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特許7296657マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20230616BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230616BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230616BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230616BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230616BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J3/38 180
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
G06Q50/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021205918
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2022119184
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】202110152478.6
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521555306
【氏名又は名称】東北電力大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陳 厚合
(72)【発明者】
【氏名】姜 涛
(72)【発明者】
【氏名】李 雪
(72)【発明者】
【氏名】張 儒峰
(72)【発明者】
【氏名】叢 前
(72)【発明者】
【氏名】李 国慶
(72)【発明者】
【氏名】王 長江
(72)【発明者】
【氏名】李 本新
(72)【発明者】
【氏名】張 嵩
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-500998(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100329(WO,A1)
【文献】特開2016-077138(JP,A)
【文献】特開2017-200311(JP,A)
【文献】特表2020-521424(JP,A)
【文献】特開2016-042748(JP,A)
【文献】特開2015-035941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121849(US,A1)
【文献】特開平02-224033(JP,A)
【文献】特開2001-060189(JP,A)
【文献】特開2005-148833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
G06Q50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気-ガス-熱カップリングのマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法であって、
マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用マルチエネルギーストリームのネットワークモデルを構築し、初期のマルチエネルギーストリームを得るステップと、
初期のマルチエネルギーストリームに基づき、カップリング要素の電気供給型カップリング要素か電気取得型カップリング要素か非電気型カップリング要素かのタイプに応じて、代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、マルチエネルギーストリームを求め、カップリング要素、各分散型電源の出力及び配電網における負荷分布状況を取得するステップと、
代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを採用した上で、負荷回復量の最大を目標とし、安全運転条件を制約とし、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列モデルを構築するステップと、
グリーディアルゴリズムを用いて配電網用アクティブ解列モデルを求め、故障状況での配電網孤島の分割手段を取得し、さらにアクティブ解列を行って故障状況での配電網負荷への継続給電を実現するステップと、を含み、
前記代替制御ポリシーとは、
マルチエネルギーカップリング効果を利用し、電気供給型カップリング要素が位置するノードの負荷を、別のエネルギーシステムに変換してエネルギー供給を行い、安全制約を満たす前提で、非電気型カップリング要素または電気取得型カップリング要素の出力により、電気供給型カップリング要素の負荷を代替することであり、
前記協調制御ポリシーとは、
安全制約を満たす前提で、電気取得型カップリング要素の電気出力を増大させ、配電網用アクティブ解列に電源支持を提供することである
ことを特徴とするマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法。
【請求項2】
前記代替制御ポリシーの数学モデルは、
【数1】
(ΔPriは代替可能な電気エネルギーの電力を表し、δは電気供給型カップリング要素の出力が減少するステップサイズを表し、ηは変換効率を表し、Δφは代替されるエネルギーシステムのバランスノードが増加する必要がある出力を表し、∂φ/∂φnodeは、非電気型カップリング要素が位置するノードの出力のバランスノードの出力に対する感度を表し、nは反復回数を表す)
である
請求項1に記載のマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法。
【請求項3】
前記協調制御ポリシーの数学モデルは、
【数2】
(a=1、2、…、np-eであり、np-eは電気取得型カップリング要素の数であり、ΔPは増発する電力を表し、δは電気取得型カップリング要素供給側の出力増加のステップサイズを表し、ΔΩ別のエネルギーシステムが増加した出力を表し、ζは変換比率であり、Δrは、ΔΩを打ち消すために変更されるべき非電気型カップリング要素の出力を表す)
