(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ベキサロテン誘導体および癌の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 63/49 20060101AFI20230616BHJP
C07C 63/74 20060101ALI20230616BHJP
C07C 63/66 20060101ALI20230616BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230616BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230616BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230616BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230616BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230616BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230616BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230616BHJP
A61P 5/16 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C07C63/49
C07C63/74 CSP
C07C63/66
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P17/06
A61P17/00
A61P7/00
A61P7/06
A61K31/192
A61P5/16
(21)【出願番号】P 2020544954
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 US2019020298
(87)【国際公開番号】W WO2019169270
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520320376
【氏名又は名称】ディージェイ セラピューティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ケラン,デイビッド
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-515025(JP,A)
【文献】特表平08-505852(JP,A)
【文献】特表2014-528486(JP,A)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1997年,7(16),2117-2120
【文献】Neurochemistry International,2009年,54,286-291
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1994年,37(18),2930-2941
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2004年,47(18),4360-4372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
の化合物、またはこの医薬品として許容可能な
塩であって、式中、
2つのR基およびこれらが結合している炭素原子が=CH
2またはシクロプロピル環を形成し、
R
1は、-CO
2H、-CO
2(C
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリールC
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリール)、-CHO、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、-CON(C
1~C
6アルキル)
2、-CONH-OH、-CONH-OCO(C
1~C
6アルキル)、-CONH-NH
2、-N(R
9)SO
2R
9、-SO
2N(R
9)
2、-N(CO)NHSO
2CH
3、テトラゾール、イソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾール、およびオキサゾリジンジオンからなる群から選択され、
各R
9は独立して、水素、C
1~C
6アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、アルコキシ(C
1~C
6アルキル)、アミノ(C
1~C
6アルキル)、または-CNであり、
R
3は
、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり、
R
4およびR
5は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
R
6およびR
7は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
6およびR
7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
各R
8は独立して、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-OH、C
1~C
6アルコキシ、およびC
1~C
6ハロアルコキシからなる群から選択され
る、化合物、またはこの医薬品として許容可能な
塩。
【請求項2】
2つのR基およびこれらが結合している炭素原子が=CH
2を形成する、請求項
1に記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項3】
2つのR基およびこれらが結合している炭素原子がシクロプロピル環を形成する、請求項
1に記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項4】
R
1が-CO
2H、-CO
2(C
1~C
6アルキル)、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、または-CON(C
1~C
6アルキル)
2であるか、あるいはR
1が-CO
2Hまたは-CO
2(C
1~C
6アルキル)であるか、あるいはR
1が-CO
2Hである、請求項1~
3のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項5】
R
2がハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
2がハロゲンであるか、あるいはR
2がC
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
2がC
1~C
6アルキルであるか、あるいはR
2がメチルであるか、あるいはR
2がC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
2がC
1~C
2ハロアルキルであるか、あるいはR
2がC
1ハロアルキルであるか、あるいはR
2がジフルオロメチルである、請求項1~
4のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項6】
R
3がハロゲンであるか、あるいはR
3がフルオロである、請求項1~
5のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項7】
R
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成するか、あるいはR
4およびR
5がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるシクロプロピルを形成するか、あるいはR
4およびR
5がこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する、請求項1~
6のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項8】
R
4およびR
5が独立してC
1~C
6アルキルであるか、あるいはR
4およびR
5が独立してメチルである、請求項1~
6のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項9】
R
6およびR
7がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成するか、あるいはR
6およびR
7がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるシクロプロピルを形成するか、あるいはR
6およびR
7がこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する、請求項1~
8のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項10】
R
6およびR
7が独立してC
1~C
6アルキルであるか、あるいはR
6およびR
7が独立してメチルである、請求項1~
8のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項11】
R
4およびR
5がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、R
6およびR
7が独立してC
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルである、請求項1~
6のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項12】
以下の群、
【化2】
から選択される、化合物またはその医薬品として許容可能な塩。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載の化合物
またはその医薬品として許容可能な塩および医薬品として許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
癌、自己免疫障害および/または皮膚炎を治療するための、または末梢血球数を増加および/または免疫系機能を改善するための、請求項1~
12のいずれかに記載の化合物
もしくはその医薬品として許容可能な塩または請求項
13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月1日に出願された米国特許仮出願第62/637,387号の優先権の利益を主張し、その全体が参照によって組み込まれる。
【0002】
本開示は、癌を治療するための組成物および方法に関する。具体的には、本開示は、ベキサロテン誘導体、癌、自己免疫障害および/または皮膚炎を治療するための方法、ならびに末梢血球数を増加および/または免疫系機能を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
技術的背景
癌は、腫瘍形成、ある部位から別の部位への癌性細胞の転移、および罹患した個体の死をしばしばもたらす細胞の異常または制御されない増殖である。各年、数千万例を超える新たな症例が世界中で診断される。さらに、ほとんど1千万件の癌関連死が毎年世界中で生じる。癌を治す理解および努力における大幅な進歩にも関わらず、1年あたりの癌症例数は次の20年以内にほぼ2倍になることが予想される。
【0004】
癌のための治療の主な方式には、手術、化学療法、放射線療法、標的療法、および免疫療法が含まれる。癌を治療するこれらの方法の各々は、癌のタイプにある程度応じて有効であり、実際、いくつかの例では、個体は完全寛解に達することができ、そこに癌の徴候はない。しかし、現在利用可能なすべての癌治療は限界を有し、癌がひとたび進行または発達して難治性または治療抵抗性になると有効なものはない。
【0005】
癌および他の疾患に対してより有効である新規治療計画が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、癌、自己免疫障害、および/または皮膚炎を治療するために有用であるか、あるいは末梢血球数を増加および/または免疫系機能を改善するために有用である新規化合物を提供する。そのため、本開示の一態様は、式(I)
【化1】
の化合物、またはこの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを提供し、式中、
2つのR基およびこれらが結合している炭素原子が=CH2またはシクロプロピル環を形成し、
R
1は、-CO
2H、-CO
2(C
1~C
6アルキル)、
-CO
2(アリールC
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリール)、-
CHO、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、-CON(C1~C6アルキル)2、-CONH-OH、-CONH-OCO(C1~C6アルキル)、-CONH-NH
2、-N(R
9)SO
2R
9、-SO
2N(R
9)
2、-N(CO)NHSO
2CH
3、テトラゾール、イソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾール、およびオキサゾリジンジオンからなる群から選択され、
各R9は独立して、水素、C
1~C
6アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、アルコキシ(C
1~C
6アルキル)、アミノ(C
1~C
6アルキル)、または-CNであり、
R
3は、水素、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり、
R
4およびR
5は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
R
6およびR
7は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
6およびR
7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
各R
8は独立して、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-OH、C
1~C
6アルコキシ、およびC
1~C
6ハロアルコキシからなる群から選択され、
ただし、R2、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々が独立してメチルであるとき、R
3は水素ではない。
【0007】
本開示の別の態様は、式(II-1)~(II-6)
【化2】
の化合物またはこれらの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを提供し、式中、
XはCH
2、O、またはNHであり、
yはCH
2、O、またはNHであり、
mは整数1~4であり、
nは整数1~4であり、
R
1は、-CO
2H、-CO
2(C
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリールC
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリール)、-CHO、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、-CON(C
1~C
6アルキル)
2、-CONH-OH、-CONH-OCO(C
1~C
6アルキル)、-CONH-NH
2、-N(R
9)SO
2R
9、-SO
2N(R
9)
2、-N(CO)NHSO
2CH
3、テトラゾール、イソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾール、およびオキサゾリジンジオンからなる群から選択され、
各R
9は独立して、水素、C
1~C
6アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、アルコキシ(C
1~C
6アルキル)、アミノ(C
1~C
6アルキル)、または-CNであり、
R
3は、水素、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり、
R
4およびR
5は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
R
6およびR
7は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
6およびR
7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
各R
8は独立して、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-OH、C
1~C
6アルコキシ、およびC
1~C
