(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】注入プロトコルの生成装置、該生成装置を備える注入装置及び撮像装置、注入プロトコル生成方法、及び注入プロトコル生成プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230616BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20230616BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20230616BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230616BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61B6/03 360D
A61M5/142 530
A61M5/145 510
A61M5/168 512
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2021153711
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2017025143の分割
【原出願日】2017-02-14
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】傳法 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】増田 和正
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 誠
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130231(JP,A)
【文献】特表2013-533028(JP,A)
【文献】特開2012-161444(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021185(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152841(WO,A1)
【文献】特開2014-128663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部と、
前記選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部と、
前記部位情報と造影剤の初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部と、
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記シミュレーション部に再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部とを備え、
前記プロトコル生成部は、
前記目標画素値の取得の前に被写体の体重、注入時間、体重当たりの造影剤量、体重当たりの使用造影剤量、及び造影剤濃度を含む前記初期注入プロトコルに関するパラメータの入力又は変更がなされた場合に、前記初期注入プロトコルを前記シミュレーションに用いる新たな初期注入プロトコルとし、前記再シミュレーションの際に、前記初期注入プロトコル
又は前記新たな初期注入プロトコルに関するパラメータ
である体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた新たな注入プロトコルを生成し、
前記シミュレーション部は、前記新たな注入プロトコルを使用して前記再シミュレーションを行う、生成装置。
【請求項2】
前記パラメータは、
体重当たりの造影剤
量又は
被写体の体重であり、
前記プロトコル生成部は、前記
体重当たりの造影剤量又は前記被写体の体重を
変化させて、
前記造影剤の注入時間または造影剤の単位時間当たりの注入量を含む前記新たな注入プロトコルを生成する、請求項1に記載の生成装置。
【請求項3】
前記パラメータは、体重当たり造影剤量であり、
前記プロトコル生成部は、被写体の体重を増加又は減少させることにより前記体重当たり造影剤量を再計算して、前記新たな注入プロトコルを生成する、請求項1に記載の生成装置。
【請求項4】
前記プロトコル生成部は、シミュレーション結果が目標条件を満たすか否かを判断すると共に、前記目標条件が満たされない場合に前記シミュレーション部に前記再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションによるシミュレーション結果によって前記目標条件が満たされる場合に、前記再シミュレーションに使用された前記注入プロトコルを前記最終注入プロトコルとして決定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項5】
前記プロトコル生成部は、前記予測画素値が前記目標画素値に達する場合に前記目標条件が満たされると判断し、前記予測画素値が前記目標画素値に達しない場合に前記目標条件が満たされないと判断する、請求項4に記載の生成装置。
【請求項6】
前記目標値取得部は、前記目標画素値の上限値及び下限値を取得し、
前記プロトコル生成部は、前記予測画素値が前記下限値以上且つ前記上限値以下である場合に前記目標条件が満たされると判断し、前記予測画素値が前記下限値未満又は前記上限値より高い場合に前記目標条件が満たされないと判断する、請求項4に記載の生成装置。
【請求項7】
前記上限値及び前記下限値は、前記選択部位の画像の1階調当たり画素値を基準に、それぞれ前記目標画素値に対して3階調分の画素値の範囲内である、請求項6に記載の生成装置。
【請求項8】
前記プロトコル生成部は、前記シミュレーション部が前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーション可能か否か判断し、
前記シミュレーション部は、前記プロトコル生成部がシミュレーション不能と判断した場合に、前記部位情報に関連付けられた関連部位の情報を使用して前記関連部位の画素値の経時変化をシミュレーションする、請求項1から7のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項9】
前記プロトコル生成部は、スキャン計画画像のデータに基づいて前記
新たな注入プロトコルを求める、請求項1から8のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項10】
前記プロトコル生成部は、前記初期注入プロトコルに関するパラメータである注入時間の入力又は変更がなされた場合に、前記入力又は変更された注入時間を固定して、前記再シミュレーションの際の前記新たな注入プロトコルを生成する、請求項1から9のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項11】
前記再シミュレーションの際の前記新たな注入プロトコルを生成するための体重当たりの造影剤量の増減の量又は被写体の体重の増減の量は、前記選択部位ごとに予め定められている、請求項1から10のいずれか1項に記載の生成装置。
【請求項12】
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部と、
前記選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部と、
前記部位情報と造影剤の初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部と、
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記シミュレーション部に再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部とを備え、
前記プロトコル生成部は、前記再シミュレーションの際に、前記初期注入プロトコル又は前記新たな初期注入プロトコルに関するパラメータである体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた新たな注入プロトコルを生成し、
前記シミュレーション部は、前記新たな注入プロトコルを使用して前記再シミュレーションを行い、