である
請求項1に記載のマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法。
【請求項4】
前記代替制御ポリシーを用いてシステムの初期マルチエネルギーストリームの分布を求めるステップは、
電気供給型カップリング要素の負荷側システムにおける調整能力を備えるカップリング要素をバランスノードとして選択するステップ(1)と、
配電網における電気供給型カップリング要素が位置するノード負荷の削減ステップサイズδを決定し、バランスノードの出力増加量Δφを計算するステップ(2)と、
システムのマルチエネルギーストリームを計算し、この時のシステムが全ての制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、電気供給型カップリング要素が出力を削減し続け、ステップ(2)に移行し、そうでなければ、代替可能な電気負荷量を得るステップ(3)と、を含む
請求項1に記載のマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法。
【請求項5】
前記協調制御ポリシーを用いてシステムの初期マルチエネルギーストリームの分布を求めるステップは、
電気取得型カップリング要素の中から最も効率が高いカップリング要素を選択し、かつマークするステップ(1)と、
電気取得型カップリング要素の供給側における出力増加のステップサイズδを決定し、ステップサイズに応じて供給側の出力を徐々に増加し、カップリング要素の負荷側の増加出力を得るステップ(2)と、
この時のシステムが全ての制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、ステップ(2)に移行し、出力を増加し続け、そうでなければ、ステップ(4)を実行するステップ(3)と、
非電気型カップリング要素の出力を調整し、システムが安全な運転状態に回復することができると判断し、満たすと、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、ステップ(5)を実行するステップ(4)と、
該カップリング要素をマークし、依然として電気取得型カップリング要素がマークされていない場合、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、カップリング要素の最終的な運転状態を得るステップ(5)と、を含む
請求項1に記載のマルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システム分野に関し、特に、マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電網用アクティブ解列は最も効果的な給電回復ポリシーの1つ(非特許文献1)として、故障の場合に一部の重要な負荷に継続的に給電することを保証することができ、停電による人身安全への脅威と経済的財産の損失を低減させる。配電網内部または上位の送電網に故障が発生した場合、区分スイッチ及びコンタクトスイッチの開閉状態を調整することによりアクティブ解列を実現し、分散型電源(Distribution Generation、DG)で給電する電力孤島を形成し、システムにエネルギーを供給する安全性を保証する前提で、システム内の重要な負荷給電の回復速度を向上させる。分散型電源を含む配電網に対し、解列点の位置を合理的に設置することにより、故障の場合に孤島方式で運転して故障の配電網に対する悪影響を低減させ、停電範囲を縮小させ、配電網のエネルギー供給品質、エネルギー供給安全性及び信頼性の向上に重要な意味を有する(非特許文献2-4)。
【0003】
現在分散型電源を含む配電網の給電回復ポリシーについて研究を行う。しかしながら分散型電源には不確実性及び外部環境の影響を受けやすい等の特徴があり、それは送電網のエネルギー供給回復に対する作用が限られている。また、配電網における一部の負荷は電力で駆動されるエネルギー変換装置であり、その作用は電気エネルギーを熱、冷等の様々な形式のエネルギーに変換することであり、故障の場合に該部分の電気負荷は対応するサブシステムによって供給するようになる。配電網のエネルギー供給回復能力を向上させるために、配電網の電源側から考慮するだけでなく、さらに配電網のマルチタイプ負荷の柔軟性の観点から着手すべきであり、配電網におけるエネルギー変換装置等の特殊な柔軟性負荷を調整することにより、さらに配電網の潜在的な給電回復能力を掘り起こす。
【0004】
マルチエネルギーカップリングのエネルギー背景において、従来の配電網は配電網をコアとし、電気、ガス、熱等の多種類のエネルギーネットワークを融合して構成されるマルチエネルギーカップリングのエネルギーシステム(非特許文献5)に変換しており、その柔軟な運転方式及びマルチエネルギーの相補的な特性は、一方では、配電網用アクティブ解列により良質で、合理的な解決手段を提供し、他方では、配電網の安全制御に新たなチャンスを提供する。従来のアクティブ解列ポリシーに比べ、ガスタービン、熱電併給システム(Combine Heat and Power、CHP)等の要素はそれが良好な安定性と制御可能性を有するため、配電網に対する支持作用が太陽光、風力発電等の従来の分散型電源より顕著に強く、定量的にカップリング要素の出力を増大させる方式によって配電網用アクティブ解列により強力な電源支持を提供することができる。次に、電力駆動のエネルギー変換装置は電力を低減しまたは直接動作を停止する等の方式により配電網の負荷を軽減することができ、欠失した温冷等のエネルギー支持は対応するエネルギーシステムにより供給することができ、それにより配電網の回復待ち負荷量を低減する。以上をまとめると、マルチエネルギーの相補効果を考慮した後、故障の場合にマルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムはマルチタイプのエネルギーを協調する方式によって配電網に電源支持を提供し、かつ熱、冷等のネットワークのエネルギー供給方式を変換することによって配電網負荷を削減し、システム故障の回復効果を向上させるために重要な役割を有し、ただし、この面では研究が少ない。
【0005】
