(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20230616BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20230616BHJP
E06B 1/04 20060101ALI20230616BHJP
E06B 3/26 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
E06B1/32
E05D15/06 107
E05D15/06 114B
E06B1/04 Z
E06B3/26
(21)【出願番号】P 2017238076
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大泉 聡
(72)【発明者】
【氏名】千野 哲玄
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 史彬
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-142265(JP,U)
【文献】実公昭48-017480(JP,Y1)
【文献】特開2016-132875(JP,A)
【文献】実開昭64-043174(JP,U)
【文献】実開昭60-022683(JP,U)
【文献】特開2015-232225(JP,A)
【文献】実開昭57-002966(JP,U)
【文献】特開2003-328632(JP,A)
【文献】特開2015-194058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられる枠体内に障子を納め、前記枠体を構成する下枠には長手方向に沿うレールが設けられ、前記障子の下端部には前記レールを走行自在な樹脂製の車輪を有する戸車が設けられたサッシにおいて、
前記下枠は前記障子の下框の見え掛かり面に室内側から重なる位置に配置され、
前記レールを支持するレール支持部材に前記障子の下框が前記車輪よりも下側で摺動
し、
前記下枠は、前記レールを設けた金属製下枠と、前記金属製下枠の室内側に設けられ、前記障子の下框の見え掛かり面を隠蔽する樹脂製下枠と、を備え、
前記障子の框の屋内側の見え掛かり面の寸法が前記樹脂製下枠の上端面から前記金属製下枠の網戸レールの立ち上がり面までの寸法よりも小さく構成されるサッシ。
【請求項2】
前記枠体を構成する上枠及び縦枠が、前記障子の上框及び縦框の見え掛かり面に室内側から重なるように配置される請求項1に記載のサッシ。
【請求項3】
前記下框には、前記戸車が設けられ、
前記戸車は、少なくとも1以上の車輪を支持する内側ケースと、前記内側ケースを一方向に移動可能に支持する中ケースと、該中ケースを横方向に移動可能に支持する外側ケースとを備えたユニットからなり、
前記ユニットが前記下框の端部に配置される請求項1又は2に記載のサッシ。
【請求項4】
前記下框には、前記戸車が設けられ、
少なくとも一方が開口した箱型の外側ケースと、
前記外側ケースに収納され、一対の支持壁に傾斜溝が形成される中ケースと、
前記外側ケースの開口から露出する車輪を支持する内側ケースと、
を備えたユニットからなり、
前記中ケースが前記外側ケースに対して前記下框の長手方向に移動可能に支持される請求項3に記載のサッシ。
【請求項5】
前記中ケースには、前記中ケースの横方向に対して傾斜する傾斜溝が形成され、
前記外側ケースには、ケース前記横方向に交差する方向に延びる縦溝が形成され、
前記内側ケースには、軸部材が貫通可能な軸部材貫通孔が形成され、
前記軸部材は、前記傾斜溝及び前記縦溝に係合している、請求項4に記載のサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物開口部に設けられる枠体内に障子を納めたサッシとしては、例えば、一方の障子を走行自在とした片引きサッシ等がある。走行する障子の下框には戸車が設けられる。戸車は、障子の重量を支える強度と、滑らかに回転可能な弾性、及び耐摩耗性が必要とされるため、ポリアセタールなどの樹脂材が材料として用いられる。
【0003】
また、サッシの枠体に框が重なる隠し框構造が知られている(例えば、特許文献1)。隠し框構造は、比較的小さい障子を有するサッシにおいて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、天井まで届くような大きな開口部が望まれており、このような大きな開口部に納まるサッシも大型化しており、それに伴いガラスも大型化している。また、例えば断熱性能向上のため、3枚以上の複層ガラスが一般化しており、例えば、障子の重量も200kg程度のものが枠体内に納められることもある。このような場合には、前述した従来の戸車では、耐荷重強度を満たすために大型化し、それを収納するための框の見付け面(見え掛かり面)の寸法も大きくなっていた。
