(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】車両用構造部材
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20230616BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20230616BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20230616BHJP
B62D 25/06 20060101ALI20230616BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B60R19/04 M
B62D25/04 A
B62D25/04 B
B62D25/06 A
B62D25/20 C
B62D25/20 F
B62D25/20 G
B62D25/20 H
(21)【出願番号】P 2017039649
(22)【出願日】2017-03-02
【審査請求日】2019-11-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2016041256
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 智史
(72)【発明者】
【氏名】中澤 嘉明
【合議体】
【審判長】中村 則夫
【審判官】藤井 昇
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-88740(JP,A)
【文献】実開昭50-68413(JP,U)
【文献】特開2010-208409(JP,A)
【文献】特開平9-315344(JP,A)
【文献】特開2004-83931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D17/00-25/08
B62D25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる底壁部と、前記底壁部の両端から起立した一対の側壁部と、前記底壁部に対向する天壁部とを有し、前記底壁部、前記一対の側壁部および前記天壁部により閉断面を形成する中空部材と、
前記中空部材の内側に設けられ、前記一対の側壁部の並び方向の両端が前記一対の側壁部に固定されている主補強部材と、
前記長手方向の前記中空部材と前記主補強部材とが対向する領域の一部において、前記中空部材または前記主補強部材の少なくともいずれかに設けられる曲げ誘起部と、
前記長手方向の前記曲げ誘起部が設けられた領域を含む前記長手方向の部分において、前記主補強部材に密着して配置され、前記主補強部材と、前記底壁部または前記天壁部のうち一方とを連結し、さらに、前記主補強部材および前記側壁部に連続して密着して配置される、副補強部材と、
を備え、
前記副補強部材は充填部材であり、
前記副補強部材として、前記主補強部材の前記長手方向の一端において前記主補強部材と前記天壁部とを連結する第1副補強部材と、前記主補強部材の前記長手方向の他端において前記主補強部材と前記底壁部とを連結する第2副補強部材とを備えている、車両用構造部材。
【請求項2】
前記副補強部材は、前記天壁部および前記側壁部に連続して密着して配置される、請求項1に記載の車両用構造部材。
【請求項3】
前記副補強部材の内部に空洞が設けられる、請求項1または2に記載の車両用構造部材。
【請求項4】
前記曲げ誘起部は、前記中空部材の断面の重心により形成される前記長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分である、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項5】
前記曲げ誘起部は、前記副補強部材を除く前記車両用構造部材の断面の重心により形成される前記長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分である、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項6】
前記曲げ誘起部は、前記中空部材の断面係数が前記長手方向で変化する部分を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項7】
前記曲げ誘起部は、前記副補強部材を除く前記車両用構造部材の断面係数が前記長手方向で変化する部分を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項8】
前記曲げ誘起部は、凹部、凸部、穴部、板厚変化部または薄肉部の少なくともいずれかが設けられた部分を含む、請求項6または7に記載の車両用構造部材。
【請求項9】
前記凹部、前記凸部または前記板厚変化部の少なくともいずれかが、前記中空部材の前記長手方向に沿って、複数並設される、請求項8に記載の車両用構造部材。
【請求項10】
前記曲げ誘起部は、前記中空部材または前記主補強部材の少なくともいずれかの降伏強度が前記長手方向で変化する部分を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項11】
前記主補強部材のヤング率は前記副補強部材のヤング率以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項12】
前記主補強部材は鋼板により形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項13】
前記主補強部材の板厚は2.3mm以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項14】
前記中空部材を形成する金属板の板厚は2.3mm以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【請求項15】
前記車両用構造部材は、フロントサイドメンバ、リアサイドメンバ、クラッシュボックス、ピラー、フロアレインフォースメント、フロアクロスメンバ、バンパーレインフォースメント、サイドシル、ルーフサイドレール、ルーフセンターレインフォースメントまたはトンネルの少なくともいずれかを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の車両用構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車の燃費改善が要求されている。その一方で、車両の衝突安全性の維持または向上が要求されている。これらの要求を満足するために、高強度かつ軽量な車体構造の開発が進められている。
【0003】
上述した要求を満たすための車体構造を実現するために、車両用構造部材であるフレームの強度を向上させて当該フレームの変形を抑制するための技術の開発が進められている。例えば、レインフォースメント等の補強部材がフレームの内側に設けられることがある。さらに、発泡樹脂材等により形成される充填部材が、フレームとレインフォースメントとの間に充填されることがある。
【0004】
より具体的には、下記特許文献1には、フレームを形成する金属要素と、当該金属要素の各側面に接合するレインフォースメントとの間の空間に充填部材が充填される技術について開示されている。下記特許文献2には、フレーム内側に設けられるレインフォースメントと当該フレームとの間に充填部材が充填される技術について開示されている。このような技術により、フレームの強度を向上させ、より剛性の高いフレームを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-523269号公報
【文献】特開2002-173049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のフレームを従来よりも高強度である金属板(鋼板(高強度鋼板)、またはアルミ板等)により形成する場合、変形ストロークおよび衝撃吸収エネルギ等により示される衝突安全性能が従来の金属板により形成されたフレームと同等の性能となるように、高強度金属板の板厚が設定される。この場合板厚は、従来の金属板の板厚よりも薄く設定される。以降、金属板を金属板の代表的な素材である鋼板と記載する。
【0007】
しかし、車両衝突時において薄肉化されたフレームに曲げが生じた場合、当該フレームが面外変形し易くなることにより、フレームについて想定されていた衝突安全性能を確保できなくなる可能性があることを本発明者らは見出した。まず、フレームの板厚が従来よりも小さくなると、フレームの曲げ剛性が低下し、衝突荷重により当該フレームに高い応力が生じやすくなる。すると、当該フレームの曲げ変形時において、当該フレームを構成する各壁面において面外変形が生じやすくなる。
【0008】
図45は、薄肉化されたフレーム100の断面形状の変化の一例を示す断面図である。
図45に示すように、フレーム100において曲げが生じると、底壁部100aが面外方向に膨らみ、かつ、側壁部100bが断面内方へ倒れ込む(断面形状101)。さらに折れ曲げが進展すると、側壁部100bの断面内方への倒れ込みがさらに進むので、フレーム100の断面形状102が、当初の断面形状から大幅に変形してしまう。この断面変形により、フレーム断面により行われる仕事により発揮される衝突安全性能が設計段階よりも低くなるため、当該フレームが従来有する衝突安全性能が低減してしまう。そのため、単にフレームを形成する高強度鋼板を用いて薄肉化することにより車体の軽量化を図るだけでは、想定されていた衝突安全性能を確保できない可能性がある。
【0009】
さらに、仮にフレーム100の内側に設けられたレインフォースメントの板厚が車体の軽量化のために小さくなると、
図45で示したように、フレーム100の断面形状の変形により、レインフォースが面外変形しやすくなり、座屈することが考えられる。この場合、レインフォースメントによるフレームの断面形状の維持を図ることが困難となり、当該フレームについて想定されていた衝突安全性能を確保できない可能性がある。
【0010】
上記特許文献1および2に開示されている技術は、フレームの強度を高めて、衝突によるフレームの曲げ変形を抑制するために充填部材を使用する技術である。しかし、例えば、衝突エネルギの吸収のためにフレームに曲げが強制的に生じる場合、曲げが生じた部分において発生し得るフレームおよびレインフォースメントの面外変形を、上記特許文献に開示された技術を用いて抑制することは困難である。したがって、上記文献に開示された技術を用いて当初想定されていた衝撃吸収エネルギ等の衝突安全性能を維持することは困難である。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車体の軽量化を図りつつ、フレームの衝突安全性能を維持することが可能な、新規かつ改良された車両用構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、長手方向に延びる底壁部と、上記底壁部の両端から起立した一対の側壁部と、上記底壁部に対向する天壁部とを有し、上記底壁部、上記一対の側壁部および上記天壁部により閉断面を形成する中空部材と、
