IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7296601素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法
<>
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図1
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図2A
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図2B
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図3
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図4
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図5
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図6
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図7
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図8
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図9
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図10
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図11
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図12
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図13
  • 特許-素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】素子チップの洗浄方法および素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230616BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230616BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/78 P
H01L21/78 S
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019117805
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021005605
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 俊行
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-172493(JP,A)
【文献】特開2006-245446(JP,A)
【文献】特開2019-096738(JP,A)
【文献】特開2019-087682(JP,A)
【文献】特開2019-071333(JP,A)
【文献】特開2015-070012(JP,A)
【文献】特開2011-198933(JP,A)
【文献】特開2016-136558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜で覆われた第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面を備える少なくとも1つの素子チップを準備する素子チップ準備工程と、
前記樹脂膜に、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程の後、前記素子チップの前記第1の面側から前記樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備え、
前記素子チップ準備工程において、複数の前記素子チップが準備され、前記複数の素子チップの前記第2の面のそれぞれは、前記複数の素子チップを囲むフレームに固定された保持シートに、前記複数の素子チップ間に隙間が生じるように貼着され、
前記フレームは前記素子チップよりも厚く、
前記第1洗浄工程において、前記保持シートの前記複数の素子チップが貼着されていない領域である周縁領域が前記第1の洗浄液に接触するように、前記第1の洗浄液が供給される、
素子チップの洗浄方法。
【請求項2】
前記第2洗浄工程において、前記第2の洗浄液は、気体とともに前記樹脂膜に吹き付けられる、請求項1に記載の素子チップの洗浄方法。
【請求項3】
前記第1洗浄工程において、前記第1の洗浄液は、前記第1の面側から前記樹脂膜に向かって吐出される、請求項1または2に記載の素子チップの洗浄方法。
【請求項4】
前記第1洗浄工程は、前記素子チップを前記第1の面の法線を回転軸にして回転させながら行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の素子チップの洗浄方法。
【請求項5】
前記第2洗浄工程は、前記素子チップを前記第1の面の法線を回転軸にして回転させながら行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の素子チップの洗浄方法。
【請求項6】
前記第1洗浄工程において、前記第1の洗浄液は、前記複数の素子チップ間の隙間を埋めるように供給される、請求項1~5のいずれか一項に記載の素子チップの洗浄方法。
【請求項7】
複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する基板を準備する基板準備工程と、
前記基板の前記第2の面を、前記基板を囲むフレームに固定された保持シートに貼着する保持工程と、
前記第1の面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、
前記樹脂膜に開口を形成して、前記第1の面における前記分割領域を露出させる開口形成工程と、
露出した前記分割領域の前記第1の面から前記第2の面までをプラズマエッチングして、前記基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、
