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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】電気外科用スネア
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021077860
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2018503789の分割
【原出願日】2016-09-06
(65)【公開番号】P2021130000
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】1515828.0
(32)【優先日】2015-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコルム
(72)【発明者】
【氏名】モリス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】グリフォード,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】スウェイン,サンドラ・メイ・バーナデット
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー,モハメッド・サビフ
(72)【発明者】
【氏名】ソーンダーズ,ブライアン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/004420(WO,A1)
【文献】特開2014-018659(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097446(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0036899(US,A1)
【文献】特開平10-014922(JP,A)
【文献】特開平10-211212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側導体と、外側導体と、前記内側導体を前記外側導体から分離する誘電体材料とを有する同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの遠位端に配置され、前記内側導体に電気的に接続されたエンドキャップを有する遠位ヘッド組立体と、
前記遠位ヘッド組立体を通り抜けて摺動可能に据え付けられ、前記エンドキャップを越えて退縮可能ループを形成するスネアワイヤとを含む外科用スネアであって、
前記スネアワイヤの第1の端部が、前記同軸ケーブルに摺動可能に据え付けられた可動ボスに接続され、
前記可動ボスが、前記同軸ケーブルに対して軸方向に摺動可能なプッシュロッドに取り付けられている、外科用スネア。
【請求項2】
前記スネアワイヤが前記外側導体に電気的に接続され、前記内側導体から電気的に絶縁されている、請求項1に記載の外科用スネア。
【請求項3】
前記遠位ヘッド組立体が、前記同軸ケーブルに据え付けられた固定ボスを含み、前記スネアワイヤの第1の端部は、前記固定ボスを通り抜ける、請求項1または2に記載の外科用スネア。
【請求項4】
前記スネアワイヤの第2の端部が前記固定ボスに取り付けられている、請求項3に記載の外科用スネア。
【請求項5】
前記スネアワイヤの第2の端部が、前記固定ボスと前記可動ボスとの間で前記スネアワイヤの前記第1の端部と接続する、請求項3に記載の外科用スネア。
【請求項6】
前記スネアワイヤの前記第2の端部が前記固定ボスを通り抜ける、請求項5に記載の外科用スネア。
【請求項7】
前記固定ボスが、前記外側導体に電気的に接続されている、請求項3に記載の外科用スネア。
【請求項8】
前記スネアワイヤの第2の端部が前記可動ボスに取り付けられている、請求項1に記載の外科用スネア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリープ切除術の処置で利用するための外科用スネア関する。特に、本発明は、内視鏡の器具用チャネル(または、胃腸(GI)管や、鼻腔をはじめヒトまたは動物の体内の他の場所で使用する他のいずれかの種類のスコープ装置)に沿って挿入するのに適した医療用スネアに関するものであり、電磁エネルギーを生体組織に導入する手段を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
胃腸管のポリープは、内視鏡での処置で医療用スネアを使用して、例えば結腸鏡を使用して除去できる。有茎性ポリープの場合、スネアはポリープの上を通り、ポリープの頸部(すなわち茎)の周りで締め付け、その後、切断し、ポリープを除去する。切断プロセスは、高周波数(RF)電流を生体組織に通すことによって実施または強化してもよい。また、電流が焼灼を促進し得る。
【0003】
無茎ポリープも同様の方法で除去できる。ポリープを立たせて周囲の結腸壁から遠ざけるため、ポリープの下で生理食塩水またはヒアルロン酸ナトリウムを注射することによって、除去する前にそのようなポリープを「膨隆させる」ことが好ましい。これは、腸の穿孔のリスクを軽減するのに寄与し得る。
【0004】
WO2015/004420には、電極がスネアのループ内へと拡張できる電気外科用スネアが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の開示は、外科用スネア器具の3つの強化点を提供する。第1の強化点は、拡張構成で組織がスネアワイヤのループに囲まれている場合、及び組織が退縮構成のスネアワイヤのループから半径方向外側に位置する場合の両方において、電磁エネルギー(特にマイクロ波エネルギー)が組織にいかに送達されるかという点に関する。したがって、スネアは2つの位置、つまり開位置(拡張構成に対応する)及び閉位置(退縮構成に対応する)で操作可能であり得る。開位置では、切除に向け組織を捕捉すべくスネアを用いてもよい。閉位置では、スネアは多目的の止血物として使用してもよい。
【0006】
第2の強化点は、スネアワイヤを作動させる(すなわち拡張及び退縮させる)手段に関する。
【0007】
第3の強化点は、スネアワイヤのループがそこから延びる遠位ヘッド組立体の幾何学形状及び構造に関する。
【0008】
最も一般的には、本発明の第1の態様は、スネアワイヤのループがスネアを用いた機械的切断のための物理的な反応面として、また電磁(例えば、マイクロ波やRF)エネルギーを放出するための領域としての両方で作用し得るエネルギー伝達面から延びる電気外科用スネアを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様によると、内側導体と、外側導体と、内側導体を外側導体から分離する誘電体材料とを有する同軸ケーブルと、同軸ケーブルの遠位端に配置された遠位ヘッド組立体と、遠位ヘッド組立体に据え付けられたスネアワイヤであって、遠位ヘッド組立体が、内側導体に接続された遠位に向くエネルギー伝達構造部と、遠位に向くエネルギー
伝達面の出口とエンドキャップの近位面の入口との間で各々が軸方向に延びる一対のチャネルとを有するエンドキャップを備えるスネアワイヤとを含み、スネアワイヤが、遠位に向くエネルギー伝達面を越えて退縮可能ループを形成するように一対のチャネル内に配置される、外科用スネアが提供される。同軸ケーブルは、遠位ヘッド組立体に電磁エネルギーを送達するように構成してもよい。遠位に向くエネルギー伝達構造部は、同軸ケーブルによって遠位ヘッド組立体に移される電磁エネルギーを遠位ヘッド組立体の生体組織に伝送するように構成してもよい。
