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特許7296661オンチップミニチュアX線源及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】オンチップミニチュアX線源及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20230616BHJP
   H01J 1/316 20060101ALI20230616BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20230616BHJP
   H01J 9/18 20060101ALI20230616BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20230616BHJP
   H01J 35/20 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H01J35/06 B
H01J1/316
H01J9/02 E
H01J9/02 J
H01J9/18 A
H01J35/00 A
H01J35/06 E
H01J35/14
H01J35/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021525676
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2019116139
(87)【国際公開番号】W WO2020098556
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201811339577.X
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201821855698.5
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】魏 賢龍
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106298409(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107248489(CN,A)
【文献】特開2013-109902(JP,A)
【文献】特開平03-261026(JP,A)
【文献】特開2007-311195(JP,A)
【文献】特開平09-283013(JP,A)
【文献】特開2015-173045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00
H01J 35/08
H01J 35/14
H01J 35/20
H01J 1/316
H01J 35/06
H01J 9/02
H01J 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンチップミニチュアX線源であって、
オンチップミニチュア電子源と、
前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に位置する、キャビティ構造である第1の絶縁スペーサーと、
前記第1の絶縁スペーサー上に位置するアノードと、を含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティが形成さ
前記オンチップミニチュア電子源は、
基板と、
前記基板の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層と、
前記抵抗スイッチング材料フィルム層に位置する少なくとも1つの電極対であって、第1の電極と第2の電極とを含む、前記少なくとも1つの電極対と、
を含み、
前記基板は、熱伝導性を有する材料で作られ、前記抵抗スイッチング材料フィルム層に前記基板と連通する少なくとも1つの貫通孔が設置され、
前記電極対の少なくとも1つの電極は、前記貫通孔を通して前記基板と接触して接続する、
ことを特徴とするX線源。
【請求項2】
記第1の電極と前記第2の電極との間にギャップが存在し、
前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層の領域内にトンネル接合が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記電極対は複数あり、複数の前記電極対は指状の交差電極対である、ことを特徴とする請求項2に記載のX線源。
【請求項4】
前記X線源は、前記アノード上に位置する第1の放熱部品をさらに含む、ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項5】
前記X線源は、前記基板の下に位置する第2の放熱部品をさらに含む、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項6】
前記第1の絶縁スペーサーは、中空キャビティ構造である、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項7】
前記第1の絶縁スペーサーは、トップカバーが設置されたキャビティ構造であり、前記トップカバーに導電性プラグが設置され、
前記アノードは、前記トップカバーの下に位置し、前記導電性プラグによって前記第1の絶縁スペーサー上に位置する電極に電気的に接続される、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項8】
前記X線源は、
前記第1の絶縁スペーサーと前記オンチップミニチュア電子源との間に位置する中空集束電極であって、前記中空集束電極の前記オンチップミニチュア電子源に近い側の表面に中空キャビティ構造である第2の絶縁スペーサーが設置されている、前記中空集束電極をさらに含み、
前記第2の絶縁スペーサーは、前記オンチップミニチュア電子源に接続される、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項9】
前記密閉真空キャビティ内に吸気部品が設置され、前記吸気部品は、前記密閉真空キャビティ内のガスを吸収して、前記密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するために使用される、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項10】
前記アノードは、ターゲット層と、前記ターゲット層を支持するための支持層とを含み、
前記ターゲット層は、電子衝撃に近い側に位置し、前記支持層は、電子衝撃から遠い側に位置する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のX線源。
【請求項11】
前記ターゲット層は、重金属材料で作られ、前記支持層は、銅又はアルミニウムで作られる、ことを特徴とする請求項10に記載のX線源。
【請求項12】
前記アノードの厚さは、0.1~1000ミクロンである、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項13】
ンチップミニチュアX線源の製造方法であって、
オンチップミニチュア電子源を製造するステップと、
アノードを製造するステップであって、前記アノードの一方の表面にキャビティ構造である第1の絶縁スペーサーが設置される、前記アノードを製造するステップと、
前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成するステップと、を含み、
前記オンチップミニチュア電子源を製造する前記ステップは、具体的に、
基板を提供するステップと、
前記基板の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層を形成するステップと、
前記抵抗スイッチング材料フィルム層に少なくとも1つの電極対を形成するステップと、
を含み、
前記電極対は、第1の電極と第2の電極とを含み、
前記基板は、熱伝導性を有する基板であり、前記抵抗スイッチング材料フィルム層を形成した後、少なくとも1つの前記電極対を形成する前に、
前記製造方法は、前記抵抗スイッチング材料フィルム層に、前記基板と連通する少なくとも1つの貫通孔を形成するステップをさらに含み、
前記電極対の少なくとも1つの電極は、前記貫通孔を通して前記基板と接触して接続する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前に、
中空集束電極を製造するステップであって、前記中空集束電極の一方の表面に中空キャビティ構造である第2の絶縁スペーサーが設置される、前記中空集束電極を製造するステップ、をさらに含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前に、
前記第2の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続するステップを、さらに含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前記ステップは、具体的に、
前記第1の絶縁スペーサーを、前記中空集束電極の前記第2の絶縁スペーサーから離れた側に接続するステップを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成する前に、
吸気部品を、形成しようとする密閉真空キャビティ内に配置するステップであって、前記吸気部品が、前記密閉真空キャビティ内のガスを吸収して、前記密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するために使用される、前記吸気部品を、形成しようとする密閉真空キャビティ内に配置するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、
前記アノードの上に第1の放熱部品を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電極と前記第2の電極との間にギャップが存在し、
