(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】電子部品、電子部品の製造方法、実装構造体及び実装構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230616BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230616BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H01L23/12 501B
H01L21/92 604H
H01L21/92 602K
H01L21/60 311Q
H05K3/34 505E
(21)【出願番号】P 2019173516
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山津 繁
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦史
(72)【発明者】
【氏名】眞田 翔平
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-288785(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/48
H01L23/58-23/62
H01L25/00-25/07
H01L25/10-25/11
H01L25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品本体と、
前記電子部品本体に形成された導体と、
前記導体上に配置され、前記導体と電気的に接続されている、複数のはんだボールと、
前記導体と前記各はんだボールとの接合部分の少なくとも一部を覆う複数の補強部と、を備え、
前記複数の補強部のうちの少なくとも1つは、前記電子部品本体の表面からの高さが部分的に異なっている、
電子部品。
【請求項2】
前記複数のはんだボールは、第一のはんだボールと、第二のはんだボールと、を含み、
前記複数の補強部は、前記導体と前記第一のはんだボールとの接合部分の少なくとも一部を覆う第一の補強部と、前記導体と前記第二のはんだボールとの接合部分の少なくとも一部を覆う第二の補強部と、を含み、
前記第一の補強部は、前記第二の補強部よりも高い部分を有している、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記電子部品本体の中心から見て、前記第一の補強部は、前記第二の補強部よりも前記電子部品本体の端部側に位置している、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記電子部品本体の表面からの高さが部分的に異なっている補強部の高さは、前記はんだボールの高さの5%以上80%以下であり、
前記補強部の最も高い部分と最も低い部分との差が、前記はんだボールの高さの2%以上75%以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
電子部品本体に形成された導体にはんだボールを接触させる工程と、
前記はんだボールと前記導体との接触部分の少なくとも一部を覆って未硬化樹脂材料を配置する工程と、
前記未硬化樹脂材料を熱硬化して複数の補強部を形成する工程と、を備え、
前記はんだボールの融点が前記未硬化樹脂材料の硬化開始温度よりも低く
、
前記複数の補強部を形成する工程において、前記未硬化樹脂材料の流れをコントロールすることにより、前記補強部のうちの少なくとも一つを、前記電子部品本体の表面からの高さが部分的に異なるように形成する、
電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品を基材に実装している、
実装構造体。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品の前記はんだボールを溶融させて基材に接合する、
実装構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電子部品、電子部品の製造方法、実装構造体及び実装構造体の製造方法に関する。より詳細には、本開示は、半導体チップなどの電子部品、電子部品の製造方法、電子部品を実装した実装構造体及び実装構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、実装構造体が記載されている。この実装構造体は、半導体素子が217℃以上の融点を有する第1のはんだにより接合されている第1の実装基板を第2の基板上に実装した実装構造体である。また、この実装構造体は、第1の実装基板を第2の基板に接合する複数からなる接合部と、各接合部の各々の周囲に形成された補強部材とを備えている。前記接合部は、はんだより構成されており、前記補強部材は、樹脂により構成されている。そして、前記接合部を前記補強部材で補強することにより、実装構造体の落下信頼性及び温度サイクル特性を高くしようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような実装構造体において、はんだで形成される接合部(はんだボール)の表面に凹みが生じることがあった。この場合、接合部を他の部材(例えば、回路基板等)の導体部に接続する際に接続しにくい場合があった。