前記プラズマダイシング工程の後、前記素子チップの前記第1の面を被覆する前記樹脂膜を除去する樹脂膜除去工程と、を備え、
前記樹脂膜除去工程は、
前記樹脂膜に、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程の後、前記素子チップの前記第1の面の側から前記樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備え、
前記フレームは前記素子チップよりも厚く、
前記第1洗浄工程において、前記保持シートの前記基板が貼着されていない領域である周縁領域が前記第1の洗浄液に接触するように、前記第1の洗浄液が供給される、
素子チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子チップの洗浄方法、素子チップの洗浄装置ならびに素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板をダイシングする方法として、プラズマ照射によるプラズマダイシングが注目されている。プラズマダイシングに供される基板の表面において、プラズマエッチングされる領域(分割領域)を除く素子領域はマスクで覆われている。マスクは、プラズマダイシング後に除去される。
【0003】
マスクの洗浄方法として、特許文献1では2流体洗浄法を提案している。2流体洗浄法は、キャリアガスによって加速された微小な液滴を素子領域に衝突させて、物理的な効果によりマスクを除去する方法であり、洗浄効果が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-136558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、2流体洗浄法において、加速された液滴は、マスクが除去されて露出した素子領域に配置されているバンプ、MEMS、LED、レーザ等のデバイス等(以下、便宜的に電子部品と総称する。)にも衝突し得る。そのため、2流体洗浄法により、マスクだけではなく、電子部品が素子チップから剥離してしまう場合がある。さらに、素子チップがプラズマダイシングにより作製された場合、プラズマ照射による熱あるいは紫外線により、マスクが硬化あるいは変質している場合がある。この場合、マスクと上記電子部品との密着性が高くなり易い。強く密着したマスクを除去するために液滴の加速度を大きくすると、電子部品の剥離がさらに生じ易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、樹脂膜で覆われた第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面を備える少なくとも1つの素子チップを準備する素子チップ準備工程と、前記樹脂膜に、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、前記第1洗浄工程の後、前記素子チップの前記第1の面側から前記樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備える、素子チップの洗浄方法に関する。
【0007】
本発明の他の局面は、素子チップが載置されるテーブルと、前記テーブルの上に載置された前記素子チップに、第1の洗浄液を供給する第1供給部と、前記テーブルの上に載置された前記素子チップに、第2の洗浄液を吹き付ける第2供給部と、前記第1供給部および前記第2供給部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記素子チップへの前記第1の洗浄液の供給が終了した後、前記素子チップへの前記第2の洗浄液の吹き付けが開始されるように、前記第1供給部および前記第2供給部を制御する、素子チップの洗浄装置に関する。
【0008】
本発明のさらに他の局面は、複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する基板を準備する基板準備工程と、前記第1の面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、前記樹脂膜に開口を形成して、前記第1の面における前記分割領域を露出させる開口形成工程と、露出した前記分割領域の前記第1の面から前記第2の面までをプラズマエッチングして、前記基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、前記プラズマダイシング工程の後、前記素子チップの前記第1の面を被覆する前記樹脂膜を除去する樹脂膜除去工程と、を備え、前記樹脂膜除去工程は、前記樹脂膜に、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、前記第1洗浄工程の後、前記素子チップの前記第1の面の側から前記樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備える、素子チップの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高品質な素子チップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る素子チップの洗浄方法を示すフローチャートである。
図2A】本発明の一実施形態に係る素子チップ準備工程で準備された複数の素子チップを模式的に示す上面図である。
図2B図2AのA-A線における断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る第1洗浄工程における基板を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る第2洗浄工程における基板を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態で使用される洗浄装置のブロック図である。
図6】本実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る基板を模式的に示す上面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る準備工程により準備された基板の一部を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る樹脂膜形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
