(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】電磁波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/54 20060101AFI20230616BHJP
H05B 6/78 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H05B6/54
H05B6/78 B
(21)【出願番号】P 2020128953
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】ゼネラルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【氏名又は名称】大池 聞平
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】渡部 創士
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-510402(JP,A)
【文献】特開平09-097674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/54
H05B 6/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を利用して被加熱物を加熱する電磁波加熱装置であって、
所定の方向に隙間を空けて配列された3本以上の導体線路と、前記3本以上の導体線路の少なくとも一部に電磁波を供給するための入力部とを有する電界形成部と
、
前記3本以上の導体線路に対して前記被加熱物が配置される側とは反対側に配置され、前記3本以上の導体線路の少なくとも一部に対面する接地電極と、
前記3本以上の導体線路が表側に積層され、前記接地電極が裏側に積層された基板とを備え、
前記電界形成部は、前記3本以上の導体線路の一部に前記入力部が導通し残りの導体線路が接地される、又は、前記3本以上の導体線路の全てに前記入力部が導通するように構成され、
前記電界形成部は、前記入力部に電磁波が入力される入力期間に、前記3本以上の導体線路の各々で電磁波による共振が生じて、前記3本以上の導体線路に沿って前記被加熱物を加熱するための強電界領域が形成されるように構成されている、電磁波加熱装置。
【請求項2】
前記電界形成部の表側において長尺の基材を搬送する搬送機構をさらに備え、
前記搬送機構により前記基材を搬送しながら、前記基材の表面上に設けられた被加熱物を加熱する、請求項1に記載の電磁波加熱装置。
【請求項3】
前記所定の方向に隣り合う導体線路間の距離は、該導体線路の線路幅の5倍以下である、請求項1又は2に記載の電磁波加熱装置。
【請求項4】
前記被加熱物は、所定の搬送方向に搬送され、
前記3本以上の導体線路は、前記搬送方向に配列されている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【請求項5】
前記導体線路の配列方向に対し、各導体線路が斜めに延びている、請求項1乃至4の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【請求項6】
前記3本以上の導体線路の配列領域は、平面視で帯状の領域であり、
前記3本以上の導体線路では、前記配列領域における幅方向の一端側に電磁波による定在波の腹部が形成される導体線路と、他端側に前記定在波の腹部が形成される導体線路とが交互に並ぶ、請求項1乃至5の何れかに記載の電磁波加熱装置。
【請求項7】
前記電界形成部では、4本以上の前記導体線路が、前記所定の方向に隙間を空けて配列され、
前記4本以上の導体線路では、電磁波による定在波の腹部となる導体線路の強電界箇所が、前記導体線路の配列方向に並ぶ強電界列が、2列以上形成される、請求項1乃至6の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【請求項8】
前記電界形成部は、それぞれが前記導体線路に相当する複数の歯部を有する第1櫛歯電極と、それぞれが前記導体線路に相当する複数の歯部を有する第2櫛歯電極とを備え、
前記第1櫛歯電極及び前記第2櫛歯電極は、それぞれの歯部同士が隙間を空けて噛み合うように配置されている、請求項1乃至7の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【請求項9】
前記3本以上の導体線路を囲うように設けられた筐体をさらに備え、
前記被加熱物は、前記筐体に形成された開口部、又は、前記筐体により形成された隙間を通じて、前記筐体内に出し入れ可能となっている、請求項1乃至8の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【請求項10】
誘電体により構成され、前記3本以上の導体線路に対して前記被加熱物が配置される側を覆う被覆部材が設けられている、請求項1乃至9の何れか1つに記載の電磁波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物の加熱に用いられる電磁波加熱装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品の加熱など様々な用途に、誘電加熱方式の電磁波加熱装置が利用されている。電磁波加熱装置は、被加熱物に含まれる誘導体に対し電磁波を照射する。そうすると、電磁波による電界の作用により、誘導体における分子レベルのダイポールが振動し、その振動に伴う誘電損失により発熱が生じて、被加熱物が加熱される。また、誘電加熱方式以外の高周波加熱について、被加熱物に導体成分やイオン物質が含まれる場合には電流により生じる導電(ジュール)損失により、磁性成分が含まれる場合には磁性損失により、被加熱物が加熱される。