【0010】
同軸ケーブルは、マイクロ波電磁エネルギーを移すように構成され(例えば、大凡の寸法にされ)てもよく、それにおいて、エネルギー伝達構造部は、マイクロ波電磁エネルギーを放射するアンテナとして構成し得る。アンテナは、導電性材料、またはマイクロ波セラミックまたはマイクロ波エネルギーの効果的な伝播を可能にする類似の低損失誘電体から形成できる。
【0011】
同軸ケーブルは、高周波数(RF)電磁エネルギーを移すように構成してもよい。RFエネルギーは、マイクロ波エネルギーと同じ同軸ケーブルで移してもよい。RFエネルギーとマイクロ波エネルギーは、別々に、または同時に移してもよい。エネルギー伝達構造部は、RFエネルギーを伝送するのであれば、内側導体に電気的に接続された導電性材料を含んでもよい。例えば、エネルギー伝達構造部が、エンドキャップに形成された導電性表面を含んでもよい。
【0012】
スネアワイヤは、外側導体に電気的に接続された導電性材料を含んでもよく、好ましくは内側導体及びエネルギー伝達構造部から電気的に絶縁されている。エネルギー伝達構造部は活性電極として作用してもよく、スネアワイヤはリターン電極として作用してもよい。スネアワイヤ(すなわち、リターン電極)から導電性表面(すなわち、活性電極)を絶縁するために、チャネルの内部に絶縁材料を設けて、内側導体と外側導体との間の短絡を防止することができる。
【0013】
装置がマイクロ波電磁エネルギーのみを使用する構成である場合、スネアワイヤと導性表面を絶縁させる必要がない場合がある。例えば、マイクロ波エネルギーの効率的な伝播を保証するために、Hフィールドループを使用してもよい。
【0014】
スネアワイヤと遠位に向くエネルギー伝達構造部とを組み合わせる構成は、送達されたエネルギーが退縮可能ループによって囲まれた組織に確実に入るように作用し得る。使用時には、電磁エネルギーを用いて、退縮可能ループが把持する組織を凝固し、及び/または切断作業を補助し得る。退縮可能ループが退縮すると、エネルギーは、ヘッド組立体の遠位端から外向きに離れるように送達され得る。退縮した状態では、ループの直径は5mm~0.5mmであってもよい。この様式では、装置は、ポリープ切除術の処置の開始前に血流を止めるために、ポリープ茎周囲の領域を「スポットで」凝固させるのに使用できる。装置は、この退縮した構成で、腸の血管、またはポリープ茎を除去すべき領域周囲の血管を凝固するために使用してもよい。代替的または追加的に、この装置は、無茎のポリープまたは腫瘍周囲の領域を目立たせるために退縮した構成で使用してもよい。
【0015】
スネアワイヤは、遠位ヘッド組立体に摺動可能に据え付けてもよく、それによって、ループはエネルギー伝達構造部に向かって退縮可能である。退縮可能ループは、完全に退縮したときにエネルギー伝達構造部に接触するように構成し得る。そのため、エネルギー伝達構造部は、スネアワイヤが加える物理的な力のための反応面として作用し得る。
【0016】
エンドキャップは、内側導体に電気的に接続された導電性本体を備え得る。言い換えれば、エンドキャップは、近位面と、エネルギー伝達構造部である遠位に向く導電性表面の
両方を備える単一の固体導電性塊を備えてもよい。一対のチャネルは、導電性本体を貫通して形成される(例えば孔を開ける(boredまたはdrilled))孔であってよい。チャネルは、互いに平行であっても、装置の軸(例えば、同軸ケーブルの軸)と位置合わせしていてもよい。孔は、軸に対して対称的に配置してもよい。しかし、孔の構成は、例えば装置の特定の用途に応じて異なっていてもよいことが理解されるだろう。孔は、スネアワイヤを導電性本体から電気的に絶縁する内面の絶縁層を有し得る。代替的または追加的に、スネアワイヤ自体は、通常の動作中にチャネルを通り抜ける部分に沿って絶縁カバーを有してもよい。エンドキャップは、凝固させた組織がラジエータに粘着するのを防止するために、絶縁性及び/または非粘着性の材料層でコーティングしてもよい。この絶縁材料は、例えば、パリレンC、PTFE、テフロン(登録商標)、または同様の特性を有する材料の層であってもよい。また、スネアワイヤのループが、例えば10μm以下の厚さの絶縁材料及び/または非粘着材料の薄い層でコーティングされていることが好ましい場合もある。
【0017】
上記のように、遠位に向くエネルギー伝達構造部が、完全に退縮したときに退縮可能ループに接触するための反応面を備えてもよい。換言すれば、ループによって囲まれる領域は、退縮するにつれて、ゼロまで減少してもよい。反応面は、一対のチャネルの出口の間に延びる遠位に向くエネルギー伝達構造部の一部であってもよい。反応面は平坦であってもよい。しかし、好ましくは反応面は、スネアワイヤが退縮するときにスネアワイヤに嵌合するように湾曲する。反応面は、ある範囲の曲率半径、例えば1mm~10mmを有してもよい。例えば、反応面は、円錐または円筒の面の一部に似ていてもよい。反応面は、エネルギー伝達構造部の凹部を含む(include)または備える(comprise)場合がある。
【0018】
反応面は、スネアワイヤによって捕捉された生物学的組織の切断を容易にするための切断フィーチャー、例えば鋭利なエッジまたはブレードを含み得る。切断フィーチャーは、反応面から突出しないように、上述した凹部の内側に設けてもよい。この構成は、装置が腸、食道または他の器官の壁に押し付けられた場合に、穿孔または望ましくない組織損傷のリスクを低減する。
【0019】
エネルギー伝達構造部が導電性表面を含む場合、反応面は、遠位に向く導電性表面を横切る絶縁材料のストリップを含んで、遠位に向く導電性表面とスネアワイヤとの間の電気的な接続を作り出すのを回避し得る。ストリップは、エンドキャップと別個に形成してもよく、また例えば接着剤で後に接着させてもよい。例えば、エンドキャップは、ストリップを受け入れるためにエンドキャップを横切って形成された凹部を有してもよい。反応面は、遠位に向く導電性表面の溝であってよい。例えば、絶縁材料のストリップは、スネアワイヤの断面の輪郭と協働するように凹状に形成してもよい。ストリップは、薄いマイクロストリップの線などであってもよい。
【0020】
遠位に向く導電性構造部が丸みを帯びている、例えば半球状やドーム状の様式の場合がある。この形状は、電磁エネルギーの送達を補助してもよく、組織の偶発的な引っ掛かりを防止するための滑らかな表面を備えてもよい。遠位に向く導電性構造部がドームであってもよく、その場合一対のチャネルの出口がドームに位置する。換言すれば、退縮可能ループは、ループが取り囲む領域に挿入可能な別個の放射要素を有するのではなく、むしろ器具の放射面から延出している。
【0021】
退縮可能ループが取り囲む領域に電磁エネルギーを集束させ、電磁エネルギーが器具を取り囲む健常な組織に入るのを防止するために、エンドキャップは、退縮可能ループの面と位置合わせする側面に絶縁カバー部を有してもよい。言い換えれば、退縮可能ループの上方及び下方にあるエンドキャップの部分は、外側の導電性表面を呈示しない。
【0022】
スネアワイヤは、遠位ヘッド組立体の近位端で同軸ケーブルの外側導体に接続させてもよい。一実施例では、スネアワイヤの一端を外側導体に接続するジョイントは、スネアワイヤの固定用アンカー箇所としても機能する。そのため、遠位ヘッド組立体は、同軸ケーブルに据え付けられ、外側導体に電気的に接続された固定ボスを含んでもよく、スネアワイヤは、固定ボスに電気的に接続される。固定ボスは、遠位ヘッド組立体の近位端で外側導体にクランプされた導電性(例えば金属)リングであってもよい。スネアワイヤは、固定ボスにはんだ付けしてもよい。代替的に、スネアワイヤは、締まりばめ、またはチャネルの1つにおけるねじでの接続を利用して、キャップに固定することができる。
