(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】路面加熱装置、その施工方法、路面加熱方法、および路面加熱システム
(51)【国際特許分類】
E01C 11/26 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
E01C11/26 A
(21)【出願番号】P 2019120172
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591216473
【氏名又は名称】一般財団法人首都高速道路技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507230382
【氏名又は名称】首都高メンテナンス西東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510106968
【氏名又は名称】首都高メンテナンス東東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510273798
【氏名又は名称】首都高メンテナンス神奈川株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510073268
【氏名又は名称】首都高電気メンテナンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509049090
【氏名又は名称】首都高ETCメンテナンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308031061
【氏名又は名称】首都高機械メンテナンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516309017
【氏名又は名称】株式会社太陽
(73)【特許権者】
【識別番号】516309028
【氏名又は名称】株式会社イントロン
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】藏治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 一貴
(72)【発明者】
【氏名】引地 宏陽
(72)【発明者】
【氏名】深山 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】張 広鋒
(72)【発明者】
【氏名】村上 可諭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佳介
(72)【発明者】
【氏名】立岡 陽
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231655(JP,A)
【文献】特開2014-201937(JP,A)
【文献】特開2007-040010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面の温度を上昇させる路面加熱装置において、
加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される帯状の電熱シートと、
前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する接続構造と、
前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置と、 を備えることを特徴とする路面加熱装置。
【請求項2】
降雪を検知する降雪検知手段、
を備え、
前記制御装置は、
前記降雪検知手段が検知する降雪の有無、または降雪量によって前記
電熱シートの発熱量を調節すること、
を特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項3】
前記
電熱シートが埋設された道路の温度を検知する地温検知手段、
を備え、
前記制御装置は、
前記地温検知手段が検知した前記道路の温度によって、前記
電熱シートの発熱量を調節すること、
を特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項4】
前記接続構造は、
前記電源に対して前記
電熱シートが並列に接続された並列接続構造であること、
を特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項5】
前記
電熱シートは、
前記
電熱シートの短手方向の端部に並列接続される電極部を備えること、
を特徴とする請求項4記載の路面加熱装置。
【請求項6】
前記接続構造は、
前記電源に対して前記
電熱シートが直列に接続された直列接続構造であり、
前記直列に接続された
電熱シートの通電を監視する通電監視手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項7】
前記
電熱シートは、
前記
電熱シートの長手方向の上端に設けられた上端電極部と、
前記
電熱シートの長手方向の下端に設けられた下端電極部と、
が直列に接続されること、
を特徴とする請求項6記載の路面加熱装置。
【請求項8】
前記直列接続構造は、
前記施工区間に合わせて形成された長尺
電熱シートと、
前記長尺
電熱シートに設けられた複数の切り欠き部と、
を供え、
前記切り欠き部は、
前記上端電極部を含んで切り欠いた上端切り欠き部と、
前記下端電極部を含んで切り欠いた下端切り欠き部と、
が交互に形成されること、
を特徴とする請求項7記載の路面加熱装置。
【請求項9】
前記直列接続構造は、
前記長尺
電熱シートを前記切り欠き部によって分割した分割
電熱シートの出力を、形成する前記切り欠き部の数量によって可変させること、
を特徴とする請求項8記載の路面加熱装置。
【請求項10】
前記分割区間に埋設された前記
電熱シートを、前記分割区間毎に輪番に発熱させる分割区間輪番発熱手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項11】
前記
電熱シートは、
前記道路のうち、自動車が主に走行する轍箇所に沿って埋設されること、
を特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項12】
前記道路と前記電熱シートとの間は、
前記道路の振動や伸縮を吸収する弾力性を備えた緩衝材、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項13】
前記緩衝材は、
絶縁性、耐水性、および絶縁性を備えたゴム材であること、
を特徴とする請求項12記載の路面加熱装置。
【請求項14】
前記緩衝材の表層は、
硬度を有する表面材、
を備えることを特徴とする請求項12記載の路面加熱装置。
【請求項15】
前記表面材は、
前記緩衝材の表層に接着された珪砂であること、
特徴とする請求項14記載の路面加熱装置。
【請求項16】
前記電熱シートは既設の道路の路面に対して直交方向に設けられた収容溝に収容され、 前記収容溝に前記電熱シートを垂直に支持するための支持部材、
を備え、
前記緩衝材が、前記収容溝と前記電熱シートとの間に充填されること、
を特徴とする請求項12記載の路面加熱装置。
【請求項17】
前記支持部材は、
前記緩衝材と同じ材料で形成されること、
を特徴とする請求項16記載の路面加熱装置。
【請求項18】
前記緩衝材は、
前記道路の色と識別可能な識別色、
を備えていることを特徴とする請求項12記載の路面加熱装置。
【請求項19】
前記緩衝材は、
前記電熱シートから生じる熱量を蓄熱する蓄熱手段、
を備えることを特徴とする請求項12記載の路面加熱装置。
【請求項20】
前記電熱シートの下端側は、
