(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ガス乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/32 20200101AFI20230616BHJP
【FI】
D06F58/32
(21)【出願番号】P 2019147818
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390027421
【氏名又は名称】株式会社東京洗染機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三科 道利
(72)【発明者】
【氏名】薬袋 雄介
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-140481(JP,A)
【文献】特開2018-126202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体と、
前記乾燥機本体内に固定された乾燥外胴体と、
前記乾燥外胴体内に回転自在に配置されて被乾燥物が投入される乾燥ドラムと、
前記乾燥外胴体内に供給される乾燥風を生成する乾燥風生成部と、
前記乾燥風生成部で生成された乾燥風を前記乾燥外胴体内に供給し前記乾燥外胴体内から導出された乾燥風を前記乾燥風生成部に循環させるとともに前記乾燥機本体の外方へ放出する乾燥風循環部と、を備えたガス乾燥機であって、
前記乾燥風循環部は、前記乾燥外胴体内から前記被乾燥物を乾燥させた後の導出乾燥風を排気するとともに前記乾燥風生成部内の気体も前記乾燥外胴体内を通って排気するブロワーと、前記ブロワーによって前記乾燥外胴体内から導出された導出乾燥風が前記乾燥機本体の外方へ排出される排出口と前記乾燥風生成部に導出乾燥風を循環させる循環口とが設けられた排気循環ダクトと、前記排出口から排出される導出乾燥風の量と前記循環口から前記乾燥風生成部に循環させる導出乾燥風の量とを調整可能な排気循環ダンパーと、を備え、
前記ガス乾燥機の待機状態で、乾燥の開始を予告する予告信号に基づいて前記排気循環ダンパーで前記循環口を全閉状態に閉塞し、前記ブロワーを作動させて前記乾燥風生成部の気体および前記乾燥外胴体内の導出乾燥風を前記乾燥機本体の外方へ排出する制御部を有することを特徴とするガス乾燥機。
【請求項2】
前記予告信号は、前記ガス乾燥機による乾燥工程の前工程から前記被乾燥物が搬送されることを検知する信号であることを特徴とする請求項
1に記載のガス乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯後の被乾燥物を、ガスバーナーを用いた乾燥風により乾燥させるガス乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯した洗濯物を乾燥させるガス乾燥機が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたガス乾燥機は、乾燥室と、この乾燥室内に燃焼ガス(乾燥風)を供給するガスバーナーと、乾燥室内の乾燥風を外部に排出する排気ファンとで形成されている。そして、排気ファンを作動させることで、外気がガスバーナーにより加熱されて乾燥風が形成され、この乾燥風が乾燥室内に供給され、乾燥室内で被乾燥物を乾燥させた後に排気ファンによって外部に排出される。
【0003】
このようなガス乾燥機では、例えばガス遮断弁等から可燃ガスが漏れて乾燥機内に滞留している状態でガスバーナーを着火すると火災や爆発といった事故を引きおこす恐れがある。このような事故を回避するためにいわゆるプレパージが行われている。特許文献1に記載されたガス乾燥機では、ガスバーナーが着火していないときに燃焼するパイロットバーナを設けることによってプレパージを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、パイロットバーナを用いることによりプレパージを行う場合、パイロットバーナをメインのガスバーナーの他に設けなくてはならず、パイロットバーナを燃焼させるための制御も必要となるため、ガス乾燥機の構造が複雑化する。さらに、メインのガスバーナーの燃料に加えてパイロットバーナの燃料も必要となるため、ガス乾燥機を稼動させるためのコストが高くなる。また、パイロットバーナの燃焼によって、乾燥用気体通路内が高温になるおそれがある。
