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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】青果物の鮮度保持用収納袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20230616BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B65D85/50 120
B65D81/26 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017194211
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019064720
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日時:平成29年4月5日 展示会名:関西農業ワールド2017 開催場所:インテックス大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】508219715
【氏名又は名称】株式会社ベルグリーンワイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】河井 兼次
(72)【発明者】
【氏名】魚住 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 佑基
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194383(JP,A)
【文献】特開2010-167766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0085066(US,A1)
【文献】特開2013-047314(JP,A)
【文献】特開2006-328225(JP,A)
【文献】特開2010-126539(JP,A)
【文献】特開2012-076466(JP,A)
【文献】特開2016-113172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
B65D 65/40
B65D 81/26
B65D 85/50
B65D 30/00-33/38
C08L 67/00-67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムによって形成された青果物の鮮度保持用収納袋であって、
前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に溶融押出ししたポリエチレンテレフタレートを前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより厚くなるように積層させた積層ポリエチレンテレフタレートフィルム、あるいは、ポリ乳酸によって形成された厚さ20~40μmのフィルムであり、
前記合成樹脂フィルムの酸素透過度が、100cc/(m・24hr・atm)以上1,000cc/(m・24hr・atm)未満であり、かつ、
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が、15g/(m・24hr・atm)以上500g/(m・24hr・atm)未満であるとともに、
前記合成樹脂フィルムの縦方向および横方向の引張弾性率が、いずれも3,000Mpa以上4,500Mpa未満であり、かつ、
内面に、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型、脂肪酸グリセリンエステル型を併用してなる非イオン性の界面活性剤からなる防曇剤がコーティングされており、なおかつ、
上部を開口した長方形の袋状に形成されており、幅方向が構成材料である前記合成樹脂フィルムの長手方向となっており、高さ方向が構成材料である前記合成樹脂フィルムの幅方向となっているとともに、高さ方向の引張弾性率が幅方向の引張弾性率よりも高くなっており、
長イモ、ブドウ、サツマイモ、カットレタス、ホウレンソウのいずれかを収納した状態で、含気量を187.4cm以下に調整可能であることを特徴とする青果物の鮮度保持用収納袋。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムの縦方向および横方向の引張伸度が、いずれも10%以上200%未満であることを特徴とする請求項1に記載の青果物の鮮度保持用収納袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルムによって形成された青果物の鮮度保持用の収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
葉菜類、果菜類、根菜類、フルーツ、菌茸類等の各種の青果物を収納するための収納袋として、合成樹脂製のフィルムによって形成されたパウチ、ガゼット袋、三方袋、二方袋、合掌袋等の収納袋が知られている。また、そのような合成樹脂製のフィルムからなる収納袋は、2枚の合成樹脂フィルムを重ねて(あるいは単一の合成樹脂フィルムを折り畳んで)外周をヒートシール(熱接着)することによって形成されることが多い。そのため、ヒートシールの容易性(比較的に低い温度でヒートシールできること)の観点から、合成樹脂フィルムからなる収納袋の構成材料として、ポリオレフィン系の樹脂からなるフィルムが広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
