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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】建築物設計装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230616BHJP
【FI】
G06F30/13
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023062952
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521034074
【氏名又は名称】兼希工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】細渕 敦
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-202550(JP,A)
【文献】特開2019-168838(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105447776(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0131642(KR,A)
【文献】韓国特許第10-2129133(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1641471(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、前記種別情報に対応付けられ、前記構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶された記憶部と、
前記構造部材の前記種別情報と寸法情報とを含む構造計算に必要な計算情報の入力を受付可能にする入力受付部と、
前記入力受付部に入力された前記計算情報に基づいて前記構造計算を実行する構造計算実行部と、
前記入力受付部に入力された前記構造部材の前記種別情報及び前記寸法情報と、前記記憶部に記憶された前記構造部材の前記種別情報及び前記単位排出量情報とに基づいて、前記構造部材毎に前記温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、前記建築物の温室効果ガスの排出量を求める排出量算出部と、
前記構造計算実行部において実行された前記構造計算の実行結果と、前記排出量算出部において求めた前記建築物の温室効果ガスの前記排出量とを、表示させるように制御する表示制御部と
を備える、建築物設計装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記排出量算出部において求めた前記構造部材毎の前記温室効果ガスの排出量と、前記記憶部に記憶された前記構造部材の前記種別情報及び前記単位排出量情報とを、表示させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の建築物設計装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記種別情報に対応付けられ、前記構造部材の単位寸法当たりの単価を示す単価情報がさらに記憶されており、
前記入力受付部に入力された前記種別情報及び前記寸法情報と、前記記憶部に記憶された前記種別情報及び前記単価情報とに基づいて、前記構造部材毎に費用を求め、これら費用を合計することにより、前記建築物の費用を求める費用算出部を有しており、
前記表示制御部は、前記費用算出部において求めた前記構造部材毎の費用及び前記建築物の費用と、前記記憶部に記憶された前記構造部材の前記単価情報とを、表示させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の建築物設計装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、表示内容を変更する前の表示内容と、変更した後の表示内容とを並列表示させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の建築物設計装置。
【請求項5】
前記記憶部には、構造耐力上主要な部分でない非構造部材の種別情報と、前記種別情報に対応付けられ、前記非構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とがさらに記憶され、
前記入力受付部は、前記非構造部材の前記種別情報と寸法情報との入力をさらに受付可能にし、
前記排出量算出部は、前記入力受付部に入力された前記非構造部材の前記種別情報及び前記寸法情報と、前記記憶部に記憶された前記非構造部材の前記種別情報及び前記単位排出量情報とに基づいて、前記非構造部材毎に前記温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量と前記建築物の排出量との合計値を総排出量とし、
前記表示制御部は、前記排出量算出部において求めた前記総排出量を、示させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の建築物設計装置。
【請求項6】
