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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】蛍光体ホイール装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230616BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230616BHJP
   F21V 9/20 20180101ALI20230616BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20230616BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230616BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20230616BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230616BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21V9/20
F21V9/38
G03B21/00 F
H04N9/31 500
F21Y115:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020527603
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025480
(87)【国際公開番号】W WO2020004505
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018125210
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇作
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177272(JP,A)
【文献】特開2016-033553(JP,A)
【文献】特開2017-167528(JP,A)
【文献】特開2012-212129(JP,A)
【文献】特開2017-214486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0258639(US,A1)
【文献】特開2015-011302(JP,A)
【文献】特開2011-128521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転軸の周りに回転可能な基板と、
前記基板において、前記回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域に形成され、第1の波長を有する入射光を透過し、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する入射光を反射する第1のダイクロイックフィルタと、
前記基板において、前記回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、前記回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成された蛍光体であって、前記第1の波長を有する入射光によって励起されて前記第2の波長を有する蛍光を発生する蛍光体と、
前記基板において、前記回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、前記蛍光体の領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する第1の透過窓と、
前記基板において、前記回転軸から前記第1の半径とは異なる第2の半径を有する円周を含む領域のうち、前記回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成され、前記第2の波長を有する入射光を透過し、前記第1の波長を有する入射光を反射する第2のダイクロイックフィルタと、
前記基板において、前記回転軸に対して前記第1の透過窓と対向するように配置され、前記第2の半径を有する円周を含む領域のうち、前記第2のダイクロイックフィルタとは別の領域に形成され、入射光を透過する第2の透過窓と、
前記第1及び第2の透過窓の一方に形成され、入射光を拡散する拡散膜とを備え
前記拡散膜は、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、前記バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料と、前記第1の波長を有する入射光によって励起されて前記第1の波長とは異なる第3の波長を有する蛍光を発生する蛍光体との混合物により形成された、
蛍光体ホイール装置。
【請求項2】
1の回転軸の周りに回転可能な第1の基板と、
前記第1の基板において、前記第1の回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域に形成され、第1の波長を有する入射光を透過し、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する入射光を反射する第1のダイクロイックフィルタと、
前記第1の基板において、前記第1の回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、前記第1の回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成された蛍光体であって、前記第1の波長を有する入射光によって励起されて前記第2の波長を有する蛍光を発生する蛍光体と、
前記第1の基板において、前記第1の回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、前記蛍光体の領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する第1の透過窓と、
2の回転軸の周りに回転可能な第2の基板と、
前記第2の基板において、前記第2の回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成され、前記第2の波長を有する入射光を透過し、前記第1の波長を有する入射光を反射する第2のダイクロイックフィルタと、
前記第2の基板において、前記第2のダイクロイックフィルタとは別の領域に形成され、入射光を透過する第2の透過窓と、
前記第1及び第2の透過窓の一方に形成され、入射光を拡散する拡散膜とを備え
前記拡散膜は、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、前記バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料と、前記第1の波長を有する入射光によって励起されて前記第1の波長とは異なる第3の波長を有する蛍光を発生する蛍光体との混合物により形成され、
前記第1の基板の前記第1の回転軸周りの回転と、前記第2の基板の前記第2の回転軸周りの回転とは互いに同期して行われ、前記第1の透過窓を透過した前記入射光が前記第2の透過窓を透過可能なように、前記第1の基板と前記第2の基板とが互いに離間して配置されている、
蛍光体ホイール装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の透過窓のうち、前記拡散膜が形成されていない透過窓は、前記第1及び第3の波長を有する入射光を透過するフィルタを有する、
請求項記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の透過窓のうち、前記拡散膜が形成されていない透過窓は、前記第1及び第3の波長を有する入射光を透過するフィルタを有する、
請求項2記載の蛍光体ホイール装置。
【請求項5】
請求項1または3記載の蛍光体ホイール装置
前記蛍光体ホイール装置を回転させる駆動装置と、
前記第1の波長のソース光を発生する光源素子と、