前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成する前又は後に、オンチップミニチュア電子源を製造する前記ステップは、
前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層領域内にトンネル接合を形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月12日に中国専利局に提出した、出願番号が201811339577.Xであって、発明の名称が「オンチップミニチュアX線源及びその製造方法」である中国特許出願、及び2018年11月12日に中国専利局に提出した、出願番号が201821855698.5であって、発明の名称が「オンチップミニチュアX線源」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本出願に参照により援用する。
【0002】
本出願は、X線源の分野に関し、特に、オンチップミニチュアX線源及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
X線は、健康診断、がん放射線治療、安全検査、産業欠陥検出、材料分析などの分野で広く使用される。
【0004】
現在、X線は主に、1つの熱放射陰極とアノードを主に含む熱陰極X線管によって生成される。電子は、熱陰極から放出された後、加速され、高エネルギー電子はアノードに衝突して、アノードでは制動放射と原子内殻電子遷移が起こり、それによってX線が発生する。
【0005】
熱放射陰極は、大体積、高電力消費、及び長いスイッチ遅延時間などを有するため、熱陰極X線管も、一般に、より大きな体積、より高い電力消費、及びより長いスイッチ応答時間を有する。これらの問題は、多くのシナリオで従来の熱放射X線管の適用を制限する。一方、軽X線医用画像システム、短距離電気X線放射線治療デバイス、携帯型X線検出及び分析装置などの新しいX線機器の適用需要はますます大きくなり、これらの機器の主要なコア部品はミニチュアX線源であるため、ミニチュアX線源は、重要であり、需要が高まっている電子部品である。
【0006】
ミニチュアX線源の研究は2000年頃に始まった。現在、熱放射電子源とナノ材料電界放出電子源に基づく小型又はミニチュアX線源の開発に成功している。
【0007】
その中で、熱放射電子源に基づく小型X線源の技術は比較的成熟しており、熱放射電子源に基づく小型X線源は、小型でコンパクトなサイズであるが、依然として熱放射電子源を使用しており、従来のX線管に非常に類似した構造を有するため、スイッチ応答時間が長いという問題があり、移動物体などの動的X線イメージングに適用することは困難である。
【0008】
熱放射電子源に基づく小型X線源に比べて、カーボンナノチューブ、酸化亜鉛ナノワイヤーなどのナノ材料電界放出電子源に基づくミニチュアX線源は、より小さいサイズ、より低い電力消費、より短いスイッチ応答時間を有するため、非常に有望と思われるミニチュアX線源技術である。
【0009】
しかしながら、現在、全てのオンチップミニチュアX線源はいずれも、サイズをさらに縮小することが困難であり、バッチ製造のコストが高いなどの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これを考慮して、本出願は、オンチップミニチュアX線源のサイズをさらに縮小し、コストを削減するオンチップミニチュアX線源及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的な問題を解決するために、本出願は、次の技術案を採用している。
オンチップミニチュアX線源であって、
オンチップミニチュア電子源と、
前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に位置する、キャビティ構造である第1の絶縁スペーサーと、
前記第1の絶縁スペーサー上に位置するアノードと、を含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティが形成される。
【0012】
任意選択で、前記オンチップミニチュア電子源は、
基板と、
前記基板の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層と、
前記抵抗スイッチング材料フィルム層に位置する少なくとも1つの電極対であって、第1の電極と第2の電極とを含み、前記第1の電極と前記第2の電極との間にギャップが存在する、前記少なくとも1つの電極対と、を含み、
前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層の領域にトンネル接合が形成される。
【0013】
任意選択で、前記電極対は複数あり、複数の前記電極対は指状の交差電極対である。
【0014】
任意選択で、前記基板は、熱伝導性を有する材料で作られ、前記抵抗スイッチング材料フィルム層に前記基板と連通する少なくとも1つの貫通孔が設置され、
前記電極対の少なくとも1つの電極は、前記貫通孔を通して前記基板と接触して接続する。
【0015】
任意選択で、前記X線源は、前記アノード上に位置する第1の放熱部品をさらに含む。
【0016】
任意選択で、前記X線源は、前記基板の下に位置する第2の放熱部品をさらに含む。
【0017】
任意選択で、前記第1の絶縁スペーサーは、中空キャビティ構造である。
【0018】
任意選択で、前記第1の絶縁スペーサーは、トップカバーが設置されたキャビティ構造であり、前記トップカバーに導電性プラグが設置され、
前記アノードは、前記トップカバーの下に位置し、前記導電性プラグによって前記第1の絶縁スペーサー上に位置する電極に電気的に接続される。
【0019】
任意選択で、前記X線源は、
前記第1の絶縁スペーサーと前記オンチップミニチュア電子源との間に位置する中空集束電極であって、前記中空集束電極の前記オンチップミニチュア電子源に近い側の表面に中空キャビティ構造である第2の絶縁スペーサーが設置されている、前記中空集束電極をさらに含み、
前記第2の絶縁スペーサーは、前記オンチップミニチュア電子源に接続される。
【0020】
任意選択で、前記密閉真空キャビティ内に吸気部品が設置され、前記吸気部品は、前記密閉真空キャビティ内のガスを吸収して、前記密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するために使用される。
【0021】
任意選択で、前記アノードは、ターゲット層と、前記ターゲット層を支持するための支持層とを含み、
前記ターゲット層は、電子衝撃に近い側に位置し、前記支持層は、電子衝撃から遠い側に位置する。
【0022】
任意選択で、前記ターゲット層は、重金属材料で作られ、前記支持層は、銅又はアルミニウムで作られる。
【0023】
任意選択で、前記アノードの厚さは、0.1~1000ミクロンである。
【0024】
オンチップミニチュアX線源の製造方法であって、
オンチップミニチュア電子源を製造するステップと、
アノードを製造するステップであって、前記アノードの一方の表面にキャビティ構造である第1の絶縁スペーサーが設置される、前記アノードを製造するステップと、
前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成するステップと、含む。
【0025】
任意選択で、前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前に、
中空集束電極を製造するステップであって、前記中空集束電極の一方の表面に中空キャビティ構造である第2の絶縁スペーサーが設置される、前記中空集束電極を製造するステップをさらに含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前に、
前記第2の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続するステップをさらに含み、
前記オンチップミニチュア電子源と前記第1の絶縁スペーサーとを接続する前記ステップは、具体的に、
前記第1の絶縁スペーサーを、前記中空集束電極の前記第2の絶縁スペーサーから離れた側に接続するステップを含む。
【0026】
任意選択で、前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成する前に、
形成しようとする密閉真空キャビティ内に吸気部品を配置するステップであって、前記吸気部品が、前記密閉真空キャビティ内のガスを吸収して、前記密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するために使用される、前記吸気部品を、形成しようとする密閉真空キャビティ内に配置するステップをさらに含む。
【0027】
任意選択で、前記方法は、
前記アノード上に第1の放熱部品を形成するステップをさらに含む。
【0028】
任意選択で、オンチップミニチュア電子源を製造する前記ステップは、具体的に、
基板を提供するステップと、
前記基板の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層を形成するステップと、
前記抵抗スイッチング材料フィルム層に少なくとも1つの電極対を形成するステップであって、前記電極対が、第1の電極と第2の電極を含み、前記第1の電極と前記第2の電極との間にギャップが存在する、前記抵抗スイッチング材料フィルム層に少なくとも1つの電極対を形成するステップと、含み、
前記第1の絶縁スペーサーを前記オンチップミニチュア電子源の電子放出側に接続することで、前記オンチップミニチュア電子源と前記アノードとの間に密閉真空キャビティを形成する前又は後に、オンチップミニチュア電子源を製造する前記ステップは、
前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の抵抗スイッチング材料フィルム層領域内にトンネル接合を形成するステップをさらに含む。
【0029】
任意選択で、前記基板は、熱伝導性を有する基板であり、抵抗スイッチング材料フィルム層を形成した後、少なくとも1つの電極対を形成する前に、
