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特許7296623α-アミラーゼ活性阻害剤及びα-アミラーゼ活性阻害剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】α-アミラーゼ活性阻害剤及びα-アミラーゼ活性阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/76 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 36/8962 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20230616BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20230616BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20230616BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230616BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20230616BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
A61K36/76
A61K36/87
A61K36/45
A61K36/82
A61K36/185
A61K36/8962
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P3/04
A61K9/14
A61K9/16
A61K125:00
A61K127:00
A61K129:00
A61K131:00
A61K135:00
C12N9/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019135440
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017428
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】398029533
【氏名又は名称】株式会社ファイン
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義晴
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-227398(JP,A)
【文献】特開2015-034140(JP,A)
【文献】特開2016-104816(JP,A)
【文献】特開2009-013159(JP,A)
【文献】特開2006-076954(JP,A)
【文献】特開平10-077232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61P 3/00- 3/14
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
CiNii
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮に含水エタノールを加えて抽出したセイヨウシロヤナギの抽出物と、
ブドウの果皮に含水エタノールを加えて抽出したブドウ果皮の抽出物、ブドウの種子にエタノールを加えて抽出したブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実に含水エタノールを加えて抽出したリンゴンベリー果実の抽出物、茶葉に水を加えて抽出した紅茶の抽出物、カシス果実に水を加えて圧搾抽出したカシス果実の抽出物、たまねぎ外皮に水を加えて抽出したたまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも1種と、を含有することを特徴とするα-アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮に含水エタノールを加えて抽出したセイヨウシロヤナギの抽出物と、
ブドウの果皮に含水エタノールを加えて抽出したブドウ果皮の抽出物、ブドウの種子にエタノールを加えて抽出したブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実に含水エタノールを加えて抽出したリンゴンベリー果実の抽出物、茶葉に水を加えて抽出した紅茶の抽出物、カシス果実に水を加えて圧搾抽出したカシス果実の抽出物、たまねぎ外皮に水を加えて抽出したたまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも2種と、を含有することを特徴とするα-アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項3】