【0003】
特許文献1には、トナー像を加熱・溶融して記録媒体上に定着する定着部材を誘電加熱する誘電加熱部が記載されている。この誘電加熱部は、定着部材の外周面又は/及び内周面に対向して、定着部材の誘電体の周囲に高周波電界を形成する少なくとも一対の棒状電極を備えている。棒状電極は、隣接する棒状電極との極性が異なるように配設されていて、電源から高周波電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、40MHzの高周波を用いた実験結果が記載されている。この場合、高周波の波長は約7.5mとなる。このことから、特許文献1に記載の従来技術では、各棒状電極で高周波による共振を生じさせるものではなく、各棒状電極について長さ方向の電界は概ね均一になると考えられる。ここで、電界が強いほど、電磁波は被加熱物に吸収されやすくなり、被加熱物を効率的に加熱することができる。しかし、従来技術では、各棒状電極で概ね均一電界が形成される反面、電磁波が被加熱物に吸収されやすいレベルの強電界領域を形成するためには、棒状電極への投入電力を大きくする必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電磁波を利用して被加熱物を加熱する電磁波加熱装置について、電磁波が被加熱物に吸収されやすいレベルの強電界領域を低電力で形成可能に構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、電磁波を利用して被加熱物を加熱する電磁波加熱装置であって、所定の方向に隙間を空けて配列された3本以上の導体線路と、3本以上の導体線路の少なくとも一部に電磁波を供給するための入力部とを有する電界形成部を備え、電界形成部は、入力部に電磁波が入力される入力期間に、3本以上の導体線路の各々で電磁波による共振が生じて、3本以上の導体線路に沿って被加熱物を加熱するための強電界領域が形成されるように構成されている。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、3本以上の導体線路に対して被加熱物が配置される側とは反対側に配置され、3本以上の導体線路の少なくとも一部に対面する接地電極をさらに備えている。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、所定の方向に隣り合う導体線路間の距離は、該導体線路の線路幅の5倍以下である。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、被加熱物は、所定の搬送方向に搬送され、3本以上の導体線路は、搬送方向に配列されている。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、導体線路の配列方向に対し、各導体線路が斜めに延びている。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、3本以上の導体線路の配列領域は、平面視で帯状の領域であり、3本以上の導体線路では、配列領域における幅方向の一端側に電磁波による定在波の腹部が形成される導体線路と、他端側に定在波の腹部が形成される導体線路とが交互に並ぶ。
【0013】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明において、電界形成部では、4本以上の導体線路が、所定の方向に隙間を空けて配列され、4本以上の導体線路では、電磁波による定在波の腹部となる導体線路の強電界箇所が、導体線路の配列方向に並ぶ強電界列が、2列以上形成される。
【0014】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか1つの発明において、電界形成部は、それぞれが導体線路に相当する複数の歯部を有する第1櫛歯電極と、それぞれが導体線路に相当する複数の歯部を有する第2櫛歯電極とを備え、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極は、それぞれの歯部同士が隙間を空けて噛み合うように配置されている。
【0015】
第9の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、3本以上の導体線路を囲うように設けられた筐体をさらに備え、被加熱物は、筐体に形成された開口部、又は、筐体により形成された隙間を通じて、筐体内に出し入れ可能となっている。
【0016】
第10の発明は、第1乃至第9の何れか1つの発明において、誘電体により構成され、3本以上の導体線路に対して被加熱物が配置される側を覆う被覆部材が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、電界形成部の入力部に電磁波が入力される入力期間に、電界形成部における3本以上の導体線路の各々で電磁波による共振が生じる。そのため、3本以上の導体線路に沿って形成される強電界領域は、電界強度が比較的高くなる。