ところが、ポリオレフィン系の樹脂からなるフィルムは、水蒸気透過率が低いため、水蒸気の排出量が大きい青果物を収納して密封すると、フィルムの内面に水滴が付着して曇り、外観が低下してしまう。そのため、水蒸気の排出量が大きい青果物を収納するための収納袋として、構成材料であるポリオレフィン系樹脂フィルムに孔やスリットを設けて水蒸気透過度を調整した収納袋が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-284654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き従来のポリオレフィン系樹脂フィルムからなる収納袋は、長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物を収納してヒートシール等の方法によって密封すると、ポリオレフィン系樹脂フィルムの柔軟性が高いことに起因して、内部に多くの空気が入り込んでしまい、収納された青果物の鮮度保持に悪影響が及んでしまうことがある。加えて、ポリオレフィン系樹脂フィルムに水蒸気透過度を調整するための孔やスリットを設けた収納袋は、製袋工程の途中でポリオレフィン系樹脂フィルムに均一な孔やスリットを設けなければならないため、製造にコストおよび手間が掛かる、という不具合がある。また、孔やスリットを設けたことにより、酸素透過度も必要以上に高くなってしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の青果物の鮮度保持用の収納袋が有する問題点を解消し、長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物を収納して密封する場合でも、内部に空気が入りにくく、鮮度保持効果に優れているとともに、製造が容易な青果物の鮮度保持用収納袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、合成樹脂フィルムによって形成された青果物の鮮度保持用収納袋であって、前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に溶融押出ししたポリエチレンテレフタレートを前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより厚くなるように積層させた積層ポリエチレンテレフタレートフィルム、あるいは、ポリ乳酸によって形成された厚さ20~40μmのフィルムであり、前記合成樹脂フィルムの酸素透過度が、100cc/(m・24hr・atm)以上1,000cc/(m・24hr・atm)未満であり、かつ、前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が、15g/(m・24hr・atm)以上500g/(m・24hr・atm)未満であるとともに、前記合成樹脂フィルムの縦方向および横方向の引張弾性率が、いずれも3,000Mpa以上4,500Mpa未満であり、かつ、内面に、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型、脂肪酸グリセリンエステル型を併用してなる非イオン性の界面活性剤からなる防曇剤がコーティングされており、なおかつ、上部を開口した長方形の袋状に形成されており、幅方向が構成材料である前記合成樹脂フィルムの長手方向となっており、高さ方向が構成材料である前記合成樹脂フィルムの幅方向となっているとともに、高さ方向の引張弾性率が幅方向の引張弾性率よりも高くなっており、長イモ、ブドウ、サツマイモ、カットレタス、ホウレンソウのいずれかを収納した状態で、含気量を187.4cm以下に調整可能であることを特徴とするものである。なお、合成樹脂フィルムの縦方向(MD)とは、構成材料である長尺な合成樹脂フィルムの長手方向のことであり、合成樹脂フィルムの横方向(TD)とは、構成材料である長尺な合成樹脂フィルムの幅方向のことである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記合成樹脂フィルムの縦方向および横方向の引張伸度が、いずれも10%以上200%未満であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る青果物の鮮度保持用収納袋は、長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物を収納して密封する場合でも、内部に空気が入りにくいため、鮮度保持効果に優れている。また、製造時に、製袋工程の途中で構成材料である合成樹脂フィルムに均一な孔やスリット等を設ける必要がないため、安価に、かつ、容易に製造することができ、適度な酸素透過度も保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る青果物の鮮度保持用収納袋(以下、単に収納袋という)は、合成樹脂フィルムによって形成されており、その合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、縦方向および横方向の引張弾性率が、それぞれ、特定の数値範囲内に調整されたものである。
【0013】
本発明に係る収納袋を形成するための合成樹脂フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等のヒートシールまたは溶断シールが可能な汎用の合成樹脂フィルムを好適に用いることができるが、それらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはポリ乳酸フィルムを用いると、酸素透過度、水蒸気透過度、縦方向および横方向の引張弾性率等の特性を、上記した特定の数値範囲内に調整し易くなる上、収納袋の透明性が高くなり、青果物を収納した場合に内部を見易くなるので好ましい。
【0014】
