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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/155 20200101AFI20230616BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H05B47/155
G03B21/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019139633
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021022528
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】山内 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友未
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158885(WO,A1)
【文献】特開2008-225294(JP,A)
【文献】特開2019-009062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の領域において被写体が陰影によって表現された映像を投影面に投影するプロジェクタと、
前記投影面に照明光を照射する照明装置と
前記プロジェクタ及び前記照明装置を制御する制御装置とを備え、
前記投影面において、前記映像の照度は、前記照明光の照度の0.3倍以上55倍以下であり、
前記制御装置は、制御部を備え、
前記制御部は、前記プロジェクタ及び前記照明装置の一方の装置をユーザの指示にしたがって制御することにより前記投影面における前記映像の照度が前記照明光の照度の0.3倍以上55倍以下であるという条件が満たされなくなる場合に、前記一方の装置を前記ユーザの指示にしたがって制御し、かつ、前記プロジェクタ及び前記照明装置の他方の装置を前記条件が満たされるように制御する
照明システム。
【請求項2】
前記照明光の前記投影面における照度は、50ルクス以上である
請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
記制御装置は、さらに、前記投影面において前記映像の照度が前記照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるときの前記プロジェクタ及び前記照明装置の設定情報が記憶される記憶部を備え、
前記制御部は、前記設定情報に基づいて前記プロジェクタ及び前記照明装置を制御す
請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記映像のコントラスト比は、100:1以下である
請求項1~のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記照明装置の平均演色評価数は、80以上である
請求項1~のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項6】
前記映像は、モノクローム映像である
請求項1~のいずれか1項に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な照明システムが提案されている。特許文献1には、光投影装置を用いて映像を投影して演出を用いながらも、ユーザが快適に視作業を行うことができる照明環境を得ることができる照明システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-170972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、映像の視認性と、映像が投影される空間における明るさの確保とを両立することができる照明システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る照明システムは、少なくとも一部の領域において被写体が陰影によって表現された映像を投影面に投影するプロジェクタと、前記投影面に照明光を照射する照明装置とを備え、前記投影面において、前記映像の照度は、前記照明光の照度の0.3倍以上55倍以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の照明システムは、映像の視認性と、映像が投影される空間における明るさの確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態に係る照明システムの概要を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る照明システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、主観評価に関する実験の概要を説明するための図である。
図4図4は、主観評価に関する実験の結果のグラフを示す図である。
図5図5は、主観評価に関する実験の結果をまとめた表を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る照明システムの動作例1のフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係る照明システムの動作例2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0010】
