(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
F24H9/02 301B
(21)【出願番号】P 2019012681
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】森山 正隆
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-061633(JP,U)
【文献】特開平09-196472(JP,A)
【文献】特開2003-021320(JP,A)
【文献】特開2003-314820(JP,A)
【文献】特開2018-031489(JP,A)
【文献】特開昭64-038517(JP,A)
【文献】特開平10-281559(JP,A)
【文献】国際公開第2015/143496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/02
F23L 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナからの燃焼排気の熱によって通水を加熱する熱交換器の上方に設けられ、前部が前記熱交換器よりも前方へ張り出し、前記熱交換器を上方に通過した前記燃焼排気を外部に排出する開口を前記前部に備え、後部において上方に突出し、前方に向かうに従って下り傾斜する上面形状を備える排気ケーシングと、
前記開口に設けられ、前方に筒状に突出し、前部に上下方向よりも左右方向に長い横長矩形状の排気出口を備え、前記開口から排出された前記燃焼排気を前記排気出口から外部に排出する排気筒と、
前記排気ケーシング内に支持され、前記熱交換器を上方に通過した前記燃焼排気を前記開口に向けて整流する整流板と
を備えた給湯器において、
前記排気筒の内側の上部には、前記排気筒の後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜し、その途中で斜め上方に屈曲し、前記排気出口の上縁部側に向けて上り傾斜する側面視V字状の傾斜板が設けられ
、
前記傾斜板のうち前記下り傾斜する部分である下り傾斜部により、前記排気筒内を前記燃焼排気が流れる排気通路の通過断面積が縮小され、前記上り傾斜する部分である上り傾斜部により、前記通過断面積が拡大されたことによって前記排気筒内にベンチュリ―効果を形成すること
を特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記排気出口の周縁部には、内側に巻きつけるように折り返された折返部が設けられ、
前記傾斜板の後端部には、前記排気ケーシングの前記前部に固定される固定部が設けられ、
前記傾斜板の前端部には、前記上縁部に設けられた前記折返部に対して後方から係止可能な係止部が設けられたこと
を特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記排気出口の周縁部には、内側に巻きつけるように折り返された折返部が設けられ、
前記折返部には、前記燃焼排気が流れる方向の上流側から下流側に向かうにつれて縮径するように傾斜する傾斜面が設けられたこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体の上部に排気部を備えた給湯器が知られている(例えば、特許文献1参照)。排気部は、熱交換器のケーシングの上側に固定され、前面が開口するカバー状の排気ケーシングと、該排気ケーシングの前端部に固定され、前部に排気出口を備えた排気筒と、排気ケーシングの内部に設けられる整流板とを備える。排気ケーシングは、後部において上方に突出し、前方へ向かうに従って下り傾斜する上面形状を備える。整流板は、後方に向けて上り傾斜する下板部と、該下板部から上側に折り返される折返部と、該折返部から前方に延びる上板部とを備える。熱交換器を通過した燃焼排気は、排気ケーシング内に流入し、整流板の下板部により後斜め上方に案内された後、折返部により上方向に案内され、更に上板部により前方に案内されて、排気筒の排気出口より外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気ケーシング内において、整流板の折返部から上板部に沿って流れた後の燃焼排気は、排気ケーシングの下り傾斜する上面形状により、斜め下方向に案内されるので、燃焼排気に下向きの勢いが付加される可能性がある。