上記中空部材の内側に設けられ、前記一対の側壁部の並び方向の両端が前記一対の側壁部に固定されている主補強部材と、上記長手方向の上記中空部材と上記主補強部材とが対向する領域の一部において、上記中空部材または上記主補強部材の少なくともいずれかに設けられる曲げ誘起部と、上記長手方向の上記曲げ誘起部が設けられた領域を含む上記長手方向の部分において、上記主補強部材に密着して配置され、上記主補強部材と、上記底壁部または上記天壁部のうち一方とを連結し、さらに、上記主補強部材および上記側壁部に連続して密着して配置される、副補強部材と、を備え、上記副補強部材は充填部材であり、上記副補強部材として、上記主補強部材の上記長手方向の一端において上記主補強部材と上記天壁部とを連結する第1副補強部材と、上記主補強部材の上記長手方向の他端において上記主補強部材と上記底壁部とを連結する第2副補強部材とを備えている、車両用構造部材が提供される。
【0015】
上記副補強部材は、上記天壁部および上記側壁部に連続して密着して配置されてもよい。
【0016】
上記副補強部材の内部に空洞が設けられてもよい。
【0017】
上記曲げ誘起部は、上記中空部材の断面の重心により形成される上記長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分であってもよい。
【0018】
上記曲げ誘起部は、上記副補強部材を除く上記車両用構造部材の断面の重心により形成される上記長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分であってもよい。
【0019】
上記曲げ誘起部は、上記中空部材の断面係数が上記長手方向で変化する部分を含んでもよい。
【0020】
上記曲げ誘起部は、上記副補強部材を除く上記車両用構造部材の断面係数が上記長手方向で変化する部分を含んでもよい。なお、断面係数は、断面の形状とその断面を構成する材料から決定される曲げ剛性、または全塑性モーメントと同義とする。
【0021】
上記曲げ誘起部は、凹部、凸部、穴部、板厚変化部または薄肉部の少なくともいずれかが設けられた部分を含んでもよい。
【0022】
上記凹部、上記凸部または上記板厚変化部の少なくともいずれかが、上記中空部材の上記長手方向に沿って、複数並設されてもよい。
【0023】
上記曲げ誘起部は、上記中空部材または上記主補強部材の少なくともいずれかの降伏強度が上記長手方向で変化する部分を含んでもよい。
【0024】
上記主補強部材のヤング率は上記副補強部材のヤング率以上であってもよい。
【0027】
上記主補強部材は金属板により形成されてもよい。
【0028】
上記主補強部材の板厚は2.3mm以下であってもよい。
【0029】
上記中空部材を形成する金属板の板厚は2.3mm以下であってもよい。
【0030】
上記車両用構造部材は、フロントサイドメンバ、リアサイドメンバ、クラッシュボックス、ピラー、フロアレインフォースメント、フロアクロスメンバ、バンパーレインフォースメント、サイドシル、ルーフサイドレール、ルーフセンターレインフォースメントまたはトンネルの少なくともいずれかを含んでもよい。
【0031】
上記構成によれば、曲げ誘起部の内側に設けられる主補強部材に副補強部材が密着して設けられるので、主補強部材の面外変形に対する抵抗を大きくすることができる。これにより、衝突荷重の入力時における主補強部材の面外変形が抑制されるので、主補強部材による中空部材の断面変形を抑制する効果が発揮される。したがって、中空部材の面外変形が抑制されるので、中空部材の断面により発揮される衝突エネルギの吸収効果を維持することができる。すなわち、副補強部材を主補強部材に対する補強部材として用いることにより、車体の重量の増加を抑えつつ(つまり、車体の軽量化を実現しつつ)、車両用構造部材の衝突安全性能を維持することが可能となる。なお、本発明において密着とは、隙間なく接して配置されることを意味する。特に密着のうち、互いを拘束する接着がさらに好ましい。また、互いを拘束しない場合でも、主補強部材が副補強部材に向かって面外変形するのを副補強部材が抑制する効果が発揮される。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、車体の軽量化を図りつつ、衝突安全性能を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用フレームの一例の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る中空部材の一例のY軸方向に直交する断面を示す断面図である。
【
図3】同実施形態に係る中空部材の中心軸を可視化した模式図である。
【
図4】同実施形態に係るフレームの一例のZ軸方向に直交する断面における断面図である。
【
図5】
図4に示したフレームのV-V切断線における断面図である。
【
図6】
図4に示したフレームのVI-VI切断線における断面図である。
【
図7】同実施形態に係る充填部材の第1の配置例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図8】同実施形態に係る充填部材の第2の配置例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図9】同実施形態に係る充填部材の第3の配置例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図10】同実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図11】同実施形態に係る穴部に対向して設けられる充填部材の変形例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図12】同実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。
【
図13】同実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。
【
図14】同実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。
【
図15】同実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。
【
図16】同実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図17】同実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
【
図18】同実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
【
図19】同実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
【
図20】同実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
【
図21】同実施形態に係る凹部の形状および大きさの一例を示す模式図である。
【
図22】同実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
【
図23】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図24】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
【
図25】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
【
図26】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
【
図27】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
【
図28】同実施形態に係る凸部の形状および大きさの一例を示す模式図である。
【
図29】同実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
【
図30】同実施形態に係る中空部材に設けられる板厚変化部の一例を示す模式図である。
【
図31】同実施形態に係る中空部材に設けられる薄肉部の一例を示す模式図である。
【
図32】同実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図33】同実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の他の例を示す模式図である。
【
図34】同実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の他の例を示す模式図である。
【
図35】同実施形態に係る中空部材に設けられる強度変化部の一例を示す模式図である。
【
図36】同実施形態に係る中空部材に設けられる屈曲部および穴部の組み合わせの例を説明するためのフレームの断面図である。
【
図37】同実施形態に係る中空部材の内側にレインフォースメントを長手方向に離間して並設した構成例を示すフレームの断面図である。
【
図38】本発明の他の実施形態に係る中空部材の第1の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。
【
図39】本発明の他の実施形態に係る中空部材の第2の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。
【
図40】比較例2に係るフレームの屈曲部における断面形状の衝突シミュレーション前後の変化を示す図である。
【
図41】実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状の衝突シミュレーション前後の変化を示す図である。
【
図42】各サンプルに係るフレームの、ストロークStに対するE.A.を示すグラフである。
【
図43】各サンプルに係るフレームのE.A.=14kJに対するストロークSt
14kJを示すグラフである。
【
図44】比較例1に係るフレームのストロークSt
14kJに対する、比較例2、比較例3および実施例1に係るフレームのストロークSt
14kJの改善代を示すグラフである。
【
図45】薄肉化されたフレームの断面形状の変化の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0035】
<1.車両用フレームの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用フレーム1の一例の概略構成を示す斜視図である。なお、本明細書における車両用フレーム1は車両用構造部材の一例であり、以下単にフレーム1と記載する。なお、当該車両用構造部材は、例えば、自動車のフロントサイドメンバ、リアサイドメンバを含む。フロントサイドメンバは、後端部を構成するフロントサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するフロントサイドメンバフロントを含む。リアサイドメンバは、後端部を構成するリアサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するリアサイドメンバフロントを含む。また当該車両用構造部材は、例えば、自動車のピラーを含む。ピラーは、例えば、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー)、ルーフピラーを含む。また、当該車両用構造部材は、例えば、フロアレインフォースメント、フロアクロスメンバ、バンパーレインフォースメント、サイドシル、ルーフサイドレール、ルーフセンターレインフォースメント、クラッシュボックス、トンネル等を含む。また、当該車両用構造部材は、自動車のみならず、他の車両および自走可能な機械にも適用可能である。他の車両および自走可能な機械には、例えば、二輪車両、バスまたは牽引車等の大型車両、トレーラー、鉄道車両、建設機械、鉱山機械、農業機械、一般機械、および船舶等が含まれる。