前記光源素子から前記蛍光体に入射したソース光により励起された蛍光、又は、前記光源素子から前記拡散膜に入射して前記拡散膜により拡散されたソース光を、前記第2のダイクロイックフィルタ又は前記第2の透過窓に入射させるように導く光学系とを備えた、
光源装置。
【請求項6】
請求項2または4記載の蛍光体ホイール装置
前記蛍光体ホイール装置の前記第1の基板を回転させる第1の駆動装置と、
前記蛍光体ホイール装置の前記第2の基板を回転させる第2の駆動装置と、
前記第1の波長のソース光を発生する光源素子とを備え、
前記第1及び第2の基板は、前記光源素子から前記蛍光体に入射したソース光により励起された蛍光、又は、前記光源素子から前記拡散膜に入射して前記拡散膜により拡散されたソース光が、前記第2のダイクロイックフィルタ又は前記第2の透過窓に入射するように配置された、
光源装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の光源装置を備える、
投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、投写型映像表示装置の光源装置に使用される蛍光体ホイール装置、並びに、そのような蛍光体ホイール装置を備えた光源装置及び投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投写型映像表示装置(プロジェクタ)のための光源として、高輝度を有する高圧水銀ランプが使用されてきた。高圧水銀ランプには、瞬時に点灯できないこと、及び、光源の寿命が短いので頻繁なメンテナンスが必要になること、といった課題がある。一方、近年の固体発光素子(例えば、半導体レーザ素子、発光ダイオードなど)に開連した技術の進展に伴い、例えば特許文献1及び2に開示されるように、投写型映像表示装置のための光源素子として固体発光素子を用いることが提案されている。
【0003】
投写型映像表示装置は、例えば、1色の光(「ソース光」という)のみを発生する光源素子と、蛍光体を備えた蛍光体ホイールとを備えてもよい。この場合、投写型映像表示装置は、光源素子により所定の色成分(例えば青色光)を有するソース光を発生し、このソース光を蛍光体ホイールに入射させることにより他の色成分(例えば赤色光及び緑色光など)を含む蛍光を発生させる。次いで、投写型映像表示装置は、蛍光をフィルタリングしてその色成分(赤色光及び緑色光)を取り出し、これにより、赤色光、緑色光、及び青色光など、所望の各色成分を有する照明光を得る。
【0004】
投写型映像表示装置は、照明光をDMD(Digital Mirror Device)などの光変調素子に入射させる。光変調素子は、入力された映像信号に応じて照明光を空間的に変調して映像光を発生する。最後に、投写型映像表示装置は、映像光をスクリーンに投写する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-160227号公報
【文献】特開2016-033553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体の変換効率は必ずしも100%ではなく、蛍光体において損失が生じる可能性がある。また、フィルタの透過率又は反射率もまた必ずしも100%ではなく、フィルタにおいて損失が生じる可能性がある。従って、蛍光体ホイールを備えた光源装置又は投写型映像表示装置を従来よりも高効率で動作させるために、蛍光体及び/又はフィルタの損失を低減することが求められる。
【0007】
本開示の目的は、光源装置及び投写型映像表示装置を従来よりも高効率で動作させることができる蛍光体ホイール装置を提供することにある。本開示の目的は、さらに、そのような蛍光体ホイール装置を備えた光源装置及び投写型映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る蛍光体ホイール装置は、基板、第1のダイクロイックフィルタ、蛍光体、第1の透過窓、第2のダイクロイックフィルタ、第2の透過窓、及び拡散膜を備える。基板は、透明材料からなり、回転軸の周りに回転可能な第1のダイクロイックフィルタは、基板において、回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域に形成され、第1の波長を有する入射光を透過し、第1の波長とは異なる第2の波長を有する入射光を反射する。蛍光体は、基板において、回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成された蛍光体であって、第1の波長を有する入射光によって励起されて第2の波長を有する蛍光を発生する。第1の透過窓は、基板において、回転軸から第1の半径を有する円周を含む領域のうち、蛍光体の領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する。第2のダイクロイックフィルタは、基板において、回転軸から第1の半径とは異なる第2の半径を有する円周を含む領域のうち、回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成され、第2の波長を有する入射光を透過し、第1の波長を有する入射光を反射する。第2の透過窓は、基板において、第2の半径を有する円周を含む領域のうち、第2のダイクロイックフィルタとは別の領域に形成され、入射光を透過する。拡散膜は、第1及び第2の透過窓の一方に形成され、入射光を拡散する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る蛍光体ホイール装置によれば、光源装置及び投写型映像表示装置を従来よりも高効率で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る投写型映像表示装置100の構成を示す概略図である。
図2図1の蛍光体ホイール70の構成を示す側面図である。
図3図1の蛍光体ホイール70の構成を示す平面図である。
図4図1の蛍光体ホイール70の近傍においてソース光及び蛍光が進む経路を示す概略図である。
図5】第1の実施形態の第1の変形例に係る蛍光体ホイール70Aの構成を示す平面図である。
図6】第1の実施形態の第2の変形例に係る蛍光体ホイール70Bの構成を示す平面図である。
図7】第1の実施形態の第3の変形例に係る蛍光体ホイール70Cの構成を示す平面図である。
図8】第1の実施形態の第4の変形例に係る蛍光体ホイール70Dの構成を示す側面図である。
図9図8の蛍光体ホイール70Dの構成を示す平面図である。
図10】第2の実施形態に係る投写型映像表示装置100Eの構成を示す概略図である。
図11図10の蛍光体ホイール70Eの構成を示す側面図である。
図12図10の蛍光体ホイール70Eの構成を示す平面図である。
図13図10のフィルタホイール80の構成を示す側面図である。
図14図10のフィルタホイール80の構成を示す平面図である。
図15図10の蛍光体ホイール70E及びフィルタホイール80の近傍において励起光及び蛍光が進む経路を示す概略図である。
図16】第2の実施形態の変形例に係る蛍光体ホイール70Fの構成を示す平面図である。
図17】第2の実施形態の変形例に係るフィルタホイール80Fの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
また、以下、本開示の実施形態に係る蛍光体ホイール装置、光源装置、及び投写型映像表示装置の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれる可能性がある。
【0013】
[第1の実施形態]
以下、図1図9を参照して、第1の実施形態に係る投写型映像表示装置について説明する。
【0014】
(投写型映像表示装置100の概要)
図1は、第1の実施形態に係る投写型映像表示装置100の構成を示す概略図である。図1は、特に、投写型映像表示装置100の光学的な構成を示す。投写型映像表示装置100は、光源装置10、照明光学系11、変調装置12、及び投写光学系13を備える。
【0015】
光源装置10は、主に、所定波長のソース光を発生する光源20と、ソース光により励起された蛍光を発生する蛍光体ホイール70とを備える。蛍光体ホイール70には、後述するように、蛍光体が形成されるとともに、蛍光の各色成分を取り出すダイクロイックフィルタが形成されている。これにより、光源装置10は、黄色光、赤色光、緑色光、及び青色光など、所望の各色成分を有する照明光を発生する。
【0016】