前記電熱シートよりも下方向への放熱を防止する断熱手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項21】
前記
電熱シートは、
カーボン繊維が混ぜ込まれた和紙、
をそなえることを特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項22】
前記和紙の周面には、
耐水性、耐熱性、耐衝撃性を備えた前記和紙を保護するための保護材、
を供えることを特徴とする請求項21記載の路面加熱装置。
【請求項23】
前記保護材は、
さらに可撓性を供えたブチルゴムであること、
を特徴とする請求項22記載の路面加熱装置。
【請求項24】
前記
電熱シートは、
前記道路の表層を剥離して補修する際に、剥離される前記表層部分よりも下部に埋設されること、
を特徴とする請求項1記載の路面加熱装置。
【請求項25】
道路の路面の温度を上昇させる路面加熱装置の施工方法において、
帯状の電熱シートが、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される工程と、
接続構造が、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する工程と、
電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置が、前記接続構造に接続される工程と、
を備えることを特徴とする路面加熱装置の施工方法。
【請求項26】
道路の路面の温度を上昇させる路面加熱方法において、
帯状の電熱シートが、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される工程と、
接続構造が、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する工程と、
制御装置が、前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する工程と、
を備えることを特徴とする路面加熱方法。
【請求項27】
道路の路面の温度を上昇させる路面加熱システムにおいて、
加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される帯状の電熱シートと、
前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する接続構造と、
前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置とを備える路面加熱装置と、
前記接続構造に電力を供給する移動式電源車両と、
を備えることを特徴とする路面加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面加熱装置、路面加熱装置の施工方法、路面加熱方法、および路面加熱システムに関し、特に道路の路面の温度を上昇させる路面加熱装置、路面加熱装置の施工方法、路面加熱方法、および路面加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から北海道、東北地方、北陸地方などの多雪地域では、冬期の地域活動の維持や地域住民の安全な生活を確保するために、冬期の雪や凍結に対する対策が非常に重要な課題とされている。
【0003】
一般の雪対策としては、除雪用のスコップによる雪かきが行われており、雪対策事業としては重機や除雪車などによる除雪作業や排雪作業が行われている。また一部の縦断勾配が大きい幹線道路などではロードヒーティングを設置することで凍結路面対策が行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
たとえば、特許文献1では、簡単で低コストであり、かつ効率良く凍結や積雪を防ぐことのできる道路の凍結防止・融雪構造が公開されている。その凍結防止・融雪構造は、道路1におけるアスファルト舗装20の基層21と表層22の間に、遠赤電熱シート30が介装されており、表層22のアスファルトには遠赤外線素子が配合され、さらに、道路1の路肩部には遠赤外線ランプ40が配置されたものである。
【0005】
遠赤電熱シート30に通電することで、表層22のアスファルトに配合された遠赤外線素子に遠赤電熱シート30から放出される遠赤外線が吸収されるため、簡単で低コストであり、かつ効率良く凍結や積雪を防ぐことができる。
【0006】
また、道路1の路肩部に設置された遠赤外線ランプ40が、道路1の路面に向けて遠赤外線を照射することで、路面の凍結や積雪を、解凍や融雪することができる。さらに遠赤外線ランプ40により照射された遠赤外線により、表層22のアスファルトに配合された遠赤外線素子に遠赤電熱シート30から放出される遠赤外線が吸収されるため、簡単で低コストであり、かつ効率良く凍結や積雪を防ぐことができる。
【0007】
ところが、特許文献1で開示された凍結防止・融雪構造を既設の道路に埋設するためには、まずアスファルトやコンクリートで舗装された道路の表層22にあたる部分を掘削し、残された基層21の上に遠赤電熱シート30を水平に敷設する必要がある。
【0008】
その後、掘削した表層22の部分をアスファルト舗装やコンクリート舗装などにより埋め戻す作業が必要になる。このため、非常に多くの施工作業がかかるだけでなく、道路の円滑な交通が妨げられる原因ともなっていた。
【0009】
そこで、道路にロードヒーティングを設置する際に、電熱シートの施工作業を容易に行うことができ、かつ道路の表面の融雪効率を向上することができる道路の加熱構造が開発されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0010】
たとえば、特許文献2の加熱構造では、まずコンクリートC製の道路11の表面11aに対して直交方向に収容溝11bを形成し、その形成された収容溝11b内に帯状の電熱シート12を表面11aに対し直交方向に収容する。次に、収容溝11bの内側面と電熱シート12の側面との隙間に絶縁性を有するモルタル13を充填することで、収容溝11b内に電熱シート12が埋設固定される。
【0011】
これにより、道路に電熱シートを埋設するために広い範囲の掘削作業が不要になる。また収容溝11bは、道路カッターなどで容易に収容溝11bを形成できるので、長距離に渡って容易に帯状の電熱シート12を連続して収容させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-81710号公報
【文献】特開2007-231655公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、道路には凍結しやすい場所や、雪が積もりやすい場所や、雪が残りやすい場所がある。たとえば、橋の上の道路などは凍結しやすく、常にビルなどの建設物の影になる場所では雪が残りやすい。また、このような場所は道路上に点々と存在し、道路の環境は一定でない。
【0014】
このように環境が一定ではない道路に対して、特許文献2のように長い帯状の電熱シートを埋設して道路を温めても、凍結しやすい場所や、雪が積もりやすい場所では融解や融雪の効果はあるが、それ以外の場所では無駄に道路を温めるだけであり、無駄なエネルギーを消費してしまう問題があった。
【0015】
温度を調節することも考えられるが、ある一定の場所で生じる凍結や、残雪に合わせて、電熱シート全体を高温に設定した場合、凍結や残雪が生じる場所で効果は期待できるが、それ以外の場所では、無駄に道路を温めるだけであってエネルギーの無駄である。さらに過剰な温度上昇は道路を劣化させる原因ともなる。
逆に、凍結や残雪が生じない場所に合わせて温度を調節しても、凍結や残雪が生じる場所で効果が無く、必要な箇所で融雪や融解ができない
【0016】
また、道路は自動車による振動や、季節の寒暖差によって伸縮しているため、この振動や伸縮が常に生じてしまう道路に長距離に割ったって電熱シートを埋設すると、道路の振動や伸縮によって電熱シートが損傷してしまうことが考えられる。
