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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】連結部材およびそれを用いた免震足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20230616BHJP
   E04G 3/18 20060101ALI20230616BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
E04G5/04 J
E04G3/18 C
F16F15/04 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019057253
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020158992
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】517088997
【氏名又は名称】株式会社テイエム技建
(73)【特許権者】
【識別番号】517089008
【氏名又は名称】最上 公彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】最上 公彦
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150795(JP,A)
【文献】特開2018-059351(JP,A)
【文献】特開2012-189104(JP,A)
【文献】特開2010-275800(JP,A)
【文献】米国特許第05878840(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/04
E04G 3/18
F16F 15/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物と、構造物用の外部仮設構造体を連結するための連結部材であって、
前記連結部材は、連結部本体、構造物連結部、及び、外部仮設構造体連結部を含み、
前記連結部本体の一端に前記構造物連結部が配置され、
前記連結部本体の他端に前記外部仮設構造体連結部が配置され、
前記連結部本体は、緩衝機構部を含み、
前記緩衝機構部は、伸縮部材及び伸縮制限部材を含み、
前記伸縮部材は、前記構造物の揺れに応じて伸縮可能であり、
前記伸縮制限部材は、前記構造物の揺れ強度が予め設定した設定強度以下の場合は、前記伸縮部材の伸縮を制限し、前記揺れ強度が前記設定強度を超えた場合に、前記制限を解除して前記伸縮部材が伸縮可能となる、
連結部材。
【請求項2】
前記伸縮部材が、弾性体から構成されている請求項1記載の連結部材。
【請求項3】
前記伸縮制限部材が、前記伸縮部材の伸縮を制限するピン部材であり、前記設定強度を超えると前記ピン部材が折れて、前記制限が解除される、
請求項1又は2記載の連結部材。
【請求項4】
前記伸縮制限部材が、前記伸縮部材の伸縮を制限するピン部材であり、前記設定強度を超えると前記ピン部材が前記伸縮部材から外れて、前記制限が解除される、
請求項1又は2記載の連結部材。
【請求項5】
前記連結部本体が、前記構造物連結部を中心として回動可能である請求項1から4のいずれか一項に記載の連結部材。
【請求項6】
前記連結部本体が、前記外部仮設構造体連結部を中心として回動可能である請求項1から5のいずれか一項に記載の連結部材。
【請求項7】
前記構造物が、免震構造物である請求項1から6のいずれか一項に記載の連結部材。
【請求項8】
構造物用の免震足場であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の連結部材と、前記外部仮設構造体とを含み、
前記連結部材の一端が、前記外部仮設構造体連結部によって前記外部仮設構造体に連結され、他端が、前記構造物連結部によって前記構造物に連結可能であることを特徴とする免震足場。
【請求項9】
前記外部仮設構造体が、支持装置と足場本体とを含み、
前記支持装置の上に前記足場本体が搭載されている請求項8記載の免震足場。
【請求項10】
前記支持装置が、支持板と、複数の支柱と、地面固定部材と、連結弾性体と、連結部材とを含み、