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮に含水エタノールを加えて抽出したセイヨウシロヤナギの抽出物と、
ブドウの果皮に含水エタノールを加えて抽出したブドウ果皮の抽出物及びブドウの種子にエタノールを加えて抽出したブドウ種子の抽出物と、を含有することを特徴とするα-アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項4】
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮に含水エタノールを加えて抽出したセイヨウシロヤナギの抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたものと、
ブドウの果皮に含水エタノールを加えて抽出したブドウ果皮の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、ブドウの種子にエタノールを加えて抽出したブドウ種子の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、リンゴンベリー果実に含水エタノールを加えて抽出したリンゴンベリー果実の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、茶葉に水を加えて抽出した紅茶の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、カシス果実に水を加えて圧搾抽出したカシス果実の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、たまねぎ外皮に水を加えて抽出したたまねぎ外皮の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたものの中から選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とするα-アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項5】
前記セイヨウシロヤナギの粉末または顆粒は、サリシンが1重量%~3重量%含まれていることを特徴とする請求項4に記載のα-アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項6】
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮に含水エタノールを加えて抽出したセイヨウシロヤナギの抽出物を乾燥し、賦形剤を加えて粉末または顆粒にする第1工程と、
ブドウの果皮に含水エタノールを加えて抽出したブドウ果皮の抽出物、ブドウの種子にエタノールを加えて抽出したブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実に含水エタノールを加えて抽出したリンゴンベリー果実の抽出物、茶葉に水を加えて抽出した紅茶の抽出物、カシス果実に水を加えて圧搾抽出したカシス果実の抽出物、たまねぎ外皮に水を加えて抽出したたまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも1種を乾燥し、賦形剤を加えて粉末または顆粒にする第2工程と、を有し、
前記第1工程で生成したセイヨウシロヤナギの粉末または顆粒と、前記第2工程で生成したブドウ果皮の粉末または顆粒、ブドウ種子の粉末または顆粒、リンゴンベリー果実の粉末または顆粒、紅茶の粉末または顆粒、カシス果実の粉末または顆粒、たまねぎ外皮の粉末または顆粒中から選択される少なくとも1種の粉末または顆粒と、を混合する第3工程とを有することを特徴とするα-アミラーゼ活性阻害剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-アミラーゼ活性阻害剤及びα-アミラーゼ活性阻害剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー摂取過剰や運動不足などに起因すると考えられる肥満が問題となっている。日本においては肥満の判断基準の一つであるBMI(Body Mass Index)が25以上の肥満者は男性が約30%、女性が約20%であると報告されている(厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成24年)」)。肥満は、高血圧、糖尿病、高脂血症などの原因と考えられることから、健康維持のためにその予防あるいは改善が重要である。その対策として、継続的な摂取エネルギーの制限と運動療法が一般である。しかし、欧米化に伴うエネルギー摂取の増大や労働環境の変化などにより、現代社会においてこれらを実施することが難しいのが現状である。
【0003】
摂取した食物、特にデンプンは、α-アミラーゼの酵素作用によってマルトースやその中間体であるデキストリンに分解される。そのマルトース等がマルターゼ等によって単糖類に分解され腸から吸収され摂取カロリーとなる。