【0006】
また、戸車の高さを調整することが必要であるが、この調整を行う際に、車輪を支持するフレーム構造が内枠と外枠とからなり、内枠が外枠から離れる構成が採られる。このため、車輪にかかる荷重を内枠で支える形になる。大型の障子の高荷重の重量に耐えうるためには、内枠、外枠の板厚を上げる必要があり、かつ車輪自体の耐荷重強度も上げる必要がある。このような重い障子を軽く操作するには車輪の径が大きくなってしまい、結果的に戸車そのものが大きくなる。このため、結果的にサッシの障子の下框の見付け寸法が大きくなり、室内側から見た場合、下框の存在感が大きくなってしまい、室内側から見て、下框が大きく目立ってしまい、ノイズレスを実現することに大きな支障となる。
【0007】
本発明は、大型のサッシにおいて、下框の見付け寸法を小さく構成することが可能なサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、建物の開口部(例えば、後述の開口部10)に設けられる枠体(例えば、後述の枠体20)内に障子(例えば、後述の障子4)を納め、前記枠体を構成する下枠(例えば、後述の下枠22)には長手方向に沿うレール(例えば、後述のレール2213)が設けられ、前記障子の下端部には前記レールを走行自在な樹脂製の車輪を有する戸車(例えば、後述の戸車5)が設けられたサッシ(例えば、後述のサッシ1)において、前記下枠は前記障子の下框(例えば、後述の下框42)の見え掛かり面に室内側から重なる位置に配置されるサッシを提供する。
【0009】
また、前記枠体を構成する上枠(例えば、後述の上枠21)及び縦枠が、前記障子の上框(例えば、後述の上框41)及び縦框(例えば、後述の戸尻側縦框43、戸先側縦框44)の見え掛かり面に室内側から重なるように配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記下框には、前記戸車が設けられ、前記戸車は、少なくとも2以上の車輪を支持する内側ケース(例えば、後述の内側ケース53)と、前記内側ケースを一方向(例えば、後述の水平方向、横方向)に移動可能に支持する中ケース(例えば、後述の中ケース52)と、該中ケースを一方向に移動可能に支持する外側ケース(例えば、後述の外側ケース51)とを備えたユニットからなり、前記ユニットが前記下框の端部に配置されることが好ましい。
【0011】
前記下框には、前記戸車が設けられ、少なくとも一方が開口した箱型の外ケースと、前記外ケースに収納され、一対の支持壁に傾斜溝が形成される中ケースと、前記外ケースの開口から露出する車輪(例えば、後述の車輪54)を支持する内ケースと、を備えたユニットからなり、前記中ケースが前記外ケースに対して前記下框の長手方向に移動可能に支持されることが好ましい。
【0012】
また、前記中ケースには、前記中ケースの移動方向に対して傾斜する傾斜溝(例えば、後述の傾斜貫通溝523)が形成され、前記外側には、ケース前記横方向に交差する方向に延びる縦溝(例えば、後述の外側中央貫通孔511)が形成され、前記内側ケースには、軸部材が貫通可能な軸部材貫通孔(例えば、後述の内側中央貫通孔531)が形成され、前記軸部材は、前記傾斜溝及び前記縦溝に係合していることが好ましい。
【0013】
また、前記下枠は、前記レールを形成する金属製下枠(例えば、後述の下枠屋内側本体222)と、前記金属製下枠の室内側に設けられ、前記障子の下框の見え掛かり面を隠蔽する樹脂製下枠(例えば、後述の下枠上側本体223)と、を備え、前記障子の框(例えば、後述の下框屋内側本体422)の屋内側の見え掛かり面の寸法(例えば、後述の寸法d2)が前記樹脂製下枠(例えば、後述の下枠上側本体(樹脂製下枠)223)の上端面から前記金属製下枠の網戸レール(例えば、後述の網戸レール2216)の立ち上がり面(例えば、後述の立ち上がり面2217)までの寸法(例えば、後述の寸法d7)よりも小さく構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大型のサッシにおいて、下框の見付け寸法を小さく構成することが可能なサッシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサッシの障子が開放された状態を示す正面図である。
【
図2】上記実施形態に係るサッシの縦断面図である。
【
図3】上記実施形態に係るサッシの横断面図である。
【
図4】上記実施形態に係るサッシの下部の拡大縦断面図である。
【
図5】上記実施形態に係るサッシの戸車の車輪が最も上側に位置している状態を示す側面図である。
【
