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特許7296526バストネサイト鉱の製錬方法および炭素粉末の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】バストネサイト鉱の製錬方法および炭素粉末の使用
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20230615BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022529033
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2019119594
(87)【国際公開番号】W WO2021097693
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521181781
【氏名又は名称】包頭稀土研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】許延輝
(72)【発明者】
【氏名】崔凌霄
(72)【発明者】
【氏名】鄭淇元
(72)【発明者】
【氏名】馬升峰
(72)【発明者】
【氏名】関衛華
(72)【発明者】
【氏名】郭文亮
(72)【発明者】
【氏名】宋静
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1384214(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105755279(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109280781(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1202460(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バストネサイト鉱の焙焼プロセスにおけるセリウム(III)の酸化を防ぐための炭素粉末の使用であって、炭素粉末とバストネサイト鉱のみを含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼し、炭素粉末がバストネサイト鉱重量の20~25wt%を占めることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記炭素粉末が、活性炭、コークスおよび木炭から選ばれた1種または複数種であり、焙焼温度が800~1200℃であり、焙焼時間が10~60分であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
炭素粉末とバストネサイト鉱のみを含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼して焙焼生成物を得ることを含む方法であって、炭素粉末がバストネサイト鉱重量の20~25wt%を占めることを特徴とするバストネサイト鉱の製錬方法。
【請求項4】
焙焼温度が800~1200℃であり、かつ、焙焼時間が10~60分であることを特徴とする、請求項3に記載の製錬方法。
【請求項5】
前記炭素粉末が、活性炭、コークスおよび木炭から選ばれた1種または複数種であることを特徴とする、請求項3に記載の製錬方法。
【請求項6】
焙焼生成物を、濃度0.5~6mol/Lの塩酸または硫酸から選ばれた無機酸に溶解することを含むことを特徴とする、請求項3に記載の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バストネサイト鉱の焙焼プロセスにおけるセリウム(III)の酸化を防ぐための炭素粉末の使用およびバストネサイト鉱の製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バストネサイト鉱は重要な希土類鉱物である。バストネサイト鉱は、空気中で焙焼されると、バストネサイト鉱が分解され、希土類酸化物と希土類フッ化物が生成される。焙焼プロセスにおいて、バストネサイト鉱におけるCe3+は、容易にCe4+に酸化される。その後の使用において、Ce4+をCe3+や金属セリウムに還元するために大量の還元剤を使用する必要になる。濃塩酸を使用してバストネサイト鉱の焙焼生成物を溶解する場合、Ce4+は塩酸中の塩素イオンを酸化して塩素ガスとなるため、塩素ガスの流出により、大気汚染や作業者の健康を害することがある。
【0003】
CN1071205Aには、バストネサイト鉱の炭素熱還元によって希土類炭素フェロシリコン合金を調製する方法が開示されている。バストネサイト鉱を焙焼して焙焼生成物を得、そして焙焼生成物、炭素質還元剤およびバインダーを混合して希土類ペレットを形成し、希土類ペレット、シリカ及び炭素質還元剤を均一に混合し、製錬して炭素フェロシリコン合金を得る。CN107760869Aには、希土類フェロシリコン合金の調製方法が開示されている。バストネサイト鉱を焙焼し、コークス粉末と木炭粉末を加えて混合し、混合粉末に磨ぎ、混合粉末とバインダーを希土類ペレットに作成し、希土類ペレット、シリカ、コークスおよび鋼を均一に混合し、製錬して希土類フェロシリコン合金を得る。前述した方法では、バストネサイト鉱を個別に焙焼するため、Ce3+はCe4+に容易に酸化される。前述した方法は、過剰の炭素質還元剤を使用して炭素フェロシリコン合金を調製することを目的としている。
【0004】