前記再シミュレーションの際の前記新たな注入プロトコルを生成するための体重当たりの造影剤量の増減の量又は被写体の体重の増減の量は、前記選択部位ごとに予め定められている、生成装置。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか1項に記載の生成装置と、
前記最終注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入ヘッドとを備える、注入装置。
【請求項14】
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得し、
前記選択部位の目標画素値を取得し、
前記目標画素値の取得の前に被写体の体重、注入時間、体重当たりの造影剤量、体重当たりの使用造影剤量、及び造影剤濃度を含む初期注入プロトコルに関するパラメータの入力又は変更がなされた場合に、前記初期注入プロトコルを前記シミュレーションに用いる新たな初期注入プロトコルとし
前記部位情報と造影剤の
前記初期注入プロトコル
又は前記新たな初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求め、
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記初期注入プロトコルに関するパラメータ
である体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた新たな注入プロトコルを生成し、
前記新たな注入プロトコルを使用して再シミュレーションを繰り返し、
前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する、注入プロトコル生成方法。
【請求項15】
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得し、
前記選択部位の目標画素値を取得し、
前記部位情報と造影剤の初期注入プロトコル又は新たな初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求め、
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記初期注入プロトコルに関するパラメータである体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた前記新たな注入プロトコルを生成し、
前記新たな注入プロトコルを使用して再シミュレーションを繰り返し、
前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定し、
前記再シミュレーションの際の前記新たな注入プロトコルを生成するための体重当たりの造影剤量の増減の量又は被写体の体重の増減の量は、前記選択部位ごとに予め定められている、注入プロトコル生成方法。
【請求項16】
造影剤の注入プロトコル生成プログラムであって、最終注入プロトコルを生成する生成装置を、
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部、
前記選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部、
前記部位情報と造影剤の初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部、及び
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記シミュレーション部に再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部として機能させ、
前記プロトコル生成部は、
前記目標画素値の取得の前に被写体の体重、注入時間、体重当たりの造影剤量、体重当たりの使用造影剤量、及び造影剤濃度を含む前記初期注入プロトコルに関するパラメータの入力又は変更がなされた場合に、前記初期注入プロトコルを前記シミュレーションに用いる新たな初期注入プロトコルとし、前記再シミュレーションの際に、前記初期注入プロトコル
又は前記新たな初期注入プロトコルに関するパラメータ
である体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた新たな注入プロトコルを生成し、
前記シミュレーション部は、前記新たな注入プロトコルを使用して前記再シミュレーションを行う、注入プロトコル生成プログラム。
【請求項17】
造影剤の注入プロトコル生成プログラムであって、最終注入プロトコルを生成する生成装置を、
ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部、
前記選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部、
前記部位情報と造影剤の初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部、及び
シミュレーションによって得られる予測画素値と目標画素値とを比較して目標条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合には前記シミュレーション部に再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部として機能させ、
前記プロトコル生成部は、前記再シミュレーションの際に、前記初期注入プロトコル又は前記新たな初期注入プロトコルに関するパラメータである体重当たりの造影剤量又は被写体の体重を変化させた新たな注入プロトコルを生成し、
前記シミュレーション部は、前記新たな注入プロトコルを使用して前記再シミュレーションを行い、
前記再シミュレーションの際の前記新たな注入プロトコルを生成するための体重当たりの造影剤量の増減の量又は被写体の体重の増減の量は、前記選択部位ごとに予め定められている、注入プロトコル生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤の注入プロトコルの生成装置、該生成装置を備える注入装置及び撮像装置、注入プロトコル生成方法、及び注入プロトコル生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体としての被験者を撮像する際に、ユーザーが望む範囲の画素値を得られるような造影剤の注入プロトコルを生成することが望まれている。例えば、特許文献1は、所定の持続時間にわたって所定範囲の画素値が維持されるような注入プロトコルを生成する生成装置と、生成された注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入ヘッドとを備える注入装置を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、被写体の組織における画素値の経時変化を予測するシミュレータを開示している。このシミュレータは、被写体の情報と、注入プロトコルと、組織の情報とに基づいて、組織を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれの画素値の経時変化を予測する予測部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/021185号
【文献】国際公開第2016/084373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、高精度の予測を行うシミュレータによるシミュレーション結果を考慮した注入プロトコルを生成することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の生成装置は、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部と、前記選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部と、前記部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、前記選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部と、前記予測画素値を前記目標画素値と比較し、前記予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断すると共に、前記目標条件が満たされる場合に、前記初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部とを備え、前記プロトコル生成部は、前記目標条件が満たされない場合に、前記目標条件が満たされるまで前記シミュレーション部に再シミュレーションを繰り返させ、前記再シミュレーションによって前記目標条件が満たされる場合に、前記再シミュレーションに使用された注入プロトコルを前記最終注入プロトコルとして決定する、ことを特徴とする。
