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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】定温容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B65D81/38 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567701
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048881
(87)【国際公開番号】W WO2021132619
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019237115
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 優大
(72)【発明者】
【氏名】小島 真弥
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊明
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194559(JP,A)
【文献】特開2006-027625(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186345(WO,A1)
【文献】特表2018-502261(JP,A)
【文献】特開2008-208844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側外被材と内側外被材との間に芯材を配置し、前記芯材を減圧状態で密封して形成した断熱容器を備える定温容器であって、
前記断熱容器の前記外側外被材は箱型に形成され、前記断熱容器の前記内側外被材は前記外側外被材の各側面および底面に対して所定間隙を有して配置され、前記箱型の前記断熱容器の一面が解放されて、前記内側外被材の各側面により前記断熱容器の開口が形成され、前記断熱容器の底面側の前記所定間隙に、前記芯材として連続気泡発泡体からなる有機物の第1芯材が配置され、前記断熱容器の各側面側の前記所定間隙に、前記芯材として前記第1芯材と、無機物である第2芯材とが組み合わせて配置され、前記第2芯材は前記外側外被材の各側面に対向し、前記内側外被材に接触させて環状に形成され、前記第2芯材は前記断熱容器の前記開口側に寄せて配置されていることを特徴とする定温容器。
【請求項2】
前記第2芯材は、真空度100Pa以下における熱伝導率が前記第1芯材よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定温容器。
【請求項3】
前記第2芯材は無機繊維を有し、
前記無機繊維は前記断熱容器の壁部の厚さ方向に対して垂直に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定温容器。
【請求項4】
前記第2芯材の周縁は、前記連続気泡発泡体からなる有機物が含浸していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の定温容器。
【請求項5】
前記外側外被材の底面に前記所定間隙内を真空引きするための排気孔を有する補強板が配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の定温容器。
【請求項6】
前記外側外被材の底面に気体吸着剤及び/又は水分吸着剤が配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の定温容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定温容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品などの収納物を一定時間、一定の温度域で維持する容器として、定温容器が用いられる。定温容器には、断熱性を向上させるべく、真空断熱容器が用いられる。この種の真空断熱容器は、アルミニウム層を蒸着やラミネートで形成した外被材により、芯材を減圧密封して作られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-030790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の真空断熱容器では、成形性に難があると共に、保冷性能に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、断熱容器の成形性、および、保冷性能を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書には、2019年12月26日に出願された日本国特許出願・特願2019-237115の全ての内容が含まれる。