【0017】
たとえば、道路に長距離に渡って埋設された帯状の電熱シートが、道路の振動や伸縮によって、電熱シートの一部でも断線してしまうと、電熱シート全体が温められなくなるという問題が生じる。
【0018】
さらにこの場合、埋設された電熱シートから断線した場所を探して補修する必要があるが、埋設された電熱シートから断線箇所を特定することは非常に難しく、ロードヒーティングを復旧するには、すべての電熱シートを掘り返したのち、電熱シートの断線箇所を特定するか、新たな電熱シートを埋め直す必要があるため、非常に保守性が悪い。
【0019】
さらに、埋設された電熱シートを掘り起こすためには、交通量の多い日中であれば片側の走行車線を通行止めにして施工しなくてはならず、交通の妨げになる。また夜間での作業でも交通量の少ない深夜の限られた時間で作業を行わなければならず、大がかりな施工を行うことは難しかった。
【0020】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、省エネルギーで道路を加熱でき、かつ保守性に優れた路面加熱装置、路面加熱装置の施工方法、路面加熱方法、および路面加熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では上記問題を解決するために、道路の路面の温度を上昇させる路面加熱装置において、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される帯状の電熱シートと、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する接続構造と、前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置とを備えることを特徴とする路面加熱装置が提供される。
【0022】
これにより、帯状の電熱シートが、加熱を要する道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、路面に対して平面を直交させて道路の進行方向に複数埋設され、接続構造が、複数の電熱シートを連結して電源に接続し、制御装置が、接続構造に接続された電熱シートの熱量を分割区間毎に制御する。
【0023】
また、本発明では、道路の路面の温度を上昇させる路面加熱装置の施工方法において、帯状の電熱シートが、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される工程と、接続構造が、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する工程と、電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置が、前記接続構造に接続される工程とを備えることを特徴とする路面加熱装置の施工方法が提供される。
【0024】
これにより、帯状の電熱シートが、加熱を要する道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、路面に対して平面を直交させて道路の進行方向に複数埋設され、接続構造が、複数の電熱シートを連結して電源に接続し、制御装置が、接続構造に接続された電熱シートの熱量を分割区間毎に制御する。
【0025】
また、本発明では、道路の路面の温度を上昇させる路面加熱方法において、帯状の電熱シートが、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される工程と、接続構造が、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する工程と、制御装置が、前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する工程とを備えることを特徴とする路面加熱方法が提供される。
【0026】
これにより、帯状の電熱シートが、加熱を要する道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、路面に対して平面を直交させて道路の進行方向に複数埋設され、接続構造が、複数の電熱シートを連結して電源に接続し、制御装置が、接続構造に接続された電熱シートの熱量を分割区間毎に制御する。
【0027】
また、本発明では、道路の路面の温度を上昇させる路面加熱システムにおいて、加熱を要する前記道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、前記路面に対して平面を直交させて前記道路の進行方向に複数埋設される帯状の電熱シートと、前記複数の電熱シートを連結して電源に接続する接続構造と、前記接続構造に接続された電熱シートの熱量を前記分割区間毎に制御する制御装置とを備える路面加熱装置と、前記接続構造に電力を供給する移動式電源車両とを備えることを特徴とする路面加熱システムが提供される。
【0028】
これにより、帯状の電熱シートが、加熱を要する道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、路面に対して平面を直交させて道路の進行方向に複数埋設され、接続構造が、複数の電熱シートを連結して電源に接続し、制御装置が、接続構造に接続された電熱シートの熱量を分割区間毎に制御し、発電車両が、接続構造に電力を供給する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の路面加熱装置、路面加熱装置の施工方法、路面加熱方法、および路面加熱システムによれば、帯状の電熱シートが、加熱を要する道路の進行方向に施工区間を複数に分割した分割区間に、路面に対して平面を直交させて道路の進行方向に複数埋設され、接続構造が、複数の電熱シートを連結して電源に接続し、制御装置が、接続構造に接続された電熱シートの熱量を分割区間毎に制御するので、施工区間を複数に分割した分割区間毎に温度を制御できる。また、分割区間には複数の電熱シートが埋設されているので、不具合が生じた電熱シートだけを交換すればよく保守性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1の実施の形態に係るロードヒーティングシステムの概念を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
【
図3】道路に電熱シートを設置する工程を示す道路の進行方向の断面図である。
【
図5】橋脚の上に形成された道路にロードヒーティングシステムを設置した状態を示す上面図、および横断面図である。
【
図6】ロードヒーティングシステムを設置した状態を示す進行方向断面図である。
【
図7】料金所付近にロードヒーティングシステムを設置した状態を示す上面図である。
【
図8】複数の分割区間の制御方法の例を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態に係るロードヒーティングシステムの概念を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る電熱シートを接続した状態を示す正面図である。
【
図12】第3の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
【
図13】電熱シートの形成方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
【0032】
図1は、第1の実施の形態に係るロードヒーティングシステムの概念を示すブロック図である。