また、徐曉娟は、マイクロ波を利用したバストネサイト鉱のフッ素固定化焙焼プロセスを研究した。バストネサイト鉱に1wt%の活性炭を加え、次に酸化カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウムを加え、均一に混合し、錠剤にプレスし、マイクロ波オーブンで焙焼する(「マイクロ波を利用したバストネサイト鉱のフッ素固定化焙焼に関する実験的研究」、徐曉娟ら、希土類、Vol.39、No.4、pp.96-102、2018年8月が参照されたい)。前述したプロセスでは、活性炭の添加量が少なすぎてフラックスが多様であるため、活性炭はCe3+がCe4+への酸化を抑制することができないことが判明した。
【発明の概要】
【0005】
これを鑑みて、本発明の第1の目的は、バストネサイト鉱の焙焼プロセスにおけるセリウム(III)の酸化を防ぐための炭素粉末の使用を提供することにある。
【0006】
本発明の第2の目的は、焙焼プロセスにおけるセリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができるバストネサイト鉱の製錬方法を提供することにある。
【0007】
本発明は、以下の構成により上記の目的を達成する。
【0008】
一態様において、本発明は、バストネサイト鉱の焙焼プロセスにおけるセリウム(III)の酸化を防ぐための炭素粉末の使用を提供する。
【0009】
本発明に係る使用によれば、好ましくは、炭素粉末がバストネサイト鉱重量の5~25wt%を占める。
【0010】
本発明に係る使用によれば、好ましくは、炭素粉末とバストネサイト鉱を含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼する。
【0011】
本発明に係る使用によれば、好ましくは、前記混合物が炭素粉末およびバストネサイト鉱のみを含む。
【0012】
本発明に係る使用によれば、好ましくは、前記炭素粉末が活性炭、コークスおよび木炭から選ばれた1種または複数種であり、焙焼温度が800~1200℃であり、焙焼時間が10~60分である。
【0013】
もう一つの態様において、本発明は、炭素粉末とバストネサイト鉱を含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼して焙焼生成物を得ることを含む製錬方法であって、炭素粉末がバストネサイト鉱重量の5~25wt%を占めるバストネサイト鉱の製錬方法を提供する。
【0014】
本発明に係る製錬方法によれば、好ましくは、前記混合物が炭素粉末およびバストネサイト鉱のみを含む。
【0015】
本発明に係る製錬方法によれば、好ましくは、焙焼温度が800~1200℃であり、かつ、焙焼時間が10~60分である。
【0016】
本発明に係る製錬方法によれば、好ましくは、前記炭素粉末が、活性炭、コークスおよび木炭から選ばれた1種または複数種である。
【0017】
本発明に係る製錬方法によれば、好ましくは、焙焼生成物を、濃度0.5~6mol/Lの塩酸または硫酸から選ばれた無機酸で溶解する工程を含む。
【0018】
本発明では、適量の炭素粉末とバストネサイト鉱を混合し、かつマイクロ波を利用して加熱することにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができる。また、本発明に係る方法を用いてバストネサイト鉱を製錬して、得られた生成物は、セリウム(III)の酸化率が小さい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、希土類酸化物(REO)の含有量は、バストネサイト鉱に含まれる希土類酸化物の質量百分率を表す。
【0021】
本発明において、セリウム(III)は、3価のセリウムを表し、Ce3+で示される。セリウム(IV)は、4価のセリウムを表し、Ce4+で示される。
【0022】
<セリウム(III)の酸化を防ぐための使用>
バストネサイト鉱において、セリウム元素は、主に3価(Ce3+)として存在する。焙焼によりバストネサイト鉱を希土類酸化物と希土類フッ化物に変換することができる。ただし、焙焼プロセスにおいて、バストネサイト鉱に含まれるCe3+は容易にCe4+に酸化される。したがって、他の添加剤を添加しない場合、バストネサイト鉱の焙焼プロセスでは大量のCe4+が生成され、その後の処理に不利である。例えば、第一に、Ce4+をCe3+または金属セリウムに還元するために大量の還元剤が必要である。第二に、Ce4+は、焙焼生成物を溶解するために使用される塩酸を容易に酸化するため、大量の塩素ガスが生成される問題がある。
【0023】
本発明者らは、炭素粉末がバストネサイト鉱の焙焼プロセス中のセリウム(III)の酸化を防ぐことができることを初めて発見し、それによって本発明を完成した。いわゆるバストネサイト鉱の焙焼プロセスとは、バストネサイト鉱を焙焼して希土類酸化物と希土類フッ化物を得るプロセスを指す。
【0024】
本発明は、バストネサイト鉱を焙焼して分解するプロセスにおけるセリウム(III)の酸化を防ぐための炭素粉末の使用を提供する。本発明において、セリウム(III)の酸化を防ぐことは、バストネサイト鉱に含まれるCe3+が焙焼プロセスにおいてCe4+に酸化されることを防ぐことを意味する。本発明者らは、適切な量の炭素粉末およびバストネサイト鉱を含む混合物を焙焼することにより、焙焼中にCe3+がCe4+に酸化されるのを防ぐことができることを予期せず発見した。マイクロ波加熱を用いて焙焼することは、焙焼中にCe3+がCe4+に酸化されるのをさらに防ぐことができるため、好ましい。本発明の一実施形態によれば、炭素粉末およびバストネサイト鉱を含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼する。マイクロ波加熱とは、マイクロ波を利用して混合物を加熱することを意味する。マイクロ波加熱は、マイクロ波マッフル炉で行ってもよい。
【0025】