【0006】
そこで、パイロットバーナを用いることなくプレパージを行う方法として、ガス乾燥機の待機状態から被乾燥物を乾燥室に投入し、ガスバーナーを着火する前に排気ファンを作動させてガス乾燥機内を換気し、ガス乾燥機内に滞留しているガスを外部に放出するプレパージが提案されている。
【0007】
しかしながら、被乾燥物を乾燥室に投入し、ガスバーナーを着火する直前で排気ファンを所定時間作動させる場合、乾燥室に被乾燥物を投入する度に排気ファンを所定時間作動させるため、被乾燥物を繰り返し乾燥させると排気ファンを作動させる時間分乾燥時間が長くなる。
【0008】
また、ガス乾燥機の構造上、乾燥室内から乾燥風を外部に排気するために排気ファンは乾燥風の流れ方向の下流側に配置され、外気を加熱して乾燥風を生成するガスバーナーは乾燥風の流れ方向の上流側に配置されている。このため、乾燥室の被乾燥物の投入口を開放した状態で排気ファンを作動させると投入口から外気を吸い込んでしまい、吸い込まれた外気がそのまま排気ファンによって外方へ排出されてしまうので、ガスバーナーの後(乾燥風の流れ方向の上流側)に滞留している不燃ガス等は排気ファンの作動によって外方へ排出することができず、ガスバーナーの後に滞留するので良好な排気を行うことができない。
【0009】
そこで、本発明は、パイロットバーナを用いることなく、乾燥時間の低減を図ることができて、不燃ガスの良好な排気を行うことができるガス乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、 乾燥機本体と、前記乾燥機本体内に固定された乾燥外胴体と、前記乾燥外胴体内に回転自在に配置されて被乾燥物が投入される乾燥ドラムと、前記乾燥外胴体内に供給される乾燥風を生成する乾燥風生成部と、前記乾燥風生成部で生成された乾燥風を前記乾燥外胴体内に供給し前記乾燥外胴体内から導出された乾燥風を前記乾燥風生成部に循環させるとともに前記乾燥機本体の外方へ放出する乾燥風循環部と、を備えたガス乾燥機であって、前記乾燥風循環部は、前記乾燥外胴体内から前記被乾燥物を乾燥させた後の導出乾燥風を排気するとともに前記乾燥風生成部内の気体も前記乾燥外胴体内を通って排気するブロワーと、前記ブロワーによって前記乾燥外胴体内から導出された導出乾燥風が前記乾燥機本体の外方へ排出される排出口と前記乾燥風生成部に導出乾燥風を循環させる循環口とが設けられた排気循環ダクトと、前記排出口から排出される導出乾燥風の量と前記循環口から前記乾燥風生成部に循環させる導出乾燥風の量とを調整可能な排気循環ダンパーと、を備え、前記ガス乾燥機の待機状態で、乾燥の開始を予告する予告信号に基づいて前記排気循環ダンパーで前記循環口を全閉状態に閉塞し、前記ブロワーを作動させて前記乾燥風生成部の気体および前記乾燥外胴体内の導出乾燥風を前記乾燥機本体の外方へ排出する制御部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記予告信号は、前記ガス乾燥機による乾燥工程の前工程から被乾燥物が搬送されることを検知する信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥ドラム内に被乾燥物を投入する前のガス乾燥機の待機状態で、ガス乾燥機を稼動させる予告信号に基づいて乾燥風循環部を作動させて乾燥機本体内の排気を行うので、パイロットバーナを用いることなく、乾燥時間の低減を図ることができて、不燃ガスの良好な排気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の全体を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の内部を示す概略図。
【
図3】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の上部を示す上面図。
【
図4】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の乾燥風生成部の概略を示す概略透視斜視図。
【
図5】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の外気取入室内の空気の流れを説明する説明図。
【
図6】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の制御部と、この制御部に接続された機器及びセンサーを示すブロック図。