【0005】
本開示は、はんだボールの表面に凹みが生じにくい電子部品を提供することを目的とする。
【0006】
また本開示は、電子部品を備える実装構造体、電子部品の製造方法及び実装構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電子部品は、電子部品本体と、前記電子部品本体に形成された導体と、複数のはんだボールと、複数の補強部と、を備える。前記複数のはんだボールは、前記導体上に配置され、前記導体と電気的に接続されている。前記複数の補強部は、前記導体と前記各はんだボールとの各々の接合部分の少なくとも一部を覆う。前記複数の補強部のうちの少なくとも1つは、前記電子部品本体の表面からの高さが部分的に異なっている。
【0008】
本開示の一態様に係る電子部品の製造方法は、電子部品本体に形成された導体にはんだボールを接触させる工程と、前記はんだボールと前記導体との接触部分の少なくとも一部を覆って未硬化樹脂材料を配置する工程と、を備える。前記はんだボールの融点が前記未硬化樹脂材料の硬化開始温度よりも低い。
【0009】
本開示の一態様に係る実装構造体は、前記電子部品を基材に実装している。
【0010】
本開示の一態様に係る実装構造体の製造方法は、前記電子部品のはんだボールを溶融させて基材に接合する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、はんだボールの表面に凹みが生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示に係る実装構造体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る電子部品の一実施形態を示す一部の断面図である。
【
図3】
図3A~Cは、本開示に係る電子部品の製造方法の一実施形態を示す一部の断面図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る電子部品の製造方法において、リフロー工程の温度プロファイルと未硬化樹脂材料の粘度変化とを示すグラフである。
【
図5】
図5は、本開示に係る電子部品の他の一実施形態を示す一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る電子部品3は、電子部品本体33と、電子部品本体33に形成された導体31と、複数のはんだボール30と、複数の補強部4と、を備える。複数のはんだボール30は、導体31上に配置され、導体31と電気的に接続されている。複数の補強部4は、導体31と各はんだボール30との各々の接合部分20の少なくとも一部を覆う。複数の補強部4のうちの少なくとも1つは、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている。
【0014】
本実施形態に係る電子部品3は、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている補強部4で少なくとも一部が覆われているはんだボール30の表面に凹みが生じにくい。すなわち、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている補強部4で少なくとも一部が覆われているはんだボール30の表面が、球体の表面のように、滑らかになりやすく、歪な形状のはんだボール30がほとんど無くなる。これは、はんだボール30が溶融して導体31に接合する際に、補強部4から溶融したはんだボール30にかかる力が不均一となり、溶融したはんだボール30の流動性が向上する。つまり、補強部4に高さに差を生じさせると、溶融したはんだボール30が片側に回りやすくなって球形になりやすい。したがって、溶融したはんだボール30が表面張力で滑らかな面を保った状態で固化することになり、表面に凹凸が少ないはんだボール30を有する電子部品3が得ることができる。
【0015】