前記支持板は、その上面に前記外部仮設構造体を載せて支持可能であり、
前記複数の支柱の各上端部が、前記連結弾性体を介して、前記支持板の下面に連結されており、
前記複数の支柱の各下端部が、前記連結弾性体を介して前記地面固定部材に連結されており、
前記支持板が、前記連結部材によって前記構造物に連結可能である請求項9記載の免震足場。
【請求項11】
前記支持装置が、さらに、筋交いを含み、
前記筋交いの一端は、前記支柱の上端部と連結し、前記筋交いの他端は、前記支柱と隣接する支柱の下端部と連結し、
前記筋交いは、前記隣接する支柱間の対角線距離の変化に応じて変形可能である請求項10記載の免震足場。
【請求項12】
前記筋交いは、二つの線状部材の端部同士が回動可能な状態で連結されたものである請求項11記載の免震足場。
【請求項13】
前記連結弾性体が、バネである請求項10から12のいずれか一項に記載の免震足場。
【請求項14】
前記支持装置における前記支持板の上に、前記足場本体が搭載されており、
前記支持装置が前記連結部材により前記構造物に連結されることによって、
前記構造物の動きと連動して動くことが可能な請求項10から13のいずれか一項に記載の免震足場。
【請求項15】
前記足場本体が、前記連結部材により前記構造物に連結可能である請求項14記載の免震足場。
【請求項16】
前記構造物が、免震構造物である請求項8から15のいずれか一項に記載の免震足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物と、構造物用の外部仮設構造体を連結するための連結部材およびそれを用いた免震足場に関する。
【背景技術】
【0002】
地震の揺れを緩和するために、高層ビルおよびタワーマンションでは免震装置が備え付けられている。高層ビルおよびタワーマンションのような免震建造物においても、外壁補修工事等では、工事期間中建物本体の免震装置にはロックをかけて地震時に免震装置が作動させないことが行われている。しかし、工事期間中と云えども大地震が発生する可能性はあり、この場合はロックがはずれ建物本体が大きく揺れることにより外部足場が崩壊する可能性がある。これに対応するために、足場の免震構造も提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-291859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の外部に設置した仮設足場(外部足場)は、通常は、仮設足場の倒壊を防ぐために、適宜な箇所で、連結部材により建物本体と連結して固定する必要がある。この連結部材に、揺れを緩衝する機能を持たせれば、仮設足場が免震構造か否かにかかわらず、免震が可能となる。
【0005】
しかし、連結部材が常時揺れの緩衝機能を有していると、建物本体への仮設足場の固定が不十分になる。このため、強風等の場合に、建物本体は揺れないにもかかわらず、仮設足場が不安定な動きをすることになってしまう。一方、これを防ぐために、連結部材による固定を強固にすると、連結部材が緩衝機能を発揮できず、免震できない。
【0006】
そこで、本発明は、通常時には仮設足場を建物本体に強固に固定し、地震による揺れ強度が予め設定した設定強度を超えた場合には免震が可能となる連結部材およびそれを用いた免震足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の連結部材は、構造物と、構造物用の外部仮設構造体を連結するための連結部材であって、
前記連結部材は、連結部本体、構造物連結部、及び、外部仮設構造体連結部を含み、
前記連結部本体の一端に前記構造物連結部が配置され、
前記連結部本体の他端に前記仮設構造体連結部が配置され、
前記連結部本体は、緩衝機構部を含み、
前記緩衝機構部は、伸縮部材及び伸縮制限部材を含み、
前記伸縮部材は、前記構造物の揺れに応じて伸縮可能であり、
前記伸縮制限部材は、前記構造物の揺れ強度が予め設定した設定強度以下の場合は、前記伸縮部材の伸縮を制限し、前記揺れ強度が前記設定強度を超えた場合に、前記制限を解除して前記伸縮部材が伸縮可能となる、
連結部材である。
【0008】
本発明の免震足場は、構造物用の免震足場であって、
本発明の連結部材と、前記外部仮設構造体とを含み、