照明光学系11は、光源装置10によって発生された照明光を変調装置12に送る。
【0017】
変調装置12は、主に、入力された映像信号に応じて照明光を空間的に変調して映像光を発生する1つの光変調素子41を備える。
【0018】
投写光学系13は、映像光を、投写型映像表示装置100の外部のスクリーン(図示せず)へ拡大して投写する。
【0019】
第1の実施形態では、蛍光体ホイール70を「蛍光体ホイール装置」ともいう。
【0020】
(光源装置10の構成)
光源装置10は、光源20、コンデンサレンズ30、拡散板60、蛍光体ホイール70、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を備える。
【0021】
光源20は、複数の光源素子21と、各光源素子21から出射されたソース光をほぼ平行な光にそれぞれ集光する複数のコリメータレンズ22とを備える。例示的な実施形態では、光源20は、高輝度の照明光を発生するために、複数の光源素子21をアレイ状に配置してアレイ光源23を構成している。各光源素子21は、例えば半導体レーザ素子である。例示的な実施形態では、各光源素子として、RGBの3原色のうちで最も高い発光効率を有する青色のレーザ光(例えば、波長455nm)を発生する半導体レーザ素子を使用する。半導体レーザ素子は固体発光素子の一例である。また、光源20は、各光源素子21を冷却するために、例えば、各光源素子21に接触したヒートシンク(図示せず)を備え、各光源素子21を強制的に空冷する。
【0022】
光源20から出射したソース光は、コンデンサレンズ30によって集光されることで互いに重畳し、拡散板60に入射する。拡散板60は、光源20によって発生されたソース光の干渉性を低減させる。拡散板60を透過したソース光は、蛍光体ホイール70に入射する。
【0023】
蛍光体ホイール70は、入射したソース光によって励起されて、ソース光の波長とは異なる波長を有する蛍光を発生する蛍光体を備える。蛍光体ホイール70はさらに、蛍光体の領域とは別の領域に形成され、入射したソース光を拡散する拡散膜を備える。蛍光体ホイール70はさらに、入射した蛍光を透過し、入射したソース光を反射するダイクロイックフィルタを備える。蛍光体ホイール70はさらに、ダイクロイックフィルタとは別の領域に形成され、入射したソース光を透過する透過窓を備える。蛍光体ホイール70の詳細は後述する。
【0024】
蛍光体ホイール70の蛍光体から出射した蛍光は、レンズ31及び32を含むコリメータレンズ群によりほぼ平行にされ、ミラー61及び62により反射され、レンズ33によって集光され、蛍光体ホイール70のダイクロイックフィルタに入射する。ダイクロイックフィルタに入射した蛍光の各色成分が、ダイクロイックフィルタを透過して取り出される。同様に、蛍光体ホイール70の拡散膜から出射したソース光は、レンズ31及び32によりほぼ平行にされ、ミラー61及び62により反射され、レンズ33によって集光され、蛍光体ホイール70の透過窓を透過する。ダイクロイックフィルタを透過した各色成分の光(例えば、黄色光、赤色光、及び緑色光)及び透過窓を透過したソース光(すなわち青色光)は、光源装置10によって発生された照明光として照明光学系11に進む。光源装置10は、後述するように、照明光の各色成分の光(黄色光、赤色光、緑色光、及び青色光)を時分割で発生する。
【0025】
また、光源20から蛍光体ホイール70の蛍光体に入射したソース光の一部は、蛍光に変換されることなく蛍光体を通過し、レンズ31、32、ミラー61、62、及びレンズ33を介して蛍光体ホイール70のダイクロイックフィルタに入射する。このソース光は、ダイクロイックフィルタによって反射され、レンズ33、ミラー62、61、レンズ32、31を介して蛍光体ホイール70の蛍光体に再び入射する。
【0026】
(照明光学系11の構成)
照明光学系11は、ロッドインテグレータ34、レンズ35、レンズ36、及びレンズ37を備える。光源装置10によって発生された照明光は、ロッドインテグレータ34に入射する。ロッドインテグレータ34は、光源装置10から出射された照明光の強度分布を均一化する。ロッドインテグレータ34は、ガラスなどの透明部材によって構成される中実のロッドであってもよく、又は、内壁がミラー面として構成された中空のロッドであってもよい。ロッドインテグレータ34から出射された照明光は、レンズ35、レンズ36、レンズ37を介して、変調装置12に送られる。
【0027】
(変調装置12の構成)
変調装置12は、光変調素子41及びプリズム42を備える。光変調素子41は、例えば、複数の可動式の微小ミラーを有するDMD(Digital Mirror Device)である。プリズム42は、ダイクロイックミラー42aを備える。ダイクロイックミラー42aは、照明光学系11から入射した照明光を全反射して光変調素子41へ導く。光変調素子41は、投写型映像表示装置100の制御回路(図示せず)によって、映像信号に応じて、かつ、照明光のどの色成分の光が入力されているかに応じて制御され、照明光の各色成分の光を時分割で変調する。光変調素子41によって照明光を変調することにより発生した映像光の各色成分の光は、プリズム42を透過して投写光学系13へ送られる。
【0028】
(投写光学系13の構成)
投写光学系13は、1つ又は複数の投写レンズを備え、映像光を、投写型映像表示装置100の外部のスクリーン(図示せず)へ拡大して投写する。
【0029】
(蛍光体ホイール70)
図2及び図3を参照して、蛍光体ホイール70の構成を説明する。図2は、図1の蛍光体ホイール70の構成を示す側面図である。図3は、図1の蛍光体ホイール70の構成を示す平面図である。図2は、図1と同じ方向から蛍光体ホイール70を見た場合の断面図を示す。図3は、図2の右側から蛍光体ホイール70を見た場合の平面図を示す。
【0030】
蛍光体ホイール70は、基板71、ダイクロイックフィルタ72、蛍光体73a及び73b、拡散膜73c、駆動装置74、ダイクロイックフィルタ82a~82c、第1の透過窓W1、及び第2の透過窓W2を備える。
【0031】
基板71は、透明材料からなり、回転軸74c(後述)の周りに回転可能である。基板71は、例えば、高い熱伝導率を有するサファイア基板で構成される。
【0032】
ダイクロイックフィルタ72は、基板71において、回転軸74cから半径r1を有する円周を含む領域に形成される。ダイクロイックフィルタ72は、ソース光の波長を有する入射光を透過し、ソース光の波長とは異なる波長を有する入射光を反射する。例えば、ダイクロイックフィルタ72は、480nm以下の波長を有する可視域の入射光を透過し、480nmより長い波長を有する可視域の入射光を反射する。これにより、ダイクロイックフィルタ72は、光源20から入射したソース光を透過し、また、ソース光で蛍光体73a及び73bを励起することにより発生した蛍光を反射する。
【0033】
蛍光体73a及び73bは、基板71において、回転軸74cから半径r1を有する円周を含む領域のうち、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する領域にそれぞれ形成される。蛍光体73a及び73bは、ソース光の波長を有する入射光によって励起されて、ソース光の波長とは異なる波長を有する蛍光をそれぞれ発生する。
【0034】
透過窓W1は、基板71において、回転軸74cから半径r1を有する円周を含む領域のうち、蛍光体73a及び73bの領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する。拡散膜73cは、入射光を拡散する拡散材料を含み、透過窓W1の上に形成される。
【0035】
蛍光体によって発生された蛍光は、それ自体、空間的に拡散されている(すなわち、蛍光体から放射状に出射する)。従って、照明光の各色成分のうち、蛍光から抽出された各色成分の光(例えば、黄色光、赤色光、及び緑色光など;「蛍光成分光」という)もまた、空間的に拡散されて均一な強度分布を有する。一方、固体発光素子によって発生されたソース光は、細い光束を有する。従って、照明光の各色成分のうち、蛍光から抽出されたものではない色成分の光(例えば青色光;「非蛍光成分光」という)が、特定の領域に集中した空間的に不均一な強度分布を有するおそれがある。照明光のいずれかの色成分の光が空間的に不均一な強度分布を有する場合、映像光にムラが生じることになる。従って、蛍光体ホイール70の前段に拡散板60を設けるとともに、蛍光体ホイール70に拡散膜73cを設けることで、非蛍光成分光の空間的な強度分布を、蛍光成分光の空間的な強度分布に合わせて均一化する。これにより、映像光のムラを低減することができる。