また、合成樹脂フィルムは、単一層からなるもので良いし、基材層の上に熱融着層等を積層した多層構造を有するものでも良いが、合成樹脂フィルムとして、基材層である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、溶融押出ししたポリエチレンテレフタレートを熱融着層として積層させることによって形成された積層ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いると、袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物を収納して密封する場合に、内部に入り込む空気の量をきわめて少なくすることが可能になるので好ましい。
【0015】
また、形成材料である合成樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、5~75μmの範囲であると好ましく、20~40μmの範囲であるとより好ましい。合成樹脂フィルムの厚さが5μmを下回ると、フィルムの“腰”がなくなってしまい、青果物(長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きなもの)を収納して密封する場合に、内部に空気が入り込み易くなるので好ましくなく、反対に、合成樹脂フィルムの厚さが75μmを上回ると、フィルムの剛性が高くなりすぎて、青果物を収納しにくくなったり、収納した後の密封作業がしにくくなったりするので好ましくない。
【0016】
さらに、形成材料である合成樹脂フィルムは、引張試験における引張弾性率が、縦方向(すなわち、収納袋を製造する前の長尺なロールの長手方向)、横方向(すなわち、長手方向と直交する方向)ともに2,500Mpa以上5,000Mpa未満であることが必要であり、縦方向、横方向ともに3,000Mpa以上4,500Mpa未満であるとより好ましい。引張弾性率が2,500Mpaを下回ると、フィルムの腰がなくなってしまい、青果物(長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きなもの)を収納して密封する場合に、内部に空気が入り込み易くなるので好ましくなく、反対に、引張弾性率が5,000Mpaを上回ると、フィルムの剛性が高くなりすぎて、青果物を収納しにくくなったり、収納した後の密封作業がしにくくなったりするので好ましくない。
【0017】
加えて、形成材料である合成樹脂フィルムは、引張試験における引張伸度が、縦方向、横方向ともに10%以上200%未満であると好ましく、縦方向、横方向ともに50%以上200%未満であるとより好ましい。引張伸度が10%を下回ると、青果物(長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きなもの)を収納して密封する場合に、フィルムが破れ易くなるので好ましくなく、反対に、引張伸度が200%を上回ると、製袋時に裁断性が不良となり、製造効率が悪くなるので好ましくない。
【0018】
また、形成材料である合成樹脂フィルムは、酸素透過度が100cc/(m・24hr・atm)以上1,000cc/(m・24hr・atm)未満であることが必要であり、酸素透過度が200cc/(m・24hr・atm)以上900cc/(m・24hr・atm)未満であるとより好ましい。青果物(特に、長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きなもの)の鮮度を保持するためには、それらの青果物の呼吸作用を利用して脱気状態に近い状態を形成するのが好ましいが、酸素透過度が100cc/(m・24hr・atm)を下回ると、脱気状態に近い状態となる前に青果物の呼吸によって袋内の酸素が減少し、青果物への酸素の供給が追い付かず、酸欠状態となり青果物の品質劣化が起こり易いので好ましくない。反対に、酸素透過度が1,000cc/(m・24hr・atm)を上回ると、青果物を包装後、袋内への酸素の供給が過多となったり、保管環境によっては青果物の呼吸が変動するため、脱気状態に近い状態を形成するのが難しくなるので好ましくない。
【0019】
また、形成材料である合成樹脂フィルムは、水蒸気透過度が15g/(m・24hr・atm)以上500g/(m・24hr・atm)未満であることが必要であり、水蒸気透過度が20g/(m・24hr・atm)以上400g/(m・24hr・atm)未満であるとより好ましい。水蒸気透過度が10g/(m・24hr・atm)を下回ると、青果物から蒸散によって発生した水分で袋内が過湿状態となり、カビが成長して、青果物の品質を失ってしまうため好ましくない。反対に、水蒸気透過度が500g/(m・24hr・atm)を上回ると、青果物を包装後、青果物から発生した水分が、袋外へと出て行ってしまい、次第に、青果物の水分が失われて瑞瑞しさを失うことから好ましくない。
【0020】
また、本発明に係る収納袋は、各種の青果物(特に、長イモ、サツマイモ、ブドウ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きなもの)を収納可能なものであるが、鮮度保持性を良好なものとするために、収納袋の内面が防曇性を有していることが好ましい。防曇性を付与する方法は、特に限定されるものではないが、収納袋を形成する合成樹脂原料中に予め防曇剤を含有させても良いし、収納袋の内面となるフィルム面に、防曇剤をコーティングしても良い。ここで用いる防曇剤としては、非イオン系の界面活性剤をあげることができ、防曇性と併せて帯電防止性を発揮するものを用いるのが好ましい。
【0021】