【
図7】本発明の実施の形態に係るガス乾燥機の制御部の作用を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るガス乾燥機の実施の形態について詳細に説明する。本発明に係るガス乾燥機は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯後に脱水した被乾燥物を、ガスバーナーを用いた乾燥風により乾燥させる。
【0016】
[ガス乾燥機の全体構成と実施例の特徴]
本実施の形態のガス乾燥機1は、乾燥機本体2と、乾燥機本体2内に固定された乾燥外胴体3と、乾燥外胴体3内に回転自在に配置されて被乾燥物が投入される乾燥ドラム4と、乾燥外胴体3内に供給される乾燥風を生成する乾燥風生成部5と、乾燥風生成部5で生成された乾燥風を乾燥外胴体3内に供給し乾燥外胴体3内から導出された乾燥風を乾燥風生成部5に循環させるとともに乾燥機本体2の外方へ放出する乾燥風循環部6と、を備えている。
【0017】
上記乾燥風生成部5は、循環される乾燥風の一部が取り込まれる循環風取入口44と外気が取り込まれる外気取入口25とが形成された外気取入室21と、この外気取入室21内に取り込まれた循環風と外気とを加熱する加熱部26とを有している。
【0018】
上記乾燥風循環部6は、乾燥外胴体3内から被乾燥物を乾燥させた後の導出乾燥風を導出させるブロワー42と、ブロワー42によって乾燥外胴体3内から導出された導出乾燥風が排出される排出口43と、循環風取入口44と連通する循環口45とが設けられた排気循環ダクト46とを有している。
【0019】
また、排気循環ダクト46内には乾燥外胴体3内から導出された導出乾燥風の湿度を検出する排気湿度検出センサー48が設けられている。また、外気取入口25には外気の外気取入室21内への取込量を調整可能な外気取込ダンパー49(
図4参照)が形成されている。また、排出口43から排出される導出乾燥風の量と循環口45から外気取入室21内に循環される導出乾燥風の量とを調整可能な排気循環ダンパー47が循環口45の開口縁部に設けられている。
【0020】
さらに、本実施の形態のガス乾燥機1は、乾燥ドラム4内に被乾燥物を投入する前のガス乾燥機1の待機状態で、ガス乾燥機1における乾燥の開始を予告する予告信号に基づいて乾燥風循環部6を作動させて乾燥機本体2内の排気を行う制御部50を有している。
【0021】
[乾燥機本体]
乾燥機本体2は、
図1に示すように前面部7と、背面部8と、側面9、9と、天板10と、底面11とで箱形状に形成されている。前面部7には、被乾燥物を内部に投入するとともに、乾燥後の被乾燥物を取り出す投入取出口12が設けられている。この投入取出口12は、前面部7に上下動可能に設けられた開閉扉13によって開閉される。開閉扉13は、図示しない駆動機構によって上下動可能に構成されている。開閉扉13には、2つの円形確認窓14が設けられている。また、乾燥機本体2は、底面11の四隅を支持する4本の脚部15、15、15、15により床16上に設置される。
【0022】
また、ガス乾燥機1の前面部7側には、
図3に示すように被乾燥物を前工程から搬送するコンベア52が配置されている。このコンベア52は、前工程である洗濯装置によって洗濯され脱水された被乾燥物を乾燥機本体2の前面側に設けられている投入取出口12まで搬送し、投入取出口12から被乾燥物を乾燥ドラム4内に投入する。また、コンベア52に近接してコンベア52の搬送状態を検知するコンベア搬送検知センサー53が設けられている。被乾燥物を前工程から被乾燥物を搬送するために搬送を開始したことは、コンベア搬送検知センサー53によって検知され、このコンベア搬送検知センサー53が検知した結果が予告信号として制御部50に送信される。この予告信号に基づいて制御部50はガス乾燥機1の乾燥風循環部6の後述するブロワー42、42を作動させる。
【0023】
[乾燥外胴体]
乾燥外胴体3は、乾燥機本体2の内壁に固定されている。乾燥外胴体3は、筒状で、軸方向の一方に乾燥機本体2の投入取出口12と連通する開口が形成されている。開閉扉13により投入取出口12を閉塞した状態では乾燥外胴体3内は密封状態となっている。また、乾燥外胴体3の上部一側に乾燥風導入口17が設けられ、上部他側に乾燥風導出口18が設けられている。また、乾燥外胴体3には、投入取出口12の反対側の面に赤外線センサー51が設けられている。この赤外線センサー51は、乾燥ドラム4内に投入された被乾燥物の温度を検出する。