本発明に係る焙焼プロセスは、空気中で行ってもよい。本発明に係る混合物は、炭素粉末およびバストネサイト鉱を含み、さらに他の物質も含み得る。他の物質にはフラックスなどが含まれない場合がある。好ましくは、他の物質には酸化カルシウム、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムが含まれない。本発明の一実施形態によれば、本発明に係る混合物は、炭素粉末とバストネサイト鉱からなる。
【0026】
バストネサイト鉱は、マイクロ波吸収性能が悪いが、炭素粉末は、マイクロ波吸収性能が良好である。本発明は、これらの特性を利用して、まずマイクロ波で炭素粉末自体を発熱させ、次にバストネサイト鉱に熱を伝導させて、バストネサイト鉱を熱分解する。炭素粉末は急速に昇温した後、周囲の空気と優先的に反応して一酸化炭素と二酸化炭素を生成することにより、バストネサイト鉱周辺の酸素を消費する。二酸化炭素は密度が酸素の密度よりも大きく、バストネサイト鉱粒子に囲まれている。一酸化炭素は、密度が酸素の密度よりも小さいため、オーバーフローの過程でバストネサイト鉱の表面への外部酸素の拡散を妨げる。これにより、バストネサイト鉱のCe3+がCe4+に酸化されることを効果的に防ぐことができる。
【0027】
本発明において、炭素粉末の使用量はバストネサイト鉱重量の5~25wt%である。好ましくは、炭素粉末の使用量はバストネサイト鉱重量の10~25wt%である。より好ましくは、炭素粉末的使用量はバストネサイト鉱重量の20~25wt%である。これにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができ、かつ、希土類浸出率を確保できる。
【0028】
バストネサイト鉱の焙焼プロセスにおいて、焙焼温度は、800~1200℃であってもよく、好ましくは900~1150℃であり、より好ましくは1000~1100℃である。これにより、炭素粉末の酸化およびバストネサイト鉱の分解に有利であり、セリウム(III)の酸化をより効果的に防ぎ、かつ、希土類浸出率を向上させることができる。焙焼時間は、10~60分であってもよく、好ましくは20~40分であり、より好ましくは20~30分である。焙焼時間は、焙焼温度に達した後、焙焼温度で焙焼を継続する時間を意味する。これにより、バストネサイト鉱を完全に分解することができ、かつ、オーバーベーキングによって引き起こされるセリウム(III)の酸化を回避することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、焙焼温度は800~1200℃であり、かつ焙焼時間は10~60分。本発明のもう一つの実施形態によれば、焙焼温度は900~1150℃であり、かつ焙焼時間は20~40分である。本発明のもう一つの実施形態によれば、焙焼温度は1000~1100℃であり、かつ焙焼時間は20~40分である。
【0030】
本発明に係る炭素粉末は、活性炭、コークスおよび木炭から選ばれた1種または複数種であってもよい。好ましくは、炭素粉末が活性炭やコークスから選ばれた少なくとも1種である。より好ましくは、炭素粉末が活性炭である。これにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができる。
【0031】
本発明に係るバストネサイト鉱は、バストネサイト鉱の希土類精鉱または純粋なバストネサイト鉱であってもよい。バストネサイト鉱の希土類精鉱におけるバストネサイト鉱は、純度が90wt%以上であり、好ましくは92wt%以上であり、より好ましくは97wt%以上である。本発明において、バストネサイト鉱の純度とは、バストネサイト鉱希土類精鉱に含まれるCe(CO)Fまたは(Ce,La)[CO]Fの質量百分率を意味する。バストネサイト鉱における希土類酸化物(REO)は、含有量が50wt%以上であり、好ましくは55~70wt%であり、より好ましくは55~65wt%である。これにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記の炭素粉末は、活性炭、コークス、木炭から選ばれた1種または複数種であり、焙焼温度は800~1200℃であり、焙焼時間は10~60分である。本発明のもう一つの実施形態によれば、炭素粉末は、活性炭、コークス、木炭から選ばれた1種または複数種であり、焙焼温度は900~1050℃であり、かつ、焙焼時間は20~40分である。
<製錬方法>
【0033】
本発明に係るバストネサイト鉱の製錬方法は、焙焼プロセスを含み、また、溶解プロセスを含んでもよい。詳細な説明を以下に示す。
【0034】
焙焼プロセスでは、炭素粉末とバストネサイト鉱を含む混合物を、マイクロ波加熱によって焙焼して焙焼生成物を得る。本発明に係る焙焼プロセスは、空気中で行ってもよい。マイクロ波加熱とは、マイクロ波を利用して混合物を加熱することを意味する。マイクロ波加熱は、マイクロ波マッフル炉で行ってもよい。
【0035】
本発明に係るバストネサイト鉱は、バストネサイト鉱希土類精鉱または純粋なバストネサイト鉱であってもよい。バストネサイト鉱希土類精鉱におけるバストネサイト鉱は、純度が90wt%以上であり、好ましくは92wt%以上であり、より好ましくは97wt%以上である。本発明において、バストネサイト鉱の純度とは、バストネサイト鉱希土類精鉱に含まれるCe(CO)Fまたは(Ce,La)[CO]Fの質量百分率を意味する。バストネサイト鉱において、希土類酸化物(REO)は、含有量が50wt%以上であり、好ましくは55~70wt%であり、より好ましくは55~65wt%である。これにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができる。
【0036】