前記連結部材の一端が、前記仮設構造体連結部によって前記外部仮設構造体に連結され、他端が、前記構造物連結部によって前記構造物に連結可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の連結部材および免震足場によれば、通常時には仮設足場(外部仮設構造体)を建物本体(構造物)に強固に固定し、地震による揺れ強度が予め設定した設定強度を超えた場合には免震が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の免震足場の構成を側面方向から見た場合の一例を示す図である。
図2図2のAからCは、図1において、本発明の連結部材を上方から見た場合の一例を示す図である。
図3図3のAからCは、本発明の免震足場の構成における別の一例を側面方向から見た図である。
図4図4のAからCは、図3のAからCにおいて、支持装置および免震足場の構成を正面方向から見た場合の一例を示す図である。
図5図5AとBは、筋交いの上部線状部材と下部線状部材の端部の連結構造の一例を示す図である。
図6図6Aは、支柱の下部の構造の一例を示す図であり、図6Bは、支柱の上部の構造の一例を示す図である。
図7図7AおよびBは、支持装置および足場本体の双方の連結部材を弾性体(コイルバネ)にした状態を示す図である。
図8図8は、支持装置および足場本体の双方の緩衝機構を弾性体(コイルバネ)にした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の連結部材において、前記伸縮部材が、弾性体から構成されていることが好ましい。ただし、本発明において前記伸縮部材の構造は限定されず、他の構造であってもよい。
【0012】
本発明の連結部材において、前記伸縮制限部材が、前記伸縮部材の伸縮を制限するピン部材であり、前記設定強度を超えると前記ピン部材が折れて、前記制限が解除されることが好ましい。
【0013】
本発明の連結部材において、前記伸縮制限部材が、前記伸縮部材の伸縮を制限するピン部材であり、前記設定強度を超えると前記ピン部材が前記伸縮部材から外れて、前記制限が解除されることが好ましい。
【0014】
本発明の連結部材において、前記連結部本体が、前記構造物連結部を中心として回動可能であることが好ましい。
【0015】
本発明の連結部材において、前記連結部本体が、前記仮設構造体連結部を中心として回動可能であることが好ましい。
【0016】
本発明の連結部材において、前記構造物が、免震構造物であることが好ましい。
【0017】
本発明の免震足場において、前記外部仮設構造体が、支持装置と足場本体とを含み、前記支持装置の上に前記足場本体が搭載されていることが好ましい。
【0018】
本発明の免震足場において、前記支持装置が、支持板と、複数の支柱と、地面固定部材と、連結弾性体と、連結部材とを含み、前記支持板は、その上面に前記外部仮設構造体を載せて支持可能であり、前記複数の支柱の各上端部が、前記連結弾性体を介して、前記支持板の下面に連結されており、前記複数の支柱の各下端部が、前記連結弾性体を介して前記地面固定部材に連結されており、前記支持板が、前記連結部材によって前記構造物に連結可能であることが好ましい。
【0019】
本発明の免震足場において、前記支持装置が、さらに、筋交いを含み、前記筋交いの一端は、前記支柱の上端部と連結し、前記筋交いの他端は、前記支柱と隣接する支柱の下端部と連結し、前記筋交いは、前記隣接する支柱間の対角線距離の変化に応じて変形可能であることが好ましい。
【0020】
前記筋交いは、二つの線状部材の端部同士が回動可能な状態で連結されたものであることが好ましい。ただし、本発明において筋交いの構造は限定されず、他の構造であってもよい。
【0021】
本発明の免震足場において、前記連結弾性体は、例えば、バネであることが好ましい。なお、本発明において、前記連結弾性体は、バネに限定されず、例えば、ゴム等のような別の弾性体であってもよい。
【0022】
本発明の免震足場において、前記支持装置における前記支持板の上に、前記足場本体が搭載されており、前記支持装置が前記連結部材により前記構造物に連結されることによって、前記構造物の動きと連動して動くことが可能であることが好ましい。
【0023】
本発明の免震足場において、前記足場本体が、前記連結部材により前記免震構造物に連結固定可能であることが好ましい。
【0024】
本発明の免震足場において、前記構造物が、免震構造物であることが好ましい。
【0025】