6ハロアルコキシからなる群から選択される。
【0008】
本開示の別の態様は、本明細書で説明される開示の1種類以上の化合物(例えば、式(I)、(I-1)、(I-2)、(II-1)~(II-6)の化合物)および医薬品として許容可能な担体、溶媒、補助剤、または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本開示の別の態様は、本開示の化合物を用いるための方法を提供する。このため、一態様では、本開示は癌を治療するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。
【0010】
特定の実施形態では、癌には、リンパ腫(例えば、BおよびT細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、および他のすべてのタイプ)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML))が含まれる。
【0011】
本開示の一態様は、自己免疫障害を治療するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、皮膚炎を治療するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。
【0013】
本開示の別の態様は、末梢血球数を増加および/または免疫系機能を改善するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図は、本開示の方法および材料のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて一部を構成する。図は、本開示の1つ以上の実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理および操作を説明するのに役立つ。
【0015】
【
図1】HL60(ヒト急性前骨髄球性白血病)細胞における用量依存的CD38発現での本開示の化合物の活性を示す。
【0016】
【
図2】MV4;11(ヒト二重表現型B骨髄単球性白血病)細胞における用量依存的CD38発現での本開示の化合物の活性を示す。
【0017】
【
図3】NB4(ヒト急性前骨髄球性白血病)細胞における用量依存的CD11b発現での本開示の化合物の活性を示す。
【0018】
【
図4】本開示の化合物とのインキュベーション後のNB4細胞の細胞数を示す。
【0019】
【
図5】本開示の化合物とのインキュベーション後のMV4;11細胞の細胞数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
開示される方法および材料が説明される前に、本明細書において説明される態様は特定の実施形態に限定されるものではなく、このようなものはもちろん変わり得ることが理解されるべきである。本明細書において使用されている用語は、特定の態様のみを説明することを目的としており、本明細書において特に定義されていない限り、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0021】
本開示の観点において、本明細書で説明される方法および組成物は、所望の必要性に適合するように当業者によって構成され得る。一般的に、開示される材料および方法は、癌、自己免疫障害、および/または皮膚炎の治療における改善を提供する。開示される材料および方法はまた、免疫系機能および/または末梢血球数における改善を提供する。
【0022】
したがって、本開示の一態様は、式(I)
【化3】
の化合物、またはこの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを提供し、式中、
2つのR基およびこれらが結合している炭素原子が=CH
2またはシクロプロピル環を形成し、
R
1は、-CO
2H、-CO
2(C1~C
6アルキル)、-CO
2(アリールC
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリール)、-CHO、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、-CON(C
1~C
6アルキル)
2、-CONH-OH、-CONH-OCO(C
1~C
6アルキル)、-CONH-NH
2、-N(R
9)SO
2R
9、-SO
2N(R
9)
2、-N(CO)NHSO
2CH
3、テトラゾール、イソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾール、およびオキサゾリジンジオンからなる群から選択され、
各R
9は独立して、水素、C
1~C
6アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、アルコキシ(C
1~C
6アルキル)、アミノ(C
1~C
6アルキル)、または-CNであり、
R
3は、水素、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり、
R
4およびR
5は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
R
6およびR
7は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
6およびR
7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
各R
8は独立して、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-OH、C
1~C
6アルコキシ、およびC
1~C
6ハロアルコキシからなる群から選択され、
ただし、R
2、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々が独立してメチルであるとき、R
3は水素ではない。
【0023】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、R1が-CO2Hであり、R2およびR3が独立してHであり、ならびにR4、R5、R6、およびR7が独立してメチルである化合物が除外される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)の化合物は、2つのR基およびこれらが結合している炭素原子が=CH
2を形成するものである。そのような化合物は、式(I-1)のものである。
【化4】
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)の化合物は、2つのR基およびこれらが結合している炭素原子がシクロプロピル環を形成するものである。このような化合物は、式(I-2)のものである。
【化5】
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、R1が-CO2H、-CO2(C1~C6アルキル)、-CONH2、-CONH(C1~C6アルキル)、または-CON(C1~C6アルキル)2であるものである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R1は-CO2Hまたは-CO2(C1~C6アルキル)である。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R1は-CO2Hである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、R2がハロゲン、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルであるものである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はハロゲンである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はC1~C6アルキルまたはC1~C6ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はC1~C6アルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はメチルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はC1~C6ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はC1~C2ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はC1ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物を提供し、R2はジフルオロメチルである。
【0028】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(I)~(I-2)の化合物を提供し、R3は水素またはハロゲンである。本開示の特定の実施形態では、R3は水素である。本開示の特定の実施形態では、R3はハロゲンである。例えば、本開示の特定の実施形態では、R3はフルオロである。
【0029】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(I)~(I-2)の化合物を提供し、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるシクロプロピルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、R4およびR5が独立してC1~C6アルキルであるものである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、R4およびR5が独立してメチルであるものである。
【0032】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(I)~(I-2)の化合物を提供し、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるシクロプロピルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、R6およびR7が独立してC1~C6アルキルであるものである。特定の実施形態では、R6およびR7は独立してメチルである。
【0034】
本開示の一実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)~(I-2)の化合物は、R4およびR5がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成し、R6およびR7が独立してC1~C6アルキルまたはC1~C6ハロアルキルであるものである。
【0035】
特定の非限定的な例示的実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)~(I-2)の化合物は、以下の群、
【化6】
およびこれらの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグから選択される。
【0036】
特定の非限定的な例示的実施形態では、本明細書において他で説明される式(I)、(I-1)、または(I-2)の化合物は、以下の群、
【化7】
およびこれらの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグから選択される。
【0037】
前述のように、本開示の別の態様は、式(II-1)~(II-6)、
【化8】
の化合物、またはこれらの医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを提供し、式中、
XはCH
2、O、またはNHであり、
yはCH
2、O、またはNHであり、
mは整数1~4であり、
nは整数1~4であり、
R
1は、-CO
2H、-CO
2(C
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリールC
1~C
6アルキル)、-CO
2(アリール)、-CHO、-CONH
2、-CONH(C
1~C
6アルキル)、-CON(C
1~C
6アルキル)
2、-CONH-OH、-CONH-OCO(C
1~C
6アルキル)、-CONH-NH
2、-N(R
9)SO
2R
9、-SO
2N(R
9)
2、-N(CO)NHSO
2CH
3、テトラゾール、イソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾール、およびオキサゾリジンジオンからなる群から選択され、
各R
9は独立して、水素、C
1~C
6アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、アルコキシ(C
1~C
6アルキル)、アミノ(C
1~C
6アルキル)、または-CNであり、
R
3は、水素、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり、
R
4およびR
5は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
4およびR
5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
R
6およびR
7は独立して、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6ハロアルキルであるか、あるいはR
6およびR
7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR
8によって置換されるC
3~C
6シクロアルキルを形成し、
各R
8は独立して、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-OH、C
1~C
6アルコキシ、およびC
1~C
6ハロアルコキシからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R1が、-CO2H、-CO2(C1~C6アルキル)、-CONH2、-CONH(C1~C6アルキル)、または-CON(C1~C6アルキル)2であるものである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R1は、-CO2Hまたは-CO2(C1~C6アルキル)である。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(I-1)~(II-6)の化合物を提供し、R1は-CO2Hである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R2がハロゲン、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルであるものである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はハロゲンである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はC1~C6アルキルまたはC1~C6ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はC1~C6アルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はメチルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はC1~C6ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はC1~C2ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はC1ハロアルキルである。一実施形態では、本開示は本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R2はジフルオロメチルである。
【0040】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R3は水素またはハロゲンである。本開示の特定の実施形態では、R3は水素である。本開示の特定の実施形態では、R3はハロゲンである。例えば、本開示の特定の実施形態では、R3はフルオロである。
【0041】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるシクロプロピルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R4およびR5はこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R4およびR5が独立してC1~C6アルキルであるものである。いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R4およびR5が独立してメチルであるものである。
【0043】