【0004】
よって、このα-アミラーゼが働かなければ、デンプンを分解できず、その結果吸収できる単糖類もできないため、デンプンはカロリーとして吸収されない。即ち、α-アミラーゼのデンプン分解活性を阻害するものがあれば、吸収カロリーは軽減できるということになる。
【0005】
このようなα-アミラーゼ活性の阻害剤は、従来知られており、特許文献1にもブドウ種子、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉が記載されている。しかし、どれも通常採取する量で、十分な効果を発揮するものでない。
【0006】
また、セイヨウシロヤナギは、関節痛や炎症を抑える食品として以前から知られている。しかし、これら食品にはα―アミラーゼの活性阻害作用については知られていなかった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-227398号
【文献】特開2013-146271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
α-アミラーゼの活性を阻害することは、上記した通り肥満の予防あるいは改善に有効である。しかし、継続した摂取が望まれることから、食品由来の安全性が高い物質が好ましい。そこで、本発明の目的は、長期間継続的に摂取しても安全かつ効果的なα-アミラーゼの活性阻害作用を有する物質及び当該物質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明阻害剤を完成したものである。また、上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0010】
本発明に係る第1のα-アミラーゼ活性阻害剤は、セイヨウシロヤナギの抽出物と、ブドウ果皮の抽出物、ブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実の抽出物、紅茶の抽出物、カシス果実の抽出物、たまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも1種と、を含有することを特徴とする。
かかる構成により、本発明に係る第1のα-アミラーゼ活性阻害剤は、安全で、かつ肥満の予防あるいは改善に有効となる。
【0011】
本発明に係る第2のα-アミラーゼ活性阻害剤は、セイヨウシロヤナギの抽出物と、ブドウ果皮の抽出物、ブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実の抽出物、紅茶の抽出物、カシス果実の抽出物、たまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも2種と、を含有することを特徴とする。
かかる構成により、本発明に係る第2のα-アミラーゼ活性阻害剤は、安全で、かつ肥満の予防あるいは改善に有効となる。
【0012】
本発明に係る第3のα-アミラーゼ活性阻害剤は、セイヨウシロヤナギの抽出物と、ブドウ果皮の抽出物及びブドウ種子の抽出物と、を含有することを特徴とする。
かかる構成により、本発明に係る第3のα-アミラーゼ活性阻害剤は、安全で、かつ肥満の予防あるいは改善に有効となる。
【0013】
本発明に係る第4のα-アミラーゼ活性阻害剤は、セイヨウシロヤナギの抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたものと、ブドウ果皮の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、ブドウ種子の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、リンゴンベリー果実の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、紅茶の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、カシス果実の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたもの、たまねぎ外皮の抽出物を乾燥させ粉末または顆粒としたものの中から選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明に係る第4のα-アミラーゼ活性阻害剤は、安全で、かつ肥満の予防あるいは改善に有効となる。また、粉末または顆粒状のα-アミラーゼ活性阻害剤を提供することができる。これにより、小袋等に入れて携帯することができるようになる。そのため、食事の際、飲料等に溶かして簡易に摂取することができるようになる。
【0014】
また、好ましくは、前記セイヨウシロヤナギの粉末または顆粒は、サリシンが1重量%~3重量%含まれていることを特徴とする。
かかる構成により、より効果的なα-アミラーゼ活性阻害剤を提供することができる。
【0015】