図6】上記実施形態に係るサッシの戸車の車輪が最も下側に位置している状態を示す側面図である。
【
図7】上記実施形態に係るサッシの戸車を示す断面図である。
【
図8】上記実施形態に係るサッシの戸車の外側ケースを示す側面図である。
【
図9】上記実施形態に係るサッシの戸車の中ケースを示す側面図である。
【
図10】上記実施形態に係るサッシの戸車の内側ケースを示す側面図である。
【
図11A】上記実施形態に係るサッシの戸車の軸部材を示す側面図である。
【
図11B】上記実施形態に係るサッシの戸車の軸部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められたサッシの上枠、下枠の長手方向(すなわち、ガラスや障子の面内方向)を意味し、「見込方向」とは、屋内外方向(すなわち、奥行き方向)を意味する。
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係るサッシ1について説明する。
図1は、サッシ1の障子4が開放された状態を示す正面図である。
サッシ1は、建物の開口部10に取り付けられる枠体2と、枠体2内に枠の長手方向に沿って配置されるレール上を水平方向にスライド可能な障子4,4と、を備える引込み戸である。
【0018】
枠体2は、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,23と、中方立24と、を有しており、上枠21と、下枠22と、縦枠23,23とにより矩形に枠組みされる。
【0019】
障子4は、框体40(
図1等参照)と、框体40の内部に嵌め込まれる、例えば3枚のガラスからなる複層ガラスパネル45と、を備える。框体40は、上框41と、下框42と、戸尻側縦框43と、戸先側縦框44と、を框組みすることで構成される。下枠22は障子4の下框42の見え掛かり面に室内側から重なる位置に配置される。また、戸先側縦框44には、施錠装置46が設けられており、障子4の施錠開錠を可能としている。
【0020】
図2に示すように、上枠21は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である金属製の上枠屋外側本体211と、上枠屋外側本体211の屋内側に接続され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である金属製の上枠屋内側本体212と、上枠屋内側本体212の下部に固定され内部が複数の断面矩形の中空部を有するホロー構造である樹脂製の上枠下側本体213と、を備える。上枠下側本体213の下端部の屋外側には、障子4の上框41に接触しないように気密材2136が設けられている。
図2は、サッシ1の縦断面図である。
【0021】
上枠屋外側本体211と、上枠屋内側本体212と、上枠下側本体213とにより、見付方向内側である
図2中の下側へ開口するガラスパネル支持凹部217が形成されている。ガラスパネル支持凹部217には、障子4の上部が配置されている。上枠屋外側本体211には、それぞれ下側へ延びる延出部2171、2172が接続されている。
【0022】
下枠22は、
図2、
図4に示すように、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である下枠屋外側本体221と、下枠屋外側の屋内側に樹脂製の断熱材2215を介して連結され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である下枠屋内側本体222と、下枠屋内側本体222の上部に固定され内部が複数の断面矩形の中空部を有するホロー構造である下枠上側本体223と、を備える。
図4は、サッシ1の下部の拡大縦断面図である。
【0023】
下枠屋外側本体(金属製下枠)221と、下枠屋内側本体(金属製下枠)222と、下枠上側本体(樹脂製下枠)223とにより、見付方向内側である
図2中の上側へ開口する形状を有する屋外側凹部227が形成されている。下枠屋外側本体221の上面は、ほぼフラットな面であり、該上面には、