図13】本発明の一実施形態に係るプラズマダイシング工程で作製された素子チップを模式的に示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る樹脂膜除去工程後の素子チップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では、樹脂膜に洗浄液を吹き付けて物理的な力を与える前に、樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解する溶剤を接触させる。これにより、上記樹脂成分の少なくとも一部が溶解あるいは膨潤して、樹脂膜と素子チップとの密着性が弱められる。そのため、その後の洗浄液の吹き付けによって、樹脂膜は除去され易くなる。加えて、膨潤した樹脂膜が保護材となって、素子チップに吹き付けられる洗浄液の勢いを弱める。これらの作用により、電子部品等の剥離が抑制される。
【0012】
本実施形態に係る素子チップの洗浄方法は、2つの洗浄液供給部を備える装置により実行される。本実施形態は、2つの洗浄液供給部を備える洗浄装置を包含する。
【0013】
本実施形態に係る素子チップの洗浄方法は、プラズマダイシングにより作製された素子チップの樹脂膜を除去する方法として特に適している。本実施形態は、プラズマダイシング工程を備える素子チップの製造方法を包含する。
【0014】
A.素子チップの洗浄方法
本実施形態に係る素子チップの洗浄方法は、樹脂膜で覆われた第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面を備える少なくとも1つの素子チップを準備する素子チップ準備工程と、樹脂膜に、樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、第1洗浄工程の後、素子チップの第1の面側から樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備える。
図1は、本実施形態に係る洗浄方法を示すフローチャートである。
【0015】
(i)素子チップ準備工程(S1)
樹脂膜で覆われた第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面を備える少なくとも1つの素子チップを準備する。
【0016】
素子チップは、例えば、半導体層と配線層とを備える。
半導体層は、例えば、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等を含む。素子チップにおける半導体層の厚みは特に限定されず、例えば、20μm以上1000μm以下であり、100μm以上300μm以下であってもよい。
配線層は、例えば、半導体回路、電子部品素子(LED、レーザ、MEMS等)等を構成しており、絶縁膜、金属材料、樹脂層(例えば、ポリイミド)、レジスト層、電極パッド、バンプ等を備えてもよい。絶縁膜は、配線用の金属材料との積層体(多層配線層あるいは再配線層)として含まれてもよい。
【0017】
樹脂膜は、例えば、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。
【0018】
樹脂膜の厚みは特に限定されないが、プラズマダイシング工程におけるプラズマエッチングにより完全には除去されない程度であることが好ましい。樹脂膜の厚みは、例えば、プラズマダイシング工程において樹脂膜がエッチングされる量(厚み)を算出し、このエッチング量以上になるように設定される。樹脂膜の厚みは、例えば、5μm以上60μm以下である。
【0019】
ハンドリング性の観点から、複数の素子チップは、複数の素子チップを囲むフレームに固定された保持シートに貼着されていてもよい。この場合、一度に複数の素子チップを処理することができる。複数の素子チップは、間隔を空けて配置されている。隣接する素子チップの間隔は特に限定されず、素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。フレームとフレームに固定された保持シートとを備える部材を搬送キャリアと称す。
【0020】
(搬送キャリア)
フレームは、基板の全体と同じかそれ以上の面積の開口を有した枠体であり、所定の幅および略一定の薄い厚みを有している。フレームは、保持シートおよび複数の素子チップを保持した状態で搬送できる程度の剛性を有している。フレームの開口の形状は特に限定されないが、例えば、円形や、矩形、六角形など多角形であってもよい。フレームの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂等が挙げられる。
【0021】
保持シートの材質は特に限定されない。なかでも、複数の素子チップが貼着され易い点で、保持シートは、粘着層と柔軟性のある非粘着層とを含むことが好ましい。
【0022】
非粘着層の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂フィルムには、伸縮性を付加するためのゴム成分(例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等)、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、導電性材料等の各種添加剤が配合されていてもよい。また、上記熱可塑性樹脂は、アクリル基等の光重合反応を示す官能基を有していてもよい。非粘着層の厚みは特に限定されず、例えば、50μm以上300μm以下であり、好ましくは50μm以上150μm以下である。
【0023】
粘着層を備える面(粘着面)の外周縁は、フレームの一方の面に貼着しており、フレームの開口を覆っている。粘着面のフレームの開口から露出した部分に、素子チップの一方の主面(第2の面)が貼着されることにより、素子チップは保持シートに保持される。素子チップは、ダイアタッチフィルム(DAF)を介して、保持シートに保持されてもよい。
【0024】
粘着層は、紫外線(UV)の照射によって粘着力が減少する粘着成分からなることが好ましい。これにより、樹脂膜除去工程後に素子チップをピックアップする際、UV照射を行うことにより、素子チップが粘着層から容易に剥離されて、ピックアップし易くなる。例えば、粘着層は、非粘着層の片面に、UV硬化型アクリル粘着剤を5μm以上100μm以下(好ましくは5μm以上15μm以下)の厚みに塗布することにより得られる。
【0025】