建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、前記種別情報に対応付けられ、前記構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶されたコンピュータに、
前記構造部材の前記種別情報と寸法情報とを含む構造計算に必要な計算情報の入力を受付可能にする入力受付ステップと、
前記入力受付ステップにより入力された前記計算情報に基づいて前記構造計算を実行する構造計算実行ステップと、
前記入力受付ステップにより入力された前記種別情報及び前記寸法情報と、前記種別情報及び前記単位排出量情報とに基づいて、前記構造部材毎に前記温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、前記建築物の温室効果ガスの排出量を求める排出量算出ステップと、
前記構造計算実行ステップにおいて実行された前記構造計算の実行結果と、前記排出量算出ステップにおいて求めた前記建築物の温室効果ガスの前記排出量とを、表示させるように制御する表示制御ステップと
を実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物設計装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化による気候変動を抑えるため、温室効果ガスの排出量を削減することが世界的に求められている。そこで、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量であるサプライチェーン排出量を削減することが求められている。サプライチェーン排出量には、事業者自らの燃料の燃焼や工業プロセスに伴う温室効果ガスの排出(直接排出)について取り組むScope1排出量と、他社から供給された電気・熱・蒸気などのエネルギー使用に伴う温室効果ガスの排出(間接排出)について取り組むScope2排出量と、事業者の活動に関連するその他の温室効果ガスの排出(Scope1、2以外の間接排出)について取り組むScope3排出量とが含まれる。
【0003】
建築の分野においても、温室効果ガスの排出量を削減するため、建設の段階で排出される温室効果ガスの排出量を客観的に評価して、その削減に結び付けていく取り組みがなされている。例えば特許文献1には、水処理施設の建設に用いられた建設資材や建設エネルギーの使用量に基づいて、水処理施設の建設段階における二酸化炭素の排出量を算出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-126843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築の分野においては、BIM (Building Information Modeling)のシミュレーションにおいて構造計算が行われる場合のように、建築物の構造的安全性や耐震性の評価と、必要な訂正や改善策の検討との繰り返しにより設計を短期間で完了できることが望まれている。また、近い将来において、炭素に価格を付けるカーボンプライシングに例示されるように温室効果ガスの排出量に対して金銭的な価値が発生する可能性が高いことから、温室効果ガスの排出量を高精度に求めることが望まれている。即ち、近年における建築の分野においては、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供できることが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、構造計算とは別に、二酸化炭素の排出量を算出する必要があるため、短期間で設計を完了することが困難である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備える。
【0009】
建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、前記種別情報に対応付けられ、前記構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶された記憶部と、
前記構造部材の前記種別情報と寸法情報とを含む前記構造計算に必要な計算情報の入力を受付可能にする入力受付部と、
前記入力受付部に入力された前記計算情報に基づいて前記構造計算を実行する構造計算実行部と、
前記入力受付部に入力された前記構造部材の前記種別情報及び前記寸法情報と、前記記憶部に記憶された前記構造部材の前記種別情報及び前記単位排出量情報とに基づいて、前記構造部材毎に前記温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、前記建築物の温室効果ガスの排出量を求める排出量算出部と、
前記構造計算実行部において実行された前記構造計算の実行結果と、前記排出量算出部において求めた前記建築物の温室効果ガスの前記排出量とを、表示させるように制御する表示制御部と
を備える、建築物設計装置。
【0010】
上記の構成によれば、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の建築物設計装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、排出量計算用データテーブルの記録内容を示す説明図である。
図3図3は、表示装置の表示内容を示す説明図である。
図4図4は、建築物設計プログラムのフローチャートである。