前記抵抗スイッチング材料フィルム層に前記基板と連通する少なくとも1つの貫通孔を形成するステップをさらに含み、
前記電極対の少なくとも1つの電極は、前記貫通孔を通して前記基板と接触して接続する。
【発明の効果】
【0030】
従来技術と比較して、本出願は、次の有益な効果を有する。
上記の技術案によれば、本出願によるオンチップミニチュアX線源は、オンチップミニチュア電子源に基づいており、当該オンチップミニチュア電子源は、微細加工技術によって得られる。従って、従来技術の従来の機械加工技術によって作られたオンチップミニチュアX線源に比べて、本出願で提供されるオンチップミニチュアX線源は、微細加工技術によって得られるため、そのサイズをさらに縮小することができ、製造コストを削減することができる。そして、当該オンチップミニチュアX線源は、安定したX線線量、低い作業真空要件、高速スイッチ応答、集積可能、バッチ加工可能などの利点があり、小型で携帯型の様々なX線検出分析及び治療デバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1(1)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図1(2)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の三次元構造の概略図である。
図1(3)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源におけるオンチップミニチュア電子源の三次元構造の概略図である。
図2(1)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の構成原理の概略図である。
図2(2)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源におけるトンネル接合エネルギーバンド構造の概略図である。
図3】本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源における垂直構造のトンネル電子源の断面構造の概略図である。
図4】本出願の実施例1による他のオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図5】本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の概略フローチャートである。
図6】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法のフローチャートである。
図7(1)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図7(2)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図7(3)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図7(4)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図8】本出願の実施例1によるアノードを製造するステップに対応する断面構造の概略図である。
図9(1)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図9(2)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の三次元構造の概略図である。
図9(3)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源におけるオンチップミニチュア電子源の三次元構造の概略図である。
図10】本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の概略フローチャートである。
図11】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートである。
図12(1)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図12(2)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図12(3)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図12(4)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図12(5)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図13】本出願の実施例3によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図14】本出願の実施例3によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の概略フローチャートである。
図15】本出願の実施例3による第1の放熱部品を製造するステップに対応する断面構造の概略図である。
図16】本出願の実施例4によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図17】本出願の実施例4によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の概略フローチャートである。
図18(1)】本出願の実施例4によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図18(2)】本出願の実施例4によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図19】本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図20】本出願の実施例5による他のオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図である。
図21】本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の概略フローチャートである。
図22(1)】本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
図22(2)】本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
既存のミニチュアX線源は、従来の機械加工技術によって得られるため、サイズをさらに縮小することが困難であり、バッチ製造のコストが高いなどの問題がある。微細加工技術は、大規模集積回路、微小電気機械システム、ミクロ流体システムなどのオンチップミニチュアデバイスの加工に広く使用されており、マイクロデバイスを実現するための主流の処理技術であり、加工デバイスのサイズが小さく、バッチ加工コストが低く、加工技術が信頼できるなどの利点がある。
【0033】
そこで、既存のミニチュアX線源に存在する問題を解決するために、本出願は、オンチップミニチュアX線源を提供する。当該オンチップミニチュアX線源は、オンチップミニチュア電子源に基づいており、オンチップミニチュア電子源は、微細加工技術によって得られる。これによって、従来技術の従来の機械加工技術によって作られたオンチップミニチュアX線源に比べて、本出願によるオンチップミニチュアX線源は、微細加工技術によって得られるため、そのサイズをさらに縮小することができ、製造コストを削減することができる。そして、当該オンチップミニチュアX線源は、安定したX線線量、低い作業真空要件、高速スイッチ応答、集積可能、バッチ加工可能などの利点があり、小型で携帯型の様々なX線検出分析及び治療デバイスに適用できる。
【0034】
本出願の上記の目的、特徴及び利点をより明らかに理解できるために、本出願の具体的な実施形態について、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
(実施例1)
【0035】
図1(1)から図1(3)を参照して、図1(1)は本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図であり、図1(2)は本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の三次元構造の概略図であり、図1(3)は本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源におけるオンチップミニチュア電子源の三次元構造の概略図である。なお、図1(2)は、実際には、構造の完全な概略図ではなく、内部構造を見るために、アノードの一部のみが描かれている。
【0036】
本出願の実施例1に係るオンチップミニチュアX線源は、
オンチップミニチュア電子源10と、
オンチップミニチュア電子源10の電子放出側に位置する、キャビティ構造である第1の絶縁スペーサー11と、
第1の絶縁スペーサー11に位置するアノード12と、を含み、
オンチップミニチュア電子源10とアノード12との間に密閉真空キャビティが形成される。
【0037】
なお、オンチップミニチュア電子源10の放出効率を向上させるために、一例として、当該オンチップミニチュア電子源10は、平面マルチゾーン構造を有する表面トンネル電子源であり得る。具体的に、
基板101と、
基板101の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層102と、
抵抗スイッチング材料フィルム層102に位置する複数の電極対であって、各電極対が、第1の電極1031と第2の電極1032とを含み、各第1の電極1031と各第2の電極1032との間にいずれもギャップ104が存在する、前記複数の電極対と、を含み、
各ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域にいずれもトンネル接合105が形成される(図1(1)に示す)。
【0038】