本開示の別の実施形態は、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物を提供し、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるシクロプロピルを形成する。本開示の特定の実施形態では、R6およびR7はこれらが結合している炭素原子とともに非置換シクロプロピルを形成する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R6およびR7が独立してC1~C6アルキルであるものである。特定の実施形態では、R6およびR7は独立してメチルである。
【0045】
本開示の一実施形態では、本明細書において他で説明される式(II-1)~(II-6)の化合物は、R4およびR5がこれらが結合している炭素原子とともに、任意に1つ以上のR8によって置換されるC3~C6シクロアルキルを形成し、R6およびR7が独立してC1~C6アルキルまたはC1~C6ハロアルキルであるものである。
【0046】
本発明の化合物は、この医薬品として許容可能な塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを含み、限定されないが、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、およびプロドラッグが含まれ、これらは妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに患者の組織と接触するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合い、これらの意図される使用において有効であり、そして可能な場合、本発明の化合物の双性イオン型である。用語「塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製の際にその場で、またはその遊離塩基型に精製した化合物を適切な有機酸または無機酸と別々に反応させ、これによって生成される塩を単離することによって調製され得る。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコペプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる。これらには、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのようなアルカリおよびアルカリ土類金属に基づくカチオン、ならびに非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、および限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むアミンカチオンが含まれ得る。(例えば、参考によって本明細書に組み込まれる、Berge S.M.et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977;66:1-19を参照されたい)
【0047】
本発明の化合物の医薬品として許容可能な、非毒性エステルの例には、C1~C6アルキルエステルが含まれ、アルキル基は直鎖または分枝、置換または非置換のC5~C7シクロアルキルエステル、ならびにベンジルおよびトリフェニルメチルのようなアリールアルキルエステルである。C1~C4アルキルエステルは、メチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、およびtert-ブチルなどが好ましい。本発明の化合物のエステルは、従来の方法に従って調製され得る。
【0048】
本発明の化合物の医薬品として許容可能な、非毒性アミドの例には、アンモニア、第一級C1~C6アルキルアミン、および第二級C1~C6ジアルキルアミンから派生するアミドが含まれ、アルキル基は直鎖または分枝である。第二級アミンの場合、アミンはまた、1個の窒素原子を含む5または6員の複素環の形態であり得る。アンモニア、C1~C3アルキル第一級アミンおよびC1~C2ジアルキル第二級アミンから派生されるアミドが好ましい。本発明の化合物のアミドは、従来の方法に従って調製され得る。
【0049】
用語「プロドラッグ」は、例えば血液中での加水分解によって、インビボで急速に変換されて前述の式の親化合物を生じる化合物を指す。プロドラッグの徹底的な考察が、T.Higuchi and V.Stella,“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987でなされており、これらはともに参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
治療適用
本開示はまた、癌を治療する方法を提供する。このような方法は、このような治療を必要とする対象に、本明細書で説明される開示の1種類以上の化合物(すなわち、式(I)、(I-1)、(I-2)、(II-1)~(II-6)の化合物)、または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。
【0051】
多くの異なる癌が、本開示の化合物および組成物によって治療され得る。特に適した癌には、白血病またはリンパ腫のような血液学的悪性腫瘍が含まれる。特定の実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)である。特定の実施形態では、癌はB細胞非ホジキンリンパ腫、T細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、または皮膚T細胞リンパ腫である。
【0052】
特定の実施形態では、癌は非血液学的固形腫瘍である。このような固形腫瘍の例には、限定されないが、癌腫、肉腫、および星細胞腫が含まれる。特定の実施形態では、癌は乳癌、前立腺癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC))、胃癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、皮膚癌(例えば、基底細胞皮膚癌(BCC)、扁平上皮皮膚癌(SCC)、および黒色腫)、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、肉腫、神経膠芽腫もしくは神経芽細胞腫、またはリンパ腫である。
【0053】
本開示はまた、自己免疫障害を治療する方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。特定の実施形態では、自己免疫障害は乾癬である。特定の実施形態では、自己免疫障害は甲状腺機能亢進症である。
【0054】
本開示の別の態様は、皮膚炎を治療するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。特定の実施形態では、皮膚炎は湿疹または手皮膚炎である。
【0055】
本開示の別の態様は、末梢血球数を増加および/または免疫系機能を改善するための方法を提供する。このような方法は、これを必要とする対象に、本明細書で説明される開示の化合物または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量を投与することを含む。特定の実施形態では、これを必要とする対象は、限定されないが、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、悪性腫瘍を伴う骨髄関与による血球減少症、先天性好中球減少症、および再生不良性貧血を含む障害を有する。
【0056】
本明細書において説明される開示の化合物および組成物はまた、1種類以上の二次治療剤と組み合わせて投与され得る。したがって、特定の実施形態では、本方法はまた、このような治療を必要とする対象に、本明細書において説明される開示の1種類以上の化合物(すなわち、式(I)、(I-1)、(I-2)、(II-1)~(II-6)の化合物)または本明細書で説明される開示の医薬組成物の有効な量、および1種類以上の二次治療剤を投与することを含む。適切な二次治療剤の例には、限定されないが、カンプトテシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、ネオカルジノスタチン、カリケアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ルルトテカン、アンナマイシン、ドセタキセル、タモキシフェン、エピルビシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、トポテカン、プレドニゾン、プレドニゾロン、およびabt-737が含まれる。特定の実施形態では、二次治療剤は免疫療法剤である。適切な免疫療法剤の例には、限定されないが、PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ)、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))抗体、および他の治療用モノクローナル抗体が含まれる。組み合わせとして投与されるとき、本明細書で説明される開示の化合物および組成物ならびに二次治療剤は、同時または連続的に与えられる別々の組成物として製剤化され得、あるいは治療剤は単一組成物として与えられ得る。特定の実施形態では、二次治療剤はその確立された50%最大阻害濃度(IC50)未満の量で投与され得る。例えば、二次治療剤は、阻害濃度(IC50)の1%未満、例えば、10%未満、または25%未満、または50%未満、または75%未満、またはさらには90%未満の量で投与され得る。
【0057】
医薬組成物
一実施形態では、本開示は前述の化合物および少なくとも1種類の医薬品として許容可能な担体、溶媒、補助剤、または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0058】
投与のため、本化合物は通常、示された投与経路に適した1種類以上の補助剤と組み合わされる。本化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アカシア、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、および/またはポリビニルアルコールと混合され、従来投与のために錠剤化またはカプセル化され得る。あるいは、本発明の化合物は生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、コーンオイル、ピーナッツオイル、綿実オイル、ゴマオイル、トラガカントガム、および/または様々な緩衝液に溶解され得る。他の補助剤および投与方式は、製薬技術でよく知られている。担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を単独、あるいはワックス、または従来技術でよく知られている他の物質とともに含み得る。
【0059】
本発明の化合物は、単独の有効医薬品剤として投与され得、またはこれらは本発明の方法を実施するために有用である1種類以上の他の化合物と組み合わせて使用され得る。組み合わせとして投与されるとき、治療剤は同時または異なる時に与えられる別の組成物として製剤化され得、または治療剤は単一組成物として与えられ得る。
【0060】
本化合物は、固体剤形(顆粒、粉末または坐薬を含む)または液体剤形(例えば、溶液、懸濁液、またはエマルション)で調製され得る。本発明の化合物は、様々な溶液に適用され得、滅菌のような従来の製薬操作が加えられ得、および/または保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などのような従来の補助剤を含み得る。
【0061】
本発明の化合物は、従来の非毒性の医薬品として許容可能な担体、補助剤、および賦形剤を含む投与単位剤形において、経口で、局所で、非経口で、吸入または噴霧によって、あるいは直腸で投与され得る。本明細書で使用される用語非経口的は、経皮、皮下、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、または髄腔内の注射または注入技術などを含む。さらに、本発明の化合物および医薬品として許容可能な担体を含む医薬製剤が提供される。本発明の1種類以上の化合物は、1種類以上の非毒性の医薬品として許容可能な担体および/または希釈剤および/または補助剤、ならびに必要に応じて他の有効成分とともに存在し得る。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、経口使用に適した剤形であり得、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬質もしくは軟質カプセル、またはシロップもしくはエリキシルとしてである。
【0062】
経口使用が意図される組成物は、医薬組成物の製造のために従来技術で知られている任意の方法に従って調製され得、このような組成物は甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択される1種類以上の作用剤を含んで口当たりの良い調製物をもたらし得る。錠剤は、有効成分を錠剤の製造に適している非毒性の医薬品として許容可能な添加剤との混合で含有する。これらの添加剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤、例えばデンプン、ゼラチン、またはアカシアなどの結合剤、ならびに例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの滑沢剤であり得る。錠剤は非コーティングであり得、または既知の技術によってコーティングされ得る。いくつかの例では、このようなコーティングは胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、これによって長期間にわたる持続作用をもたらす既知の技術によって調製され得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質が使用され得る。
【0063】
経口使用のための製剤はまた、硬質ゼラチンカプセルとして、有効成分は不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されて、あるいは軟質ゼラチンカプセルとして、有効成分は水またはオイル媒体、例えば、ピーナツオイル、液体パラフィン、またはオリーブオイルと混合されて、提供され得る。
【0064】
水性懸濁液は、有効物質を水性懸濁液の製造に適した添加剤との混合で含有する。このような添加剤は、懸濁剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピル-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴム)であり、分散または湿潤剤は、天然由来ホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的エステルの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分的エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であり得る。水性懸濁液はまた、例えば、エチル、またはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの1種類以上の保存剤、1種類以上の着色剤、1種類以上の香味剤、およびスクロースまたはサッカリンのような1種類以上の甘味剤も含み得る。
【0065】
油性懸濁液は、有効成分を植物オイル、例えばラッカセイオイル、オリーブオイル、セサミオイル、もしくはココナッツオイルに、または液体パラフィンのようなミネラルオイルに懸濁させることによって製剤化され得る。油性懸濁液は、例えば、蜜ろう、固形パラフィン、またはセチルアルコールの増粘剤を含み得る。甘味剤および香味剤が口当たりの良い経口調製物を得るために加えられ得る。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0066】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適している分散性粉末および顆粒は、有効成分を分散剤、湿潤剤、懸濁剤、および1種類以上の保存剤との混合で提供する。適切な分散剤、湿潤剤、または懸濁剤は、既に上述されているものによって例示される。追加の添加剤、例えば、甘味剤、香味剤、および着色剤もまた存在し得る。
【0067】
本発明の医薬組成物はまた、油中水エマルションの剤形であり得る。油相は、植物オイルもしくはミネラルオイルまたはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然由来ゴム(例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴム)、天然由来ホスファチド(例えばダイズ、レシチン)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分的エステル(例えばモノオレイン酸ソルビタン)、および当該部分的エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。エマルジョンはまた、甘味剤および香味剤も含み得る。