図1に示すロードヒーティングシステム100は、道路や歩道、駐車場などの地面に降雪する雪を融かしたり、地面の凍結を防止したりするためのものである。ここでは、ロードヒーティングシステム100を既設の道路200、特に高速道路などの自動車専用道路にロードヒーティングシステム100を設置した場合を例として以下を説明する。
【0033】
図1に示すように、ロードヒーティングシステム100は、電熱シート110、地温センサー120、降雪センサー130、制御装置140、電力線150、および通信ケーブル160を備えている。
【0034】
電熱シート110は、長さ2,000mm×高さ80mmのシート状の発熱体であり、道路200を走行する自動車の進行方向に沿って、道路200表面から垂直に形成された深さ90mm×幅24mmの収容溝に電熱シート110の短手方向が鉛直方向に向くように埋設されるものである。
【0035】
電熱シート110は、電力線150を介して供給される電力により電熱シート110の両側面が発熱し、電熱シート110に接する道路200周辺を加熱することで、道路200に降雪する雪を融かしたり、地面の凍結を防止したりすることができる。
【0036】
電熱シート110は、道路200におけるロードヒーティングシステム100を施工する所定区間を複数に分割した分割区間に複数設置されるものである。
具体的な例としては、ロードヒーティングシステム100を3kmの施工区間に設置する場合、施工区間を100に分割した30mの分割区間に、電熱シート110が所定の間隔をあけて任意の枚数で設置され、各電熱シート110は、電力線150によって並列に接続される。なお、分割区間の距離や分割数、また分割区間に埋設する電熱シート110の枚数は施工状況によって変更してもよい。
【0037】
地温センサー120は、電熱シート110が埋設された道路200の温度を計測するための温度センサーであって、電熱シート110が収容される収容溝に電熱シート110と共に埋設され、その埋設された付近の道路200の温度を検知する。
【0038】
地温センサー120は分割区間に少なくとも1つ設置され、通信ケーブル160を介して接続された制御装置140に対して、計測された道路200の温度を検知して通知する。
【0039】
また、地温センサー120は分割区間に複数埋設される電熱シート110付近各や所定の間隔を置いて設置することもでき、埋設された地温センサー120付近毎の温度を検知して通知するようにしてもよい。
【0040】
降雪センサー130は、降雪の有無を判断するためのセンサーであって、たとえば電熱シート110が埋設された道路200付近の地上部分に設置される。具体的には、道路200付近に配設される防音壁やガードレールなどに固定するとよい。
【0041】
降雪センサー130の例としては、外気温計測手段と水分検出手段とを備え、取得した外気温と水分とにより降雪を判断する水分検知型のセンサーや、赤外線を照射することで障害物である雪を検知する赤外線検知型のセンサーなどが挙げられる。
【0042】
降雪センサー130は分割区間に少なくとも1つ設置され、通信ケーブル160を介して接続された制御装置140に対して、降雪の有無または降雪量を通知する。また、降雪センサー130は分割区間に所定の間隔を置いて複数設置することもでき、設置された降雪センサー130付近毎における降雪の有無や降雪量を検知するようにしてもよい。
【0043】
制御装置140は、複数の電熱シート110が電力線150を介して、また地温センサー120および降雪センサー130が、それぞれの通信ケーブル160を介して接続されており、接続された各機器を制御するためのものであり、ここでは図示しない商用電源などの電源により電力の供給を受けて作動する。
【0044】
具体的には、制御装置140は、通信ケーブル160を介して接続された地温センサー120から道路200の温度を取得し、また通信ケーブル160を介して接続された降雪センサー130から降雪の有無や降雪量を検知し、電熱シート110への電力の供給量を制御する。
【0045】
たとえば、地温センサー120があらかじめ決められた温度、たとえば5℃を下回った場合に、電熱シート110への電力の供給を開始することで、電熱シート110が発熱し、電熱シート110が埋設された周囲の道路200を加熱する。
【0046】
これにより、道路200の凍結を防止することができる。また、地温センサー120が検知する道路200の温度によって、電熱シート110への電力の供給を変化させて、道路200の温度を一定に保つようにしてもよい。
【0047】
また降雪センサー130が降雪を検知した場合や、降雪量が増加傾向にあると判断した場合には、電熱シート110への電力の供給を開始することで、電熱シート110が発熱し、電熱シート110が埋設された周囲の道路200を加熱することで降雪する雪を融解したり、電熱シート110への電力の供給を増加させて、道路200への降雪が残雪になることを防止したりすることもできる。
【0048】
また制御装置140は、ここでは図示しない他の分割区間に設置された他の制御装置140に通信ケーブル160で接続してもよく、これらの通信ケーブル160で接続された複数の制御装置140を図示しないインターネットなどのネットワークに有線または無線で接続し、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューターなどの端末機器を用いて外部から各々の制御装置140を制御するようにしてもよい。
【0049】
電力線150は、電熱シート110と制御装置140とを接続し、制御装置140から供給される電力を電熱シート110まで送信するためのものであり、たとえば耐熱性、耐水性、柔軟性などを備えたキャブタイヤケーブルなどが挙げられる。
【0050】
通信ケーブル160は、たとえば光ファイバーケーブルやLAN(local area network)ケーブルなどの有線で情報を送信するためのものである。本実施の形態では、地温センサー120や降雪センサー130を制御装置140と通信ケーブル160を介して接続させるが、このほか近距離無線通信技術を用いて無線で地温センサー120や降雪センサー130を制御装置140に接続するようにしてもよい。
【0051】
上記のように本実施の形態のロードヒーティングシステム100では、道路200におけるロードヒーティングシステム100を施工する所定区間を複数に分割した分割区間に電熱シート110が複数埋設され、分割区間毎に制御装置140が電熱シート110の動作を制御できるので、分割区間毎に各々の温度の制御を行うことができる。このため、道路200の加熱が不要な部分で電熱シート110が発熱することがなくなるので、エネルギー効率がよくなる。
【0052】
また、電熱シート110が電力線150によって並列に接続されているため、地震や自動車による道路200の振動や寒暖差による伸縮によって複数設置された電熱シート110のうち一の電熱シート110が断線したとしても、他の電熱シート110に影響を与えることなく発熱することができる。
【0053】
また断線などにより発熱しなくなった電熱シート110は、温度が上昇しないので、外部から断線した電熱シート110の場所が特定しやすく、電熱シート110を交換する際にも、その部位(2,000mm強)だけを掘削して断線した電熱シート110を交換すればよく、保守性も向上する。
【0054】
また電熱シート110が並列に接続された制御装置140に、電熱シート110への通電を検知する通電検知手段や漏電を検知する漏電検知手段を備えておくことで、外部から温度を確認して断線した電熱シート110の場所を特定しなくてもよい。また通電検知手段が、電熱シート110が通電しなくなった場合に、管理者などへ警告を通知するようにしてもよい。
【0055】
図2は、第1の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
図2に示すように、電熱シート110は、長さ2,000mm×高さ80mm×厚さ1mmの矩形のシート状の発熱体であり、発熱部111、電極部112、および保護シート部113を備えている。