【0007】
これにより、シミュレーション部によるシミュレーション結果を考慮して、注入プロトコルを生成することができる。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の第1実施形態に係る注入装置の概略ブロック図である。
【
図3】注入プロトコルの生成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】シミュレーション方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】再シミュレーション方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】再シミュレーション時のタイムデンシティカーブを示すグラフである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る撮像システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0011】
特に言及した場合を除き、造影剤という用語は、造影剤単体と、造影剤に加えて他の溶媒及び添加物等を含む薬液との両方を含む。また、画素値という用語は、撮像部位のCT値、関心領域(ROI)に含まれる画素のCT値の和又は平均値、若しくは関心領域のSD値(標準偏差値)を含む。この関心領域は予め設定されているか、又はユーザーが関心領域を選択することができる。
【0012】
図1に示すように、撮像システム100は、造影剤を注入する注入装置2と、注入装置2に有線又は無線で接続され且つ被写体を撮像する撮像装置3とを備えている。この撮像装置3としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用の撮像装置がある。以下ではCT装置について説明する。
【0013】
撮像装置3は、撮像プランに従って被写体を撮像する撮像部31と、撮像装置3の全体を制御する制御装置32を有している。この撮像プランには、撮像部位、実効管電圧、機種名、メーカー名、撮像時間、管電圧、撮像範囲、回転速度、ヘリカルピッチ、曝射時間、線量及び撮像方法等の情報が含まれている。そして、制御装置32は、撮像プランに従うように撮像部31を制御して被験者を撮像する。また、制御装置32は、撮像部31、注入装置2、及びサーバー(外部記憶装置)と有線又は無線によって通信できる。
【0014】
撮像部31は、寝台と、被写体である被験者にX線を照射するX線源と、被験者を透過したX線を検出するX線検出器を有している。この撮像部31は、被験者にX線を曝射し、被験者を透過したX線に基づいて被験者の体内を逆投影することで、被験者の透視画像を撮像する。代替的に、撮像部31は、ラジオ波又は超音波を用いて撮像してもよい。
【0015】
また、撮像装置3は、表示部としてのディスプレイ33を有している。このディスプレイ33は、制御装置32に接続されており、装置の入力状態、設定状態、撮像結果及び各種情報を表示する。代替的に、制御装置32とディスプレイ33とは、一体的に構成することもできる。さらに、撮像装置3は、入力部34として、キーボード等のユーザインタフェースを有している。ユーザーは、薬液情報、撮像情報、被写体情報及び/又は撮像条件を、入力部34から撮像装置3に入力することができる。
【0016】
注入装置2は、シリンジに充填された薬液、例えば、生理食塩水及び各種造影剤を被写体に注入する。この注入プロトコルは、少なくとも注入速度及び注入時間を含んでいる。さらに、注入プロトコルは、注入速度の加速度、注入量、注入タイミング、造影剤濃度及び注入圧力等の注入条件に関する情報を含んでいてもよい。また、注入装置2は、後述する最終注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入ヘッド21を備えている。そして、薬液が充填されたシリンジは、この注入ヘッド21に搭載される。また、注入装置2は、注入ヘッド21を保持するスタンド22と、注入ヘッド21に有線又は無線で接続されたコンソール23とを備えている。
【0017】
コンソール23は、注入ヘッド21を制御する制御装置として機能すると共に、造影剤の注入プロトコルを生成する生成装置としても機能する。このコンソール23は、入力表示部として機能するタッチパネル26を備え、注入ヘッド21及び撮像装置3と有線又は無線で通信できる。このタッチパネル26は、注入プロトコル、装置の入力状態、設定状態、注入結果、及び各種情報を表示する。タッチパネル26に代えて、注入装置2は、表示部としてのディスプレイと、入力部としてのキーボード等のユーザインタフェースとを備えていてもよい。
【0018】
注入装置2は、コンソール23に代えて、注入ヘッド21に接続された制御装置と、該制御装置に接続され且つ薬液の注入状況が表示される表示部(例えばタッチパネルディスプレイ)とを有していてもよい。この制御装置も、注入プロトコルの生成装置として機能する。また、注入ヘッド21及び制御装置は、スタンド22と一体的に構成することもできる。さらに、スタンド22に代えて天吊部材を設け、該天吊部材を介して天井から注入ヘッド21を天吊することもできる。
【0019】
また、注入装置2は、注入ヘッド21を遠隔操作する遠隔操作装置(例えばハンドスイッチ)を有していてもよい。この遠隔操作装置は、注入ヘッド21を遠隔操作して注入を開始又は停止することができる。さらに、注入装置2は、電源又はバッテリーを有していてもよい。この電源又はバッテリーは、注入ヘッド21又は制御装置のいずれかに設けることができ、これらとは別に設けることもできる。
【0020】
注入ヘッド21は、シリンジが搭載されるシリンジ保持部を有すると共に、注入プロトコルに従ってシリンジ内の薬液を押し出す駆動機構を内蔵している。また、注入ヘッド21は、駆動機構の動作を入力するための操作部212を有している。操作部212には、例えば駆動機構の前進ボタン、駆動機構の後進ボタン、及び最終確認ボタンが設けられている。さらに、注入ヘッド21は、注入条件、注入状況、装置の入力状態、設定状態、及び各種注入結果が表示されるヘッドディスプレイを備えていてもよい。
【0021】
造影剤が注入される際には、注入ヘッド21に搭載されたシリンジの先端部に延長チューブ等の付属品が接続される。そして、注入準備が完了すると、ユーザーが操作部212の最終確認ボタンを押す。これにより、注入ヘッド21は、注入を開始できる状態で待機する。注入を開始すると、シリンジから押し出された造影剤は、延長チューブを介して被写体の体内へ注入される。
【0022】
また、注入ヘッド21には、RFIDチップ、ICタグ、又はバーコード等のデータキャリアを有するプレフィルドシリンジ、及び種々のシリンジを搭載することができる。そして、注入ヘッド21は、シリンジに取り付けられたデータキャリアの読み取りを行う読取部213(
図2)を内蔵している。このデータキャリアには、薬液に関連する情報(薬液情報)が記憶されている。薬液情報としては、製品ID、製品名称、化学分類、含有成分、造影剤濃度、粘度、消費期限、シリンジ容量、シリンジ耐圧、シリンダ内径、ピストンストローク及びロット番号等がある。
【0023】
注入装置2は、不図示のサーバー(外部記憶装置)から情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。また、撮像装置3も、サーバーから情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。このサーバーは、例えば、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication System)、及びHIS(Hospital Information System)である。
【0024】