上記の抵抗スイッチング材料とは、最初は電気絶縁材料であるが、電圧を印加してソフトブレイクダウンすると、抵抗スイッチング状態を示し、電子放出能力を持つものになり、抵抗スイッチング材料が活性化されると、電気絶縁材料から導電性材料に変化するものを指す。
【0039】
表面トンネル電子源の動作原理を明らかに理解するために、図2(1)は、本出願の実施例1による表面トンネル電子源の原理構成図を示している。図2(1)に示すように、第1の電極1031と第2の電極1032との間に電圧を印加することにより、ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102はソフトブレイクダウンされる。このようにして、ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層は、絶縁状態から導電状態に遷移し、次に低抵抗状態から高抵抗状態に遷移した後、導電性フィラメントが切断され、ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域に図2(1)に示すようなトンネル接合105を形成する。当該トンネル接合105は、第1の電極1031から第2の電極1032まで、接続された第1の導電領域1051、絶縁領域1052、及び第2の導電領域1053を順次に含む。
【0040】
当該ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域に形成されたトンネル接合105のエネルギーバンド図を図2(2)に示す。このようにして、図1(3)に示すように、第1の電極1031及び第2の電極1032に電圧V1を印加した後、電子は、低電位の第1の導電領域1051から絶縁領域1052にトンネリングし、絶縁領域1052で加速して、真空レベルを超えるエネルギーを得て、高電位の第2の導電領域1053に到達した後に放出される。
【0041】
なお、基板101は、Si基板、Ge基板、SiGe基板、SOI(シリコンオンインシュレータ、Silicon On Insulator)又はGOI(ゲルマニウムオンインシュレータ、Germanium On Insulator)などであり得る。
【0042】
その中で、当該オンチップミニチュア電子源の放熱能力を向上させるために、基板101は、熱伝導性を有する材料、又は良好な導電性及び熱伝導性の両方を有する材料を選択してもよい。良好な導電性及び熱伝導性を有する材料を基板101として使用する場合、当該基板101は電極としても使用され得る。本出願の実施例では、良好な導電性及び熱伝導性の両方を有する材料で形成された基板101を例として説明する。
【0043】
例として、良好な導電性及び熱伝導性を有する基板101を形成するための材料は、金属又は高濃度にドープされた半導体であり得る。
【0044】
また、抵抗スイッチング材料フィルム層102は、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化ゲルマニウム、ダイヤモンド、及びアモルファスカーボンから1つ又は複数を選択することができる。上記の材料は、ソフトブレイクダウンされた後、いずれも低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を実現し、電子放出能力を持つことができる。
【0045】
なお、本出願の実施例では、抵抗スイッチング材料フィルム層102に複数の電極対を形成することを例とするが、実際には、1つの電極対のみを形成してもよい。
【0046】
また、抵抗スイッチング材料フィルム層102に形成された複数の電極は、異なる構造を有する電極対であり得る。この実施例では、指状の交差電極対を例として説明する。
【0047】
また、第1の電極1031及び第2の電極1032は、電極を作製するための任意の材料であり得る。一例として、第1の電極1031及び第2の電極1032は、金属、グラフェン、及びカーボンナノチューブから1つ又は複数を選択することができる。
【0048】
また、一例として、第1の電極1031と第2の電極1032との間のギャップ104の幅は、10μm以下であり得る。ギャップ104の小さな幅は、トンネル接合105における小さな幅の絶縁領域1052の形成を制御するのに有益であることで、導電領域の表面バリアよりも高い電圧が印加された後、顕著な電子トンネリング及び電子放出が発生することができ、絶縁領域1052が電圧によって破壊されないことを保証している。
【0049】
一例として、当該第1の絶縁スペーサー11は、中空キャビティ構造であり、このようにして、より多くの電子をアノード12に衝突させて、X線を生成し、X線の放出効率を向上させることができる。また、第1の絶縁スペーサー11は、絶縁性のよい材料を選択してもよい。一例として、第1の絶縁スペーサー11は、ガラス、石英、セラミック、及びプラスチックから1つ又は複数を選択することができる。
【0050】
なお、第1の絶縁スペーサー11に良好な絶縁作用を持たせるために、その厚さは0.1~20ミリメートルであり得る。より良い絶縁作用を達成するために、第1の絶縁スペーサー11の厚さは、その両側に印加される電圧が高くなるにつれて、増加し得る。
【0051】
他の例として、アノード12は金属材料製であり得る。より具体的な例として、アノード材料は、タングステン、モリブデン、金、銀、銅、クロム、ロジウム、アルミニウム、ニオブ、タンタル、レニウムから1つ又は複数を選択することができる。また、X線がアノード12を効果的に透過できることを保証するために、アノード12の厚さは厚すぎてはならない。一例として、アノードの厚さは、0.1~1000ミクロンであり得る。
【0052】
上記は、本出願の実施例によって提供されるオンチップミニチュアX線源の構成である。当該オンチップミニチュアX線源の動作原理は、次の通りである。
【0053】
指状の交差電極対の間に電圧V1を印加して、オンチップミニチュア電子源10に電子を放出させる。同時に、第1の電極1031及びアノード12に電圧V2を印加して、オンチップミニチュア電子源10から放出された電子を加速させて、高速でアノード12に衝突し、アノード12の内部で制動放射及び原子内部エネルギーレベルの遷移によりX線を生成し、X線は、アノード12を透過して外部空間に放出する。
【0054】
上記は、本出願の実施例によって提供されるオンチップミニチュアX線源の具体的な実現方法である。この具体的な実現方法では、上記のオンチップミニチュアX線源は、オンチップミニチュア電子源10に基づいており、当該オンチップミニチュア電子源10は、微細加工技術によって得られるため、当該オンチップミニチュア電子源10に基づくX線源も、微細加工技術によって得られる。従って、本出願の実施例によって提供されるオンチップミニチュアX線源のサイズをさらに縮小することができ、製造コストを削減することができる。そして、当該オンチップミニチュアX線源は、安定したX線線量、低い作業真空要件、高いスイッチ応答、集積可能、バッチ加工可能などの利点があり、小型で携帯型の様々なX線検出分析及び治療デバイスに適用できる。
【0055】
なお、上記の実施例では、オンチップミニチュア電子源10は、表面トンネル電子源を例として説明した。実際には、本出願の実施例に記載されているオンチップミニチュア電子源10は、表面トンネル電子源に限定されず、垂直構造のトンネル電子源であってもよい。図3は、垂直構造のトンネル電子源の断面構造を示している。図3に示すように、当該垂直構造のトンネル電子源は、
基板30と、
基板30上に位置する第1の導電層31と、
第1の導電層31上に位置する絶縁層32と、
絶縁層32上に位置する第2の導電層33と、を含む。
【0056】
当該垂直構造のトンネル電子源の動作原理は、次の通りである。第2の導電層33に第1の導電層31に対する正のバイアス電圧を印加し、バイアス値は第2の導電層33の表面バリア値(電子ボルトを単位とする)よりも大きい。絶縁層32は非常に薄い(電子の平均自由行程に等しい)ので、第1の導電層31内の電子は、量子トンネリング効果を受けて絶縁層32を通過し第2の導電層33に入り、絶縁層32をトンネリングして通過する過程において、電子のエネルギーは第2の導電層33の真空エネルギーレベルを超えて増加する。第2の導電層33の厚さは非常に薄いので、絶縁層32をトンネリングして通過した電子の一部は、散乱することなく第2の導電層33をさらに透過し、第2の導電層33の表面から真空に放出され得る。
【0057】
なお、垂直構造のトンネル電子源は、金属(M)-絶縁層(I)-金属(M)に基づく垂直構造であってもよく、半導体(S)-絶縁体(I)-金属(M)に基づく垂直構造、又は半導体(S)-絶縁体(I)-半導体(S)に基づく垂直構造であってもよい。
【0058】
また、上記の図1(1)から図1(3)に示すオンチップミニチュアX線源では、第1の絶縁スペーサー11は、中空キャビティ構造を例として説明する。このようにして、より多くの電子をアノード12に衝突させて、X線を生成し、X線の放出効率を向上させることができる。
【0059】
本出願の実施例の拡張として、図4を参照して、第1の絶縁スペーサー11は、トップカバー111が設置されるキャビティ構造であってもよく、当該トップカバー111に導電性プラグ112が設置される。アノード12は、トップカバー111の下に位置し、導電性プラグ112と第1の絶縁スペーサー11上に位置する電極113との間に電気的接続を形成する。トップカバー111が設置される第1の絶縁スペーサー11は、密閉真空キャビティの気密性を高めることができ、環境中の不純物の電子放出への干渉を回避するのに有益である。
【0060】
上記の実施例1によるオンチップミニチュアX線源の実現方法に基づいて、対応して、本出願は、当該オンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0061】
図5を参照して、実施例1によるオンチップミニチュアX線源の製造方法は、次のステップを含む。
【0062】
S51:オンチップミニチュア電子源10を製造する。
【0063】
一例として、表面トンネル電子源をオンチップミニチュア電子源10の例として、S51の具体的な実現方法を説明する。具体的に、図6を参照して、当該オンチップミニチュア電子源10を製造するステップは、次の通りである。
【0064】