【0036】
本実施形態に係るフレーム1は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、レインフォースメント4、および充填部材5を備える。本実施形態に係る中空部材10は、第1の構造部材2および第2の構造部材3により形成される。
図2は、本実施形態に係る中空部材10の一例のY軸方向に直交する断面を示す断面図である。以下、
図1および
図2を参照しながら、本実施形態に係るフレーム1の構成について説明する。
【0037】
本実施形態に係る第1の構造部材2は、長尺状の中空部材を形成する構造部材の一例であり、ハット形の断面形状を有する。
図1に示すように、第1の構造部材2は、長手方向(略Y軸方向)に延びる底壁部2a、側壁部2b、2b、フランジ部2c、2c、および稜線部2d、2d、2e、2eを有する。
【0038】
側壁部2bは、底壁部2aのZ軸方向(幅方向)の両端から起立して設けられる。
図2に示すように、側壁部2bは、底壁部2aと略垂直の角度を成して設けられることが衝突性能の観点から好ましい。また、稜線部2dは、底壁部2aと側壁部2bとの境界となる部分である。
【0039】
フランジ部2cは、側壁部2bの底壁部2aに対し反対側の端部からZ軸方向に沿って外側に起立して設けられる。
図2に示すように、フランジ部2cは、側壁部2bと略垂直の角度を成して設けられることが多いが、これに限らず部材の設計に応じて適宜決めればよい。また、稜線部2eは、側壁部2bとフランジ部2cとの境界となる部分である。
【0040】
本実施形態に係る第2の構造部材3は、上記中空部材を第1の構造部材2とともに形成する構造部材の一例であり、板状の部材である。
図2に示すように、第2の構造部材3は、天壁部3a、および接合部3c、3cを有する。
【0041】
天壁部3aは、第1の構造部材2の底壁部2aに対向する部分である。また、接合部3cは、第1の構造部材2のフランジ部2cに対して当接し、フランジ部2cと接合される部分である。つまり、天壁部3aは、第2の構造部材3における一対の稜線部2eとのそれぞれの接続部分の間に存在する領域に相当する部分である。また、接合部3cは、第2の構造部材3における稜線部2eとフランジ部2cの端部とに挟まれるフランジ部2cの領域に当接する部分である。
【0042】
本実施形態に係る中空部材10は、フランジ部2cと接合部3cとが接合されることにより、第1の構造部材2と第2の構造部材3とにより形成される。このとき、
図2に示すように、中空部材10は閉断面を有する。この閉断面は、底壁部2aと、一対の側壁部2b、2bと、天壁部3aにより形成される。なお、フランジ部2cと接合部3cとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、溶接、リベットまたはボルト締結等であってもよい。本実施形態では、フランジ部2cと接合部3cは、スポット溶接により接合される。
【0043】
なお、中空部材10の有する閉断面の形状は略多角形である。ここで、略多角形とは、複数の線分で近似表現することが可能である閉じた平面図形を意味する。例えば、
図2に示した閉断面は、4つの線分(底壁部2a、側壁部2b、天壁部3aに相当)および4つの頂点(稜線部2d、2eに相当)からなる略四角形である。この略四角形は、矩形、台形等を含む。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係る中空部材10の有する閉断面の形状が略四角形以外の略多角形である場合であっても、本明細書において、当該中空部材10は、底壁部2a、一対の側壁部2b、2bおよび天壁部3aにより形成されるものとして説明する。中空部材10の有する閉断面の形状の例については後述する。
【0045】
なお、本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3は、例えば鋼板等の金属板により形成されることが好ましい。また、衝突性能の観点から両構造部材の板厚はバス等の大型の車両で多く用いられるフレーム構造では、2.3mm以下が好ましく、通常のサイズの車両で多く用いられるモノコック構造車両では1.8mm以下であることが好ましく、バイク等の小型車両では1.4mm以下であることが好ましい。両構造部材の板厚が大きい場合、衝突荷重の入力による中空部材10の折れ曲げ箇所における当該構造部材の面外変形が生じにくいため、本発明により得られる効果は小さい。また、両構造部材の板厚が大きい場合、フレームの軽量化を達成することが困難である。また、本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3の強度は特に限定されない。ただし、軽量化により低減し得るフレームの全体的な強度を補うために、両構造部材の引張強度は780MPa以上であることが好ましい。また、両構造部材の引張強度は980MPa以上であることがさらに好ましい。
【0046】
図1に戻り、フレーム1の構成要素について説明する。本実施形態に係るレインフォースメント4は、主補強部材の一例である。レインフォースメント4は、
図1に示すように、主面部4aおよび接合部4bを有する。本実施形態に係る主面部4aは、底壁部2aおよび天壁部3aに対向するようにレインフォースメント4が設けられる。他の実施形態においては、主面部4aは、一対の側壁部2bに対向するように設けられてもよい。また、主面部4aは、必ずしも中空部材10を形成する各壁部に対向させて設けられなくてもよい。
【0047】
また、本実施形態に係る接合部4bは、側壁部2bに接合される。これにより、主面部4aが一対の側壁部2b、2b間を架け渡すように設けられる。そうすると、中空部材10に衝撃が加わった際にレインフォースメント4が一対の側壁部2b、2bの変形を抑えるので、中空部材10の断面変形を抑制することができる。なお、接合部4bと側壁部2bとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、溶接、リベットまたはボルト締結等であってもよい。本実施形態では、接合部4bと側壁部2bは、スポット溶接により接合される。また、レインフォースメント4は、充填部材5の配置領域を区切るためのしきい板としての機能も有する。
【0048】
本実施形態に係るレインフォースメント4は、例えば鋼板等の金属板により形成されることが衝突性能の観点から好ましい。レインフォースメント4の板厚はバス等の大型の車両で多く用いられるフレーム構造では、2.3mm以下が好ましく、通常のサイズの車両で多く用いられるモノコック構造車両では1.8mm以下であることが好ましく、バイク等の小型車両では1.4mm以下であることが好ましい。レインフォースメント4の板厚が大きい場合、上述したように、衝突荷重の入力による中空部材10の折れ曲げ箇所におけるレインフォースメント4の面外変形が生じにくいため、本発明により得られる効果は小さい。また、レインフォースメント4の板厚が大きい場合、フレームの軽量化を達成することが困難である。また、軽量化によるフレームの強度の低減を補うために、レインフォースメント4の引張強度は100MPa以上であることが好ましい。また、レインフォースメント4を形成する材料は、プラスチック、炭素繊維、合金板または複合材であってもよい。
【0049】
なお、本実施形態に係るレインフォースメント4の中空部材10の内部における具体的な配置位置については後述する。
【0050】
本実施形態に係る充填部材5は、副補強部材の一例である。本実施形態に係る充填部材5は、例えば発泡樹脂材からなる硬質の発泡充填部材である。より具体的には、充填部材5は、中空部材10の内側に設置された後に、化学変化により硬化する充填部材である。また、充填部材5の代わりに、副補強部材として他の補強部材が用いられてもよい。この場合、主補強部材であるレインフォースメント4のヤング率が副補強部材のヤング率よりも大きい、または同一である副補強部材が用いられることが好ましい。例えば、本実施形態に係る充填部材5のヤング率は、本実施形態に係るレインフォースメント4のヤング率の約1000分の1である。
【0051】
なお、本実施形態に係る充填部材5の中空部材10の内部における具体的な配置位置については後述する。
【0052】
また、本実施形態に係る中空部材10には、屈曲部6Aおよび6Bが設けられる。屈曲部6は、中空部材10が屈曲する部分である。すなわち、屈曲部6とは、中空部材10の断面の重心により形成される中心軸の長手方向における曲率半径が260mm以下である部分である。
図3は、中空部材10の中心軸を可視化した模式図である。
図3に示すように、中空部材10の中心軸C1は、屈曲部6Aおよび6Bにおいて屈曲している。
【0053】
屈曲部6は、詳しくは後述するが、曲げ誘起部の一例である。このような屈曲部6を備える中空部材10は、例えば第1の構造部材2および第2の構造部材3の一部が屈曲するようにプレス成形を行い、これらの構造部材を組み立てることにより得られる。このような屈曲部6は、フレーム1が適用される車両の構造に応じて適宜設けられる。中空部材10に設けられる屈曲部6の数は特に限定されず、上述したように車両の構造に応じて適宜決定される。すなわち、中空部材10に屈曲部6が設けられない場合も存在する。
【0054】
中空部材10に曲げ誘起部が形成された場合、長手方向への衝突によって曲げ誘起部において曲げ変形が生じる。例えば、
図3に示すように、かかる屈曲部6Aおよび6Bの曲率半径RAおよびRBの少なくともいずれかが260mm以下であれば、中空部材10は、衝突荷重の入力時に、上記曲率半径の条件を満たす屈曲部6Aおよび6Bのうちの少なくともいずれかにおいて曲げ変形が生じる。この曲げ変形に必要なエネルギが衝突によるエネルギから供給される。すなわち、中空部材10の曲げ変形により衝突エネルギを吸収することができる。この曲げ誘起部を中空部材10に設けることにより、衝突により生じる中空部材10の曲げ起点を設定することができる。そのため、中空部材10の想定外の曲げによるキャビンへの衝撃を回避することができるので、キャビンの安全性を維持することができる。さらに、レインフォースメント4が中空部材10を内側から支えるように、中空部材10の曲げ誘起部の内側に設けられる。これにより、中空部材10の衝突時の断面変形を抑制し、衝突に対する耐荷重性を高めることができる。ゆえに、衝突安全性能を総合的に高めることができる。
【0055】
このような中空部材10の軽量化を図るために、中空部材10を高強度鋼板により形成することが挙げられる。中空部材10を高強度化することにより、中空部材10を形成する鋼板の板厚を小さくすることができる。これにより、フレーム1の強度を確保しつつ、フレーム1の軽量化が可能となる。また、レインフォースメント4についても、フレーム1の全体的な軽量化のために、高強度化および薄板化が望まれる。
【0056】