サーバーには、予め検査オーダーが記憶されている。この検査オーダーは、被験者の情報(被写体情報)と、検査内容に関する情報(検査情報)とを含んでいる。被写体情報は、被写体の体重、除脂肪体重、循環血液量、被験者番号(被験者ID)、氏名、性別、生年月日、年齢、身長、血液量、体表面積、疾病、心拍数、心拍出量、ヘモグロビン量(g/dL)、血流速度、被験者の疾病、副作用の履歴、及びクレアチニン値等を含む。また、検査情報は、検査番号(検査ID)、検査部位、検査日時、薬液種類、薬液名称、及び撮像情報(撮像部位の情報)等を含む。また、サーバーは、撮像装置3から送信された画像のデータ等の撮像結果に関する情報と、注入装置2から送信された注入結果に関する情報を記憶することができる。なお、注入装置2及び撮像装置3を操作するために、外部の検像システム又は画像作成用ワークステーションを用いることもできる。
【0025】
[第1実施形態]
続いて、
図2を参照して、注入プロトコルの生成装置を備える注入装置2について説明する。
図2は注入装置2の概略ブロック図である。
【0026】
図2に示すように、注入装置2は、生成装置として機能するコンソール23を備えている。そして、コンソール23は、制御プログラムを記憶している記憶部24を有している。この記憶部24は、注入装置2の制御部25が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム若しくはシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブを有する。
【0027】
記憶部24は、初期注入プロトコル算出用の計算式、及び初期条件を記憶している。この初期注入プロトコルとは、初期条件及び所定の計算式から算出される注入プロトコルである。例えば、初期条件は、被写体の部位に応じて、注入時間、標準体重、体重当たり造影剤量(例えば体重当たりヨード量)、及び単位時間毎の造影剤単体の体重当たり使用造影剤量(例えば体重当たり使用ヨード量)の情報を含んでいる。
【0028】
コンソール23は、注入ヘッド21を含む注入装置2の全体を制御するCPU等である制御部25と、入力表示部としてのタッチパネル26を有している。ユーザーは、タッチパネル26を介して所定の指令又は情報を入力することができる。さらに、コンソール23は、選択部位の部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部15を備えている。このシミュレーション部15は、CPU等であり、さらに部位情報を考慮して画素値の経時変化をシミュレーションすることができる。なお、シミュレーション部15は、制御部25に設けることもできる。
【0029】
制御部25は、記憶部24に実装されたプログラムに対応して各種処理を実行する。これにより、各部が各種機能として論理的に実現される。代替的に、制御部25は、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)等の可搬記録媒体、又はインターネット上のサーバー等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って各種処理を制御することもできる。また、制御部25は、薬液の情報を取得する薬液情報取得部11と、被写体の情報を取得する被写体情報取得部12とを備えている。
【0030】
また、制御部25は、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部13と、選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部14と備えている。例えば、選択部位の部位情報とは、撮像方法の名称、又は注入部位から選択部位までの距離等、撮像対象として選択された部位(範囲)を特定できる情報である。また、目標画素値とは、選択部位の撮像に求められる所望の画素値であり、選択部位毎に予め設定するか、又はユーザーがタッチパネル26から入力できる。目標値取得部14は、目標画素値の上限値及び下限値、及び目標画素値の目標持続時間をさらに取得することができる。この目標持続時間とは、目標画素値を維持する所望の時間であり、選択部位毎に予め設定するか、又はユーザーがタッチパネル26から入力できる。
【0031】
また、制御部25は、予測画素値を目標画素値と比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断するプロトコル生成部16を備えている。このプロトコル生成部16は、目標条件が満たされる場合に、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する。そして、制御部25は、最終注入プロトコルに従うように注入ヘッド21を制御して薬液を注入させる。目標条件が満たされない場合、プロトコル生成部16は、目標条件が満たされるまでシミュレーション部15に再シミュレーションを繰り返させる。そして、プロトコル生成部16は、再シミュレーションによって目標条件が満たされる場合、再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する。
【0032】
記憶部24に実装された造影剤の注入プロトコル生成プログラムは、注入プロトコルを生成する生成装置23を、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部13、選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部14、部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部15、及び予測画素値を目標画素値と比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断すると共に、目標条件が満たされる場合に、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定するプロトコル生成部16として機能させる。このプロトコル生成部16は、目標条件が満たされない場合に、目標条件が満たされるまでシミュレーション部15に再シミュレーションを繰り返させ、再シミュレーションによって目標条件が満たされる場合に、再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する。注入プロトコル生成プログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記憶されている。
【0033】
[注入プロトコルの生成方法]
図3を参照して、注入プロトコルの生成方法について説明する。
図3は注入プロトコルの生成方法を説明するフローチャートである。
【0034】
ユーザーは、注入装置2の電源をオンにした後に、注入ヘッド21にシリンジを搭載する。すると、注入ヘッド21の読取部213は、薬液情報(例えば、製品ID及び造影剤濃度)を読み取って薬液情報取得部11に送る。そして、薬液情報取得部11は、読取部213が読み取った薬液情報を取得する(S101)。代替的に、薬液情報取得部11は、撮像装置3又は外部記憶装置から薬液情報を取得することもできる。また、薬液情報取得部11は、タッチパネル26を介して、ユーザーが入力した薬液情報を取得することもできる。
【0035】
そして、薬液情報取得部11は、取得した薬液情報を記憶部24に一時的に記憶させる。同時に、制御部25は、薬液情報に基づいて、製品名称及び造影剤濃度(ヨード含有量)をタッチパネル26に表示させる。このとき、制御部25は、部位選択用の身体区分として、被写体の各部位を表した画像又は各部位の名称をタッチパネル26に表示させる(S102)。
【0036】
続いて、ユーザーは、タッチパネル26に表示された身体区分の中から所望の部位(例えば、大動脈)を選択する(S103)。すると、部位情報取得部13は、タッチパネル26を介して、選択部位の部位情報(例えば、選択部位の名称)を取得する。そして、部位情報取得部13は、取得した部位情報を記憶部24に一時的に記憶させる。代替的に、部位情報取得部13は、撮像装置3、注入装置2、又は外部記憶装置から部位情報を取得してもよい。
【0037】
記憶部24は、部位情報として、各部位におけるコンパートメント数(血管及び臓器の分割コンパートメント数)、各部位の体積(血管腔の体積)、毛細血管の体積、細胞外液腔の体積、単位組織あたりの血流量(血流速度)、各部位における造影剤の染み出し速度(毛細血管透過性表面積)、各部位における造影剤の染み戻り速度(毛細血管透過性表面積)、及び各部位生来の画素値を予め記憶していてもよい。記憶部24は、これらの部位情報を選択部位と関連付けることができる。
【0038】