【0023】
スネアワイヤの第1の端部は、同軸ケーブルに対して軸方向に摺動可能なプッシュロッドに接続してもよく、スネアワイヤの第2の端部は、固定ボスに取り付けてもよい。同軸ケーブルに沿って第1の端部を前後に動かすと、退縮可能ループが伸縮する。退縮可能ループの整列を維持するために、スネアワイヤの第1の端部が、同軸ケーブルに摺動可能に据え付けられる可動ボスに接続してもよい。可動ボスは、同軸ケーブルを摺動するスリーブであってもよい。この構成は、スネアワイヤをループの平面と概ね平行な平面に制限することによって、スネアワイヤのループの制御されない動きを防止するのに寄与し得る。
【0024】
代替的に、第2の端部はまた、例えば第1の端部と同時に移動できてもよい。例えば、第2の端部をプッシュロッドに、例えば可動ボスを介して接続してもよい。あるいは、スネアワイヤの第1の端部及び第2の端部が互いに接続されて、可動である共通ワイヤを形成してもよい。例えば共通ワイヤを、可動ボス、または同軸ケーブルに対して軸方向に摺動可能なプッシュロッドに接続し得る。
【0025】
遠位ヘッド組立体は、同軸ケーブルの遠位端とエンドキャップとの間に据え付けられたインピーダンス変成部(本明細書では「変成部」とも称される)を含んでもよく、変成部は、エンドキャップのインピーダンスに対し同軸ケーブルのインピーダンスに整合するように構成されている。これは、エンドキャップのインピーダンスが同軸ケーブルのインピーダンスと同じではない場合に有用である。変成部は、四分の一波長インピーダンス変成器として作用するように構成してもよい。
【0026】
変成部は、内側導体の遠位端とエンドキャップの近位面との間で軸方向に延びる1本の導電性材料と、1本の導電性材料の対向する側に軸方向に延びる一対の通路とを含んでもよく、スネアワイヤは一対の通路を通り抜ける。好ましくは、通路が絶縁体で一面覆われ、それによりスネアワイヤを内側導体から絶縁する。これらの通路は、ワイヤの座屈や無制御の動きを防ぐのに寄与する。この構造部の軸方向の長さは、必要なインピーダンス整合を提供するためにそのインピーダンスと併せて選択してもよい。
【0027】
外科用スネアは、遠位ヘッド組立体の側面を包囲するように構成されたスリーブ(例えば電気絶縁シース)を有してもよい。言い換えれば、スリーブは、同軸ケーブル、プッシュロッド、変成部、及びスネアワイヤの退縮可能ループ以外の部分を囲んでもよい。
【0028】
実施形態で、スリーブの遠位端は、エンドキャップまたは反応面の近位周縁部に取り付けられてもよい(例えば、接着剤で貼り合わせてもよい)。例として、スネアワイヤは、エンドキャップと絶縁シースの両方に対して可動で、退縮可能ループを伸縮させてもよい。この実施形態では、スネアワイヤは、外科用スネアが導入される内視鏡の器具用チャネルに対して固定してもよい。したがって、外科用スネアは、絶縁シースを動かすことによって操作可能である。
【0029】
代替的に、スリーブは、スネアワイヤのループを囲むように遠位ヘッド組立体に対して
摺動可能であってよい。一実施形態では、退縮可能ループをエンドキャップに対して固定し、スリーブをそれに亘って摺動させることによってループの直径を短くしてもよい(すなわち、ループを退縮させてもよい)。
【0030】
スリーブは、同軸ケーブルを運ぶための第1の長手方向の空洞と、スネアワイヤに接続されたプッシュロッドを運ぶための第2の長手方向の空洞とに入るスリーブの内側部分を隔てる内部の長手方向の仕切りを有してもよい。プッシュロッドは、同軸ケーブルの周りに据え付けられ、同軸ケーブルに対して摺動可能なチューブまたはシースであってもよい。
【0031】
上記第1の態様においてスネアが作動される様式は、本発明の第2の態様であってもよい。第2の態様によると、内側導体と、外側導体と、内側導体を外側導体から分離する誘電体材料とを有する同軸ケーブルと、同軸ケーブルの遠位端に配置され、内側導体に電気的に接続されたエンドキャップを有する遠位ヘッド組立体と、遠位ヘッド組立体に摺動可能に据え付けられ、エンドキャップを越えて退縮可能ループを形成するスネアワイヤとを含む外科用スネアであって、スネアワイヤの第1の端部が、同軸ケーブルに摺動可能に据え付けられた可動ボスに接続されている外科用スネアが提供される。
【0032】
上述したように、スネアワイヤは、外側導体に電気的に接続された導電性部分を含んでもよい。この接続は、スネアワイヤが可動ボスに接続されるスネアワイヤの反対側の端部で行ってもよい。しかし、スネアワイヤは任意の適切な場所、例えば可動ボスを介して外側導体に電気的に接続してもよい。第1の態様に関し、装置がRF電磁エネルギーと共に使用されるように構成される場合、スネアワイヤは内側導体から電気的に絶縁されてもよい。同軸ケーブルに可動ボスを設けることにより、スネアワイヤと同軸ケーブルとの間の確実な空間的関係が維持されるのを助け、スネアワイヤが使用中にねじれないようにすることができる。
【0033】
上述の第1の態様の特徴は、第2の態様において提供されてもよい。例えば、遠位ヘッド組立体が、同軸ケーブルに据え付けられた固定ボスを含み得、スネアワイヤの第2の端部は、固定ボスに取付けられる。固定ボスは、外側導体に電気的に接続してもよい。
【0034】
しかし、別の構成で、スネアワイヤの第2の端部が可動ボスに取り付けられている場合もある。これは、可動ボスが同軸ケーブルに沿って摺動するとき、スネアワイヤの両側が動くことを意味する。これは、スネアワイヤの一方の端部のみが可動ボスに取り付けられている構成と同じサイズのループを達成するためには、可動ボスが同軸ケーブルに沿って距離の半分を横断することのみが必要であることから、器具の長さを短くするのに助力することができる。この代替案はまた、エンドキャップ(すなわち、反応面)で、より均一に分散した切断力を提供し得る。
【0035】
さらなる代替の構成で、スネアワイヤの第2の端部が、固定ボスと可動ボスとの間でスネアワイヤの第1の端部と接続してもよい。この構成では、第1の端部に接続する前に、第2の端部が固定ボスを通り抜けてもよい。やはりこれは、器具の長さを短縮するのを助け、上記の他の利点を提供することができる。
【0036】
可動ボスは、プッシュロッド等を用いて操作してもよい。実施形態では、プッシュロッドは、同軸ケーブルの周りに据え付けられ、同軸ケーブルに対して摺動可能なスリーブである。この構成は、同軸ケーブルが別個の細いロッドよりも曲がりまたはねじれの影響を受けにくいため、スネアの動きに対して使用者がより制御をし得る。
【0037】
本発明の第1及び第2の態様に関連して上述したように、ループは、それが反応面に当
接しているか、非常に近くにある、ほぼまたは完全に退縮した位置に退縮してもよい。ループがほぼまたは完全に退縮した構成にあるとき、装置は、エネルギーがエンドキャップから離れて、装置が近くにあるか当接する組織に送達される、代替モードで使用可能である。このようなモードは、ループによって囲まれていない組織のポイントに電磁エネルギーを加えるために使用され得る。すなわち、装置は、ポイントアプリケータとして使用してもよい。例えば、ポリープを除去する前に、茎の周囲の領域の血流を阻害することが望ましい。装置は、この代替モードで使用して、出血組織に電磁エネルギーを加えて、この領域における凝固を補助し得る。この装置は、ポリープの除去後に残った出血を止めるためにも使用してもよい。この状況では、ループは反応面に引き込まれ、装置は、マイクロ波エネルギー放射アンテナとして機能するスネアワイヤの遠位端による凝固を補助するために、ポイントアプリケータとして使用される。