そのような防曇剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、ショ糖脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物等の非イオン系の界面活性剤を挙げることができる。そして、それらの防曇剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル型、脂肪酸グリセリンエステル型を併用するのが好ましい。また、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂をコーティング剤として用いても良い。
【0022】
加えて、合成樹脂フィルムを形成する樹脂には、必要に応じて各層の特性を阻害しない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、抗菌剤、自然分解性を付与する添加剤等を添加することができる。さらに、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を合成樹脂フィルムの特性を害さない範囲で配合してもよい。その他、量子論に基いた物質変性等の処理をすることも可能である。
【0023】
また、本発明に係る収納袋の形状は、特に限定されず、左右および下部をヒートシールしてなる三方袋や、二つ折りされた合成樹脂フィルムの左右をヒートシールしてなる二方袋等の形状にすることが可能である。
【実施例
【0024】
以下、実施例・比較例によって本発明に係る鮮度保持用収納袋について詳細に説明するが、本発明の収納袋は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例および比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0025】
<引張弾性率>
各実施例および比較例で用いた合成樹脂フィルムを、長さ150mm、幅15mmにサンプリングし、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間に亘って調湿した。そして、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、JIS K-7127に準拠し、東洋ボールドウィン株式会社製「テンシロン」(STM-T-50BP)を用い、調湿したフィルムを100mmの距離を隔てたチャック間に掴み、引張速度200mm/分で引っ張り、引張比例限度内における引張応力とそれに対応するひずみとの比を、引張弾性率として算出した。
【0026】
<引張伸度>
各実施例および比較例で用いた合成樹脂フィルムを、長さ100mm、幅15mmにサンプリングし、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間に亘って調湿した。そして、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、JIS K-7127に準拠し、東洋ボールドウィン株式会社製「テンシロン」(STM-T-50BP)を用い、該試験片の両端をチャック間距離が50mmとなるように取り付け、引張速度200mm/分としてサンプルを伸長し、破断した際のチャック間距離と伸長前のチャック間距離との比(百分率)を引張伸度として算出した。
【0027】
<酸素透過度>
各実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=200mm×200mmの二方シール袋)を準備し、その上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)をして、収納袋を密封し、その収納袋の中央部に粘着剤付きのゴム板を貼り付け、ゴム板部分に注射針を刺して、収納袋内部の空気を抜いた後、100%の窒素ガス(1気圧)で充満させた。これを25℃の大気中に放置した際の経過時間と収納袋内の酸素ガス濃度の変化を測定して酸素透過度を求めた。なお、表1における酸素透過度は、単位面積(1m)の24時間当たりの酸素ガスの透過量(cc)を示したものである。
【0028】
<水蒸気透過度>
各実施例および比較例で用いた合成樹脂フィルムを、40℃、90%RHの条件で、JIS Z0208に準拠し、アルミニウム材の透湿カップを用いて合成樹脂フィルムの水蒸気の透過量を測定した。なお、表1における水蒸気透過度は、単位面積(1m)の24時間当たりの水蒸気の透過量(g)を示したものである。
【0029】
<防曇性>
各実施例および比較例で用いた合成樹脂フィルムの防曇性を、次の手順にて測定した。
(1)500mLの上部開口容器に50℃の温水を300mL入れる。
(2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
(3)5℃の冷室中に放置する。
(4)5℃の冷室に放置30分後、冷室から取り出し、フィルム測定面の露付着状況を6段階で評価する。
・6:全面露なし(付着面積ゼロ)
・5:若干の露付着(付着面積1/5まで)
・4:多少の露付着(付着面積1/4まで)
・3:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
・2:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
・1:全面露付着(付着面積3/4以上)
【0030】
<含気量>
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(二方袋)に、長イモを収納する際に、作業者の手によってできる限り空気が入り込まないようにしながら収納して上端の開口部をヒートシールした(密封した)。しかる後、シリンダー式のガス採取器を利用して内部に残留した空気の量を測定し、その数値を含気量とした。
【0031】
<鮮度保持効果>
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋に長イモ、ブドウ(マスカット)、サツマイモ、カットレタス、ホウレンソウを収納した場合の鮮度保持効果を以下の方法にて評価した。