本発明に係るα-アミラーゼ活性阻害剤の製造方法は、セイヨウシロヤナギの抽出物を乾燥し、賦形剤を加えて粉末または顆粒にする第1工程と、ブドウ果皮の抽出物、ブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実の抽出物、紅茶の抽出物、カシス果実の抽出物、たまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも1種を乾燥し、賦形剤を加えて粉末または顆粒にする第2工程と、を有し、前記第1工程で生成したセイヨウシロヤナギの粉末または顆粒と、前記第2工程で生成したブドウ果皮の粉末または顆粒、ブドウ種子の粉末または顆粒、リンゴンベリー果実の粉末または顆粒、紅茶の粉末または顆粒、カシス果実の粉末または顆粒、たまねぎ外皮の粉末または顆粒中から選択される少なくとも1種の粉末または顆粒と、を混合する第3工程とを有することを特徴とする。
かかる構成により、安全で、かつ肥満の予防あるいは改善に有効なα-アミラーゼ活性阻害剤を製造することができる。
【0016】
なお、本発明の特徴とするところは、ブドウ果皮、リンゴンベリー果実、紅茶、カシス果実、ブドウ種子、たまねぎ外皮の抽出物からなる群から選択される1種類以上とセイヨウシロヤナギの抽出物を配合する点にある。
【0017】
本発明者は、既に食用として利用されている植物由来の成分を対象とし、それぞれの抽出液のα-アミラーゼ活性の阻害効果を検証した。その結果、7種類においてα-アミラーゼ活性の阻害効果を確認した。さらに、それだけでは効果が小さく、一定のものを組み合わせたときに、相乗効果を示すことも分かった。
【0018】
本発明の請求項1記載のものについて説明する。
α-アミラーゼ活性阻害剤は、活性を完全に阻害するという意味ではなく、弱めるという意味であり、どの程度弱めるかは問題ではない。
ブドウ果皮とは、ブドウの皮である。ブドウの種類は問わない。抽出の方法は、水やアルコール、含水アルコールで抽出するものである。ブドウはポリフェノールが多く、これがα-アミラーゼ活性阻害効果があると言われている。
【0019】
ブドウ果皮抽出物は、それを乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものを用いてもよい。
ポリフェノールの1種であるレスベラトロールが10~70重量%含まれる粉末が好適である。
【0020】
リンゴンベリー果実は、コケモモの実である。この抽出方法も水やアルコール、含水アルコールで抽出するもので、特別な方法である必要ない。また、これもそのまま液体用いても、それを乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものを用いてもよい。これは、プロアントシアニンが10~50重量%含まれる粉末が好適である。
【0021】
紅茶の抽出液は、水で抽出するのがよい。また、上記同様に粉末にしても、スプレードライ等によって粉末にしてもよい。この場合、カフェインを3~15重量%含むものが好適である。
カシス果実の抽出は、これも水やアルコール、含水アルコールで抽出するもので、圧搾してもよい。それを乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものでも、スプレードライ等によって粉末にしてもよい。これは、総アントシアニン量が、5~20重量%含まれる粉末が好適である。
【0022】
ブドウ種子とは、ブドウの種である。ブドウの種類は問わない。この抽出方法も水やアルコール、含水アルコールで抽出するものである。ブドウ種子抽出物は、それを乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものを用いてもよい。
ポリフェノールの1種であるプロアントシアニジンが10~70重量%含まれる粉末が好適である。
【0023】
たまねぎ外皮とは、たまねぎ表面の皮である。この抽出方法も水やアルコール、含水アルコールで抽出するものである。また、これもそのまま液体で用いても、抽出した液体を乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものを用いてもよい。
【0024】
セイヨウシロヤナギは、葉、枝、樹皮等の抽出物である。抽出方法は、水やアルコール、含水アルコールで抽出するものである。抽出した液体を乾燥して粉末(賦形剤を加えてもよい)又は顆粒にしたものでよい。サリシン1~3%程度含む粉末が好適である。
【0025】
以上の説明したアルコールは、エタノールが好適であるが他のアルコールでもよい。アルコール溶液の場合、濃度は40~80重量%が好適である。
上記抽出物は、粉末でも、抽出した液体のままでも、濃縮したものでもよい。濃縮の程度は自由である。
【0026】