この結果、排気出口において、燃焼排気が斜め下向きに排出され、排気出口の下側にいる人物に不快感を与える可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、排気出口から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを防止できる給湯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の給湯器は、バーナからの燃焼排気の熱によって通水を加熱する熱交換器の上方に設けられ、前部が前記熱交換器よりも前方へ張り出し、前記熱交換器を上方に通過した前記燃焼排気を外部に排出する開口を前記前部に備え、後部において上方に突出し、前方に向かうに従って下り傾斜する上面形状を備える排気ケーシングと、前記開口に設けられ、前方に筒状に突出し、前部に上下方向よりも左右方向に長い横長矩形状の排気出口を備え、前記開口から排出された前記燃焼排気を前記排気出口から外部に排出する排気筒と、前記排気ケーシング内に支持され、前記熱交換器を上方に通過した前記燃焼排気を前記開口に向けて整流する整流板とを備えた給湯器において、前記排気筒の内側の上部には、前記排気筒の後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜し、その途中で斜め上方に屈曲し、前記排気出口の上縁部側に向けて上り傾斜する側面視V字状の傾斜板が設けられ、前記傾斜板のうち前記下り傾斜する部分である下り傾斜部により、前記排気筒内を前記燃焼排気が流れる排気通路の通過断面積が縮小され、前記上り傾斜する部分である上り傾斜部により、前記通過断面積が拡大されたことによって前記排気筒内にベンチュリ―効果を形成することを特徴とする。
【0007】
請求項2の給湯器の前記排気出口の周縁部には、内側に巻きつけるように折り返された折返部が設けられ、前記傾斜板の後端部には、前記排気ケーシングの前記前部に固定される固定部が設けられ、前記傾斜板の前端部には、前記上縁部に設けられた前記折返部に対して後方から係止可能な係止部が設けられるとよい。
【0008】
請求項3の給湯器の前記排気出口の周縁部には、内側に巻きつけるように折り返された折返部が設けられ、前記折返部には、前記燃焼排気が流れる方向の上流側から下流側に向かうにつれて縮径するように傾斜する傾斜面が設けられるとよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の給湯器によれば、熱交換器を上方に通過し、排気ケーシング内に流入した燃焼排気は、整流板によって、排気ケーシングの開口に向かって整流される。燃焼排気は、排気ケーシングの下り傾斜する上面形状によって、斜め下方向に案内されるので、燃焼排気に下向きの勢いが付加される可能性がある。そこで、排気筒内では、傾斜板の下り傾斜する部分によって、排気筒内の排気通路の通過断面積が一旦縮小され、上り傾斜する部分によって一気に拡大される。これにより、排気筒内にベンチュリー効果を生じさせることができる。ベンチュリー効果により、下り傾斜する部分によって通過断面積が縮小されると、傾斜板の屈曲部分の近傍であって、排気通路の上側の領域である領域において、燃焼排気の流速が上昇する。この領域では、燃焼排気の圧力が低くなる。つまり、排気筒内の上部に傾斜板を設けることによって、排気筒内の排気通路のうち上側を流れる燃焼排気を斜め下方にガイドできるので、排気通路の通過断面積が最も小さくなった部分のうち上側の領域において、燃焼排気の流速を上昇させ、圧力を低くすることができる。これにより、排気ケーシングから排気筒内に流入した燃焼排気は、圧力の低い領域に吸い寄せられて通過することで、下向きの勢いは消滅し、斜め上方に押し出されて外部に排出される。従って、排気出口から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを防止できるので、排気出口の下側にいる人物に不快感を与えることを防止できる。
【0010】
請求項2の給湯器によれば、傾斜板の前端部に設けられた係止部を、排気出口の周縁部に設けられた折返部に対して後方から係止させることで、傾斜板を排気筒の上側に容易且つ安定的に保持できる。従来構造の給湯器に容易に取り付けることができるので、取り付けの為のコストもかからない。
【0011】
請求項3の給湯器によれば、排気筒の内側において、傾斜板の下り傾斜する部分によって通過断面積が最も小さい領域を通過した燃焼排気のうち、排気出口の下縁部付近を通過する燃焼排気は、排気出口の下縁部の折返部の傾斜面によって斜め上方にガイドされる。これにより、排気出口から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】給湯器の筐体内における燃焼部18、熱交換器19、排気部30の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載される給湯器の構造などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0014】
図1、
図2を参照し、給湯器1の筐体内の構造を説明する。なお、