そして、本実施形態に係る実装構造体1は、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている補強部4を有し、表面に凹凸が少ないはんだボール30を有する上記のような電子部品3を基材2に実装している。したがって、電子部品3のはんだボール30を基材2に接合するにあたって、はんだボール30の表面の凹みによる接続不良を少なくすることができる。また電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている補強部4から溶融したはんだボール30にかかる力が不均一となり、溶融したはんだボール30の流動性が向上する。よって、実装構造体1は、接続信頼性及びヒートサイクル信頼性が向上し、モバイル機器に好適に使用することができ、モバイル機器よりも高信頼性が要求される車載用機器にも適用することができる。
【0016】
(2)詳細
(2.1)電子部品
図1に示すように、本実施形態に係る電子部品3は、電子部品本体33と、電子部品本体33に形成された導体31と、複数のはんだボール30と、複数の補強部4と、を備える。
【0017】
電子部品3としては、半導体チップ又はインターポーザーなどを例示することができる。電子部品3が半導体チップの場合は、例えば、表面実装型の半導体チップである。半導体チップは、特に限定されないが、例えば、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、WLP(ウェハーレベルパッケージ)等である。電子部品3がWLPである場合には、電子部品本体33は、例えば、再配線層が設けられたシリコン基板を含む。電子部品3がBGAである場合には、電子部品本体33は、例えば、基板上に実装されたダイを封止樹脂で封止して構成されるパッケージを含む。電子部品3がインターポーザーの場合は、電子部品本体33はプリント配線板等の回路基板である。
【0018】
導体31は、電子部品本体33の表面に形成されており、このため導体31は、電子部品本体33の表面で外部に露出している。導体31は、例えば、電子部品3がWLPである場合には、再配線層と電気的に接続されたピラーである。導体31は、例えば、電子部品3がBGAである場合には、ダイと電気的に接続された電極パッドである。電子部品本体33及び導体31の構造は前記に限られず、電子部品3の種類に応じた適宜の構造であればよい。
【0019】
複数のはんだボール30は、各々、導体31上に配置され、導体31と電気的に接続されている。このため、はんだボール30と導体31との間には接合部分(継目)20が形成されている。はんだボール30は、特に限定されないが、例えばSACはんだ製であってもよく、錫ビスマス系(Sn-Bi系)のはんだ製であってもよい。Sn-Bi系のはんだは、Sn及びBiに加えて、Ag、Ni、Fe、Ge、Cu及びInよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有してもよい。Sn-Bi系はんだの機械的な性能向上のためには、Sn-Bi系はんだは、Ag、Ni、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有することが好ましい。
【0020】
複数の補強部(フィレット)4は、各々、導体31と各はんだボール30との接合部分20の少なくとも一部を覆う。すなわち、複数の補強部4は、各々、はんだボール30の一つずつに対応して設けられている。また各補強部4は、対応する各はんだボール30と導体31との接合部分20の少なくとも一部を覆っている。そのため、補強部4によって、はんだボール30と導体31との接合部分20を補強することができ、電子部品3の接続信頼性を向上させることができる。ここで、導体31と各はんだボール30との接合部分20の一部を覆うだけでもよいが、導体31と各はんだボール30との接合部分20の全部を覆うことが好ましい。これにより、はんだボール30と導体31との接合部分20を補強しやすい。接合部分20は、はんだボール30の中心35を通り、電子部品本体33の表面に垂直な方向を軸とするはんだボール30の周方向において、全周にわたって露出している。したがって、接合部分20の露出部分の一部又は全部が補強部4によって覆われている。
【0021】
複数の補強部4のうちの少なくとも1つは、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている。ここで、補強部4の高さは、補強部4の頂部(先端部)431,441と、はんだボール30の中心を通る断面を想定し、この断面において、電子部品本体33の表面に対して垂直な線の長さである。したがって、補強部4は、はんだボール30の中心を通り、電子部品本体33の表面に垂直な方向を軸とするはんだボール30の周方向において、高さが一定はなく、高い部分と低い部分とを有している。
【0022】