前記目的を達成するため、本発明は、外側外被材と内側外被材との間に芯材を配置し、前記芯材を減圧状態で密封して形成された断熱容器を備えた定温容器であって、前記芯材は、連続気泡発泡体からなる有機物の第1芯材と、真空度100Pa以下における熱伝導率が前記第1芯材よりも小さい第2芯材とを備えることを特徴とする。
【0007】
これによれば、芯材に、真空度100Pa以下における熱伝導率が、有機物の第1芯材よりも小さい第2芯材を採用することで、第1芯材の特徴である成形性を損なうことなく、定温容器の保冷性能を改善でき、堅牢性を維持できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱容器の成形性を改善できると共に、定温容器の保冷性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る定温容器の分解斜視図
図2図2は、定温容器の長手方向における縦断面図
図3図3は、本体容器の斜視図
図4図4は、収納箱と固定体との分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、外側外被材と内側外被材との間に芯材を配置し、前記芯材を減圧状態で密封して形成した断熱容器を備える定温容器であって、前記断熱容器の前記外側外被材は箱型に形成され、前記断熱容器の前記内側外被材は前記外側外被材の各側面および底面に対して所定間隙を有して配置され、前記箱型の前記断熱容器の一面が解放されて、前記内側外被材の各側面により前記断熱容器の開口が形成され、前記断熱容器の底面側の前記所定間隙に、前記芯材として連続気泡発泡体からなる有機物の第1芯材が配置され、前記断熱容器の各側面側の前記所定間隙に、前記芯材として前記第1芯材と、無機物である第2芯材とが組み合わせて配置され、前記第2芯材は前記外側外被材の各側面に対向し、前記内側外被材に接触させて環状に形成され、前記第2芯材は前記断熱容器の前記開口側に寄せて配置されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、前記第2芯材は、無機物である。
真空度100Pa以下という実用範囲では、有機物の第1芯材よりも熱伝導率が大きくなる無機物もあるが、第2の発明では、第2芯材に、真空度100Pa以下における熱伝導率が、有機物の第1芯材よりも小さい無機物を採用することにより、第1芯材の特徴である成形性を損なうことなく、定温容器の保冷性能を改善でき、堅牢性を維持できる。
【0012】
第3の発明は、前記第2芯材は無機繊維を有し、前記無機繊維は前記断熱容器の壁部の厚さ方向に対して垂直に配置されている。
これによれば、断熱容器の厚さ方向に、芯材を伝い熱が伝達される場合に、熱の伝達経路が厚さよりも長くなり、熱の伝達が抑制され、定温容器の保温性が向上する。
【0013】
第4の発明は、前記第2芯材の周縁は、前記連続気泡発泡体からなる有機物が含浸していることである。
これによれば、無機物からなる芯材と有機物からなる芯材との境界にすき間が生じにくくなり、芯材の厚みが薄い部分の発生を低減し、定温容器の保温性が向上する。
【0014】
第5の発明は、前記第2芯材は、前記断熱容器の壁部上方に位置していることである。
これによれば、芯材の開口側の剛性が、無機質からなる芯材によって向上し、断熱容器の開口の成形精度が向上する。開口と開口を閉じる蓋との間にすき間が生じにくくなり、断熱容器の保温性が向上する。
【0015】
第6の発明は、前記第2芯材は、前記断熱容器の壁部の内側に位置していること。
第1芯材に例えば連通ウレタンを採用した場合、連通ウレタンの熱伝導率は、室温よりも低い温度でより小さくなる傾向にある。これによれば、室温付近または室温より高い温度で輸送される断熱容器であれば、壁部の内側に熱伝導率の温度依存性が小さい無機物からなる芯材を配置して保温性能を向上できる。
【0016】
第7の発明は、前記第2芯材は、前記断熱容器の壁部の外側に位置していること。