【0038】
したがって、同軸ケーブルは、マイクロ波エネルギーを受け取るための適切な発生器に(例えば、その近位端で)接続することができる。退縮可能ループは、スネアワイヤによって取り囲まれた組織にマイクロ波エネルギーを送達するための拡張構成と、スネアワイヤの遠位の露出部分、すなわち退縮時にエンドキャップの内側にはないスネアワイヤの部分から、マイクロ波エネルギーを外向きに送達するための退縮構成との間で動いてもよい。スネアワイヤは、退縮可能ループが退縮構成にあるときに、完全に退縮してもよい、すなわち、遠位に向く導電性表面と接触してもよい。あるいは、退縮可能なループが退縮構成にあるとき、スネアワイヤと遠位に向く導電性表面との間に小さな隙間が存在してもよい。
【0039】
エンドキャップの幾何学形状は、本発明の第3の態様であってもよい。この態様は、電磁エネルギーが供給される電気外科用スネアと、機械的切断のみが行われる「コールド」スネアの両方で使用され得る。本発明の第3の態様によると、遠位ヘッド組立体と、遠位ヘッド組立体に摺動可能に据え付けられたスネアワイヤとを含む外科用スネアであって、遠位ヘッド組立体が、遠位に向く反応面、及び遠位に向く反応面の出口とエンドキャップの近位面の入口との間で各々が延びる一対のチャネルを有するエンドキャップを備え、スネアワイヤが遠位に向く導電性表面を越えて退縮可能ループを形成するように一対のチャネル内に配置され、遠位に向く反応面が、完全に退縮したときに退縮可能ループに接触するように構成される外科用スネアが提供される。一対のチャネルは、互いに平行に延びてもよい。それらは、エンドキャップを通って軸方向に延びてもよい。第1の態様に関して上述したように、組織を切断するために、可能であればマイクロ波エネルギーの適用後などに、エンドキャップの上または中に小さなブレードを含むことが望ましい場合がある。理想的には、ブレードがエンドキャップから突出すべきではない。さもなければ、それは、装置が腸(または他の器官)の壁に押し付けられるのに起因して、結腸の壁の損傷または穿孔のリスクを呈示する。
【0040】
上記の第1及び第2の態様の特徴は、第3の態様でも提供されてよい。例えば、遠位に向く反応面は、退縮可能ループを受け入れるための溝を含んでもよく、遠位に向く反応面が丸みを帯びている、すなわち遠位方向に凸面であってもよい。
【0041】
本明細書に記載の外科用スネアは、ポリープ切除術の処置で使用してもよい。退縮可能ループはポリープの茎の周りに通すことができ、ポリープの茎は電気的及び/または機械的エネルギーを加えることによって腸壁から切断される。有利なことに、遠位に向く導電性表面は、退縮可能ループの境界の一部を形成し、それによって、任意の組織上の導電性ドームを妨害する可能性を低減する。
【0042】
この装置は、ループが完全に退縮したとき、多目的のマイクロウェーブ止血物として使用することもできる。この構成では、エンドキャップ及び完全に退縮したループから、マ
イクロ波が放射される。
【0043】
本明細書で、「マイクロ波エネルギー」は、400MHz~100GHzという範囲の周波数の電磁エネルギーを示すために広く使用してもよいが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲、より好ましくは2.45GHz~30GHzまたは5GHz~30GHzの範囲である。本発明は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz及び24GHzの任意の1つまたは複数といった単一の特定周波数で使用してもよい。
【0044】
本明細書で、高周波数(RF)は、10kHz~300MHzという範囲内の安定した固定周波数を意味し得る。RFエネルギーは、エネルギーが神経刺激を引き起こすのを防ぐほど高く、またエネルギーが組織の蒼白化または組織構造への不必要な熱マージンまたは熱的損傷を生じないほど低い周波数を有するべきである。RFエネルギーの好ましいスポット周波数は、100kHz、250kHz、400kHz、500kHz、1MHz、5MHzのうちの任意の1つまたは複数を含む。
【0045】
本発明の外科用スネアは、内視鏡、胃内視鏡などの器具用チャネルに沿って挿入するように構成しても、腹腔鏡手術または経管腔的内視鏡手術(NOTES)、経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEMS)、または経肛門粘膜下内視鏡的切除術(TASER)の処置または一般的な開腹術を用いるよう適合させてもよい。内視鏡における器具用チャネルの直径は、2.2mm、2.8mm、3.2mmまたはそれより長くてもよい。したがって、本明細書で論じられている構造の最大幅は、これらの寸法の1つまたは複数よりも低く設定し得る。
【0046】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】本発明の実施形態である外科用スネア用の導電性キャップの正面からの概略図を示す。
図1B】本発明の実施形態である外科用スネア用の導電性キャップの側面からの概略図を示す。
図2A】本発明の別の実施形態である外科用スネア用の切断導電性キャップの正面からの概略図を示す。
図2B】本発明の別の実施形態である外科用スネア用の切断導電性キャップの側面からの概略図を示す。
図3A】本発明の別の実施形態である絶縁部分を有する外科用スネアの切断導電性キャップの正面からの概略図を示す。
図3B】本発明の別の実施形態である絶縁部分を有する外科用スネアの切断導電性キャップの側面からの概略図を示す。
図4】本発明の別の実施形態である外科用スネアの上から見たところの断面図を示す。
図5】エネルギー供給なしで使用される外科用スネアの上から見たところの断面図を示す。
図6A】本発明の別の実施形態である外科用スネアの上から見たところの断面図を示す。
図6B図6Aの外科用スネアに使用されるスプリングベーンコネクタの側面図を示す。
図7】本発明のマイクロ波送達性能をシミュレートするために使用される図4の外科用スネアのモデルの斜視図を示す。
図8図7に示している外科用スネアのモデルからポリープ茎へのシミュレートされた電力損失密度の側面図を示す。
図9図7に示している外科用スネアのモデルからポリープ茎へのシミュレートされた電力損失密度の上面図を示す。
図10図7に示している外科用スネアのモデルの肝臓へのリターンロス(インピーダンス整合)を示すグラフである。
図11A】スネアワイヤが退縮したときの、本発明の実施形態である外科用スネアの端部の上面からの概略図を示す。
図11B】スネアワイヤが退縮したときの、本発明の実施形態である外科用スネアの端部の、端部を前側にした概略図を示す。
図12】本発明のマイクロ波送達性能をシミュレートするために使用される図11A及び11Bの外科用スネアのモデルの斜視図を示す。