図1では、筐体を省略している。給湯器1の筐体(図示略)内の上部には、下方から順に、燃焼部18、熱交換器19、排気部30が設けられる。燃焼部18は、バーナ側ケーシング21を備える。バーナ側ケーシング21内には、複数のバーナ(図示略)が左右方向(紙面奥行方向)に並んで設けられる。燃焼部18の下方には、給気ファン(図示略)が設けられる。給気ファンは、複数のバーナに燃焼用空気を供給する。熱交換器19は、熱交換器側ケーシング22を備える。熱交換器側ケーシング22は、バーナ側ケーシング21の上部に固定される。熱交換器側ケーシング22内には、左右方向に所定間隔をおいて複数枚積層したフィン(図示略)と、該フィンを左右方向に貫通し、互いに平行に配設される複数の伝熱管(図示略)が設けられる。隣接する伝熱管同士は、U字状の接続管20Aによって連結されることで、蛇行状に繋がる一連の管体20が形成される。
【0015】
管体20の上流端には、入水管27の一端部が接続される。入水管27の他端部は、筐体の底部に設けた入水口(図示略)と接続する。管体20の下流端には、出湯管28の一端部が接続される。出湯管28の他端部は、筐体の底部に設けた出湯口(図示略)と接続する。これにより、入水口から流入した水は入水管27を流れ、熱交換器19の管体20に流入する。燃焼部18からの燃焼排気が管体20の伝熱管同士の隙間を通過することによって、伝熱管の通水との間で熱交換が行われる。管体20を流れる水は湯となって出湯管28を流れ、出湯口から外部に供給される。
【0016】
排気部30は、排気ケーシング40と整流板50(
図2参照)を備える。排気ケーシング40は、熱交換器側ケーシング22の上部に固定され、排気筒9と連通する。排気筒9は、筐体の前面に取り付けられるカバー(図示略)の上部に設けられた開口部に挿入され、前方に突出する。排気ケーシング40は、前部が熱交換器19よりも前方へ張り出す。整流板50は、排気ケーシング40内に支持され、熱交換器19から排気ケーシング40内に流入した燃焼排気の排気通路を形成する。
【0017】
図2を参照し、排気ケーシング40の形状を説明する。排気ケーシング40は、後部において上方に突出し、前方へ向かうに従って徐々に低くなる上面形状を備える。排気ケーシング40は、前部に正面視矩形状の開口400を有する。排気ケーシング40は、後方から前方にかけて順に、湾曲部41、最上部42、傾斜部43、前方延設部44を備え、それらの左右両側に一対の側面部45を備える。湾曲部41は、上方に垂直に立ち上がり上部において前方に円弧状に湾曲する。最上部42は、湾曲部41の前端部から前方に向けて略水平に延びる。傾斜部43は、最上部42の前端部から斜め下方に傾斜する。前方延設部44は、傾斜部43の前端部から前方且つ略水平に延設される。一対の側面部45は、湾曲部41、最上部42、傾斜部43、前方延設部44の左右両端部から垂下し、排気ケーシング40の左右の両側面を形成する。
【0018】
排気ケーシング40は、取付フランジ部46、上側フランジ部47、外側折返部48、複数の加締め部49を更に備える。取付フランジ部46は、排気ケーシング40の前端部であって、前方延設部44の前端部と、一対の側面部45の夫々の前端部とに沿って設けられる。取付フランジ部46は、外側に向かってフランジ状に突出し、正面視下方に開口する略コの字型に形成される。上側フランジ部47は、湾曲部41の下端部と、一対の側面部45の夫々の下端部とに沿って設けられる。上側フランジ部47は、外側に向かってフランジ状に突出し、底面視前方に開口する略コの字型に形成される。外側折返部48は、上側フランジ部47の外周部に沿って設けられ、下方に折り返して突出する。複数の加締め部49は、外側折返部48の下端部に沿って設けられる。上側フランジ部47の下側に、熱交換器側ケーシング22の上端部に設けられた下側フランジ部211を配置し、複数の加締め部49の夫々を内側に折り曲げて加締め固定する。これにより、熱交換器側ケーシング22(
図1参照)の上部に、排気ケーシング40が固定される。
【0019】
図3を参照し、排気筒9の構造を説明する。排気筒9は、排気ケーシング40の前部に固定され、前方に略水平に突出する略四角筒状に形成される。排気筒9の前部には、排気出口92が設けられる。排気出口92は、正面視左右方向に長い略長円状に形成される。排気出口92の周縁部には、受傷防止用のバーリング部91が設けられる。バーリング部91は、内側に巻きつけるように後方に折り返して形成される。それ故、バーリング部91には、燃焼排気が流れる方向の上流側から下流側に向かうにつれて縮径するように傾斜する傾斜面91Aが設けられる。排気筒9の後端部には、外方に向けてフランジ状に突出するフランジ部93が設けられる。フランジ部93は、左右方向に長い正面視略矩形リング状に形成される。排気筒9の外周部には、略円筒状の樹脂製の保護部材10が装着される。
【0020】