第1芯材に例えば連通ウレタンを採用した場合、連通ウレタンの熱伝導率は、室温よりも低い温度でより小さくなる傾向にある。これによれば、2℃~8℃の温度帯や、室温よりも低い温度で輸送される断熱容器であれば、壁部の外側に無機物からなる芯材を配置して保温性能を向上できる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る定温容器1と容器ケース2の分解斜視図である。図2は、定温容器1の長手方向における縦断面図である。
図1に示すように、定温容器1は、容器ケース2に収めて使用される。
図1および図2に示すように、定温容器1は、本体容器である真空断熱容器(断熱容器)3と、本体蓋体である真空断熱蓋体4と、真空断熱容器3に収容される収納箱5とを備えて、構成されている。
【0018】
図3に示すように、真空断熱容器3は、外表面が、筐体である本体保護ケース32により覆われる。本体保護ケース32は、例えば発泡スチロールといった断熱性を有する樹脂で形成されてもよい。また、衝撃吸収性のある樹脂により形成することで、真空断熱容器3への衝撃が低減される。
【0019】
図2に示すように、真空断熱容器3は、図中太線で示される、外側外被材34を備えている。外側外被材34は、上面が開放された箱型に形成されており、外側外被材34の内側には、この外側外被材34の各側面および底面に対して所定間隙を有する寸法に形成された、図中太線で示される、内側外被材33が配置されている。
【0020】
外側外被材34および内側外被材33の間には、図中斜線で示される、芯材35が収容されている。芯材35を収容した状態で、外側外被材34および内側外被材33の間の外周縁が密封される。そして、外側外被材34および内側外被材33の間の空気を排出することで、芯材35が減圧密封され、真空断熱機能を備えた真空断熱容器3が形成される。真空断熱容器3の内部には、収納空間Sが設けられる。
外側外被材34および内側外被材33は、特に限定するものではないが、ガスバリア性に優れた樹脂材料で成型されており、例えば、ポリプロピレンやエチレンビニルアルコール共重合体等の真空中でガス放出の少ない樹脂が用いられる。
【0021】
外側外被材34の底部と芯材35との間には、気体吸着剤36と、水分吸着剤37と、中央に孔を有する補強板38が配置されている。真空断熱容器3は、各側面に比較して底面からの熱放出が少ないことから、真空断熱容器3の底面に気体吸着剤36、水分吸着剤37、補強板38を配置しても、断熱効果に支障はない。
外側外被材34の補強板38の孔に対応する位置には、真空断熱容器3内の空気を真空引きするための排気孔が設けられており、この排気孔は真空断熱容器3の内部を真空引きした後に、図示しない封止材により封止される。なお、補強板38を設けているので、真空引きする際や、封止材により排気口を封止する際に、排気口まわりの変形を抑え、封止材を支持することができる。
【0022】
真空断熱蓋体4は、真空断熱容器3の開口部を閉塞する部材であり、本体保護ケース32の外形と同様の外形を有する蓋体外側保護ケース42を備えている。蓋体外側保護ケース42の下面周縁部には、下方に向けて延在する上部接合部47が蓋体外側保護ケース42の周囲全体に亘って形成されている。上部接合部47の下面には、接合凹部46が形成されている。
蓋体外側保護ケース42の下面には、上部接合部47により囲まれた凹状の外側収容部42Aが形成されている。
蓋体外側保護ケース42の下方には、蓋体内側保護ケース43が配置されている。蓋体内側保護ケース43の上面周縁部には、上方に向けて延在する下部接合部48が蓋体内側保護ケース43の周囲全体に亘って形成されている。下部接合部48の上面には、接合突起49が形成されている。
蓋体内側保護ケース43の上面には、下部接合部48により囲まれた凹状の内側収容部43Aが形成されている。
【0023】
蓋体外側保護ケース42と蓋体内側保護ケース43とは、上部接合部47の接合凹部46と下部接合部48の接合突起49とを互いに接合させることで一体に形成される。この状態で、蓋体外側保護ケース42の外側収容部42Aと、蓋体内側保護ケース43の内側収容部43Aとにより、所定の内部空間Iが形成される。
この内部空間Iには、真空断熱板41が収容されている。真空断熱板41の四隅には、略L字状の固定部材44が取り付けられている。真空断熱板41を内部空間Iに収容した状態で、固定部材44が内部空間Iの四隅に当接することで、真空断熱板41を内部空間Iの内部で動かないように固定することが可能となる。