本発明によれば、共振が生じない場合に比べて、電磁波が被加熱物に吸収されやすいレベルの強電界領域を低電力で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電磁波加熱装置及び処理システムを斜め上から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、電磁波加熱装置及び処理システムの側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の変形例1に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の変形例2に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態1の変形例3に係る電磁波加熱装置の上面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA-A断面図(横断面図)である。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例4に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の変形例5に係る電磁波加熱装置を斜め上から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例6に係る電磁波加熱装置の拡大上面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例7に係る電磁波加熱装置を斜め上から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例8に係る電磁波加熱装置の側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例9に係る電磁波加熱装置を斜め上から見た斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図15】
図15は、実施形態4に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図16】
図16は、実施形態5に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図17】
図17は、実施形態6に係る電磁波加熱装置の上面図である。
【
図18】
図18(a)は、その他の実施形態に係る電磁波加熱装置の電界形成部について第1方向に切断した断面図であり、
図18(b)は、別の形態の電界形成部の断面図であり、
図18(c)は、さらに別の形態の電界形成部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態及び変形例は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
<実施形態1>
本実施形態は、電磁波を利用して被加熱物20を加熱する電磁波加熱装置10である。電磁波加熱装置10は、誘電加熱方式の加熱装置である。電磁波加熱装置10で利用される電磁波は、50MHz以上の高周波である。
【0021】
電磁波加熱装置10で加熱される被加熱物20は、高周波を吸収する物質(液体、固体など)を含み、シート状を呈する。被加熱物20は、例えば接着剤である。被加熱物20は、シート状で長尺の基材11の表面に塗布や配置され、基材11と共に所定の方向(
図1に示す矢印の方向)に搬送されて、後述する強電界領域を通過する。その際、被加熱物20は、高周波を吸収することで加熱される。なお、被加熱物20は、シート状ではなくてもよく、ある程度の厚みがあってもよい。
【0022】
電磁波加熱装置10は、基材11を搬送する搬送機構12と共に、搬送式の処理システムを構成している。搬送機構12は、
図2に示すように、複数対のローラ13を用いて基材11及び被加熱物20を搬送する。以下では、被加熱物20の搬送方向を「第1方向」と言い、第1方向に直交する方向を「第2方向」と言う(
図1等参照)。また、電磁波加熱装置10において、被加熱物20が配置される側を「表側」と言い、その反対側を「裏側」と言う(
図2参照)。
【0023】
電磁波加熱装置10は、高周波を発振する発振器21と、発振器21から供給される高周波により強電界領域(高周波加熱領域)を形成する電界形成部22と、平板状に形成されて電界形成部22を支持する基板23とを備えている。また、基板23は、基板23の表面に露出する誘電体層24と、誘電体層24の裏面に積層された接地電極層25とを有する。
【0024】
電界形成部22は、
図3に示すように、発振器21からの高周波が入力される入力部30と、入力部30に入力された高周波が供給される第1櫛歯電極31と、接地電極層25に電気的に接続された第2櫛歯電極32とを備えている。入力部30は、例えば同軸コネクタである。第1櫛歯電極31は、高圧側の電極であり、複数の歯部31aを有する。第2櫛歯電極32は、接地側の電極であり、複数の歯部32aを有する。第1櫛歯電極31と第2櫛歯電極32とは、同一平面内において、それぞれの歯部31a,32a同士が、隙間を空けて噛み合うように配置されている。電界形成部22は、インターディジタル型の回路により構成されている。
【0025】
ここで、第1櫛歯電極31の各歯部31aと第2櫛歯電極32の各歯部32aは、本発明に係る導体線路に相当する。各歯部31a,32aは、直線状の導体線路である。電界形成部22では、多数の歯部31a,32aが、所定の方向(第1方向)に隙間を空けて配列されている。多数の歯部31a,32aが配列された領域(以下、「配列領域」と言う。)は、平面視で帯状の領域である。電界形成部22では、多数の導体線路の一部である第1櫛歯電極31に、入力部30からの高周波が供給される。電界形成部22では、入力部30に高周波が入力される入力期間に、多数の歯部31a,32aに沿って、被加熱物20を加熱するための強電界領域が形成される。
【0026】