前記支持装置および前記足場本体を構造物に連結固定する双方の連結部材は、少なくとも一方が、弾性体であることが好ましい。前記弾性体としては、ゴム、コイルバネ等が好ましい。
【0026】
なお、本発明において、「免震足場」は、免震装置を含む足場をいう。一般に、仮設足場は、地面の上に設置される。また、仮設足場の倒壊を防ぐため、仮設足場と建物(構造物)本体とが、適宜な箇所で緊結(結合)される。このため、仮設足場は、地震時に、地面と建物との双方から地震力を受けることになる。そこで、地面と仮設足場との結合部分、建物本体と仮設足場との結合部分等の適宜な箇所に免震装置を配置すれば、仮設足場が受ける地震力を低減できる。本発明の免震足場は、前述のとおり、本発明の連結部材を含み、本発明の連結部材が免震装置に該当する。また、本発明の免震足場は、本発明の連結部材以外の免震装置を含んでいてもよい。
【0027】
つぎに、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。図1から図8に、本発明の連結部材の一例と、前記連結部材を用いた免震足場の一例を示す。図1から図8において、同一部分には同一符号を付している。
【0028】
図1は、本発明の免震足場の構成を側面方向から見た場合の一例を示す図である。図示のとおり、この免震足場は、連結部材16と、仮設足場(外部仮設構造体)10とから構成されている。仮設足場10は、連結部材16によって建物(構造物)3と連結されている。仮設足場10および建物3は、それぞれ、地面5に固定されている。
【0029】
図2のAからCは、図1において、連結部材16を上方から見た場合を示す図である。Aは、建物3に揺れが無い状態を示す。BおよびCは、建物3の揺れ強度が、予め設定した設定強度を超えた場合を示す。Bは、矢印で示すように、建物3が図面の上方向に揺れた状態を示し、Cは、矢印で示すように、建物3が図面の下方向に揺れた状態を示す。
【0030】
図示のとおり、連結部材16は、緩衝機構部(連結部本体)16Eと、仮設構造体連結部16Bと、構造物連結部16Cとから構成されている。緩衝機構部16Eは、伸縮部材16Aと、伸縮制限部材(ピン部材)16Dとから構成されている。伸縮部材16Aは、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2により形成されている。外部仮設構造体側部材16A1は筒状である。構造物側部材16A2は棒状である。構造物側部材16A2は、その一部が外部仮設構造体側部材16A1に挿入されている。外部仮設構造体側部材16A1は、構造物側部材16A2と反対側の一端が、仮設構造体連結部16Bによって仮設足場10に連結されている。外部仮設構造体側部材16A1は、仮設構造体連結部16Bを中心として水平方向(図面と平行方向)に回動可能である。構造物側部材16A2は、構造物連結部16Cを中心として水平方向(図面と平行方向)に回動可能である。
【0031】
図2のAに示すとおり、建物3に揺れが無い状態では、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2にピン部材16Dが差し込まれ、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2がスライド(伸縮)しないように固定されている。一方、図2のBおよびCに示すとおり、建物3の揺れによる水平力が、予め設定した設定強度を超えると、ピン部材16Dが折れるか、または外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2から外れる。これにより、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2の固定が解除され、スライド(伸縮)可能になる。そして、建物3が揺れると、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2のスライドにより伸縮部材16Aが伸縮する。また、外部仮設構造体側部材16A1は、仮設構造体連結部16Bを中心として水平方向に回動し、構造物側部材16A2は、構造物連結部16Cを中心として水平方向に回動する。これにより、建物3が揺れても仮設足場10はほとんど揺れないため、仮設足場10を水平に保つことが出来る。
【0032】