【0036】
蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cは、例えば、図2に示すように、ダイクロイックフィルタ72の上に形成されてもよい。
【0037】
ダイクロイックフィルタ82a~82cは、基板71において、回転軸74cから半径r1とは異なる半径r2を有する円周を含む領域のうち、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する領域に形成される。ダイクロイックフィルタ82a~82cは、蛍光の所定の色成分の光の波長を有する入射光を透過し、ソース光の波長を有する入射光を反射する。これにより、ダイクロイックフィルタ82a~82cは、蛍光体73a及び73bで発生した蛍光の所定の色成分の光を透過し、また、光源20から蛍光体ホイール70の蛍光体73a及び73bに入射し、蛍光に変換されることなく蛍光体73a及び73bを通過したソース光を反射する。
【0038】
透過窓W2は、基板71において、半径r2を有する円周を含む領域のうち、ダイクロイックフィルタ82a~82cとは別の領域に形成され、入射光を透過する。
【0039】
図2及び図3の例では、ダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2は、蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cの内側(すなわち、蛍光体73a及び73b、及び透過窓W1の内側)に形成される(r1>r2)。
【0040】
駆動装置74は、投写型映像表示装置100の制御回路(図示せず)の制御下で、基板71を回転軸74cの周りに回転させる。駆動装置74は、モータ74a、取り付け具74b、及び回転軸74cを備える。基板71は、取り付け具74bを介してモータ74aに取り付けられる。取り付け具74bは、例えば、基板71をハブ及び抑え部材で挟み込んでネジで固定する。
【0041】
(蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73c)
蛍光体73aは、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する領域に塗布され、約455nmの波長を有する青色光によって励起され、例えば、約570nmの主波長を有する黄色光を含む黄色蛍光を発生する。蛍光体73bは、蛍光体73aの領域とは別の領域であって、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する領域に塗布され、約455nmの波長を有する青色光によって励起され、例えば、約550nmの主波長を有する緑色光を含む緑色蛍光を発生する。蛍光体73aは、黄色蛍光を発生する黄色蛍光体と、バインダとの混合物で構成される。蛍光体73bは、緑色蛍光を発生する緑色蛍光体と、バインダとの混合物で構成される。黄色蛍光体は、例えばYAl12:Ce3+である。緑色蛍光体は、例えばLuAl12:Ce3+である。バインダは、透明材料、例えばシリコーン樹脂からなる。蛍光体73a及び73bの厚さ及び濃度は、入射するソース光のうち、所望の割合の光を透過するように調整される。
【0042】
拡散膜73cには、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料との混合物が、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する領域に塗布されている。バインダは、例えばシリコーン樹脂からなる。拡散材料は、例えばガラスビーズである。また、拡散膜73cの厚さ、拡散材料の屈折率及び濃度は、入射するソース光を所望の角度で拡散するように調整される。
【0043】
光源20によって発生されたソース光は、蛍光体ホイール70に対して図2の左側の面から入射し、蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cに入射する。駆動装置74は、映像の1フレーム(例えば、1/60秒)に相当する時間で基板71を1回転させる。すなわち、光源210から蛍光体ホイール70に入射したソース光は、1フレームに相当する時間で、順に、蛍光体73aに入射し、蛍光体73bに入射し、拡散膜73cに入射する。
【0044】
蛍光体73aは、入射したソース光により励起され、黄色蛍光を等方的に発生する。蛍光体73bは、入射したソース光により励起され、緑色蛍光を等方的に発生する。蛍光体により発生した黄色蛍光及び緑色蛍光のうち、図2の左向き(光源20から蛍光体ホイール70に入射したソース光の進行方向(右向き)とは逆の向き)に発生した部分は、ダイクロイックフィルタ72によって反射される。従って、図2の左向きに発生した蛍光は、図2の右向きに発生した蛍光とともに、蛍光体ホイール70の右側の面から出射する。拡散膜73cに入射したソース光は、拡散材料により拡散されて拡散透過し、蛍光体ホイール70の右側の面から出射する。
【0045】
このように発生された黄色蛍光、緑色蛍光、及び拡散されたソース光は、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を含む光学系を介して、蛍光体ホイール70のダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2に入射する。
【0046】
(ダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2)
ダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2は、例えば図3に示すように、回転軸74cからみて所定の角度幅を有する扇形の領域にそれぞれ形成される。ダイクロイックフィルタ82a及び82cは、例えば、480nmより長い波長を有する可視域の入射光を透過し、480nm以下の波長を有する可視域の入射光を反射する。ダイクロイックフィルタ82bは、例えば、600nmより長い波長を有する可視域の入射光を透過し、600nm以下の波長を有する可視域の入射光を反射する。透過窓W2は、拡散膜73cにより拡散されたソース光を透過する。透過窓W2は、透明材料からなる基板71において、例えば、ダイクロイックフィルタを形成せず、基板71自体を露出させた領域として形成される。
【0047】
蛍光体ホイール70と、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を含む光学系とは、蛍光体73aによって発生した黄色蛍光が、ダイクロイックフィルタ82a及び82bに入射するように構成される。同様に、蛍光体ホイール70及び関連付けられた光学系は、蛍光体73bによって発生した緑色蛍光が、ダイクロイックフィルタ82cに入射するように構成される。同様に、蛍光体ホイール70及び関連付けられた光学系は、拡散膜73cの拡散材料によって拡散されたソース光が、透過窓W2に入射するように構成される。よって、ダイクロイックフィルタ82a及び82bの角度幅の和は、蛍光体73aの領域の角度幅に等しくなるように設定される。また、ダイクロイックフィルタ82cの角度幅は、蛍光体73bの領域の角度幅に等しくなるように設定される。また、透過窓W2の角度幅は、拡散膜73cの領域(すなわち、透過窓W1の領域)の角度幅に等しくなるように設定される。
【0048】
蛍光体73aからの黄色蛍光がダイクロイックフィルタ82aに入射するとき、ダイクロイックフィルタ82aは、480nmより長い波長を有する光を透過し、480nm以下の波長を有する光を反射するので、光源装置10は照明光として黄色光を出射する。一方、蛍光体73aからの黄色蛍光がダイクロイックフィルタ82bに入射するとき、ダイクロイックフィルタ82bは、600nmより長い波長を有する光を透過し、600nm以下の波長を有する光を反射するので、光源装置10は照明光として赤色光を出射する。また、蛍光体73bからの緑色蛍光がダイクロイックフィルタ82cに入射するとき、ダイクロイックフィルタ82cは、480nmより長い波長を有する光を透過し、480nm以下の波長を有する光を反射するので、光源装置10は照明光として緑色光を出射する。また、拡散膜73cからの拡散されたソース光(青色光)が透過窓W2に入射するとき、透過窓W2は青色光を透過し、光源装置10は照明光として青色光を出射する。