【0024】
[乾燥ドラム]
乾燥ドラム4は、筒状で外周面(側面)全体に小径の穴が、パンチング等により形成されている。また、軸方向の一方は乾燥機本体2の投入取出口12と連通している。また、乾燥ドラム4は、駆動ローラ19、19で乾燥外胴体3内に回転自在に支持されている。駆動ローラ19、19には、乾燥機本体2の下部に支持された駆動モータ20の回転駆動力が図示しない伝達手段によって伝達される。この乾燥ドラム4は、回転しながら乾燥風生成部5により生成され乾燥外胴体3内に供給された乾燥風により被乾燥物を乾燥させる。
【0025】
[乾燥風生成部]
乾燥風生成部5は、
図1及び
図2に示すように、乾燥機本体2の天板10上に載置され、天板10の上下方向の投影面内に設置されている。
図4に示すように、乾燥風生成部5は、循環される乾燥風の一部が取り込まれる循環風取入口44と外気が取り込まれる外気取入口とが形成された外気取入室21と、この外気取入室21内に取り込まれた循環風と外気とを加熱する加熱部26とを有している。加熱部26は、一側が外気取入室21と連通する外筒22と、外筒22内に火炎を放射するガスバーナー23と、外筒22内に設けられてガスバーナー23の火炎を包み込む内筒24とで形成されている。
【0026】
外気取入室21は箱形状で外気取入口25が外周面に形成されている。外気取入口25は、外気取入室21の側面26aに設けられた第1取入口27と、外気取入室21の天板26bに設けられた第2取入口28とで形成されている。第1、第2取入口27、28には、それぞれ第1、第2取入口27、28を開閉可能な外気取込ダンパー49である第1ダンパー29、第2ダンパー30がそれぞれ設けられている。これらの第1、第2ダンパー29、30は、第1、第2取入口27、28の開口縁部に回動可能にそれぞれ支持されており、図示しない駆動手段によって回動自在となっている。これらの第1、第2ダンパー29、30の回動角度によって第1、第2取入口27、28の開口面積が変化し、外気取入室21内への外気の取り込み量を調整することができる。
【0027】
また、第1ダンパー29は、
図5に示すように、第1取入口27から外気取入室21に取り込まれた外気を外気取入室21内の下部側に導き、第2ダンパー30は、第2取入口28から外気取入室21に取り込まれた外気を第1取入口27から取り込まれた外気側に導く。これにより、第1、第2取入口27、28から取り込まれた外気は、外気取入室21内で旋回しながら、外気取入室21内から後述する外気流通口32を通って外筒22内へ流れる。
【0028】
外気取入室21は、前面31側で外筒22の一側と外気流通口32によって連通されている。また、外気取入室21には、乾燥風循環部6によって循環される乾燥風の一部が流入する循環風取入口44の一部が設けられている。この循環風取入口44の他部は、外筒22に設けられている。すなわち、循環風取入口44は、外気取入室21と外筒22に向けて開口している。
【0029】
外筒22は、半筒状の外周壁33と、平板状の底壁34とで長尺な形状に形成されている。一側、すなわち外気取入室21側には上記外気流通口32が形成され、他側には底壁34に乾燥風供給口35が設けられている。乾燥風供給口35からは、生成された乾燥風が乾燥外胴体3内に供給される。この外筒22の一側には、外気取入室21を貫通して設けられたガスバーナー23の火炎吐出口36が開口している。
【0030】
ガスバーナー23は、
図3に示すように、外気取入室21の背面37側に設けた火炎発生部38と、この火炎発生部38で発生した火炎を外気取入室21を貫通して外筒22内に導く火炎ノズル39とで形成されている。火炎ノズル39の先端側が火炎吐出口36となっている。そして、火炎発生部38によって発生させた火炎を火炎ノズル39の火炎吐出口36から外筒22の乾燥風供給口35側に向けて放射する。外筒22内に放射された火炎は、外筒22内の中心部に設けられた内筒24によって包み込まれた状態で放射される。
【0031】
内筒24は、筒状で火炎ノズル39の火炎吐出口36から放射されたガスバーナー23の火炎を包みこむように外気取入室21側の基端部から乾燥風供給口35側まで長尺状に形成されている。また、内筒24の乾燥風供給口35側の開口が、火炎によって高温となった熱風が吐出する熱風吐出口40となっている。また、内筒24の外壁は、外筒22の内壁との間に加熱通路部41を形成している。