プロトコル生成部16は、初期注入プロトコル算出用の計算式と、初期条件とを記憶部24から読み出す。そして、プロトコル生成部16は、当該計算式及び初期条件から初期注入プロトコルを生成する(S104)。続いて、プロトコル生成部16は、初期注入プロトコルを記憶部24に記憶させる。この初期注入プロトコルは、例えば注入速度(mL/sec)及び注入時間(sec)を含んでいる。加えて、初期注入プロトコルは、注入方法、造影剤注入箇所、注入量、注入タイミング、造影剤濃度、注入圧力、造影剤の後押し注入の有無、生理食塩水の注入速度、生理食塩水の注入時間、注入速度の増減、及び注入用チューブの体積を含んでいてもよい。
【0039】
一例として、プロトコル生成部16は、標準体重、注入時間、体重当たり造影剤量(又は体重当たり使用造影剤量)、造影剤濃度、及びその他の情報に基づいて、初期注入プロトコルを以下のように求める。
【0040】
標準体重をW(kg)、体重当たり造影剤量をI(mgI/kg)、造影剤濃度をCM(mgI/ml)としたとき、プロトコル生成部16は、造影剤の合計注入量SUM(ml)を下記計算式1により求める。
SUM=W×I/CM (計算式1)
【0041】
代替的に、体重当たり使用造影剤量をUIO(mgI/kg/sec)、注入時間をT(sec)としたとき、プロトコル生成部16は、造影剤の合計注入量SUMを下記計算式2により求めることもできる。
SUM=W×(UIO/CM)×T (計算式2)
【0042】
次に、プロトコル生成部16は、注入速度SV(mL/sec)を、下記計算式3により求める。
SV=SUM/T (計算式3)
【0043】
[シミュレーション]
図3に戻り、シミュレーション部15は、選択部位の部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれについて、画素値の経時変化をシミュレーションする(S105)。
【0044】
ここで、
図4を参照してシミュレーション方法を説明する。
図4は、シミュレーション方法を説明するフローチャートである。
【0045】
プロトコル生成部16は、記憶部24から部位情報を取得して、シミュレーション部15においてシミュレーション可能か否かを判断する(S201)。すなわち、プロトコル生成部16は、記憶部24に予め記憶された比較表(比較テーブル)を参照して、部位情報が示す選択部位をシミュレーション部15がシミュレーション可能か否かを判断する。
【0046】
例えば、比較表には、シミュレーション可能な部位として大動脈が設定されており、シミュレーション不能な部位として膵臓が設定されている。プロトコル生成部16は、部位情報が示す選択部位が大動脈である場合、シミュレーション可能と判断する。そして、シミュレーション可能と判断した場合(S201でYES)、プロトコル生成部16は、シミュレーション部15にシミュレーションを開始させる。
【0047】
そして、シミュレーション部15は、初期条件に含まれる被写体情報(例えば標準体重)を記憶部24から取得する(S202)。また、シミュレーション部15は、プロトコル生成部16が生成した初期注入プロトコル(例えば注入速度及び注入時間)を記憶部24から取得する(S203)。さらに、シミュレーション部15は、部位情報(例えば選択部位の名称)を記憶部24から取得する(S204)。
【0048】
代替的に、シミュレーション部15は、被写体情報取得部12から被写体情報を直接取得してもよい。また、シミュレーション部15は、ユーザーがタッチパネル26から入力した初期注入プロトコルを取得してもよく、プロトコル生成部16、外部記憶装置又は注入装置2から初期注入プロトコルを取得してもよい。さらに、シミュレーション部15は、部位情報取得部13から、部位情報を直接取得してもよい。なお、シミュレーション部15による情報の取得順序は、適宜変更することができる。
【0049】
続いて、シミュレーション部15は、初期注入プロトコルと部位情報とを使用して、選択部位を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれについて、画素値の経時変化を予測する(S205)。シミュレーションの終了後、シミュレーション部15は、時間ごとの選択部位内の各コンパートメントの予測画素値を、選択部位と関連付けて記憶部24に記憶させる。このとき、シミュレーション部15は、所定の時点の予測画素値、又は所定の時間内で変化する予測画素値を記憶部24に記憶させることができる。
【0050】
一方、プロトコル生成部16は、部位情報が示す選択部位が例えば膵臓である場合、シミュレーション不能と判断する。そして、シミュレーション不能と判断された場合(S201でNO)、プロトコル生成部16は、比較表を参照して、予め設定された関連部位を選択部位として設定する(S206)。例えば、比較表には、膵臓の関連部位として大動脈が設定されている。続いて、プロトコル生成部16は、部位情報として関連部位の名称(例えば大動脈)を記憶部24に記憶させ、シミュレーション部15にシミュレーションを開始させる。
【0051】
シミュレーション部15は、被写体情報を取得し(S207)、初期注入プロトコルを取得し(S208)、部位情報(関連部位の名称)を記憶部24から取得する(S209)。続いて、シミュレーション部15は、部位情報に関連付けられた関連部位の情報を使用して、関連部位の画素値の経時変化をシミュレーションする(S210)。シミュレーションの終了後、シミュレーション部15は、予測画素値を関連部位と関連付けて記憶部24に記憶させる。そして、プロトコル生成部16は、記憶部24から読み出した関連部位の予測画素値に所定の補正を施し(S211)、補正後の予測画素値を選択部位と関連付けて記憶部24に記憶させる。例えば、プロトコル生成部16は、関連部位の予測画素値を二倍にして、選択部位の予測画素値として記憶部24に記憶させる。
【0052】
図3のフローに戻り、シミュレーション後、制御部25は、記憶部24から予測画素値を取得し、タッチパネル26に表示させる(S106)。代替的に、制御部25は、選択部位が予測画素値に応じた濃度の色で表示されるように、タッチパネル26に選択部位の画像を表示させてもよい。また、制御部25は、シミュレーションによって予測されたタイムデンシティカーブを示すグラフをタッチパネル26に表示させてもよい。
【0053】
同時に、制御部25は、タッチパネル26に被写体情報(例えば、被写体の体重)の入力画面を表示させる。そして、予測画素値を確認したユーザーは、タッチパネル26を介して被写体情報(例えば、被写体の体重として60kgの数値)を入力する。被写体情報取得部12は、入力された被写体情報を取得して、記憶部24に記憶させる。代替的に、被写体情報取得部12は、外部記憶装置、撮像装置3又は注入装置2から被写体情報を取得してもよい。
【0054】
ユーザーが目標画素値を入力しない場合(S107でNO)、プロトコル生成部16は、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定し(S108)、記憶部24に記憶させる。そして、制御部25は、最終注入プロトコルをタッチパネル26に表示させる。一方、ユーザーが目標画素値を入力した場合(S107でYES)、目標値取得部14は、入力された目標画素値を取得して、記憶部24に記憶させる(S109)。そして、プロトコル生成部16は、予測画素値及び目標画素値を記憶部24から読み出す。続いて、プロトコル生成部16は、予測画素値を目標画素値と比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断する(S110)。
【0055】
目標条件を満たすと判断した場合(S110でYES)、プロトコル生成部16は、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定し(S108)、記憶部24に記憶させる。そして、制御部25は、最終注入プロトコルをタッチパネル26に表示させる。その後、ユーザーは、表示された注入プロトコルを確認し、タッチパネル26に表示されたチェックボタン又は注入ヘッド21の最終確認ボタンを押す。これにより、注入準備が完了して、注入装置2は注入可能状態で待機する。
【0056】
一方、目標条件を満たさないと判断した場合(S110でNO)、プロトコル生成部16は、目標条件が満たされるまでシミュレーション部15に再シミュレーションを繰り返させる(S111)。再シミュレーション後、シミュレーション部15は、予測画素値を選択部位と関連付けて記憶部24に記憶させる。そして、制御部25は、記憶部24から予測画素値を取得し、タッチパネル26に表示させる(S112)。
【0057】