【0068】
シロップおよびエリキシルは、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース、またはスクロースの甘味剤とともに製剤化し得る。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、香味剤、および着色剤も含み得る。医薬組成物は滅菌注射用水性または油性懸濁液の剤形であり得る。この懸濁剤は、前述されているこれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒において、例えば1,3-ブタンジオールでの溶液として滅菌注射用溶液または懸濁剤であり得る。使用され得る許容可能な賦形剤および溶媒の中でも、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の固定オイルが溶媒または懸濁化媒体として通常使用される。この目的のために、任意の無刺激性固定オイルが使用され得、合成モノ-またはジグリセリドが含まれる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製での使用が分かっている。
【0069】
本発明の化合物または医薬組成物はまた、例えば本薬剤の直腸投与のために、坐薬の剤形で投与され得る。これらの組成物は、本薬剤を、通常温度では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬剤を放出する適切な非刺激性添加剤と混合することによって調製し得る。このような物質には、カカオバターおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0070】
本発明の化合物および医薬組成物は、無菌培地中で非経口的に投与され得る。使用される賦形剤および濃度に応じて、薬剤は賦形剤中に懸濁化または溶解することができる。有利には、局所麻酔薬、保存剤、および緩衝剤のような補助剤は、賦形剤に溶解することができる。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「治療する」または「治療している」は、(a)障害の重症度を低減する、(b)治療されている障害(複数可)に特徴的な症状の発症を制限もしくは防止する、(c)治療されている障害(複数可)に特徴的な症状の悪化を抑制する、(d)過去に障害(複数可)を有している患者における障害(複数可)の再発を制限もしくは防止する、および(e)過去に障害(複数可)について徴候的だった患者における症状の再発を制限または防止する、のうちの1つ以上を達成することを意味する。
【0072】
約0.01mg~約50mg/kg体重/日、より好ましくは0.1mg~約50mg/kg体重/日のオーダーの投与量レベルが前述される症状の治療において有用である。単一投与剤形を調製するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療されるホストおよび投与の特定の方式に依存して変化する。投与量単位剤形は一般的に約1mg~約500mgの有効成分を含む。
【0073】
本明細書において説明される化合物(複数可)またはこの組成物は、意図される結果を達成するのに有効な量、例えば治療される特定の疾患を治療または予防するのに有効な量で使用される。治療上の利益によって、治療される根本的な障害の根絶もしくは改善、および/または患者が依然として根本的な障害を有している可能性があるにも関わらず、患者が気分または症状の改善を報告するような根本的な障害と関連する症状のうちの1つ以上の根絶または改善を意味する。治療上の利益はまた一般的に、改善が実現しているかに関わらず、疾患の進行を停止または遅延することを含む。
【0074】
投与される化合物(複数可)の量は様々な要因に依存し、例えば、治療される特定の適応症、投与方式、所望の利益が予防的または治療的であるか、患者の治療される適応症の重症度および年齢と体重、特定の化合物(複数可)の生物学的利用能、選択された投与経路下での有効薬剤化合物への変換率および効率などが含まれる。
【0075】
特定の使用および投与方式における化合物(複数可)の有効投与量の決定は、従来技術の習熟した当業者の能力の十分範囲内である。有効な投与量は、最初にインビトロ活性および代謝アッセイから推定され得る。例えば、動物における使用のための化合物の初期投与量は、インビトロアッセイで測定される特定の化合物のIC50以上である代謝物活性化合物の循環血液または血清濃度を達成するように製剤化され得る。所望の投与経路を介した特定の化合物の生物学的利用能を考慮するこのような循環血液または血清濃度を達成する投与量の計算は、習熟した従来技術の当業者の能力の十分範囲内である。化合物の初期投与量は、動物モデルのようなインビボデータから推定できる。前述の様々な疾患を治療または予防するための活性代謝物の有効性を試験するために有用である動物モデルは、従来技術でよく知られている。生物学的利用能および/または化合物の活性代謝物への代謝を試験するために適している動物モデルもよく知られている。通常、習熟した従来技術の当業者は、このような情報を日常的に適応して、ヒトへの投与に適している特定の化合物の投与量を決定することができる。
【0076】
投与量は一般的には約0.0001mg/kg/日、0.001mg/kg/日、または0.01mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲であるが、より高くまたはより低くなり得、他の要因の中でも、有効化合物の活性、化合物の生物学的利用能、その代謝動態および他の薬物動態特性、投与方式、ならびに前述で考察される様々な他の要因に依存する。投与量および間隔は、治療的または予防的効果を維持するのに十分である化合物(複数可)および/または活性代謝物化合物(複数可)の血漿レベルをもたらすために個別に調整され得る。例えば、化合物は他の中でも投与方式、治療される特定の適応症、および処方する医師の判断に応じて、週に1回、週に数回(例えば、隔日)、1日に1回、または1日に複数回投与され得る。局所(topical)投与のような局所(local)投与または選択的取り込みの例では、化合物(複数可)および/または代謝物化合物(複数可)の有効な局所濃度は血漿濃度と関連しない場合がある。習熟した従来技術の当業者は過度の実験をせずに有効な投与量を最適化することができるであろう。
【0077】
定義
本明細書全体を通して、文脈が別段に必要としない限り、用語「含む(comprise)」および「含む(include)」および変形(例えば、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」)は、記載される成分、特性、要素、またはステップ、あるいは成分、特性、要素、またはステップの群の包含を意味すると理解されるが、いかなる他の統合またはステップあるいは統合またはステップの群も除外するものではない。
【0078】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈で明確に示されない限り、複数の指示物を含む。
【0079】
本明細書で使用される以下の用語および表現は、示される意味を有する。
【0080】
本明細書で使用される用語は、一本ダッシュ「-」または二本ダッシュ「=」の前および/または後であることがあり、名付けられた置換基とその親部分の間の結合の結合順を示し、一本ダッシュは単結合を示し、二本ダッシュは二重結合を示す。一本または二本ダッシュがない場合、単結合が置換基とその親部分との間に形成されると理解され、さらに、置換基はダッシュに他に指示がない限り「左から右」に読むことが意図される。例えば、C1~C6アルコキシカルボニルオキシおよび-OC(O)C1~C6アルキルは同じ官能性を示し、同様に、アリールアルキルと-アルキルアリールは同じ官能性を示す。
【0081】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、特に他に特定されない限り、2~10個の炭素を含み、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルケニルの代表的な例には、限定されないが、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、3-デセニル、および3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニルが含まれる。
【0082】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子を通して親分子部分に付加される、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。アルコキシの代表的な例には、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシが含まれる。
【0083】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、特に他に特定されない限り、1~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例には、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが含まれる。「アルキル」基が2つの他の部分間の結合基であるとき、それは直鎖または分枝鎖であり得え、例には、限定されないが、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CHC(CH3)-、および-CH2CH(CH2CH3)CH2-が含まれる。
【0084】
用語「アルキレン」は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち-(CH2)n-であり、nは正の整数、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。適切な置換基には、置換脂肪族基について以下に説明されるものが含まれる。アルキレン鎖はまた、1つ以上の位置で脂肪族基または置換脂肪族基で置換され得る。
【0085】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、2~10個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。アルキニルの代表的な例には、限定されないが、アセチレニル、1-プロピニル、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ペンチニル、および1-ブチニルが含まれる。
【0086】
本明細書で使用される用語「アリール」は、フェニル(すなわち、単環式アリール)、または芳香族二環式環系に少なくとも1つのフェニル環または炭素原子のみを含む芳香族二環式環を含む二環式環系を意味する。二環式アリールは、アズレニル、ナフチル、または単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、もしくは単環式ヘテロシクリルと融合されるフェニルであり得る。二環式アリールは、二環系のフェニル部分内に含まれる任意の炭素原子、またはナフチルもしくはアズレニル環を有する任意の炭素原子を通して親分子部分と結合される。二環式アリールの融合した単環式シクロアルキルまたは単環式ヘテロシクリル部分は、1つまたは2つのオキソおよび/またはチア基によって任意に置換される。二環式アリールの代表的な例には、限定されないが、アズレニル、ナフチル、ジヒドロインデン-1-イル、ジヒドロインデン-2-イル、ジヒドロインデン-3-イル、ジヒドロインデン-4-イル、2,3-ジヒドロインドール-4-イル、2,3-ジヒドロインドール-5-イル、2,3-ジヒドロインドール-6-イル、2,3-ジヒドロインドール-7-イル、インデン-1-イル、インデン-2-イル、インデン-3-イル、インデン-4-イル、ジヒドロナフタレン-2-イル、ジヒドロナフタレン-3-イル、ジヒドロナフタレン-4-イル、ジヒドロナフタレン-1-イル、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-6-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-4-イル、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル、2H-クロメン-2-オン-5-イル、2H-クロメン-2-オン-6-イル、2H-クロメン-2-オン-7-イル、2H-クロメン-2-オン-8-イル、イソインドリン-1,3-ジオン-4-イル、イソインドリン-1,3-ジオン-5-イル、インデン-1-オン-4-イル、インデン-1-オン-5-イル、インデン-1-オン-6-イル、インデン-1-オン-7-イル、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1、4]ジオキサン-5-イル、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキサン-6-イル、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン3(4H)-オン-5-イル、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン3(4H)-オン-6-イル、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン3(4H)-オン-7-イル、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン3(4H)-オン-8-イル、ベンゾ[d]オキサジン-2(3H)-オン-5-イル、ベンゾ[d]オキサジン-2(3H)-オン-6-イル、ベンゾ[d]オキサジン-2(3H)-オン-7-イル、ベンゾ[d]オキサジン-2(3H)-オン-8-イル、キナゾリン-4(3H)-オン-5-イル、キナゾリン-4(3H)-オン-6-イル、キナゾリン-4(3H)-オン-7-イル、キナゾリン-4(3H)-オン-8-イル、キノキサリン-2(1H)-オン-5-イル、キノキサリン-2(1H)-オン-6-イル、キノキサリン-2(1H)-オン-7-イル、キノキサリン-2(1H)-オン-8-イル、ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-オン-4-イル、ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-オン-5-イル、ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-オン-6-イル、およびベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-オン-7-イルが含まれる。特定の実施形態では、二環式アリールは(i)ナフチルまたは(ii)5または6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、または5もしくは6員単環式ヘテロシクリルのいずれかと融合されるフェニル環であり、融合したシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクリル基は、独立してオキソまたはチアである1つまたは2つの基によって任意に置換される。
【0087】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、単環式または二環式シクロアルキル環系を意味する。単環式環系は3~8個の炭素原子を含む環状炭化水素基であり、このような基は飽和または不飽和であり得るが、芳香族ではない。特定の実施形態では、シクロアルキル基は完全に飽和している。単環式シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。二環式シクロアルキル環系は、架橋単環式環または融合二環式環である。架橋単環式環は単環式シクロアルキル環を含み、単環式環の隣接しない2つの炭素原子は、1~3個の追加の炭素原子の間のアルキレン架橋(すなわち、型-(CH2)w-の架橋基、式中、wは1、2、または3である)によって結合される。二環式環系の代表的な例には、限定されないが、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、およびビシクロ[4.2.1]ノナンが含まれる。融合二環式シクロアルキル環系は、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式ヘテロシクリル、または単環式ヘテロアリールのいずれかと融合される単環式シクロアルキル環を含む。架橋または融合二環式シクロアルキルは、単環式シクロアルキル環内に含まれる任意の炭素原子を通して親分子部分に結合される。シクロアルキル基は任意に、独立してオキソまたはチアである1つまたは2つの基によって置換される。特定の実施形態では、融合二環式シクロアルキルは、フェニル環、5もしくは6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル、または5員もしくは6員単環式ヘテロアリールのいずれかと融合される、5もしくは6員単環式シクロアルキル環であり、融合二環式シクロアルキルは任意に、独立してオキソまたはチアである1つまたは2つの基によって置換される。