本発明に係る炭素粉末は、活性炭、コークス、木炭から選ばれた1種または複数種であってもよい。好ましくは、炭素粉末が活性炭またはコークスから選ばれた少なくとも1種である。より好ましくは、炭素粉末が活性炭である。これにより、セリウム(III)の酸化を効果的に防ぐことができる。
【0037】
本発明に係る混合物は、炭素粉末とバストネサイト鉱を含み、さらに他の物質も含み得る。他の物質にはフラックスなどが含まれない場合がある。好ましくは、他の物質には酸化カルシウム、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムが含まれない。本発明の一実施形態によれば、本発明に係る混合物は、炭素粉末とバストネサイト鉱のみからなる。
【0038】
本発明に係る混合物において、炭素粉末の使用量は、バストネサイト鉱重量の5~25wt%である。好ましくは、炭素粉末の使用量がバストネサイト鉱重量の10~25wt%である。より好ましくは、炭素粉末の使用量がバストネサイト鉱重量の20~25wt%である。これにより、Ce3+がCe4+に酸化されるのを効果的に防ぎ、かつ希土類の浸出率を確保できる。
【0039】
焙焼プロセスにおいて、焙焼温度は800~1200℃であってもよい。好ましくは、焙焼温度が900~1150℃である。より好ましくは、焙焼温度が1000~1100℃である。これにより、炭素粉末の酸化とバストネサイト鉱の分解に有利であるため、Ce3+がCe4+に酸化されるのをより効果的に防ぐことができ、かつ希土類の浸出率を向上させる。
【0040】
焙焼プロセスにおいて、焙焼時間は10~60分であってもよい。好ましくは、焙焼時間が20~40分である。より好ましくは、焙焼時間が20~30分である。焙焼時間は、焙焼温度に達した後、焙焼温度で焙焼を継続する時間を意味する。これにより、バストネサイト鉱を完全に分解することができ、かつ、オーバーベーキングによって引き起こされるセリウム(III)の酸化を回避することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、焙焼温度は800~1200℃であり、かつ焙焼時間は10~60分である。本発明のもう一つの実施形態によれば、焙焼温度は900~1150℃であり、かつ焙焼時間は20~40分である。本発明のもう一つの実施形態によれば、焙焼温度は1000~1100℃であり、かつ焙焼時間は20~40分である。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、炭素粉末は、活性炭、コークス、木炭から選ばれた1種または複数種であり、焙焼温度は900~1150℃であり、かつ焙焼時間は20~40分である。
【0043】
焙焼生成物を無機酸に溶解して希土類塩溶液を得る。本発明の一実施形態によれば、焙焼生成物を濃度0.5~6mol/Lの無機酸に溶解する。無機酸は、硫酸または塩酸から選ばれたものであってもよい。無機酸は、濃度が0.5~6mol/Lであってもよい。好ましくは、無機酸濃度が1~4mol/Lである。より好ましくは、無機酸濃度が2~3mol/Lである。
【0044】
以下、実施例および比較例の希土類浸出率とセリウム(III)酸化率を下記の方法で測定した:
【0045】
希土類浸出率:
焙焼生成物2gを濃度3mol/LのHSO溶液50mlに溶解し、希土類浸出液を得た。希土類浸出液を電気加熱炉でわずかに沸騰させた後、30分間保持し、溶液を室温まで冷却した後、吸引ろ過を行う。濾液におけるREOの含有量を測定し、希土類浸出率を計算する。
【0046】
希土類浸出率μの計算式は、以下の通りである。
【0047】
式において、μは希土類浸出率(%)であり、Cは、濾液におけるREOとして計算された希土類硫酸塩濃度(g/L)であり、Vは、濾液体積(L)であり、ωはバストネサイト鉱におけるREOとして計算された希土類化合物の含有量(wt%)であり、mはバストネサイト鉱の質量(g)である。
【0048】
セリウム(III)酸化率はCe4+に酸化されたCe3+の重量百分率で表されたセリウムの酸化率である。具体的な方法は、以下の通りである。
【0049】
焙焼生成物2gを濃度3mol/LのHSO溶液50mlに溶解し希土類浸出液を得た。得られた希土類浸出液をわずかに沸騰させるように電気加熱炉で加熱した後、30分間保持し、溶液を室温まで冷却した後、吸引ろ過を行う。濾液におけるCe(IV)の含有量を測定し、セリウムの酸化率を計算する。
【0050】
セリウムの酸化率ηの計算式は、以下の通りである。
【0051】
式において、ηはセリウム(III)の酸化率(%)であり、CCe4は、濾液におけるREOとして計算された硫酸セリウム(IV)の濃度(g/L)であり、Vは、濾液体積(L)であり、ωはバストネサイト鉱におけるREOとして計算された希土類化合物の含有量(wt%)であり、mはバストネサイト鉱の質量(g)であり、δCeは、バストネサイト鉱において、セリウムの酸化物がREOに占める含有量(wt%)である。
【0052】
下記の焙焼プロセスは、マイクロ波オーブンマッフル炉で行い、雰囲気は空気であった。
【0053】
実施例1
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量65wt%)100gと活性炭20gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1000℃に加熱し、40分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0054】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して希土類塩化物を得た。当該プロセスにおいて、塩素ガスの溢れは基本的になかった。