排気筒9内側の上部には、側面視略V字状の傾斜板80が設けられる。傾斜板80は、排気筒9の後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜し、その途中で斜め上方に屈曲し、排気出口92の上縁部側に向けて上り傾斜する形状を備える。傾斜板80は、排気筒9内における燃焼排気の流れをコントロールすることによって、排気出口92から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを防止できる。排気筒9内における傾斜板80の作用効果については後述する。
【0021】
上記構造を有する排気筒9において、フランジ部93の後面の上半分の領域に対して、パッキン96を介して、排気ケーシング40の前端部に設けられた取付フランジ部46と、後述する固定板70のフランジ側固定部73とが配置され、左右方向に並ぶ4本のネジ63(
図2、
図3では一つのみ図示)で固定される。他方、フランジ部93の後面の下半分の領域に対して、パッキン96を介して、整流板50の後述する下板部51の前端部に設けられた取付片55が配置され、左右方向に並ぶ5本のネジ64(
図2、
図3では一つのみ図示)で固定される。これにより、排気ケーシング40の前端部と、整流板50の下板部51の前端部に対し、排気筒9が前側に固定される。排気ケーシング40の開口400の前方に、排気筒9の排気出口92が配置される。よって、排気筒9は、排気ケーシング40の開口400から燃焼排気を受け入れ、排気出口92から外部に排出できる。
【0022】
固定板70は、側面視略クランク状に形成され、水平部71、筐体側固定部72、フランジ側固定部73を備える。水平部71は前後方向に延び、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。筐体側固定部72は、水平部71の後端部から垂直上方に延び、筐体内に設けられた支持部材(図示略)にネジ65で固定される。フランジ側固定部73は、水平部71の前端部から垂下し、パッキン96と取付フランジ部46を介して、排気筒9のフランジ部93に対してネジ63で固定される。これにより、排気筒9は前方に突出した状態で、筐体に対して安定して支持される。
【0023】
図2、
図3を参照し、整流板50の形状を説明する。整流板50は、例えば一枚の板金を折り曲げて形成され、下板部51、折返部52、上板部53、一対の上固定部58、一対の下固定部59、ガイド板57を備える。下板部51は、前方から後方になるにつれて斜め上方に緩やかに傾斜する。下板部51の前端部には、取付片55(
図3参照)が設けられる。取付片55は、下板部51の前端部から下方に略直角に折り返して形成され、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。折返部52は、下板部51の後端部から上方に折れ曲がり、略円弧状に前方に折り返す。上板部53は、折返部52の前端部から前方に且つ略水平に延びる。上板部53の前端部には、斜め下方に傾斜する傾斜端部531(
図2参照)が設けられる。傾斜端部531は、排気ケーシング40の最上部42と傾斜部43の接続部の下方に位置する。
【0024】
一対の上固定部58は、上板部53の左右の両端部から垂下し、側面視略矩形状に形成される。一対の上固定部58は、排気ケーシング40の一対の側面部45の内面と当接し、ネジ61で固定される。一対の下固定部59は、下板部51の左右両端部における前側部分から上方に突出し、側面視略台形状に形成される。一対の下固定部59は、排気ケーシング40の一対の側面部45の内面と当接し、ネジ62で固定される。これにより、整流板50は、排気ケーシング40の内側に安定して支持される。
【0025】
ガイド板57は、下板部51の上面のうち後端側を除く領域を覆うようにして固定され、平面視略矩形状に形成される。ガイド板57は、後端側から前端側に向かって順に、後側水平部571、傾斜部572、前側水平部573を備える。後側水平部571は、後端側から前側に略水平に延びる。傾斜部572は、後側水平部571の前端部から下り傾斜する。前側水平部573は、傾斜部572の前端部から前方且つ略水平に延びる。ガイド板57は、後側水平部571と前側水平部573において、ネジで整流板50の下板部51に固定される。
【0026】
図4、
図5を参照し、傾斜板80の形状を説明する。傾斜板80は、例えば、一枚の板金を折り曲げて形成され、下り傾斜部81、上り傾斜部82、固定板部83を備える。下り傾斜部81は、後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜し、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。上り傾斜部82は、下り傾斜部81の前端部から斜め上方(略90°方向)に屈曲して傾斜し、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。これら下り傾斜部81と上り傾斜部82は、側面視略V字状の屈曲部を形成する。下り傾斜部81の後端部から前端部までの長さは、上り傾斜部82の後端部から前端部までの長さよりも長い。