【0088】
本明細書で使用される用語「ハロ」または「ハロゲン」は、-Cl、-Br、-I、または-Fを意味する。
【0089】
用語「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、あり得る例であり、任意の利用可能な位置で1つ以上のハロゲン原子によって置換されるアルキルまたはアルコキシ基を指す。
【0090】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、単環式ヘテロアリールまたは少なくとも1つの複素芳香環を含む二環式環系を意味する。単環式ヘテロアリールは、5または6員環であり得る。5員環は2つの二重結合および1、2、3、もしくは4個の窒素原子および任意に1つの酸素またはイオウ原子からなる。6員環は、3つの二重結合および1、2、3、または4個の窒素原子からなる。5員または6員のヘテロアリールは、ヘテロアリール内に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を通して親分子部分に結合される。単環式ヘテロアリールの代表的な例には、限定されないが、フリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、およびトリアジニルが含まれる。二環式ヘテロアリールは、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式ヘテロシクリル、または単環式ヘテロアリールと融合される単環式ヘテロアリールからなる。二環式ヘテロアリール基の融合シクロアルキルまたはヘテロシクリル部分は、独立してオキソまたはチアである1つまたは2つの基によって任意に置換される。二環式ヘテロアリールが融合シクロアルキル、シクロアルケニル、またはヘテロシクリル環を含むとき、二環式ヘテロアリール基は二環式環系の単環式ヘテロアリール部分内に含まれる任意の炭素または窒素原子を通して親分子部分に結合される。二環式ヘテロアリールがベンゾ環と融合される単環式ヘテロアリールであるとき、二環式ヘテロアリール基は二環式環系内の任意の炭素原子または窒素原子を通して親分子部分に結合される。二環式ヘテロアリールの代表的な例には、限定されないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、シンノリニル、5,6-ジヒドロキノリン-2-イル、5,6-ジヒドロイソキノリン-1-イル、フロピリジニル、インダゾリル、インドリル、イソキノリニル、ナフチリジニル、キノリニル、プリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-イル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-4-イル、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン-1-イル、チエノピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾリル、および6,7-ジヒドロベンゾ[c][[1,2,5]オキサジアゾール-4(5H)-オニルが含まれる。特定の実施形態では、融合二環式ヘテロアリールは、フェニル環、5もしくは6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル、または5もしくは6員の単環式ヘテロアリールのいずれかと融合される、5もしくは6員単環式ヘテロアリールであり、融合シクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクリル基は、独立してオキソまたはチアである1つもしくは2つの基によって任意に置換される。
【0091】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリル」および「ヘテロシクロアルキル」は、単環式複素環または二環式複素環を意味する。単環式複素環は、独立してO、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3、4、5、6、または7員環であり、環は飽和または不飽和であるが芳香族ではない。3または4員環は、O、N、およびSからなる群から選択される1つのヘテロ原子を含む。5員環は、0または1つの二重結合ならびにO、N、およびSからなる群から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含む。6または7員環は、0、1、または2つの二重結合ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含む。単環式複素環は、単環式複素環内に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を通して親分子に結合される。単環式複素環の代表的な例には、限定されないが、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、およびトリチアニルが含まれる。二環式複素環は、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式複素環、または単環式ヘテロアリールのいずれかと融合される単環式複素環である。二環式複素環は、二環式環系の単環式複素環部分に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を通して親分子部分に結合される。二環式ヘテロシクリルの代表的な例には、限定されないが、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-3-イル、インドリン-1-イル、インドリン-2-イル、インドリン-3-イル、2,3-ジヒドロベンゾチエン-2-イル、デカヒドロキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、オクタヒドロ-1H-インドリル、およびオクタヒドロベンゾフラニルが含まれる。ヘテロシクリル基は、独立してオキソまたはチアである1つまたは2つの基によって任意に置換される。特定の実施形態では、二環式ヘテロシクリルは、フェニル環、5もしくは6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル、または5もしくは6員単環式ヘテロアリールと融合される、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル環であり、独立してオキソまたはチアである1つもしくは2つの基によって任意に置換される。
【0092】
本明細書で使用される用語「オキソ」は、=O基を意味する。
【0093】
本明細書で使用される用語「飽和」は、参照される化学構造がいずれの多重炭素-炭素結合を含まないことを意味する。例えば、本明細書で定義される飽和シクロアルキル基には、シクロヘキシル、シクロプロピルなどが含まれる。
【0094】
本明細書で使用される用語「置換された」は、指定された部分の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルによって置き換えられることを意味し、ただし、置換は安定したまたは化学的に実現可能な化合物を生じる。用語「置換可能な」は、指定された原子に関連して使用されるとき、原子に結合しているのは水素ラジカルであり、適切な置換基のラジカルで置き換えられ得ることを意味する。
【0095】
本明細書で使用される句「1つ以上の」置換基は、利用可能な結合部位の数に基づいて可能である置換基の1つから最大数までに等しい置換基の数を指し、ただし、安定性および化学的実現可能性の前述の条件が満たされる。特に指示がない限り、任意に置換される基は、その基の各置換可能な位置で置換基を有し得、置換基は同一または異なり得る。本明細書で使用されるとき、用語「独立して選択される」は、同一または異なる価が単一化合物における所定の変数の複数の例について選択され得ることを意味する。
【0096】
本明細書で使用される用語「チア」は、=S基を意味する。
【0097】
本明細書で使用される用語「不飽和」は、参照される化学構造が少なくとも1つの多重炭素-炭素結合を含むが、芳香族ではないことを意味する。例えば、本明細書で定義される不飽和シクロアルキル基には、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニルなどが含まれる。
【0098】
本開示の特定の化合物が互変異性体型で存在し得、本化合物のこのようなすべての互変異性体型が本開示の範囲内であることは、当業者には明らかであろう。特に明記されない限り、本明細書で示される構造はまた、構造のすべての立体化学型、すなわち、各非対称中心のRおよびS配置を含むことが意味される。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマーおよびジアステレオマー混合物は、本開示の範囲内である。RおよびS立体化学異性体の両方、ならびにそれらのすべての混合物は、本開示の範囲内に含まれる。
【0099】
調製の方法
開示される化合物を合成するために有用である一般的に知られている化学合成スキームおよび条件を提供する多くの全般的な参考文献が利用可能である(例えば、Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley-Interscience,2001、またはVogel,A Textbook of Practical Organic Chemistry,Including Qualitative Organic Analysis,4th Edition,New York: Longman,1978を参照されたい)。
【0100】
本明細書で説明される化合物は、従来技術で知られている手段のいずれかによって精製することができ、HPLC、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー手段を含む。任意の適切な固定相を使用することができ、順相および逆相、ならびにイオン性樹脂を含む。最も典型的には、開示される化合物はシリカゲルおよび/またはアルミナクロマトグラフィーによって精製される。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography,2nd Edition,ed.L.R.Snyder and J.J.Kirkland,John Wiley and Sons,1979、およびThin Layer Chromatography,ed E.Stahl,Springer-Verlag,New York,1969を参照されたい。
【0101】
対象化合物を調製するためのプロセスのいずれかの際に、関連する分子のいずれかで感受性または反応性の基を保護することが必要および/または望ましいことがある。これは、J.F.W.McOmie,“Protective Groups in Organic Chemistry,”Plenum Press,London and New York 1973、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis,”Third edition,Wiley,New York 1999、“The Peptides”;Volume 3(editors:E.Gross andJ.Meienhofer),Academic Press,London and New York 1981、“Methoden der organischen Chemie,”Houben-Weyl,4.sup.th edition,Vol.15/l,Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1974、H.-D.Jakubke and H. Jescheit,“Aminosauren,Peptide,Proteine,”Verlag Chemie,Weinheim,Deerfield Beach,and Basel 1982、および/またはJochen Lehmann,”Chemie der Kohlenhydrate:Monosaccharide and Derivate,”Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1974のような標準的な研究に記載されているように、従来の保護基を用いて達成され得る。保護基は、従来技術で知られている方法を用いてその後の都合の良い段階で取り除かれ得る。
【0102】
本明細書で開示される化合物は、当業者が習熟している手順を用いて、本明細書で説明されるように生成し得る。例えば、構造式(I)、(I-1)、(I-2)、または(II-1)~(II-6)の化合物は、一般的な手順(下記)、および/または類似の合成手順に従って調製され得る。当業者は、所望の標的分子に適合するように実施例1~6の反応順を適応し得る。もちろん、特定の状況において、当業者は個々のステップのうちの1つ以上に影響を及ぼすため、または特定の置換基の保護した型を使用するため、異なる試薬を使用するであろう。さらに、当業者は、本開示の化合物が全く異なる経路を用いて合成され得ることを認識するであろう。
【実施例】
【0103】
本開示の化合物の調製は、以下の実施例によってさらに説明されるが、範囲または趣旨において本開示をこれらで説明される特定の手順および化合物に限定すると解釈されるべきではない。
【0104】
全般的な実験
すべての試薬は市販されており、さらに精製または乾燥することなく「そのまま」使用した。1H-NMRスペクトルは、Bruker Ultrashield 400(400MHz)装置で得た。Prep-HPLC精製は、Agela HS-1000T装置でアセトニトリル/水を用いて実施した。LC/MS分析は、SHIMADZU LCMS-2020EVでKinetex 2.6μm EVO C18 100A、50mmx3.0mm、2.6μmカラムを用いて実施した。使用した標準グラジエントは、10%ACN/H2Oから95%ACN/H2Oまでだった。水相を5mM重炭酸アンモニウムで緩衝化した。
【0105】
実施例1:4-(1-(6’-(ジフルオロメチル)-4’、4’-ジメチル-3’,4’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロプロパン-1,1’-ナフタレン]-7’-イル)ビニル)安息香酸(DSP-109;または109)の調製
【化9】
THF(1L)中のブロモ(メチル)トリフェニル-[5]-ホスファン(89.3g、250mmol、2.6当量)の-10℃溶液に、窒素雰囲気下でLDA(THF中に2M、145mL、3.0当量)を30分かけて加えた。得られた溶液に、6-クロロ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(20g、95.8mmol、1.0当量)を30分かけて加えた。得られた溶液を0℃で3時間撹拌し、次いで1000gの氷/H
2Oの添加によって反応を止めた。得られた混合物をCH
2Cl
2(3x500mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させて(Na
2SO
4)濃縮した。残渣を石油エーテルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、7-クロロ-1,1-ジメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを無色オイルとして18g(91%)得た。
【化10】
【0106】
ジクロロメタン(650mL)中のジエチル亜鉛(106.6g、863mmol、10当量)の溶液に、0℃でトリフルオロ酢酸(84.7g、864mmol、10当量)を20分かけて加えた。得られた溶液を0℃で1時間撹拌し、すぐにジヨードメタン(233.9g、873mmol、10当量)を20分かけて加えた。得られた溶液を0℃で1時間撹拌し、すぐに7-クロロ-1,1-ジメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(18g、87mmol、1.0当量)を30分かけて加えた。得られた溶液を0℃で4時間撹拌した後、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(600mL)の添加によって反応を止めた。混合物をCH
2Cl
2(3x300mL)で抽出した。有機層を合わせて、ブラインで洗浄し、次いで減圧下で濃縮して、6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]を無色オイルとして17.8g(93%)得た。
【化11】
【0107】