本発明において、連結部材の構造は、図1および図2の構造に限定されない。例えば、連結部材に含まれる伸縮部材の構造が、図1および図2と異なる構造であってもよい。より具体的には、例えば、後述する図7および図8のように、伸縮部材が、弾性体から構成されていてもよい。また、図1および図2は、外部仮設構造体側部材16A1および構造物側部材16A2は、それぞれ、仮設構造体連結部16Bまたは構造物連結部16Cを中心として水平方向に回動可能な例を示した。しかし、本発明において、連結部本体が、構造物連結部または仮設構造体連結部を中心として回動可能な方向は、水平方向に限定されず、例えば、鉛直方向に回動可能でもよいし、水平方向および鉛直方向の両方に回動可能でもよいし、任意の方向に回動可能でもよい。
【0033】
また、図1および図2は、仮設足場10および建物3が免震構造でない場合を示した。しかし、本発明は、これに限定されず、仮設足場が免震構造でなくても免震構造であってもよいし、建物(構造物)が免震構造でなくても免震構造であってもよい。
【0034】
図3から図6に、仮設足場10および建物3が免震構造である例を示す。図3から図6において、連結部材16の各部の構成および機能は、図示を省略しているが、図2と同じである。
【0035】
図3AからCは、前記支持装置1に足場本体2を搭載した免震足場(外部仮設構造体)10を、免震構造物(建物)3に設置した状態を側面方向から見た図であり、図4AからCは、正面から見た図である。図3および図4において、Aは、免震構造物3の揺れが無い状態を示し、Bは、矢印で示すように、免震構造物3が図面の左方向に揺れた状態を示し、Cは、矢印で示すように、免震構造物3が図面の右方向に揺れた状態を示す。図3AからCに示すように、免震構造物3は、免震装置4上に配置されており、免震装置4により地震の揺れを緩和することができる。
【0036】
図3および図4に示すように、前記支持装置1は、支持板11と、複数の支柱12と、地面固定部材13と、バネ(連結弾性体)14と、筋交い15と、連結部材16とから構成されている。支持板11は、その上面に足場本体2を載せて支持している。前記複数の支柱12の各上端部は、前記バネ14を介して、前記支持板11の下面に連結されている。前記複数の支柱12の各下端部は、前記バネ14を介して前記地面固定部材13に連結されている。前記地面固定部材13は、地面5に固定されている。また、前記支持板11は、その側部において前記連結部材16によって前記免震構造物3に連結固定されている。同様に、足場本体2も、前記連結部材16によって前記免震構造物3に連結固定されている。
【0037】
前記筋交い15の一端は、前記支柱12の上端部と連結し、前記筋交い15の他端は、前記支柱12と隣接する支柱12の下端部と連結し、2本の筋交い15によって、クロス状態で、隣接する2本の支柱12が連結している。前記筋交い15は、図5に示すように、上部線状部材15Aと下部線状部材15Bの端部同士がピン18によって回動可能な状態で連結されたものであり、この構造によって、前記筋交い15は、前記隣接する支柱12間の対角線距離の変化に応じて変形可能である。図5Aは、上部線状部材15Aと下部線状部材15Bが屈曲した状態を示し、図5Bは、上部線状部材15Aと下部線状部材15Bが直線状になった状態を示す。
【0038】
図3および図4に示すように、隣接する2本の支柱12間において、上端部同士は、支柱連結具17Aにより連結され、中央部同士は、支柱連結具17Cにより連結され、下端部同士は、支柱連結具17Bにより連結されている。
【0039】
図6は、図3Bに示すように、免震構造物3が図面の左方向に揺れた状態の支柱12の上端部および支柱12の下端部の構造を示す図である。図6Aに示すように、支柱連結具17Bの端部と筋交い15の下部線状部材15Bの端部が、支柱12の下端部の板材にピン18で回動可能な状態で連結している。また、図6Bに示すように、支柱連結具17Aの端部と筋交い15の上部線状部材15Aの端部が、支柱12の上端部の板材にピン18で回動可能な状態で連結している。さらに、図6には示していないが、支柱連結具17Cは、ピンにより支柱12の中央部に回動可能な状態で連結している。これら図6AとBに示すように、免震構造物3が揺れた場合は、その揺れ方向に応じてバネ14が変形して支柱12が傾き、この支柱12の傾きに応じて、筋交い15が変形することが可能で、かつ支柱連結具17AからCも支柱12の傾きに対応することが可能である。