図2Aは、素子チップ準備工程で準備された複数の素子チップを模式的に示す上面図である。図2Bは、図2AのA-A線における断面図である。
【0026】
搬送キャリア20は、フレーム21とフレーム21に固定された保持シート22とを備える。フレーム21には、位置決めのためのノッチ21aやコーナーカット21bが設けられていてもよい。保持シート22は、粘着面22Xと非粘着面22Yとを備えており、粘着面22Xの外周縁は、フレーム21の一方の面に貼着している。粘着面22Xのフレーム21の開口から露出した部分に、素子チップ200の第2の面10Yが貼着される。
【0027】
保持シート22の粘着面22Xには、複数の素子チップ200が間隔を空けて貼着されている。各素子チップ200は、半導体層11と、半導体層11の第1の面側に配置された配線層12と、を備える。配線層12は、樹脂膜40により被覆されている。
【0028】
(ii)第1洗浄工程(S2)
樹脂膜に、樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる。これにより、上記樹脂成分の少なくとも一部が溶解あるいは膨潤して、樹脂膜と素子チップの第1の面との密着性が弱められるとともに、膨潤した樹脂膜による保護材が形成される。保護材は、素子チップを第2の洗浄液の吹き付けから保護する。樹脂膜の樹脂成分の一部は、本工程により除去されてもよい。
【0029】
溶剤は、樹脂膜に含まれる樹脂成分に応じて適宜選択すればよい。樹脂膜は、上記の通り、例えば、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。これを溶解させる溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、アセトン、水等が挙げられる。第1の洗浄液は、これら1種を単独で、あるいは2種以上を含む。なかでも、保持シートを溶解させ難い点で、第1の洗浄液は、溶剤としてPGMEAを含むことが望ましい。PGMEAは水とともに用いられてもよい。
【0030】
樹脂膜に第1の洗浄液を接触させる方法は、特に限定されない。例えば、第1の洗浄液を液体状のまま素子チップに供給してもよいし、第1の洗浄液を霧や泡などの状態で素子チップに供給してもよい。なかでも、第1の洗浄液を液体状のままで、素子チップの第1の面側から樹脂膜に向かって吐出する方法が好ましい。液体状の第1の洗浄液は流動性を有するため、樹脂膜上に均一に濡れ広がる。よって、樹脂膜が膨潤し易くなる。さらに、表面張力により、樹脂膜上に第1の洗浄液の膜が形成される場合もある。この場合、後の第2洗浄工程において、第2の洗浄液が素子チップに与える衝撃がさらに弱まって、素子チップの損傷はより抑制され易くなる。加えて、第1の洗浄液の供給と第2の洗浄液の吹き付けとを、素子チップを移動させることなく、同じ装置で連続的に行うことができるため、生産性が向上する。
【0031】
第1の洗浄液の供給量は特に限定されず、樹脂成分、溶剤の種類、溶解の程度等を考慮して適宜設定すればよい。素子チップが搬送キャリアに保持されている場合、保持シートの基板が貼着していない領域(周縁領域)の一部が第1の洗浄液に接触する程度に、第1の洗浄液を供給してもよい。通常、フレームは素子チップよりも厚いため、フレームに囲まれた領域内に第1の洗浄液を供給することにより、樹脂膜に十分な量の第1の洗浄液を供給することができる。これにより、樹脂膜上に第1の洗浄液の膜が形成され易くなる。ただし、第1の洗浄液は、フレームに囲まれた領域内を満たす程度にまで供給されなくてもよい。第1の洗浄液は、保持シートに貼着された複数の素子チップ同士の隙間が、第1の洗浄液により埋められる程度に供給されればよい。上記隙間には、毛管現象により第1の洗浄液が浸入し易い。第1の洗浄液が素子チップ間に入り込むことにより、樹脂膜上にも第1の洗浄液が配置され易くなって、素子チップの第1の面および側面を覆う第1の洗浄液の膜が形成される。第1の洗浄液を素子チップに供給する前に、素子チップを酸素を含むガスによる発生するプラズマに晒して、樹脂膜を軽くアッシングしてもよい。これにより、樹脂膜の表面の親水性が高まり、素子チップ同士の隙間に第1の洗浄液が侵入し易くなる。
【0032】
第1の洗浄液を素子チップに供給する際、第1の洗浄液を供給するノズルを移動させてもよいし、搬送キャリアごと素子チップを第1の面の法線を回転軸にして回転させてもよい。これにより、第1の洗浄液を樹脂膜上に均一に供給することができる。さらに、溶解あるいは剥離した樹脂膜を速やかに第1の面上から取り除くことができる。素子チップの回転速度は、特に限定されないが、100rpm以下であってよく、5rpm以上30rpm以下であってよい。
【0033】
第1の洗浄液の粘度は特に限定されない。生産性の観点から、第1の洗浄液のJIS Z 8803に準拠して測定される20℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であってよい。
【0034】
図3は、第1洗浄工程における基板を模式的に示す断面図である。複数の素子チップ200は、搬送キャリア20に保持されて、テーブル302に載置されている。テーブル302は、その載置面の法線を回転軸にして回転可能である。複数の素子チップ200は、これらの第1の面の法線であって、搬送キャリア20の中心を通る軸Aを回転軸として、搬送キャリアごと回転している。第1の洗浄液50Aは液体状のまま、素子チップ200の第1の面10X側から樹脂膜40に向かって第1供給部(第1ノズル301A)から吐出されている。吐出された第1の洗浄液50Aは、樹脂膜40を覆うとともに、保持シート22の周縁領域221の一部も覆っている。樹脂膜40上には第1の洗浄液50Aの膜が形成されている。
【0035】
(iii)第2洗浄工程(S3)
素子チップの第1の面の側から樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける。第2の洗浄液が樹脂膜に衝突することによる物理的作用により、樹脂膜は除去される。
【0036】
第2の洗浄液は、気体とともに樹脂膜に吹き付けられてもよい。これは2流体洗浄法と言われる方法であって、気体(キャリアガス)によって加速された微小な液滴を樹脂膜に衝突させる方法である。2流体洗浄法は非常に高い洗浄効果を発揮する一方で、素子チップに損傷を与える場合もある。本実施形態によれば、前処理によって樹脂膜の密着性が弱められているため、樹脂膜は比較的穏やかな条件で除去され得る。そのため、素子チップの損傷を抑制することができる。あるいは、従来と同様の条件で2流体洗浄を行う場合にも、膨潤した樹脂膜自体、さらには、素子チップを覆う第1の洗浄液の膜が素子チップを保護する保護材のように作用するため、素子チップの損傷は抑制される。