【0056】
発熱部111は、電圧をかけることで発熱する矩形のシート状の発熱帯体である。発熱部111は、たとえばカーボン繊維を混ぜ込んだ和紙からなり、従来の金属線ヒーターのように電線の集まりが発熱するのではなく、電圧がかけられたシート状の発熱部111が均一に発熱するので、線ではなく発熱部111全体が面で発熱する。
【0057】
これにより、発熱部111に接触する道路200は、より広い面状で温められるので、効率的に発熱部111で発生させた熱量を道路200に伝導させることができ、道路200が温まることで、道路200の表面に付着した氷や雪を融解させたりることができる。また、雪が道路200の表面に付着したり、道路200の表面が凍結したりすることを防止することもできる。
【0058】
電極部112は、発熱部111の長手方向の両端に設けられる端子であって、発熱部111に電流を流すための陽極側および陰極側が設けられる。電極部112には、ここでは図示しない電力線150によって制御装置140に並列に接続される。このように、電熱シート110を制御装置140に並列に接続することで、一部の電熱シート110が破損した場合でも、他の電熱シート110が発熱を停止することなく道路200を加熱することができる。
【0059】
また、破損した電熱シート110を一枚単位で交換することができるため、破損した電熱シート110が埋設された部分の道路200だけを掘削して、破損した電熱シート110だけを交換すればよいので、修理およびメンテナンス作業が軽減されて保守性を向上することができる。
【0060】
保護シート部113は、電熱シート110および電熱シート110と電極部112との接続部を保護するためのフィルムであって、たとえばポリエチレンテレフタレートなどの耐水性、耐熱性、耐衝撃性を備えた強靱なフィルムであり、電熱シート110および電熱シート110と電極部112との接続部を挟み込むように両側面から保護シート部113で圧着する。
また、保護シート部113は、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐水性などに優れたブチルゴムを利用することもできる。
【0061】
図3は、道路に電熱シートを設置する工程を示す道路の進行方向の断面図である。
図3(1)は、道路200に電熱シート110を収容するための電熱シート収容溝211、および電力線150や通信ケーブル160を収容するためのケーブル収容溝212が形成された様子を示している。
【0062】
電熱シート収容溝211は、ロードヒーティングシステム100の施工区間の道路200の進行方向に沿って、道路カッターなどで深さ90mm×幅24mmの溝を道路200に形成したものである。
【0063】
なお、電熱シート収容溝211の形成する場所は、道路200を走行する自動車が主に走行する轍箇所に沿って一車線に付き2本の電熱シート収容溝211を形成するとよい。これにより、自動車が走行する轍箇所を中心に道路200が温められるので、轍箇所を中心に積雪や道路200の凍結の防止、または雪や氷を融解することができ、道路200の安全性を向上させることができる。
【0064】
また例え積雪により、道路200に引かれた白線が見えなくなったとしても、自動車が主に走行する轍箇所に沿って電熱シート110が埋設され、電熱シート110の発熱により道路200の轍箇所周辺では積雪や道路200の凍結が防止されているため、自動車の運転手に轍箇所を明確に示すことができる。これにより道路200上を運転する自動車の安全性を向上させることができる。
【0065】
ケーブル収容溝212は、施工区間を分割した分割区間の両端側に、道路200を横断する方向に、道路カッターなどで深さ90mm×幅24mmの溝を道路200に形成したものである。
【0066】
たとえば、ロードヒーティングシステム100を3kmの施工区間に設置し、分割区間を30mとして施工区間を100に分割した場合、分割区間の30m毎にケーブル収容溝212を形成する。
【0067】
図3(2)は、道路200に形成された電熱シート収容溝211、およびケーブル収容溝212に、電熱シート110、電力線150、および通信ケーブル160を設置した様子を示している。
【0068】
まず、道路200に形成された電熱シート収容溝211の底部には、電熱シート収容溝211の長手方向に沿って断熱材213が充填される。断熱材213は、電熱シート110が発生する熱を道路200の下方向、つまり電熱シート収容溝211の底部から下に熱を逃がさないためのものである。
【0069】
断熱材213は、たとえばポリスチレンフォームやセルロースファイバーなどの断熱性と耐水性に優れた素材で形成されており、このような断熱性と耐水性を備えた断熱材213を、電熱シート収容溝211の底部から10mm~30mmへ設置することで、熱損失の多い鋼床版の道路基礎やコンクリート床版、また橋梁構造の路面基礎構造部に対して、下方向への熱伝導を防止し、道路200の水平方向への熱の伝導性を向上させることができる。
【0070】
次に、電熱シート110の短手方向が鉛直方向に向くように電熱シート収容溝211に沿って電熱シート110を挿入する。また電熱シート110の上端が道路200の表面から露出しないように設置する。また、ここでは図示しない地温センサー120も電熱シート110と同様に電熱シート収容溝211の任意の場所に設置しておく。
【0071】
なお電熱シート110の高さは電熱シート収容溝211の深さ90mmに対して80mmなので、電熱シート収容溝211の底部に設置した断熱材213に電熱シート110の下端が埋め込まれるように設置するようにしてもよい。
【0072】
また電熱シート110を電熱シート収容溝211に設置するには、電熱シート収容溝211の中心で電熱シート110が固定されるように、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間に支持体214を挿入しておくとよい。
【0073】
支持体214は、後に電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間に充填する目地材215と同質の材料を硬化させたもので形成され、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間に目地材215を充填する際に妨げにならない形状で形成される。
【0074】
支持体214は、たとえば電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間を埋める十分な幅を備えた中実の棒体や板体などであり、一定の間隔をあけて電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間に設置される。支持体214は、目地材215と同質の材料で形成されるため、後に目地材215と一体になる。
【0075】
電熱シート110に接続された電力線150や、地温センサー120に接続された通信ケーブル160も電熱シート収容溝211に沿って配線し、分割区間の両端側に設けられたケーブル収容溝212に集線する。
【0076】
なお、電力線150や通信ケーブル160は、あらかじめCD(Combined Duct)管などの合成樹脂製の可とう電線管に通してから電熱シート収容溝211やケーブル収容溝212に設置するとよい。
【0077】
図3(3)は、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間、およびケーブル収容溝212に目地材215を充填した様子を示している。
目地材215は、弾力性と絶縁性と耐水性とを備えた素材で構成され、たとえば末端水酸基ポリブタジエンを用いたウレタンゴムであって、施工の際は液状であり後に硬化して強度と可とう性とを得られるものが望ましく、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間、およびケーブル収容溝212に充填される。