そのため、マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法を研究開発することは特に重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEEE standard for interconnection distributed resources with electric power system:IEEE Std 1547[S].Iscataway,NJ,USA:IEEE Press,2003
【文献】Microgrids for service restorationto critical load in a resilient distribution system[J],Xu Y,Liu C,Schneider K P,et al,IEEE Transactions on Smart Grid,2018,9(1):426-437
【文献】Reliability evaluation for distribution system with renewable distributed generation during islanded mode of operation[J],Atwa Y.M.,El-Saadany E.F.,IEEE Trans on Power Systems,2009,24(2):572-581
【文献】靭性背景での配電網故障回復研究総説及び展望[J],許寅、和敬涵、王穎ら,電気工学技術学報,2019,34(16):3416-3429
【文献】エンジニアリング応用向けのユーザレベル総合エネルギーシステム企画[J],周長城、馬渓原、郭祚剛ら,電気工学技術学報,2020,35(13):2843-2854
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気-ガス-熱カップリングのマルチエネルギーストリームのネットワークモデルを構築することにより、マルチエネルギーカップリングに適用する配電網用アクティブ解列代替制御及び協調制御ポリシーを提案する。システム構造に基づいて合理的な制御ポリシーを選択した上で、配電網のエネルギー供給回復の最大を目標とし、負荷優先度及び制御可能性を総合的に考慮し、マルチエネルギーカップリングの配電網用アクティブ解列モデルを構築し、グリーディアルゴリズムを用いてマルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列制御を求め、本発明はシステムのマルチエネルギーカップリング効果を考慮することにより、配電網のエネルギー供給回復効果を向上させ、システムへのエネルギー供給の安全性と信頼性を保証し、詳細は以下に説明する。
【0009】
マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法であって、前記方法は、
マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用マルチエネルギーストリームのネットワークモデルを構築し、かつ交互反復法を用いて求め、初期のマルチエネルギーストリームを得るステップと、
初期のマルチエネルギーストリームに基づき、カップリング要素のタイプに応じて、代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、マルチエネルギーストリームを求め、カップリング要素、各分散型電源の出力及び配電網における負荷分布状況を取得するステップと、
代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを採用した上で、負荷回復量の最大を目標とし、安全運転条件を制約とし、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列モデルを構築するステップと、
グリーディアルゴリズムを用いて配電網用アクティブ解列モデルを求め、故障状況での配電網孤島の分割手段を取得し、さらにアクティブ解列を行って故障状況での配電網負荷への継続給電を実現するステップと、を含む。
【0010】
そのうち、前記代替制御ポリシーは、マルチエネルギーカップリング効果を利用し、供給型カップリング要素が位置するノードの負荷を、対応するエネルギーサブシステムに変換してエネルギー供給を行い、安全制約を満たす前提で、非電気型カップリング要素または電気取得型カップリング要素の出力により、電気供給型カップリング要素の負荷を代替することである。
【0011】
さらに、前記代替制御ポリシーの数学モデルは、
【0012】
【数1】
【0013】
式では、ΔPriは代替可能な電気エネルギーの電力を表し、δは電気供給型カップリング要素の出力が減少するステップサイズを表し、ηは変換効率を表し、Δφは代替電気エネルギーサブシステムのバランスノードが増加する必要がある出力を表し、∂φ/∂φnodeは、非電子システム電気駆動型カップリング要素が位置するノードの出力のバランスノードの出力に対する感度を表し、nは反復回数を表す。
【0014】
そのうち、前記協調制御ポリシーは、安全制約を満たす前提で、電気取得型カップリング要素の電気出力を増大させ、配電網用アクティブ解列に電源支持を提供することである。
【0015】
さらに、前記協調制御ポリシーの数学モデルは、
【0016】
【数2】
【0017】
式では、a=1、2、…、np-eであり、np-eは電気取得型カップリング要素の数であり、ΔPは増発する電力を表し、δは電気取得型カップリング要素供給側の出力増加のステップサイズを表し、ΔΩは他のサブシステムが増加した出力を表し、ζは変換比率であり、Δrは、ΔΩを打ち消すために変更されるべき非電気型カップリング要素の出力を表す。
【0018】
そのうち、代替制御ポリシーを用いてシステムの初期マルチエネルギーストリームの分布を求める前記ステップは、以下のステップを含む。
【0019】
代替制御ポリシーは、具体的には、
電気駆動型カップリング要素の負荷側システムにおける調整能力を備えるカップリング要素をバランスノードとして選択するステップ(1)と、
配電網における電気供給型カップリング要素が位置するノード負荷の削減ステップサイズδを決定し、バランスノードの出力増加量Δφを計算するステップ(2)と、
システムのマルチエネルギーストリームを計算し、この時のシステムが全ての制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、電気供給型カップリング要素が出力を削減し続け、ステップ(2)に移行し、そうでなければ、代替可能な電気負荷量を得るステップ(3)と、を含む。
【0020】
さらに、協調制御ポリシーを用いてシステムの初期マルチエネルギーストリームの分布を求める前記ステップは、具体的には、