本実施形態に係る電子部品3は、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっている補強部4の高さは、はんだボール30の高さの5%以上80%以下である。補強部4の高さが、はんだボール30の高さの5%未満であると、接合部分20の補強が低下する可能性がある。補強部4の高さが、はんだボール30の高さの80%を超えると、電子部品3をはんだボール30により他部材に実装する際に、補強部4が他部材の表面にあたってしにくい場合がある。補強部4の高さは、はんだボール30の高さの10%以上70%以下であることが好ましく、更に好ましくは、はんだボール30の高さの20%以上60%以下である。
【0023】
本実施形態に係る電子部品3は、補強部4の最も高い部分43と最も低い部分44との差が、はんだボール30の高さの2%以上75%以下である。補強部4の最も高い部分43と最も低い部分44との差が、はんだボール30の高さの2%未満であると、溶融したはんだボール30の流動性が低下し、表面に凹凸が少ないはんだボール30を得にくくなる。補強部4の最も高い部分43と最も低い部分44との差が、はんだボール30の高さの75%を超えると、最も高い部分43が高すぎたり、又は最も低い部分44が低すぎたりして、接合部分20の補強性能が低下したり、又は電子部品3を他部材へ実装しにくくなったりすることがある。なお、
図3Cに示すように、はんだボール30の高さHBは、はんだボール30の頂部と、はんだボール30の中心35を通る断面を想定し、この断面において、電子部品本体33の表面に対して垂直な線の長さである。補強部4の最も高い部分43の高さHHは、補強部4の最も高い部分43の頂部431とはんだボール30の中心35を通る断面を想定し、この断面において、電子部品本体33の表面に対して垂直な線の長さである。また補強部4の最も低い部分44の高さHLは、補強部4の最も低い部分44の頂部441とはんだボール30の中心35を通る断面を想定し、この断面において、電子部品本体33の表面に対して垂直な線の長さである。
【0024】
補強部4は、樹脂を含む未硬化樹脂材料の硬化物である。樹脂としては熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含んでいてもよい。例えば、未硬化樹脂材料は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、ベンゾオキサジン化合物とを含むことができる。さらに未硬化樹脂材料は、活性剤を含むことが好ましい。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る電子部品3において、複数のはんだボール30は、第一のはんだボール301と、第二のはんだボール302と、を含む。例えば、電子部品本体33はその表面と垂直な方向から見て、四角形状に形成されており、複数のはんだボール30は、電子部品本体33の各辺と平行な方向に並べて設けられている。第一のはんだボール301は、電子部品本体33の中心から見て、第二のはんだボール302よりも電子部品本体33の端部331側に位置している。すなわち、第一のはんだボール301は、第二のはんだボール302よりも外側に位置している。逆に、第二のはんだボール302は、第一のはんだボール301よりも電子部品本体33の中心の方(内側)に位置している。
【0026】
本実施形態に係る電子部品3において、複数の補強部4は、第一の補強部41と、第二の補強部42と、を含む。つまり、第一の補強部41は第一のはんだボール301に対応して設けられている。第二の補強部42は第二のはんだボール302に対応して設けられている。そして、第一の補強部41は、導体31と第一のはんだボール301との接合部分20の少なくとも一部を覆っている。つまり、導体31と第一のはんだボール301との接合部分20の露出部分の一部又は全部が第一の補強部41によって覆われている。また第二の補強部42は、導体31と第二のはんだボール302との接合部分20の少なくとも一部を覆っている。つまり、導体31と第二のはんだボール302との接合部分20の露出部分の一部又は全部が第二の補強部42によって覆われている。したがって、本実施形態に係る電子部品3は、電子部品本体33の中心から見て、第一の補強部41は、第二の補強部42よりも電子部品本体33の端部331側に位置している。
【0027】
そして、本実施形態に係る電子部品3において、第一の補強部41は、第二の補強部42よりも高い部分を有している。これにより、電子部品本体33の端部331側(外側)に近いはんだボール30(301)ほど、はんだボール30の表面に凹凸が生じにくい。
【0028】
(2.2)電子部品の製造方法
図3A~Cに本実施形態に係る電子部品3の製造方法を示す。本実施形態に係る電子部品3の製造方法は、電子部品本体33に形成された導体31にはんだボール30を接触させる工程を備える。また本実施形態に係る電子部品3の製造方法は、はんだボール30と導体31との接触部分の少なくとも一部を覆って未硬化樹脂材料45を配置する工程を備える。
【0029】