【0027】
上り傾斜部82の右端部近傍には、上端部から下端部近傍までを細長略矩形状に切り欠いた溝部821が設けられる。溝部821の下縁部には、係止爪85が設けられる。係止爪85は、溝部821の下縁部から上方に立ち上がり、その上端側が前方に向かって側面視略V字状に屈曲される。他方、上り傾斜部82の左端部近傍にも、上端部から下端部近傍までを細長略矩形状に切り欠いた溝部822が設けられる。溝部822の下縁部には、係止爪86が設けられる。係止爪86は、係止爪85と同様に、溝部822の下縁部から上方に立ち上がり、その上端側が前方に向かって側面視略V字状に屈曲される。係止爪85、86の夫々の先端部は、やや上方に曲げられるとよい。これにより、バーリング部91に対し、係止爪85、86を容易に係止させることができる。
【0028】
固定板部83は、下り傾斜部81の後端部の左右両側部分を除く中央部から垂直上方に延び、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。下り傾斜部81の後端部の左右両側部分には、一対の短板部84が設けられる。一対の短板部84は、下り傾斜部81の後端部の左右両側部分から垂直上方に突出し、固定板部83と連接する。固定板部83の上端部には、一対の固定溝部831、832が設けられる。固定溝部831、832は、左右方向に互いに離間した位置に設けられ、固定板部83の上端部から下端部側に向けて略U字状に切り欠いて形成される。固定溝部831、832は、ネジ63のネジ部が挿通可能な幅を有する。
【0029】
図3を参照し、傾斜板80の取付構造を説明する。傾斜板80は、排気筒9内の上部において、上り傾斜部82が前側、固定板部83が後側となるように配置される。一対の係止爪85、86は、排気筒9の排気出口92の上縁部に設けられたバーリング部91に対して、後方から係止させる。これにより、傾斜板80の前端側が安定して支持される。他方、傾斜板80の固定板部83は、排気筒9のフランジ部93とパッキン96の間に挟持される。固定板部83の一対の固定溝部831、832の内側には、4本のネジ63のうち中央の2本のネジ63のネジ部が挿通する。固定板部83は、排気筒9のフランジ部93と、排気ケーシング40の取付フランジ部46の間に挟持された状態で固定される。これにより、傾斜板80の後端側が安定して支持される。このようにして、傾斜板80が排気筒9内の上部に取り付けられる。
【0030】
排気筒9内において、下り傾斜部81は、排気筒9の後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜する。排気筒9の前後方向の略中央部において、上り傾斜部82は、下り傾斜部81の前端部から斜め上方に屈曲し、排気出口92の上縁部側に向けて上り傾斜する。
【0031】
図2、
図3を参照し、排気部30における燃焼排気の流れを説明する。
図2に示すように、熱交換器19を通過した燃焼排気は、排気ケーシング40内に下方から流入する。燃焼排気は、整流板50の下板部51に沿って後方に流れ、折返部52に沿って前方に折り返す。燃焼排気は、上板部53に沿って前方に流れ、排気ケーシング40の傾斜部43に沿って斜め下方向に案内される。このとき、燃焼排気に下向きの勢いが付加される。燃焼排気は斜め下方向に流れ、ガイド板57に接触し、開口400に向かって流れる。
【0032】
次いで、
図3に示すように、燃焼排気は、開口400から排気筒9内に流入する。排気筒9内においては、傾斜板80の下り傾斜部81によって、その排気通路の通過断面積が一旦縮小され、上り傾斜部82によって一気に拡大される。これにより、排気筒9内にベンチュリー効果を生じさせることができる。ベンチュリー効果により、下り傾斜部81によって通過断面積が縮小されると、下り傾斜部81と上り傾斜部82の屈曲部分の近傍であって、排気通路の上側の領域である領域Pにおいて、燃焼排気の流速が上昇する。領域Pでは、燃焼排気の圧力が低くなる。つまり、排気筒9内の上部に傾斜板80を設けたことによって、排気筒9内の排気通路のうち上側を流れる燃焼排気を斜め下方にガイドできるので、排気通路の最も通過断面積が小さくなった部分のうち上側の領域Pにおいて、燃焼排気の流速を上昇させ、圧力を低くすることができる。
【0033】