電気取得型カップリング要素の中から最も効率が高いカップリング要素を選択し、かつマークするステップ(1)と、
電気取得型カップリング要素の供給側における出力増加のステップサイズδを決定し、ステップサイズに応じて供給側の出力を徐々に増加し、カップリング要素の負荷側の増加出力を得るステップ(2)と、
この時のシステムが全ての制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、ステップ(2)に移行し、出力を増加し続け、そうでなければ、ステップ(4)を実行するステップ(3)と、
非電気型カップリング要素の出力を調整し、システムが安全な運転状態に回復することができると判断し、満たすと、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、ステップ(5)を実行するステップ(4)と、
該カップリング要素をマークし、依然として電気取得型カップリング要素がマークされていない場合、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、カップリング要素の最終的な運転状態を得るステップ(5)と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
1、本発明は、システムのマルチエネルギー協同効果を考慮し、複数の形式のエネルギーを協調することにより、マルチエネルギーカップリングシステムのエネルギー供給ポテンシャルを十分に掘り起こし、システムのエネルギー供給回復量を効果的に向上させ、従来の分散型電源のみで給電回復を行うことに比べ、本方法で形成された孤島のスイッチ動作回数がより少なく、故障が解消された後にシステムが正常運転に回復することに役立つ。
【0022】
2、本発明は、配電網の負荷優先度、制御可能性及びネットワークトポロジー構造を総合的に考慮するアクティブ解列モデルを構築し、システムのトポロジー構造と負荷の特性及びフレキシブルソフトスイッチ(Soft Open Point、SOP)の電圧支持能力を十分に利用し、故障の場合に配電網の負荷回復量を向上させると同時に、重要な負荷の持続的で確実な給電を優先的に保証することができ、停電による人身安全への脅威と経済的財産の損失を低減させる。
【0023】
3、本発明は、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網に対し、マルチエネルギー協同の角度を出発点とし、マルチエネルギーカップリングの配電網に適用する代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、負荷移行と電源支持の両面から配電網のエネルギー供給回復レベルを向上させ、システム構造に基づいて制御ポリシーを合理的に選択することができ、比較的強い汎用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】マルチエネルギー協同の配電網用アクティブ解列制御方法のフローチャートである。
図2】代替制御ポリシーの実現プロセスの概略図である。
図3】マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網トポロジー構造の概略図である。
図4】配電網用アクティブ解列の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をさらに明確にするために、以下は本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列制御方法であって、該方法はステップ101~104を含む。
【0027】
ステップ101において、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網のマルチエネルギーストリームのネットワークモデルを構築し、かつ交互反復法を用いて求め、システムの初期マルチエネルギーストリームを得る。
【0028】
ステップ102において、システムの初期マルチエネルギーストリームに基づき、システムにおけるカップリング要素のタイプに応じて、代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、システムのマルチエネルギー協同の作用を深く掘り起こし、配電網用アクティブ解列に電源支持を提供し、配電網の給電回復量を向上させ、かつこれに基づいてシステムのマルチエネルギーストリームを求め、システムにおけるカップリング要素、各分散型電源の出力及び配電網における負荷分布状況を取得する。
【0029】
ステップ103において、代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを採用した上で、負荷回復量の最大を目標とし、システムの安全運転条件を制約とし、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列モデルを構築する。
【0030】
ステップ104において、グリーディアルゴリズムを用いて配電網用アクティブ解列モデルを求め、故障の場合の配電網孤島の分割手段を得て、求められた手段に従ってアクティブ解列を行い、故障の場合の配電網負荷への継続的な給電を実現する。
【0031】
以上説明したように、本発明の実施例は、上記ステップ101~104によってマルチエネルギーカップリング効果を考慮する配電網用アクティブ解列制御を実現し、配電網の電源側及び負荷の柔軟性の角度から考慮し、配電網の潜在的な給電回復能力を十分に掘り起こし、配電網のエネルギー供給回復レベルを効果的に向上させ、配電網の故障回復に新たな考え方を提供する。
【0032】
(実施例2)
以下は具体的な計算式、実施例を組み合わせて実施例1における解決手段をさらに紹介し、図1に示すように、詳細は以下の説明に示す。
【0033】
ステップ201において、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網のマルチエネルギーストリームのネットワークモデルを構築し及び求める。
【0034】
ここで、該ステップ201は、以下を含む。
1)配電網モデル
a)配電網のトポロジー構造モデル
配電網のトポロジー構造をノード権限付与ツリーの形で表し、すなわちT(V,E,W)であり、ここで、V、E、Wはそれぞれノード、エッジ、ノード重みの集合を表す。ノードの重みWは以下の式(1)に表すことができ、
【0035】