【0037】
第2の洗浄液の噴射条件は特に限定されず、樹脂膜の厚み、配線層の構造等に応じて適宜設定すればよい。2流体洗浄法において、例えば、キャリアガスの圧力は0.1MPa以上0.7MPa以下、キャリアガスの流量は80L/分以上200L/分以下、第2の洗浄液の圧力は0.1MPa以上0.5MPa以下、第2の洗浄液の流量は100mL/分以上500mL/分以下、ノズルの先端と樹脂膜との間の距離は5mm以上20mm以下であってよい。
【0038】
第2の洗浄液は特に限定されず、第1の洗浄液に含まれる溶剤と同様の溶剤を含んでいてもよい。第1の洗浄液および第2の洗浄液に含まれる溶剤は同種であってもよく、異種であってもよい。コスト等の点で、第1の洗浄液および第2の洗浄液に含まれる溶剤は同種であってよい。
【0039】
キャリアガスは特に限定されず、2流体洗浄法に用いられる公知の気体を用いればよい。キャリアガスとしては、例えば、窒素、ドライエア、水蒸気等が挙げられる。
【0040】
第2の洗浄液を樹脂膜に吹き付ける際、搬送キャリアごと素子チップを第1の面の法線を回転軸にして回転させてもよい。これにより、剥離した樹脂膜を速やかに第1の面上から取り除くことができる。搬送キャリアの回転速度は、特に限定されないが、100rpm以上であってよく、300rpm以上であってよい。
【0041】
第1洗浄工程および第2洗浄工程は、それぞれ複数回行われてもよい。例えば、第1洗浄工程および第2洗浄工程の組み合わせを複数回行ってもよいし、第1洗浄工程および第2洗浄工程の後、必要に応じて再び第2洗浄工程を行ってもよい。
【0042】
図4は、第2洗浄工程における基板を模式的に示す断面図である。複数の素子チップ200は、搬送キャリアごと軸Aを回転軸として回転している。第2の洗浄液50Bは、第1供給部(第2ノズル301B)から膨潤された樹脂膜40に向けて吹き付けられている。樹脂膜40上には第1の洗浄液50Aの膜が形成されているため、噴射された第2の洗浄液50Bの圧力が弱められた状態で樹脂膜40に到達する。これにより、素子チップの損傷が抑制される。
【0043】
B.洗浄装置
本実施形態に係る洗浄装置は、素子チップが載置されるテーブルと、前記テーブルの上に載置された前記素子チップに、第1の洗浄液を供給する第1供給部と、前記テーブルの上に載置された前記素子チップに、第2の洗浄液を吹き付ける第2供給部と、前記第1供給部および前記第2供給部を制御する制御部と、備える。
洗浄装置の概念図は、例えば、図3および図4に示される。
【0044】
制御部は、素子チップへの記第1の洗浄液の供給が終了した後、素子チップへの第2の洗浄液の吹き付けが開始されるように、第1供給部および第2供給部を制御する。これにより、膨潤した樹脂膜に対して第2の洗浄液が吹き付けられるため、樹脂膜は容易に除去される。
【0045】
洗浄装置は、さらに、テーブルを回転させる回転部を備えてもよい。この場合、制御部は、回転する素子チップに対して第1の洗浄液の供給が行われるように、回転部および第1供給部を制御する。第2の洗浄液を供給する際にもテーブルを回転させてよい。
【0046】
第1供給部は、例えば、ノズル(第1ノズル)、第1の洗浄液が貯留されるタンク、吐出される第1の洗浄液の圧力を調整するポンプ等を備える。第1ノズルの先端には開口が形成されており、第1の洗浄液は、タンクから第1ノズルに供給された後、この開口から所定の量および圧力で吐出される。第1ノズルの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。
【0047】
第2供給部は、例えば、ノズル(第2ノズル)、第2の洗浄液が貯留されるタンク、キャリアガスが貯留されるタンク、キャリアガスの圧力を調整するポンプ等を備える。第2ノズルの先端には開口が形成されている。第2の洗浄液およびキャリアガスは、各タンクからそれぞれ別の経路で第2ノズルに供給され、その後、第2ノズルの内部で混合されて開口から噴射される。第2の洗浄液が噴射されるときの圧力は、キャリアガスの圧力により調整される。第2ノズルの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。
【0048】
回転部は、例えば、テーブルに接続された回転体、および、回転体を回転駆動させるモータ等を備える。洗浄装置は、第1ノズルおよび第2ノズルを並進移動および/または垂直移動させる移動部を備えてもよい。制御部は、例えばコンピュータを備え、第1供給部、第2供給部、回転部および移動部を制御する。
【0049】
図5は、本実施形態で使用される洗浄装置の一例のブロック図である。洗浄装置300は、第1の洗浄液を供給する第1供給部301Aと、第2の洗浄液を吹き付ける第2供給部301Bと、第1ノズルおよび第2ノズルを並進移動および/または垂直移動させる移動部304と、テーブルを回転させる回転部305と、第1供給部301A、第2供給部301B、移動部304および回転部305を制御する制御部303と、を備える。
【0050】
C.素子チップの製造方法
本実施形態に係る素子チップの製造方法は、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および第1の面とは反対側の第2の面を有する基板を準備する基板準備工程と、第1の面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、樹脂膜に開口を形成して、第1の面における分割領域を露出させる開口形成工程と、露出した分割領域の第1の面から第2の面までをプラズマエッチングして、基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、プラズマダイシング工程の後、素子チップの第1の面を被覆する樹脂膜を除去する樹脂膜除去工程と、を備える。樹脂膜除去工程は、樹脂膜に、樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む第1の洗浄液を接触させる第1洗浄工程と、第1洗浄工程の後、素子チップの第1の面の側から樹脂膜に第2の洗浄液を吹き付ける第2洗浄工程と、を備える。
図6は、本実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【0051】
(1)基板準備工程(S11)