なお、本明細書において「多数」とは、5以上を意味している。但し、所定の方向に隙間を空けて配列される歯部(導体線路)31a,32aの本数は、3本以上であればよい。また、
図3に示す電界形成部22のように、各櫛歯電極31,32が多数(5本以上)の歯部31a,32aを有し、歯部31a,32aの合計本数を10本以上としてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、電界形成部22を構成する多数の導体線路について1つ置きに高周波が直接的に供給されるが、全ての導体線路に高周波が直接的に供給されるようにしてもよいし(後述の実施形態2等を参照)、多数の導体線路において2つ置きに高周波が直接的に供給されるようにしてもよい。
【0028】
図3に示す各櫛歯電極31,32について詳細に説明する。第1櫛歯電極31は、誘電体層24の表面に支持されている。第1櫛歯電極31は、入力部30から延びる基部線路31bと、基部線路31bに付け根が接続された多数の歯部31aとを備えている。基部線路31bは、入力部30から第2方向に延びて途中で折れ曲がり、折れ曲がり箇所から第1方向に真っすぐ延びている。多数の歯部31aは、互いに平行となるように基部線路31bから突出している。多数の歯部31aは、第1方向に等間隔で配列されている。各歯部31aは、誘電体層24の表面に沿って第2方向に延びており、基部線路31bに直交している。
【0029】
第2櫛歯電極31も、誘電体層24の表面に支持されている。第2櫛歯電極31は、基部線路32bと、基部線路32bに付け根が接続された多数の歯部32aとを備えている。基部線路32bは、第1櫛歯電極31の基部線路31bに平行に延びている。基部線路32bは、その一部が誘電体層24の表面に積層され、基板23の外周位置で折り曲げられている。基部線路32bの残りの部分は、折り曲げ箇所から基板23の側面に沿って裏側に延びて、接地電極層25に接続されている。また、多数の歯部32aは、互いに平行となるように、基部線路32bから第1櫛歯電極31側に突出している。多数の歯部32aは、第1方向に等間隔で配列されている。各歯部32aは、誘電体層24の表面に沿って第2方向に延びており、基部線路32bに直交している。
【0030】
電界形成部22は、上述の入力期間に、各導体線路31a,32aで高周波による共振が同時に生じるように構成されている。具体的に、歯部31aの長さL1と歯部32aの長さL2とは、伝送される高周波の波長(電気長)をλとした場合に、式1を用いて設計される(nは自然数)。隣り合う歯部31aと歯部32aの合計長さは、2m×λ/4で表される(mは自然数)。本実施形態では、歯部31a,32aの長さL1,L2は、式1においてn=1とした長さλ/4である。なお、第1櫛歯電極31の各歯部31aと第2櫛歯電極32の各歯部32aは、全て同じ長さであり、全て同じ線路幅であるが、長さ又は太さを互いに異ならせてもよい。
式1:L1=L2=λ×(2n-1)/4
【0031】
電界形成部22は、上述の入力期間に、第1方向に隣り合う導体線路31a,32aの間で比較的強固な電界結合が生じるように構成されている。具体的に、電界形成部22では、多数の歯部31a,32aが第1方向に等間隔で配列され、第1方向に隣り合う歯部31a,32aの距離(隙間の寸法)Gは、歯部31a,32aの線路幅の5倍以下となっている。この距離Gは、歯部31a,32aの線路幅の3倍以下としてもよいし、1倍以下としてもよい。なお、歯部31a,32aの線路幅について、歯部31aの線路幅と歯部32aの線路幅が互いに異なる場合、歯部31aの線路幅と歯部32aの線路幅の平均値を採用する。この点は、後述する実施形態2~6において隙間Gの数値範囲を規定する導体線路の線路幅でも同じである。
【0032】
誘電体層24は、セラミックなどの誘電体により構成されている。誘電体層24の厚みは、例えば、全面に亘って一様である。誘電体層24は、接地電極層25に対し、第1櫛歯電極31及び第2櫛歯電極32を離間させている。
【0033】
接地電極層25は、導体(例えば、金属板)により構成され、接地電位となっている。接地電極層25は、多数の歯部31a、32aの裏側に配置され、誘電体層24を介して配列領域の歯部31a、32aに対面している。接地電極層25を設けることで、上述の入力期間では多数の歯部31a、32aの表側のみに高周波が放射され、多数の歯部31a、32aの表側近傍に強電界領域が形成される。強電界領域では、被加熱物20の導電成分又はイオン物質は導電損失により加熱され、磁性成分は磁性損失により加熱され、誘電成分は誘電損失により加熱される。接地電極層25は、多数の歯部31a、32aの一部に対面する平面寸法としてもよい。
【0034】
[処理システムの動作]
電磁波加熱装置10を含めた処理システムの動作について説明を行う。処理システムの電源をONにすると、電磁波加熱装置10及び搬送機構12の各電源がONになる。これにより、搬送機構12により基材11が第1方向に搬送されると共に、発振器21から高周波が発振される。なお、基材11は、被加熱物20側の面を表側(
図2において上側)に向けて、多数の歯部31a,32aの表側近傍を搬送される。なお、基材11は、被加熱物20側の面を裏側に向けて搬送してもよい。
【0035】
電磁波加熱装置10では、発振器21から出力された高周波が、第1櫛歯電極31の各歯部31aに供給される。第1櫛歯電極31では、上述したように、各歯部31aの長さがλ/4である。そのため、第1櫛歯電極31の各歯部31aでは、高周波による共振が生じ、各歯部31aの先端が、高周波による定在波の腹部となる。
【0036】