(実施の形態)
[照明システムの概要]
まず、実施の形態に係る照明システムの構成について説明する。図1は、実施の形態に係る照明システムの概要を示す図である。図2は、実施の形態に係る照明システムの機能構成を示すブロック図である。
【0011】
照明システム100は、プロジェクタ10と、2つの照明装置20と、制御装置30と、照度センサ40とを備える。照明システム100は、少なくとも1つの照明装置20を備えていればよい。
【0012】
照明システム100は、プロジェクタ10及び照明装置20が設置された空間50において、プロジェクタ10による映像の投影と、照明装置20による照明光の照射とを並行して行うことができるシステムである。空間50は、例えば、部屋などの閉空間である。
【0013】
プロジェクタ10が投影する映像は、例えば、木の陰影を模したモノクローム映像(言い換えれば、木漏れ日のモノクローム映像)である。このような映像は、例えば、空間の演出に用いられる。
【0014】
一般的には、演出用の映像を投影する場合には、映像の見え方(視認性)を確保するために空間50を比較的暗くする必要がある。つまり、照明装置20が発する光の明るさを暗くする必要がある。発明者らの知見によれば、映像の投影面における照度は、例えば、50ルクス未満とされる必要がある。
【0015】
これに対し、発明者らは後述の照度に関する所定条件を見出した。照明システム100においては、上記木の陰影を模したモノクローム映像のように、少なくとも一部の領域において被写体が陰影によって表現された映像が投影される場合には、この所定条件が満たされる限り、映像の投影面を照明装置20が発する照明光によって明るくしても映像の視認性が確保される。例えば、映像の投影面における照度が50ルクス以上となることが許容される。
【0016】
つまり、照明システム100は、映像の視認性と、映像が投影される空間における明るさの確保とを両立することができる。言い換えれば、空間50が明るい状態のまま映像演出を行うことができる。照明システム100によれば、演出用の映像の利用範囲をオフィスまたは病院などの明るさが必要な空間50にも拡大することができる。また、照明システム100は、映像の投影面に演色性の高い照明光を補助的に照射することで、演色性が向上された光の演出を容易に実現することもできる。
【0017】
[照明システムの構成]
以下、このような照明システム100が有する各装置について説明する。まず、プロジェクタ10について説明する。
【0018】
プロジェクタ10は、空間50の天井または壁などに設置される。プロジェクタ10は、光源、及び、光源が発する光を変調する、透過型液晶パネル、マイクロミラーアレイ、または、反射型液晶パネルなどの映像素子を備え、空間50内(壁面、床面、または、天井面など)に映像を投影する。プロジェクタ10は、一般的な映像よりもコントラスト比が低い演出用の映像を投影する。このような演出用の映像は、例えば、木の陰影を模したモノクローム映像(言い換えれば、グレースケール映像)であるが、黒以外の単色の濃淡で表現される映像であってもよいし、カラー映像であってもよい。
【0019】
演出用の映像のコントラスト比は、例えば、100:1以下である。なお、コントラスト比は、映像の最も暗い部分(黒)を1としたときに、最も明るい部分(白)の明るさがその何倍であるかを示す物理量である。コントラスト比が100:1以下であるとは、映像の最も暗い部分を1としたときに最も明るいところが100以下であることを意味する。つまり、コントラスト比が100:1以下であるとは、コントラスト比が50:1などであることを意味する。
【0020】
プロジェクタ10は、制御装置30から送信される制御信号に基づいて制御されるが、ユーザが専用のリモートコントローラ等を操作することによっても制御可能である。具体的には、プロジェクタ10に投影させる映像、映像のコントラスト、映像の明るさ、映像の形状(台形歪み)などが変更可能である。
【0021】
次に、照明装置20について説明する。照明装置20は、プロジェクタが設置された空間50に設置され、プロジェクタ10が映像を投影する投影面(図1の床面)に光を照らす。照明装置20は、投影面の映像が投影されている領域に重ねて照明光を照射する。照明装置20は、例えば、空間50の天井または壁に埋め込まれるダウンライトであるが、照明装置20の具体的態様は特に限定されない。照明装置20は、空間50の天井に設置されるシーリングライトであってもよいし、空間50の天井または壁に設置されるスポットライトであってもよい。
【0022】
照明装置20の平均演色評価数(Ra)は、例えば、80以上である。つまり、照明装置20は、比較的高い演色性を有している。
【0023】
照明装置20の発光状態は、制御装置30から送信される制御信号に基づいて制御されるが、ユーザが専用のリモートコントローラ等を操作することによっても制御可能である。ここでの発光状態の制御には、例えば、点灯及び消灯の切り替え制御、調光制御(言い換えれば、調光率(0%~100%)の制御)、調色制御、及び、配光制御などが含まれる。
【0024】
照明装置20は、例えば、基板上に複数のLED素子が実装された発光モジュールを備える。複数のLED素子には、比較的低い色温度(例えば、電球色など)の白色光を発する第一LED素子と、比較的高い色温度(例えば、昼白色など)の白色光を発する第二LED素子とが含まれる。第一LED素子及び第二LED素子の発光輝度は、独立して制御される。これにより、照明装置20の調光機能及び調色機能が実現される。