THF(125mL)中の6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン](5g、23mmol、1.0当量)、2-メチル(2-H)プロパンピリジン(616mg、2.3mmol、0.1当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(8.66g、34mmol、1.5当量)、[Ir(COD)(OMe)]
2(760mg、1.15mmol、0.05当量)の混合物を窒素雰囲気下で80℃で6時間加熱し、次いで室温に冷まして約30mLの容量に濃縮した。粗混合物をACN/H
2O(60%~90%30分)で溶出する分取RP-HPLCによって精製し、2-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを白色固体として5g(64%)得た。
【化12】
【0108】
THF(100mL)およびH
2O(50mL)中の2-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(5g、14.4mmol、1.0当量)、4-(カルボノクロリドイル)安息香酸メチル(4.31g、21.7mmol、1.5当量)、K
3PO
4(4.03g、29.0mmol、2.0当量)、およびテトラキス(トリフェニルホスファン)パラジウム(1.74g、1.5mmol、0.1当量)の混合物を65℃で6時間加熱してから室温に冷まして約20mLの容量まで濃縮した。粗混合物をACN/H
2O(60%~90%30分)で溶出する分取RP-HPLCによって精製し、4-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸メチルを黄色固体として1.3g(25%)得た。
【化13】
【0109】
2-メチルTHF(20mL)中のK
3PO
4(1.27g、6.0mmol、3.0当量)、トリフルオロ(ビニル)ホウ酸カリウム(0.332g、2.4mmol、1.2当量)、4-([6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]カルボニル)安息香酸メチル(0.7g、1.8mmol、1.0当量)、XPhosPd(II)(158mg、0.2mmol、0.1当量)の混合物を85℃で15時間加熱してから室温に冷ました。粗混合物を、ACN/H
2O(60%~90%30分)で溶出する分取RP-HPLCによって精製し、4-([6-エテニル-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]カルボニル)安息香酸メチルを白色固体として0.6g(88%)得た。
【化14】
【0110】
ジオキサン(5mL)中の4-([6-エテニル-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]カルボニル)安息香酸メチル(0.6g、1.6mmol、1.0当量)の溶液に、水(2.4mL)、2,6-ジメチルピリジン(0.34g、3.7mmol、2.0当量)、過ヨウ素酸ナトリウム(1.72g、8.0mmol、5.0当量)、および四酸化オスミウム(102mg、0.4mmol、0.2当量)を加えた。得られた溶液を室温で4時間撹拌してから、10%Na
2SO
3水溶液(50mL)の添加によって反応を止めた。混合物をEtOAc(3x50mL)で抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させて(Na
2SO
4)濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:20)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、4-([6-ホルミル-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H]-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]カルボニル)安息香酸メチルを白色固体として0.5g(83%)を得た。
【化15】
【0111】
CH
2Cl
2(5mL)中の4-(6-ホルミル-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸メチル(0.5g、1.3mmol、1.0当量)の溶液に、-10℃でDAST(3.22g、20.0mmol、15.0当量)を5分かけて加えた。得られた溶液を室温で16時間撹拌してから、飽和NaHCO
3水溶液(50mL)の添加によって反応を止めた。混合物をCH
2Cl
2(3x100mL)で抽出し、次いで有機層を合わせ、乾燥させて(Na
2SO
4)濃縮し、4-(6-(ジフルオロメチル)-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸メチルを白色固体として0.24g(45%)得た。
【化16】
【0112】
THF(2mL)中の4-(6-(ジフルオロメチル)-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸メチル(150mg、0.38mmol、1.0当量)の溶液に、水(2mL)中のLiOH(18mg、0.75mmol、2.0当量)を加えた。得られた混合物を50℃で2時間加熱してから室温に冷まし、THFを減圧下で除去した。水性混合物を1M HClでpH2に調整し、次いでCH
2Cl
2(3x10mL)で抽出した。有機層を合わせて乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、4-(6-(ジフルオロメチル)-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸を白色固体として80mg(55%)得た。
【化17】
【0113】
THF(1mL)中のマグネシウムメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(1.3g、3.6mmol、17.5当量)の溶液に、-30℃でLDA(THF中2M、1.65mL、15.0当量)を5分かけて加えた。得られた溶液に、4-(6-(ジフルオロメチル)-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-カルボニル)安息香酸(80mg、0.21mmol、1.0当量)をTHF(5mL)中の溶液として5分かけて加えた。得られた溶液を0℃で4時間撹拌してから、氷/H2Oの10gの添加によって反応を止めた。得られた混合物をEtOAc(3x10mL)で抽出した。合わせた抽出物を濃縮し、ACN/H2O(60%~90%30分)で溶出するRP-HPLCで精製して、4-(1-(6-(ジフルオロメチル)-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)ビニル)安息香酸を白色固体として35mg(44%)得た。1H-NMR:(400MHz、CDCl3、ppm):δ 8.02(d、J=8.8Hz、2H)、7.65(s、1H)、7.35(d、J=8.4Hz、2H)、6.46(t、J=55.4Hz、1H)、6.44(s、1H)、5.95(s、1H)、5.35(s、1H)、1.83-1.80(m、2H)、1.72-1.69(m、2H)、1.39(s、6H)、0.93-0.88(m、2H)、0.87-0.82(m、2H);19F-NMR:(376MHz、CDCl3、ppm):δ108.4(s)。LCMS:(ES、m/z):381[M-H]-。
【0114】
実施例2:4-(1-(4’,4’,6’-トリメチル-3’,4’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロプロパン-1,1’-ナフタレン]-7’-イル)ビニル)安息香酸(DPS-107;107)の調製
【化18】
4-(4-メチルフェニル)ブタン酸(50g、260mmol、1.0当量)、MeOH(300mL)、および硫酸(5mL)の混合物を室温で16時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。残渣を飽和NaHCO
3(200mL)の添加によって反応を止め、水性混合物をEtOAc(2x200mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、メチル4-(4-メチルフェニル)ブタノ酸を黄色オイルとして59.1g得た。
【化19】
【0115】
エーテル(500mL)およびトルエン(1L)中のメタン4-(4-メチルフェニル)ブタン酸(59.1g、307mmol、1.0当量)の溶液に、エーテル中の臭化メチルマグネシウム(3m、246mL、738mmol、2.4当量)の溶液を加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、次いで飽和NH
4Cl水溶液(100mL)の添加によって反応を止めた。溶液のpHを濃HClで7に調整し、これをEtOAc(2x500mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、2-メチル-5-(4-メチルフェニル)ペンタン-2-オールを黄色オイルとして56.4g(95%)得た。
【化20】
【0116】
Et
2O中の2-メチル-5-(4-メチルフェニル)ペンタン-2-オール(56.4g、293mmol、1.0当量)の溶液に、0℃で濃H
2SO
4(350mL)を滴下方式で加えた。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで飽和NaHCO
3水溶液(500mL)の添加によって反応を止めた。有機層を除去し、水層を飽和Na
2CO
3水溶液(500mL)の添加によってさらに中和した。次いで水層をEtOAc(2x500mL)で抽出し、すべての有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、1,1,7-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを黄色オイルとして47.3g(93%)得た。
【化21】
【0117】
酢酸(200mL)中の1,1,7-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(47.3g、271mmol、1.0当量)の溶液に、酢酸(542mL)およびH
2O(63mL)中の三酸化クロム(136g、1.4mmol、5.0当量)の溶液を滴下方式で加えた。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、次いでi-PrOH(300mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物を減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc(300mL)で処理した。混合物をセライト(登録商標)のパッドに通してろ過し、ろ液をH
2O(3x100mL)、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濃縮して、4,4,6-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オンを黄色オイルとして21g(41%)得た。
【化22】
【0118】
THF(60mL)中のPPh
3MeBr(9.7g、27.1mmol、2.6当量)の溶液に、-10℃でTHF中のヘキサメチルジシラジドカリウムの溶液(1M、27mL、27mmol、2.6当量)に加え、得られた溶液を0℃で20分間撹拌した。次いで、THF(40mL)中の4,4,6-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(2g、10.6mmol、1.0当量)の溶液をイリド溶液に-10℃で加えた。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷/H
2O(30mL)の添加によって反応を止め、得られた混合物を石油エーテル(3x60mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、残渣を石油エーテルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、1,1,7-トリメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを無色オイルとして1.7g(86%)得た。
【化23】
【0119】
CH
2Cl
2(130mL)中のヘキサンにおけるジエチル亜鉛の溶液(1M、269mL、269mmol、10当量)に、0℃でトリフルオロ酢酸(30.7g、269mmol、10当量)を滴下方式で加えた。溶液を0℃で1時間撹拌し、次いでCH
2Cl
2(50mL)中の1,1,7-トリメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(5g、26.8mmol、1.0当量)の溶液を加えた。得られた溶液を0℃で3.5時間撹拌してから、飽和NaHCO
3水溶液(200mL)の添加によって反応を止めた。固体をろ過によって除去し、ろ液をCH
2Cl
2(2x300mL)で抽出した。有機層を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣をACN/H
2O(70~90%グラジエント)で溶出する逆相MPLC(C18カラム)によって精製した。溶媒の除去によって、所望のスピロシクロプロパンを黄色オイルとして1g(19%)得た。
【化24】
【0120】
CH
2Cl
2(25mL)中の4-(カルボノクロリドイル)安息香酸メチル(546mg、2.8mmol、1.1当量)および三塩化アルミニウム(1.2g、7.5mmol、3.0当量)の懸濁液に、CH
2Cl
2(5mL)中の前ステップからのスピロシクロプロパンの溶液を0℃で加えた。得られた溶液を0℃で4時間撹拌した後、氷/H
2O(30mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物をEtOAc(2x20mL)で抽出し、合わせた抽出物を減圧下で濃縮した。残渣をACN/H
2O(70~100%グラジエント)で溶出する逆相MPLC(C18カラム)によって精製した。溶媒の除去によって、所望のジアリールケトンを淡黄色固体として300mg(33%)得た。
【化25】
【0121】
THF(6mL)中のPPh
3MeBr(759mg、2.15mmol、2.50当量)の溶液に、THF中のヘキサメチルジシラジドカリウムの溶液(1M、2.2mL、2.2mmol、2.5当量)を-30℃で加えた。30分後、THF(1mL)中の前ステップからのケトン(300mg、0.86mmol、1.0当量)の溶液を加え、得られた溶液を-10℃で1時間撹拌した。反応をH
2O(8mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物をEtOAc(2x30mL)で抽出し、次いで合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:50)で溶離する分取TLCによって精製し、所望のアルケンを125mg(42%)得た。
【化26】
【0122】
前のステップからのエステル(100mg、0.28mmol、1.0当量)、濃水酸化ナトリウム水溶液(10mL)、およびTHF(10mL)の混合物を50℃で8時間加熱した。混合物を室温に冷まし、溶液のpHを1N HClによって5に調整した。得られた溶液をEtOAc(3x50mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、残渣を0.05%ギ酸を含むACN/H2O(70~85%グラジエント)で溶出する逆相MPLC(C18カラム)によって精製した。溶媒の除去によって、所望のカルボン酸を白色固体として36mg(37%)得た。1H-NMR:(300MHz、DMSO-d6、ppm):δ7.89-7.87(d、J=14Hz、2H)、7.31-7.29(d、J=14Hz、2H)、7.17(s、1H)、6.41(s、1H)、5.88(s、1H)、5.24(s、1H)、1.88(s、3H)、1.74-1.64(m、4H)、1.30(s、6H)、0.87(s、2H)、0.77(s、2H)。LC-MS:(ES、m/z):345.10[M-H]+。
【0123】
実施例3:4-(1-(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ビニル)安息香酸(DSP-106;106)の調製
【化27】
CH
2Cl
2(150mL)中の4-アセチル安息香酸メチル(17.8g、100mmol、1.0当量)、Na
2CO
3(17.0g、160mmol、1.6当量)、Tf
2O(56.4g、200mmol、2.0当量)の溶液を室温で8時間撹拌した後、固形物をろ過により除去した。ろ液を飽和NaHCO