【数3】
【0036】
式では、ωはノードvの重みであり、SGi、SLiはそれぞれノードvに接続された電源の注入電力の和及び接続された負荷の電力の和を表す。
【0037】
b)配電網の潮流モデル
配電網はマルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムのコアであり、他のエネルギーサブシステムを接続するヒンジである。本発明の実施例は、古典的な交流潮流モデルを用いて電力システムを説明し、そのノードの電力式は、
【0038】
【数4】
【0039】
式では、P、Qはそれぞれノードiの有効電力と無効電力であり、Yijはノードi、jの間のアドミタンスであり、Uはノードiの電圧フェーザであり、Uはノードjの電圧フェーザであり、「.」はフェーザ演算であり、「*」は共役演算であり、Reは実部演算であり、Imは虚部演算である。
【0040】
2)熱システムモデル
熱システムは求めようとする変数のタイプによって、それぞれ水力モデルと熱モデルを構築することができる。水力モデルは、温水がネットワークを流れることが満たす必要があるノード流量方程式及びヘッド損失方程式を含み、すなわち、
【0041】
【数5】
【0042】
式では、Aは熱供給ネットワークのノード-ブランチ関連行列であり、mは各配管の流量であり、mは各ノードから流出する流量であり、Bは熱供給管網の回路-ブランチ関連行列であり、hはヘッド損失ベクトルである。
【0043】
熱モデルは、熱出力方程式、供給回収熱温度方程式及びノード温度混合方程式を含み、すなわち、
【0044】
【数6】
【0045】
式では、Tは熱供給温度であり、Tは出力温度であり、Φはノード熱出力であり、Tendは末端温度であり、Tstartは始端温度であり、Tは環境温度であり、lは配管の長さであり、mout、Tout及びmin、Tinはそれぞれ流出及び流入配管における水の流量及び温度であり、Cは水の比熱容量であり、λは配管の熱伝導率である。
【0046】
3)天然ガスシステムのモデル
圧縮機を含まない天然ガスネットワークの配管流量とノード圧力との関係は、
【0047】
【数7】
【0048】
式では、fは天然ガス配管rの定常流量であり、Kは配管パラメータであり、smnは符号関数であり、配管r内の天然ガスの流れ方向を示し、その値は1または-1であり、p、pは、ノードm、nの圧力を表す。
【0049】
天然ガスシステムにおけるノード流量の方程式は、
【0050】
【数8】
【0051】
に表すことができ、上式では、Aは天然ガスシステムのノード-ブランチ関連行列であり、fは配管天然ガスの流量であり、Lは各ノードから流出する流量である。
【0052】
4)カップリング要素のモデル
カップリング要素はマルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムにおける重要なエネルギー変換装置として、異なる品位のエネルギーを緊密にカップリングすることができ、マルチエネルギーカップリングを実現するキーポイントである。マルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムは、マイクロガスタービン、CHPプラント、ガスボイラ、電気ボイラ等の複数種類のカップリング要素を含み、それぞれ次のモデルで表すことができる。
【0053】
CHPプラントの電力方程式は、
【0054】
【数9】
【0055】
式では、CCHPはCHPプラントの熱電比であり、PCHP、eはCHPプラントが発する電力であり、ΦCHP、hはCHPプラントが発する熱出力である。
【0056】
ガスボイラの電力方程式は、
【0057】
【数10】
【0058】
式では、ΦGBはガスボイラが発する熱出力を表し、LGBは天然ガスシステムが天然ガスを注入する流量を表し、αはガスボイラの効率を表し、Hは天然ガスの発熱量を表す。
【0059】
電気ボイラの電力方程式は、
【0060】
【数11】
【0061】
式では、ΦEBは電気ボイラが発する熱出力を表し、PEBは、電気ボイラが消費する電力を表し、βは電気ボイラの効率を表す。
【0062】
ガスタービンの出力方程式は、
【0063】
【数12】
【0064】
式では、PGTはガスタービンが発する電力を表し、γはガスタービンの効率を表し、LGTは天然ガスシステムが天然ガスを注入する流量を表す。
【0065】
5)マルチエネルギーストリームの求め方法
システムのマルチエネルギーストリームを求める時、カップリング要素はそのエネルギー供給側と負荷側のエネルギータイプに基づき、対応するエネルギーサブシステムにおいてソースポイントまたは負荷ポイントと同等にする。SOPは異なる運転方式に基づいて負荷ノード、発電機ノードまたはバランスノードと同等にすることができ、システムの潮流を求めやすい。本発明の実施例は交互解法を採用してマルチエネルギーカップリングの配電網のマルチエネルギーストリームを求め、該方法は計算効率が高く、解法が柔軟で、カップリング要素の運転状態を分析し制御しやすく、以下の制御ポリシーの提案に基礎を定める。
【0066】
ステップ202において、システム構造及びカップリング要素のタイプに応じて代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案する。
【0067】
ここで、該ステップ202は、以下を含む。
【0068】
カップリング要素をエネルギー供給側及び負荷側のエネルギータイプに応じてカップリング要素を3つの種類に分け、一つ目は電気ボイラ及びP2G等に代表される電気供給型カップリング要素であり、二つ目はガスタービン、CHPプラント等に代表される電気取得型カップリング要素であり、三つ目はガスボイラ等に代表される非電気型カップリング要素である。異なるタイプのカップリング要素に対して代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、それによって配電網の給電回復品質及びシステムの安全性及び信頼性を向上させる。
【0069】
1)代替制御ポリシー
代替制御ポリシーとは、マルチエネルギーカップリング効果を利用し、電気ボイラ等の電気供給型カップリング要素が位置するノードの負荷を、対応するエネルギーサブシステムに変換してエネルギー供給を行うことである。システム安全制約を満たす前提で、ガスボイラ等の非電気型カップリング要素またはCHPプラント等の電気取得型カップリング要素の出力を増大させることにより、電気ボイラ等の電気供給型カップリング要素の負荷を代替し、例えばガスボイラで電気ボイラを代替して熱システムに給電し、天然ガスシステムの負荷を増大させ、配電網の負荷を減少させ、それにより配電網の負荷を代替する作用を実現し、配電網の回復待ち負荷を減少させ、負荷の回復割合を向上させ、配電網の負荷回復効果を改善する。