また、上述したように、第1櫛歯電極31と第2櫛歯電極32の間では、比較的強固な電界結合が生じる。これにより、第2櫛歯電極32の各歯部32aでは、高周波による共振が生じ、各歯部32aの先端が、高周波による定在波の腹部となる。また、第1櫛歯電極31と第2櫛歯電極32の隙間の電界強度は比較的強くなる。
【0037】
多数の歯部31a,32aの表側には、基材11及び被加熱物20の搬送路を含むように、強電界領域が形成される。強電界領域を通過する被加熱物20は、誘電成分や導電成分などが高周波により加熱される。これにより、被加熱物20は昇温を経て、所望の物理/化学変化(重合、アニール、乾燥、硬化等)が生じる。
【0038】
[実施形態1の効果等]
本実施形態では、高周波の入力期間に、電界形成部22における各歯部31a,32aで高周波による共振が生じる。多数の歯部31a,32aに沿って形成される強電界領域は、電界強度が比較的高くなる。本実施形態によれば、共振が生じない場合に比べて、高周波が被加熱物20に吸収されやすいレベルの強電界領域を低電力で形成することができる。
【0039】
また、本実施形態では、電界形成部22では、多数の歯部31a,32aが所定の方向に隙間を空けて配列され、第1方向に隣り合う歯部31a,32aの距離Gは歯部31a,32aの線路幅の5倍以下である。そのため、隣り合う歯部31a,32aの間では、比較的強い電界結合が生じる。また、隣り合う歯部31aと歯部32aでは、定在波の腹部となる先端と、定在波の節部となる付け根とが、互いに近接している。そのため、隣り合う歯部31a,32aの隙間における電界強度が比較的高くなる。多数の歯部31a,32aの配列領域では強電界領域の面積が広くなり、被加熱物20に対し、平行で厚みが薄い強電界領域が形成される。
【0040】
ここで、被加熱物20がシート状で、体積の割に表面積が大きい場合、高周波加熱時の放熱量が大きく、被加熱物20を昇温させることが容易ではない。本実施形態では、多数の歯部31a,32aの配列領域において、被加熱物20に対し、平行で厚みが薄い強電界領域が形成される。そして、この強電界領域では、多くの電気力線がシート状の被加熱物20に平行となるため、被加熱物20に高周波のエネルギーを集中させることができ、被加熱物20を効率的に昇温及び物理/化学反応を生じさせることができる。また、歯部31a,32aの配列領域では、隣り合う歯部31a,32aの隙間でも電界強度が比較的高く、被加熱物20の加熱を連続的に行うことができ、体積の割に表面積が大きい被加熱物20を効果的に昇温させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、多数の歯部31a,32aの配列領域(帯状の領域)における幅方向の一端側に高周波による定在波の腹部が形成される歯部31aと、他端側に定在波の腹部が形成される歯部32aとが交互に並ぶ。これにより、定在波の腹部となる各歯部31a,32aの強電界箇所が第1方向に並ぶ強電界列が、2列形成される。そのため、被加熱物20には幅方向の両側から強い電界が作用することになり、平面視における被加熱物20の加熱度合いを均一化することができる。
【0042】
<実施形態1の変形例1>
本変形例では、
図4に示すように、各歯部31a,32aが、歯部31a,32aの配列方向(第1方向)に対し斜めに延びている。
【0043】
具体的に、第1櫛歯電極31では、第1方向に延びる基部線路31bに対し、各歯部31aが斜めに延びている。第2櫛歯電極32では、第1方向に延びる基部線路32bに対し、各歯部32aが斜めに延びている。第1櫛歯電極31の各歯部31aと第2櫛歯電極32の各歯部32aとは、互いに平行である。
【0044】
また、歯部31a,32aの長さは、実施形態1と同様に、伝送される高周波の波長(電気長)をλとした場合に、λ/4に設計される。各歯部31a,32aでは、高周波による共振が生じ、先端が高周波の腹部となる。
【0045】
ここで、
図1の被加熱物20に比べて被加熱物20の幅を狭くする場合は、被加熱物20の幅が、歯部31a,32aの長さに比べて短くなり、また強電界領域の幅に比べて狭くなる。被加熱物20は各歯部31a,32aの先端から内側に離れ、各歯部31a,32aの先端の電界は被加熱物20に作用しにくくなる。その結果、被加熱物20に吸収されない高周波のエネルギーが増える。
【0046】
それに対し、本変形例では、被加熱物20の幅が歯部31a,32aの長さに比べて短い場合であっても、各歯部31a,32aを斜めにすることで、被加熱物20の幅に合わせて強電界領域の幅を調整することができる。そのため、被加熱物20の加熱に高周波のエネルギーを有効利用することができる。
【0047】
なお、後述の変形例2~変形例9、実施形態2~6、及び、その他の実施形態において、本変形例のように各歯部31a,32aの延伸方向を第1方向に対し斜めにする構成と、実施形態1のように各歯部31a,32aの延伸方向を第1方向に直交させる構成との何れを採用してもよい。
【0048】
<実施形態1の変形例2>
本変形例では、
図5に示すように、第1櫛歯電極31の歯部31aの長さL1が、第2櫛歯電極32の歯部32aの長さL2に比べて長い。第1櫛歯電極31の歯部31aの長さL1は、式2を用いて設計され、第2櫛歯電極32の歯部32aの長さL2は、式3を用いて設計される(n
1,n
2はともに自然数であり、n
1>n
2の関係が成立する)。
図5では、歯部31aの長さL1は「λ×3/4」であり、歯部32aの長さL2は「λ/4」である。
式2:L1=λ×(2n
1-1)/4
式3:L2=λ×(2n
2-1)/4
【0049】