図13図11A及び図11Bに示している外科用スネアのモデルの肝臓へのリターンロス(インピーダンス整合)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1Aは、外科用スネアに使用するための遠位エンドキャップ100の正面から見た図を示す。以下に説明するように、遠位エンドキャップは、RFまたはマイクロ波エネルギーが切断の操作を補助するために送達される電気外科用スネア、及び追加のエネルギーが供給されない純粋に機械的なスネア(「コールド」スネアと称することもある)と共に利用するのに適している。この実施形態では、エンドキャップ100は単一の導電性材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、エンドキャップ100は、マイクロ波セラミックまたはマイクロ波電磁エネルギーを伝送することができる他の適切な誘電体で形成してもよい。この実施例では、エンドキャップ100は、丸みを帯びた近位面を有し、これは遠位方向に滑らかに湾曲して、ドームに似た先端部107を形成する。この実施例では、先端部107の直径は2.4mmであった。先端部107は、それを通る2つのチャネル101を有し、これらはスネアを形成するワイヤのループの2つの端部のためのガイドとして作用する。各チャネルは、近位面に入口を有し、先端部107の遠位面に出口を有する。この実施例では、チャネル101の直径はそれぞれ0.7mmである。チャネル101は両方共、電気絶縁体102で一面を覆われ、そのため各チャネル101の内部が先端部107から電気的に絶縁されている。実際にこれは、チャネル101を通るスネアワイヤが、エンドキャップ100の導電性材料から電気的に絶縁されていることを意味している。
【0049】
この実施例では、チャネル101は円形の断面を有する。チャネルの断面の形状は、スネアワイヤの断面と同じ形状であってもよい。この形状は非円形、例えば三角形、長方形などであってもよい。
【0050】
実施形態で、スネアワイヤは、遠位エンドキャップ100に対して固定されてもよい。言い換えれば、固定長のスネアワイヤが、ループ状でエンドキャップの遠位に向く面を越えて延びてもよい。このような実施形態では、スリーブをエンドキャップ及びループに亘って摺動させることによって、ループを退縮してもよい(すなわち、ループによって囲まれた領域を縮小してもよい)。
【0051】
別の実施形態で、スネアワイヤは、遠位エンドキャップ100に摺動可能に据え付けてもよい。スネアワイヤの断面積は、スネアワイヤがチャネルを摺動できるほどの遊びがあるように、各チャネルの断面積よりも小さくしてもよい。
【0052】
先端部107の前(遠位)面の2つのチャネル101の間に溝103を形成してもよい。溝103は、スネアワイヤが先端部107に引っ張られるときに、スネアワイヤを受けるような形状にしてもよい。溝107は、深さ1mm~10mm未満であってもよい。し
たがって、溝103は、スネアのループ内に配置された組織(例えば、ポリープ茎)に機械的切断力が加えられる反応面を表し得る。いくつかの実施形態で、溝103に、切断効果を促進または改善するためのブレードまたは他の鋭い表面が設けられている場合がある。溝103は、ループが完全に閉じているときでさえ、スネアワイヤと先端部107との間の電気的な絶縁を維持するために、電気絶縁材料の層を配置してもよい。ループが完全に閉じると、連続面、すなわちループと溝103間の隙間がない表面を形成し、多目的のマイクロ波凝固物または止血物として作用してもよい。
【0053】
図1Bは、エンドキャップ100の側面図を示す。ここで、先端部107は遠位に向く凸面を呈するが、溝103は遠位に向く凹状の窪みであることが分かる。凹状の端部を鋭くまたは丸くすることが所望である場合がある。前者では、ワイヤは、上記のように腸壁を切断することを防止する。
【0054】
エンドキャップ100はまた、近位面から遠位方向に延びる凹部106を有してもよい。凹部106は、信号供給部(例えば、同軸ケーブルの外側導体及び誘電体材料を越えて突出する同軸ケーブルの内側導体の一部)を受ける形状である。これについては、図6を参照して以下でより詳細に説明する。この実施形態では、内側導体凹部106は、チャネル101の概ね中間に位置しているが、本発明はこの構成に限定されない。
【0055】
環状凹部104が、近位面の周囲に形成される。環状凹部104は、スリーブ(図示せず)の遠位縁部を受容し、スリーブの遠位縁部に取り付けられる(例えば接着剤で貼り合わせる)ように構成される。これについては、図6を参照して以下でより詳細に説明する。
【0056】
図2Aは、外科用スネア用の遠位エンドキャップ200の別の実施形態の正面から見た図を示す。エンドキャップ200は、図1Aに示すエンドキャップ100といくつかの特徴を共有しているので、対応する部分を示すために同じ参照番号を使用している。エンドキャップ200は、導電性先端部207を有し、キャップ100と同様に、先端部207は湾曲してドームを部分的に形成する。しかし、図1Aに示しているキャップ100の先端部107と対照的に、先端部207は、先端部207の頂部208及び底部209に平坦な表面を形成するように切断されている。次いで、キャップ200の先端部207は、第1のキャップ100の先端部107よりも小さい外形を有する。この実施例では、キャップ200の厚さは1.4mmであった。これにより、キャップ100と腸壁との間の接触を低減することができるので、腸壁への望ましくないエネルギー損失を最小にすることができる。図2Bは、キャップ200の側面から見た図を示し、先端部207の切断を図解している。
【0057】
図3Aは、外科用スネアに使用するための遠位エンドキャップ300の別の実施形態の正面から見た図を示す。やはり、このエンドキャップ300は、図1A図1B図2A、及び図2Bに示すエンドキャップ100、200といくつかの特徴を共有し、対応する特徴については同じ参照番号を使用している。
【0058】
この実施例では、エンドキャップ300は、キャップ200の切断先端部207と同じ形状を有する導電性部分306と、導電性部分306の平坦な上面及び下面に取り付けられる絶縁部分305という2つの部分で形成された先端部307を有する。絶縁部分305の外形は、図1A及び1Bのドームと同様、キャップ300の遠位端にドームを形成するように形成されている。図3Bは、キャップ300の側面から見た図を示すが、これは導電性部分306及び絶縁部分305で形成されたドームを図解している。
【0059】
説明したエンドキャップは、必要とされる特定の用途に応じて異なる材料で作製しても
よい。例えば、エンドキャップが十分に生体適合性である(すなわち、特定の状況において既知の宿主応答を有する)ことが重要な場合がある。したがって、エンドキャップは、白金、白金イリジウム、金、タンタル、またはそれらの混合物で作ってもよい。エンドキャップが金属製である場合、エンドキャップがX線を通さないため、装置は蛍光透視の処置で使用してもよい。組織の粘着を防止すべく、上述のように、エンドキャップは、テフロン、PTFEまたはパリレンCの外側コーティング(図示せず)を有してもよい。
【0060】
図4は、本発明の別の実施形態である外科用スネア400の上から見たところの断面図を示す。この実施例で、外科用スネアは内視鏡で利用するために寸法決めしてもよい。例えば、装置の最大幅(すなわち、遠位エンドキャップの直径)は、2.6mm未満であり、内視鏡の器具用チャネルまたは他のいずれかのタイプの手術用スコープが通るのに適したものにするために、約1.4mmにしてもよい。
【0061】
外科用スネア400は、同軸ケーブル411と、同軸ケーブル411の遠位端に接続された遠位ヘッド組立体419とを備える。同軸ケーブルは、内側導体406、外側導体412、及び内側導体406を外側導体412から分離する誘電体405を有する。同軸ケーブル411は、典型的には、約50オームのインピーダンスを有し得る。例えば、Huber&SuhnerのSucoform(登録商標)47またはSucoform(登録商標)86ケーブルであってもよい。