【0070】
代替制御ポリシーの実現過程は、図2に示すように、システムに電気駆動型カップリング要素A、非電気型カップリング要素B、Cが存在し、代替制御ポリシーを採用した後、カップリング要素Aが単位負荷ΔPを削減する場合、その運転点がaからaに変換されるため、カップリング要素Aの負荷側システムにηΔPの単位電力の不足が発生し、システムの安全運転を保証するため、負荷側システムにおけるバランスノードはΔφの出力を増大させる必要がある。
【0071】
一般的には、非電気型カップリング要素または複数のエネルギーシステムにエネルギーを供給することができる電気ボイラ、CHPプラント等のような電気取得型カップリング要素をシステムのバランスノードとして選択する。カップリング要素Bが負荷側システムのバランスノードとなると、その運転点はb点からb′に変わる。複数回の反復を経て、カップリング要素Bの出力が閾値に達すると、カップリング要素C等のカップリング要素を負荷側システムのバランスノードとして選択することができ、代替制御ポリシーを実行し続ける。カップリング要素Aが完全に代替されるか、または全てのカップリング要素の出力が上限に達すると、代替プロセスは終了する。
【0072】
エネルギーネットワークに電気供給型カップリング要素が存在すれば、代替制御ポリシーを用いてエネルギー供給の回復を行うことができる。いずれかの電気供給型カップリング要素について、その代替制御ポリシーの数学モデルは、
【0073】
【数13】
【0074】
式では、ΔPriは代替可能な電気エネルギーの電力を表し、δは電気供給型カップリング要素の出力が減少するステップサイズを表し、ηは変換効率を表し、Δφは代替電気エネルギーサブシステムのバランスノードが増加する必要がある出力を表し、∂φ/∂φnodeは、非電子システム電気駆動型カップリング要素が位置するノードの出力のバランスノードの出力に対する感度を表し、nは反復回数を表す。
【0075】
2)協調制御ポリシー
協調制御ポリシーとは、ネットワーク安全制約を満たす前提で、ガスタービン、CHPプラント等の電気取得型カップリング要素の電気出力を増大させ、配電網用アクティブ解列に電源支持を提供することである。エネルギーシステムにおいて、電力を増発することができる電気取得型カップリング要素に対し、負荷側が電力負荷のみであれば、システム安全制約を満たす前提で電気出力を増加するだけでよい。負荷側に複数種類の負荷が存在する場合(例えば、CHPプラント等)は、電気出力を増加させると同時に、非電子システム負荷側の出力もそれに伴って増加させ、非電子システムにおける非電気型カップリング要素をバランスノードとして選択し、電気取得型カップリング要素の増発電力を平衡させるために用いられる。CHPプラントの電気出力を増加させると、CHPプラントの熱出力もそれに伴って増大し、熱システムの安全運転制約を満たすために、ガスボイラ等の非電気型カップリング要素の熱出力を減少させる必要がある。
【0076】
システム内に電気出力を増大させることができる電気取得型カップリング要素が存在する場合、協調制御ポリシーを用いることができる。いずれかの電気取得型カップリング要素について、その協調制御ポリシーの数学モデルは式(12)に示すとおりであり、
【0077】
【数14】
【0078】
式では、a=1、2、…、np-eであり、np-eは電気取得型カップリング要素の数であり、ΔPは増発する電力を表し、δは電気取得型カップリング要素供給側の出力増加のステップサイズを表し、ΔΩは他のサブシステムが増加した出力を表し、負荷側には配電網のみがあれば、ΔΩ=0であり、ζは変換比率であり、Δrは、ΔΩを打ち消すために変更されるべき非電気型カップリング要素の出力を表す。
【0079】
ステップ203において、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列モデルは、主にアクティブ解列目標関数及び安全運転条件で構成される。
【0080】
ここで、ステップ203は、以下を含む。
【0081】
1)アクティブ解列モデルの目標関数
マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網用アクティブ解列の目標は復電の負荷量を最大にすることであり、以下のように表すことができ、
【0082】
【数15】
【0083】
式では、Πは最終的に形成される孤島であり、bは孤島内のノードであり、ωはノードbの重みであり、Pはノードbに接続される負荷電力を表す。
【0084】
2)アクティブ解列モデルの制約条件
配電網はマルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムの基礎として、その運転方式が柔軟で、運転設備が複雑であるため、電力システムの安全運転条件を十分に考慮するために、電力システムの安全制約を、孤島内の電力バランス制約、ノード電圧制約、熱安定制約及びSOP運転条件制約に分けることができる。
【0085】
孤島内の電力バランス制約は、
【0086】
【数16】
【0087】
式では、PGi、QGi、PLi、QLiはそれぞれ形成された孤島内の電源ノードの有効と無効電力及び負荷ノードの有効と無効電力を表し、nは孤島における分散型電源の数であり、kは孤島内の負荷ノードの数である。
【0088】
ノード電圧の制約は、
【0089】
【数17】
【0090】
式では、Uはノードcの電圧振幅であり、Ucmin、Ucmaxはノード電圧振幅の上下限であり、c=1、2、…、nであり、nは孤島内のノード総数である。
【0091】
熱安定の制約は、
【0092】
【数18】
【0093】
式では、Pmin、Pmax、Qmin、Qmaxは電力線路伝送の有効電力と無効電力の最大値と最小値であり、Pxy、Qxyはノードxからノードyまでの間に伝送された有効電力と無効電力を表し、x、y=1、2、…、nである。
【0094】
熱システムの安全制約は、配管流量制約及び供給回収温度制約を含む。
【0095】
配管流量の制約は、
【0096】
【数19】
【0097】
式では、mpqはノードpからノードqまでの間に水を輸送する質量流量を表し、mmin、mmaxは熱システム配管の質量流量の上下限を表し、p、q=1、2、…、nであり、nは熱システムにおけるノード総数である。