S511:基板101を提供する。
【0065】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図7(1)に示す。
【0066】
S512:基板101の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層102を形成する。
【0067】
当該ステップは、具体的に、本分野で一般的に使用される薄膜堆積プロセス又は熱酸化プロセスを使用して、基板101の一方の表面上に抵抗スイッチング材料フィルム層102を形成することであり得る。
【0068】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図7(2)に示す。
【0069】
S513:抵抗スイッチング材料フィルム層102に複数の電極対を形成し、各電極対は第1の電極1031と第2の電極1032とを含み、各第1の電極1031と各第2の電極1032との間にいずれもギャップ104が存在する。
【0070】
一例として、当該ステップは、具体的に、電子ビームフォトレジストのスピンコーティング、電子ビームの露光、現像と定着、金属膜の堆積、ストリッピングなどのプロセスステップを含み得る本分野で一般的に使用される電極堆積プロセスを使用して、抵抗スイッチング材料フィルム層102に電極材料層を堆積して、抵抗スイッチング材料フィルム層102の表面の一部を覆う第1の電極1031と第2の電極1032、及び第1の電極1031と第2の電極1032との間のギャップ104を形成することであり得る。
【0071】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を図7(3)に示す。
【0072】
S514:ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102がソフトブレイクダウンされ、抵抗スイッチング特性を示すように制御して、ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域にトンネル接合105を形成する。
【0073】
当該ステップは、具体的に、第1の電極1031及び第2の電極1032に電圧を印加し、電圧値を徐々に増加しながら電流の大きさを監視し、限界電流を100μAなどの特定の電流値に設定し、電流が急激に増加したときに電圧の増加を停止し、このとき、間隙104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102がソフトブレイクダウンされ、抵抗スイッチング特性を示すことであり得る。このようにして、当該抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域に、ギャップ104全体の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102を横断する導電フィラメントが形成され、その結果、当該抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域は絶縁状態から導電状態に遷移し、次に、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移した後、導電性フィラメントが切断され、ギャップ104の下の抵抗スイッチング材料フィルム層102の領域に図2(1)に示すようなトンネル接合105が形成される。当該トンネル接合105は、第1の電極1031から第2の電極1032まで、接続された第1の導電領域1051、絶縁領域1052、及び第2の導電領域1053を順次に含む。
【0074】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図、を図7(4)に示す。
【0075】
これまでに、図1(1)から図1(3)の表面トンネル電子源が形成される。当該表面トンネル電子源が動作する場合、電子は放出時に複数の層の材料を透過する必要がないため、より高い放出効率を有することができる。また、当該表面トンネル電子源は、微細加工技術によって得られるため、小さなサイズを有することができ、製造コストを削減することができる。
【0076】
S52:アノード12を製造し、当該アノード12の一方の表面に第1の絶縁スペーサー11が設置され、第1の絶縁スペーサー11はキャビティ構造である。
【0077】
当該ステップは、具体的に、0.1~20ミリメートルの厚さの絶縁層を選択し、本分野で一般的に使用される物理蒸着法、化学蒸着法又はスピンコーティング法を使用して、まず、絶縁層の一方の表面に金属材料を覆い、この金属材料層の厚さを0.1~1000ミリメートルの間に制御することであり得る。当該金属材料層は、アノード12として使用される。次に、ドライエッチング又はウェットエッチングのプロセスを使用して、アノード12が露出するまで、アノード12が設置されていない表面上に絶縁層をエッチングする。中空キャビティ構造である第1の絶縁スペーサー11に絶縁層をエッチングする。
【0078】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図8に示す。
【0079】
S53:第1の絶縁スペーサー11をオンチップミニチュア電子源10の電子放出側に接続することで、オンチップミニチュア電子源10とアノード12との間に密閉真空キャビティが形成される。
【0080】
当該ステップは、具体的に、真空中で、接着剤接着又は結合によって、第1の絶縁スペーサー11をオンチップミニチュア電子源10の電子放出側に接続することで、オンチップミニチュア電子源10とアノード12が密接されて、密閉真空キャビティを形成することであり得る。
【0081】
当該ステップを実行した後の対応する構成概略図を、図1(1)に示す。
【0082】
なお、本出願は、S51とS52の順序を限定しない。また、本出願では、S514はS53の前又は後に実行することができる。
【0083】
上記は、実施例1によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法であり、この方法で製造されたオンチップミニチュアX線源は、図1に提供されるオンチップミニチュアX線源と同じ利点があり、簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0084】
上記は、本出願の実施例1によるオンチップミニチュアX線源及びその製造方法に対応する具体的な実現方法である。オンチップミニチュアX線源におけるオンチップミニチュア電子源の放熱能力を向上させるために、本出願は、他のオンチップミニチュアX線源の実現方法も提供し、実施例2を参照してください。
(実施例2)
【0085】
図9(1)から図9(2)を参照して、図9(1)は本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の断面構造の概略図であり、図9(2)は本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の三次元構造の概略図である。なお、図9(2)は、実際には、構造の完全な概略図ではなく、内部構造を見るために、アノードの一部のみが描かれている。
【0086】
本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源であって、
オンチップミニチュア電子源90と、
オンチップミニチュア電子源90の電子放出側に位置する、キャビティ構造である第1の絶縁スペーサー91と、
第1の絶縁スペーサー91に位置するアノード92と、を含み、
オンチップミニチュア電子源90とアノード92との間に密閉真空キャビティが形成される。
【0087】
なお、実施例2の構造は基本的に実施例1の構造と同じ、違いは、オンチップミニチュア電子源90の構成にのみある。従って、簡潔にするために、本出願の実施例では、第1の絶縁スペーサー91及びアノード92の具体的な構成は詳細に説明されず、オンチップミニチュア電子源90だけを詳細に説明する。
【0088】
一例として、図9(1)から図9(3)を参照して、オンチップミニチュア電子源90は、
基板901と、
基板901の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層902であって、基板901と連通する複数の貫通孔9021が設置される抵抗スイッチング材料フィルム層902と、
抵抗スイッチング材料フィルム層902に位置する複数の電極対であって、各電極対が第1の電極9031と複数の第2の電極9032とを含み、各第2の電極9032が1つの貫通孔9021にそれぞれ対応し、各第2の電極9032が1つの貫通孔9021を介して基板901と接触して接続し、異なる第2の電極9032の間が互いに分離される、前記複数の電極対と、を含み、
第1の電極9031と各第2の電極9032との間にいずれもギャップ904が存在し、
各ギャップ904の下の抵抗スイッチング材料フィルム層902領域内にいずれもトンネル接合905が形成される。
【0089】
なお、基板901、抵抗スイッチング材料フィルム層902、第1の電極9031、及び第2の電極9032の材料は、実施例1による基板101、抵抗スイッチング材料フィルム層102、第1の電極1031、及び第2の電極1032の材料と同じであるため、簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0090】
また、本出願の実施例では、各ギャップ904の下の抵抗スイッチング材料フィルム層902領域に形成されるトンネル接合905の構成は、上記の実施例1におけるトンネル接合105と同じであるため、簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0091】
なお、貫通孔9021は、異なる形状に設置してもよい。例として、抵抗スイッチング材料フィルム層902に、互いに分離された複数の円形貫通孔9021が設置される。
【0092】
また、製造を容易にするために、本出願の実施例では、第1の電極9031は、抵抗スイッチング材料フィルム層902を覆う連続電極層であってもよく、各第2の電極9032は円形貫通孔9021の内壁を覆う電極アイランドであってもよく、当該電極アイランドと第1の電極9031との間に電気的遮蔽が存在する。