真空断熱板41は、略L字状の固定部材44に限らず、例えば、真空断熱板41の各辺に沿って設けられた直線状の固定部材や、接着剤等を用いて蓋体外側保護ケース42、及び蓋体内側保護ケース43に固定してもよい。
【0024】
真空断熱板41は、真空断熱容器3と同一の材料で形成されているが、真空断熱板41として、例えば、ガスバリア性のある樹脂フィルムにより、芯材を封入した真空断熱材を用いるようにしてもよい。
蓋体外側保護ケース42および蓋体内側保護ケース43は、本体保護ケース32と同一の材料で形成されている。
【0025】
蓋体内側保護ケース43の下面外周近傍には、下方に突出する凸状部45が形成されている。凸状部45は、真空断熱蓋体4を真空断熱容器3に装着して、真空断熱容器3の上面を閉塞した状態で、その外側面が真空断熱容器3の内側面に当接する。凸状部45を設けることで、真空断熱容器3と真空断熱蓋体4との間における熱侵入経路を長く設定でき、定温容器1の断熱性能を向上できる。
【0026】
図4は、収納箱5と支持部材6との分解斜視図である。なお、図4では、ロガーケース59を省略して示している。
図1に示すように、真空断熱容器3の収納空間Sには、収納箱5が着脱可能に収容されている。収納箱5は、図4に示すように、箱本体51と、箱蓋体52とを備えている。箱本体51は、上面が開放された箱型の外箱53を備えている。外箱53は、長方形の底板53A、この底板53Aの四辺から立設される4枚の側板53Bを備えている。各側板53Bの上端縁には、外箱53の内側に向かって所定の幅寸法で延在する上板53Cが形成されており、各上板53Cの内側縁には、下方に延在する折り返し板53Dが一体に形成されている。折り返し板53Dは、各側板53Bの途中に相当する位置まで形成されている。
【0027】
外箱53の内側には、上面が開放された箱型の内箱54が収容されている。内箱54は折り返し板53Dの内面に当接するように形成されている。
外箱53と、内箱54とは、いずれも可塑性を有する薄板状樹脂材料を折り曲げることで箱型に成型されている。樹脂材料としては、例えば、透明なポリプロピレンやABS樹脂などが用いられる。
【0028】
外箱53の各側板53Bと折り返し板53Dとの間、および底板53Aの上面には、それぞれ平板状の蓄冷剤57が収容されている。底板53Aに配置される蓄冷剤57は、底板53Aのほぼ全面に亘って配置されており、側板53Bに配置される蓄冷剤57の下端は、底板53Aに配置される蓄冷剤57に接触している。
また、蓄冷剤57は、外被57Aの周縁を折り曲げた状態で、箱本体51および箱蓋体52に収納される。外被57Aは、隣接する蓄冷剤57間に位置しないように折り曲げられる。これにより、蓄冷剤57間を密にできる。
すなわち、箱本体51の底部と壁部とには、互いに熱的に隙間なく蓄冷剤57が配置されている。これによって、収納箱5の外部からの伝熱を抑制し、収納箱5の内部を所定温度域内に維持することができる。また、各折り返し板53Dは、各側板53Bの途中に相当する位置まで形成されているため、各側板53Bと折り返し板53Dとの間に蓄冷剤57を収容することが容易である。
【0029】
蓄冷剤57を収容した後、外箱53の内側に内箱54を収納することにより、各蓄冷剤57は、外箱53と内箱54との間に保持される。これによって、板状の各蓄冷剤57を確実に支持固定することができ、定温容器1の運搬時においても各蓄冷剤57同士が離間することを抑制できる。箱本体51の内部、すなわち内箱54の内部には、医薬品などの収納物を収納する収納空間Vが設けられている。
【0030】
箱蓋体52は、箱本体51の開口部を閉塞して収納箱5の天面を構成する部材である。この箱蓋体52は、箱本体51と同一の樹脂材料を折り曲げることにより、薄い箱型に形成されており、箱蓋体52の外形は、箱本体51の上部開口と略同一の形状となるように形成されている。
【0031】
箱蓋体52の長手方向に位置する両側下縁には、下方に向かって延在する板状(フラップ状)の差し込み部58がそれぞれ形成されている。差し込み部58は、箱蓋体52の幅寸法と同一の幅寸法となるように形成されている。
そして、箱蓋体52により箱本体51の上部開口を閉塞する場合には、各差し込み部58を各折り返し板53Dと、内箱54との間に差し込むことで、箱蓋体52を固定するように構成されている。
【0032】