まず、ダイシングの対象となる基板を準備する。
【0052】
(基板)
基板は、第1の面および第2の面を備えるとともに、複数の素子領域と素子領域を画定する分割領域とを備える。基板は、半導体層を備える。基板の素子領域は、さらに配線層を備えてよい。基板の分割領域は、さらに絶縁膜とTEG(Test Element Group)等の金属材料とを備えてよい。分割領域における基板をエッチングすることにより、複数の素子チップが得られる。
【0053】
基板の大きさは特に限定されず、例えば、最大径50mm~300mm程度である。基板の形状も特に限定されず、例えば、円形、角型である。また、基板には、オリエンテーションフラット(オリフラ)、ノッチ等の切欠きが設けられていてもよい。
【0054】
分割領域の形状は、直線に限られず、所望の素子チップの形状に応じて設定されればよく、ジグザグであってもよいし、波線であってもよい。なお、素子チップの形状としては、例えば、矩形、六角形等が挙げられる。
【0055】
分割領域の幅は特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。分割領域の幅は、例えば、10μm以上300μm以下である。複数の分割領域の幅は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。分割領域は、通常、複数本、基板に配置されている。隣接する分割領域同士のピッチも特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。
【0056】
(2)保持工程(S12)
基板の第2の面を、フレームに固定された保持シートに貼着する。これにより、ハンドリング性が向上する。保持シートに貼着された基板を個片化することにより、保持シート上に間隔を空けて配置された複数の素子チップが得られる。フレームおよび保持シートの形状、材質等は上記の通りである。
【0057】
図7は、本実施形態に係る保持工程後の基板を模式的に示す上面図である。図8は、本実施形態に係る保持工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
基板10は、第1の面10Xおよび第2の面10Yを備えるとともに、複数の素子領域101と素子領域101を画定する分割領域102とを備える。素子領域101は、半導体層11と、半導体層11の第1の面10X側に積層される配線層12と、を備える。分割領域102は、半導体層11と、絶縁膜14とを備える。基板10の第2の面10Yは搬送キャリア20が備える保持シート22に貼着されている。
【0058】
(3)樹脂膜形成工程(S13)
基板の第1の面を被覆する樹脂膜を形成する。
樹脂膜は、基板の素子領域をプラズマ等から保護するために設けられる。プラズマダイシング工程後、樹脂膜は除去される。樹脂膜の材料、厚みは上記の通りである。
【0059】
樹脂膜は、例えば、レジスト材料をシート状に成型した後、このシートを基板に貼り付けるか、あるいは、レジスト材料の原料液を、スピンコートやスプレー塗布等の方法を用いて、基板に塗布することにより形成される。原料液の塗布量を変えなから塗布することにより、樹脂膜の厚みを部分的に変えることができる。回転塗布とスプレー塗布とを併用して、塗布量を調整してもよい。
【0060】
図9は、本実施形態に係る樹脂膜形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。基板10の第1の面10Xに、樹脂膜40が形成されている。
【0061】
(4)開口形成工程(S14)
樹脂膜に開口を形成して、基板の分割領域を露出させる。
【0062】
開口は、例えば、フォトレジストにより形成された樹脂膜のうち、分割領域に対応する領域をフォトリソグラフィ法によって除去することにより形成される。熱硬化性樹脂あるいは水溶性レジストにより形成された樹脂膜のうち、分割領域に対応する領域をレーザスクライビングによりパターニングして、開口を形成してもよい。
【0063】
開口は、分割領域における樹脂膜および配線層が除去されることにより形成されてもよい。分割領域における配線層の除去は、後述するプラズマダイシング工程において行ってもよい。この場合、配線層を除去するためのプラズマを発生させる条件と、基板をエッチングするためのプラズマを発生させる条件とは異なり得る。
【0064】
開口形成工程の後、プラズマダイシング工程を行う前に、開口をレーザ光あるいはプラズマによりクリーニングする工程を行ってもよい。クリーニング工程におけるレーザ光は、通常、開口形成工程で用いられるレーザ光とは異なる条件で照射される。同様に、クリーニング工程で用いられるプラズマは、通常、個片化を行うときに発生させるプラズマとは異なる条件で発生させる。クリーニング工程は、例えば、開口形成工程に起因する残渣を低減する目的で行われる。これにより、更に高品質のプラズマエッチングを行うことが可能になる。
【0065】
図10は、本実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。分割領域102における樹脂膜40および配線層12が除去されて、開口から分割領域102において半導体層11が露出している。
【0066】
(5)プラズマダイシング工程(S15)
基板をプラズマに晒して、開口から露出する分割領域を第2の面までエッチングし、基板から複数の素子チップを形成する。複数の素子チップは、保持シートに保持された状態で得られる。
【0067】
図11を参照しながら、プラズマエッチングに使用されるプラズマ処理装置100を具体的に説明する。プラズマ処理装置は、これに限定されるものではない。図11は、プラズマ処理装置100の構造を概略的に示す断面図であり、便宜上、樹脂膜40を省略している。
【0068】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。搬送キャリア20は、保持シート22の基板10を保持している面が上方を向くように、ステージ111に搭載される。ステージ111は、搬送キャリア20の全体を載置できる程度の大きさを備える。ステージ111の上方には、基板10の少なくとも一部を露出させるための窓部124Wを有するカバー124が配置されている。カバー124には、フレーム21がステージ111に載置されている状態のとき、フレーム21を押圧するための押さえ部材107が配置されている。押さえ部材107は、フレーム21と点接触できる部材(例えば、コイルバネや弾力性を有する樹脂)であることが好ましい。これにより、フレーム21およびカバー124の熱が互いに影響し合うことを抑制しながら、フレーム21の歪みを矯正することができる。