しかし、中空部材10の板厚が小さくなると、断面形状に基づく曲げ剛性が減少する。そのため、中空部材10が、フレーム1の曲げ変形の際に面外変形してしまう可能性がある。このとき、レインフォースメント4は面外変形する中空部材10から圧縮力を受け、同様に面外変形してしまう場合がある。この場合、レインフォースメント4が座屈する可能性がある。レインフォースメント4が座屈してしまうと、レインフォースメント4による中空部材10の断面形状の維持効果が顕著に減少する。これにより、レインフォースメント4は中空部材10の面外変形を抑制することができない。この場合、中空部材10の断面形状が大きく変化するため、想定されていたフレーム1の衝突安全性能を発揮することが困難となる。
【0057】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、本発明に係る車両用構造部材を想到した。本発明によれば、中空部材に設けられた曲げ誘起部の内側に主補強部材が設けられ、主補強部材に副補強部材が密着して配置される。副補強部材が主補強部材に密着することにより、衝撃を受けた際の主補強部材の面外変形を抑制し、主補強部材の座屈を抑制することができる。したがって、衝突荷重が入力された際においても、主補強部材が中空部材の面外変形を抑制する効果を発揮させることができる。これにより、フレームの衝突安全性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0058】
以下、本発明の一実施形態に係るフレーム1の内部における、レインフォースメント4および充填部材5の配置の一例について説明する。なお、上述した曲げ誘起部は屈曲部6に限られない。曲げ誘起部の具体例については後述する。
【0059】
図4は、本実施形態に係るフレーム1の一例のZ軸方向に直交する断面における断面図である。なお、
図4に示す断面図は、
図1に示した中空部材10のIV-IV切断線における中空部材10の断面図に相当する。
図4に示すように、中空部材10には屈曲部6Aおよび6Bが設けられている。屈曲部6Aは、底壁部2aが曲げ内側となる方向に屈曲して設けられている。
【0060】
本実施形態に係る充填部材5は、レインフォースメント4の主面部4aに密着して配置される。
図4に示した例では、充填部材5Aは、底壁部2aに対向する部分に設けられている。また、充填部材5Bは、天壁部3aに対向する部分に設けられている。
【0061】
なお、
図4に示すフレーム1に関して付された各寸法の記号の定義は以下の通りである。本実施形態に係る中空部材10のL
FLは、例えば数百mm程度である。
L
FL:中空部材10のY軸方向(長手方向)の長さ。
D
FL1:中空部材10の衝突側の端部におけるX軸方向の断面寸法。
D
FL2:中空部材10の他端部におけるX軸方向の断面寸法。
L
R:レインフォースメント4の長手方向の長さ。
S
FL:屈曲部6の長手方向前後における第2の構造部材3のオフセット長さ。
L
FMA、L
FMB:充填部材5Aおよび5BのY軸方向の長さ。
【0062】
図5および
図6は、
図4に示したフレーム1のV-V切断線およびVI-VI切断線における断面図である。
図5に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Aにおいて、主面部4aに密着して配置されている。なお、詳しくは後述するが、充填部材5Aは、少なくとも主面部4aに密着するように配置されればよい。例えば、充填部材5Aは、必ずしも空間7A側に配置されなくてもよい。より具体的には、充填部材5Aは、レインフォースメント4に対する空間7Aの反対側の空間において、主面部4aに密着して配置されてもよい。また、
図6に示すように、屈曲部6Bにおいて、充填部材5Bは、天壁部3aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Bにおいて、主面部4aに密着して配置されている。なお、充填部材5Bは、充填部材5Aの例と同様に、必ずしも空間7Bに配置されなくてもよい。より具体的には、充填部材5Bは、レインフォースメント4に対する空間7Bの反対側の空間において、主面部4aに密着して配置されてもよい。
【0063】
図5を参照しながら、充填部材5Aによる作用および効果について説明する。まず、充填部材5Aは、レインフォースメント4の主面部4aに密着して配置されている。充填部材5Aが主面部4aに密着(好ましくは接着)することにより、主面部4aの面外変形に対する抵抗が高くなる。これにより、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、レインフォースメント4にかかるZ軸方向の圧縮応力に起因して生じ得る主面部4aの面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。したがって、レインフォースメント4は、当該衝突荷重の入力による側壁部2bの変形を抑制できるので、中空部材10の閉断面の断面変形も抑制される。ゆえに、フレーム1の衝突安全性能をより確実に発揮させることができる。
【0064】
また、
図5を参照すると、充填部材5Aは、屈曲部6における底壁部2aの部分の内面に密着して配置されている。充填部材5Aがかかる位置に密着(好ましくは接着)して配置されることにより、屈曲部6Aにおける底壁部2aの面外変形に対する抵抗が高くなる。これにより、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、当該折れ曲げが生じた位置における底壁部2aの面外変形を抑制することができる。したがって、中空部材10の閉断面の断面変形が充填部材5Aにより直接的に抑制される。ゆえに、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
【0065】
さらに、
図5に示した例では、充填部材5Aは、主面部4aと底壁部2aとを連結している。ここで連結とは、充填部材5Aが主面部4aと底壁部2aとをまたいでそれぞれに密着して配置されることを意味する。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6において折れ曲げが生じた場合に、主面部4aと底壁部2aとにおける面外変形は、それぞれ相対する方向に生じる。ここで、主面部4aと底壁部2aとを充填部材5Aによって連結することにより、充填部材5Aが、主面部4aおよび底壁部2aのそれぞれの変形により受ける力を相殺することができる。これにより、主面部4aの面外変形を単に抑制するだけではなく、面外変形を生じさせる力そのものを減じることができる。よって、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
【0066】
また、
図5に示した例では、充填部材5Aは、レインフォースメント4と側壁部2bとに連続して密着して配置されている。つまり充填部材5Aは、主面部4aと側壁部2bとを接続する接続部分4cの内側に密着して配置されている。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6において折れ曲げが生じた場合に、接続部分4cに高い応力が発生し、接続部分4cにおいて局所的に塑性変形が生じる。充填部材5Aが接続部分4cに密着(好ましくは接着)して配置されることにより、接続部分4cにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、フレーム1の衝突安全性能をより効果的に高めることができる。
【0067】
また、
図5に示した例では、充填部材5Aは、底壁部2aと側壁部2bとに連続して密着して配置されている。つまり充填部材5Aは、稜線部2dの内側に密着して配置されている。上述した接続部分4cにおける塑性変形と同様に、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、稜線部2dにおいて局所的に塑性変形が生じる。そのため、充填部材5Aがかかる位置に密着(好ましくは接着)して配置されることにより、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、フレーム1の衝突安全性能をより効果的に高めることができる。
【0068】
なお、
図5に示した例では充填部材5Aは稜線部2dおよび接続部分4cの全ての内側に密着して配置されていたが、稜線部2dまたは接続部分4cの少なくともいずれかの内側に充填部材5Aが配置されていれば、かかる効果は発揮される。
【0069】
以上、充填部材5Aの配置によりもたらされる作用および効果について説明した。なお、上述した作用および効果は、
図6に示したような、天壁部3aと主面部4aとの間に充填される充填部材5Bについても同様に発揮される。
【0070】
このように、本実施形態に係るフレーム1においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側にレインフォースメント4が設けられ、充填部材5がレインフォースメント4に密着して配置される。かかる構成により、フレーム1への衝突荷重の入力の際にレインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。これにより、レインフォースメント4によって中空部材10の断面形状が維持されるため、中空部材10の断面変形を抑制することができる。したがって、車体の軽量化を図るために中空部材10およびレインフォースメント4の板厚を小さくする場合においても、フレーム1の衝突安全性能を維持することができる。
【0071】
なお、
図4に示したレインフォースメント4は一の部材により形成され、屈曲部6における底壁部2aおよび天壁部3aのそれぞれに対向するように設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レインフォースメント4は、屈曲部6等の曲げ誘起部における底壁部2aまたは天壁部3aに対向して複数設けられてもよい。また、レインフォースメント4は、中空部材10の長手方向に沿って全体的に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4は、曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の中空部材10の長手方向における位置および長さは特に限定されない。
【0072】
<2.充填部材の配置例>
以上、本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bの配置について説明した。なお、充填部材5の配置は、
図5および
図6に示した例に限定されない。以下、充填部材5の他の配置例について説明する。
【0073】
(第1の配置例)
図7は、本実施形態に係る充填部材の第1の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、
図7に示す断面図は、
図4に示したフレーム1のV-V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
【0074】
図7に示すように、充填部材50は、主面部4aの底壁部2aに対向する面の中央部分に密着(好ましくは接着)して配置されている。かかる配置により、上述したように、主面部4aの面外変形に対する抵抗を大きくすることができる。つまり、充填部材50が主面部4aの一部だけに密着して配置されることによっても、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、主補強部材の座屈を抑制することができる。すなわち、中空部材10の断面変形を抑制する効果を十分に得ることができる。したがって、要求される衝突安全性能を確保することが可能であれば、