【0049】
(ソース光及び蛍光が進む経路)
図4は、図1の蛍光体ホイール70の近傍においてソース光及び蛍光が進む経路を示す概略図である。図4は、図1の光源装置10のうち、蛍光体ホイール70及び関連付けられた光学系を拡大して示す概念図である。
【0050】
光源20から蛍光体ホイール70に入射したソース光Eは、基板71を透過して蛍光体73a及び73bに入射する。蛍光体73a及び73bに入射したソース光Eの一部は、蛍光体73a及び73bに吸収される。蛍光体73a及び73bに吸収されたソース光Eのエネルギーの一部は、所定の変換効率で蛍光F1に変換されて蛍光体73a及び73bから出射し、残りは熱に変換される。また、蛍光体73a及び73bに吸収されないソース光Eは、漏れソース光E1として蛍光体73a及び73bを透過して出射する。
【0051】
蛍光体73a及び73bから出射した蛍光F1及び漏れソース光E1は、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を介して、ダイクロイックフィルタ82a~82cに入射する。ダイクロイックフィルタ82a~82cに入射した蛍光F1は、ダイクロイックフィルタ82a~82cにより、所望の色成分の光を透過するように、かつ、その他の色成分の光を反射するようにフィルタリングされ、フィルタリングされた色成分の光G1が出射される。ダイクロイックフィルタ82a~82cに入射した漏れソース光E1は、ダイクロイックフィルタ82a~82cにより反射されて戻りソース光E2となり、再び、レンズ33、ミラー62、ミラー61、レンズ32、レンズ31を介して、蛍光体73a及び73bに入射する。
【0052】
再び蛍光体73a及び73bに入射した戻りソース光E2の一部は、蛍光体73a及び73bに吸収される。蛍光体73a及び73bに吸収された戻りソース光E2のエネルギーの一部は、所定の変換効率で蛍光F2に変換されて蛍光体73a及び73bから出射し、残りは熱に変換される。また、蛍光体73a及び73bに吸収されない戻りソース光E2は、蛍光体73a及び73b、及び基板71を透過し、未使用のソース光E3として蛍光体ホイール70から出射する。
【0053】
蛍光体73a及び73bから出射した蛍光F2は、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を介して、ダイクロイックフィルタ82a~82cに入射する。ダイクロイックフィルタ82a~82cに入射した蛍光F2は、ダイクロイックフィルタ82a~82cにより、所望の色成分の光を透過するように、かつ、その他の色成分の光を反射するようにフィルタリングされ、フィルタリングされた色成分の光G2が出射される。
【0054】
当然ながら、蛍光F1及び漏れソース光E1は、蛍光体73a及び73bから出射してダイクロイックフィルタ82a~82cに入射するとき、同一の経路に沿って進む。ここで、レンズ31及び32、ミラー61及び62、及びレンズ33を含む光学系は、蛍光体73a及び73bの出射面と、ダイクロイックフィルタ82a~82cの入射面との間で共役に構成される。従って、戻りソース光E2は、ダイクロイックフィルタ82a~82cから出射して蛍光体73a及び73bに入射するとき、漏れソース光E1の経路を逆向きに進む。また、蛍光F2は、蛍光体73a及び73bから出射してダイクロイックフィルタ82a~82cに入射するとき、蛍光F1及び漏れソース光E1の経路と同じ経路に沿って進む。図4では、説明のため、蛍光F1、漏れソース光E1、戻りソース光E2、及び蛍光F2を異なる位置に示しているが、実際には、これらの光は同一の経路に沿って進む。
【0055】
ソース光Eが蛍光体73aに入射したとき、蛍光体73aは黄色光を含む蛍光F1を発生する。黄色光を含む蛍光F1がダイクロイックフィルタ82aに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G1は黄色光を含み、照明光として黄色光が出射される。黄色光を含む蛍光F1がダイクロイックフィルタ82bに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G1は赤色光を含み、照明光として赤色光が出射される。また、蛍光体73aで吸収されずに蛍光体73aを透過した漏れソース光E1は、ダイクロイックフィルタ82a及び82bにより反射されて戻りソース光E2となり、再び蛍光体73aに入射する。蛍光体73aに入射した戻りソース光E2のうち、蛍光体73aで吸収された部分から、蛍光体73aは黄色光を含む蛍光F2を発生する。蛍光F1の場合と同様に、黄色光を含む蛍光F2がダイクロイックフィルタ82aに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G2は黄色光を含み、照明光として黄色光が出射される。また、黄色光を含む蛍光F2がダイクロイックフィルタ82bに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G2は赤色光を含み、照明光として赤色光が出射される。また、蛍光体73aに入射した戻りソース光E2のうち、蛍光体73aで吸収されない部分は、未使用のソース光E3として蛍光体ホイール70から出射する。
【0056】
ソース光Eが蛍光体73bに入射したとき、蛍光体73bは緑色光を含む蛍光F1を発生する。緑色光を含む蛍光F1がダイクロイックフィルタ82cに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G1は緑色光を含み、照明光として緑色光が出射される。蛍光体73bで吸収されずに蛍光体73bを透過した漏れソース光E1は、ダイクロイックフィルタ82cにより反射されて戻りソース光E2となり、再び蛍光体73bに入射する。蛍光体73bに入射した戻りソース光E2のうち、蛍光体73bで吸収された部分から、蛍光体73bは緑色光を含む蛍光F2を発生する。蛍光F1の場合と同様に、緑色光を含む蛍光F2がダイクロイックフィルタ82cに入射するとき、フィルタリングされた色成分の光G2は緑色光を含み、照明光として緑色光が出射される。また、蛍光体73bに入射した戻りソース光E2のうち、蛍光体73bで吸収されない部分は、未使用のソース光E3として蛍光体ホイール70から出射する。
【0057】
ソース光Eが拡散膜73cに入射したとき、拡散されたソース光Eが透過窓W2に入射して透過し、照明光として青色光が出射される。
【0058】
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態に係る蛍光体ホイール70によれば、ダイクロイックフィルタ72及び82a~82cを備えたことにより、図4に示すように、蛍光体73a及び73bによって吸収されなかったソース光を再び蛍光体73a及び73bに入射させ、ソース光から蛍光への変換効率を向上することができる。従って、蛍光体ホイール70を備えた光源装置10及び投写型映像表示装置100を従来よりも高効率で動作させることができる。
【0059】
また、一般に、投写型映像表示装置が、蛍光成分光のための光源とは別に、非蛍光成分光のための光源を備える場合、非蛍光成分光の経路に拡散板を設けることは比較的に容易である。一方、蛍光成分光及び非蛍光成分光が共通の光源から発生し、途中で分岐することなく共通の経路に沿って進む場合、蛍光成分光に影響することなく、非蛍光成分光の経路に拡散板を設けることは困難である。しかしながら、第1の実施形態に係る蛍光体ホイール70は、基板71に形成された拡散膜73cを備えたことにより、所望の色成分の光(青色光)を他の色成分の光(黄色光、赤色光、及び緑色光)に影響することなく拡散することができる。
【0060】
また、第1の実施形態に係る蛍光体ホイール70によれば、基板71の表面における所定の角度幅の領域に蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cをそれぞれ形成したことにより、蛍光成分光及び非蛍光成分光が共通の光源から発生して共通の経路に沿って進む場合であっても、蛍光のフィルタリングのためのホイール装置を別途に設ける必要がない。これにより、光源装置及び投写型映像表示装置のサイズ及びコストを低減することができる。