まず、導体31を備える電子部品本体33を用意して、導体31を覆うように未硬化樹脂材料45を配置する(
図3A参照)。未硬化樹脂材料45を配置する方法は、特に限定されないが、例えば、インクジェット法等の印刷法、転写等の方法によって行うことができる。
【0030】
次に、はんだボール30が未硬化樹脂材料45と接するように、導体31の上方にはんだボール30を配置する(
図3B参照)。次に、
図3Bに示す状態で、はんだボール30及び未硬化樹脂材料45を加熱する。加熱方法は特に限定されないが、例えばリフロー炉による加熱を採用することができる。この場合、例えば
図4に示すようなリフロープロファイルに沿って、はんだボール30及び未硬化樹脂材料45を加熱することができる。
【0031】
次に、
図3Cに示すように、未硬化樹脂材料45が熱硬化することにより、補強部4が形成される。また溶融したはんだボール30が導体31に接触した状態で導体31に接触し、この後、溶融したはんだボール30が固化して導体31に接合される。
【0032】
本実施形態に係る電子部品3の製造方法において、はんだボール30の融点が未硬化樹脂材料45の硬化開始温度よりも低い。すなわち、はんだボール30が溶融するまでは、未硬化樹脂材料45が低粘度で維持される。またはんだボール30の溶融が開始されても、すぐには未硬化樹脂材料45の粘度が上がらず、しばらくしてから粘度が急上昇する。このため、導体31とはんだボール30との接合部分20を、未硬化樹脂材料45で覆ってから、未硬化樹脂材料45を硬化させることができる。それにより、導体31とはんだボール30とが良好に接続することができる。そのため、導体31とはんだボール30との導通不良を抑制することができる。また、導体31とはんだボール30との接合部分20を未硬化樹脂材料45の硬化物(補強部4)で覆うことができる。そのため、導体31とはんだボール30との接合部分20を補強部4で補強することができる。
【0033】
図4に、本実施形態に係る電子部品3の製造方法における、リフロー工程の温度プロファイルと未硬化樹脂材料の粘度変化とを示している。
図4のグラフにおいて、実線は加熱温度を示し、破線は未硬化樹脂材料45の粘度を示す。図中の点Xは、未硬化樹脂材料45の硬化反応開始であり、SAC半田融点以上(≧220℃)である。図中の点Yは、硬化完了SAC半田融点以上(≦220℃)である。「Zone1」では、未硬化樹脂材料45は低粘度を保ち、はんだボール30が溶けるまでは増粘しない。また「Zone2」では、はんだボール30には、迅速な酸化膜除去が生じて、セルフアライメントを阻害しない程度の低粘度になる。そして、「Zone3」では、はんだボール30の融点以下で迅速に硬化反応が進む。
【0034】
未硬化樹脂材料45は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、ベンゾオキサジン化合物とを含むことができる。さらに未硬化樹脂材料は、活性剤を含むことが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましい。この場合、未硬化樹脂材料45において、エポキシ樹脂と、他の成分とを混合しやすくすることができる。なお、常温で液状であるとは、大気圧下、かつ、周囲の温度が5℃以上28℃以下(特に20℃前後)の状態において、流動性を有することを意味する。エポキシ樹脂が常温で液状であるためには、エポキシ樹脂に常温で液状の成分のみが含まれていてもよく、エポキシ樹脂に常温で液状の成分と常温で液状でない成分とが含まれていてもよく、反応性希釈剤、溶剤等によってエポキシ樹脂が常温で液状となっていてもよい。
【0036】
フェノール樹脂は、フェノール性水酸基を有する化合物である。このフェノール性水酸基は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応することができる。
【0037】
ベンゾオキサジン化合物は、ジヒドロベンゾオキサジン環を含有する化合物である。ベンゾオキサジン化合物は、原材料の種類によって、種々の構造を有する。ベンゾオキサジン化合物は、例えば、各種のフェノール、アミンおよびホルムアルデヒド等から合成することができる。
【0038】
活性剤は、融点が130℃以上220℃以下である有機酸、及び融点が130℃以上220℃以下であるアミンのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、活性剤によってエポキシ樹脂の硬化反応が促進されにくくすることができる。また、融点が200℃付近または200℃以上であるはんだを使用する場合であっても、はんだを溶融させる前に、はんだボールの酸化皮膜を除去することができる。また、はんだボールの溶融前に有機酸又はアミンが溶融されることで、はんだ溶融前において、未硬化樹脂材料45を低粘度化することができ、未硬化樹脂材料45の濡れ性を向上させることができる。