本変形例では、第1櫛歯電極31の各歯部31aにおいては、付け根からλ/4離れた位置と先端との2箇所が、定在波の腹部となる。一方、第2櫛歯電極32の各歯部32aでは、先端の1箇所が、定在波の腹部となる。そのため、電界形成部22では、3列の強電界列が形成される。なお、
図5とは逆に、第2櫛歯電極32の歯部32aの長さL2が、第1櫛歯電極31の歯部31aの長さL1に比べて長くなるようにしてもよい。
【0050】
<実施形態1の変形例3>
本変形例では、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、基板23において多数の歯部31a,32aの配列領域の裏側の誘電体層24をなくしている。配列領域の裏側では、誘電体層24に略矩形状の開口部(凹部)24aが形成されている。接地電極層25は、開口部24a内の空気(誘電体)を介して、各歯部31a,32aに対面する。
【0051】
本変形例によれば、誘電体層24が低誘電率の空気に置き換わることで、基板23における誘電損失を削減することができ、被加熱物20の加熱効率が向上する。
【0052】
<実施形態1の変形例4>
本変形例では、
図7に示すように、変形例3について、基板23における誘電体層24の面積をさらに減らしている。基板23では、第1櫛歯電極31の基部線路31bの裏側及びその近傍と、第2櫛歯電極32の基部線路32bの裏側及びその近傍だけに、誘電体層24が設けられている。本変形例によれば、基板23における誘電損失をさらに削減することができる。
【0053】
<実施形態1の変形例5>
本変形例では、
図8に示すように、第1櫛歯電極31及び第2櫛歯電極32の多数の歯部31a,32aに対し被加熱物20が配置される側(表側)を覆う被覆部材26が設けられている。被覆部材26は、板状の誘電体により構成されている。これにより、第1櫛歯電極31と第2櫛歯電極32の隙間に異物が侵入することを抑制することができる。
【0054】
また、本変形例では、第1櫛歯電極31及び第2櫛歯電極32を囲うように筐体28が設けられている。筐体28は、下方が開放された箱状に形成され、基板23の表面を覆うように設けられている。筐体28は、基材11及び被加熱物20が通過する箇所に、基板23との間に隙間28aが形成されるように設けられている。なお、筐体28に開口部(例えば、横長のスリット)を形成して、その開口部に基材11及び被加熱物20を通過させるようにしてもよい。
【0055】
<実施形態1の変形例6>
本変形例では、
図9に示すように、第2櫛歯電極32の位置を第1方向に少しスライドさせている。電界形成部22では、隣り合う歯部31a,32aの隙間が狭い箇所と、隙間が広い箇所とが交互に並ぶ。これにより、各歯部31a,32aにおける共振周波数を調節することができる。
【0056】
<実施形態1の変形例7>
本変形例では、
図10に示すように、基板23の接地電極層25上に、誘電体層を構成する複数の支持板24が設けられている。各支持板24は、例えば円板状に形成されている。各支持板24は、第1櫛歯電極31を支持する。本変形例によれば、基板23における誘電損失を削減することができる。
【0057】
また、基部線路31bは、各支持板24に重なる位置が、支持板24の形状に合わせて膨らんだ幅広部40となっている。幅広部40は円形である。この場合、接地電極層25に対して基部線路31b及び支持板24を固定する際、接地電極層25の表面に支持板24及び幅広部40を重ねた状態で、幅広部40の表面から接地電極層25に向けてネジ止めを行う。なお、
図10では第2櫛歯電極32の記載を省略している。第2櫛歯電極32についても、第1櫛歯電極31と同様に、複数の支持板24により支持するようにしてもよく、また幅広部40を設けてもよい。
【0058】
<実施形態1の変形例8>
本変形例では、
図11に示すように、入力部30が基板23の裏側に設けられている。具体的に、入力部30は、基板線路31bのうち多数の歯部31aが接続されていない端部側の部分の裏側に配置され、その端部側の部分に接続されている。また、基板線路31bにおける入力部30の接続箇所は、支持板24に支持されている。
【0059】
本変形例によれば、基材11が幅広である場合であっても、入力部30が基材11に覆われることがなく、入力部30へのアクセスが容易である。また、基板23の表側に入力部30が突出することはないため、入力部30が基材11に干渉することはなく、幅広の基材11を使用することができる。
【0060】
<実施形態1の変形例9>
本変形例では、
図12に示すように、基板23の表面において、第1櫛歯電極31の基部線路31bの外側に、基部線路31bに沿って多数のグランドピン29が設けられている。各グランドピン29は、接地電極層25に接触している。本変形例によれば、配列領域の幅方向における高周波の漏洩を抑制することができる。なお、第2櫛歯電極32の基部線路32bの外側に、多数のグランドピン29を設けてもよい。
【0061】
<実施形態2>
本実施形態は、実施形態1と同様に、搬送式の処理システムを構成する電磁波加熱装置10である。以下では、実施形態1とは異なる点を中心に説明を行う。
【0062】
本実施形態では、電界形成部22が、
図13に示すように、第1櫛歯電極41と、第1櫛歯電極41に隙間を空けて噛み合う第2櫛歯電極42とが設けられた閉回路である。電界形成部22は、第1櫛歯電極41及び第2櫛歯電極42に加えて、第1方向における配列領域の一端側で第1櫛歯電極41と第2櫛歯電極42を接続する第1接続線路51と、他端側で第1櫛歯電極41と第2櫛歯電極42を接続する第2接続線路52とを備えている。
【0063】