【0025】
なお、発光モジュールの具体的態様は、特に限定されず、発光モジュールは、基板上に複数のLED素子が実装された発光モジュールであって、複数のLED素子のそれぞれは、赤色LEDチップ、青色LEDチップ、及び、緑色LEDチップを含み、各LEDチップの輝度が独立して制御可能な発光モジュールであってもよい。また、発光モジュールは、LED素子を用いた発光モジュールに限定されず、半導体レーザ等の半導体発光素子、有機EL(Electro Luminescence)または無機EL等の固体発光素子を用いた発光モジュールであってもよい。
【0026】
なお、照明装置20は、プロジェクタ10とは異なり、映像を投影する機能を有していない。具体的には、照明装置20は、プロジェクタ10が備える、透過型液晶パネル、マイクロミラーアレイ、または、反射型液晶パネルなどの映像素子を備えていない。
【0027】
次に、制御装置30について説明する。制御装置30は、プロジェクタ10及び照明装置20を制御する。制御装置30は、プロジェクタ10及び照明装置20と別体の装置であるが、プロジェクタ10及び照明装置20の一方の装置と一体であって、当該一方の装置に内蔵されてもよい。制御装置30は、通信部31と、制御部32と、記憶部33と、操作受付部34とを備える。
【0028】
通信部31は、制御装置30がプロジェクタ10、照明装置20、及び照度センサ40と局所通信ネットワークを介して通信を行うための通信回路である。通信部31によって行われる通信は、有線通信であってもよいし無線通信であってもよい。通信部31が行う通信の通信規格は特に限定されない。
【0029】
制御部32は、通信部31に制御信号を送信させることによりプロジェクタ10及び照明装置20を制御する。制御部32は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0030】
記憶部33は、制御部32が実行するプログラムが記憶される記憶装置である。記憶部33は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。
【0031】
操作受付部34は、ユーザの操作を受け付けるユーザインターフェース装置である。操作受付部34は、タッチパネルまたはハードウェアボタンなどによって実現される。なお、制御装置30が操作受付部34を備えることは必須ではなく、専用のアプリケーションプログラムがインストールされた携帯端末であって通信部31と通信可能な携帯端末が操作受付部34として使用されてもよい。携帯端末は、具体的には、スマートフォンまたはタブレット端末である。
【0032】
次に、照度センサ40について説明する。照度センサ40は、プロジェクタ10によって映像が投影されている投影面(図1の例では床面)の照度をセンシングする。照度センサ40は、例えば、照明装置20と一体であって、照明装置20に内蔵されるが、プロジェクタ10と一体であって、プロジェクタ10に内蔵されてもよい。また、照度センサ40は、プロジェクタ10及び照明装置20のいずれの装置とも別体であって、プロジェクタ10及び照明装置20のいずれの装置とも異なる位置に設置されてもよく、例えば、投影面である床材または壁材に照度センサ40が設置されていてもよい。
【0033】
[発明者らが得た知見]
発明者らは、木漏れ日の映像を投影面に投影しているときの環境照度と映像の視認性の主観評価についての実験を行った。図3は、このような主観評価に関する実験の概要を説明するための図である。図3の(a)は、実験が行われた環境を示し、図3の(b)は、評価に用いられた映像を示す。
【0034】
図3の(a)に示されるように、主観評価に関する実験においては、天井に設置されたプロジェクタ10から投影面(壁面)に映像(図3の(b))を投影し、15人の被験者のそれぞれに映像の視認性が許容できるか否かを主観評価させた。投影面には、映像だけでなく、机上に設置された照明装置20から光が照射され、照明装置20を制御することにより投影面における照度(つまり環境照度)を変化させて映像の視認性が許容できるか否かを被験者に主観評価させた。
【0035】
具体的には、照明装置20をオフ(つまり環境照度がゼロ)の状態から徐々に明るさを増加させたときに映像の視認性が許容できるか否かの主観評価と、照明装置20が最大の明るさの状態から徐々に明るさを低下させたときの映像の視認性が許容できるかの主観評価とを1人の被験者に対して3回ずつ行わせた。
【0036】
図4は、このような主観評価に関する実験の結果のグラフを示す図である。図4において、縦軸は被評価者の何%が映像の視認性を許容できると評価したかを示し、横軸は照明装置20が発する光に起因する投影面の照度(つまり、環境照度)を示している。なお、投影面における映像の照度(つまり、照明装置20がオフのときの投影面における映像の照度)は、183ルクスである。
【0037】
図4に示されるように、環境照度が202ルクスのときには75%の被験者が映像の視認性を許容することができ、環境照度が366ルクスのときには50%の被験者が映像の視認性を許容することができる。環境照度が550ルクスのときには25%の被験者が映像の視認性を許容することができる。
【0038】
図5は、主観評価に関する実験の結果をまとめた表を示す図である。図5に示されるように、投影面において、映像の照度が照明光の照度の0.3(映像の明るさ183ルクス/環境照度550ルクス)倍以上であれば、25%以上の被験者が映像の視認性を許容することができる。投影面において、映像の照度が照明光の照度の0.5(映像の明るさ183ルクス/環境照度366ルクス)倍以上であればより好ましく、50%以上の被験者が映像の視認性を許容することができる。