【0061】
また、第1の実施形態に係る蛍光体ホイール70によれば、基板71の表面において回転軸74cから等しい半径r1の領域に蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cをそれぞれ塗布して形成したことにより、蛍光体ホイール70の重量バランスが均一化される。従って、回転時のバランスを容易に調整することができる。
【0062】
また、第1の実施形態に係る蛍光体ホイール70によれば、1つの基板71の上に蛍光体73a及び73b、拡散膜73c、ダイクロイックフィルタ82a~82c、及び透過窓W1及びW2が一体化されているので、高耐久性の蛍光体ホイール装置を提供することができる。
【0063】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係る蛍光体ホイール70Aの構成を示す平面図である。蛍光体ホイール70Aは、図1の蛍光体ホイール70の各構成要素に加えて、透過窓W2の上に形成された反射防止膜82dを備える。これにより、ソース光が透過窓W2を透過するときの損失を低減することができ、蛍光体ホイール70Aを備えた光源装置10及び投写型映像表示装置100をより高効率で動作させることができる。
【0064】
図6は、第1の実施形態の第2の変形例に係る蛍光体ホイール70Bの構成を示す平面図である。蛍光体ホイール70Bは、図1の拡散膜73cに代えて拡散膜73dを備え、さらに、透過窓W2の上に形成されたフィルタ82eを備える。拡散膜73dは、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料と、ソース光によって励起されてソース光の波長とは異なる波長を有する蛍光を発生する蛍光体との混合物により形成される。これにより、拡散膜73dは、入射したソース光を拡散するとともに、ソース光によって励起された蛍光を発生する。フィルタ82eは、拡散膜73dから出射された、拡散されたソース光と、励起された蛍光とを透過する。このフィルタ82eは、例えば、500nm以下の波長の光を透過し、500nmより大きい波長の光を反射する特性を有するダイクロイックフィルタであってもよい。ソース光と、拡散膜73dにおいてソース光によって励起された蛍光のうち、500nm以下の色成分の光とを透過することにより、光源装置10から照明光として出射される青色光の色度を変化させることができる。
【0065】
図7は、第1の実施形態の第3の変形例に係る蛍光体ホイール70Cの構成を示す平面図である。蛍光体ホイール70Cは、図2の透過窓W1の上に形成された拡散膜73cに代えて、透過窓W2の上に形成された拡散膜82fを備える。拡散膜は、透過窓W1及びW2のいずれの上に形成されてもよく、青色光を他の色成分の光に影響することなく拡散することができる。これにより、光源装置10及び投写型映像表示装置100の設計上の自由度を向上することができる。
【0066】
図8は、第1の実施形態の第4の変形例に係る蛍光体ホイール70Dの構成を示す側面図である。図9は、図8の蛍光体ホイール70Dの構成を示す平面図である。ダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2は、図2及び図3に示すように、蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cの内側に形成されてもよく、図8及び図9に示すように、蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cの外側に形成されてもよい(r1<r2)。
【0067】
また、蛍光体73a及び73b、及び拡散膜73cは、基板71において、図2及び図3に示すようにダイクロイックフィルタ72と同じ側に形成されてもよく、逆の側に形成されてもよい。
【0068】
(第1の実施形態のまとめ)
第1の実施形態に係る蛍光体ホイール装置、光源装置、及び投写型映像表示装置は、以下の構成を備える。
【0069】
第1の実施形態に係る蛍光体ホイール装置によれば、蛍光体ホイール70は、基板71、第1のダイクロイックフィルタ72、蛍光体73a及び73b、第1の透過窓W1、第2のダイクロイックフィルタ82a~82c、第2の透過窓W2、及び拡散膜73cを備える。基板71は、透明材料からなり、回転軸の周りに回転可能である。ダイクロイックフィルタ72は、基板71において、回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域に形成され、第1の波長を有する入射光を透過し、第1の波長とは異なる第2の波長を有する入射光を反射する。蛍光体73a及び73bは、基板71において、回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域のうち、回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成された蛍光体であって、第1の波長を有する入射光によって励起されて第2の波長を有する蛍光を発生する。第1の透過窓W1は、基板71において、回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域のうち、蛍光体73a及び73bの領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する。ダイクロイックフィルタ82a~82cは、基板71において、回転軸から第1の半径r1とは異なる第2の半径r2を有する円周を含む領域のうち、回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成され、第2の波長を有する入射光を透過し、第1の波長を有する入射光を反射する。第2の透過窓W2は、基板71において、第2の半径r2を有する円周を含む領域のうち、ダイクロイックフィルタ82a~82cとは別の領域に形成され、入射光を透過する。拡散膜73cは、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2の一方に形成され、入射光を拡散する。
【0070】
このように、ダイクロイックフィルタ72及び82a~82cを備えたことにより、蛍光体73a及び73bによって吸収されなかったソース光を再び蛍光体73a及び73bに入射させ、ソース光から蛍光への変換効率を向上することができる。従って、蛍光体ホイール70を備えた光源装置10及び投写型映像表示装置100を従来よりも高効率で動作させることができる。
【0071】
第1の実施形態に係る蛍光体ホイール装置によれば、拡散膜73cは、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料との混合物により形成されてもよい。また、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2のうち、拡散膜73cが形成されていない透過窓W2は、反射防止膜を有してもよい。
【0072】
これにより、非蛍光成分光の空間的な強度分布を、蛍光成分光の空間的な強度分布に合わせて均一化し、映像光のムラを低減することができる。
【0073】
第1の実施形態に係る蛍光体ホイール装置によれば、拡散膜73cは、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料と、第1の波長を有する入射光によって励起されて第1の波長とは異なる第3の波長を有する蛍光を発生する蛍光体との混合物により形成されてもよい。また、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2のうち、拡散膜73cが形成されていない透過窓W2は、第1及び第3の波長を有する入射光を透過するフィルタを有してもよい。
【0074】
これにより、蛍光体ホイール70を備えた光源装置10から照明光として出射される青色光の色度を変化させることができる。
【0075】