図5図5は、本実施形態の変形例であり、建築物設計装置及び建築物設計サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
【0014】
(建築物設計装置1)
図1に示すように、本実施形態に係る建築物設計装置1は、建築物の構造計算を行うと共に、建築物の温室効果ガスの排出量を求めるように構成されている。具体的な一例を示すと、建築物設計装置1は、建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、種別情報に対応付けられ、構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶された記憶部12を有している。
【0015】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)やハードディスクにより構成されている。また、記憶部12は、建築物設計装置1に備えられた通信部13及びインターネット等の情報通信網2を介して構造部材製造会社A31や構造部材製造会社B32、構造部材製造会社C33、構造部材販売会社34にデータ通信可能に接続されている。各会社A31~C33・34は、記憶部12に記憶された構造部材の種別情報や単位排出量情報等の各種の情報を更新するとともに、情報を記憶部12に記憶させる手段を備えている。尚、記憶部12は、建築物設計装置1とは別に、情報通信網2に接続された図5のデータサーバ6であってもよい。
【0016】
ここで、「建築物」は、橋や劇場、スポーツ施設、空港ターミナル、ホテル、オフィスビル、公共施設(図書館、病院、学校等)、商業施設(ショッピングモール、スーパーマーケット等)、工場、2階建てや3階建ての住宅が挙げられる。「構造計算」は、許容応力度計算、許容応力度等計算、保有水平耐力計算、その他(限界耐力計算・時刻歴応答解析)により精密に建物の強さを算出する処理である。「温室効果ガス」は、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体のことであり、水蒸気や二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン等が例示される。
【0017】
「構造耐力上主要な部分」は、建築基準法施行令第一条第1項三号において定義されており、建築物を自重や荷重、地震等の外力から支えている建築物の構造上重要な部分である。「構造部材」は、基礎や基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材が例示される。尚、「非構造部材」は、建築物に用いられる構造部材以外の部材であり、例えば、天井材や床材、間仕切り壁、外壁等が例示される。さらに、非構造部材は、設備機器や家具等も含まれる。
【0018】
「種別情報」は、構造部材及び非構造部材の内容及び種類を特定するための情報であり、製造会社や販売会社により定められた品番が該当する。例えば、長尺の構造部材や非構造部材の場合は、厚みや幅、出荷段階の定型の長さ、材質等を識別する情報として用いられる。「製造に起因して排出」は、構造部材や非構造部材を製造する段階で温室効果ガスが排出されることである。例えば、構造部材や非構造部材の製造プロセスに含まれる原材料の準備工程や加工工程、成型工程等の各種工程において温室効果ガスが排出されることを意味する。
【0019】
「単位寸法当たりの排出量」は、長手方向に不定形な構造部材や非構造部材においては長手方向の長さ(例えば、10mmや10cm)を単位とした温室効果ガスの排出量である。尚、識別情報により厚みや幅、材質が特定されているため、長手方向の寸法だけで温室効果ガスの排出量を求めることができる。また、平面的に不定形な構造部材や非構造部材においては、幅及び長さを単位とした温室効果ガスの排出量である。立体的に不定形な構造部材や非構造部材においては、厚み、幅及び長さを単位とした温室効果ガスの排出量である。さらに、非構造部材の設備機器や家具のように、出荷段階の形態を維持した状態で取り扱われる部材の場合は、1個や1台等の個数を単位とした温室効果ガスの排出量が「単位寸法当たりの排出量」となる。即ち、「単位寸法」とは、構造部材や非構造部材が線状の場合は長手方向の寸法を意味し、面状の場合は長さ及び幅の寸法を意味し、立体状の場合は厚み、幅及び長さの寸法を意味し、さらに、出荷段階の形態を維持した状態で取り扱われる部材の場合は個数を意味する。
【0020】
また、建築物設計装置1は、構造部材の種別情報と寸法情報とを含む構造計算に必要な計算情報の入力を受付可能にする入力受付部115と、入力受付部115に入力された計算情報に基づいて構造計算を実行する構造計算実行部111と、入力受付部115に入力された構造部材の種別情報及び寸法情報と、記憶部12に記憶された構造部材の種別情報及び単位排出量情報とに基づいて、構造部材毎に温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、建築物の温室効果ガスの排出量を求める排出量算出部112と、構造計算実行部111において実行された構造計算の実行結果と、排出量算出部112において求めた建築物の温室効果ガスの排出量とを、表示させるように制御する表示制御部114とを備えている。
【0021】