【0032】
そして、
図5に示すように、第1取入口27から外気取入室21内に流入した外気は、外気取入室21内で旋回した状態で、外気流通口32から内筒24の下部側に流れ、第2取入口28から外気取入室21に流入した外気は、外気流通口32から内筒24の上部側に流れる。内筒24の下部側と上部側に流れる外気は、乾燥風循環部6によって循環される乾燥風と外筒22内で加熱通路部41を旋回した状態で通過することにより混ぜ合わされ、加熱される。すなわち、外気取入室21内に取り入れられた外気と循環された乾燥風は、内筒24の回りを竜巻(トルネード)のように旋回しながら乾燥風供給口35側に流れる。
【0033】
[乾燥風循環部]
乾燥風循環部6は、乾燥外胴体3内で被乾燥物を乾燥させた後の乾燥風を乾燥外胴体3内から導出させる2つのブロワー42、42と、ブロワー42、42によって乾燥外胴体3内から導出された乾燥風が排出される排出口43及び循環風取入口44と連通する循環口45とが設けられた排気循環ダクト46と、排出口43から排出される乾燥風の量と循環口45から外気取入室21、外筒22内に循環される乾燥風の量とを調整可能な排気循環ダンパー47とで形成されている。
【0034】
排気循環ダクト46は、
図3に示すように、乾燥風生成部5の外筒22に隣接して配置されている。排気循環ダクト46には、外筒22と外気取入室21に跨がって開口し、循環される乾燥風が外筒22と外気取入室21内に取り入れられる循環口45が設けられている。この循環口45は循環風取入口44と連通している。循環口45の開口縁部には、排気循環ダンパー47が回動可能に設けられている。この排気循環ダンパー47の回動位置によって、外筒22、外気取入室21内へ循環される乾燥風の量が調整される。
【0035】
排気循環ダクト46を挟んで外筒22の反対側に、2つのブロワー42、42が設けられている。これらのブロワー42、42は、乾燥外胴体3の乾燥風導出口18から、乾燥外胴体3内で被乾燥物を乾燥させた後の乾燥風を排気循環ダクト46内に導出させる。また、乾燥外胴体3内で被乾燥物を乾燥させた後の乾燥風を乾燥外胴体3内から導出させることで、乾燥風生成部5から温度調整された乾燥風が乾燥風導入口17を通って乾燥外胴体3内に供給される。これにより、乾燥風生成部5によって生成された乾燥風が、乾燥外胴体3、排気循環ダクト46、外筒22を循環する。
【0036】
図6に示すように、上記外気取込ダンパー49、排気循環ダンパー47、ガスバーナー23、ブロワー42、駆動モータ20、赤外線センサー51は、制御部50に接続されている。そして、制御部50は、外気取込ダンパー49を制御して外気取入口25を開閉し、排気循環ダンパー47を制御して排出口43を開閉する。なお、外気取込ダンパー49、排気循環ダンパー47は、図示しない駆動手段によって回動し、回動角度によって外気取入口25、排出口43の開口面積が変化する。
【0037】
また、制御部50には、排気湿度検出センサー48、赤外線センサー51、コンベア搬送検知センサー53が接続されている。排気湿度検出センサー48は、乾燥外胴体3内から排出される導出乾燥風の湿度を検出する。また、赤外線センサー51は、乾燥ドラム4内に投入された被洗物の温度を検出する。さらに、コンベア搬送検知センサー53は、前工程からガス乾燥機1まで被乾燥物を搬送するコンベアの搬送状態を検知する。
【0038】
次に、ガス乾燥機1の動作について説明する。最初にブロワー42、42を稼動させるとともに、ガスバーナー23を作動させて所定の温度の乾燥風を生成し、乾燥風を乾燥外胴体3内から導出させることで循環させる。乾燥風が所定の温度に達したら、開閉扉13を開けて投入取出口12を開放した状態で被乾燥物を乾燥ドラム4内に所定量投入する。このとき乾燥ドラム4は回転せずに停止している。なお、ブロワー42、42を稼動した状態で、回転している乾燥ドラム4内に投入取出口12から被乾燥物を投入しても良い。この場合、被乾燥物は乾燥ドラム4内に吸い込まれるため、被乾燥物が乾燥ドラム4内から飛び出したり、こぼれ落ちたりすることがない。
【0039】
被乾燥物を乾燥ドラム4内に投入し、開閉扉13によって投入取出口12を閉塞した後に、乾燥ドラム4を所定の回転数で回転駆動させる。被乾燥物の乾燥度合いによって、排気循環ダンパー47、第1、第2ダンパー29、30の回動角度を調整し、外気の取り込み量、循環する乾燥風の循環量を変化させて乾燥風の温度を調整する。
