋精機製作所製)の振動によって800(cycle/min)(CPM)で3分間混合することにより行った。粒子状吸水剤(43)の初期色調YIは9.5であった。
【0225】
[実施例44]
実施例43において、ハイドロタルサイト0.3重量部に替えてフュームドシリカであるAEROSIL(商標)200を0.3質量部添加した以外は実施例43と同様に実施することにより、最終製品である粒子状吸水剤(44)を得た。粒子状吸水剤(44)の初期色調YIは10.6であった。
【0226】
〔考察〕
体積平均粒子径0.5μmのハイドロタルサイトを添加した粒子状吸水剤(43)は、粒子状吸水剤(42)や粒子状吸水剤(44)に比べて初期色調YIが改善した。
【0227】
本出願は、2019年11月12日に出願された、日本特許出願 特願2019-204870号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。