【0039】
さらに、投影面において、映像の照度が照明光の照度の0.9(映像の明るさ183ルクス/環境照度202ルクス)倍以上であれば、75%以上の被験者が映像の視認性を許容することができる。なお、照度は、言い換えれば、単位面積当たりの光束量である。
【0040】
なお、投影面において映像の照度が照明光の照度よりも十分に高いときには、映像の視認性は良好である。既存のプロジェクタ10が投影できる映像の最大の照度を10000ルクス程度であると考えると、投影面における映像の照度は照明光の照度の55(映像の明るさ10000ルクス/環境照度202ルクス)倍以下となる。なお、投影面における映像の照度が照明光の照度の1倍未満であれば映像の照度のほうが照明光の照度よりも低い構成となる。このような構成は一般的には採用されない。
【0041】
このような結果が得られたことは、ユーザが日常的な自然現象の中での原体験に基づき認知的な補間を行うことができるため、従来一般の映像演出と比べ、その許容度が増した(言い換えると、一般的な映像演出では許容できない環境照度を許容できた)と考えられる。
【0042】
また、今回投影面のコンテンツを木漏れ日としたが、水面、波紋などをはじめとした任意の自然現象に基づく陰影表現でも上記の効果は同様に得られるものであり、ユーザはプロジェクタ10から投影されるコンテンツを自在に選択可能である。
【0043】
あわせて、時間によって上記コンテンツを変えたり、再生速度を変化させたり、色合いを変えたり、明るさを変えたりするなどの制御がおこなわれてもよい。これらは、ユーザの操作で行われても、自動で行われてもよい。このとき、空間の意匠性や快適性が高まるため、好ましい。
【0044】
以上のような発明者らの実験に基づき、照明システム100においては、投影面において、映像の照度は、照明光の照度の0.3倍以上55倍以下(以下、この照度に関する条件は所定条件とも記載される)となるように、照明システム100の設置時(施工時)に映像の照度、及び、照明光の設定が行われる。これにより、照明システム100は、空間50における映像の視認性を確保しながら空間50を照明することができる。
【0045】
また、照明システム100においては、投影面における照明光の照度が、一般的には映像が見にくくなるとされる50ルクス以上であっても、映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるようにプロジェクタ10及び照明装置20を制御することで映像の視認性を確保することができる。
【0046】
[動作例1]
照明システム100は、例えば、プロジェクタ10によって投影される映像の明るさと照明装置20が発する照明光の明るさとをユーザが制限なく自由に変更できる通常モードの動作と、演出モードの動作とを選択的に実行する。演出モードの動作においては、投影面において、映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるような設定でプロジェクタ10及び照明装置20が制御される。以下、ユーザがこのような設定を事前に行い設定情報として記憶(登録)するための動作について説明する。図6は、照明システム100の動作例1のフローチャートである。
【0047】
まず、制御装置30の操作受付部34は、照明装置20によって投影面に照明光を投影するための操作をユーザから受け付ける(S11)。制御部32は、操作受付部34が受け付けた操作に基づいて、照明装置20(より詳細には2つの照明装置のそれぞれ)に照明光を照射させる(S12)。制御部32は、具体的には、通信部31に照明装置20へ制御信号を送信させることにより、照明装置20に照明光を照射させる。この結果、投影面にはユーザの所望の照度の照明光が照射される。
【0048】
照度センサ40は、投影面に照射されている照明光の照度をセンシングし(S13)、センシングの結果として投影面に照射されている照明光の照度を示す第一照度情報を制御装置30の通信部31に送信する。制御部32は、通信部31によって受信された第一照度情報を記憶部33に記憶し(S14)、受信された第一照度情報に基づいてプロジェクタ10によって投影される映像の投影面における照度の許容範囲を算出する(S15)。上述のように映像の照度の許容範囲は、第一照度情報が示す照度の0.3倍以上55倍以下である。
【0049】
この実施例において、照明システム100は照明器具や空間のレイアウト変更、時刻や天候変動にともなう空間の環境照度変化に対して、つねに映像の照度を第一照度情報が示す照度の0.3倍以上55倍以下に保ち続けるので、好ましい。
【0050】
次に、操作受付部34は、プロジェクタ10によって投影面に映像を投影するための操作をユーザから受け付ける(S16)。制御部32は、操作受付部34が受け付けた操作に基づいて、プロジェクタ10に映像を投影させる(S17)。制御部32は、具体的には、通信部31にプロジェクタ10へ制御信号を送信させることにより、プロジェクタ10に映像を投影させる。この結果、投影面にはユーザの所望の照度の映像が投影される。
【0051】
照度センサ40は、投影面の照度(つまり、映像の照度と照明光の照度とを合わせた照度)をセンシングし(S18)、センシングの結果として投影面の照度を示す第二照度情報を制御装置30の通信部31に送信する。制御部32は、通信部31によって受信された第二照度情報を記憶部33に記憶する(S19)。