なお、ユーザーは、目標画素値を入力する前に、被写体の体重、注入時間、体重当たり造影剤量、体重当たり使用造影剤量、及び造影剤濃度(例えばヨード濃度)等のパラメータを入力又は変更することができる。これらのパラメータが入力又は変更された場合、プロトコル生成部16は、変更されたパラメータに基づいて新たな注入プロトコルを生成する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して再度シミュレーション(S105)を行う。
【0058】
[目標条件]
一例として、プロトコル生成部16は、予測画素値が目標画素値に達する場合に目標条件が満たされると判断する。そして、プロトコル生成部16は、予測画素値が目標画素値に達しない場合に目標条件が満たされないと判断する。また、目標画素値が上限値と下限値とを含む場合、プロトコル生成部16は、予測画素値が下限値以上且つ上限値以下である場合に目標条件が満たされると判断する。そして、プロトコル生成部16は、予測画素値が下限値未満又は上限値より高い場合に目標条件が満たされないと判断する。
【0059】
目標画素値の上限値と下限値は、ユーザーがタッチパネル26を介して入力することができる。そして、目標値取得部14は、入力された上限値と下限値を取得して、記憶部24に記憶させる。また、目標値取得部14は、入力された目標画素値と、部位情報(例えば選択部位の名称)とに基づいて、上限値と下限値を取得することもできる。具体的に、上限値は、選択部位の画像の1階調当たり画素値を基準に、目標画素値に対して3階調分の画素値の範囲内で目標画素値よりも高い値に設定できる。また、下限値は、選択部位の画像の1階調当たり画素値を基準に、目標画素値に対して3階調分の画素値の範囲内で目標画素値よりも低い値に設定できる。
【0060】
撮像された選択部位の画像は、一般に16階調で検像システム又は画像作成用ワークステーションに表示される。そして、3階調の差があれば、この画像中の選択部位とその他の部位とをユーザーが目視で識別できる。そのため、3階調分の画素値の範囲内であれば、同一部位を表す画像として許容できる。ここで、1階調当たり画素値は、選択部位毎に予め設定されている。例えば、事前に撮像された画像中の関心領域内の平均画素値(例えば、15HU)を、1階調当たり画素値として設定することができる。この場合、最高上限値は目標画素値よりも45HU高く、最低下限値は目標画素値よりも45HU低い。
【0061】
記憶部24は、部位名称に関連付けられた1階調当たり画素値を予め記憶している。そして、目標値取得部14は、記憶部24から部位情報と1階調当たり画素値とを取得し、目標画素値に対して3階調分の画素値の範囲を画定する上限値と下限値を取得する。代替的に、目標値取得部14は、2階調又は1階調分の画素値の範囲を画定する上限値と下限値を取得してもよい。
【0062】
目標値取得部14が目標持続時間を取得した場合、プロトコル生成部16は、目標持続時間に渡って目標条件が満たされる状態が維持される場合に、目標条件が満たされると判断してもよい。一方、プロトコル生成部16は、目標持続時間内に目標条件が満たされる状態が維持されなくなる場合には、目標条件が満たされないと判断する。例えば、目標画素値が400HUであり、上限値が450HUであり、下限値が350HUであり、目標持続時間が10秒であるとする。この場合、プロトコル生成部16は、予測画素値が450HU以下且つ350HU以上である状態を10秒間維持できるときに、目標条件が満たされると判断する。
【0063】
[再シミュレーション]
再シミュレーションについて、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、再シミュレーション方法を説明するフローチャートである。また、
図6は再シミュレーションによって予測されたタイムデンシティカーブ(画素値の経時変化)を示すグラフである。
【0064】
プロトコル生成部16は、再シミュレーションの際(目標条件を満たさないと判断した場合)に、新たな注入プロトコルを生成するためにパラメータを変更する(S301)。そして、プロトコル生成部16は、変更されたパラメータに基づいて、新たな注入プロトコルを生成し(S302)、記憶部24に記憶させる。具体的に、プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量を増加又は減少させる。そして、プロトコル生成部16は、増加又は減少された体重当たり造影剤量を使用して新たな注入プロトコルを生成する。
【0065】
代替的に、プロトコル生成部16は、被写体の体重を増加又は減少させてもよい。そして、プロトコル生成部16は、増加又は減少された被写体の体重を使用して新たな注入プロトコルを生成する。なお、体重当たり造影剤量は、被写体の体重に基づいて算出される。そのため、体重を変更する場合と比較して、体重当たり造影剤量を変更する場合は、体重当たり造影剤量の再計算が不要になるという利点がある。
【0066】
そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して再シミュレーションを行う。すなわち、シミュレーション部15は、被写体情報(例えば被写体の体重)を記憶部24から取得する(S303)。また、シミュレーション部15は、プロトコル生成部16が生成した新たな注入プロトコル(例えば注入速度及び注入時間)を記憶部24から取得する(S304)。さらに、シミュレーション部15は、部位情報(例えば選択部位の名称)を記憶部24から取得する(S305)。
【0067】
続いて、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルと部位情報とを使用して、選択部位を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれについて、画素値の経時変化を予測する(S306)。シミュレーションの終了後、シミュレーション部15は、時間ごとの選択部位内の各コンパートメントの予測画素値を、選択部位と関連付けて記憶部24に記憶させる。そして、プロトコル生成部16は、予測画素値及び目標画素値を記憶部24から読み出して比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断する(S307)。
【0068】
目標条件を満たすと判断した場合(S307でYES)、処理はメインフロー(
図3)に戻る。そして、制御部25は、記憶部24から予測画素値を取得し、タッチパネル26に表示させる(S112)。一方、目標条件を満たさないと判断した場合(S307でNO)、プロトコル生成部16は、シミュレーション部15に再シミュレーションを繰り返させる。
【0069】
[再シミュレーションの例]
目標条件を満たすと判断した場合、プロトコル生成部16は、予測画素値が目標画素値(又はその上限値若しくは下限値)よりも高いか又は低いかを判断する。そして、予測画素値が目標画素値又は上限値よりも高い場合、プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量又は被写体の体重を減少させて新たな注入プロトコルを生成する。
【0070】
例えば、
図6において、目標画素値が400HUであり、上限値が450HUであり、下限値が350HUであり、目標持続時間が10秒であるとする。この場合、斜線で示された許容範囲に予測画素値が収まれば、目標条件が満たされる。プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量を600mgI/kgから580mgI/kgに変更し、変更された体重当たり造影剤量を使用して新たな注入プロトコルを生成する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して1回目の再シミュレーションを行う。
【0071】
1回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において実線580で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されていない。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たさないと判断し、体重当たり造影剤量を580mgI/kgから560mgI/kgに変更する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して2回目の再シミュレーションを行う。
【0072】