【0040】
乾燥風生成部5で乾燥風を生成するには、ブロワー42、42を駆動して乾燥風を循環させた状態でガスバーナーを点火し、循環する乾燥風と外気とを混合し、加熱する。ブロワー42、42を駆動して乾燥風を循環させると、第1、第2取入口27、28から外気が外気取入室21内に流入する。
【0041】
この場合、第1取入口27から流入した外気は、第1ダンパー29に導かれて外気流通口32から内筒24の下部側に回り込み、第2取入口28から流入した外気は、第2ダンパー30に導かれて外気流通口から内筒24の上部側に流れる。循環風取入口44ら外気取入室21と外筒22内に流入する乾燥風は内筒24の周囲に流れ、外気と混ざり合う。循環する乾燥風と外気とが混ざり合った空気は、内筒24の周囲を旋回しながら乾燥風供給口35側へ移動する。循環する乾燥風と外気とが混ざり合った空気が内筒24の周囲の加熱通路部41を旋回することで乾燥風と外気とがより混ざり合うとともに加熱され均一な温度の乾燥風となる。
【0042】
内筒24の周囲を旋回しながら乾燥風供給口35側に移動し、均一な温度分布となった空気は、内筒24の熱風吐出口40からの熱風によってさらに加熱されて所定の温度となり、乾燥風供給口35から乾燥外胴体3内へ乾燥風導入口17を通って供給される。乾燥外胴体3内に供給された所定の温度の乾燥風は、乾燥ドラム4内の被乾燥物を乾燥させた後に、乾燥風導出口18から排気循環ダクト46へと排出される。そして、乾燥風生成部5で再び外気と混ぜ合わされて所定の温度の乾燥風が生成される。
【0043】
次に、上記ガス乾燥機1を稼動させる前に行うプレパージについて
図7に示すフローチャートを用いて説明する。乾燥運転を始める前のガス乾燥機1の待機状態において、制御部50はステップS1において開閉扉13を閉じ状態とし、ステップS2において排気循環ダンパー47を閉じ状態とする。この状態から、ステップS3において前工程から被乾燥物を搬送するコンベア52が被乾燥物の搬送を開始したか否か、すなわちコンベア搬送検知センサー53からの予告信号が入力されたか否かを制御部50は判断する。
【0044】
制御部50が、コンベア52による被乾燥物の搬送が開始されたと判断すると、制御部50はステップS4においてブロワー42、42を作動させる。ブロワー42、42が作動すると乾燥外胴体3内の空気、乾燥風生成部5内の空気が乾燥機本体2の外方へ排出口43から排出される。このとき、外気が外気取入口25(第1取入口27、第2取入口28)から外気取入室21に流入し、外筒22を通って乾燥外胴体3に入り込み、乾燥外胴体3を通って排出口43から排出される。これにより外筒22内に残留している不燃ガスも外気とともに排出口43から乾燥機本体2の外方へ排出される。
【0045】
この場合、
図7に示すフローチャートにおけるステップS1~ステップS5の処理は、ガス乾燥機1に被乾燥物が搬送されてくるまでガス乾燥機1が待機している待機状態で行われる。このため、被乾燥物がコンベア52によってガス乾燥機1の前面側まで搬送される間に、乾燥機本体2内に滞留している不燃ガス等が外部に放出され、プレパージが行われる。
【0046】
ステップS5において、制御部50はブロワー42、42を作動させてから所定時間経過したか否かを判断する。所定時間経過していない場合は、ブロワー42、42の作動を継続させる。ステップS5においてブロワー42、42の作動開始から所定時間経過すると制御部50がプレパージが完了したと判断して、ステップS6において開閉扉13を開放し、ステップS7において排気循環ダンパー47を開放状態にする。
【0047】
次に制御部50は、ステップS8においてガスバーナー23を点火する。ガスバーナー23が点火されると開閉扉13が開放状態の投入取出口12から被乾燥物が乾燥ドラム4内に投入され、ステップS9において被乾燥物が乾燥ドラム4内に投入されたことを確認すると制御部50はステップS10において乾燥運転を開始する。ステップS11において乾燥運転が終了した否かを制御部50が判断し、終了していない場合は乾燥運転が続けられる。乾燥運転が終了すると制御部50は、ステップS12において乾燥作業が終了したか否かを判断し、乾燥作業が終了していない場合はステップS1以下が繰り返し実行される。乾燥作業が終了すると制御部50は、一連の制御を終了する。
【0048】