【0069】
ステージ111およびカバー124は、真空チャンバ103内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y23)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al23)、石英(SiO2)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1の電極109が配置されている。第1の電極109は、第1の高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0070】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガス(プロセスガス)の供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にプロセスガスが供給された状態で、第1の電極109に第1の高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0071】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0072】
電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119と称す。)と、第2の高周波電源110Bに電気的に接続された第2の電極120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、保持シート22はステージ111に押し付けられて固定される。以下、保持シート22をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。保持シート22のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0073】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載された保持シート22が冷却されるとともに、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、基板10や保持シート22が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0074】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、搬送キャリア20のフレーム21を支持する。支持部122は、第1の昇降機構123Aにより昇降駆動される。搬送キャリア20が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0075】
カバー124の端部には、複数の昇降ロッド121が連結しており、カバー124を昇降可能にしている。昇降ロッド121は、第2の昇降機構123Bにより昇降駆動される。第2の昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、第1の昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0076】
制御装置128は、第1の高周波電源110A、第2の高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、第1の昇降機構123A、第2の昇降機構123Bおよび静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。図12は、本実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【0077】
基板10のエッチングは、基板10が保持された搬送キャリア20を真空チャンバ内に搬入し、基板10がステージ111に載置された状態で行われる。
基板10の搬入の際、真空チャンバ103内では、昇降ロッド121の駆動により、カバー124が所定の位置まで上昇している。図示しないゲートバルブが開いて搬送キャリア20が搬入される。複数の支持部122は、上昇した状態で待機している。搬送キャリア20がステージ111上方の所定の位置に到達すると、支持部122に搬送キャリア20が受け渡される。搬送キャリア20は、保持シート22の粘着面22Xが上方を向くように、支持部122の上端面に受け渡される。
【0078】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡されると、真空チャンバ103は密閉状態に置かれる。次に、支持部122が降下を開始する。支持部122の上端面が、ステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111に載置される。続いて、昇降ロッド121が駆動する。昇降ロッド121は、カバー124を所定の位置にまで降下させる。このとき、カバー124に配置された押さえ部材107がフレーム21に点接触できるように、カバー124とステージ111との距離は調節されている。これにより、フレーム21が押さえ部材107によって押圧されるとともに、フレーム21がカバー124によって覆われ、基板10は窓部124Wから露出する。
【0079】
カバー124は、例えば、略円形の外形輪郭を有したドーナツ形であり、一定の幅および薄い厚みを備えている。窓部124Wの直径はフレーム21の内径よりも小さく、その外径はフレーム21の外径よりも大きい。したがって、搬送キャリア20をステージ111の所定の位置に搭載し、カバー124を降下させると、カバー124は、フレーム21を覆うことができる。窓部124Wからは、基板10の少なくとも一部が露出する。
【0080】
カバー124は、例えば、セラミックス(例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなど)や石英などの誘電体や、アルミニウムあるいは表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの金属で構成される。押さえ部材107は、上記の誘電体や金属の他、樹脂材料で構成され得る。