[長イモ]
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=440mm×100mmの二方シール袋)に、約500gの長イモを詰めた後に、その収納袋の上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)することによって収納袋を密封した。そして、その長イモを収納した収納袋を、20℃×60%RHの雰囲気下にて、10日間(240時間)放置した後に、収納された長イモの状態を、色および臭気の観点から下記の5段階で官能評価した。
5:色・臭気において収納前のものとの違いがまったく認められない。
4:若干乾燥した様子であるものの、変色・異臭が認められない。
3:わずかな変色、微かな異臭が認められる。
2:全体的な変色、明確な異臭が認められる。
1:変色の程度が酷く、刺激性の高い異臭がする。
【0032】
[ブドウ(ピオーネ)]
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=350mm×180mmの二方シール袋)に、約200gのブドウ(ピオーネ)を詰めた後に、その収納袋の上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)することによって収納袋を密封した。そして、そのブドウを収納した収納袋を、8℃×30%RHの雰囲気下にて、35日間(840時間)放置した後に、収納されたブドウの状態を、味、萎びおよびカビの発生の観点から下記の5段階で官能評価した。
5:味・萎び、カビの発生について収納前のものとの違いがまったく認められない。
4:若干乾燥した様子であるものの、収納前のものと味の違いはなく、カビの発生も認められない。
3:わずかに炭酸の刺激を感じる味がするとともに、若干の萎びが認められ、微かなカビの発生も認められる。
2:炭酸の刺激を感じる味がするとともに、萎びが明確に認められ、カビの発生も認められる。
1:萎び、カビ発生の程度が酷い(味の検知不能)。
【0033】
[サツマイモ]
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=270mm×180mmの二方シール袋)に、約600gのサツマイモを詰めた後に、その収納袋の上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)することによって収納袋を密封した。そして、そのサツマイモを収納した収納袋を、上記した長イモの鮮度保持効果の試験と同様の条件下で19日間(456時間)放置した後に、収納されたサツマイモの状態を、色、萎び、カビの発生の観点から下記の5段階で官能評価した。
5:変色・萎び、カビの発生について収納前のものとの違いがまったく認められない。
4:若干乾燥した様子であるものの、収納前のものと色の変化はなく、カビの発生も認められない。
3:わずかに変色が認められるとともに、若干の萎びが認められ、微かなカビの発生も認められる。
2:変色と萎びが明確に認められ、カビの発生も認められる。
1:変色、萎び、カビ発生の程度が酷い。
【0034】
[カットレタス]
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=170mm×180mmの二方シール袋)に、約100gのカットレタス(概ね50mm×50mmの大きさより小さく裁断したもの)を詰めた後に、その収納袋の上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)することによって収納袋を密封した。そして、そのカットレタスを収納した収納袋を、5℃×30%RHの雰囲気下にて、5日間(120時間)放置した後に、収納されたカットレタスの状態(色、臭気)を、長イモの鮮度保持効果の試験と同様の基準で評価した。
【0035】
[ホウレンソウ]
実施例・比較例の合成樹脂フィルムよりなる収納袋(袋サイズが高さ(袋の深さ方向の長さ)×幅=340mm×230mmの二方シール袋)に、約200gのホウレンソウを詰めた後に、その収納袋の上端の開口部を、約7.0mmの幅でヒートシール(その他の部分と同じ温度でのヒートシール)することによって収納袋を密封した。そして、そのホウレンソウを収納した収納袋を、上記した長イモの鮮度保持効果の試験と同様の条件下で4日間(96時間)放置した後に、放置した後に、収納されたホウレンソウの状態(色、臭気)を、長イモの鮮度保持効果の試験と同様の基準で評価した。
【0036】
[実施例1]
厚さ32μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層に、溶融させたポリエチレンテレフタレート樹脂を約20μmの厚みとなるように積層させてヒートシール層を形成した積層ポリエチレンテレフタレートフィルム(中本パックス株式会社製HS-PET))を二つ折りしつつ矩形に裁断して、その左右を約230℃の温度で5mm幅のヒートシールすることによって、上部を開口した長方形状の二方袋を製造した。ここで、収納袋の大きさは、中に入れる青果物にあわせ、適宜最適なものを準備した。なお、当該ポリエチレンテレフタレートフィルムの内面には、防曇剤である非イオン系の界面活性剤がコーティングされている。また、製造された二方袋は、幅方向が構成材料である長尺なポリエチレンテレフタレートフィルムの長手方向となっており、高さ方向が構成材料である長尺なポリエチレンテレフタレートフィルムの幅方向となっている。
【0037】
一方、二方袋の製造に使用した合成樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、上記した方法によって測定した。また、得られた二方袋の鮮度保持特性を、上記した方法によって評価した。得られた結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0038】