上記の構成によれば、構造部材の種別情報と寸法情報とを含む計算情報により構造計算を実行し、構造計算で用いた計算情報と記憶部12の単位排出量情報とを用いることによって、ほぼ同じタイミングで温室効果ガスの排出量を高精度に求めることができる。これにより、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供することが可能になっている。
【0022】
さらに、建築物設計装置1は、入力受付部115に接続された入力装置14と、表示制御部114に接続された表示装置15とを有している。入力装置14は、キーボードやマウス、タッチパネル、音声入力装置等が例示される。表示装置15は、液晶表示装置等が例示される。これにより、建築物設計装置1は、一般的なパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置により構成することが可能になっている。尚、建築物設計装置1は、入力装置14及び表示装置15の少なくとも一つが欠如されていてもよく、この場合は、入力装置14及び表示装置15が図示しない外部端末に備えられている。
【0023】
(排出量計算用データテーブル121)
記憶部12は、単位排出量情報等の情報(データ)を排出量計算用データテーブル121の対応形態で記憶している。具体例を示すと、図2に示すように、排出量計算用データテーブル121は、構造部材/非構造部材項目と種別項目と温室効果ガス項目と単位排出量項目と単価項目とをそれぞれ対応付けて有している。構造部材/非構造部材項目のデータ領域は、構造部材及び非構造部材の何れかの名称データが記憶される。例えば、梁や柱等の構造部材の名称データが記憶されたり、天井材等の非構造部材の名称データが記憶される。
【0024】
種別項目のデータ領域は、構造部材や非構造部材を製造や販売した会社の識別情報が記憶される。例えば、構造部材製造会社A31の場合は、A001の識別情報が割り当てられる。構造部材販売会社34の場合は、B002の識別情報が割り当てられる。温室効果ガス項目のデータ領域は、温室効果ガスの種類データが記憶される。例えば、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素等の種類データが記憶される。単位排出量項目のデータ領域は、構造部材や非構造部材の単位寸法当たりの排出量として2.34(Kg)や2.56(Kg)等の単位排出量データが記憶される。単価項目のデータ領域は、構造部材や非構造部材の単位寸法当たりの単価として3200円や4200円等の単価データが記憶される。
【0025】
これにより、排出量計算用データテーブル121は、例えば、種別項目として梁を指定した場合、この梁に対応した全ての種別や温室効果ガス、単位排出量、単価を記憶部12から読み出すことが可能になる。さらに、梁に加えて温室効果ガスとして二酸化炭素を指定した場合は、梁と二酸化炭素とに対応したデータを読み出すことができる。即ち、排出量計算用データテーブル121は、指定した項目に対応したデータに絞り込むことを可能にしている。これにより、例えば、温室効果ガスの排出量と構造部材の単価との関係から、建築物の設計仕様に最適な構造部材を多種多様な構造部材の中から絞り込んだ後に選択することが可能になっている。
【0026】
(表示装置15の表示例)
図3に示すように、表示装置15は、図面表示部151と情報表示部152と部材選択部153とを表示ウインドウとして表示可能になっている。尚、各部151・152・153の表示は、表示制御部114のビデオRAMに格納されたデータを用いて行われる。図面表示部151は、間取り図等の意匠図や構造図を表示する領域である。情報表示部152は、構造計算表示部1521と温室効果ガス表示部1522と詳細表示部1523と費用表示部1524とを有している。
【0027】
構造計算表示部1521は、構造計算の実行結果を表示する領域である。温室効果ガス表示部1522は、温室効果ガスの排出量を表示する領域である。これにより、情報表示部152は、構造計算表示部1521において構造計算の実行結果を設計者に提供すると同時に、温室効果ガス表示部1522において温室効果ガスの排出量を設計者に提供することを可能にしている。また、詳細表示部1523は、構造部材毎の温室効果ガスの排出量と、構造部材の種別情報及び単位排出量情報とを表示する領域である。費用表示部1524は、構造部材や非構造部材の費用を表示する領域である。
【0028】
部材選択部153は、図2の排出量計算用データテーブル121の一部又は全部のデータを表示する領域である。部材選択部153において一部のデータが表示される場合は、上下方向や左右方向にスクロール可能にされている。尚、表示装置15は、図面表示部151の図面を目視しながら図面の各部を指定できるように、タッチパネルを備えていることが好ましい。また、表示装置15は、図面表示部151に表示された図面の所定部位を指定したときに、指定した部位に対応する構造部材や非構造部材の詳細情報を部材選択部153において強調表示することが好ましい。例えば、図面表示部151に表示された間取り図の梁をタッチした場合は、タッチした箇所の梁が赤色等の指定色に変更され、部材選択部153において梁に対応した情報が強調表示されることが好ましい。また、部材選択部153における構造部材や非構造部材の選択についても、選択した構造部材や非構造部材に対応する情報が強調表示されることが好ましい。強調表示の態様としては、対応する全ての情報を選択枠1531・1532で囲む手段や背景色を変更する手段が例示される。