これにより、排気筒9内に流入した燃焼排気は、圧力の低い領域Pに吸い寄せられる。例えば、排気筒9内の下側を水平方向に通過する燃焼排気は、領域Pに吸い寄せられることによって、斜め上方に向きを変え、領域Pを通過する。よって、排気筒9内に流入する燃焼排気に下向きの勢いが付与されていても、領域Pに吸い寄せられて通過することで、下向きの勢いは消滅し、斜め上方に押し出されて外部に排出される。従って、排気出口92から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを防止できるので、排気出口92の下側にいる人物に不快感を与えることを防止できる。
【0034】
また、排気筒9内の領域Pを通過すると、その上側には、傾斜板80の上り傾斜部82が位置し、下側には、排気出口92の下縁部のバーリング部91が位置する。上り傾斜部82は、下り傾斜部81の前端部から排気出口92の上縁部に向かって上り傾斜する。下側のバーリング部91の傾斜面91Aは、燃焼排気が流れる上流側から下流側に向かうにつれて斜め上方に傾斜する。従って、領域Pを通過した燃焼排気は、上り傾斜部82と傾斜面91Aによって斜め上方にガイドされるので、排気出口92からやや上向きに排出される。これにより、排気出口92から燃焼排気が下向きに排出されるのをより効果的に防止できる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の給湯器1は、排気ケーシング40、排気筒9、整流板50を備える。排気ケーシング40は、熱交換器19の上方に設けられ、前部が熱交換器19よりも前方へ張り出し、熱交換器19を上方に通過した燃焼排気を外部に排出する開口400を前部に備える。排気ケーシング40は、後部において上方に突出し、前方に向かうに従って下り傾斜する上面形状を備える。排気筒9は、開口400に接続され、前方に筒状に突出する。排気筒9は、前部に上下方向よりも左右方向に長い排気出口92を備え、開口400から排出された燃焼排気を外部に排出する。整流板50は、排気ケーシング40内に支持され、熱交換器19を上方に通過した燃焼排気を開口400に向けて整流する。排気筒9の内側の上部には、側面視V字状の傾斜板80が設けられる。傾斜板80は、排気筒9の後端部側から前端部側になるにつれて下り傾斜し、その途中で斜め上方に屈曲し、排気出口92の上縁部側に向けて上り傾斜する。
【0036】
排気ケーシング40内において、整流板50の折返部52から上板部53に沿って流れた後の燃焼排気は、排気ケーシング40の下り傾斜する上面形状によって、下方向に案内されるので、燃焼排気に下向きの勢いが付加される可能性がある。排気筒9内では、傾斜板80の下り傾斜する部分によって、排気筒9に流入した燃焼排気の流速が速くなる。これにより、傾斜板80の屈曲する部分の近傍に、圧力の低い領域Pが形成される。領域Pは、排気筒9内の排気通路のうち通過断面積が最も小さくなる部分の上側の領域である。よって、排気筒9内に流入した燃焼排気は、領域Pに吸い寄せられることで、下向きの勢いは消滅し、領域Pを通過することで、斜め上方に押し出されて外部に排出される。従って、排気出口92から燃焼排気が斜め下向きに排出されるのを防止できるので、排気出口92の下側にいる人物に不快感を与えるのを防止できる。
【0037】
上記説明において、排気ケーシング40の開口400は、本発明の「開口」の一例である。排気筒9のバーリング部91は、本発明の「折返部」の一例である。傾斜板80の固定板部83は、本発明の「固定部」の一例である。傾斜板80の一対の係止爪85、86は、本発明の「係止部」の一例である。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。整流板50は一枚の板金で形成するが、複数枚の金属板を組み合わせて形成してもよい。整流板50の形状は上記実施形態に限らず、種々変更してもよく、例えば、上板部53の前端部から下り傾斜させ、排気出口92まで延設してもよい。ガイド板57は省略してもよい。排気ケーシング40内における整流板50の支持構造についても、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。
【0039】
傾斜板80は、排気筒9内に取り付ける為に、固定板部83と一対の係止爪85、86を備えるが、これ以外の方法で取り付けてもよく、例えば、溶接、接着剤を使用した固定、固定具等の他部材を使用した固定等でもよい。その場合、少なくとも下り傾斜部81と上り傾斜部82を備えていればよく、固定板部83、一対の係止爪85、86のうち何れか一方、若しくは両方を省略してもよい。下り傾斜部81と上り傾斜部82の屈曲角度は90°に限らず、変更してもよい。
【0040】
固定溝部831、832は、ネジ65のネジ部を内側に挿通可能な穴に変更してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 給湯器
9 排気筒
19 熱交換器
40 排気ケーシング
50 整流板
80 傾斜板
83 固定板部
85、86 係止爪
91 バーリング部
91A 傾斜面
92 排気出口
400 開口