【0040】
図3BおよびC並びに図4BおよびCに示すように、地震の際に、免震構造物3が揺れた場合は、免震構造物3の揺れと連動して本発明の支持装置1が変形して動くことができ、かつ、足場本体2も免震構造物3の揺れと連動して動くことができるので、足場が壊れることがなく安全である。
【0041】
次に、図7および図8において、本発明の連結部材における伸縮部材が、弾性体から構成されている例を示す。図7および図8では、免震構造物3に対し、コイルバネ(弾性体)の伸縮部材161により、支持装置1および足場本体2が連結固定されている。伸縮部材161は、本発明の連結部材の一部である。図7および図8の連結部材は、連結部本体が、伸縮部材161および伸縮制限部材162を含む緩衝機構部により構成されている。伸縮部材161は、その一端に配置された構造物連結部(図示せず)によって、前述のとおり免震構造物3に連結されている。また、伸縮部材161は、その他端に配置された仮設構造体連結部(図示せず)によって仮設足場10に連結されている。免震構造物3の揺れ強度が予め設定した設定強度以下の場合は、伸縮部材161は、取り付けられた伸縮制限部材162によって伸縮が制限されている。免震構造物3の揺れ強度が前記設定強度を超えた場合には、伸縮制限部材162が壊れるか、または伸縮部材161から外れることにより、伸縮部材161の伸縮の制限が解除され、伸縮部材161が伸縮可能となる。また、伸縮部材161は、コイルバネであるため、水平方向に限定されず、鉛直方向およびその他の任意の方向にも伸縮可能である。これにより、免震構造物3が揺れても仮設足場10はほとんど揺れないため、仮設足場10を水平に保つことが出来る。
【0042】
図7Aは、連結部材を除く他は、図3Aと同じであり、図7Bは、連結部材を除く他は、図6Bと同じである。図8は、免震建物(免震構造物)3に対し、支持装置1および足場本体2の双方がコイルバネ(連結部材)161により連結固定されている状態の全体を示す図である。図7および図8に示すように、コイルバネ(連結部材)161により、支持装置1および足場本体2が免震構造物3に連結固定されていれば、前述のとおり、地震が発生して免震構造物3が大きく揺れたとしても、自動車のショックアブソーバーと同様の原理により、免震構造物3の水平加速度を低減することができ、足場本体2からの人および資材の落下を防止することが可能となる。
【0043】
以上、本発明について、外部仮設構造体が仮設足場である場合について説明した。ただし、本発明は足場に限定されず、その他の外部仮設構造体にも適用できる。また、本発明の実施形態において、例えば、本ばね支持構造は常に上下動が発生している場所において、計測機器あるいは撮影機器を設置し、安定的な計測および撮影が可能な架台としても利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上、説明したとおり、本発明の連結部材および免震足場によれば、通常時には仮設足場(外部仮設構造体)を建物本体(構造物)に強固に固定し、地震による揺れ強度が予め設定した設定強度を超えた場合には免震が可能となる。本発明の連結部材によれば、外部仮設構造体が免震構造か否かにかかわらず、免震が可能である。本発明によれば、例えば、高層ビルおよびタワーマンションのような免震構造物の外壁補修工事等において、足場も免震可能であるから、地震時の安全性に優れる。また、本発明の連結部材および免震足場は、これに限定されず、免震構造でない建物(構造物)にも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 支持装置
2 足場本体
3 構造物
4 免震装置
5 地面
10 外部仮設構造体
11 支持板
12 支柱
13 地面固定部材
14 連結弾性体(バネ)
15 筋交い
15A 上部線状部材
15B 下部線状部材
16 連結部材
16A 伸縮部材
16A1 伸縮部材の外部仮設構造体側部材
16A2 伸縮部材の構造物側部材
16B 仮設構造体連結部
16C 構造物連結部
16D 伸縮制限部材(ピン部材)
16E 緩衝機構部(連結部本体)
17A,B,C 支柱連結具
18 ピン
161 伸縮部材(弾性体)
162 伸縮制限部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8