【0093】
貫通孔9021の形状は円形であるため、それに対応して、第1の電極9031と各第2の電極9032との間のギャップ904は、円形ギャップ904であってもよい。第2の電極9032は複数があるため、第1の電極9031と第2の電極9032との間に複数の電極対を含む電極対アレイを形成し、それに対応して、複数のギャップ904はギャップアレイを形成する。
【0094】
なお、本出願の実施例では、各ギャップ904の幅は、10μm以下であってもよい。
【0095】
また、複数の第2の電極9032では、各電極は円形貫通孔9021を介して基板901に接続されている。このようにして、オンチップミニチュア電子源が動作中に生成された熱は、第2の電極9032及び基板901を通じて放熱することができ、これにより、オンチップミニチュア電子源90の放熱能力を大幅に向上させて、同じ基板901に複数のオンチップミニチュア電子源を集積するのに有益である。
【0096】
なお、本出願の実施例によって提供されるオンチップミニチュア電子源90が動作する場合、第1の電極9031と各第2の電極9032との間に電圧を印加することができ、その結果、電子が各トンネル接合905から放出され、これにより、大きい放出電流を形成する。
【0097】
また、基板901が熱伝導性と導電性との両方を有する材料層である場合、各第2の電極9032が基板901と接触して接続しているので、本出願の別の例として、電圧を印加するプロセスを簡略化するために、第1の電極9031及び基板901に電圧V1を印加することができる。各第2の電極9032は基板901と接触して接続しているので、基板901に印加された電気信号は、各第2の電極9032に伝送され、これにより、各第2の電極9032の全てに電圧を印加するプロセスが不要となる。
【0098】
上記は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源におけるオンチップミニチュア電子源90の構造である。当該オンチップミニチュア電子源90に基づくオンチップミニチュアX線源の動作原理は実施例1の図1(1)及び1(2)に提供されるオンチップミニチュアX線源と同じである。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0099】
上記は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の他の実現方法である。当該実現方法では、オンチップミニチュア電子源90は、熱伝導性と導電性との両方を有する材料を基板901として選択し、各第2の電極9032は抵抗スイッチング材料フィルム層902における複数の貫通孔9021を介して基板901に接続される。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源90によって生成された熱は、第2の電極9032及び基板901を通じて放熱することができ、これにより、オンチップ電子源90の放熱能力を大幅に向上させ、同じ基板901に複数のオンチップミニチュア電子源を集積するのに有益である。当該オンチップミニチュア電子源90に基づくオンチップミニチュアX線源は、それに対応して、アノード92に衝撃するためのより多くの放出電子を得ることができ、これにより、X線源の放出線量を増加させる。
【0100】
なお、上記の実施例では、全ての電極対における第1の電極9031を共通電極として使用し、言い換えれば、当該第1の電極9031は全ての電極対の第1の電極として使用することができる。実際には、本出願の他の実施例として、各電極対の第1の電極は、互いに独立し得る。
【0101】
なお、上記の実施例2では、各電極対の第2の電極9032は、貫通孔9021を介して基板901に接続されて、オンチップミニチュア電子源の放熱を加速する。実際には、基板901が絶縁材料で作られる場合、第1の電極9031と第2の電極9032とは、それぞれ異なる貫通孔9021を介して基板901と接触して接続して、オンチップミニチュア電子源の放熱能力をさらに向上させる効果を達成する。
【0102】
上記の実施例2によるオンチップミニチュアX線源の実現方法に基づいて、それに対応して、本出願は当該オンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0103】
図10を参照して、実施例2によるオンチップミニチュアX線源の製造方法は、次のステップを含む。
【0104】
S101:オンチップミニチュア電子源90を製造する。
【0105】
オンチップミニチュア電子源90は、上記の図9(3)に提供されるオンチップミニチュア電子源90と同じ表面トンネル電子源を選択することができる。
【0106】
図11を参照して、当該オンチップミニチュア電子源90を製造するステップは、具体的に、次の通りであり得る。
【0107】
S1011:基板901を提供する。
【0108】
基板901材料は、上記の図9(3)に提供されるオンチップミニチュア電子源の基板901と同じ材料を選択することができる。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0109】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(1)に示す。
【0110】
S1012:基板901の一方の表面を覆う抵抗スイッチング材料フィルム層902を形成する。
【0111】
当該ステップの具体的な実現方法は、上記の実施例1におけるS512の具体的な実現方法と同じであるため、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。
【0112】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(2)に示す。
【0113】
S1013:抵抗スイッチング材料フィルム層902上に複数の貫通孔9021を形成する。
【0114】
貫通孔9021は、ドライエッチング又はウェットエッチングのプロセスによって形成される。一例として、ドライエッチングは、反応性ガスエッチング又はプラズマエッチングなどであり得る。
【0115】
ウェットエッチングを使用して抵抗スイッチング材料フィルム層902に貫通孔9021を形成する場合、当該ステップは、具体的に、抵抗スイッチング材料フィルム層902上に電子ビームフォトレジストをスピンコーティングし、電子ビームの露光、現像と定着、ウェットエッチング、脱接着などのプロセスステップを通じて、抵抗スイッチング材料フィルム層902上に複数の円形の貫通孔9021を形成することであり得る。
【0116】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(3)に示す。
【0117】
S1014:抵抗スイッチング材料フィルム層902の上に第1の電極9031及び複数の第2の電極9032を形成して、第1の電極9031と各第2の電極9032との間にいずれもギャップ904が存在し、各第2の電極9032は貫通孔9021を介して基板901に接続される。
【0118】
当該ステップは、具体的に、電子ビームフォトレジストのスピンコーティング、電子ビームの露光、現像と定着、金属膜堆積、ストリッピングなどのプロセスステップを含む一般的に使用される電極堆積プロセスを使用して、抵抗スイッチング材料フィルム層902と貫通孔9021の内壁に電極材料層を堆積して、第1の電極9031及び第2の電極9032を形成することであり得る。第1の電極9031は抵抗スイッチング材料フィルム層902を覆う電極層であり、各第2の電極9032は、1つの貫通孔9021及びその周りの抵抗スイッチング材料フィルム層902を覆う電極層であってもよい。
【0119】
また、抵抗スイッチング材料フィルム層902上に形成された複数の第2の電極9032のうち、各第2の電極は、円形貫通孔9021を介して基板901に接続されることで、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させ、同じ基板901に複数のオンチップミニチュア電子源を集積するのに有益である。
【0120】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(4)に示す。
【0121】
S1015:ギャップ904の下の抵抗スイッチング材料フィルム層902がソフトブレイクダウンされ、抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップ904の下の抵抗スイッチング材料フィルム層902の領域にトンネル接合905を形成する。
【0122】
当該ステップの具体的な実現方法は上記の実施例1におけるS514の具体的な実現方法と同じであり得る。簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。
【0123】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(5)に示す。
【0124】
これまでに、表面トンネル電子源が形成されている。当該表面トンネル電子源は、図9(3)に提供される表面トンネル電子源と同じ有益な効果を有する。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0125】
S102~S103はS52~S53と同じであるので、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S102を実行した後の対応する断面構造の概略図を図8に示し、S103を実行した後の対応する構成概略図を図9に示す。
【0126】
なお、本出願は、S101、S102の順序を限定しない。また、本出願では、S1015は、S103の前又は後に実行してもよく、本出願の実施例では限定されない。
【0127】
上記は、実施例2によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の他の具体的な実現方法である。当該方法によって製造されたオンチップミニチュアX線源は、図9(1)及び図9(2)に提供されるオンチップミニチュアX線源と同じ利点を有する。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0128】