【0029】
以上の建築物設計装置1は、さらに、以下の構成1~4を備えていてもよい。
【0030】
(構成1)
建築物設計装置1における表示制御部114は、排出量算出部112において求めた構造部材毎の温室効果ガスの排出量と、記憶部12に記憶された構造部材の種別情報及び単位排出量情報とを、表示装置15の詳細表示部1523に表示させるように制御する構成を備えていてもよい。この場合は、構造部材毎の温室効果ガスの排出量と、記憶部12に記憶された構造部材の種別情報及び単位排出量情報とを表示装置15に表示させることによって、表示装置15に表示された構造部材の種別情報の少なくとも一部を他の種別情報に変更するときの温室効果ガスの排出量の変化を設計者に意識させることができる。
【0031】
(構成2)
建築物設計装置1は、建築物の費用を求める構成を備えていてもよい。具体的に説明すると、建築物設計装置1において、記憶部12には、種別情報に対応付けられ、構造部材の単位寸法当たりの単価を示す単価情報がさらに記憶されており、入力受付部115に入力された種別情報及び寸法情報と、記憶部12に記憶された種別情報及び単価情報とに基づいて、構造部材毎に費用を求め、これら費用を合計することにより、建築物の費用を求める費用算出部113を有している。そして、表示制御部114は、費用算出部113において求めた構造部材毎の費用及び建築物の費用と、記憶部12に記憶された構造部材の単価情報とを、表示装置15の費用表示部1524に表示させるように制御する。
【0032】
上記の構成によれば、さらに構造部材毎の費用及び建築物の費用と、記憶部12に記憶された構造部材の単価情報とを表示装置15に表示させることによって、表示装置15に表示された構造部材の種別情報の少なくとも一部を他の種別情報に変更するときの費用の変化と温室効果ガスの排出量の変化とを設計者に意識させることができる。
【0033】
(構成3)
建築物設計装置1において、表示制御部114は、表示装置15の表示内容を変更する前の表示内容と、変更した後の表示内容とを並列表示させるように制御する構成を備えていてもよい。具体的には、表示内容の変更後の情報表示部152Aと、表示内容の変更前の情報表示部152Bとが並列配置されていてもよい。上記の構成によれば、変更する前の表示内容と、変更した後の表示内容とを表示装置15に並列表示させることによって、表示内容の変化を設計者に容易に認識させることができる。尚、情報表示部152Aと情報表示部152Bとは、3回以上前の変更についても変更前の内容と変更後の内容とを比較することができるように、左右方向に横スクロール可能にされていることが好ましい。
【0034】
(構成4)
建築物設計装置1において、構造部材と非構造部材とを含めた建築物の温室効果ガスの総排出量を求める構成を備えていてもよい。具体的には、記憶部12には、構造耐力上主要な部分でない非構造部材の種別情報と、種別情報に対応付けられ、非構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とがさらに記憶されている。入力受付部115は、非構造部材の種別情報と寸法情報との入力をさらに受付可能にしている。排出量算出部112は、入力受付部115に入力された非構造部材の種別情報及び寸法情報と、記憶部12に記憶された非構造部材の種別情報及び単位排出量情報とに基づいて、非構造部材毎に温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量と建築物の排出量との合計値を総排出量とする。表示制御部114は、排出量算出部112において求めた総排出量を、表示装置15の温室効果ガス表示部1522に表示させるように制御する。
【0035】
上記の構成によれば、構造計算の実行結果とともに非構造部材を含めた建築物の温室効果ガスの総排出量を高精度に求めて設計者に提供することができる。
【0036】
(制御部11:建築物設計プログラム)
図1に示すように、建築物設計装置1における構造計算実行部111、排出量算出部112、費用算出部113、表示制御部114、及び入力受付部115は、ハードウェア及びソフトウェアの何れで構成されていてもよい。これらの各部112~115は、少なくとも制御部11の一部を構成している。各部112~115がソフトウェアにより構成されている場合は、制御部11であるコンピュータに、建築物の構造計算を行うと共に、建築物の温室効果ガスの排出量を求める建築物設計プログラムを実行させるようになっている。
【0037】
図4を用いて具体的に説明すると、建築物設計プログラムは、建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、種別情報に対応付けられ、構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶されたコンピュータに、入力受付ステップS1と、構造計算実行ステップS2と、排出量算出ステップS3と、表示制御ステップS4とを実行させる。
【0038】