【0098】
実際に運転する熱力システムにおいて、ノードの熱供給回収温度の降下が小さく、いずれも安全制限内にあり、ここで温度の安全制約を無視することができる。
【0099】
天然ガスシステムの安全制約は、配管流量制約及びノード圧力の制約等を含む。
【0100】
ノード圧力の制約は、
【0101】
【数20】
【0102】
式では、fmnはノードcからノードnまでの間に輸送するガスの流量であり、fmin、fmaxは天然ガス配管のガス流量の上下限を表し、c、n=1、2、…、nである。
【0103】
ノード圧力の制約は、
【0104】
【数21】
【0105】
式では、pはノードoの圧力を表し、pmin、pmaxは天然ガスノード圧力の上下限を表し、o=1、2、…、nである。
ステップ204において、グリーディアルゴリズムを用いて構築されたマルチエネルギーカップリングの配電網用アクティブ解列モデルを求める。
【0106】
ここで、ステップ204は、S1~S4を含む。
【0107】
S1:システムの初期マルチエネルギーのストリーム分布を求める。
【0108】
マルチエネルギーカップリングのエネルギーシステム内のカップリング要素に基づき、代替制御ポリシーまたは協調制御ポリシーを採用するか否かを決定する。ステップ201のサブステップ5)で言及された交互解法アルゴリズムを採用し、マルチエネルギーカップリング配電網を考慮するマルチエネルギーストリームを計算し、カップリング要素の出力、分散型電源の容量及び配電網の負荷分布を得る。
【0109】
代替制御ポリシーを採用するアルゴリズムフローは、
電気駆動型カップリング要素の負荷側システムにおける調整能力を備えるカップリング要素をバランスノードとして選択するステップ(1)と、
配電網における電気供給型カップリング要素が位置するノード負荷の削減ステップサイズδeeを決定し、バランスノードの出力増加量Δφを計算するステップ(2)と、
システムのマルチエネルギーストリームを計算し、この時のシステムがステップ203に言及された全ての制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、電気供給型カップリング要素が出力を削減し続け、ステップ(2)に移行し、そうでなければ、前回の運転結果を保留するステップ(3)と、
代替可能な電気負荷量を得るステップ(4)と、を含む。
【0110】
協調制御ポリシーを採用するアルゴリズムフローは、
電気取得型カップリング要素の中から最も効率が高いカップリング要素を選択し、かつマークするステップ(1)と、
電気取得型カップリング要素の供給側における出力増加のステップサイズδを決定し、ステップサイズに応じて供給側の出力を徐々に増加し、カップリング要素の負荷側の増加出力を得るステップ(2)と、
この時のシステムがステップ203に言及された制約条件を満たすか否かを判断し、満たすと、ステップ(2)に移行し、出力を増加し続け、そうでなければ、ステップ(4)を実行するステップ(3)と、
非電気型カップリング要素の出力を調整し、システムが安全な運転状態に回復することができると判断し、満たすと、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、ステップ(5)を実行するステップ(4)と、
該カップリング要素をマークし、依然として電気取得型カップリング要素がマークされていない場合、ステップ(2)を実行し続け、そうでなければ、実行し続けるステップ(5)と、
カップリング要素の最終的な運転状態を得るステップ(6)と、を含む。
【0111】
S2:初期の孤島分割手段を決定する。
【0112】
(1)グリーディアルゴリズムを用いて孤島分割のサブ手段を求め、求めるフローは以下のとおりである。
【0113】
i)故障点を隔離し、ノードタイプ、システム構造に基づき、マルチエネルギーカップリングを考慮する配電網のトポロジーモデルを構築し、各ノードの重み及び負荷需要はそれぞれwとPである。
【0114】
ii)システムにマークされていないDGかつ出力が最大のノードを初期ノードとし、Z={v}と記し、かつ該DGをマークする。
【0115】
iii)かつ式(20)~(22)に従ってこの時の孤島内における全てのノードの電力の和P、孤島内における全てのノードの重みの和B及び残りの電源容量Cを計算し、かつこの時のシステムが電力システムの安全運転条件を満たすか否かをチェックし、満たすと実行し続け、そうでなければ、ステップ(7)に移行する。
【0116】
【数22】
【0117】
iv)既に形成された孤島Zにおけるノード要素iとそれに接続するノード要素jの重みw(j)を計算する。
【0118】
【数23】
【0119】
v)重みが最大であるノードを選択し、mと記し、Bが0でなければ、ノードmを孤島内に添加し、Z={Z,m}と記す。そうでなければ、ステップ(7)に移行する。
【0120】
vi)P<Cであれば、ステップ(3)に移行する。そうでなければ、次のステップを引き続き行う。
【0121】
vii)P、Bを計算し、初期の孤島分割手段を得る。
【0122】
(2)トポロジー構造図を再構成し、形成された孤島手段におけるノードを1つの新しいノードに圧縮し、かつn+i番号のノード(iは孤島を形成する個数)と記す。
【0123】
(3)システムにマークされていない電源点が存在すれば、ステップ(2)に戻り、孤島を生成し続ける。そうでなければ、次のステップに移行する。
【0124】
S3:初期孤島分割手段における全ての孤島の余剰電力を計算し、余剰電力が0でない孤島が存在すれば、該孤島に隣接するノードにおける一部の制御可能な負荷を選択して該孤島に添加する。
【0125】
S4:交互解法を利用してマルチエネルギーストリームの計算を行い、マルチエネルギーストリームの計算結果がシステム安全制約に合致しないかまたは孤島内のバランスノードの電力が制限を超えると、該孤島内の一部の優先度が低い制御可能な負荷を切除し、配電網の最終的な孤島分割手段を得る。各孤島内の負荷の添加順序に応じて、各スイッチの開閉状態を決定し、システムを再構成し、最終的な配電網用アクティブ解列ポリシーを得る。
【0126】