上記は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュアX線源及びその製造方法の実現方法である。オンチップミニチュアX線源のデバイス全体の放熱能力をさらに向上させるために、アノード92及び基板901に放熱部品を形成してもよい。これに基づいて、本出願は、オンチップミニチュアX線源の他の実現方法を提供し、実施例3を参照してください。
(実施例3)
【0129】
なお、本出願の実施例3によるオンチップミニチュアX線源は、上記の実施例1又は実施例2に基づいて改善することができる。一例として、本出願の実施例3は、実施例2に基づいて改善されている。
【0130】
図13を参照して、オンチップミニチュアX線源であって、当該オンチップミニチュアX線源は、実施例2の全ての構成要素に加えて、
アノード92に位置する第1の放熱部品130と、
基板901の下に位置する第2の放熱部品131と、を含む。
【0131】
なお、第1の放熱部品130又は第2の放熱部品131は、良好な放熱能力を有するヒートシンク又は放熱フィンであってもよい。
【0132】
また、第1の放熱部品130とアノード92と、第2の放熱部品131と、基板901とは、全て密着されて、良好な熱接触を形成している。このようにして、オンチップミニチュアX線源が動作する場合、アノード92で生成された熱は、第1の放熱部品130を通過して迅速に放熱することができ、オンチップミニチュア電子源90で生成された熱は、順次に第2の電極9032、抵抗スイッチング材料フィルム層902、及び第2の放熱部品131を通過して効率的に放熱することができる。
【0133】
上記は、本出願の実施例3によるオンチップミニチュアX線源の実現方法である。当該実現方法では、オンチップミニチュアX線源は、実施例2によるオンチップミニチュアX線源に基づいて、アノード92上及び基板901の下に放熱部品をそれぞれ設置し、その結果、当該オンチップミニチュアX線源は、実施例2によるオンチップミニチュアX線源と同じ有益な効果を有し、オンチップミニチュアX線源のデバイス全体の放熱能力を大幅に向上させる。
【0134】
実施例3によるオンチップミニチュアX線源の他の実現方法に基づいて、それに対応して、本出願は当該オンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0135】
図14を参照して、実施例3によるオンチップミニチュアX線源の製造方法は、次のステップを含む。
【0136】
S141~S143はS101~S103と同じであるので、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S143を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図9(1)に示す。
【0137】
S144:アノード92上に第1の放熱部品130を形成する。
【0138】
第1の放熱部品130及びアノード92は、接着又は結合によって密着されて、良好な熱接触を形成している。
【0139】
第1の放熱部品130とアノード92との間の熱接触をより良く形成するために、一例として、当該ステップは、具体的に、熱伝導接着剤層によって第1の放熱部品130とアノード92とを接続して、第1の放熱部品130とアノード92とを密着させて、良好な熱接触を形成することであり得る。
【0140】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図15に示す。
【0141】
S145:基板901の下に第2の放熱部品131を形成する。
【0142】
第2の放熱部品131及び基板901は、S144と同じ接続方法を使用することができる。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0143】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図13に示す。
【0144】
なお、本出願は、S141とS142の順序を限定しなく、S144とS145の順序も限定しない。
【0145】
上記は、実施例3によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の他の具体的な実現方法である。当該方法によって製造されたオンチップミニチュアX線源は、図13に提供されるオンチップミニチュアX線源と同じ利点を有する。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0146】
上記は、本出願の実施例3によるさらに他のオンチップミニチュアX線源及びその製造方法の実現方法である。オンチップミニチュアX線源の検査品質を向上させるために、第1の絶縁スペーサー91とオンチップミニチュア電子源90との間に中空集束電極及び第2の絶縁スペーサーを形成してもよい。これに基づいて、本出願は、オンチップミニチュアX線源の他の実現方法を提供し、実施例4を参照してください。
(実施例4)
【0147】
なお、本出願の実施例4によるオンチップミニチュアX線源は、上記の実施例1から実施例3のいずれか1つによるオンチップミニチュアX線源に基づいて改善することができる。一例として、本出願の実施例4は実施例2に基づいて改善されている。
【0148】
図16を参照して、オンチップミニチュアX線源であって、当該オンチップミニチュアX線源は、実施例2の全ての構成要素に加えて、
第1の絶縁スペーサー91とオンチップミニチュア電子源90との間に位置する中空集束電極160を含み、
中空集束電極160は、オンチップミニチュア電子源90に近い側の表面に第2の絶縁スペーサー161が設置され、第2の絶縁スペーサー161は中空キャビティ構造である。
【0149】
なお、中空集束電極160は、良好な導電性を有する材料で作製することができ、例えば、金属材料で作製することができる。
【0150】
また、放出された電子の集束能力を高めるために、第1の絶縁スペーサー91とオンチップミニチュア電子源90との間に位置する中空集束電極160は、単層又は複数の層であり得る。
【0151】
また、第2の絶縁スペーサー161の材料は第1の絶縁スペーサー91の材料と同じであってもよく、第2の絶縁スペーサー161の厚さは第1の絶縁スペーサー91の厚さと同じであってもよい。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0152】
上記は、本出願の実施例によるオンチップミニチュアX線源の構成である。当該オンチップミニチュアX線源の動作原理は、次の通りである。
【0153】
第1の電極9031と基板901とに電圧V1を印加して、オンチップミニチュア電子源90に電子を放出させ、同時に、第1の電極9031とアノード92とに電圧V2を印加して、表面トンネル電子源から放出された電子を加速させ、高速でアノード92に衝突し、アノード92の内部で制動放射及び原子内部エネルギーレベルの遷移によりX線を生成し、X線はアノード92を透過し外部空間に放出し、第1の電極9031と中空集束電極160との間に電圧V3を印加して、オンチップ電子源90から放出された電子を集束させることができ、これにより、アノード92に衝突する電子ビームの面積及びX線の焦点サイズを縮小し、ひいては、オンチップX線源の検査品質の向上に役立つ。
【0154】
上記の実施例4によるオンチップミニチュアX線源の実現方法に基づいて、それに対応して、本出願は、当該オンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0155】
図17を参照して、実施例4によるオンチップミニチュアX線源の製造方法は、次のステップを含む。
【0156】
S171~S172は、S101~S102と同じである。簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。
【0157】
S171を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図9(3)に示し、S172を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図8に示す。
【0158】
S173:中空集束電極160を製造し、当該中空集束電極160の一方の表面に第2の絶縁スペーサー161が設置され、第2の絶縁スペーサー161が中空キャビティ構造である。
【0159】
当該ステップは、具体的に、0.1~20ミリメートルの厚さの絶縁層を選択し、本分野で一般的に使用される物理蒸着法、化学蒸着法、又はスピンコーティング法を使用して、まず、絶縁層の一方の表面に集束電極層を形成する。次に、ドライエッチング又はウェットエッチングのプロセスを使用して、集束電極層が露出するまで、集束電極層が設置されていない表面に絶縁層をエッチングして、中空集束電極160及び中空構造である絶縁スペーサー161を形成する。
【0160】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図18(1)に示す。
【0161】
S174:第2の絶縁スペーサー161をオンチップミニチュア電子源90の電子放出側に接続する。
【0162】
当該ステップの具体的な実現方法は、実施例1におけるS53の具体的な実現方法と同じである。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0163】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図18(2)に示す。
【0164】
S175:第1の絶縁スペーサー91をオンチップミニチュア電子源90の電子放出側に接続することで、オンチップミニチュア電子源90とアノード92との間に密閉真空キャビティが形成される。
【0165】
当該ステップは、具体的に、接着剤接着又は結合の方法によって、第1の絶縁スペーサー91を中空集束電極160の第2の絶縁スペーサー161から離れた側に接続することで、第1の絶縁スペーサー91と中空集束電極160との間を密接して、1つの密閉真空キャビティを形成することであり得る。