ここで、箱蓋体52を箱本体51の上部開口と略同一の形状に形成するとともに、差し込み部58の幅寸法を箱蓋体52の幅寸法と同一の幅寸法となるように形成している。このため、折り返し板53Dと、内箱54との間に差し込み部58を差し込んだ状態で、差し込み部58が箱本体51の上部開口の幅に位置することになり、箱本体51に対して箱蓋体52を適正に位置決めすることが可能となる。箱蓋体52の内部には、蓄冷剤57が収容されている。
【0033】
蓄冷剤57は、収納箱5の内部を、例えば、2~8℃程度の常温よりも低い温度に保つものである。本実施形態の蓄冷剤57は、物質の相変化、相転移に伴う転移熱を利用することが可能な相変化材料57Bを備え、このような転移熱を熱エネルギーとして蓄えて、潜熱蓄熱材として利用するものである。蓄冷剤57は、相変化材料57Bを樹脂の外皮57Aで覆うことで形成されている。
【0034】
蓄冷剤57は、冷却されることにより、液体、またはゲルから固体へと相変化材料57Bが相変化し、熱を吸収してその温度が上昇することにより、固体から液体、またはゲルへと相変化材料57Bが相変化する。
すなわち、蓄冷剤57は、相変化材料57Bが固体に相変化することで冷熱を蓄えた状態となって、熱を吸収することが可能となる。
【0035】
収納箱5の内部における角部には、各種センサを備えたデータロガーを収容するロガーケース59(図1参照。)が設けられている。データロガーとしては、例えば、温度を計測可能なものを用いることができる。また、位置や、加速度を計測し、それらの情報を送信可能としたものを用いることができる。
【0036】
蓄冷剤57には、相変化材料57Bとして、各種パラフィンに添加物を適宜調合して、相転移が起きる凝固点、融解点を所定温度になるように調整したものが用いられている。このような相変化材料57Bを用いることにより、UHF帯およびSHF帯の電波の減衰を水に比べて非常に小さくすることができる。
このため、携帯電話用の通信回線やRFIDを用いて、効率的に収納箱5内から定温容器1の外に情報を送信できる。
【0037】
真空断熱容器3の収納空間Sの底部には支持部材6が収容されている。支持部材6は、略平板状に形成されており、支持部材6の上面には、収納箱5の外形と略同一の形状に形成された支持凹部61が形成されている。支持部材6は、例えば、発泡スチロールなどの断熱材料から形成されている。
【0038】
収納箱5は、支持部材6の支持凹部61に載置することで真空断熱容器3の内部に収容され、支持固定される。この状態で、収納箱5の外側面は、真空断熱容器3の内側面に対して所定の隙間G1を空けて配置される。同様に、箱蓋体52は、真空断熱蓋体4の下面および凸状部45との間に所定の隙間G2を空けて配置される。
また、収納箱5の底板53Aと間隙凹部62との間には、隙間G3が設けられる。さらに、間隙凹部62には、複数の貫通孔63が設けられている。
【0039】
定温容器1は、収納物を運搬するときに、定温容器1を持ち運びやすいように容器ケース2に収容される。この容器ケース2は、上面が開放された箱型のケース本体22と、ケース本体22の上部一側縁に連結されるケース蓋体21とを備えている。
ケース蓋体21と、ケース本体22とは、ケースファスナ23によって閉じることが可能となっている。ケースファスナ23は、ケースファスナ23を開閉操作するための取手24が設けられている。
【0040】
ケース本体22の前面には、複数のケース蓋固定具25が設けられている。これらのケース蓋固定具25には、ケース蓋体21の天面に設けられた複数の固定ベルトが連結され、これによって、容器ケース2、および定温容器1をより確実に閉塞状態に保持することが可能となっている。
容器ケース2の各側面には、それぞれハンドル26が設けられ、また、両側面に連結される運搬ベルト27が設けられている。これらのハンドル26、および運搬ベルト27によって、容器ケース2、および定温容器1の運搬が容易となっている。容器ケース2の前面には、複数の書類収納部28が設けられている。
【0041】
本実施の形態によれば、上述した芯材35が、外側外被材34および内側外被材33の間に収容され、この芯材35は、有機物の第1芯材31と、無機物の第2芯材131と、を組み合わせることにより構成されている。
無機物の第2芯材131は、真空断熱容器3を上方から見たとき、有機物の第1芯材31の内周側に対し、環状に配置されている。
有機物の第1芯材31は、特に限定するものではない。第1芯材31は、例えば、ポリオールやイソシアネートからなり、連続気泡構造を有するウレタンフォームなどの連通ウレタン材料を用いることができる。
【0042】