また、入力部30が、第1接続線路51を支持する誘電体層24の裏側に設けられて、第1接続線路51に接続されている。電界形成部22では、第1櫛歯電極41及び第2櫛歯電極42の両方に高周波が直接的に供給される。なお、入力部30を2箇所設けてもよい。この場合、もう一方の入力部30は、例えば第2接続線路52に接続する。
【0064】
第1櫛歯電極41は、複数の歯部41aを有する。第2櫛歯電極42も、複数の歯部42aを有する。第1櫛歯電極41と第2櫛歯電極42とは、同一平面内において、それぞれの歯部41a,42a同士が、隙間を空けて互いに噛み合うように配置されている。第1櫛歯電極41及び第2櫛歯電極42は、両方の櫛歯電極41,42が高圧側電極となる点で、実施形態1の第1櫛歯電極31及び第2櫛歯電極32とは相違するが、実施形態1又は変形例1の第1櫛歯電極31及び第2櫛歯電極32と同じ形状および寸法にすることができる。
【0065】
第1櫛歯電極41の各歯部41aと第2櫛歯電極42の各歯部42aは、本発明に係る導体線路に相当する。電界形成部22では、多数の歯部41a,42aが第1方向に等間隔で配列されている。
【0066】
本実施形態では、実施形態1と同様に、高周波の入力期間に、各歯部41a,42aで高周波による共振が生じる。また、第1方向に隣り合う歯部41a,42aの距離Gは歯部41a,42aの線路幅の5倍以下であり、隣り合う導体線路41a,42aの間で比較的強い電界結合が生じる。そのため、多数の歯部41a,42aに沿って強電界領域が形成される。なお、第1方向に隣り合う歯部41a,42aの距離Gは、歯部41a,42aの線路幅の3倍以下にしてもよいし、1倍以下にしてもよい。また、本実施形態について、上述の変形例2~9の構成を採用してもよい。
【0067】
<実施形態3>
本実施形態は、実施形態1と同様に、搬送式の処理システムを構成する電磁波加熱装置10である。以下では、実施形態1とは異なる点を中心に説明を行う。
【0068】
本実施形態は、電界形成部22が、
図14に示すように、ミアンダ回路(ミアンダ配線パターン)により構成されている。具体的に、電界形成部22は、第2方向に延びる直線線路46と、直線線路46の端部に連続する折り返し部47とが交互に設けられることで、所定の帯状領域内において複数回蛇行する回路が構成されている。電界形成部22は、互いに同じ長さに形成された多数の直線線路46を有する。各直線線路46は、本発明に係る導体線路に相当する。電界形成部22では、多数の直線線路46が第1方向に等間隔で配列されている。直線線路46の長さは、λ×(2n-1)/4に設計される(nは自然数)。なお、直線線路46の本数は3本以上であればよい。
【0069】
また、電界形成部22では、多数の直線線路46のうち、第1方向において最も端の直線線路46に、入力部30から延びる基部線路48が接続されている。なお、実施形態2と同様に、入力部30を2箇所にしてもよい。
【0070】
本実施形態では、高周波の入力期間に、各直線線路46で高周波による共振が生じる。また、第1方向に隣り合う直線線路46の距離Gは、直線線路46の線路幅の5倍以下であり、隣り合う直線線路46の間で比較的強い電界結合が生じる。そのため、多数の直線線路46に沿って強電界領域が形成される。なお、第1方向に隣り合う直線線路46の距離Gは、直線線路46の線路幅の3倍以下にしてもよいし、1倍以下にしてもよい。
【0071】
<実施形態4>
本実施形態は、実施形態1と同様に、搬送式の処理システムを構成する電磁波加熱装置10である。以下では、実施形態1とは異なる点を中心に説明を行う。
【0072】
本実施形態では、電界形成部22が、
図15に示すように、互いに同じ長さに形成された多数の渦巻き状線路60を備えている。各渦巻き状線路60は、本発明に係る導体線路に相当する。電界形成部22では、多数の渦巻き状線路60が第1方向に等間隔で配列されている。渦巻き状線路60の長さは、λ×(2n-1)/4に設計される(nは自然数)。なお、渦巻き状線路60の本数は3本以上であればよい。また、
図15では、渦巻き状線路60を含む導体部分にハッチングを付けている。
【0073】
電界形成部22は、多数の渦巻き状線路60に加え、互いに間隔を空けて平行に配置された第1基部線路61と第2基部線路62を備えている。電界形成部22では、付け根が第1基部線路61に接続された渦巻き状線路60と、付け根が第2基部線路62に接続された渦巻き状線路60とが交互に並ぶ。
【0074】
基板23では、第1方向における一方の端部に第1入力部30aが、他方の端部に第2入力部30bが設けられている。各入力部30a,30bには、発振器21から出力された高周波が入力される。各入力部30a,30bは、第1基部線路61及び第2基部線路62にそれぞれ接続されている。
【0075】
本実施形態では、高周波の入力期間に、各渦巻き状線路60で高周波による共振が生じ、渦巻き状線路60の内側の線路間で強い電界結合が生じる。また、第1方向に隣り合う渦巻き状線路60の距離Gは、各渦巻き状線路60の線路幅の5倍以下であり、隣り合う渦巻き状線路60の間でも比較的強い電界結合が生じる。そのため、多数の渦巻き状線路60に沿って強電界領域が形成される。なお、第1方向に隣り合う渦巻き状線路60の距離Gは、渦巻き状線路60の線路幅の3倍以下にしてもよいし、1倍以下にしてもよい。
【0076】
<実施形態5>
本実施形態は、実施形態1と同様に、搬送式の処理システムを構成する電磁波加熱装置10である。以下では、実施形態1とは異なる点を中心に説明を行う。
【0077】
本実施形態は、電界形成部22が、