【0055】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率(Ce4+に酸化されたCe3+の重量百分率、以下は、同じである。)を測定した結果を表1に示した。
【0056】
実施例2
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量57wt%)100gと活性炭20gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1050℃に加熱し、20分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0057】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して希土類塩化物を得た。当該プロセスにおいて、塩素ガスの溢れは基本的になかった。
【0058】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。
【0059】
実施例3
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量60wt%)100gと活性炭20gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で900℃に加熱し、20分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0060】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して希土類塩化物を得た。当該プロセスにおいて、塩素ガスの溢れは基本的になかった。
【0061】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。
【0062】
実施例4
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量57wt%)100gとコークス20gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1150℃に加熱し、40分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0063】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの硫酸で溶解して希土類硫酸塩を得た。
【0064】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。
【0065】
実施例5
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量60wt%)100gとコークス25gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1100℃に加熱し、30分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0066】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの硫酸で溶解して希土類硫酸塩を得た。
【0067】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。
【0068】
比較例1
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量65wt%)100gと活性炭1gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1000℃に加熱し、40分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0069】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して希土類塩化物を得た。その過程でいくらかの塩素ガスは、出てきた。
【0070】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。表1から分かるように活性炭が少なすぎるため、セリウムの酸化率が高がった。
【0071】
比較例2
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量65wt%)100gと活性炭30gを混合して混合物を形成した。当該混合物をマイクロ波で1000℃に加熱し、40分間焙焼して焙焼生成物を得た。
【0072】
当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して希土類塩化物を得た。
【0073】
希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。表1から分かるように、過剰な活性炭は希土類の浸出率を低下させた。
【0074】
比較例3
バストネサイト鉱(希土類酸化物REO含有量65wt%)100gと活性炭20gとを混合して混合物を形成した。当該混合物を電気加熱式マッフル炉に置き、1000℃で40分間焙焼して焙焼生成物を得た。当該焙焼生成物を室温まで冷却した。冷却された焙焼生成物を濃度3mol/Lの塩酸で溶解して、希土類塩化物を得た。当該プロセスにおいて、大量の塩素ガスは出てきた。希土類浸出率およびセリウムの酸化率を測定した結果を表1に示した。表1から分かるように、異なる加熱方法により、希土類の浸出率が低下し、セリウムの酸化率が高かった。
【0075】
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく任意の変形、改良、置換等を本発明の範囲に含まれるものとする。