無機物の第2芯材131には、真空度100Pa以下における熱伝導率が、有機物の第1芯材31よりも小さい無機物が採用されている。例えば、ガラス繊維からなる成型体、ヒュームドシリカからなる成型体など、真空断熱材の芯材として利用される無機物の材料を用いることができる。真空度100Pa以下という実用範囲で、有機物の第1芯材31よりも熱伝導率が大きくなる無機物もあるが、本実施の形態によれば、第2芯材131に、真空度100Pa以下における熱伝導率が、有機物の第1芯材31よりも小さい無機物が採用されているため、有機物の第1芯材31の特徴である成形性を損なうことなく、定温容器1の保冷性能を改善でき、堅牢性を維持できる。
連続気泡発泡体の有機物の第1芯材31と、有機物よりも比熱の大きい無機物の第2芯材131とを、組み合わせて芯材35に用いているので、連続気泡発泡体の有機物のみで芯材35を構成した場合に比べて、真空断熱容器3の熱容量が増大し、定温容器1の保温性能を向上できる。
【0043】
本実施の形態によれば、外側外被材34の補強板38(図2参照。)に設けた不図示の排気孔に、不図示の真空ポンプが接続される。
そして、芯材35を収容した状態で、外側外被材34および内側外被材33の間の外周縁が密封され、不図示の真空ポンプを通じて、外側外被材34および内側外被材33の間が、真空度100Pa以下という実用範囲の真空度で、例えば、真空度10Paで吸引され、芯材35が減圧密封される。
芯材35に熱伝導率が低い無機物からなる第2芯材131が含まれることで、断熱性能が向上し、定温容器1の保温性能を向上できる。
【0044】
本実施の形態によれば、第2芯材131は、不図示の無機繊維を有している。
不図示の無機繊維は、真空断熱容器3の壁部132(図3参照。)の厚さ方向に対して、垂直(図2では縦方向である。)に配置されている。
これによれば、真空断熱容器3の厚さ方向に、芯材35を伝い熱が伝達される場合に、無機繊維を介するため、熱の伝達経路が厚さよりも長くなり、熱の伝達が抑制されて、定温容器1の保温性を向上できる。
【0045】
本実施の形態によれば、第2芯材131の周縁部には、連続気泡発泡体からなる有機物が含浸している。したがって、無機物からなる第2芯材131と、有機物からなる第1芯材31との境界にすき間が生じにくくなる。よって、芯材35の厚みが極端に薄い部分の発生が低減し、定温容器1の保温性を向上できる。
【0046】
本実施の形態によれば、第2芯材131は、真空断熱容器3の少なくとも壁部132の上方、すなわち壁部132の開口寄りに位置している。したがって、芯材35の開口寄りの剛性が、無機質からなる第2芯材131によって向上し、真空断熱容器3の開口の成形精度を向上できる。これにより、開口と開口を閉じる真空断熱蓋体4との間にすき間が生じにくくなり、真空断熱容器3の保温性を向上できる。
【0047】
本実施の形態によれば、第2芯材131は、真空断熱容器3の壁部132の内側寄りに位置している。第1芯材31に例えば連通ウレタンを採用した場合、連通ウレタンの熱伝導率は、室温よりも低い温度でより小さくなる。室温付近または室温より高い温度で輸送される真空断熱容器3であれば、壁部132の内側寄りに熱伝導率の温度依存性が小さい無機物からなる第2芯材131を配置することにより、保温性能を向上できる。
これに対し、2℃~8℃の温度帯や、室温よりも低い温度で輸送される真空断熱容器3であれば、壁部132の外側寄りに無機物からなる第2芯材131を配置してもよい。
これにより、保温性能を向上できる。
【0048】
本実施の形態によれば、無機物の第2芯材131の密度は、大気圧において、例えば、150kg/m以上である。これにより、真空断熱容器3内が減圧されるときの、芯材35の寸法変化が減少し、芯材35の厚みが極端に薄いなどの部分の発生を低減し、真空断熱容器3の保温性を向上できる。
【0049】
本実施の形態によれば、外側外被材34および内側外被材33は樹脂により構成されている。外被材が樹脂により構成されるため、金属層を備える場合とくらべて、外被材を伝って出入りする熱量が低減し、真空断熱容器3の保温性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る定温容器は、一定温度域で保冷保温され輸送時の品質管理を必要とする物品を収納する定温容器として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 定温容器
3 真空断熱容器(断熱容器)
31 第1芯材
33 内側外被材
34 外側外被材
35 芯材
131 第2芯材
132 壁部
図1
図2
図3
図4