図7に示したように、充填部材50が主面部4aの一部だけに配置されてもよい。これにより、充填部材50の充填量が少なくなるので、充填部材5Aのコストおよびフレーム1の重量を低く抑えることができる。
【0075】
なお、充填部材50の配置位置は、上述したように、主面部4aの底壁部2aに対向する側に限られない。例えば、
図7に示した充填部材50は、主面部4aの天壁部3aに対向する側に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4に充填部材50が密着して配置されていれば、充填部材50の主面部4aにおける配置面は特に限定されない。
【0076】
(第2の配置例)
図8は、本実施形態に係る充填部材の第2の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、
図8に示す断面図は、
図4に示したフレーム1のV-V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
【0077】
図8に示すように、充填部材51は、主面部4aの中央部分と底壁部2aの中央部分とを連結するように、各部分に密着(好ましくは接着)して配置されている。かかる配置により、上述したように、レインフォースメント4および底壁部2aの面外変形をより効果的に抑制することができる。この場合、
図8に示したように、充填部材51が主面部4aの一部および底壁部2aの一部のみを連結しても、中空部材10の断面変形を抑制する効果を十分に得ることができる。したがって、要求される衝突安全性能を確保することが可能であれば、
図8に示したように、充填部材51が主面部4aおよび底壁部2aの一部だけを連結するように配置されてもよい。これにより、充填部材5Aの充填量が少なくなるので、充填部材51のコストおよびフレーム1の重量を低く抑えることができる。
【0078】
また、充填部材51の配置位置は、上述したように、主面部4aと底壁部2aとの間に限られない。例えば、
図8に示した充填部材51は、主面部4aと天壁部3aとの間に配置され、主面部4aと天壁部3aとを連結してもよい。また、レインフォースメント4の主面部4aが側壁部2bに対向するように設けられている場合、充填部材51は、いずれかの側壁部2bと主面部4aとを連結してもよい。つまり、レインフォースメント4に充填部材51が密着して配置されていれば、充填部材51による連結対象となる部分は特に限定されない。
【0079】
なお、第1の配置例および第2の配置例に示した充填部材5の主面部4a(および底壁部2a)のZ軸方向における配置位置については特に限定されない。例えば、曲げモーメントを受ける主面部4aのたわみ量が最も大きくなる主面部4aの中央部分に充填部材5が密着して配置されることが好ましい。これにより、レインフォースメント4の弾性変形によりレインフォースメント4に衝突エネルギが付勢されることを防ぐことができる。レインフォースメント4に衝突エネルギが付勢されると、衝突時の曲げによるエネルギ吸収が阻害されるためである。
【0080】
また、
図7および
図8に示したように、充填部材5は必ずしも空間7Aを密に充填するように配置されなくてもよい。充填部材5は少なくともレインフォースメント4の主面部4aに密着して配置されていれば、レインフォースメント4による中空部材の断面変形を抑制する効果が発揮される。充填部材5の空間7Aにおける充填量および配置位置は、要求されるフレーム1の衝突安全性能およびフレーム1の重量、並びに充填部材5による充填コスト等に基づいて、適宜調整され得る。また、充填部材5は必ずしも空間7Aに設けられなくてもよい。すなわち、充填部材5は、中空部材10の空間のうち、空間7Aとは異なる側の空間に配置されてもよい。
【0081】
(第3の配置例)
図9は、本実施形態に係る充填部材の第3の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、
図9に示す断面図は、
図4に示したフレーム1のV-V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
【0082】
図9に示すように、充填部材52は、主面部4a、底壁部2a、および一対の側壁部2bにより囲まれて形成される空間7Aに、主面部4aおよび底壁部2a、および一対の側壁部2bに密着(好ましくは接着)するように配置されている。また、充填部材52は、その内部に空洞52aを有する。これにより、レインフォースメント4および中空部材10の変形を抑制させる効果を高めつつ、充填部材52の充填量を抑制することができる。なお、
図9に示した充填部材52は、レインフォースメント4に密着して配置されていれば、他の壁部との密着の有無、および充填量は特に限定されない。
【0083】
<3.曲げ誘起部の例>
次に、中空部材10に設けられる曲げ誘起部の例について説明する。上記の実施形態では、曲げ誘起部である屈曲部6について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、屈曲部を有さない中空部材(例えば、長手方向において略直線状に延びる中空部材を含む)においては、穴部、凹部、凸部、板厚変化部、および異強度部等が設けられた部分が、曲げ誘起部としての機能を実現する。穴部、凹部、凸部、および板厚変化部のいずれかが設けられた部分は、中空部材10の長手方向で中空部材10の断面係数が変化する部分である。中空部材10の長手方向で断面係数が変化する部分においては、同一の曲げモーメントにより中空部材10に生じる曲げ応力が変化するので、当該部分において中空部材10の曲げが誘起される。より具体的には、長手方向で中空部材10のうち断面係数が相対的に小さい部分については、当該部分における曲げ応力が相対的に大きくなるので、当該部分において屈曲が生じる。また、長手方向で中空部材10のうち断面係数が相対的に大きい部分については、当該部分の中空部材10の長手方向の前後における領域を含む部分の断面係数が相対的に小さくなる。したがって、当該領域と上記断面係数が相対的に大きい部分との境界部分において屈曲が生じる。
【0084】
また、異強度部は、中空部材10の長手方向で中空部材10の降伏強度が変化する部分である。中空部材10の長手方向で降伏強度が変化する部分においては、当該部分における中空部材10の塑性変形が誘起される。例えば、長手方向で中空部材10のうち降伏強度が相対的に小さい部分については、当該部分における塑性変形が中空部材10において最初に生じるため、当該部分において屈曲が生じる。また、長手方向で中空部材10のうち降伏強度が相対的に大きい部分については、当該部分の中空部材10の長手方向の前後における領域を含む部分の降伏強度が相対的に小さくなる。したがって、当該領域と上記降伏強度が相対的に大きい部分との境界部分において屈曲が生じる。
【0085】
(穴部)
図10は、本実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。
図10に示すように、底壁部2aには穴部60が設けられている。穴部60が設けられた部分における中空部材10の断面係数は、穴部60が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の断面係数よりも低い。したがって、
図10に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1は、穴部60が設けられた部分において、穴部60が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも穴部60が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により穴部60の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
【0086】
なお、
図10に示した例では、底壁部2aの穴部60が設けられた部分に充填部材5が配置されていたが、本発明はかかる例に限定されない。
図11は、本実施形態に係る穴部に対向して設けられる充填部材の変形例を説明するためのフレーム1の断面図である。
図11に示すように、穴部60の内側の空間には充填部材5が配置されなくてもよい。これにより、穴部60における底壁部2aの屈曲変形をより確実に行うことが可能である。なお、以下に示す他の曲げ誘起部の例においても同様に、曲げ誘起部の近傍の空間に充填部材5を配置させないようにすることで、曲げ誘起部における屈曲変形をより確実に行うことが可能となる。
【0087】
また、穴部の形状および配置については、上述した例に限られない。
図12~
図15は、本実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。
図12に示すように、円形の穴部60aが底壁部2aに設けられてもよい。また、
図13に示すように、複数の穴部60bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の穴部60bが、中空部材10Aの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60bが曲げの起点として、中空部材10Aが底壁部2a側に曲げ変形やすくなる。
【0088】
また、
図14に示すように、中空部材10Aの長手方向に横切る方向に延在する穴部60cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60cが曲げの起点として、中空部材10Aが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、穴部60cの形状は、
図14に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
【0089】
なお、上述した中空部材10Aの長手方向に横切る方向は、
図12~
図14に示すような、中空部材10Aの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、穴部60が設けられた部分の面において、中空部材10Aの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であることが好ましい。これにより、安定した曲げ変形を誘起させることができる。
【0090】
また、穴部60の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに穴部60が設けられてもよい。また、穴部60が設けられた部分に対向する部分には、穴部60等が設けられないことが好ましい。例えば、穴部60が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の穴部60の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、穴部60が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
【0091】
また、
