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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】地中ケーブル撤去工法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20230616BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G9/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019205695
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021078323
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(73)【特許権者】
【識別番号】592207256
【氏名又は名称】株式会社興洋
(73)【特許権者】
【識別番号】591036653
【氏名又は名称】株式会社常磐ボーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】戸矢 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】吉本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】足立 倫海
(72)【発明者】
【氏名】椙島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高村 正和
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 藤夫
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171190(JP,A)
【文献】特開2001-224112(JP,A)
【文献】特開2007-274839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
H02G 9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフ内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法において、
複数の金属製の短管を回動可能な関節で連結した自在管と、該自在管の先端に取り付けられたスクレーパとを有する削進管を用いて、
路面を掘削して前記トラフの端面を露出させ、
ガイド管を、一端が前記トラフの端面に連続し他端が路面に位置するように配置し、
前記ガイド管の周囲を埋戻し、
路面から前記ガイド管を通じて前記トラフの中に前記削進管を回転および推進させることを特徴とする地中ケーブル撤去工法。
【請求項2】
作業を中断する際には、前記自在管の路面に露出した部分を取り外し、前記ガイド管の開放端に蓋を被せることを特徴とする請求項1に記載の地中ケーブル撤去工法。
【請求項3】
前記削進管によって掘削された土を前記自在管から吸引することを特徴とする請求項1または2に記載の地中ケーブル撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市における景観への配慮や安全性という観点から地中配線の普及が進んでいる。地中配線では、地中にトラフや管路を埋設し、その内部に電力ケーブルや通信ケーブル等(以下、地中ケーブルと称する)を敷設する。地中ケーブルは、経年劣化した際や、不要になった際には撤去される。
【0003】
地中ケーブルを撤去する方法としては、例えば特許文献1に地中ケーブルの撤去方法が開示されている。特許文献1の地中ケーブルの撤去方法では、まず管路内に通されている電力ケーブルをマンホール内で切断する。そして、切断端からケーブルに推進管(削進管と同義)を嵌め、この推進管を継ぎ足しながら推進装置で管路内に押し込んで先頭推進管の先端のビットで固着部を剥離する。その後、ケーブルを管路から引き抜いている。特許文献1によれば、管路の内面に固着して引抜不能となっている地中ケーブルを効率よく撤去することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-224112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管路に敷設されている地中ケーブルは、隣接するマンホール間の間に配置されているため、マンホールに蓋をするだけで速やかに作業を中断することができる。これに対し、地中ケーブルがトラフに敷設されている場合、路面を掘削して地中ケーブルを撤去する。このため、作業を中断する際には埋戻しを行わなければならず、作業を再開する際には埋戻材を掘りかえさなければならない。