本発明は、セイヨウシロヤナギの抽出物と、ブドウ果皮の抽出物、ブドウ種子の抽出物、リンゴンベリー果実の抽出物、紅茶の抽出物、カシス果実の抽出物、たまねぎ外皮の抽出物の中から選択される少なくとも1種と、を混合したものである。通常であれば、同じものを2倍又は同じ効果のものを加えて倍の量にすれば、ほぼ2倍の阻害効果が得られるはずであるところ、本発明は、特別なものを組み合わせれば、倍以上の大きな効果が得られることを見出して、完成したものである。即ち、セイヨウシロヤナギと同効果のものを同量混合すると、その理由は定かではないが、単に倍になるのではなく、数倍にもなるのである。
【0027】
本発明では、セイヨウシロヤナギの抽出物と他の6種の抽出物(1種でも複数でも)との混合比率は1:9~9:1、好ましくは3:7~7:3の割合である。混合すれば、それだけで、単なる混合(加算)以上の相乗効果が得られるのである。
【0028】
本発明では、上記に記載したセイヨウシロヤナギの抽出物を粉末または顆粒にしたものと、他の6種の抽出物を粉末または顆粒にしたものの少なくとも1種とを混合して使用しても構わない。抽出物を粉末または顆粒の状態で使用しても効果に違いはないためである。なお、各々の粉末または顆粒を混合する方法は、ミキサー等で混合すればよい。
【0029】
粉末または顆粒状のα-アミラーゼ活性阻害剤であれば、小袋等に入れて携帯することができるようになる。そのため、食事の際、飲料等に溶かして簡易に摂取することができるようになる。
【0030】
また、上述したセイヨウシロヤナギの粉末または顆粒と、他の6種の粉末または顆粒の少なくとも1種とを混合した混合物を使用して錠剤、カプセル、ドリンク、ゼリー等を製造することができる。具体的には、錠剤は、混合物を押し固めて錠剤を製造する。カプセルは、混合物をカプセルに詰め込んで製造する。ドリンクは、混合物を水などの溶媒に溶かして製造する。ゼリーは、混合物を水などの溶媒に溶かし、当該溶媒にゼラチン等のゲル化剤を添加して製造する。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、通常の量からは考えられないような高いα-アミラーゼ阻害効果を発揮する。よって、使用量が少なくてすむ。また、本発明阻害剤は、すべて食物由来のものであり、非常に安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】効果を示す棒グラフである。
図2】基準食及び検査食を摂取した後の血糖値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に調整例および試験例をあげ、本発明を具体的に説明する。但し、発明はこれらに限定されるものではない。
調整例1 セイヨウシロヤナギの抽出
セイヨウシロヤナギの葉や枝、樹皮を含水エタノール(エタノール濃度が70重量%)で抽出した。この抽出液を乾燥し、賦形剤(ここでは、マルトデキストリン)を加えて粉末加工を行い、サリシン約1.5%を含むエキス粉末を得た。
【0034】
調整例2 ブドウ果皮の抽出
ブドウの果皮を上記の含水エタノールで抽出した。この抽出液を乾燥し、上記の賦形剤を加えて粉末加工を行い、レスベラトロール約50%を含むエキス粉末を得た。
調整例3 リンゴンベリー果実の抽出
リンゴンベリー果実に上記の含水エタノールを加え抽出した。この抽出液を乾燥し、上記の賦形剤を加えて粉末加工を行い、レスベラトロール約10%、アントシアニン約10%、プロアントシアニジン約35%を含むエキス粉末を得た。
【0035】
調整例4 紅茶の抽出
ケニア産の茶葉に水を加えて抽出し、スプレードライによる粉末加工を行い、カフェイン約5%含むエキス粉末を得た。
調整例5 カシス果実の抽出
カシス果実に水を加え圧搾抽出し、賦形剤を加えてスプレードライによる粉末加工を行い、総アントシアニン量約10%を含むエキス粉末を得た。
【0036】
調整例6 ブドウ種子の抽出
ブドウの種子にエタノールを加えて抽出し、賦形剤を加えてスプレードライによる粉末加工を行い、全フラバノール約40%、プロアントシアニジン約38%を含むエキス粉末を得た。
調整例7 たまねぎ外皮の抽出
乾燥させたたまねぎ外皮粉末に水を加えて抽出し、固形分約5%のエキス溶液を得た。
【0037】
α-アミラーゼ阻害活性試験
上記調整例1から6で調整した各エキス粉末、または上記調整例7で調整したエキス溶液について、α-アミラーゼに対する阻害活性を調べた。なお、各エキス粉末0.5g(ブドウ種子エキス以外)を蒸留水に溶解し50mLに調整し、エキス溶液とした。得られたエキス溶液をさらに蒸留水で40倍希釈しこの溶液を検体とし、試験を実施した。ブドウ種子エキスは、同様の方法で、希釈倍率だけを400倍に変えた。
調整例7のエキス溶液は、そのまま12倍に希釈した。
【0038】