図15に示すように、穴部60dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Aのうち長手方向で穴部60dが設けられた部分の断面係数が顕著に低下するので、穴部60dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
【0092】
(凹部)
図16は、本実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、ビード部61は、本実施形態における凹部の一例である。
図16に示すように、底壁部2aにはビード部61が設けられている。ビード部61が設けられた部分における中空部材10の断面係数は、ビード部61が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の断面係数よりも低い。したがって、
図16に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1はビード部61が設けられた部分において、ビード部61が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくともビード部61が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力によりビード部61の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
【0093】
なお、凹部の形状および配置については、上述した例に限られない。
図17~
図20は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。ここでいう凹部とは、エンボスやビードなどの、中空部材10Bの底壁部2a等に設けられる窪み部分を意味する。
図17に示すように、円形の凹部61aが底壁部2aに設けられてもよい。
【0094】
また、
図18に示すように、複数の凹部61bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凹部61bが、中空部材10Bの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、複数の凹部61bが曲げの起点として、中空部材10Bが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
【0095】
また、
図19に示すように、中空部材10Bの長手方向に横切る方向に延在するビード部61cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、ビード部61cが曲げの起点として、中空部材10Bが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、ビード部61cの形状は、
図19に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
【0096】
なお、上述した中空部材10Bの長手方向に横切る方向は、
図19に示すような、中空部材10Bの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凹部61が設けられた部分の面において、中空部材10Bの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
【0097】
また、凹部61の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凹部61が設けられてもよい。また、凹部61が設けられた部分に対向する部分には、凹部61等が設けられないことが好ましい。例えば、凹部61が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凹部61の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凹部61が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
【0098】
また、
図20に示すように、凹部61dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Bのうち長手方向で凹部61dが設けられた部分の断面係数が顕著に変化するので、凹部61dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
【0099】
上述したような凹部61を設ける場合、凹部61の形態は特に限定されないが、凹部61は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材10Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、
図21に示すように、凹部61の深さD
d(凹部61が設けられた部分の面611と凹部61の底612との間における、平面に直交する方向の長さ、
図21参照)は、中空部材10Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材10Bの長手方向における凹部61の縁613同士の距離L
d(
図21参照)は、50mm以下であることが好ましい。
【0100】
図22は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。
図22に示すように、中空部材10Bの長手方向に延在する凹部61e、61fが、中空部材10Bの長手方向に沿って並んで設けられてもよい。この場合、中空部材10Bのうち、長手方向における凹部61eと凹部61fとの間の部分610で曲げが生じる。すなわち、中空部材10Bのうち、凹部61e、61fが設けられた部分と、凹部61eと凹部61fとの間の部分610とでは断面係数が異なるので、衝突荷重の入力時において、当該部分610を曲げの起点として曲げ変形が生じる。なお、この場合においても、中空部材10Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凹部61e、61fの深さD
dは、中空部材10Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分610には、凹部、後述する凸部、薄肉部または異強度部等が形成されていてもよい。
【0101】
なお、凹部61eおよび凹部61fは、
図22に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凹部61eおよび凹部61fは、必ずしも中空部材10Bの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凹部61eおよび凹部61fが設けられた部分の面において、中空部材10Bの長手方向と凹部61eおよび凹部61fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
【0102】
(凸部)
図23は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。
図23に示すように、底壁部2aには凸部62が設けられている。凸部62が設けられた部分における中空部材10の断面係数は、凸部62が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の断面係数よりも高い。したがって、
図23に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、中空部材10の長手方向における凸部62の前後の領域8aまたは8bの少なくともいずれかにおいて、凸部62が曲げ内側となるように屈曲する。この領域8aおよび8bは、Y軸方向における、中空部材10の断面係数の変化が生じる領域である。そのため、レインフォースメント4は少なくとも凸部62並びに凸部62の前後の領域8aおよび8bに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により凸部62の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
【0103】
なお、凸部の形状および配置については、上述した例に限られない。
図24~
図26は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。ここでいう凸部は、例えば、中空部材10の加工等により実現される。すなわち、かかる凸部は、中空部材10Cを構成する鋼板の一部を変形させて設けられるものであってもよい。
図24に示すように、円形の凸部62aが底壁部2aに設けられてもよい。
【0104】
また、
図25に示すように、複数の凸部62bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凸部62bが、中空部材10Cの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材10Cの長手方向における複数の凸部62bの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材10Cが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
【0105】
また、
図26に示すように、中空部材10Cの長手方向に横切る方向に延在する凸部62cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材10Cの長手方向における凸部62cの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材10Cが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、凸部62cの形状は、
図26に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
【0106】
なお、上述した中空部材10Cの長手方向に横切る方向は、
図26に示すような、中空部材10Cの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凸部62が設けられた部分の面において、中空部材10Cの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
【0107】
また、凸部62の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凸部62が設けられてもよい。また、凸部62が設けられた部分に対向する部分には、凸部62等が設けられないことが好ましい。例えば、凸部62が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凸部62等の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凸部62が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
【0108】
また、
図27に示すように、凸部62dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Cのうち長手方向で凸部62dが設けられた部分の断面係数が顕著に変化するので、凸部62dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