第1の実施形態に係る光源装置10は、上述の蛍光体ホイール70と、蛍光体ホイール70を回転させる駆動装置74と、第1の波長のソース光を発生する光源素子21とを備える。光源装置10はさらに、光源素子21から蛍光体73a及び73bに入射したソース光により励起された蛍光、又は、光源素子21から拡散膜73cに入射して拡散膜73cにより拡散されたソース光を、ダイクロイックフィルタ82a~82c又は第2の透過窓W2に入射させるように導く光学系とを備える。
【0076】
これにより、蛍光体ホイール70を備えた光源装置10を従来よりも高効率で動作させることができる。
【0077】
第1の実施形態に係る投写型映像表示装置100は、上述の光源装置10を備える。
【0078】
これにより、蛍光体ホイール70を備えた投写型映像表示装置100を従来よりも高効率で動作させることができる。
【0079】
[第2の実施形態]
以下、図10図17を参照して、第2の実施形態に係る投写型映像表示装置について説明する。以下では、主に、第1の実施形態に係る投写型映像表示装置との相違点について説明する。尚、第1の実施形態と同様の構成を有する部分には同一の符号を付し、その詳細な重複説明を省略する。
【0080】
(投写型映像表示装置100Eの概要)
図10は、第2の実施形態に係る投写型映像表示装置100Eの構成を示す概略図である。投写型映像表示装置100Eは、図1の光源装置10に代えて、光源装置10Eを備える。光源装置10Eは、図1の蛍光体ホイール70に代えて、蛍光体ホイール70E及びフィルタホイール80を備える。
【0081】
第1の実施形態は、1つの蛍光体ホイール70に蛍光体73a及び73bが形成されるとともに、蛍光の各色成分を取り出すダイクロイックフィルタ82a~82cが形成される場合を示し、これは、光学系を小型化するために有効な構成である。一方、第2の実施形態では、蛍光体を形成した蛍光体ホイール70Eとは別に、蛍光の各色成分を取り出すダイクロイックフィルタを形成したフィルタホイール80を設ける場合を示す。
【0082】
第2の実施形態では、蛍光体ホイール70E及びフィルタホイール80からなる組をまとめて「蛍光体ホイール装置」ともいう。
【0083】
(光源装置10Eの構成)
光源装置10Eは、光源20、コンデンサレンズ30、拡散板60、蛍光体ホイール70E、レンズ31、レンズ32、レンズ33、フィルタホイール80を備える。
【0084】
光源20から出射したソース光は、コンデンサレンズ30及び拡散板60を介して、蛍光体ホイール70Eに入射する。
【0085】
蛍光体ホイール70Eは、入射したソース光によって励起されて、ソース光の波長とは異なる波長を有する蛍光を発生する蛍光体を備える。蛍光体ホイール70Eはさらに、蛍光体の領域とは別の領域に形成され、入射したソース光を拡散する拡散膜を備える。蛍光体ホイール70Eの詳細は後述する。
【0086】
蛍光体ホイール70Eの蛍光体から出射した蛍光は、レンズ31及び32、ミラー61及び62、レンズ33を介して、フィルタホイール80に入射する。同様に、蛍光体ホイール70Eの拡散膜から出射したソース光は、レンズ31及び32、ミラー61及び62、レンズ33を介して、フィルタホイール80に入射する。
【0087】
フィルタホイール80は、入射した蛍光を透過し、入射したソース光を反射するダイクロイックフィルタを備える。フィルタホイール80はさらに、ダイクロイックフィルタとは別の領域に形成され、入射したソース光を透過する透過窓を備える。フィルタホイール80の詳細は後述する。
【0088】
フィルタホイール80のダイクロイックフィルタに入射した蛍光の各色成分が、ダイクロイックフィルタを透過して取り出される。蛍光体ホイール70Eの拡散膜から出射してフィルタホイール80に入射したソース光は、フィルタホイール80の透過窓を透過する。ダイクロイックフィルタを透過した各色成分の光(例えば、黄色光、赤色光、及び緑色光)及び透過窓を透過したソース光(すなわち青色光)は、光源装置10Eによって発生された照明光として照明光学系11に進む。
【0089】
以後、図10の照明光学系11、変調装置12、及び投写光学系13は、図1の対応する構成要素と同様に動作する。
【0090】
(蛍光体ホイール70Eの構成)
図11及び図12を参照して、蛍光体ホイール70Eの構成を説明する。図11は、図10の蛍光体ホイール70Eの構成を示す側面図である。図12は、図10の蛍光体ホイール70Eの構成を示す平面図である。図11は、図10と同じ方向から蛍光体ホイール70Eを見た場合の断面図を示す。図12は、図10の左側から蛍光体ホイール70Eを見た場合の平面図を示す。蛍光体ホイール70Eは、図2及び図3の蛍光体ホイール70からダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2を除去した構成を有する。
【0091】
(フィルタホイール80)
図13及び図14を参照して、フィルタホイール80の構成を説明する。図13は、図10のフィルタホイール80の構成を示す側面図である。図14は、図10のフィルタホイール80の構成を示す平面図である。図13は、図10と同じ方向からフィルタホイール80を見た場合の断面図を示す。図14は、図10の右側からフィルタホイール80を見た場合の平面図を示す。
【0092】
フィルタホイール80は、基板81、ダイクロイックフィルタ82a~82c、透過窓W2、反射防止膜83、及び駆動装置84を備える。
【0093】
基板81は、透明材料からなり、回転軸84c(後述)の周りに回転可能である。基板81は、例えば、可視光の全帯域にわたって高透過性を有するガラス基板で構成される。
【0094】
ダイクロイックフィルタ82a~82cは、基板81において、回転軸84cからみて所定の角度幅を有する領域に形成される。ダイクロイックフィルタ82a~82cは、蛍光の所定の色成分の光の波長を有する入射光を透過し、ソース光の波長を有する入射光を反射する。これにより、ダイクロイックフィルタ82a~82cは、蛍光体73a及び73bで発生した蛍光の所定の色成分の光を透過し、また、光源20から蛍光体ホイール70の蛍光体73a及び73bに入射し、蛍光に変換されることなく蛍光体73a及び73bを通過したソース光を反射する。
【0095】
透過窓W2は、基板81において、ダイクロイックフィルタ82a~82cとは別の領域に形成され、入射光を透過する。
【0096】
フィルタホイール80のダイクロイックフィルタ82a~82c及び透過窓W2は、実質的に、図2及び図3の対応する構成要素と同様に構成される。
【0097】
反射防止膜83は、ダイクロイックフィルタ82a~82cを透過した各色成分の光及び透過窓W2を透過したソース光を透過して、フィルタホイール80から出射させる。フィルタホイール80において、反射防止膜83は、ダイクロイックフィルタ82a~82cとは逆の側の面に形成される。例えば、フィルタホイール80において、蛍光体ホイール70Eから蛍光及びソース光が入射する側の面(すなわち、図13の右側の面)にダイクロイックフィルタ82a~82cを形成し、ダイクロイックフィルタ82a~82cを透過した各色成分の光及び透過窓W2を透過したソース光が出射する面(すなわち、図13の左側の面)に反射防止膜83を形成してもよい。
【0098】
駆動装置84は、投写型映像表示装置100Eの制御回路(図示せず)の制御下で、基板81を回転軸84cの周りに回転させる。駆動装置84は、モータ84a、取り付け具84b、及び回転軸84cを備える。基板81は、取り付け具84bを介してモータ84aに取り付けられる。取り付け具84bは、例えば、基板81をハブ及び抑え部材で挟み込んでネジで固定する。
【0099】
光源装置10Eは、蛍光体73aによって発生した黄色蛍光がダイクロイックフィルタ82a及び82bに入射し、かつ、蛍光体73bによって発生した緑色蛍光がダイクロイックフィルタ82cに入射し、かつ、拡散膜73cの拡散材料によって拡散されたソース光が透過窓W2に入射するように構成される。このため、第1の実施形態と同様に、よって、ダイクロイックフィルタ82a及び82bの角度幅の和は、蛍光体73aの領域の角度幅に等しくなるように設定される。また、ダイクロイックフィルタ82cの角度幅は、蛍光体73bの領域の角度幅に等しくなるように設定される。また、透過窓W2の角度幅は、拡散膜73cの領域(すなわち、透過窓W1の領域)の角度幅に等しくなるように設定される。さらに、蛍光体ホイール70E及びフィルタホイール80は、互いに予め決められた位相差を有して、互いに同じ回転数で同期して回転される。
【0100】
(ソース光及び蛍光が進む経路)