【0078】
末端水酸基ポリブタジエンを用いたウレタンゴムである目地材215を充填することで、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間、およびケーブル収容溝212に充填する際は液状で施工性がよく、硬化すると高い可とう性と強度を得ることができる。
【0079】
このため、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間にモルタルを充填した場合と比較すると、可とう性の高い目地材215が道路200の振動や寒暖差による道路200の伸縮に柔軟に対応することができるので、道路200の振動や寒暖差による道路200の伸縮による電熱シート110の損傷を低減することができる。
【0080】
さらに、電熱シート110を自動車が走行する轍箇所に埋設しても、自動車の振動を
目地材215が吸収するので、交通量が多い道路でも、電熱シート110の損傷を低減させることができ、電熱シート110を長期に利用することができる、
【0081】
また前述の支持体214は、目地材215である末端水酸基ポリブタジエンを用いたウレタンゴムを硬化させたもので形成されており、目地材215が硬化することで目地材215と支持体214とが一体化する。
【0082】
また、目地材215は、融雪剤や凍結防止剤等で用いられる塩化カルシウム類に対する耐力を備えることで、道路200に散布された融雪剤や凍結防止剤等で目地材215が劣化し、電熱シート収容溝211に浸入してしまうことを防止することができる。
【0083】
また、目地材215に酢酸ナトリウム3水塩や硫酸ナトリウム10水塩などの融解潜熱が高い材料を含有させることで、目地材215の蓄熱性を増加させるようにしてもよい。目地材215が高い蓄熱性を備えることで、保温性が向上し、省エネルギーで道路200を温めることができる。
【0084】
また、目地材215に融解潜熱が高い材料を含有だけでなく、蓄熱性の高い素材を電熱シート110と道路200との間、または電熱シート110と目地材215との間に設け、電熱シート110が発生する熱を蓄熱性の高い素材蓄熱するようにしてもよい。
【0085】
図3(4)は、電熱シート収容溝211に充填された目地材215の上端部に表面材216を敷設した様子を示している。
電熱シート収容溝211に充填される目地材215の最上面は、道路200の表面よりも下になるように充填しておき、その段差を埋めて道路200の表面と均一になるように表面材216を敷設する。
【0086】
表面材216は、たとえば珪砂であって、目地材215よりも硬質な材質が電熱シート収容溝211に充填された目地材215の上端部に敷設される。表面材216は、目地材215が硬化する前に目地材215の上端部に散布することで、目地材215に目地材215を吸着させることができる。
【0087】
このように弾力性を備えた目地材215の上端部に、目地材215よりも硬質な材質の表面材216が敷設されることで、自動車の走行による目地材215の剥離や摩耗を防止することができ、電熱シート110を保護することができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、電熱シート110を長さ2,000mm×高さ80mm、また電熱シート収容溝211を深さ90mm×幅24mmとして説明したが、電熱シート110や電熱シート収容溝211のサイズは、たとえば電熱シート110を、長さ500mm~5000mm、高さ40mm~80mm、幅9mm~24mm、電熱シート収容溝211を深さ50mm~90mmなど任意の大きさに調節して施工することもできる。
【0089】
具体的には、電熱シート110の高さを小さく、または電熱シート収容溝211の深さを形成して、アスファルト補修時にアスファルトを剥離する対象となる道路200の表層30mm~50mmよりも下層に電熱シート110を埋設することで、アスファルトの補修工事を行う場合でも、ロードヒーティングシステム100に影響を与えることなくアスファルトを剥離することができる。
【0090】
また、電熱シート110と電熱シート収容溝211との隙間、およびケーブル収容溝212に充填する目地材215を、たとえば白色や黄色などの道路200と識別可能な色に着色することで、アスファルトの補修工事などの道路200の掘削時に電熱シート110が埋設された部分を明確にすることができる。
【0091】
図4は、制御装置の詳細を示すブロック図である。
図4に示すように、制御装置140は、給電部141、地温監視部142、降雪監視部143、および電源部144を備えている。
【0092】
給電部141は、地温監視部142、降雪監視部143、電源部144、電熱シート110、および他の制御装置140が接続されたネットワーク300に接続されており、接続された電熱シート110への電力の供給量を調節するためのものである。
【0093】
地温監視部142は、地温センサー120に接続されており、電熱シート110が埋設された道路200の温度を地温センサー120検知し、その温度を監視するためのものである。
【0094】
地温監視部142が道路200の温度を監視し、あらかじめ決められた温度より道路200の温度が低下すると、地温監視部142は給電部141に道路200の温度を増加させるための信号を送信し、給電部141は電熱シート110への電力の供給量を増加させる。
【0095】
また地温監視部142が道路200の温度を監視し、あらかじめ決められた温度より道路200の温度に達すると、地温監視部142は給電部141に道路200の温度を維持するための信号を送信し、給電部141は電熱シート110への電力の供給量を低減させる。
【0096】
降雪監視部143は、降雪センサー130に接続されており、降雪センサー130が設置された場所の降雪状況を降雪センサー130が検知し、その降雪状況を監視するためのものである。
【0097】
降雪センサー130が設置された道路200の降雪状況を降雪監視部143が監視し、降雪センサー130が降雪を検知した場合や、降雪量が増加傾向にあると降雪監視部143が判断すると、降雪センサー130は給電部141に道路200の温度を増加させるための信号を送信し、給電部141は電熱シート110への電力の供給量を増加させる。
【0098】
このように、給電部141は接続された地温センサー120や降雪監視部143から送信された信号に基づいて、電熱シート110への電力の的確な供給量を給電することができる。
【0099】
また給電部141は、他の分割区間に設置された他の制御装置140に通信ケーブル160で接続してもよく、これらの通信ケーブル160で接続された複数の制御装置140を図示しないインターネットなどのネットワークに接続し、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューターなどの端末機器を用いて外部から各々の制御装置140を制御することもできる。
【0100】
電源部144は、給電部141および道路200近辺に設置された商用電源Pに接続されており、給電部141を介して商用電源Pから得られた電力を、ロードヒーティングシステム100を構成する各機器に電力を供給するためのものである。商用電源Pは電力会社などから供給される電力の他にも、ソーラーパネルや風力発電などの自然エネルギーによる発電による電力や、ガソリンなどの燃料により発電する発電機による電力などでもよい。
【0101】
図5は、橋脚の上に形成された道路にロードヒーティングシステムを設置した状態を示す上面図、および横断面図である。
図5の横断面図に示すように、橋脚220は、所定の間隔で配設される柱部221と柱部221に架設される梁部222とで構成され、コンクリート製または鋼鉄製による床板223が2つの梁部222に架けて架設されている。さらに道路200は、床板223の上に形成されている。