3水溶液(150mL)で処理し、次いで層を分離し、有機物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、4-[1-[(トリフルオロメタン)スルホニルオキシ]エテニル]安息香酸メチルを白色固体として16g(52%)得た。
【化28】
【0124】
CH
2Cl
2(90mL)中の2、5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(16.0g、87.4mmol、1.2当量)、AlCl
3(1.98g、17.5mmol、0.20当量)の混合物に、CH
2Cl
2(10mL)中の2-ブロモ-1-フルオロ-3-メチルベンゼン(14.0g、74.1mmol、1.0当量)の溶液を-10℃で加えた。反応混合物を-10℃で2時間撹拌し、次いでH
2O(20mL)および飽和NaHCO
3水溶液(50mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物をCH
2Cl
2(100mL)で抽出し、次いで合わせた有機物を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、6-ブロモ-5-フルオロ-1,1,4,4,7-ペンタメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを黄色固体として6g(27%)得た。
【化29】
【0125】
THF(30mL)中の6-ブロモ-5-フルオロ-1,1,4,4,7-ペンタメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(1g、3.3mmol、1.0当量)の溶液に、ヘキサン中のn-BuLiの溶液(2.5M、2mL、5.0mmol、1.5当量)を-78℃で加え、混合物を1時間撹拌した。得られた溶液に-78℃でホウ酸トリイソプロピル(2.4mL、10.0mmol、3.0当量)を加えた。そして溶液を-78℃でさらに2時間撹拌し、氷/H
2O(20mL)の添加によって反応を止めた。混合物をEtOAc(2x50mL)で抽出し、次いで合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(4:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ボロン酸を黄色オイルとして0.58g(66%)得た。
【化30】
【0126】
DMF(7mL)中の(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ボロン酸(460mg、1.7mmol、1.0当量)、4-[1-[(トリフルオロメタン)スルホニルオキシ]エテニル]安息香酸メチル(595mg、1.9mmol、1.1当量)、Pd(OAc)
2(20mg、0.09mmol、0.05当量)、p(o-Tol)
3(42mg、0.14mmol、0.08当量)、およびTEA(0.5mL)の混合物を50℃で2時間撹拌し、次いで室温に冷まし、H
2O(50mL)の添加によって反応を止めた。混合物をEtOAc(2x50mL)で抽出し、有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(10:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、4-[1-(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸メチルを淡黄色固体として300mg(45%)得た。
【化31】
【0127】
THF(7mL)中の4-[1-(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸メチル(215mg、0.57mmol、1.0当量)の溶液に、濃縮LiOH水溶液(7mL)を加えた。得られた混合物を一晩還流で加熱し、次いで室温に冷まし、溶液のpHを1N HClの作用によって5に調整した。水性混合物をEtOAc(2x20mL)で抽出した後、合わせた層を減圧下で濃縮し、残渣を逆相クロマトグラフィー(XSelect CSK C18 OBDカラム、19x250nm、5μm;移動相A:H2O(0.05%TFA)、移動相B:ACN、流速:25mL/分、グラジエント:12分で32%ACNから68%ACNまで、検出器:UV 254、220nm)で精製した。溶媒の除去によって、4-[1-(1-フルオロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸を白色固体として60mg(29%)得た:1H-NMR:(300MHz、CDCl3、ppm):δ7.95(d、J=14Hz、2H)、7.36(d、J=14Hz、2H)、7.07(s、1H)、6.12(s、1H)、5.27(s、1H)、2.05(s、3H)、1.73-1.67(m、4H)、1.33-1.31(m、12H)。LC-MS:(ES、m/z):367.30[M+H]+。
【0128】
実施例4:4-(1-(3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ビニル)安息香酸(DSP-103;103)の調製
【化32】
CCl
4(20mL)中の4-[(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)カルボニル]安息香酸(1g、2.7mmol、1.0当量)、NBS(3.81g、21.9mmol、8.0当量)、および過酸化ベンゾイル(200mg、0.83mmol、0.30当量)の溶液を80℃で一晩加熱した。反応混合物を室温に冷まし、次いでH
2O(20mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物をCH
2Cl
2(2x20mL)で抽出し、次いで合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:50)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、粗4-[[3-(ジブロモメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]カルボニル]安息香酸メチルを褐色固体として1g得た。
【化33】
【0129】
DMSO(20mL)中の4-[[3-(ジブロモメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]カルボニル]安息香酸(1g、1.9mmol、1.0当量)の溶液を100℃で2時間加熱した後、反応混合物を室温に冷ました。得られた溶液をH
2O(20mL)で希釈し、次いでEtOAc(3x20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:20)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、4-[(3-ホルミル-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)カルボニル]安息香酸メチルを白色固体として500mg(69%)得た。
【化34】
【0130】
CH
2Cl
2(5mL)中の4-[(3-ホルミル-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)カルボニル]安息香酸メチル(500mg、1.3mmol、1.0当量)およびジエチルアミノサルファートリフルオリド(1.28g、7.9mmol、6.0当量)の溶液を室温で24時間撹拌し、次に0℃に冷ましてH
2O(20mL)の添加によって反応を止めた。得られた溶液をCH
2Cl
2(3x20mL)で抽出し、次いで合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣を石油エーテルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、4-[[3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]カルボニル]安息香酸メチルを淡黄色固体として340mg(64%)得た。
【化35】
【0131】
THF(10mL)中のPh
3PMeBr(802mg、2.3mmol、3.0当量)の溶液に、THF中のヘキサメチルジシラジドカリウムの溶液(1M、2.6mL、2.6mmol、3.5当量)を-30℃で滴下方式で加えた。得られた溶液を0℃で40分間撹拌し、-30℃に冷却し、次いでTHF(10mL)中の4-[[3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]カルボニル]安息香酸メチル(300mg、0.75mmol、1.0当量)を滴下方式で加えた。得られた溶液を室温で3時間撹拌し、0℃に冷却した後、H
2O(20mL)の添加によって反応を止めた。得られた混合物をEtOAc(2x20mL)で抽出し、次いで合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(0/1~1/50)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、4-[1-[3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]エテニル]安息香酸メチルを淡黄色固体として140mg(47%)得た。
【化36】
【0132】
THF(6mL)およびH2O(6mL)中の4-[1-[3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]エテニル]安息香酸メチル(140mg、0.35mmol、1.0当量)および水酸化リチウム(84mg、3.5mmol、10.0当量)の混合物を50℃で8時間撹拌し、次いで0℃に冷却して溶液のpHをHCl(1M)の作用によって5~6に調整した。得られた混合物をEtOAc(3x20mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。残渣を以下の条件でFlash-Prep-HPLCによって精製した(IntelFlash-1):C18カラム、移動相、15分かけて40%メタノール/水(0.05%ギ酸を含む)から100%メタノール(0.05%ギ酸を含む)まで;検出器、UV 254nm。溶媒の除去によって、4-[1-[3-(ジフルオロメチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]エテニル]安息香酸を白色固体として31mg(23%)得た:1H-NMR(300MHz、CDCl3、ppm):δ8.07(d、J=8.4Hz、2H)、7.67(s、1H)、7.40(d、J=8.4Hz、2H)、7.15(s、1H)、6.51(t、J=55.5Hz、1H)、6.00(s、1H)、5.42(s、1H)、1.75(s、4H)、1.37(s、6H)、1.28(s、6H)。LC-MS:(ES、m/z):[M+H]=385。
【0133】
実施例5:4-(1-(6’-クロロ-4’、4’-ジメチル-3’、4’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロプロパン-1,1’-ナフタレン]-7’-イル)ビニル)安息香酸(DSP-108;108)の調製
【化37】
CH
2Cl
2(500mL)中のクロロベンゼン(50g、444mmol、1.2当量)、オキソラン-2,5-ジオン(44.4g、444mmol、1.0当量)、および三塩化アルミニウム(74.01g、555mmol、1.5当量)の混合物を室温で16時間撹拌し、次いで1M HCl/氷(600mL)を加えて反応を止めた。得られた混合物をジエチルエーテル(3x300mL)で抽出し、そして合わせた抽出物を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、4-(4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸を白色固体として73g(93%)得た。
【化38】
【0134】
ジエチレングリコール(250mL)中の4-(4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸(50g、235mmol、1.0当量)、ヒドラジン(9.78g、305mmol、1.3当量)、および水酸化カリウム(34g、606mmol、2.6当量)の溶液を170℃で5時間加熱した後、室温に冷まし、HCl水溶液(200mL)の添加によって反応を止めた。得られた溶液をH
2O(100mL)で希釈し、溶液のpHを水酸化ナトリウム(2M)の作用によって12に調整した。得られた混合物をCH
2Cl
2(3x200mL)で抽出し、次いで合わせた有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮して、4-(4-クロロフェニル)ブタン酸を黄色固体として39g(83%)得た。
【化39】
【0135】
メタノール(360mL)中の4-(4-クロロフェニル)ブタン酸(36g、181mmol、1.0当量)および濃硫酸(36mL)の溶液を室温で16時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をEtOAcで採取し、次いでH
2O(2x100mL)、飽和NaHCO
3水溶液(100mL)、およびブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO
4)、減圧下で濃縮して、4-(4-クロロフェニル)ブタン酸メチルを白色固体として36g(93%)得た。
【化40】
【0136】
ジエチルエーテル(292mL)およびトルエン(580mL)中の4-(4-クロロフェニル)ブタン酸メチル(36.5g、172mmol、1.0当量)の溶液に、MeMgBr(49.2g、413mmol、2.4当量)をいくつかのバッチで30分かけて加えた。得られた溶液を30℃で2時間撹拌し、すぐに飽和塩化アンモニウム(100mL)を加え、次いで溶液のpHをHCl(2M)の作用によって7に調整した。得られた混合物をEtOAc(2x200mL)で抽出し、次いで合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、5-(4-クロロフェニル)-2-メチルペンタン-2-オールを黄色オイルとして35.7g(98%)得た。
【化41】
【0137】
ジエチルエーテル(175mL)中の5-(4-クロロフェニル)-2-メチルペンタン-2-オール(35g、164.5mmol、1.0当量)の溶液に、硫酸(105mL)を滴下方式で加えた。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、すぐに溶液をH
2O(100mL)で希釈した。混合物をジエチルエーテル(3x100mL)で抽出した後、合わせた有機層を飽和NaHCO
3水溶液(2x100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、7-クロロ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを黄色オイルとして31g(97%)得た。
【化42】
【0138】
酢酸(225mL)中の7-クロロ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(15g、77.0mmol、1.0当量)の溶液に、H
2O(225mL)中の三酸化クロム(35.4g、354mmol、5.0当量)の溶液を30分かけて滴下方式で加えた。得られた溶液を室温で3時間撹拌し、すぐにi-プロパノール(100mL)を加えた。混合物を飽和NaHCO
3水溶液(2x100mL)、そしてブラインで洗浄した。得られた溶液をEtOAc(3x200mL)で抽出し、次いで合わせた有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、6-クロロ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オンを黄色オイルとして9.1g(57%)得た。
【化43】
【0139】
THF(450mL)中のPPh
3MeBr(39.4g、110.3mmol、3.0当量)の溶液に、THF中のLDAの溶液(1M、65mL、130mmol、3.0当量)溶液を-10℃で20分かけて滴下方式で加えた。混合物に、THF(50mL)中の6-クロロ-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(9g、43.1mmol、1.0当量)を加え、次いで得られた溶液を0℃で3時間撹拌した。反応混合物を氷/H
2O(40mL)の添加によって反応を止め、次いで混合物をEtOAc(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣を石油エーテルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、7-クロロ-1,1-ジメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを無色オイルとして7.6g(85%)得た。