以下に、ステップS10における乾燥運転について説明する。乾燥させる被乾燥物、すなわち洗濯後に脱水された状態の被乾燥物を乾燥ドラム4内に所定量投入し、ガス乾燥機1を稼動させると、既に点火されているガスバーナー23によって所定の温度に加熱された乾燥風が乾燥外胴体に供給される。このとき制御部50は、外気取込ダンパー49、排気循環ダンパー47を駆動して、外気の取込量や循環する風量を制御する。
【0049】
制御部50は、乾燥ドラム4内に投入された被乾燥物の水分量が設定値以下か否かを判断する。この場合、予め被乾燥物の水分量が判っている場合に、水分量の大小を選択するスイッチにより水分量が設定値以下か否かを制御部50に入力することで、制御部50は、被乾燥物の水分量が設定値以下か否かを判断する。なお、被乾燥物の水分量を測定可能なセンサーによって、被乾燥物の水分量を測定し、この測定結果に基づいて被乾燥物の水分量が設定値以下か否かを判断しても良い。また、乾燥ドラム4内に被乾燥物を投入し、外気取込ダンパー49、排気循環ダンパー47を全閉状態とし所定時間運転させ、このときの排気湿度検出センサー48の検出結果が設定値以下であれば被乾燥物の水分量が設定値以下であると判断しても良い。
【0050】
乾燥ドラム4内に投入された被乾燥物の水分量が設定値以下であると制御部50が判断すると、すなわち、脱水工程において、絞り過ぎて被乾燥物が含む水分量が極端に少ない場合は、制御部50は、外気取込ダンパー49を全閉状態とし、排気循環ダンパー47を全閉状態とする。
【0051】
外気取込ダンパー49、排気循環ダンパー47を全閉状態とすると、乾燥外胴体3から導出された乾燥風を全てまたは、全てでなくとも例えば99%の循環比率で循環させる全量循環の状態となる。すなわち、外気を取り込むことなく、乾燥外胴体3から導出された乾燥風の全てを循環させて、この乾燥風を被乾燥物に吹き付ける。
【0052】
制御部50は、排気湿度検出センサー48が検出する排気湿度が第1の設定値以上になったか否かを判断する。排気湿度が第1の設定値以上でない場合は、外気取込ダンパーは全閉状態であり、排気循環ダンパーは全閉状態とする。
【0053】
この場合、全量循環させているので、循環される乾燥風の排気湿度は被乾燥物の表面から蒸発した水分を含み次第に上昇する。このため、湿度が高くなった、つまり水分を含んだ乾燥風が乾燥ドラム4内の被乾燥物に吹き付けられるため、水分量が少ない被乾燥物が次第に水分を含む状態となる。これにより、被乾燥物がいわゆる「蒸らされる」ことにより脱水によって潰れた(倒れた)繊維や、繊維のパイルが起き上がる(起毛する)。これに加えて乾燥ドラム4の回動により水分量の少ない被乾燥物が乾燥ドラム4内で移動することで、水分を含んだ熱風と叩きによって起毛する。
【0054】
排気湿度が第1の設定値以上となったと制御部50が判断すると、制御部50は全閉状態の外気取込ダンパー49を徐々に開放し、全閉状態の排気循環ダンパー47を徐々に開放する。すなわち、外気を取り入れ、循環される乾燥風を外部に排出する吸排気制御の状態となる。この場合、排気湿度が高いときは、循環比率を小さくし、ブロワー42の風量を大きくする。つまり、排出口43から、循環する乾燥風を多く排出し、外気を多く取り込む。排気湿度が低くなると、今度は、循環する乾燥風の量を大きくし、ブロワー42の風量を小さくする。
【0055】
そして、排気湿度が第2の設定値以下になったか否かを制御部50が判断する。排気湿度が第2の設定値以下になっていない場合は、外気取込ダンパー49を徐々に開放し、排気循環ダンパー47を徐々に開放する。排気湿度が第2の設定値以下となると、制御部50は、外気取込ダンパー49を全閉状態とし、排気循環ダンパー47を全閉状態とし全量循環の状態とする。この状態から排気湿度が第3の設定値以下、すなわち乾燥が終了したことを示す排気湿度の値以下になったか否かを判断する。排気湿度が第3の設定値以下に成っていない場合は、外気取込ダンパーが全閉状態、排気循環ダンパーが全閉状態が実行される。排気湿度が第3の設定値以下になると乾燥作業が終了する。ここで、本実施の形態では「第1の設定値」>「第2の設定値」>「第3の設定値」の関係となるように、各設定値が設定されている。
【0056】
水分量が多い被乾燥物の場合には、制御部50は、外気取込ダンパー49を全開状態とし、排気循環ダンパー47を全開状態とし、全量吸排気制御の状態とする。そして、排気湿度が第2の設定値以下となったか否かを制御部50は判断する。排気湿度が第2の設定値以下になっていない場合は、外気取込ダンパーを全開状態とし、排気循環ダンパーを全開状態とする。排気湿度が第2の設定値以下となると、制御部50は、外気取込ダンパーを全閉状態とし、排気循環ダンパーを全閉状態とする。