【0102】
また
図5の上面図に示すように、道路200は、中央分離帯231を挟んで片側2車線が形成されており、各車線は車道中央線232で各車線が区画されており、各車線の車道中央線232と反対側には車道外側線233で車道と路肩、または車道と中央分離帯231とが区画されている。また、道路200の外側には、橋から人や自動車などの落下を防止するための壁高欄や、騒音を防止するための防音壁などの壁部234が形成されている。
【0103】
電熱シート110は、各車線の自動車が走行する轍箇所に埋設される。また、床板223と床板223とのつなぎ目は、道路200の振動や寒暖差による道路200の伸縮による影響を受けやすく、床板223と床板223とを接合する目地材が挿入されているため、電熱シート110を埋設する分割区間は、
図5の上面図に示すようにそのつなぎ目をまたがないように設けるとよい。また制御装置140や降雪センサー130は、壁部234などに設けるとよい。
【0104】
図6は、ロードヒーティングシステムを設置した状態を示す進行方向断面図である。
図6に示すように、電熱シート110は、自動車400が走行する際に、タイヤと道路200とが主に接する轍箇所、たとえば車道中央線232と車道外側線233との間に2列に電熱シート110が埋設される。
【0105】
これにより、自動車400が走行する轍箇所を中心に道路200が温められるので、轍箇所を中心に積雪や道路200の凍結の防止、または雪や氷を融解することができ、道路200の安全性を向上させることができる。
【0106】
道路200に埋設された複数の電熱シート110は、電力線150を介して壁部234に固定された制御装置140に接続される。また電熱シート110が埋設された道路200の温度を計測するための地温センサー120も、通信ケーブル160を介して壁部234に固定された制御装置140に接続される。
【0107】
図7は、料金所付近にロードヒーティングシステムを設置した状態を示す上面図である。
図7に示すように、料金所付近では、ロードヒーティングシステム100への電力供給を商用電源Pの代わりに、ディーゼルエンジンやガスタービン駆動の発電機を積載した移動式の電源車両500を利用することもできる。
【0108】
たとえば、複数ある料金所のレーンのうち、任意のレーンを通行止めにし、電源車両500を停車させ、制御装置140の電源部144と電源車両500とを接続し、電源車両500が発電した電力をロードヒーティングシステム100に供給する。
【0109】
このように、移動式の電源車両500を利用することで、災害時などで停電した場合でもロードヒーティングシステム100を利用することができ、道路200の安全性を保守することができる。
【0110】
図8は、複数の分割区間の制御方法の例を示す図である。
図8(1)に示すように、道路200の分割区間で複数の電熱シート110が埋設され、その埋設された複数の電熱シート110は、1つの制御装置140に接続されて制御されている。また一の制御装置140は、他の制御装置140とインターネットなどのネットワーク300を介して接続されており、そのネットワーク300に接続されたコンピューター600により各制御装置140は制御される。
【0111】
道路200に複数設置される制御装置140は、区間Aと区間Bと2つのグループが割り当てられ、その割り当てられた区間Aと区間Bとが交互に連結するように構成されている。
【0112】
まず
図8(2)に示すように、ロードヒーティングシステム100の運用開始時は、区間Aに割り振られた分割区間を加熱する。具体的には、区間Aに割り当てられた分割区間に埋設された電熱シート110に制御装置140が電力を供給する。
【0113】
次に、
図8(3)に示すように、区間Bに割り振られた分割区間を加熱する。具体的には、区間Bに割り当てられた分割区間に埋設された電熱シート110に制御装置140が電力を供給する。
【0114】
この
図8(2)と
図8(3)のように区間Aへの加熱と区間Bへの加熱とを交互に、たとえば5分や10分程度のインターバルで区間Aへの加熱と区間Bへの加熱とを交互に行うことで、降雪初期の電源電力負荷を半減させることができる。
【0115】
さらに、道路200に複数設置される制御装置140を区間A、区間B、区間Cの3つのグループを割り当てて、その割り当てられた区間A、区間B、区間Cが順に連結するように構成され、これらをグループ毎に輪番制で加熱することで、電源電力負荷を1/3にするようにしてもよい。
【0116】
なお、本実施の形態では、既設の道路200に電熱シート収容溝211を形成して、その電熱シート収容溝211に電熱シート110を収容したが、新設の道路を形成する際に、あらかじめ電熱シート110の周囲に目地材215で覆ったものを設置することもできる。
【0117】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態のロードヒーティングシステム100は、電熱シート110の接続方法が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0118】
図9は、第2の実施の形態に係るロードヒーティングシステムの概念を示すブロック図である。
図9に示すように、ロードヒーティングシステム100は、電熱シート110、地温センサー120、降雪センサー130、制御装置140、電力線150、通信ケーブル160、および通電監視部170を備えている。
【0119】
電熱シート110は、分割区間に所定の間隔をあけて複数埋設され、各電熱シート110は、電力線150によって直列に接続される。なお、分割区間の距離や分割数、また分割区間に埋設する電熱シート110の枚数は施工状況によって変更してもよい。
【0120】
また各電熱シート110には、電熱シート110の通電状況を監視する通電監視部170が電熱シート110を跨ぐように備えられている。通電監視部170は定期的に対応する電熱シート110が正確に通電しているか確認を行い、図示しない通信ケーブル160を介して接続された制御装置140に確認結果を通知する。
【0121】
電熱シート110が通電していないことを通電監視部170が検知した場合、直ちに制御装置140に対応する電熱シート110が通電していないことを知らせる信号を通知し、ネットワーク300を介して、制御装置140は管理者に電熱シート110が通電していないことを知らせる。
【0122】
直列で接続された電熱シート110の1つが通電しなくなると、分割区間全体が加熱できなくなるが、通電監視部170が定期的に通電状況を監視し、通電しなかった電熱シート110の場所を特定できるので、すみやかに通電しなかった発熱シート110の部位だけを修理または交換すればよいので、従来よりも保守性は大いに向上させることができる。
【0123】
図10は、第2の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
図10に示すように、電熱シート110は、長さ2,000mm×高さ80mm×厚さ1mmの矩形のシート状の発熱体であり、発熱部111、電極部112、および保護シート部113を備えている。
【0124】
電極部112は、発熱部111の長手方向の上端と下端に連続して設けられる端子であって、発熱部111に電流を流すための陽極側および陰極側が設けられる。電極部112には、ここでは図示しない電力線150によって制御装置140に直列に接続される。
【0125】
なお、ここでは電熱シート110の上端左側に突出して設けられる電極部112を電極部112A、電熱シート110の下端右側に突出して設けられる電極部112を電極部112Bとして以下を説明する。
【0126】