【0109】
上述したような凸部62を設ける場合、凸部62の形態は特に限定されないが、凸部62は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材10Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、
図28に示すように、凸部62の高さH
d(凸部62が設けられた部分の面621と凸部62の頂622との間における、平面に直交する方向の長さ、
図28参照)は、中空部材10Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材10Cの長手方向における凸部62の縁623同士の距離L
d(
図28参照)は、50mm以下であることが好ましい。
【0110】
図29は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。
図29に示すように、中空部材10Cの長手方向に延在する凸部62e、62fが、中空部材10Cの長手方向に沿って並んで設けられてもよい。この場合、中空部材10Cのうち、長手方向における凸部62eと凸部62fとの間の部分620で曲げが生じる。すなわち、中空部材10Cのうち、凸部62e、62fが設けられた部分と、凸部62eと凸部62fとの間の部分620とでは断面係数が異なるので、衝突荷重の入力時において、当該部分620を曲げの起点として曲げ変形が生じる。なお、この場合においても、中空部材10Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凸部62e、62fの高さ(Hd)は、中空部材10Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分620には、上述した凹部、凸部または後述する薄肉部もしくは異強度部等が形成されていてもよい。
【0111】
なお、凸部62eおよび凸部62fは、
図29に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凸部62eおよび凸部62fは、必ずしも中空部材10Cの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凸部62eおよび凸部62fが設けられた部分の面において、中空部材10Cの長手方向と凸部62eおよび凸部62fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
【0112】
(板厚変化部・薄肉部)
また、底壁部2aには曲げ誘起部を実現する構成として板厚変化部が設けられてもよい。
図30は、本実施形態に係る中空部材に設けられる板厚変化部の一例を示す模式図である。ここでいう板厚変化部とは、中空部材10Dの長手方向において板厚が変化する部分を意味する。
図30に示すように、中空部材10Dは、第1板厚部111および第2板厚部112を備える。第1板厚部111は中空部材10Dの端部側に設けられ、第2板厚部112は、中空部材10Dの長手方向に沿って第1板厚部111と連続して設けられる。第1板厚部111と第2板厚部112との間では、鋼板の板厚が異なる。板厚の大小関係については特に限定されないが、中空部材10D全体の曲げ剛性の確保の観点から、第2板厚部112の板厚が第1板厚部111の板厚よりも大きいことが好ましい。
【0113】
この場合、
図30に示すように、第1板厚部111と第2板厚部112との境目の部分が板厚変化部113となる。この板厚変化部113において中空部材10Dの長手方向での断面係数が変化する。すなわち、板厚変化部113が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Dに入力された場合、フレーム1は板厚変化部113において屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも板厚変化部113が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により板厚変化部113の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
【0114】
また、曲げ誘起部6は、例えば、薄肉部により実現されてもよい。
図31は、本実施形態に係る中空部材に設けられる薄肉部の一例を示す模式図である。
図31に示すように、底壁部2aには、中空部材10Dの長手方向前後において、他の部分よりも相対的に板厚が薄い薄肉部114が設けられている。薄肉部114を含む部分における中空部材10の断面係数は、薄肉部114が設けられた部分の前後(中空部材10Dの長手方向についての)における部分の中空部材10Dの断面係数よりも低い。すなわち、中空部材10Dのうち薄肉部114が設けられた部分が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Dに入力された場合、フレーム1は薄肉部が設けられた部分において、薄肉部が曲げ内側となるように屈曲する。
【0115】
かかる板厚変化部を有する中空部材10Dは、例えば、切削、プレス、およびテーラードブランクからなる被加工板により形成されてもよい。かかる被加工板は、溶接線を有するテーラーウェルドブランク(Tailor Welded Blank;TWB)であってもよい。また、上記被加工板は、圧延ロールにより板厚を異ならせて設けられるテーラーロールドブランク(Tailor Rolled Blank;TRB)であってもよい。TWBにおいては、板厚変化部における差厚は0.2mm以上とすることが可能である。また、TRBにおいては、部材長手方向当たりの板厚変化部における板厚変化量は、0.1mm/100mm以上とすることが可能である。
【0116】
(異強度部・強度変化部)
図32は、本実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。
図32に示すように、底壁部2aには異強度部63が設けられている。異強度部63は、例えば、中空部材10に対して部分的に溶接、焼き入れまたは焼き戻し等の熱処理等を行うことにより設けられる。異強度部63が設けられた部分における中空部材10の降伏強度は、異強度部63が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の降伏強度とは異なる。したがって、
図32に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、異強度部63または異強度部63の近傍において、異強度部63が曲げ内側となるように屈曲する。この屈曲は、異強度部63または異強度部63の近傍の領域が塑性変形することにより生じる屈曲である。そのため、レインフォースメント4は少なくとも異強度部63または異強度部63の近傍の領域に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により異強度部63または異強度部63の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
【0117】
なお、異強度部の配置については、上述した例に限られない。
図33、
図34は、本実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の他の例を示す模式図である。ここでいう異強度部は、中空部材10Eを形成する被加工板に対する溶接または熱処理等により実現される。
【0118】
図33に示すように、中空部材10Eの長手方向に対する断面周方向に沿って異強度部120が設けられている。この場合も、中空部材10Eのうち異強度部120が設けられた部分が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は異強度部120が設けられた部分において、異強度部120が曲げ内側となるように屈曲する。
【0119】
なお、かかる異強度部は、例えば、
図34に示したように、底壁部2a等、中空部材10Eの断面を構成する壁部の少なくともいずれかに部分的に設けられてもよい。かかる場合においても、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は異強度部121が設けられた部分において、異強度部121が曲げ内側となるように屈曲する。
【0120】
また、曲げ誘起部6は、例えば、強度変化部により実現されてもよい。
図35は、本実施形態に係る中空部材に設けられる強度変化部の一例を示す模式図である。
図35に示すように、中空部材10Eは、第1強度部122および第2強度部123を備える。第1強度部122は中空部材10Eの端部側に設けられ、第2強度部123は、中空部材10Eの長手方向に沿って第1強度部122と連続して設けられる。第1強度部122と第2強度部123との間では、鋼板の降伏強度が異なる。降伏強度の大小関係については特に限定されないが、中空部材10E全体としての曲げ剛性の確保の観点から、第2強度部123の降伏強度が第1強度部122の降伏強度よりも大きいことが好ましい。
【0121】
この場合、
図35に示すように、第1強度部122と第2強度部123との境目の部分が強度変化部124となる。この強度変化部124において中空部材10Eの長手方向での降伏強度が変化する。すなわち、強度変化部124が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は強度変化部124において屈曲する。
【0122】
(組み合わせ)
なお、屈曲部を有する中空部材において、屈曲部の曲げ内側部分に上記の例に示した穴部等の曲げを誘起させるための部分がさらに設けられてもよい。
図36は本実施形態に係る中空部材に設けられる屈曲部および穴部の組み合わせの例を説明するためのフレーム1の断面図である。
図36に示すように、中空部材10には屈曲部6Aが設けられ、底壁部2aの曲げ内側部分6Aaには穴部64が設けられる。レインフォースメント4は少なくとも曲げ内側部分6Aaおよび穴部64に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により、屈曲部6において中空部材10をより確実に屈曲させることができる。
【0123】
曲げ誘起部の組み合わせは
図36に示した例に限られず、上記に示した曲げ誘起部の例を複数組み合わせることにより、曲げ誘起部における中空部材10の屈曲をより確実に生じさせることができる。例えば、上述した屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部の少なくとも2つ以上の組み合わせにより、曲げ誘起部が実現されてもよい。
【0124】
なお、
図10、
図11、
図16、
図23、
図32、
図36に示したレインフォースメント4の設置位置は、曲げ誘起部の内側のみであるが、本発明はかかる例に限定されない。少なくとも曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の長手方向の長さおよび設置位置は特に限定されない。フレーム1に要求される衝突安全性能および重量等に応じて、レインフォースメント4のサイズ、材質および設置位置は適宜調整される。
【0125】
(曲げ誘起部の他の例)