【0081】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡された後、直流電源126からESC電極119に電圧を印加する。これにより、保持シート22がステージ111に接触すると同時にステージ111に静電吸着される。なお、ESC電極119への電圧の印加は、保持シート22がステージ111に載置された後(接触した後)に、開始されてもよい。
【0082】
エッチングが終了すると、真空チャンバ103内のガスが排出され、ゲートバルブが開く。複数の素子チップを保持する搬送キャリア20は、ゲートバルブから進入した搬送機構によって、プラズマ処理装置100から搬出される。搬送キャリア20が搬出されると、ゲートバルブは速やかに閉じられる。搬送キャリア20の搬出プロセスは、上記のような搬送キャリア20をステージ111に搭載する手順とは逆の手順で行われてもよい。すなわち、カバー124を所定の位置にまで上昇させた後、ESC電極119への印加電圧をゼロにして、搬送キャリア20のステージ111への吸着を解除し、支持部122を上昇させる。支持部122が所定の位置まで上昇した後、搬送キャリア20は搬出される。
【0083】
半導体層をエッチングする第1のプラズマの発生条件は、半導体層の材質などに応じて設定される。
半導体層は、例えば、ボッシュプロセスによりプラズマエッチングされる。ボッシュプロセスでは、半導体層が深さ方向に垂直にエッチングされる。半導体層がSiを含む場合、ボッシュプロセスは、堆積ステップと、堆積膜エッチングステップと、Siエッチングステップとを順次繰り返すことにより、半導体層を深さ方向に掘り進む。
【0084】
堆積ステップは、例えば、プロセスガスとしてCを150sccm~250sccmで供給しながら、真空チャンバ内の圧力を15Pa~25Paに調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W~2500Wとして、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を0W~50Wとして、2秒間~15秒間、処理する条件で行われる。
【0085】
堆積膜エッチングステップは、例えば、プロセスガスとしてSFを200sccm~400sccmで供給しながら、真空チャンバ内の圧力を5Pa~15Paに調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W~2500Wとして、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を300W~1000Wとして、2秒間~10秒間、処理する条件で行われる。
【0086】
Siエッチングステップは、例えば、プロセスガスとしてSFを200sccm~400sccmで供給しながら、真空チャンバ内の圧力を5Pa~15Paに調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W~2500Wとして、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を50W~500Wとして、10秒間~20秒間、処理する条件で行われる。
【0087】
上記のような条件で、堆積ステップ、堆積膜エッチングステップ、および、Siエッチングステップを繰り返すことにより、Siを含む半導体層は、10μm/分~20μm/分の速度で深さ方向に垂直にエッチングされ得る。
【0088】
図13は、本実施形態に係るプラズマダイシング工程で作製された素子チップを、模式的に示す断面図である。基板の分割領域がエッチングされて、基板から複数の素子チップ200が形成されている。素子チップ200の配線層12は、樹脂膜40により覆われている。
【0089】
(6)樹脂膜除去工程(S16)
樹脂膜除去工程は、上記の素子チップの洗浄方法の第1洗浄工程(ii)および第2洗浄工程(iii)により実行される。複数の素子チップは、上記基板準備工程からプラズマダイシング工程までの工程により、保持シートに保持された状態で準備されている。上記洗浄方法によれば、高品質の素子チップが得られる。
【0090】
第1の洗浄液を素子チップに供給する前に、素子チップを酸素を含むガスによる発生するプラズマに晒して、樹脂膜を軽くアッシングしてもよい。樹脂膜のアッシングは、例えば、プラズマダイシング工程の後、同じプラズマ処理装置を用いて連続して行われる。
【0091】
図14は、本実施形態に係る樹脂膜除去後の素子チップを模式的に示す断面図である。素子チップ200の配線層12を覆っていた樹脂膜40が除去されている。
【0092】
樹脂膜除去工程の後、素子チップは、保持シートから取り外される。
素子チップを、例えば、保持シートの非粘着面側から、保持シートとともに突き上げピンで突き上げる。これにより、素子チップの少なくとも一部は、保持シートから浮き上がる。その後、ピックアップ装置により、素子チップは保持シートから取り外される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の洗浄方法および洗浄装置は、素子チップの損傷を抑制しながら樹脂膜を除去できるため、特にプラズマダイシングにより素子チップを製造する方法に好適である。
【符号の説明】
【0094】
10:基板
10X:第1の面
10Y:第2の面
11:半導体層
12:配線層
20:搬送キャリア
21:フレーム
21a:ノッチ
21b:コーナーカット
22:保持シート
22X:粘着面
22Y:非粘着面
221:周縁領域
40:樹脂膜
50A:第1の洗浄液
50B:第2の洗浄液
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
108:誘電体部材
109:第1の電極
110A:第1の高周波電源
110B:第2の高周波電源
111:ステージ
112:プロセスガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2の電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123A、123B:昇降機構
124:カバー
124W:窓部
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング
200:素子チップ
300:洗浄装置
301A:第1供給部(第1ノズル)
301B:第2供給部(第2ノズル)
302:テーブル
303:制御部
304:移動部
305:回転部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14