【0039】
そして、本実施形態に係る電子部品3のように、複数の補強部4のうちの少なくとも1つは、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なっているが、このような補強部4を形成するにあたっては、電子部品本体33を部分的に反らせたり又は電子部品本体33全体を傾けたりして未硬化樹脂材料45の流れをコントロールする。これにより、未硬化樹脂材料45が部分的に偏った状態で硬化し、電子部品本体33の表面からの高さが部分的に異なる補強部4を形成することができる。したがって、第一の補強部41も、電子部品本体33を部分的に反らせたり又は電子部品本体33全体を傾けたりして未硬化樹脂材料45の流れをコントロールして形成することができる。電子部品本体33を部分的に反らせる場合、電子部品本体33の真ん中を凸にしたり凹にしたりすることができる。
【0040】
(2.3)実装構造体
図1に示すように、本実施形態に係る実装構造体1は、電子部品3を基材2に実装している。基材2は、表面に導体21を有している。この導体21の表面に電子部品3のはんだボール30が接合されている。基材2は、回路基板等であって、例えば、マザー基板、パッケージ基板又はインターポーザー基板である。回路基板は、例えば、ガラスエポキシ製、ポリイミド製、ポリエステル製、セラミック製などの絶縁基板である。電子部品3は、本実施形態に係る電子部品であって、例えば、半導体チップである。より具体的には、電子部品3は、例えばBGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)、又はCSP(チップ・サイズ・パッケージ)などの、フリップチップ型のチップである。電子部品3は、PoP(パッケージ・オン・パッケージ)型のチップであってもよい。したがって、実装構造体1は、半導体パッケージなどとして形成されている。
【0041】
(2.4)実装構造体の製造方法
本実施形態に係る実装構造体1の製造方法は、電子部品3のはんだボール30を溶融させて基材2に接合する。すなわち、まず、導体21を備える基材2を用意する。次に、はんだボール30を備える電子部品3を用意する。そして、はんだボール30を導体21に接触させた状態で、はんだボール30を加熱する。加熱方法は特に限定されないが、例えば、リフロー炉による加熱を採用することができる。これにより、電子部品3のはんだボール30を溶融させて基材2に接触させ、その後、冷却してはんだボール30を固化することによって、導体21とはんだボール30とを接合する。
【0042】
(3)変形例
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0043】
上記実施形態では、第一の補強部41の外側の部分(電子部品本体33の端部331側の部分)が高さの高い部分43として形成したが、これに限られない。例えば、
図5に示すように、第一の補強部41の内側の部分(電子部品本体33の中心側の部分)が高さの高い部分43として形成してもよい。この場合、第一の補強部41の外側の部分が高さの低い部分44として形成される。
【実施例】
【0044】
1.未硬化樹脂材料の調製
以下の成分を使用して未硬化樹脂材料を調整した。
・エポキシ樹脂(EPICLON835LV):25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~170、25℃での粘度2000~2500mPa・s、DIC株式会社製、品名EPICLON835LV。
・フェノール樹脂(MEH8000H):25℃で液状のフェノール樹脂、25℃の粘度1500~3500mPa・s、明和化成株式会社製、品番MEH-8000H。
・ベンゾオキサジン化合物(P-d):p-d型ベンゾオキサジン化合物、四国化成株式会社製。
・活性剤(アジピン酸):アジピン酸、融点152~155℃、東京化成工業株式会社製。
【0045】
そして、エポキシ樹脂20重量部と、フェノール樹脂35重量部と、ベンゾオキサジン化合物35重量部と、活性剤10重量部とを配合して未硬化樹脂材料を調整した。
【0046】
また電子部品本体33の導体31にはんだボール30を接合し、上記未硬化樹脂材料45からなる補強部4を形成して半導体チップ(電子部品3)を作成した。
【0047】
2.評価
(1)はんだボール形状
はんだボール形状を電子顕微鏡等で確認した。そして、以下の評価をした。
〇:凹みの深さが2μm以下のもの。
△:凹みの深さが5.0μm以上10μm未満のもの
×:凹みの深さが10μm以上のもの。
【0048】
(2)2次実装性
半導体チップを基板に実装したときの電気的な抵抗値を測定した。そして、以下の評価をした。
〇:抵抗値が5Ω未満のもの。
△:抵抗値が5Ω以上10Ω未満のもの。