【0052】
その後、操作受付部34によってユーザの設定完了操作が受け付けられると(S20)、制御部32は、ステップS19において記憶部33に記憶された第二照度情報が示す照度からステップS14において記憶部33に記憶された第一照度情報が示す照度を減算することにより投影面における映像の照度を算出する(S21)。そして制御部32は、投影面における映像の照度がステップS15によって算出された許容範囲内であるか否かを判定する(S22)。
【0053】
制御部32は、投影面における映像の照度がステップS15によって算出された許容範囲内であると判定すると(S22でYes)、プロジェクタ10及び照明装置20の現在の設定を示す設定情報を記憶部33に記憶する(S23)。つまり、記憶部33には、投影面において映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるときのプロジェクタ10及び照明装置20の設定情報が記憶される。以降、操作受付部34が演出モードを指示するユーザの操作を受け付けたときには、制御部32は、記憶部33に記憶された設定情報に基づいてプロジェクタ10及び照明装置20を制御する。
【0054】
一方、制御部32は、投影面における映像の照度がステップS15によって算出された許容範囲であると判定すると(S22でNo)、設定情報を記憶部33に記憶しない。この場合は、設定が許容範囲外であることのユーザへの通知、及び、ユーザによる設定のやり直しなどが行われる。
【0055】
このような動作例1によれば、照明システム100は、投影面において映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるような設定情報のみを選択的に記憶部33に記憶することができる。
【0056】
なお、動作例1では、照明光の照度が決定された後に映像の照度が許容範囲内であるか否かが判定されたが、映像の照度が決定された後に照明光の照度が許容範囲内であるか否かが判定されてもよい。
【0057】
なお、動作例1では、投影面の照度が照度センサ40によって計測されたが、照度センサ40が投影面の照度を計測することは必須ではない。例えば、ユーザは、プロジェクタ10及び照明装置20のうち照明装置20のみが発光している状態での投影面の照度を、照度計でマニュアル測定してもよい。この場合、ユーザは、マニュアル測定した照度の入力操作を操作受付部34に対して行うことにより、第一照度情報を記憶部33に記憶することができる。制御部32は、記憶された第一照度情報に基づいてプロジェクタ10によって投影される映像の投影面における照度の許容範囲を算出する。上述のように映像の照度の許容範囲は、第一照度情報が示す照度の0.3倍以上55倍以下である。
【0058】
この実施例において、プロジェクタなどの映像機器に不慣れなユーザ、例えば照明装置の施工を専門とする工事業者などにとって、プロジェクタ10の出力条件を別途設定することなく、簡単にシステムの初期設定が行えるようになるため、好ましい。
【0059】
[動作例2]
上記演出モードの動作中(つまり、投影面における映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下であるという所定条件が満たされているとき)にプロジェクタ10の設定変更が行われる場合がある。以下このようなときの照明システム100の動作について説明する。図7は、照明システム100の動作例のフローチャートである。
【0060】
照明システム100は、演出モードの動作を行う(S31)。このとき、投影面における映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下であるという所定条件は満たされている。
【0061】
次に、操作受付部34は、プロジェクタ10が投影する映像の照度を変更するための操作をユーザから受け付ける(S32)。制御部32は、この操作に基づいてプロジェクタ10が投影する映像の照度を変更した場合に所定条件が満たされるか否かを判定する(S33)。例えば、上記動作例1で説明したように、照度センサ40によって送信される照度情報に基づいて演出モードの動作中の映像の照度、及び、照明光の照度が記憶部33に記憶されていれば、制御部32は、変更後の映像の照度を推定し、かつ、推定した変更後の映像の照度が所定の条件を満たすか否かを判定することができる。
【0062】
制御部32は、プロジェクタ10が投影する映像の照度を上記操作に基づいて変更した場合に所定の条件が満たされると判定すると(S33でYes)、プロジェクタ10が投影する映像の照度を変更する(S34)。つまり、制御部32は、ユーザの指示にしたがってプロジェクタ10を制御する。このとき、照明装置20については、特に制御は行われない。
【0063】
一方、制御部32は、プロジェクタ10が投影する映像の照度を上記操作に基づいて変更した場合に所定の条件が満たされなくなると判定すると(S33でNo)、上記操作に基づいて、プロジェクタ10が投影する映像の照度を変更し(S35)、さらに、照明装置20が照射する照明光の照度を、所定条件が満たされるように変更する(S36)。つまり、制御部32は、ユーザの指示にしたがってプロジェクタ10を制御し、かつ、照明装置20を所定条件が満たされるように制御する。
【0064】