このため、トラフに敷設された地中ケーブルを撤去する際には、多大な時間および労力が必要であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、トラフに敷設されている地中ケーブルを撤去する作業を効率的に行うことができ、作業に要する時間や労力を大幅に軽減することが可能な地中ケーブル撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる地中ケーブル撤去方法の代表的な構成は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法において、複数の金属製の短管を回動可能な関節で連結した自在管と、自在管の先端に取り付けられたスクレーパとを有する削進管を用いて、路面を掘削してトラフの端面を露出させ、ガイド管を、一端がトラフの端面に連続し他端が路面に位置するように配置し、ガイド管の周囲を埋戻し、路面からガイド管を通じてトラフの中に削進管を回転および推進させることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、削進管を回転させながらトラフ内を推進させることにより、削進管の自在管に取り付けられたスクレーパによって地中ケーブルがトラフ内の土から剥離される。これにより、地中ケーブルをトラフから撤去することが可能となる。このとき、上記構成では、路面全体を掘削するのではなく、トラフの端面が露出する程度の路面の一部を掘削する。これにより、作業を中断する際に埋め戻す範囲が飛躍的に狭まる。したがって、トラフに敷設されている地中ケーブルを撤去する作業を効率的に行うことができ、作業中断時に要する時間や労力を大幅に軽減することが可能となる。
【0009】
また上記構成によれば、ガイド管の他端が路面に位置し、その周囲が埋め戻される。これにより、作業を再開する際には、ガイド管から削進管を挿入することができる。したがって、作業再開時に要する時間や労力も大幅に削減することが可能である。
【0010】
当該地中ケーブル撤去方法では、作業を中断する際には、自在管の路面に露出した部分を取り外し、ガイド管の開放端に蓋を被せるとよい。このようにガイド管の開放端に蓋を被せることにより、作業現場を仮舗装することができる。したがって、撤去作業を中断した後、蓋が載せられた路面を車両等が走行することが可能となる。
【0011】
当該地中ケーブル撤去方法では、削進管によって掘削された土を自在管から吸引するとよい。これにより、削進管の周囲の土が除去されるため、削進管がより良好に推進することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トラフに敷設されている地中ケーブルを撤去する作業を効率的に行うことができ、作業に要する時間や労力を大幅に軽減することが可能な地中ケーブル撤去工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の地中ケーブル撤去工法を適用する作業現場を説明する図である。
図2】本実施形態にかかる地中ケーブル撤去用の削進管、およびその推進装置を説明する図である。
図3】自在管を説明する図である。
図4】スクレーパを説明する図である。
図5】本実施形態にかかる地中ケーブルの撤去工法を説明する模式的な断面図である。
図6】本実施形態にかかる地中ケーブルの撤去工法を説明する模式的な断面図である。
図7】本実施形態の撤去工法のバリエーションを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態の地中ケーブル撤去工法を適用する作業現場を説明する図である。図1(a)に示すように、作業現場10では、路面10aの下の地中にトラフ12が埋設されていて、そのトラフの内部に地中ケーブル14が敷設されている。図1(b)に示すように、トラフ12内に埋設材18(例えば土)が充填されていることにより、地中ケーブル14の周囲は埋設材18によって被覆されている。トラフ12の上面には蓋16が設けられている。本実施形態の地中ケーブル撤去工法では、トラフ12内を通る地中ケーブル14を撤去する。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる地中ケーブル撤去用の削進管(以下、削進管100と称する)、およびその推進装置200を説明する図である。本実施形態では、削進管100は、推進装置200からの推進力によってトラフ12内を回転しながら推進する。図2(a)および(b)に示すように、推進装置200は、削進管100を回転させるモータ210、および削進管100を推進する油圧シリンダ220を含んで構成される。削進管100は、自在管110およびスクレーパ120を含んで構成される。
【0017】
図3は、自在管110を説明する図である。図3(a)に示すように、自在管110は、複数の金属製の短管112a・112b・112c・112dを連結して構成される。この多節管である自在管110をつなぎ合わせることにより、トラフ12において、任意の長さ(数十メートル~数百メートル)の削進を行うことができる。
【0018】
短管112a-112dの接続部分である関節114a・114b・114cは回動可能となっていて、図3(b)に示すように屈曲することができる。自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も先にトラフ12に挿入される短管112aには、その先端近傍に、同様の他の自在管110やスクレーパ120を取り付けるための取付部116が形成されている。一方、自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も後にトラフ12に挿入される短管112dには、取付部116に接続される取付溝118が形成されている。
【0019】
図4は、スクレーパ120を説明する図である。図4に示すスクレーパ120は、自在管110を構成する複数の短管112a-112dのうち、最も先に管路に挿入される短管112aの先端に取り付けられる。スクレーパ120の後端には、取付部116に接続される取付溝122が形成されている。