[実施例2]
収納袋の原料の合成樹脂フィルムを、厚さ25μmのポリ乳酸フィルム(三菱樹脂株式会社社製SG106)に変更するとともにヒートシール温度を約140℃としたした以外は、実施例1と同様にして収納袋を製造した。なお、当該ポリ乳酸フィルムの内面には、実施例1のポリエチレンテレフタレートフィルムと同様な非イオン系の界面活性剤がコーティングされている。そして、得られた二方袋の鮮度保持特性を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、二方袋の製造に用いた合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、実施例1と同様な方法によって測定した。二方袋の鮮度保持特性の評価結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0039】
[比較例1]
収納袋の原料の合成樹脂フィルムを、厚さ40μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡株式会社製P5562)に変更するとともにヒートシール温度を約150℃としたした以外は、実施例1と同様にして収納袋を製造した。そして、得られた二方袋の鮮度保持特性を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、二方袋の製造に用いた合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、実施例1と同様な方法によって測定した。二方袋の鮮度保持特性の評価結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0040】
[比較例2]
収納袋の原料の合成樹脂フィルムを、厚さ25μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東洋紡株式会社製P1128)に変更するとともにヒートシール温度を約130℃とした以外は、実施例1と同様にして収納袋を製造した。そして、得られた二方袋の鮮度保持特性を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、二方袋の製造に用いた合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、実施例1と同様な方法によって測定した。二方袋の鮮度保持特性の評価結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0041】
[比較例3]
収納袋の原料の合成樹脂フィルムを、厚さ40μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(タマポリ株式会社製VE-7)に変更するとともにヒートシール温度を約100℃とした以外は、実施例1と同様にして収納袋を製造した。そして、得られた二方袋の鮮度保持特性を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、二方袋の製造に用いた合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、実施例1と同様な方法によって測定した。二方袋の鮮度保持特性の評価結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0042】
[比較例4]
収納袋の原料の合成樹脂フィルムを、ナイロンの基層上にPEの熱融着層を積層してなる厚さ70μmの積層ナイロン-ポリエチレンフィルム(クリロン化成株式会社製ナイロンポリ彊美人)に変更するとともにヒートシール温度を約100℃とした以外は、実施例1と同様にして収納袋を製造した。そして、得られた二方袋の鮮度保持特性を、実施例1と同様な方法によって評価した。また、二方袋の製造に用いた合成樹脂フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、比重、縦方向および横方向の引張弾性率、引張伸度等の各特性を、実施例1と同様な方法によって測定した。二方袋の鮮度保持特性の評価結果を、合成樹脂フィルムの各特性の測定結果とともに表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、酸素透過度、水蒸気透過度、縦方向および横方向の引張弾性率の各特性が請求項1の範囲内にある合成樹脂フィルムによって製造された実施例1,2の収納袋は、長イモ、ブドウ、サツマイモ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物を収納した場合の鮮度保持効果に優れていることが分かる。加えて、実施例1,2の収納袋は、長イモを収納した場合に内部に空気が残留しにくくなっており(含気量が低くなっており)、長イモに対して特に良好な鮮度保持効果を発現していることが分かる。これに対して、酸素透過度、水蒸気透過度、縦方向および横方向の引張弾性率の内のいずれかの特性が請求項1の範囲から外れた合成樹脂フィルムによって製造された比較例1~4の収納袋は、鮮度保持機能が不良であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る収納袋は、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、特に、長イモ、ブドウ、サツマイモ等の袋内が過湿状態となったときにカビが成長しやすく、かつ、酸素による酸化変色がしやすい上に、重量および体積が大きな青果物の鮮度保持用の収納袋として好適に用いることができる。