以上説明したように、照明システム100は、プロジェクタ10をユーザの指示にしたがって制御することにより所定条件が満たされなくなる場合に、プロジェクタ10をユーザの指示にしたがって制御しつつ、照明装置20が照射する照明光の照度を変更することにより、所定条件を満たすことができる。つまり、照明システム100は、プロジェクタ10及び照明装置20を連動制御することで、映像の視認性が確保される。
【0065】
なお、動作例2では、プロジェクタ10によって投影される映像の照度の変更が指示される場合について説明されたが、照明装置20によって照射される照明光の照度が変更される場合も同様である。つまり、制御部32は、プロジェクタ10及び照明装置20の一方の装置をユーザの指示にしたがって制御することにより所定条件が満たされなくなる場合に、当該一方の装置をユーザの指示にしたがって制御し、かつ、プロジェクタ10及び照明装置20の他方の装置を所定条件が満たされるように制御すればよい。
【0066】
また、動作例2のような連動制御が行われることは必須ではなく、照明システム100は、演出モードの動作中には、所定条件が満たされなくなるようなユーザの操作を無効にしてもよい。
【0067】
[効果等]
以上説明したように、照明システム100は、少なくとも一部の領域において被写体が陰影によって表現された映像を投影面に投影するプロジェクタ10と、投影面に照明光を照射する照明装置20とを備え、投影面において、映像の照度は、照明光の照度の0.3倍以上55倍以下である。
【0068】
このような照明システム100は、投影面を照明光によって明るくしても映像の視認性を確保することができる。したがって、照明システム100は、映像の視認性と、映像が投影される空間における明るさの確保とを両立することができる。
【0069】
また、例えば、照明光の投影面における照度は、50ルクス以上である。
【0070】
このような照明システム100は、投影面における照明光の照度が、一般的には映像が見にくくなるとされる50ルクス以上であっても、視映像の視認性を確保することができる。
【0071】
また、例えば、照明システム100は、さらに、プロジェクタ10及び照明装置20を制御する制御装置30を備える。制御装置30は、投影面において映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下となるときのプロジェクタ10及び照明装置20の設定情報が記憶される記憶部33と、設定情報に基づいてプロジェクタ10及び照明装置20を制御する制御部32とを備える。
【0072】
このような照明システム100は、設定情報に基づいてプロジェクタ10及び照明装置20を制御することができる。
【0073】
また、例えば、制御部32は、プロジェクタ10及び照明装置20の一方の装置をユーザの指示にしたがって制御することにより投影面における映像の照度が照明光の照度の0.3倍以上55倍以下であるという条件が満たされなくなる場合に、一方の装置をユーザの指示にしたがって制御し、かつ、プロジェクタ10及び照明装置20の他方の装置を条件が満たされるように制御する。
【0074】
このような照明システム100は、プロジェクタ10及び照明装置20を連動制御することで、ユーザによって設定変更が指示された場合も、映像の視認性を確保することができる。
【0075】
また、例えば、映像のコントラスト比は、100:1以下である。
【0076】
このような照明システム100は、コントラスト比が100:1以下の映像を投影することができる。
【0077】
また、例えば、照明装置20の平均演色評価数は、80以上である。
【0078】
このような照明システム100は、演色性の高い照明光を照射することができる。映像の投影面にこのような演色性の高い照明光が補助的に照射されることで、演色性が向上された光の演出が実現される。
【0079】
また、例えば、映像は、モノクローム映像である。
【0080】
このような照明システム100は、モノクローム映像を投影することができる。
【0081】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、照明システムは演出に用いられると説明されたが、演出以外の用途で使用されてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、照明システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。照明システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された照明システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0086】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0087】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0088】
例えば、本発明は、上記実施の形態の制御装置として実現されてもよいし、制御装置などのコンピュータによって実行される照明装置の制御方法として実現されてもよい。本発明は、照明装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0089】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10 プロジェクタ
20 照明装置
30 制御装置
32 制御部
33 記憶部
40 照度センサ
50 空間
100 照明システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7