図15は、図10の蛍光体ホイール70E及びフィルタホイール80の近傍において励起光及び蛍光が進む経路を示す概略図である。図15は、図10の光源装置10Eのうち、蛍光体ホイール70E、フィルタホイール80、及び関連付けられた光学系を拡大して示す概念図である。
【0101】
図15の場合もまた、図4の場合と同様に、漏れソース光E1はダイクロイックフィルタ82a~82cによって反射されて戻りソース光E2となり、再び蛍光体73a及び73bに入射する。蛍光体73a及び73bに入射した戻りソース光E2のうち、蛍光体73a及び73bで吸収された部分から、蛍光体73a及び73bは蛍光F2を発生する。これにより、第1の実施形態の場合と同様に、蛍光体73a及び73bによって吸収されなかったソース光を再び蛍光体73a及び73bに入射させ、ソース光から蛍光への変換効率を向上することができる。
【0102】
(第2の実施形態の効果)
従来、蛍光をフィルタリングしてその色成分を取り出すフィルタホイール装置は、扇形形状のフィルタ板及び拡散板を配列して固定した構成を有するものが多く、コストが高く、また、十分に高い耐久性を実現することが困難であった。第2の実施形態に係る光源装置10Eによれば、蛍光体ホイール70Eに拡散膜73cを設けることで、フィルタホイール80に光拡散機能を設ける必要がないので、コストを低減し、耐久性を向上することができる。
【0103】
(第2の実施形態の変形例)
図16は、第2の実施形態の変形例に係る蛍光体ホイール70Fの構成を示す平面図である。図17は、第2の実施形態の変形例に係るフィルタホイール80Fの構成を示す平面図である。蛍光体ホイール70Fは、図11の蛍光体ホイール70Eの拡散膜73cを除去した構成を有する。フィルタホイール80Fは、図11のフィルタホイール80の各構成要素に加えて、透過窓W2の上に形成された拡散膜82fを備える。前述のように、拡散膜は、透過窓W1及びW2のいずれの上に形成されてもよく、青色光を他の色成分の光に影響することなく拡散することができる。これにより、光源装置10E及び投写型映像表示装置100Eの設計上の自由度を向上することができる。
【0104】
また、図5を参照して説明したように、図11のフィルタホイール80において、透過窓W2の上に形成された反射防止膜を備えてもよい。
【0105】
また、図6を参照して説明したように、図11の蛍光体ホイール70Eの拡散膜73cに代えて、バインダ、拡散材料、及び蛍光体の混合物により形成される拡散膜を備えてもよく、図11のフィルタホイール80において、透過窓W2の上に形成されたフィルタを備えてもよい。
【0106】
(第2の実施形態のまとめ)
第2の実施形態に係る蛍光体ホイール装置、光源装置、及び投写型映像表示装置は、以下の構成を備える。
【0107】
第2の実施形態に係る蛍光体ホイール装置は、第1の基板71、ダイクロイックフィルタ72、蛍光体73a及び73b、第1の透過窓W1、第2の基板81、ダイクロイックフィルタ82a~82c、第2の透過窓W2、及び拡散膜73cを備える。第1の基板71は、透明材料からなり、第1の回転軸の周りに回転可能である。ダイクロイックフィルタ72は、第1の基板71において、第1の回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域に形成され、第1の波長を有する入射光を透過し、第1の波長とは異なる第2の波長を有する入射光を反射する。蛍光体73a及び73bは、第1の基板71において、第1の回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域のうち、第1の回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成された蛍光体であって、第1の波長を有する入射光によって励起されて第2の波長を有する蛍光を発生する。第1の透過窓W1は、第1の基板71において、第1の回転軸から第1の半径r1を有する円周を含む領域のうち、蛍光体73a及び73bの領域とは別の領域に形成され、入射光を透過する。第2の基板81は、透明材料からなり、第2の回転軸の周りに回転可能である。ダイクロイックフィルタ82a~82cは、第2の基板81において、第2の回転軸からみて所定の角度幅を有する領域に形成され、第2の波長を有する入射光を透過し、第1の波長を有する入射光を反射する。第2の透過窓W2は、第2の基板81において、ダイクロイックフィルタ82a~82cとは別の領域に形成され、入射光を透過する。拡散膜73cは、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2の一方に形成され、入射光を拡散する。
【0108】
このように、ダイクロイックフィルタ72及び82a~82cを備えたことにより、蛍光体73a及び73bによって吸収されなかったソース光を再び蛍光体73a及び73bに入射させ、ソース光から蛍光への変換効率を向上することができる。従って、蛍光体ホイール70を備えた光源装置10E及び投写型映像表示装置100Eを従来よりも高効率で動作させることができる。
【0109】
第2の実施形態に係る蛍光体ホイール装置によれば、拡散膜73cは、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料との混合物により形成されてもよい。また、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2のうち、拡散膜73cが形成されていない透過窓W2は、反射防止膜を有してもよい。
【0110】
これにより、非蛍光成分光の空間的な強度分布を、蛍光成分光の空間的な強度分布に合わせて均一化し、映像光のムラを低減することができる。
【0111】
第2の実施形態に係る蛍光体ホイール装置によれば、拡散膜73cは、所定の屈折率を有する透明材料からなるバインダと、バインダの屈折率とは異なる屈折率を有する拡散材料と、第1の波長を有する入射光によって励起されて第1の波長とは異なる第3の波長を有する蛍光を発生する蛍光体との混合物により形成されてもよい。また、第1の透過窓W1及び第2の透過窓W2のうち、拡散膜73cが形成されていない透過窓W2は、第1及び第3の波長を有する入射光を透過するフィルタを有してもよい。
【0112】
これにより、蛍光体ホイール装置を備えた光源装置10Eから照明光として出射される青色光の色度を変化させることができる。
【0113】
第2の実施形態に係る光源装置10Eは、上述の蛍光体ホイール装置と、第1の基板71を回転させる駆動装置74と、第2の基板81を回転させる駆動装置84と、第1の波長のソース光を発生する光源素子21とを備える。第1の基板71及び第2の基板81は、光源素子21から蛍光体73a及び73bに入射したソース光により励起された蛍光、又は、光源素子21から拡散膜73cに入射して拡散膜73cにより拡散されたソース光が、ダイクロイックフィルタ82a~82c又は第2の透過窓W2に入射するように配置される。
【0114】
これにより、蛍光体ホイール装置を備えた光源装置10Eを従来よりも高効率で動作させることができる。
【0115】
第2の実施形態に係る投写型映像表示装置100Eは、上述の光源装置10Eを備える。
【0116】
これにより、蛍光体ホイール装置を備えた投写型映像表示装置100Eを従来よりも高効率で動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示の態様に係る蛍光体ホイール装置は、光源装置及び投写型映像表示装置に適用可能である。
【0118】
本開示の一例として、投写型映像表示装置の光源装置を参照して説明したが、本開示の態様に係る光源装置はこれに限定されるものではなく、例えばヘッドランプなどの照明装置であってもよい。
【符号の説明】
【0119】
10,10E…光源装置、
20…光源、
70,70A~70F…蛍光体ホイール、
71…基板、
72…ダイクロイックフィルタ、
73a,73b…蛍光体、
73c…拡散膜、
73d…拡散膜、
80,80D…フィルタホイール、
81…基板、
82a~82c…ダイクロイックフィルタ、
82d…反射防止膜、
82e…フィルタ、
82f…拡散膜、
83…反射防止膜、
W1,W2…透過窓、
100,100E…投写型映像表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17