具体的には、まず、デンプン溶液50μLとエキス溶液25μLと蒸留水25μL、またはデンプン溶液50μLと2種類のエキス溶液各25μLを試験管内で混合し、湯煎(37℃、5分間)によりプレインキュベートした。プレインキュベート後、ヒト唾液由来のα-アミラーゼ溶液を20μL加えて混合し、直ちに湯煎(37℃、20分間)により酵素反応を行った。なお、エキス溶液の対照として蒸留水を使用し、また酵素なしの陰性対照としてα-アミラーゼ溶液の代わりに0.06Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものも用意した。酵素反応後、直ちに0.1M塩酸を1mL加えることで酵素反応を停止し、反応液とした。これをヨウ素デンプン反応により呈色するため、この反応液1000μLと0.05mol/Lのヨウ素溶液250μLを混合し、分光光度計にて波長660nmの吸光度を測定した。なお、α-アミラーゼ阻害活性率は下記式にて求めた。
【0039】
α-アミラーゼ阻害活性率(%)=100-
{100×(陽性試験群-陰性試験群)/(陽性蒸留水-陰性蒸留水)}
【0040】
得られた結果より1種類のエキス溶液を使用した時の阻害活性(相対評価)を1とした。全ての活性値が1であるのは、そのようになるように抽出濃度を試行錯誤で求めた結果である。よって、抽出するときの濃度や量が異なれば、当然物質によってこの値は異なる。
【0041】
その1成分のものと、2種類のエキス溶液を使用したときの阻害活性を表1に示す。また、差を明らかにするため図1にグラフにした。
通常、酵素活性阻害物が2倍になると、その阻害活性率は2倍となる。そのため、通常、2種類のエキスを使用した場合の阻害活性の相対値は2となる。しかし、本発明の実施例である、実施例1~実施例6のセイヨウシロヤナギと他のエキスを混合したものでは、阻害活性の相対値は4以上であり、通常の2倍以上の阻害活性が得られた。
【0042】
【表1】
【0043】
また、比較例として、セイヨウシロヤナギを含まない2種混合したものは、比較例1~7の通り、1.7~2.8で、通常の混合で予想される程度しか効果はでなかった。
よって、特定の組み合わせにより相乗的な阻害効果が得られることが明らかとなった。
【0044】
次に、調整例1のセイヨウシロヤナギの抽出物に、調整例2のブドウ果皮の抽出物と調整例6のブドウ種子の抽出物を混合した場合における実施例7と比較例8についての実験結果を示す。
【0045】
<実施例7>
水:500ml
ライスミルク×酵素(株式会社ファイン):37.5g
調整例1のセイヨウシロヤナギのエキス粉末:0.1125g
調整例2のブドウ果皮のエキス粉末:0.1125g
調整例6のブドウ種子のエキス粉末:0.1125g
上記成分を混合し、実施例7(以下、「検査食」と表示)とした。なお、上記記載のライスミルク×酵素の量(株式会社ファイン)は、標準的な使用方法の5倍の量である。また、各粉末を上記数値以上追加した場合、ライスミルク×酵素(株式会社ファイン)への味の影響が大きくなる。
【0046】
<比較例8>
水:500ml
ライスミルク×酵素(株式会社ファイン):37.5g
上記成分を混合し、比較例8(以下、「基準食」と表示)とした。なお、上記記載のライスミルク×酵素の量(株式会社ファイン)は、標準的な使用方法の5倍の量である。
【0047】
実施例7及び比較例8で作成した検査食及び基準食の評価は、以下の方法で評価した。
【0048】
<血糖値の測定>
試験前日の夜より水の飲用のみを可能とする12時間以上の絶食を行い、翌朝測定を実施した。まず、絶食後の血糖値を測定し0分時の血糖値とした。その後、直ちに基準食または検査食を1分以内に全て摂取し、接種後30分間隔で120分まで経時的に血糖値を測定した。なお、血糖値の測定はメディセーフミニ(テルモ株式会社)を用いて測定した。
【0049】
<血糖上昇曲線下面積>
血糖値上昇の指標として、血糖上昇曲線下面積を求めた。これは、摂取0分を基準としてこれより上昇を示した血糖値の曲線下の面積を求めるものである(Glyemic Index 食後の血糖値上昇抑制への効果と活用―2011 第一出版株式会社 p.15 参照)。
【0050】
図2は、基準食及び検査食を摂取した後の血糖値の変化を示す図である。基準食を摂取した場合、摂取後30分で最大血糖値171mg/dlとなり、摂取後90分まで穏やかに低下し、以降ほぼ横這いとなった。一方、検査食を摂取した場合、摂取後30分で最大血糖値131mg/dlとなり、食後120分まで穏やかに低下した。また、血糖上昇曲線下面積を求めたところ、基準食は4100、検査食は1914となり血糖値の上昇を約47%に抑えた。
【0051】
以上により、調整例1のセイヨウシロヤナギの抽出物に調整例2のブドウ果皮の抽出物と調整例6のブドウ種子の抽出物を混合した検査食は、飲食による血糖値の上昇を大幅に抑えることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、α-アミラーゼの活性阻害作用を相乗的に高める組成物を得ることができる。そのため、より少量で効果を得ることができる。さらに食品由来であることから長期間継続的に摂取しても安全である。従って、本発明のα-アミラーゼの活性阻害剤は、糖の分解を抑制することで抗肥満や血糖値上昇の抑制が期待できる成分として健康食品やサプリメント、あるいは一般食品への添加物として日常的に使用することができる。

図1
図2