入力受付ステップS1は、構造部材の種別情報と寸法情報とを含む構造計算に必要な計算情報の入力を受付可能にする処理である。構造計算実行ステップS2は、入力受付ステップS1により入力された計算情報に基づいて構造計算を実行する処理である。排出量算出ステップS3は、入力受付ステップS1により入力された種別情報及び寸法情報と、種別情報及び単位排出量情報とに基づいて、構造部材毎に温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、建築物の温室効果ガスの排出量を求める処理である。表示制御ステップS4は、構造計算実行ステップS2において実行された構造計算の実行結果と、排出量算出ステップS3において求めた建築物の温室効果ガスの排出量とを、表示させるように制御する処理である。
【0039】
上記のプログラムによれば、構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供することができる。さらに、プログラムをパーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置にインストールするだけの作業で、情報処理装置を建築物設計装置1として機能させることができる。尚、プログラムは、CDROMやUSBメモリ等の記録媒体に記録された状態で配布されてもよいし、インターネット等の双方向やテレビ放送等の一方向の通信網や通信回線を介して配付されてもよい。
【0040】
(建築物設計方法)
建築物設計プログラムにおける一部や全部のステップがハードウェアにより構成されていてもよい。即ち、建築物設計装置1は、建築物設計方法を実行可能に構成されていればよい。具体的に説明すると、建築物設計方法は、建築物において構造耐力上主要な部分である構造部材の種別情報と、種別情報に対応付けられ、構造部材の製造に起因して排出された温室効果ガスの単位寸法当たりの排出量を示す単位排出量情報とが記憶部12に記憶された建築物設計装置1において実行されるものであり、入力受付ステップS1と、構造計算実行ステップS2と、排出量算出ステップS3と、表示制御ステップS4とを有している。
【0041】
(変形例)
以上の説明においては、建築物設計装置1が表示装置15と入力装置14とを備えた構成について説明したが、これに限定されるものではない。即ち、図5に示すように、建築物設計装置1の機能を備えた建築物設計サーバ4と、表示装置15及び入力装置14を備えた端末装置5とが有線や無線によりデータ通信可能に接続された構成にされていてもよい。また、建築物設計装置1が建築物設計サーバ4として使用され、端末装置5に対して有線や無線によりデータ通信可能に接続されていてもよい。建築物設計サーバ4は、記憶部12と通信部13と制御部11とを有している。制御部11は、入力受付部115の処理と、構造計算実行部111の処理と、排出量算出部112の処理と、表示制御部114の処理と、費用算出部113の処理とを実行する構成にされている。端末装置5は、一般的な据置型の情報処理装置、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末装置が例示される。
【0042】
また、建築物設計サーバ4の記憶部12とは別に、排出量計算用データテーブル121の情報を記憶したデータサーバ6が設けられていてもよい。データサーバ6は、建築物設計サーバ4や構造部材製造会社A31~33等に対して有線や無線によりデータ通信可能に接続されている。データサーバ6は、建築物設計サーバ4の記憶部12や建築物設計装置1の記憶部12よりも大きな記憶容量を有し、排出量計算用データテーブル121の情報の更新処理や記憶処理を実行するように構成されている。
【0043】
これにより、多くの会社31~33・34により情報の更新が頻繁にある場合であっても、データサーバ6が更新処理を実行するため、建築物設計サーバ4及び建築物設計装置1における計算処理の低下が防止される。そして、データサーバ6が排出量計算用データテーブル121等の全ての情報を記憶し、建築物設計サーバ4及び建築物設計装置1が使用頻度の高い情報や処理に必要な情報をデータサーバ6から適宜に読み出すことによって、構造計算、排出量の算出、及び費用の算出処理及び更新処理が短時間で実行され、実行結果が端末装置5及び建築物設計装置1において表示される。
【0044】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 建築物設計装置
11 制御部
111 構造計算実行部
112 排出量算出部
113 費用算出部
114 表示制御部
115 入力受付部
12 記憶部
121 排出量計算用データテーブル
13 通信部
14 入力装置
15 表示装置
2 情報通信網
4 建築物設計サーバ
5 端末装置
6 データサーバ

【要約】
【課題】構造計算の実行結果とともに建築物の温室効果ガスの排出量を高精度に求めて設計者に提供する。
【解決手段】本発明の建築物設計装置1は、入力受付部115に入力された計算情報に基づいて構造計算を実行する構造計算実行部111と、入力受付部115に入力された構造部材の種別情報及び寸法情報と、記憶部12に記憶された構造部材の種別情報及び単位排出量情報とに基づいて、構造部材毎に温室効果ガスの排出量を求め、これら排出量を合計することにより、建築物の温室効果ガスの排出量を求める排出量算出部112と、構造計算実行部111において実行された構造計算の実行結果と、排出量算出部112において求めた建築物の温室効果ガスの排出量とを、表示させるように制御する表示制御部114とを備えている。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5