図16に示すように、1本の基部線路80と、付け根が基部線路80に接続された多数の分岐型線路81とを備えている。各分岐型線路81は、途中で2手に分岐し、分岐箇所から先端側が渦巻状に形成されている。各分岐型線路81は、互いに同じ形状及び寸法である。各分岐型線路81は、本発明に係る導体線路に相当する。電界形成部22では、第2方向における基部線路80の片側で、多数の分岐型線路81が第1方向に等間隔で配列され、基部線路80のもう片側でも、複数の分岐型線路81が第1方向に等間隔で配列されている。分岐型線路81は、付け根から分岐後の各先端までの長さが、λ×(2n-1)/4に設計される(nは自然数)。なお、基部線路80の片側における分岐型線路81の本数は3本以上であればよい。また、
図16では、基部線路80及び分岐型線路81を含む導体部分にハッチングを付けている。
【0078】
電界形成部22では、第1方向における基部線路80の両側に、入力部30a,30bがそれぞれ接続されている。各入力部30a,30bには、発振器21から出力された高周波が入力される。
【0079】
本実施形態では、高周波の入力期間に、各分岐型線路81で高周波による共振が生じ、各分岐型線路81の内側の線路間で強い電界結合が生じる。また、第1方向に隣り合う分岐型線路81の距離Gは、分岐型線路81の線路幅の5倍以下であり、隣り合う分岐型線路81の間で比較的強い電界結合が生じる。そのため、多数の分岐型線路81に沿って強電界領域が形成される。なお、第1方向に隣り合う分岐型線路81の距離Gは、分岐型線路81の線路幅の3倍以下にしてもよいし、1倍以下にしてもよい。
【0080】
<実施形態6>
本実施形態は、実施形態1と同様に、搬送式の処理システムを構成する電磁波加熱装置10である。以下では、実施形態1とは異なる点を中心に説明を行う。
【0081】
本実施形態は、電磁波加熱装置10が、
図17に示すように、それぞれに入力部30が接続された複数の電界形成部22を備えている。複数の電界形成部22は、第1方向に間隔を空けて配列されている。また、各電界形成部22は、第2方向に隙間を空けて配列された3本以上の直線線路38を有する。直線線路38の長さは、λ×(2n-1)/4に設計される(nは自然数)。なお、各電界形成部22における直線線路38の本数は3本以上であればよい。また、第2方向に隣り合う直線線路38の距離Gについて、直線線路38の線路幅の5倍以下としているが、3倍以下にしてもよいし、1倍以下にしてもよい。また、
図17では、電界形成部22は、上述のミアンダ回路であるが、それ以外の回路を採用してもよい。
【0082】
本実施形態では、各入力部30に高周波が入力される期間に、各電界形成部22において各直線線路38で高周波による共振が生じ、第2方向に隣り合う直線線路38の間で比較的強い電界結合が生じる。そのため、各電界形成部22で、多数の直線線路38に沿って強電界領域が形成される。
【0083】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、本発明に係る導体線路36の断面形状が略矩形であるが、
図18(a)に示すように、断面視において導体線路36に曲面部37を設けてもよい。なお、
図18(a)に示す導体線路36は、実施形態1の歯部31a,32a、実施形態2の歯部41a,42a、実施形態3の直線線路46、実施形態4の渦巻き状線路60、実施形態5の分岐型線路81、実施形態6の直線線路38に相当する。この点は、
図18(b)~
図18(c)も同じである。ここで、導体線路36の断面形状が略矩形である場合、高周波電力を増大させると、導体線路36の間で放電が生じて、基材11が損傷する虞がある。それに対し、導体線路36に曲面部37を設けることで、導体線路36の間で放電が生じることを抑制することができる。なお、
図18(a)では導体線路36の裏側(基板23側)に曲面部37を設けたが、導体線路36の表側に曲面部37を設けても良い。また、導体線路36の断面形状は、角がない断面形状(例えば円形又は楕円形)としても良い。
【0084】
上述の実施形態1の変形例3、4では、多数の歯部31a,32aの配列領域の裏側で接地電極層25が露出しているが、
図18(b)に示すように、接地電極層25の表側に誘電体板39を設けてもよい。これにより、高周波エネルギーの一部が誘電体板39に吸収されるため、導体線路36の間で放電が生じることを抑制することができる。
【0085】
上述の実施形態では、各導体線路36が露出しているが、
図18(c)に示すように、樹脂又はセラミックなどの誘電体45により、導体線路36を被覆してもよい。この場合も、導体線路36の間で放電が生じることを抑制することができる。
【0086】
上述の実施形態では、電界形成部22の表側だけで被加熱物20の加熱を行ったが、基板23を設けずに、電界形成部22の裏側でも被加熱物20の加熱を行うようにしてもよい。
【0087】
上述の実施形態において、電磁波加熱装置10は、基材11上における液体あるいは固体の被加熱物20の加熱を目的とせずに、単に基材11そのものの加熱を目的とした装置であってもよい。また、電磁波加熱装置10は、被加熱物20の搬送を行うことなく、被加熱物20の加熱を行うものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、被加熱物の加熱に用いられる電磁波加熱装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 電磁波加熱装置
11 基材
12 搬送機構
20 被加熱物
22 電界形成部
23 基板
24 誘電体層
25 接地電極層
30 入力部
31 第1櫛歯電極
31a 歯部(導体線路)
32 第2櫛歯電極
32a 歯部(導体線路)