【0062】
外側導体412は、遠位ヘッド組立体419の近位端の固定ボス404内で終端する。固定ボス404は、外側導体412に電気的に接続された導電性要素を含む。固定ボスは、同軸ケーブル411の外側導体412にクランプされるか、さもなければ固定される導電性リング要素であってよい。
【0063】
可動ボス402は、固定ボス404に対して近位に同軸ケーブル411に摺動自在に据え付けられている。この実施形態では、可動ボスは、外側導体412に外嵌するリングである。外側導体412は、摩擦を減少させるため、または同軸ケーブルの外側ジャケットの編組が厄介なものになることを防止するために、潤滑剤のコーティングを施しても、適切なシース(図示せず)内に入れてもよい。リングは、同軸ケーブルの周り及び内視鏡の器具用チャネル内に嵌合するように、外径2.4mm及び内径2.2mmを有してもよく、いくつかの実施例では、リングの外径が1.4mmである場合がある。リングの外径は、一般に、装置を使用する内視鏡の器具用チャネルの寸法に依存する。可動ボス402には、プッシュロッド401が取り付けられている。プッシュロッド401は、内視鏡の器具用チャネルを貫通してもよく、それにより、可動ボス402は、例えば可動ボス402と固定ボス404との間の距離を変化させるように、同軸ケーブルに対して軸方向に移動することができる。この機構は、後述するようにスネアを伸縮するために利用する。
【0064】
遠位ヘッド組立体419は、変成部409によって同軸ケーブル411に接続された遠位エンドキャップ408を備え、ケーブルのインピーダンス(特性インピーダンス)を組織の負荷のインピーダンスと整合する。遠位エンドキャップ408は、図1A図1B、または図2A図2B、または図3A図3Bを参照して説明したキャップのいずれかであってもよい。言い換えると、遠位エンドキャップ408は、導電性本体または低損失誘電体、例えば、近位面から湾曲した(ドーム状または半球状の)遠位面まで延びる一対のチャネル413、414を有するマイクロ波セラミックを含む。一対のチャネル413、414は、好ましくは、軸方向に互いに整列し、好ましくは、装置の軸に対して対称的に配置される。一対のチャネル413、414は、後述するようにスネアワイヤ403を搬送するように配置されている。遠位エンドキャップ408が導電性本体を含む場合、一対のチャネル413、414の内面は、スネアワイヤ403を導電性本体から電気的に絶縁するために、その上に絶縁材料の層を形成する。
【0065】
変成部409は1本の導電性材料を含み、これは同軸ケーブル411の内側導体406と遠位エンドキャップ408の導電性本体との間の電気的接続を成す。この実施形態では、1本の導電性材料は、直方体の形状を有し、内側導体406の露出したところを受けるために、その近位面に凹部が形成される。しかし、本発明はこの幾何学形状に限定されない。導電性材料の物理的な長さは、好まれる周波数における1/4波長の奇数倍に等しい電気長を有するようなものであってもよい。1本の導電性材料の遠位面は、遠位エンドキャップの導電性本体に当接して、電気的接続を提供してもよい。あるいは、導電性材料は、先端のキャップの導電性本体と一体であってもよく、それによって、単一の導電性本体を形成してもよい。
【0066】
一対の軸方向に延びる絶縁通路410、415は、変成部409の対向する側に配置される。以下でより詳細に説明するように、一対の絶縁通路により、スネアワイヤ403が遠位エンドキャップ408に搬送される。
【0067】
この実施形態では、変成部409及び軸方向に延びる一対の絶縁通路410、415が保護用絶縁シース417に封入され、遠位エンドキャップ408の近位部407に固定された(例えば、接着剤で貼り合わせた)遠位端と、固定ボス404に固定された(例えば、接着剤で貼り合わせた)近位端とを有する。絶縁シース417は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などから作製してもよい。これらの材料はまた、組織の粘着を防ぐべくエンドキャップをコーティングするのに使用してもよい。パリレンN、CまたはDなどの他の材料を使用してもよい。
【0068】
上述したように、同軸ケーブル411の外側導体412は、固定ボス404内で終端している。しかし、誘電体材料405及び内側導体406は、外側導体412の遠位の終端を越えて突出し、絶縁シース417の内側に軸方向に延在する。誘電体材料405は、変成部409の遠位面で終端するが、内側導体406は、誘電体材料の遠位の終端をさらに越えて突出し、変成部409の近位面に形成された凹部内に延在する。この実施例で、内側導体406は、1本の導電性材料の0.35mmの直径の孔にはんだ付けされる。
【0069】
スネアワイヤ403は、可動ボス402に固定された第1の端部を有する。スネアワイヤ403は、可動ボス402から固定ボス404に向かい固定ボス404を通って延び、遠位ヘッド組立体419に入る。スネアワイヤ403は、第1の絶縁通路410を通って第1のチャネル413に延び、遠位エンドキャップ408を出る。スネアワイヤ403は、遠位エンドキャップ408を越える領域の周りにループ(図示せず)、好ましくはとがった先端のないループを形成し、次いで、第2のチャネル414を通って遠位エンドキャップ408内に戻る。スネアワイヤ403は、第2のチャネル414を通って延在し、第2の絶縁通路415内へと延在し、固定ボス404に達する。スネアワイヤ403は、物理的及び電気的に接続された第2の端部を有する。この構成では、スネアワイヤははんだ付けされるジョイント416によって接続されているが、圧着、溶接、または第2の絶縁通路415の近位端の固定ボス404との物理的及び電気的接続を確実にする、別の手段による接続であってもよい。固定ボス404(またはその一部)は、同軸ケーブル411の外側導体412に電気的に接続されているので、スネアワイヤも同軸ケーブル411の外側導体412に電気的に接続されている。絶縁通路410、415及びチャネル413、414の絶縁材料は、スネアワイヤ403が、同軸ケーブルの内側導体406に電気的に接続された装置の部分と接触することを防止する。
【0070】
スネアワイヤ403は、ニッケルチタン(ニチノールとしても知られている)などの任意の適切な導電性材料で作製されており、この実施形態では0.3mmの直径を有する。いくつかの用途では、スネアワイヤ403は、形状記憶特性を有するニチノール製である
。他の実施例で、スネアワイヤ403は、白金、白金及びイリジウム合金、または金メッキされたタングステンで作製する場合がある。スネアワイヤ403は、マイクロ波信号の効果的な伝播を補助すべく、スネアワイヤのコアの抵抗を低減するために、例えば金または銀でメッキすることができる。0.3mmの直径を有するスネアワイヤ403は、絶縁通路410、415に存在するとき、約36オームのインピーダンスを有する伝送線を形成する。
【0071】
使用時に、可動ボス402を固定ボス404に向かって摺動させると、スネアワイヤ403が固定ボス404を貫通し、エンドキャップ408から突出するスネアワイヤ403の長さが長くなる。これは、スネアループの半径を増加させる効果を有する。同様に、可動ボス402を固定ボス404から離れるように摺動させると、エンドキャップ408から突出するスネアワイヤ403の量が減少し、それによってスネアループの半径が短くなる。