電熱シート110は、通電監視部170が特定した破損した電熱シート110を一枚単位で交換することができるため、破損した電熱シート110が埋設された部分の道路200だけを掘削して、破損した電熱シート110だけを交換すればよいので、修理およびメンテナンス作業が軽減されて保守性を向上することができる。
【0127】
図11は、第2の実施の形態に係る電熱シートを接続した状態を示す正面図である。
図11(1)に示すように、各電熱シート110は直列に接続され、電力線150を介してここでは図示しない制御装置140に接続される。また通電監視部170は省略する。
【0128】
具体的な接続例としては、電熱シート110-1の電極部112Aには、電力線150を介して制御装置140が有する給電部141が接続される。また電熱シート110-1の電極部112Bには、電熱シート110を表裏反転させた状態の電熱シート110-2の電極部112Bが接続される。
【0129】
さらに電熱シート110-2の電極部112Aには、電熱シート110-3の電極部112Aが接続されるように、電熱シート110の表裏が交互になるようにして連続的に接続される。これにより抵抗を分圧することができる。
【0130】
このとき、電熱シート110-1では電流が電極部112Aから電極部112Bに向かって流れることで発熱部111が発熱し、電熱シート110-2では電極部112Bから電極部112Aに向かって流れることで発熱部111が発熱する。
【0131】
また、
図11(2)のように、電極部112Aと電極部112A、または電極部112Bと電極部112Bとの接続部分に角度をもたせて接続することで、電熱シート110を道路の不陸や傾斜に合わせて設置することができる。
【0132】
具体的には、高速道路における料金所や出入り口付近などでは、道路に傾斜が設けられており、電極部112の接続部に角度をもたせて接続することで、このような道路の傾斜や不陸に合わせて電熱シート110を接続することができる。
【0133】
なお、本実施の形態では、ロードヒーティングシステム100を、通電監視部170および通信ケーブル160を備える形態で説明したが、通電監視部170および、通電監視部170と制御装置140とを接続する通信ケーブル160を除いたロードヒーティングシステム100を道路200に埋設するようにしてもよい。
【0134】
これらの通電監視部170および通信ケーブル160を省略化することで、電熱シート収容溝211やケーブル収容溝212に収容される通電監視部170や通信ケーブルの容積を削減することができるので、形成する電熱シート収容溝211やケーブル収容溝212を電熱シート110が最低限収容可能な容積まで縮小化することができる。
【0135】
これにより、道路200への電熱シート収容溝211やケーブル収容溝212を掘削するための作業時間を短縮することができ、夜間作業のような深夜の限られた時間での施工や、
極めて短時間での工期を求められる施工現場への対応を可能にすることができる。
【0136】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態のロードヒーティングシステム100は、電熱シート110の形成方法が異なる以外は、第2の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第2の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0137】
図12は、第3の実施の形態に係る電熱シートの詳細を示す正面図である。
図12に示すように、電熱シート110は、高さ80mm×厚さ3~7mmの矩形のシート状の発熱体であり、発熱部111、電極部112、および保護シート部113を備えており任意の長さで形成される。たとえば電熱シート110は数十メートルや数百メートルの長さで形成され、ロール状などに巻かれた状態で現場に搬入することができる。
【0138】
電極部112は、発熱部111の長手方向の両端に設けられる端子であって、発熱部111に電流を流すための陽極側および陰極側が設けられる。この電極部112を上方向、または下方向から切断するようにして電熱シート110に切り欠きを形成することで、第2の実施の形態に係る電熱シート110を直列に接続した状態と同じ状態を形成することができる。詳細は後述する。
【0139】
保護シート部113は、電熱シート110および電熱シート110と電極部112との接続部を保護するための保護材であって、たとえばブチルゴムなどの可撓性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐水性などに優れた厚さ2mm程度の素材で、電熱シート110および電熱シート110と電極部112との接続部を挟み込むように両側面から保護シート部113で接着する。保護シート部113の外側面は、はく離紙などで保護しておくことで、保護シート部113が他の部位と接着してしまうことを防止することができる。
【0140】
図13は、電熱シートの形成方法を示す正面図である。
図13(1)に示すように、任意の長さに形成された電熱シート110は、切り欠き部114を供えている。
【0141】
切り欠き部114は、ロードヒーティングシステム100を設置する道路の状況によって任意の箇所に設けられ、電極部112を上方向、または下方向から一方の電極部112のみを切断するようにして電熱シート110に切り欠き部114が形成される。
【0142】
具体的な電熱シート110の設置方法を以下に説明する。
まず、ロール状などに巻かれた状態で任意の長さに形成された電熱シート110を、設置する電熱シート収容溝211の長さに合わせて切断する。
【0143】
次に、電熱シート110に切り欠き部114を形成する。切り欠き部114は、切断された電熱シート110の両端部に電極部112の一方側が露出するように形成され、かつ電極部112を上方向、または下方向から切断するようにして電熱シート110に切り欠きを形成する。これにより、第2の実施の形態に係る電熱シート110を直列に接続した状態と同じ状態を形成することができ、電熱シート110の抵抗を分圧することができる。
【0144】
また、電熱シート110に形成する切り欠き部114の数量を増減させることで、電熱シート110の出力を可変することもできる。具体的には、切り欠き部114の数量を少なくすることで、電熱シート110全体の電気抵抗値は小さくなるため、電熱シート110の出力を高めることができる。また、切り欠き部114の数量を多くすることで、電熱シート110全体の電気抵抗値は大きくなるため、電熱シート110の出力を低くすることができる。
【0145】
上記のように、電熱シート110に形成する切り欠き部114の数量を調整することで、電力を供給する電源が直流、交流、12V、24V、48V、100V、200V、400Vなど、あらゆる電源種類であっても現場で適宜対応させて施工することができる。
【0146】
さらに、
図13(2)のように、電熱シート110に切り欠き部114を形成することで、形成された切り欠き部114で接続されている電極部112の付近で湾曲させることができる。これにより、電熱シート110を道路の不陸や傾斜に合わせて設置することができる。
【0147】
さらに、道路に形成された電熱シート収容溝211に合わせて、電熱シート110を切断し、その切断した電熱シート110に切り欠き部114を形成するの、施工現場の対応性を向上させることができる。
【0148】
なお、切り欠き部114の形成には、あらかじめ金型などで形成された抜き型を用意することで、所定の形状の切り欠き部114を電熱シート110に形成することができる。これにより、均一な形状の切り欠き部114を電熱シート110に形成することができ、施工品質の安定性を向上することができる。
【符号の説明】
【0149】
100 ロードヒーティングシステム
110 電熱シート
120 地温センサー
130 降雪センサー
140 制御装置
150 電力線
160 通信ケーブル
200 道路