2回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において一点鎖線560で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されていない。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たさないと判断し、体重当たり造影剤量を560mgI/kgから540mgI/kgに変更する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して3回目の再シミュレーションを行う。
【0073】
3回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において点線540で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されている。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たすと判断し、処理がメインフローに戻る。そして、プロトコル生成部16は、3回目の再シミュレーションで使用された新たな注入プロトコルを、最終注入プロトコルとして決定する。
【0074】
一方、予測画素値が目標画素値又はその下限値よりも低い場合、プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量又は被写体の体重を増加させて新たな注入プロトコルを生成する。例えば、プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量を420mgI/kgから440mgI/kgに変更し、変更された体重当たり造影剤量を使用して新たな注入プロトコルを生成する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して1回目の再シミュレーションを行う。
【0075】
1回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において実線440で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されていない。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たさないと判断し、体重当たり造影剤量を440mgI/kgから460mgI/kgに変更する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して2回目の再シミュレーションを行う。
【0076】
2回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において一点鎖線460で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されていない。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たさないと判断し、体重当たり造影剤量を460mgI/kgから480mgI/kgに変更する。そして、シミュレーション部15は、新たな注入プロトコルを使用して3回目の再シミュレーションを行う。
【0077】
3回目の再シミュレーションによって予測された予測画素値を、
図6において点線480で示す。このとき、予測画素値は、目標持続時間である10秒に渡って許容範囲内の状態が維持されている。そのため、プロトコル生成部16は、目標条件を満たすと判断し、処理がメインフローに戻る。そして、プロトコル生成部16は、3回目の再シミュレーションで使用された新たな注入プロトコルを、最終注入プロトコルとして決定する。
【0078】
代替的に、プロトコル生成部16は、複数回行った再シミュレーションで使用された複数の注入プロトコルのうち、最も造影剤の使用量が少ない注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定してもよい。例えば、プロトコル生成部16が、1回目の再シミュレーションにおいて体重当たり造影剤量を600mgI/kgから580mgI/kgに変更したとする。その後、プロトコル生成部16は、体重当たり造影剤量を20mgI/kgずつ減少させて、体重当たり造影剤量が460mgI/kgになるまで再シミュレーションを繰り返す。そして、プロトコル生成部16は、目標条件を満たし且つ最も使用量が少ない注入プロトコルとして、体重当たり造影剤量480mgI/kgで行われた再シミュレーションで使用された注入プロトコルを、最終注入プロトコルとして決定する。
【0079】
さらに、プロトコル生成部16は、同様に複数回行った再シミュレーションで使用された複数の注入プロトコルのうち、目標持続時間に渡って最も目標画素値と予測画素値との差が少ない注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定してもよい。例えば、
図6においては、体重当たり造影剤量520mgI/kgで行われた再シミュレーションの結果(二点鎖線520で示す)が、目標持続時間に渡って最も目標画素値と予測画素値との差が少ない。そこで、プロトコル生成部16は、目標条件を満たし且つ最も差が少ない注入プロトコルとして、体重当たり造影剤量520mgI/kgで行われた再シミュレーションで使用された注入プロトコルを、最終注入プロトコルとして決定する。
【0080】
各再シミュレーションにおけるパラメータの増減量は、選択部位毎に予め定められている。例えば、肝臓が選択された場合、体重当たり造影剤量の増減量は、1回再シミュレーションを行う毎に20mgI/kgとすることができる。すなわち、予測画素値が目標条件を満たすまで、20mgI/kgずつ増減させて再シミュレーションを繰り返す。
【0081】
例えば、初期条件に比べて体重当たり造影剤量が増えると、注入時間が延長されるか、又は造影剤の単位時間当たり注入量(例えば注入速度)が増加する。初期条件に比べて体重当たり造影剤量が減ると、注入時間が短縮されるか、又は造影剤の単位時間当たり注入量が減少する。さらに、生理食塩水によって造影剤を希釈して注入する場合には、注入プロトコル内の希釈率を増減させることによって、造影剤の単位時間当たり注入量を増減させることもできる。
【0082】
以上説明した第1実施形態によれば、シミュレーション部によるシミュレーション結果を考慮して、注入プロトコルを生成できる。そのため、予めシミュレーションした結果を確認した上で、注入プロトコルを生成することができる。これにより、より適切な注入量で造影できるので、被験者の負担を抑制することもできる。また、ユーザーが望む範囲の画素値を達成する注入プロトコルを生成できる。さらに、既存のシミュレーション方法を使用して、注入プロトコルを生成できる。
【0083】
なお、再シミュレーション時に、プロトコル生成部16は、記憶部24が予め記憶する複数の注入プロトコルの中から一つの注入プロトコルを読み出すことにより、新たな注入プロトコルを生成してもよい。この場合、記憶部24は、変更されたパラメータを使用して生成した複数の注入プロトコルを記憶している。
【0084】
[第2実施形態]
続いて、
図7を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では注入装置2が注入プロトコルの生成装置を備えていたが、第2実施形態では撮像装置3が生成装置を備えている。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0085】
図7は撮像装置3と注入装置2とを備える撮像システム200の概略ブロック図である。
図7に示すように、注入装置2は、薬液を注入する注入ヘッド21と、コンソール23とを備えている。そして、コンソール23は、注入ヘッド21を含む注入装置2の全体を制御するCPU等の制御部25と、入力表示部としてのタッチパネル26を有している。
【0086】
撮像装置3は、表示部としてのディスプレイ33と、入力部34と、注入プロトコルの生成装置323(例えばCPU)と、注入プロトコルの生成プログラムを記憶している記憶部324を有している。この記憶部324は、生成装置323が動作するためのシステムワークメモリであるRAM、プログラム若しくはシステムソフトウェア等を格納するROM、又はハードディスクドライブを有する。また、記憶部324は、初期注入プロトコル算出用の計算式、及び初期条件を記憶している。
【0087】