以上説明したように、本発明の実施例は、上記ステップ201~ステップ204により、システムのマルチエネルギーの協同効果を考慮し、複数の形式のエネルギーを協調することにより、マルチエネルギーカップリングシステムのエネルギー供給ポテンシャルを十分に掘り起こし、システムのエネルギー供給回復量を効果的に向上させ、従来の分散型電源のみで給電回復を行うことに比べ、言及された方法により形成される孤島のスイッチ動作回数がより少なく、故障が解消された後のシステムの正常運転回復に役立つ。マルチエネルギーカップリングの配電網の定常モデルを考慮した上、マルチエネルギー協同の観点から、マルチエネルギーカップリングの配電網に適用する代替制御ポリシー及び協調制御ポリシーを提案し、負荷移行と電源支持の両面から配電網のエネルギー供給回復レベルを向上させ、システムのエネルギー供給安全性と信頼性を向上させることに重要な意味を有する。
【0127】
(実施例3)
以下は具体的な実施例を組み合わせて実施例1及び2における解決手段に対して実行可能性検証を行い、詳細は以下の説明に示す。
【0128】
本方法は、図3に示すように、SOPを介してIEEE33ノード配電システムに接続されたPG&E69ノード配電システム、32ノード熱システム、11ノード天然ガスシステムで構成されたマルチエネルギーカップリングを考慮する配電網を例とし、提出された配電網用アクティブ解列ポリシーの正確性と有効性を検証する。図3に示すシステムにおけるカップリング要素は、ガスタービン、CHPプラント、電気ボイラ及びガスボイラを含み、その分布状況は以下の表1に示すとおりである。PG&E69ノード配電システムにおけるノード5及びノード36は太陽光電源に接続される。システムにおける安全制約条件は、電力システムの電圧制約が0.95~1.05p.u.であり、天然ガスシステムの圧力制約が20~75mBarであり、配管流量の制約が1400m/hであり、熱システム配管の質量流量制約が5kg/sであり、熱システムのノード温度変化がいずれも安全範囲内にあるため、ノード温度制約を無視することができる。
【0129】
【表1】
【0130】
PG&E69ノード配電システム2-3回線に故障が発生し、このとき上位電源は配電網に給電することができず、配電網に大量の電力不足が発生し、安全に運転することができず、解列を行って一部の負荷に給電し続けることを保証する必要があり、システムの回復待ち負荷量は3802.19kWである。PG&E69ノード配電システムにおける負荷優先度及び制御可能性は以下の表2に示す。このときの太陽光発電出力は、250kW、50kWである。
【0131】
以下の5つのシーンの給電回復ポリシーをそれぞれ分析する。
【0132】
シーン1:従来の分散型電源に基づく配電網用アクティブ解列制御ポリシー分析である。
【0133】
シーン2:システムのマルチエネルギーカップリング効果を考慮する配電網用アクティブ解列制御ポリシー分析である。
【0134】
シーン3:マルチエネルギーカップリング効果とSOP配電を総合的に考慮する配電網用アクティブ解列制御ポリシー分析である。
【0135】
【表2】
【0136】
本発明の提供する方法の正確性を検証するために、本方法を運用し、シーン1~2でそれぞれ配電網用アクティブ解列手段を求め、具体的な孤島分割手段は以下の図4に示し、2種類のシーンでカップリング要素の出力状況及び負荷の回復状況はそれぞれ表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
上記解列解決手段の比較から分かるように、マルチエネルギー相補作用を総合的に考慮した後、マルチエネルギーカップリングエネルギーシステムは複数の形式のエネルギーを協調することにより、配電網負荷移行を実現し、566.18kWの電気エネルギー代替量を実現し、配電網のエネルギー供給圧力を軽減し、かつ電気取得型カップリング要素の出力を調整し、カップリング要素が増発する電気出力は、156.77kWであり、配電網に電源支持を提供する。
【0139】
シーン3は、IEEE33ノードシステムにおける22とPG&E69ノードシステムにおける35との間に取り付けられたSOPを利用して分散型電源を含む停電領域の給電回復を行い、このような負荷回復ポリシーでは、ノード39のみが全ての負荷を停電させ、ノード38は218kWの負荷を回復し、残りの負荷は全て回復することができる。
【0140】
【表4】
【0141】
上記図4及び表4から分かるように、シーン1は分散型電源のみによって給電を回復し、分散型電源の出力及び負荷分布の制約により、回復負荷量が低い。また、操作する必要があるスイッチの数が多く、スイッチの耐用年数に影響を与え、システムの安全運転に不利であり、運転コストを増大させる。シーン2は、マルチエネルギーの相補作用を総合的に考慮した後、マルチエネルギーカップリングのエネルギーシステムは複数の形式のエネルギーを協調することにより、配電網の負荷移行を実現し、配電網のエネルギー供給圧力を軽減し、かつ電気取得型カップリング要素の出力を調整し、配電網に電源支持を提供し、マルチエネルギーの相補効果を総合的に考慮して配電網の負荷回復量を顕著に向上させることができ、負荷の回復割合が約19%を高める。シーン3は、SOPを考慮した後、配電網の解列解決手段に対して積極的な影響を有する。SOPを考慮する時、その両側の潮流が制御可能であるため、配電網の潮流分布を改善することができ、配電網孤島に電圧支持を提供し、同時に配電網に一部の有効電力を提供することができ、電源支持の役割を果たす。
【0142】
以上説明したように、システムのマルチエネルギー協同効果を考慮した後、複数の形式のエネルギーを協調することにより、マルチエネルギーカップリングシステムのエネルギー供給ポテンシャルを十分に掘り起こし、システムのエネルギー供給回復量を効果的に向上させ、システムのエネルギー供給の安全性及び信頼性の向上に重要な役割を有する。配電網のマルチエネルギーカップリング効果を考慮した上で、SOPにより配電網の給電回復能力をさらに向上させ、配電網の負荷回復レベルを向上させることができる。
【0143】
本発明の実施例は、各デバイスの型番を特別に説明する以外、他のデバイスの型番を制限せず、上記機能を完了することができるデバイスであればよい。
【0144】
当業者であれば理解できるように、図面は1つの好ましい実施例の概略図にすぎず、上記本発明の実施例の番号は説明のためだけであり、実施例の優劣を表さない。
【0145】
以上に記載の内容は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則の範囲内で行われる任意の修正、同等の置換及び改善等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。

図1
図2
図3
図4