【0072】
スネアワイヤ403が固定ボス404に両方はんだジョイント416で電気的に接続され、遠位ヘッド組立体にそれが入る場合には、各々約72オームのインピーダンスを有する一対の平行な伝送線が存在する。この事実を利用して、絶縁ガイド415及び410の長さは、四分の一波長変成器を提供するように選択することができる。
【0073】
いくつかの実施例では、スネアワイヤ403は、いずれの点でも固定ボス404にはんだ付けさせず、代わりに、固定ボス404が、十分に詰まった直径(例えば0.3mm)のチャネルをその中に有し、はんだなしで、スネアワイヤ403がそれと電気的に接触する。このような実施例では、スネアワイヤ403は、2つのストランドとして延在してもよく、各ストランドは任意選択でリング402を通り、共通のプッシュロッドに取り付けることができる。
【0074】
この実施例では、変成部409内の1本の導電性材料は、厚さ0.8mm、幅1.6mm、長さ12.5mmとすることができる。変成部409の部分は、任意の適切な材料、例えば、導電路が内側導体406からエンドキャップ408まで形成されている限り、金属またはプラスチックで作製してもよい。また、変成部409は、圧縮または座屈に抵抗する装置の構造部材として機能するので、かなりの剛性があるべきである。内視鏡チャネルを通って装置を容易に通過するようにすべく、ある程度可撓性があってもよい。絶縁された通路410、415は、1本の導電性材料の全体または一部に形成してもよい。例え
ば、1本の導電性材料の各側縁は、その中に半円筒形の凹部を形成してもよい。したがって、絶縁通路410、415は、1本の導電性材料と同一平面に位置してもよい。絶縁通路410、415は、0.7mmの直径を有してもよい。
【0075】
変成部409は、同軸ケーブル411で伝送されるマイクロ波エネルギーの四分の一波長変換器として機能する。これは、組織に伝送するマイクロ波放射の波長の約1/4または奇数倍の長さを有することにより、行われる。
【0076】
同軸ケーブル411の近位端(例えば、内視鏡の外側)に接続された適切な電気外科発電機(図示せず)からマイクロ波エネルギー(例えば、周波数5.8GHzを有する)を外科用スネア400に送達してもよい。遠位エンドキャップ408の露出した導電性部分は、同軸ケーブル411からそれに供給されたマイクロ波エネルギーを放射するマイクロ波アンテナ(好ましくは放射モノポールアンテナ)として機能する。
【0077】
使用時に、スネアループがポリープ茎を取り囲み、次いで操作者がプッシュロッド401を固定ボス404から離すことによって、スネアループの半径を縮める。次に、ポリープ茎をキャップ408の導電性部分107、207、306、好ましくはキャップ408
の切断溝103に接触させる。この構成では、外科用スネア400に供給されたマイクロ波エネルギーが、ポリープ茎に入ることができ、そこで凝固を促進し、そのためポリープ茎の除去を補助するか、機械的作用のみを用いた場合に生じるであろう出血を防止する。
【0078】
可動ボス402からキャップ408の端部までの外科用スネア400の全長は約17.2mmであった。
【0079】
図5は、外科用スネア500の断面図を示す。外科用スネア500はスリーブ508を備え、このスリーブはジョイント501を介してキャップ505に接続される。図5に示すキャップ505は、図1A及び1Bに示すキャップ100である。
【0080】
図4に示す外科用スネアと同様に、プッシュロッド507が、内視鏡の操作者用端部から内視鏡の器具用チャネルを通って外科用スネア500まで延びている。しかし、この実施形態のプッシュロッド507は、スネアワイヤ503に直接接続されている。スネアワイヤ503は、スリーブ508の内部及びジョイント501を通って延びている。ジョイント501を最初に通るスネアワイヤ503の部分510は、ジョイント501内を自由に動くことができる。スネアワイヤ503は、その後、キャップ505のチャネル509を通って延び、やがてキャップ505から自由に延びていく。次に、スネアワイヤ503は、キャップ505の第2のチャネル504内へと通ることによって、スネアループ512を形成する。スネアワイヤ503の部分502は、溶接部(これは圧着または接着剤でもよい)を介して第2のチャネル504内に固定される。装置の他の実施例では、他の固定手段を使用することができる。例えば、機械でのクランプ、またはチャネル504でのテーパ形成である。したがって、プッシュロッド507がジョイント501に向かって移動すると、スネアループ512の形成で利用できるスネアワイヤ503の量が増加し、それによって、ステアループ512の半径が長くなる。したがって、使用時に、ポリープ茎または類似の組織をスネアループ512が取り囲むことができる。操作者は、次に、プルロッド507を退縮させて、スネアループ512を閉じ、組織をキャップ505の切断溝103に隣接させる。その後、切断溝103の鋭いエッジは反応面として作用し、組織を周囲の腸壁から切り離すことができるようになる。
【0081】
この実施形態は、マイクロ波エネルギーが外科用スネアに供給されず、機械的作用のみで組織を除去するよう作用するという点で「コールドスネア」として知られている。図5には示していないが、このような装置において上述した可動ボスを使用することが可能である。一実施形態では、退縮可能ループの両端を可動ボスに取り付けることができる。この構成は、伸縮中のループのねじれを防止することができる。別の実施形態では、退縮可能ループの一端が可動ボスに取り付けられ、他端は、例えばエンドキャップに固定される。可動ボスはジョイント501の後ろに位置し得る。この実施形態では、両端でプッシュロッド507に取り付けられたスネアワイヤ503を使用することができ、すなわち2本のスネアワイヤ503をプッシュロッド507に取り付けることも可能であり、この機構は、上述の可動ボスと組み合わせて使用することができる。
【0082】
図6Aは、本発明の別の実施形態である上から見た外科用スネア600の断面を示す。この実施形態では、外科用スネア600は、同軸ケーブル610を取り囲む絶縁スリーブ611を備える。同軸ケーブル610は、外側導体601、内側導体607、及び内側導体と外側導体とを分離する誘電体612を有する。外側導体601は、アースリング602を通った後、ジョイント603の前で終端する。誘電体612及び内側導体607は、外側導体601の終端を越えて延び、ジョイント603に隣接して終端する。次いで内側導体607は遠位エンドキャップ606内まで延びる。この実施形態のエンドキャップ606は、図1A及び図1Bに示すものであり、内側導体607がキャップ606の内側導体の凹部106内まで延在するようにする。したがって、内側導体607は、キャップ6
06の導電性先端部107に電気的に接続する。図6Bは、外側導体601とアースリング602間のスプリングベーンによる接続を示している。ここで、アースリング602は、スプリングベーン623を介して外側導体601に接続されている。好ましくは、これらのスプリングベーン623は、アースリング602と外側導体601間で確実に良好な電気的接触を遂げるのを補助すべく、導電性材料で作製される。
【0083】