【化44】
【0140】
CH
2Cl
2(288mL)中のジエチル亜鉛(47.7g、387mmol、10.0当量)の混合物に、0℃でトリフルオロ酢酸(38g、387mmol、10.0当量)を20分かけて滴下方式で加えた。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いでジヨードメタン(103.9g、387mmol、10.0当量)を20分かけて滴下方式で加えた。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、次いでCH
2Cl
2(20mL)中の7-クロロ-1,1-ジメチル-4-メチリデン-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(8g、38.7mmol、1.0当量)を加えた。得られた溶液を0℃で4時間撹拌し、次いで飽和NaHCO
3水溶液(100mL)の添加によって反応を止めた。混合物をCH
2Cl
2(3x200mL)で抽出し、次いで合わせた有機層を混合し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]を無色オイルとして7.6g(89%)得た。
【化45】
【0141】
THF(25mL)中の6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン](1g、4.5mmol、1.0当量)および4,4,5,5-テトラメチル-2-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.73g、6.8mmol、1.50当量)の混合物を窒素注入によって3回脱気し、次いでt-Budpy(123mg、0.60mmol、0.10当量)およびビス(メトキシイリジウムカルバルデヒド)(150mg、0.30mmol、0.05当量)を加え、得られた混合物を80℃で3時間加熱した。反応混合物を室温に冷まし、次いで以下の条件を用いてPrep-HPLCによって精製した:カラム、C
18;移動相、ACN/H
2O、30分以内に70%~90%;検出器、UV 210nm。溶媒の除去によって、2-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを白色固体として530mg(34%)得た。
【化46】
【0142】
2-Me THF(15mL)中の4-[1-[(トリフルオロメタン)スルホニルオキシ]エテニル]安息香酸メチル(522mg、1.68mmol、1.10当量)、2-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(500mg、1.44mmol、1.0当量)、およびK
3PO
4(974mg、4.59mmol、3.0当量)の混合物を窒素注入によって3回脱気し、次いでテトラキス(トリフェニルホスファン)パラジウム(177mg、0.15mmol、0.11当量)を加え、得られた溶液を80℃で3時間撹拌した。粗生成物(10mL)を以下の条件でPrep-HPLCによって精製した:カラム、C18;移動相、ACN/H
2O、30分かけて70%~90%;検出器、UV 210nm。溶媒の除去によって、4-(1-(6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル)ビニル)安息香酸メチルを白色固体として500mg(91%)得た。
【化47】
【0143】
THF(15mL)中の4-(1-[6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]エテニル)安息香酸メチル(500mg、1.3mmol、1.0当量)、水(1mL)、および水酸化リチウム(63mg、2.6mmol、2.0当量)の混合物を50℃で5時間撹拌してから室温に冷ました。溶液のpHを2M HClの作用によって2に調整し、次いで混合物をH2O(2x10mL)およびジエチルエーテル(3x10mL)で洗浄してから濃縮して、4-(1-[6-クロロ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロプロパン-1,1-ナフタレン]-7-イル]エテニル)安息香酸を灰色固体として300mg(62%)得た:1H-NMR:(400MHz、DMSO、ppm):δ12.93(s、1H)、7.89(d、J=8.4Hz、2H)、7.40(s、1H)、7.32(d、J=8.4Hz、2H)、6.61(s、1H)、5.97(s、1H)、5.36(s、1H)、1.74(t、J=4.8Hz、2H)、1.66(t、J=4.8Hz、2H)、1.31(s、6H)、0.96(t、J=4.8Hz、2H)、0.83(t、J=4.8Hz、2H)。LC-MS:(ES、m/z):367[M+H]+、365[M-H]-。
【0144】
実施例6:4-(1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)シクロプロピル)安息香酸(DSP-105;105)の調製
【化48】
100mL丸底フラスコにメチルベンゼン(60mL)、2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(5g、27.30mmol、1.00当量)を加えた。これにAlCl
3(2.7g、20.48mmol、0.75当量)の添加をいくつかに分けて0℃で続けた。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却した。次いで反応を水30mLの添加によって止めた。得られた溶液を2x50mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を1x50mLのブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて真空下で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1/5)を用いたシリカゲルカラムに加えた。これによって、1,1,4,4,6-ペンタメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを淡黄色オイルとして6.6g(粗)得た。
【化49】
【0145】
窒素の不活性雰囲気でパージして維持した25mL丸底フラスコに、1,1,4,4,6-ペンタメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(6.6g、32.62mmol、1.00当量)、DCE(70mL)、4-(カルボノクロリドイル)安息香酸メチル(6.5g、32.62mmol、1.00当量)、FeCl
3(300mg、1.63mmol、0.05当量)を加えた。得られた溶液を油浴中で75℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷ました。次いで、反応を70mLの水の添加によって止めた。得られた溶液を2x70mLのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を1x100mLのブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をメタノールから再結晶させた。これにより、4-[(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)カルボニル]安息香酸メチルを灰色固体として8g(67%)得た。
【化50】
【0146】
窒素の不活性雰囲気でパージして維持した50mL丸底フラスコに、PPh
3MeBr(1715mg、4.80mmol、2.50当量)、THF(10mL)を加えた。これに-30℃で撹拌しながらKHDMS(1M)(5.1mL、5.11mmol、2.66当量)の滴下による添加を続けた。得られた溶液を0℃で30分間撹拌した。これにTHF(7mL)中の4-[(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)カルボニル]安息香酸メチル(700mg、1.92mmol、1.00当量)の溶液を-30℃で撹拌しながら滴下して加えた。得られた溶液を0℃で1時間撹拌した。次いで反応を0℃での20mLの水の添加によって止めた。得られた溶液を2x20mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を1x20mLのブラインで洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル/石油エーテル(1/10)を用いたシリカゲルカラムに加えた。これによって、4-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸メチルを淡黄色固体として480mg(69%)得た。
【化51】
【0147】
窒素の不活性雰囲気でパージして維持した50mL丸底フラスコに、Et
2Zn(1M)(1.4mL、1.4mmol、10.00当量)、DCM(2mL)を加えた。これに0℃で撹拌しながらTFA(157mg、1.39mmol、10.00当量)の滴下による添加を続けた。得られた溶液を0℃で30分間撹拌した。これにCH
2I
2(370mg、1.4mmol、10.00当量)を0℃で撹拌しながら滴下して加えた。得られた溶液を0℃で30分間撹拌した。この混合物にDCM(1mL)中の4-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸メチル(50mg、0.14mmol)の溶液を0℃で撹拌しながら滴下して加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。次いで反応を0℃での20mLの水の添加によって止めた。固体をろ過して取り除いた。得られた溶液を2x20mLのジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を1x20mLのブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル/石油エーテル(1/10)を用いたシリカゲルカラムに加えた。これによって4-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)シクロプロピル]安息香酸メチルを白色固体として10mg(19%)得た。
【化52】
【0148】
50mL丸底フラスコに、4-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)シクロプロピル]安息香酸メチル(330mg、0.88mmol、1.00当量)、THF(6mL)、水(6mL)、LiOH(210mg、8.77mmol、10.00当量)を加えた。得られた溶液を、50℃で1日撹拌した反応混合物を室温に冷まし、真空下で濃縮した。溶液のpH値を0℃で塩化水素(1mol/L)で3に調整した。固体をろ過によって収集した。粗生成物をFlash-Prep-HPLCによって以下の条件で精製した(Intel Flash-1):カラム、C18、移動相、ACN/水=0を30分でACN/水=100に増加、検出器:UV 254nm。これによって、4-(1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)シクロプロピル)安息香酸を白色固体として30mg(9%)得た。1H-NMR:(300Hz,CDCl3,ppm):δ7.86(d,J=8.4Hz,2H),7.33(s,1H),7.13(s,1H),6.98(d,J=8.4Hz,2H),2.13(s,3H),1.73(s,4H),1.47-1.44(m,2H),1.36-1.34(m,2H),1.31(d,J=1.8Hz,12H)。LC-MS:(ES、m/z):[M+H]=363。
【0149】
実施例7:HL60細胞における活性
HL60細胞をRPMI、10%ウシ胎児血清で増殖させ、細胞を0.5x10
6個/mLの密度で本開示の化合物、全トランスレチノイン酸(ATRA)(陽性コントロール)、またはDMSO(陰性コントロール)の存在中でプレートに24時間加えた。細胞を洗浄し、ウサギ血清でブロックしてから染色した。マウス抗ヒトCD45 BV711およびCD38 PE-Cy7をFVS510(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)の存在下で使用して、細胞分化の指標としてCD38誘導を測定した。データはDivaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてBD LSR IIフローサイトメーターで取得した。フロープロットは、FlowJo(V10)およびFCS Express(6.06.0014)を用いて分析した。CD38誘導は、一重項排除(FSC-H/FSC-A)と生存率(FVS510-)に関する選別後に全細胞のパーセンテージとして示される。結果を
図1に示す。本開示の化合物は、HL60細胞において用量依存的なCD38発現を誘導し、白血病性芽球の初期分化を示唆する。
【0150】
実施例8:MOLM14細胞における活性
MV4;11細胞をRPMI、10%ウシ胎児血清で増殖させ、細胞を0.5x10
6個/mLの密度で本開示の化合物、全トランスレチノイン酸(ATRA)(陽性コントロール)、またはDMSO(陰性コントロール)の存在中でプレートに24時間加えた。細胞を洗浄し、ウサギ血清でブロックしてから染色した。マウス抗ヒトCD45 BV711およびCD38 PE-Cy7をFVS510(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)の存在下で使用して、細胞分化の指標としてCD38誘導を測定した。データはDivaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてBD LSR IIフローサイトメーターで取得した。フロープロットは、FlowJo(V10)およびFCS Express(6.06.0014)を用いて分析した。CD38誘導は、一重項排除(FSC-H/FSC-A)と生存率(FVS510-)に関する選別後に全細胞のパーセンテージとして示される。結果を
図2に示す。本開示の化合物は、MV4;11細胞において用量依存的なCD38発現を誘導し、これは白血病性芽球の初期段階の分化を示唆する。
【0151】
実施例9:NB4細胞における活性
NB4細胞をRPMI、10%ウシ胎児血清で増殖させ、細胞を25000個/mLの密度で本開示の化合物、ATRA(陽性コントロール)、またはDMSO(陰性コントロール)の存在中で、プレートに4日間加えた。細胞を洗浄し、ウサギ血清でブロックしてから染色した。マウス抗ヒトCD11b PEおよびLive-Dead Aqua(BD Biosciences、San Jose,CA,USA)を使用して、細胞分化の指標としてCD11b誘導を測定した。データはDivaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてBD LSR IIフローサイトメーターで取得した。フロープロットは、FlowJo(V10)およびFCS Express(6.06.0014)を用いて分析した。CD38誘導は、一重項排除(FSC-H/FSC-A)と生存率(FVS510-)に関する選別後に全細胞のパーセンテージとして示される。ATRA陽性コントロールを4回繰り返して実施した。結果を
図3に示す。本開示の化合物およびベキサロテンは、同レベルの後期分化活性および用量反応パターンを示す。
【0152】
実施例10:細胞数活性
NB4細胞またはMV4;11細胞をRPMI、10%ウシ胎児血清で増殖させ、本開示の化合物(DMSOに溶解)の存在下または非存在下で細胞25,000個/mLの密度でプレートに5日間加えた。細胞は、血球計数盤およびトリパンブルー排除を用いて光学顕微鏡で、またはCellometer Viastain AOPI染色液(Nexcelom CS2-0106)を用いてNexcelom Cellometer Auto 2000で、マニュアルによって計数した。
図4は、NB4細胞が本開示の化合物またはベキサロテンとのインキュベーション後に細胞数の用量依存的な減少を示し、本開示の化合物による細胞数の減少が、同等レベルのベキサロテンで認められるよりも大きく現れる。
図5は、MV4;11細胞が本開示の化合物またはATRAとともにインキュベートされたときの細胞数の用量依存的な減少を示し、本開示の化合物は、同様な用量のベキサロテンよりも大きな細胞数の減少を示す。
【0153】
本開示の様々な態様は、以下の請求項に列挙される非限定的な実施形態によってさらに例示される。各場合において、複数の請求項の特性は、本明細書と矛盾せず、論理的に矛盾しない任意の形態で組み合わせることができる。
【0154】
本明細書に記載される実施例および実施形態は例示目的のみのためであり、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に組み込まれるべきであることを理解されたい。本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。