生成装置323は、記憶部324に実装されたプログラムに対応して各種処理を実行する。これにより、各部が各種機能として論理的に実現される。代替的に、生成装置323は、可搬記録媒体又は外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って各種処理を制御することもできる。また、生成装置323は、薬液の情報を取得する薬液情報取得部311と、被写体の情報を取得する被写体情報取得部312とを備えている。
【0088】
また、生成装置323は、ユーザーが選択した選択部位の部位情報を取得する部位情報取得部313と、選択部位の目標画素値を取得する目標値取得部314と備えている。さらに、生成装置323は、選択部位の部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションして予測画素値を求めるシミュレーション部315を備えている。このシミュレーション部315は、さらに部位情報を考慮して画素値の経時変化をシミュレーションすることができる。
【0089】
また、生成装置323は、予測画素値を目標画素値と比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断するプロトコル生成部316を備えている。このプロトコル生成部316は、目標条件が満たされる場合に、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する。そして、注入装置2の制御部25は、プロトコル生成部316から最終注入プロトコルを取得する。その後、制御部25は、最終注入プロトコルに従うように注入ヘッド21を制御して薬液を注入させる。
【0090】
目標条件が満たされない場合、プロトコル生成部316は、目標条件が満たされるまでシミュレーション部315に再シミュレーションを繰り返させる。そして、プロトコル生成部316は、再シミュレーションによって目標条件が満たされる場合、再シミュレーションに使用された注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定する。
【0091】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に注入プロトコルが生成される。すなわち、ユーザーは、入力部34から所望の部位を選択する。すると、部位情報取得部313は、入力部34を介して、選択部位の部位情報を取得する。そして、部位情報取得部313は、取得した部位情報を記憶部324に一時的に記憶させる。
【0092】
プロトコル生成部316は、初期注入プロトコル算出用の計算式と、初期条件とを記憶部324から読み出し、初期注入プロトコルを生成する。続いて、プロトコル生成部316は、初期注入プロトコルを記憶部324に記憶させる。そして、シミュレーション部315は、選択部位の部位情報と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位の画素値の経時変化をシミュレーションする。
【0093】
シミュレーションの終了後、シミュレーション部315は、時間ごとの選択部位内の各コンパートメントの予測画素値を、選択部位と関連付けて記憶部324に記憶させる。生成装置323は、記憶部324から予測画素値を取得し、ディスプレイ33に表示させる。予測画素値を確認したユーザーは、入力部34を介して被写体情報を入力する。被写体情報取得部312は、入力された被写体情報を取得して、記憶部324に記憶させる。
【0094】
ユーザーが目標画素値を入力しない場合、プロトコル生成部316は、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定し、記憶部324に記憶させる。一方、ユーザーが目標画素値を入力した場合、目標値取得部314は、入力された目標画素値を取得して、記憶部324に記憶させる。そして、プロトコル生成部316は、予測画素値及び目標画素値を記憶部324から読み出して比較し、予測画素値が目標条件を満たすか否かを判断する。
【0095】
目標条件を満たすと判断した場合、プロトコル生成部316は、初期注入プロトコルを最終注入プロトコルとして決定し、記憶部324に記憶させる。そして、生成装置323は、最終注入プロトコルをディスプレイ33に表示させる。その後、ユーザーは、表示された注入プロトコルを確認し、注入装置2のタッチパネル26に表示されたチェックボタン又は注入ヘッド21の最終確認ボタンを押す。これにより、注入準備が完了して、注入装置2は注入可能状態で待機する。
【0096】
一方、目標条件を満たさないと判断した場合、プロトコル生成部316は、目標条件が満たされるまでシミュレーション部315に再シミュレーションを繰り返させる。再シミュレーション後、シミュレーション部315は、予測画素値を選択部位と関連付けて記憶部324に記憶させる。そして、生成装置323は、記憶部324から予測画素値を取得し、ディスプレイ33に新たな注入プロトコルと共に表示させる。その後、ユーザーは、表示された注入プロトコルを確認し、注入装置2のタッチパネル26に表示されたチェックボタン又は注入ヘッド21の最終確認ボタンを押す。これにより、注入準備が完了して、注入装置2は注入可能状態で待機する。
【0097】
以上説明した第2実施形態によっても、シミュレーション部によるシミュレーション結果を考慮して、注入プロトコルを生成できる。そのため、予めシミュレーションした結果を確認した上で、注入プロトコルを生成することができる。これにより、より適切な注入量で造影できるので、被験者の負担を抑制することもできる。また、ユーザーが望む範囲の画素値を達成する注入プロトコルを生成できる。さらに、既存のシミュレーション方法を使用して、注入プロトコルを生成できる。
【0098】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0099】
例えば、注入プロトコルの生成装置は、撮像装置3及び注入装置2と別体に構成することもできる。この場合、生成装置は注入装置2と有線又は無線で接続され、注入装置2は外部の生成装置が生成した注入プロトコルを受信する。そして、注入装置2は、受信した注入プロトコルに従って造影剤を注入する。
【0100】
また、注入装置2又は撮像システム100は、注入結果(注入履歴)に関する情報を、ネットワーク経由で外部記憶装置に送信し記憶させることもできる。
【0101】
また、プロトコル生成部は、スキャン計画画像を用いて初期注入プロトコルを求めてもよい。ここで、スキャン計画画像とは、スキャノグラフィー、スキャノグラム、又はスキャノ画像とも呼ばれ、本スキャン前に患者の位置決めを行うための撮像で得られる透視画像である。このスキャン計画画像は、X線管及び検出器を回転させない状態でベッドを移動させ、当該移動に同期して患者を撮像することにより得られる。一例として、プロトコル生成部は、スキャン計画画像のデータを取得し、取得したスキャン計画画像から、選択部位付近の被写体の体幅方向の画素濃度の累積値を計算する。そして、プロトコル生成部は、計算した累積値を考慮して、造影剤の合計注入量SUM(ml)を決定し、決定した合計注入量に基づいて初期注入プロトコルを求める。
【0102】
実験から、被写体が小さい場合には撮像画像の画素値が上昇し、被写体が大きい場合には撮像画像の画素値は上昇しないことが分かっている。そのため、被写体が小さい場合には、被写体が大きい場合と比較して、少ない造影剤の注入量で足りる。一方、被写体が大きい場合には、被写体が小さい場合と比較して、多くの注入量を要する。さらに、被写体が小さい場合には、スキャン計画画像の画素濃度を横方向に累積した値は、被写体が大きい場合と比較して小さい。一方、被写体が大きい場合には、被写体が小さい場合と比較して濃度の累積値が大きい。そのため、スキャン計画画像を用いることにより、被写体の体型に応じて、より高い精度で造影剤の注入量を決定することができる。
【0103】
また、部位情報取得部は、スキャン計画画像から選択部位の体積(血管腔の体積)を求めて、部位情報として記憶部に記憶させてもよい。この場合、シミュレーション部は、選択部位の体積と初期注入プロトコルとを使用して、選択部位を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれについて、画素値の経時変化をシミュレーションする。
【符号の説明】
【0104】
2:注入装置、3:撮像装置、13:部位情報取得部、14:目標値取得部、15:シミュレーション部、16:プロトコル生成部、21:注入ヘッド、23:生成装置、31:撮像部、313:部位情報取得部、314:目標値取得部、315:シミュレーション部、316:プロトコル生成部、323:生成装置