【0020】
特に本実施形態の削進管100では、スクレーパ120は、対称な2つの三角状の先端124を有するくちばし形状である。これにより、削進管100の先端のスクレーパ120が地中ケーブル14とトラフ12内の埋設材18(土)との間に食い込みやすくなるため、地中ケーブル14をより確実に引き抜き、撤去することが可能となる。
【0021】
なお、スクレーパ120の先端が1つ(全体的に斜めにカットされた形状)の場合には、先端が食い込んだときに削進管100が偏るため回転しづらくなるが、先端が2つであることによりバランス良く食い込むため、円滑に回転させることができる。また、先端が多数の鋸歯状の場合にはケーブル外皮を切削してOFケーブルの冷却油の漏れなどを招いてしまうが、先端が2つであればケーブル外皮を削る量が少なく、油漏れを防ぐことができる。
【0022】
更に本実施形態では、スクレーパ120は、三角状の先端124の内側にテーパ126が形成されている。これにより、スクレーパ120が地中ケーブル14とトラフ12内の埋設材18との間により食い込みやすくなるため、上述した効果を高めることが可能となる。
【0023】
図5および6は、本実施形態にかかる地中ケーブル14の撤去工法を説明する模式的な断面図である。図5(a)に示すトラフ12では、送電中に地中ケーブル14が発熱する。地中ケーブル14は昇温によって延びて蛇行しようとする。トラフ12内に充填された埋設材18は、放熱するための伝熱材の役割を果たすと共に、蛇行を抑える支持部材としての役割も果たす。その一方で、埋設材18は加熱されながら圧縮されるためトラフ12内において固化してしまい、さらには固化した埋設材18が地中ケーブル14に固着してしまう。すると、摩擦抵抗が増加してしまい、地中ケーブル14の引き抜きが難しくなる。
【0024】
本実施形態の地中ケーブル撤去工法(以下、撤去工法と称する)では、まず図5(a)に示す路面10aを掘削し、図5(b)に示すようにトラフ12の端面12aを露出させる。次に、図5(c)に示すように、ガイド管20を、一端がトラフ12の端面12aに連続し、他端が路面10aの上(地面の外)に位置するように配置し、ガイド管20の周囲を埋め戻す。
【0025】
続いて、図6(a)に示すように、路面10aからガイド管20を通じてトラフ12の中に削進管100を挿入し、削進管100の内部に地中ケーブル14を内挿する。次に、削進管100を、推進装置200のモータ210によって回転させつつ、油圧シリンダ220の推進力によって推進させる。これにより、削進管100の自在管110に取り付けられたスクレーパ120が、トラフ12内の埋設材と地中ケーブル14との間に回転しながら食い込み、地中ケーブル14がトラフ12内で固着した埋設材(土)から剥離される。したがって、地中ケーブル14をトラフ12から撤去することが可能となる。
【0026】
このとき、本実施形態の撤去工法では、路面10a全体を掘削するのではなく、トラフ12の端面12aが露出する程度の路面10aの一部を掘削することにより、地中ケーブル14を撤去することができる。このため、作業を中断する際に埋め戻す範囲が飛躍的に狭まる。したがって、トラフ12に敷設されている地中ケーブル14を撤去する作業を効率的に行うことができ、作業中断時に要する時間や労力を大幅に軽減することが可能となる。
【0027】
また本実施形態の撤去工法では、ガイド管20の他端が路面10aに位置し、その周囲が埋め戻される。これにより、作業を再開する際には、ガイド管20から削進管100を挿入することができる。したがって、作業再開時に要する時間や労力も大幅に削減することが可能である。
【0028】
特に本実施形態の撤去工法では、図6(b)に示すように、作業を中断する際には、自在管110の路面10aに露出した部分を取り外し、ガイド管20の開放端に蓋30を被せる。これにより、作業現場10が仮舗装される。したがって、撤去作業を中断した後、蓋30が載せられた路面10aを車両等が走行することが可能となる。そして、図6(c)に示すように、蓋30を外せば、迅速に作業を再開することができる。
【0029】
図7は、本実施形態の撤去工法のバリエーションを説明する図である。図7では、吸引装置300(バキュームカー)の吸引管302を推進装置200に接続し、削進管100の自在管110に通じさせる。そして、吸引装置300によって、削進管100によって掘削された土を、吸引管302を介して自在管110から吸引する。これにより、削進管100の周囲の土が除去されるため、削進管100がより良好に推進することが可能となる。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去する地中ケーブル撤去工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…作業現場、10a…路面、12…トラフ、12a…端面、14…地中ケーブル、18…埋設材、20…ガイド管、30…蓋、100…削進管、110…自在管、112a…短管、112b…短管、112c…短管、112d…短管、116…取付部、118…取付溝、120…スクレーパ、122…取付溝、200…推進装置、210…モータ、220…油圧シリンダ、300…吸引装置、302…吸引管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7