×:抵抗値が10Ω以上のもの。
【0049】
(3)実装後信頼性
上記未硬化樹脂材料の代わりに、フラックスを用いてはんだボール30を接合した場合とヒートサイクル試験の結果を比較した。そして、以下の評価をした。
◎:フラックスと比較して2倍以上のもの。
〇:フラックスと比較して信頼性が30%以上良化したもの。
△:フラックスと同等のもの。
×:フラックスよりも悪化したもの。
【0050】
(4)総合判定
〇:上記(1)~(3)のすべて〇のもの。
△:上記(1)~(3)の1個でも△があるもの。
×:上記(1)~(3)の1個でも×があるもの。
【0051】
【0052】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る電子部品(3)は、電子部品本体(33)と、電子部品本体(33)に形成された導体(31)と、複数のはんだボール(30)と、複数の補強部(4)と、を備える。複数のはんだボール(30)は、導体(31)上に配置され、導体(31)と電気的に接続されている。複数の補強部(4)は、導体(31)と各はんだボール(30)との接合部分(20)の少なくとも一部を覆う。複数の補強部(4)のうちの少なくとも1つは、電子部品本体(33)の表面からの高さが部分的に異なっている。
【0053】
第1の態様によれば、溶融したはんだボール(30)の流動性が良好となり、固化後のはんだボール(30)の表面に凹みが生じにくい、という利点がある。
【0054】
第2の態様に係る電子部品(3)は、第1の態様において、複数のはんだボール(30)は、第一のはんだボール(301)と、第二のはんだボール(302)と、を含む。複数の補強部(4)は、導体(31)と第一のはんだボール(301)との接合部分(20)の少なくとも一部を覆う第一の補強部(41)と、導体(31)と第二のはんだボール(302)との接合部分(20)の少なくとも一部を覆う第二の補強部(42)と、を含む。第一の補強部(41)は、第二の補強部(42)よりも高い部分を有している。
【0055】
第2の態様によれば、第一の補強部(41)の第二の補強部(42)よりも高い部分により、溶融した第一のはんだボール(301)の流動性が良好となり、固化後の第一のはんだボール(301)の表面に凹みが生じにくい、という利点がある。
【0056】
第3の態様に係る電子部品(3)は、第2の態様において、電子部品本体(33)の中心から見て、第一の補強部(41)は、第二の補強部(42)よりも電子部品(3)の端部(331)側に位置している。
【0057】
第3の態様によれば、電子部品(3)の端部(331)側に位置する第一のはんだボール(301)の表面に凹みが生じにくい、という利点がある。
【0058】
第4の態様に係る電子部品(3)は、第1~3のいずれか1つの態様において、電子部品本体(33)の表面からの高さが部分的に異なっている補強部(4)の高さは、はんだボール(30)の高さの5%以上80%以下である。補強部(4)の最も高い部分(43)と最も低い部分(44)との差が、はんだボール(30)の高さの2%以上75%以下である。
【0059】
第4の態様によれば、補強部(4)によるはんだボール(30)の補強性能と、電子部品(3)の実装性とを損なわないようにすることができる、という利点がある。
【0060】
第5の態様に係る電子部品(3)の製造方法は、電子部品本体(33)に形成された導体(31)にはんだボール(30)を接触させる工程と、はんだボール(30)と導体(31)との接触部分の少なくとも一部を覆って未硬化樹脂材料(45)を配置する工程と、を備える。はんだボール(30)の融点が未硬化樹脂材料(45)の硬化開始温度よりも低い。
【0061】
第5の態様によれば、溶融したはんだボール(30)の流動性が良好となり、固化後のはんだボール(30)の表面に凹みが生じにくい、という利点がある。
【0062】
第6の態様に係る実装構造体(1)は、第1~4のいずれか1つの態様の電子部品(3)を基材(2)に実装している。
【0063】
第6の態様によれば、電子部品(3)と基材(2)との接続信頼性を向上させることができる、という利点がある。
【0064】
第7の態様に係る実装構造体(1)の製造方法は、第1~4のいずれか1つの態様の電子部品(3)のはんだボール(30)を溶融させて基材(2)に接合する。
【0065】
第7の態様によれば、電子部品(3)と基材(2)との接続信頼性を向上させることができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0066】
1 実装構造体
2 基材
3 電子部品
30 はんだボール
301 第一のはんだボール
302 第二のはんだボール
31 導体
33 電子部品本体
4 補強部
41 第一の補強部
42 第二の補強部
43 最も高い部分
44 最も低い部分
45 未硬化樹脂材料