アースリング602は、外側導体601ならびにスネアワイヤ615の第1の端部614に(例えばはんだ付け、圧着または溶接によって)接続して、スネアワイヤ615のこの部分614を定位置に固定する。上述のように、良好な電気的接触が確実に行われるように、スプリングベーンなどを使用してもよい。そのため、スネアワイヤ615は、同軸ケーブル610の外側導体601に電気的に接続される。やはりプッシュロッド609が存在し、やはり内視鏡の操作者用端部から内視鏡の器具用チャネルを通って外科用スネア500まで延びている。プッシュロッド609は、スネアワイヤ615の第2の端部に直接接続する。スネアワイヤ615の部分608は、アースリング602を貫通してプッシュロッド609まで延びる。スネアワイヤ615の第1の端部614とは対照的に、この部分608は、アースリング602内で自由に移動する。次に、スネアワイヤ615は、キャップ606の第1のチャネル613を貫通する。その時、スネアワイヤ615は、キャップ606から自由に延びて、キャップ606の第2のチャネル605を貫通することで、スネアループ604を形成する。
【0084】
したがって、使用時には、図5に関して説明したように、プッシュロッド609を前方または後方に移動させて、スネアループ604の半径を増減させることができる。しかし、図5の実施形態とは対照的に、外科用スネア600は、機械的作用に加えてマイクロ波エネルギーも利用してもよい。マイクロ波エネルギーは、内側導体607及びキャップ606の導電性先端部107がマイクロ波エネルギーを生体組織に放射し得るように、同軸ケーブル610を介して提供してもよい。好ましくは、導電性先端部107は、モノポールアンテナとして機能させて、同軸ケーブル610によって供給されるマイクロ波エネルギーを放射するようにする。
【0085】
絶縁スリーブ611はマルチルーメンチューブであってもよく、プッシュロッド609またはスネアワイヤを搬送する第1の長手方向通路621が、同軸ケーブル610を搬送するための第2の長手方向通路622から、適切な仕切り620により隔てられるように構成する。
【0086】
図7は、明確にするためにスネアループ、同軸ケーブル、及び絶縁スリーブを省略した、図4に示すような外科用スネアの代表的なモデル700を示す。それはCST MICROWAVE STUDIO(登録商標)を使用してモデル化され、組織のリターンロス(組織の負荷モデル内へのインピーダンス整合)と出力密度を改善するために構造内への様々な修正として、性能をシミュレーションした。適切な参照番号は、図4の対応する特徴を示す。
【0087】
図8は、ポリープ茎801への出力損失密度を示す、図7に示している外科用スネア(その遠位端を越えた場所にスネアループを有する)のモデル700の側面の断面図である。ポリープ茎801は、直径5mm、厚さ1mmの組織の基部から高さ2mmの円柱としてモデル化されている。スネアループは、幅約4mm、長さ約5mmである。断面は、外科用スネア700の中央に沿って設けられている。スネアループは、ポリープ茎801に巻き付き、ポリープ茎801内へと切断する。ポリープ茎801は、腸壁802に接続しており、双方が肝組織として、すなわち高い血液含量を伴うものとしてモデル化されている。シミュレーションに用いた肝臓の誘電特性は以下の通りであった。
【0088】
【表1】
【0089】
血液の平均比熱容量は3617J/kg・℃(3300J/kg・℃~3900J/ kg・℃の範囲)であり、血液の平均密度は1050Kg/m(1025Kg/m~1060Kg/mの範囲)であった。したがって、血液の平均比熱容量は約3.6J/(g・K)であり、組織の密度は約1050Kg/m=1.05g/cmであり、その結果組織の体積熱容量は約3.6J/(g・K)×1.05g/cm=3.78J/(K・cm)である。
【0090】
スネアループ内のポリープ茎801は、モデル化された1Wの入力電力に対して、約83.3~123dBm/m(0.213~1995W/cm)の範囲の電力吸収を伴う。図8において、エンドキャップに最も近い領域804は112dBm/m~118dBm/m(158~630W/cm、これは41.8K/s~167K/sの温度上昇に相当する)の電力吸収を示している。領域806は、領域804の約1/10の電力吸収を表し、したがって、4.2K/s~16.7K/sの温度上昇を示す。領域808は、エンドキャップ及びループの遠位部の両方に存在し、領域806の約3分の1の電力吸収を表し、したがって、1.4K/s~5.6K/sの温度上昇を示す。
【0091】
図9は、図8に描かれた状態を上から見たところの断面図であり、ループの平面での電力損失密度を示す。送達された電力が、反応面及びスネアループの遠位領域の内側縁部の両方に集中していることが分かる。これは、スネアループが、捕捉する組織の周りで閉じていくと、反対方向からエネルギーが供給されていくことを意味する。ポリープ茎の後部(すなわち、遠位ヘッド組立体から最も遠い部分)への電力損失は、最大109dBm/mであり、この電力損失は、ループ内でスネアを掛けられたポリープ茎の全体的な加熱に助力する。
【0092】
図10は、外科用スネア700のリターンロスを示すグラフである。グラフは、S11パラメータと、したがって入力ポートで反射された電力とを表す。これは、どれ程の電力がシステムで利用されていないかを示す。見てとれるように、約-12.8dBの5.8GHzで窪んでおり、これは電力の約5%が反映されていることを示している。窪みの周波数は、変成部409における1本の導電性材料を調節することにより、調整することができる。このグラフでの長さは12.5mmであった。
【0093】
図11A及び図11Bは、代替の構成の、第1または第2の実施形態に対応するスネア1101の一部の上から見たところ及び端部を前面にしたところを各々示す。この構成では、スネアループ1102はほぼ完全に退縮した位置に退縮する、すなわちスネアループ1102がエンドキャップと著しく近くなり、その結果これは他の非退縮構成と比較して、非常に小さな領域を取り囲む。図11Aは、スネアループ1102から外方に放射される電磁場1103を示す。この構成では、スネアループ1102は、腸内、または茎が切除される領域の周りにある血管を凝固させるために動力供給をする(すなわち、上述のように電磁エネルギーを供給する)ことができる。この構成では、これを、凝固を補助するための多目的の止血物として使用してもよい。これは、切除前に無茎の腫瘍の周囲領域を目立たせ、GI管及び他の場所での出血を止めるために使用してもよい。
【0094】
図12は、図11A及び図11Bに示している構成のスネアモデル1203の側面の断面図であり、スネアループ1202の面の電力損失密度を示している。スネアループ1202は、シミュレートされたポリープ1201の小さな部分と交差し、スネアループ1202がマイクロ波エネルギーのポイントアプリケータとして使用される状況をシミュレートする。送出された電力は、スネアループ1202の周りに集中し、ポリープ茎1202の中へと外側に放射されることが分かる。この構成では、局所組織1204に吸収される電力がわずかに増加する。
【0095】
図13は、ポリープ茎(肝臓の誘電特性をモデルにしている)への外科用スネアのリターンロスを示すグラフである。グラフはS11パラメータを表し、したがって入力ポートで反射される電力を表す。これは、どれ程の電力がシステムで利用されていないかを説明している。5.8GHzで、S11パラメータは-3.6dBであり、約44%の電力が反映されていることを示している。
【0096】
ループが反応面(キャップ)内に完全に退縮すると、放射するドームまたはシリンダが形成され、この装置は多目的の止血物としても使用してもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13