【0057】
水分量が多い被乾燥物であると判断されると、被乾燥物は水分を多く含んでおり、脱水時に絞られ過ぎていないので繊維が倒れておらず、一般的な乾燥方法によって乾燥される。すなわち、水分量が少ない被乾燥物の場合は、全量循環することで被乾燥物が「蒸らされる」が、水分量が多い被乾燥物の場合は、水分を多量に含んでいるため、「蒸らす」必要がなく、通常の乾燥工程で乾燥される。
【0058】
本発明の実施形態によれば、乾燥ドラム4内に被乾燥物を投入する前のガス乾燥機1の待機状態で、ガス乾燥機1による乾燥の開始を予告する予告信号、すなわちコンベア搬送検知センサー53からの信号に基づいて乾燥風循環部6を作動させて乾燥機本体2内の排気(プレパージ)を行うので、パイロットバーナを用いることなく不燃ガスを乾燥機本体2内から排出することができる。
【0059】
また、本発明の実施形態によれば、プレパージのためのパイロットバーナを設ける必要がないので、パイロットバーナを燃焼させるための制御が不要になり、ガス乾燥機の構造が簡単になり、またパイロットバーナを燃焼させるための燃料も不要なので、ガス乾燥機を稼動させるためのコストを低減することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態によれば、ガス乾燥機1の 待機状態で、被乾燥物がコンベアによって搬送されてくる間にブロワー42、42を作動させて乾燥機本体2内の排気を行いプレパージが行われるので、ガス乾燥機1を作動後にプレパージを行うことがなく、その分乾燥時間を短縮することができる。
【0061】
また、本発明によれば、制御部50は、所定の水分量以下の被乾燥物を乾燥させる乾燥初期時に、外気取入口25を外気取込ダンパー49で全閉状態とし、排出口43を排気循環ダンパー47で全閉状態する。これにより、所定の水分量以下の被乾燥物を、排気湿度検出センサー48が検出した排気湿度が第1の設定値以上となるまで導出循環風で乾燥させる。したがって、水分量の少ない被乾燥物を湿度が高く循環する乾燥風によって乾燥して蒸らされる「風合い乾燥」により、良好な風合いの仕上がり状態を得ることができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、ガスバーナー23の火炎を包み込むように長尺に形成された内筒24の周囲を外気と循環された乾燥風とが混ざり合いながら乾燥風供給口35側まで旋回して乾燥風を生成するので、温度ムラが少なく、均一な温度の乾燥風を乾燥ドラム4内に供給することができる。
【0063】
また、本実施の形態のガス乾燥機1によれば、内筒24が乾燥風供給口35まで長尺に形成されているので、
図4に示すように、内筒24の周囲を旋回しながら混ざり合った空気が内筒24の熱風吐出口40でさらに加熱される。これにより、温度ムラが少なく均一な温度の乾燥風を所定の温度に調整することができる。
【0064】
また、本実施の形態のガス乾燥機1によれば、温度ムラが少なく、均一な温度の乾燥風を生成するために従来必要であった混合のための長尺のダクトが不要になるので、乾燥風生成部5をコンパクトにすることができる。これにより、乾燥風生成部5を乾燥機本体2の天板10上に設置することができる。乾燥風生成部5を乾燥機本体2の天板10上に設置することができるため、複数台のガス乾燥機1を併設する場合には、近接して複数のガス乾燥機1を設置することができる。これにより、複数台のガス乾燥機の設置スペースを小さくすることができる。
【0065】
なお、上記実施の形態では、予告信号としてコンベア搬送検知センサー53からの信号を用いたが、これに限らず、作業者がガス乾燥機1による乾燥の開始をスイッチ等で入力する信号を予告信号としても良い。
【0066】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るガス乾燥機は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯後の被乾燥物以外に、衣類その他の乾燥にも利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ガス乾燥機
2 乾燥機本体
3 乾燥外胴体
4 乾燥ドラム
5 乾燥風生成部
6 乾燥風循環部
50 制御部