【0166】
当該ステップを実行した後の対応する構成概略図を、図16に示す。
【0167】
なお、本出願は、S171、S172及びS173の順序を限定しない。
【0168】
上記は、実施例4によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法である。当該方法によって製造されたオンチップミニチュアX線源は、図16によるオンチップミニチュアX線源と同じ利点を有する。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0169】
上記の実施例4は、オンチップミニチュアX線源の実現方法を示した。オンチップミニチュアX線源の性能を向上させるために、アノードを改良して、真空キャビティ内に吸気部品を配置してもよい。これに基づいて、本出願は、他のオンチップミニチュアX線源の製造方法の実現方法も提供し、実施例5を参照してください。
(実施例5)
【0170】
なお、本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源は、上記の実施例1から実施例4のいずれか1つによるオンチップミニチュアX線源に基づいて改善することができる。一例として、本出願の実施例5は、実施例4に基づいて改善されている。
【0171】
また、当該オンチップミニチュアX線源と実施例4によるオンチップミニチュアX線源とは同じ構成要素を有する。簡潔にするために、改善された部品のみを説明する。
【0172】
図19を参照して、オンチップミニチュアX線源であって、
オンチップミニチュア電子源90の電子放出側に位置する、キャビティ構造である第1の絶縁スペーサー190と、
第1の絶縁スペーサー190に位置するアノード191であって、ターゲット層1911と、ターゲット層1911を支持するための支持層1912とを含み、ターゲット層1911が電子衝撃に近い側に位置し、支持層1912が電子衝撃から遠い側に位置する、前記アノード191と、
密閉真空キャビティに位置する吸気部品192と、を含んでもよい。
【0173】
なお、第1の絶縁スペーサー190の材料及び厚さは、実施例4の図16に示す第1の絶縁スペーサー91の材料及び厚さと同じである。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0174】
また、ターゲット層1911は、重金属材料で作られる。一例として、前記重金属材料は、タングステン、モリブデン、金、銀、銅、クロム、ロジウム、アルミニウム、ニオブ、タンタル、及びレニウムから、少なくとも1つを選択することができる。支持層1912は、良好な熱伝導性を有する材料で作られる。一例として、支持層1912の材料は、アルミニウム又は銅であってもよい。当該ターゲット層1911及び当該支持層1912で構成されたアノード191は、アノード191の機械的強度及び熱伝導性を効果的に向上させることができる。
【0175】
また、この実施例によるオンチップミニチュアX線源は、中空集束電極160が設置され、電子が衝突するアノード191の面積を低減することができ、従って、アノード191におけるターゲット層1911の面積を、対応して低減することができる。
【0176】
また、密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するように、密閉真空キャビティ内のガスを吸収するために、信頼性の高いゲッターを吸気部品192として選択することができる。一例として、吸気部品192は、ジルコニウム-グラファイトゲッター、ジルコニウム-ジルコニウム-鉄-バナジウムゲッター、モリブデン-チタンゲッターから1つ又は複数のゲッターを選択することができる。
【0177】
なお、密閉真空キャビティに吸気部品192を配置するために、第2の絶縁スペーサー161に、吸気部品192を配置するための溝を設置してもよい。
【0178】
また、オンチップミニチュアX線源のデバイス全体の放熱能力を向上させるために、他の例として、本出願の実施例の図19に提供されるオンチップミニチュアX線源を改善することもできる。図20を参照して、アノード191上に第1の放熱部品200を形成し、基板901の下に第2の放熱部品201を形成することができる。
【0179】
なお、第1の放熱部品200及び第2の放熱部品201は、良好な放熱能力を有するヒートシンク又は放熱フィンであり得る。
【0180】
上記は、本出願の実施例5によるオンチップミニチュアX線源の実現方法であり、当該実現方法では、オンチップミニチュアX線源におけるアノード191はターゲット層1911と支持層1912で構成され、密閉真空キャビティ内に吸気部品192がさらに設置される。このようにして、アノード191の機械的強度及び熱伝導性を効果的に向上させ、密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持することができ、これにより、オンチップミニチュアX線源の性能を大幅に向上させる。
【0181】
実施例5によるオンチップミニチュアX線源の他の実現方法に基づいて、それに対応して、本出願は、当該オンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法を提供する。
【0182】
図21を参照して、実施例5によるオンチップミニチュアX線源の製造方法は、次のステップを含む。
【0183】
S211はS171と同じであるため、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S211を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図12(5)に示す。
【0184】
S212:アノード191を製造し、当該アノード191の一方の表面に第1の絶縁スペーサー190が設置され、第1の絶縁スペーサー190はキャビティ構造である。
【0185】
なお、アノード191は、ターゲット層1911と、ターゲット層1911を支持するための支持層1912とを含む。
【0186】
当該ステップは、具体的に、0.1~20ミリメートルの厚さの絶縁スペーサーを選択し、本分野で一般的に使用される物理蒸着法、化学蒸着法、又はスピンコーティング法を使用して、まず、絶縁スペーサーの一方の表面の中央領域に重金属材料の層を覆い、当該重金属材料層がターゲット層1911として使用される。次に、物理蒸着法、化学蒸着法、又はスピンコーティング法を使用して、ターゲット層1911にターゲット層1911及び絶縁スペーサーを覆う熱伝導性材料の層を堆積し、当該熱伝導性材料層が支持層1912として使用される。最後に、ドライエッチング又はウェットエッチングのプロセスを使用して、絶縁スペーサーのアノード191を覆う表面の反対側の表面からエッチングを開始し、ターゲット層1911まで、エッチングを停止する。絶縁スペーサーは、上から下に徐々に収縮する中空構造キャビティにエッチングされ、絶縁スペーサーの反対側のターゲット層1911の表面は完全に露出することができ、第1の絶縁スペーサー190を形成する。
【0187】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図22(1)に示す。
【0188】
S213~S214はS173~S174と同じである。簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S213を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図18(1)に示し、S214を実行した後の対応する断面構造の概略図を、図18(2)に示す。
【0189】
S215:形成されようとする密閉真空キャビティに吸気部品192を配置し、当該吸気部品192は、密閉真空キャビティ内のガスを吸收して、密閉真空キャビティ内の真空を調整又は維持するために使用される。
【0190】
当該ステップは、具体的に、ドライエッチングプロセスを使用して、第2の絶縁スペーサー161の側壁に少なくとも1つの溝をエッチングし、吸気部品192を溝に配置することであり得る。
【0191】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図22(2)に示す。
【0192】
S216はS175と同じである。簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、図19に示す。
【0193】
上記は、実施例5によるオンチップミニチュアX線源の製造方法の具体的な実現方法である。当該方法によって製造されたオンチップミニチュアX線源は、図19に提供されるオンチップミニチュアX線源と同じ利点を有する。簡潔にするために、ここで繰り返さない。
【0194】
なお、本出願は、S211、S212及びS213の順序を限定しない。
【0195】
上記は、本出願の好ましい実施形態にすぎない。本出願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、本出願を限定することを意図するものではない。当業者は、本出願の技術案の範囲から逸脱することなく、上記に開示された方法及び技術的内容を使用して、本出願の技術案に多くの可能な変更及び修正を加えるか、又は同等の変更を加えた等価実施例に変更することができる。従って、本出願の技術案の内容から逸脱することなく、本出願の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えた任意の簡単な変更、同等の変更及び修正は全て、本出願の技術案の保護範囲に含まれる。
図1(1)】
図1(2)】
図1(3)】
図2(1)】
図2(2)】
図3
図4
図5
図6
図7(1)】
図7(2)】
図7(3)】
図7(4)】
図8
図9(1)】
図9(2)】
図9(3)】
図10
図11
図12(1)】
図12(2)】
図12(3)】
図12(4)】
図12(5)】
図13
図14
図15
図16
図17
図18(1)】
図18(2)】
図19
図20
図21
図22(1)】
図22(2)】