また、中空部材10に効果的な曲げ誘起部が設けられない場合であっても、レインフォースメント4に屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が設けられれば、レインフォースメント4の屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が曲げ誘起部になる。しかしながら、レインフォースメント4に曲げ誘起部が設けられても、中空部材10の曲げ誘起部に比べ、同じ条件であれば、曲げ誘起部としての効果は得られにくい。なぜなら、レインフォースメント4は中空部材10の内部にあるため、断面係数への影響が小さいからである。
【0126】
故に、中空部材10に設けられた曲げ誘起部が主要な曲げ誘起部として扱われる。また、中空部材10に曲げ誘起部が設けられず、レインフォースメント4に凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部があれば、それらが曲げ誘起部とみなされる。
【0127】
この場合、例えば、屈曲部については、中空部材10とレインフォースメント4とを合わせた断面(すなわち、充填部材5を除くフレーム1の断面)の重心により形成される長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分が、曲げ誘起部となる屈曲部とみなされる。
【0128】
さらに、レインフォースメント4に上述したような構成に基づく曲げ誘起部が設けられていない場合であっても、レインフォースメント4の端部が曲げ誘起部になることもある。なぜなら、フレーム1の長手方向において、レインフォースメント4の有無により断面係数が変化するからである。
図37は、本実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4を長手方向に離間して並設した構成例を示すフレーム1の断面図である。例えば、
図37に示すように、レインフォースメント4を長手方向に離間して配置した場合、部材の長手方向のレインフォースメント4の端部の位置に充填部材5を配置すれば、部材の変形を緩和することができる。このように、充填部材5を除くフレーム1の断面係数が長手方向で変化する部分が、曲げ誘起部とみなされる。
【0129】
<4.中空部材の閉断面の形状の例>
中空部材10の有する閉断面の形状の例について説明する。
図38は、本発明の他の実施形態に係る中空部材10の第1の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。
図38に示すように、中空部材10の閉断面は、X軸について対称な略六角形の形状を有する。このうち、第1の構造部材2のX軸方向に略直交する部分において、4つの頂点2d、2d、2f、2fが存在する。ここで、頂点2dの内角ang1が頂点2fの内郭ang2より小さい場合、頂点2dが稜線部2dとして定義される。すなわち、頂点2f、2fを含む、一対の稜線部2dに挟まれる部分が、底壁部2aと定義される。
【0130】
図39は、本発明の他の実施形態に係る中空部材10の第2の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。
図39に示すように、第1の構造部材2および第2の構造部材30は、ハット形の断面形状を有する。すなわち、中空部材10は、ハット形の断面形状を有する2つの構造部材により形成される。この場合、第1の構造部材2の側壁部2bおよび第2の構造部材30の側壁部30bは、第1の構造部材2の稜線部2eと第2の構造部材30の稜線部30eとを介して、連続した一つの側壁部(連続側壁部)として定義される。すなわち、中空部材10の閉断面は、底壁部2aと、一対の連続側壁部と、底壁部30a(天壁部に相当)により形成される。
【0131】
また、中空部材10、および中空部材10の有する閉断面の形状は、
図2、
図38および
図39に示した例に限定されない。中空部材10の有する閉断面の形状が略多角形であり、当該閉断面を形成する底壁部、一対の側壁部および天壁部に相当する部分が定義できれば、本発明に係る技術は中空部材10に対して適用可能である。例えば、中空部材は、U字形の断面形状を有する2つの構造部材を、開口部分が対向するように重ねあわせることにより得られる閉断面を有する中空部材であってもよい。また、中空部材は、円管に対してハイドロフォーミングまたは曲げ加工等を行うことにより形成される中空部材であってもよい。
【実施例】
【0132】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明の効果を確認するために、本実施例では、レインフォースメントおよび充填部材によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
本発明者らはレインフォースメントおよび充填部材によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証するために、シミュレーションを用いて、各種フレームの衝撃エネルギ吸収量(Energy Absorption;E.A.(kJ))に対する衝突時のストロークSt(mm)を算出した。ストロークStとは、
図4に示すように、フレーム1の衝突側の端面を起点とする、衝突物体の移動量を示す。つまり、同一のE.A.に対してストロークStが短いほど、衝突安全性能が高いと言える。
【0134】
本実施例におけるサンプルとして、従来のフレーム(参考例1)、本実施形態に係る中空部材10のみにより構成されるフレーム(比較例1)、本実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4のみが設けられたフレーム(比較例2)、本実施形態に係る中空部材10の内側に充填部材5のみが設けられたフレーム(比較例3)、および本実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4および充填部材5が設けられたフレーム(実施例1)を用意した。なお、参考例1、各比較例および実施例1における中空部材10の内側におけるレインフォースメント4、充填部材5および屈曲部6の配置位置は、
図4、
図5および
図6に示す配置位置と同一である。
図4、
図5および
図6に示す構成から、充填部材5が除かれたものが比較例2であり、レインフォースメント4が除かれたものが比較例3、レインフォースメント4および充填部材5の両方が除かれたものが参考例1および比較例1である。
【0135】
なお、本実施例において用いられた各フレームの各寸法(
図4参照)は、以下の通りである(単位はmm)。
L
FL=500
D
FL1=70
D
FL2=90
L
R=240
S
FL=60
L
FMA=70
L
FMB=70
【0136】
各フレームに関するパラメータは下記表1のとおりである。
【0137】
【0138】
また、第1の構造部材、第2の構造部材およびレインフォースメントはいずれも鋼板により形成されている。また、充填部材の材質はポリウレタン(ヤング率=100MPa)である。
【0139】
各サンプルに係るフレームの長手方向における端部に衝突荷重を入力し、衝突物体のストロークに対するE.A.について算出した。また、衝突シミュレーション後の比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状について比較を行った。
【0140】
まず、衝突シミュレーション後の比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状について説明する。
図40および
図41は、比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状の衝突シミュレーション前後の変化を示す図である。
図40に示すように、比較例2に係るフレーム1のレインフォースメント4の主面部4aにおいてX軸方向に面外変形し、座屈が生じている。また、底壁部2a、側壁部2bおよび稜線部2dにおいてもそれぞれ面外変形が生じている。そのため、中空部材10の断面形状が大きく変化している。これは、主面部4aが面外変形することにより、レインフォースメント4による中空部材10の断面変形の抑制効果が失われたためであると考えられる。
【0141】
一方、
図41に示すように、実施例1に係るフレーム1のレインフォースメント4の主面部4aにおいて面外変形は生じていない。また、中空部材10の断面形状は衝突前後において変化していない。これは、レインフォースメント4に密着して配置された充填部材5Aによりレインフォースメント4の面外変形を抑制する効果が発揮されているためであると考えられる。したがって、レインフォースメント4による中空部材10の断面変形の抑制効果が発揮されていると考えられる。
【0142】
次に、衝突物体のストロークに対するE.A.についての算出結果について説明する。
図42は、各サンプルに係るフレームの、ストロークStに対するE.A.を示すグラフである。各サンプルに係るフレームは、E.A.=14kJにおいてほぼ完全に座屈する。また、
図43は、各サンプルに係るフレームのE.A.=14kJに対するストロークSt
14kJを示すグラフである。
図43に示すように、実施例1に係るフレームのストロークSt
14kJは、他の比較例に係るフレームのストロークSt
14kJよりも小さい。さらに、参考例1と比較すると、実施例1に係るフレームの重量が約30%低いにもかかわらず、フレームのストロークSt
14kJが同等の水準であることが示された。
【0143】
また、
図42に示すように、実施例1に係るフレームのストロークStの増加に対するE.A.の増加率が、他の比較例に係るフレームと比較して大きいことが示された。これは、衝突荷重の入力による屈曲部におけるフレームの断面形状が維持されていることにより、断面形状の変化が生じている他のフレームよりも衝突エネルギ吸収量が大きくなるためと考えられる。
【0144】
図44は、比較例1に係るフレームのストロークSt
14kJに対する、比較例2、比較例3および実施例1に係るフレームのストロークSt
14kJの改善代を示すグラフである。
図44に示すように、実施例1に係るフレームのストロークSt
14kJの改善代は、比較例2に係るフレームのストロークSt
14kJの改善代および比較例3に係るフレームのストロークSt
14kJの改善代の和よりも大きい。この結果から、レインフォースメントに対して充填部材を密着して配置させることにより、レインフォースメントによるフレームの断面形状の変化の抑制を、より効果的に実現できることが明らかとなった。
【0145】
本実施例より、実施例1に係るフレームでは、衝突荷重の入力によるフレームの断面形状の変化を抑制することができる。これにより、軽量化が施されたフレームにおいても、衝突安全性能を確保することが可能となることが示された。
【0146】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0147】
1 (車両用)フレーム
2 第1の構造部材
2a 底壁部
2b 側壁部
2c フランジ部
2d、2e 稜線部
3、30 第2の構造部材
3a 天壁部
30a 底壁部
30b 側壁部
3c、30c 接合部
4 レインフォースメント
4a 主面部
4b 接合部
5 充填部材
6 屈曲部(曲げ誘起部)
10 中空部材
60、64 穴部
61 凹部
62 凸部
63 異強度部