図4に示すように、下枠上面凸部2214と網戸レール2216とが設けられている。下枠上面凸部2214には、上側に向って開口するレール支持部材2212が固定されている。網戸レール2216は、図示しない網戸を支持可能である。下枠屋外側本体221の上面は、網戸レール2216の立ち上がり面2217を構成する。レール支持部材2212の開口には、戸車5の車輪54を走行させるレール2213が嵌め込まれて固定されている。下枠屋外側本体221の上面であって、レール支持部材2212と下枠上側本体223との間には、内部が複数の断面矩形の中空部を有するホロー構造である屋外側凹部底部材2211が設けられている。下枠上側本体223の上端部の屋外側には、障子4の下框42に接触しないように気密材2236が設けられている。下枠上側本体223の上面225は、床面FLとほぼ同一の高さに位置している。また、上面225と屋外側凹部底部材2211の上面との間隔d1は、下框屋内側本体422の見え掛かり面の寸法d2と略同じ寸法であり、屋内から屋外に出入りする際に支障を来さない段差、例えば、約46mmとしている。また、上面225と屋外側凹部底部材2211の上面との間隔d1、及び、下框屋内側本体422の見え掛かり面の寸法d2は、下枠上側本体(樹脂製下枠)223の上下方向の寸法である最大寸法d3よりも小さい。また、
図4に示すように、障子4の下框屋内側本体422見え掛かり面の寸法d2は、下枠上側本体(樹脂製下枠)223の上端面から下枠屋外側本体(金属製下枠)221の網戸レール2216の立ち上がり面2217までの寸法d7よりも小さい。また、
図2に示すように、寸法d2は、上框屋内側本体412の見え掛かり面の寸法d6よりも小さい。
【0024】
図3に示すように、縦枠23は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である縦枠屋外側本体231と、縦枠屋外側本体231の屋内側に接続され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である縦枠屋内側本体232と、縦枠屋内側本体232の見付方向内側に固定され内部が複数の断面矩形の中空部を有するホロー構造である縦枠内側本体233とを備える。
図3は、サッシ1の横断面図である。
【0025】
縦枠屋外側本体231の見付方向内側には、見付方向内側へ延びる屋外中央延出部2311が設けられている。縦枠内側本体233の見付方向内側の端部には、屋外側へ突出する気密材236が設けられている。
図3に示すように、障子4が閉鎖されているときには、屋外中央延出部2311と縦枠内側本体233との間に、障子4の見付方向における外側端部が配置される。
【0026】
図3に示すように、中方立24は、見付方向において縦枠内側本体233に対向する位置関係にあり、内部が複数の断面矩形の中空部を有するホロー構造であり見付方向において縦枠内側本体233に直接対向する縦枠内側対向本体242と、縦枠内側対向本体242に固定され断面矩形のホロー構造である中方立本体241とを備える。中方立本体241の屋外側の部分には、屋外側へ延びL字状に折れ曲がる外側煙返し2411が設けられている。また、中方立本体241の見付方向内側の端部には、屋外側へ突出する気密材246が設けられている。
【0027】
図2に示すように、上框41は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である金属製の上框屋外側壁部411と、上框屋外側壁部411の屋内側に係止等で固定され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である樹脂製の上框屋内側本体412と、を備える。上框屋内側本体412には、気密材2136が近接する。上框屋外側壁部411には、図中上側に延びる上框上側延出部4111、4112が設けられている。上框上側延出部4111と、上框上側延出部4112との間には、延出部2172が配置されている。
上框屋内側本体412の屋内側の部分には、図中下側へ延びる上框屋内下側延出部4121が設けられている。上框屋外側壁部411と上框屋内側本体412との下部には、見付方向内側である
図2中の下側へ開口するガラスパネル挿入凹部417が形成されている。ガラスパネル挿入凹部417には、見付方向内側である
図2中の下側に開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4171が設けられており、グレージングチャンネル4171の開口には、ガラスパネル45の上部が配置されて固定されている。上框屋外側壁部411及び上框屋内側本体412の下端部は、上下方向において上枠下側本体213の下面215に一致している。このため、上框41の見え掛かり面は、上枠屋内側本体212、上枠下側本体213により隠ぺいされる隠し框により構成されている。
【0028】
下框42は、屋外側に配置され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である金属製の下框屋外側壁部421と、下框屋外側壁部421の屋内側に固定され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である樹脂製の下框屋内側本体422と、を備える。下框屋内側本体422は、下枠上側本体223の気密材2236が近接する。下框屋外側壁部421の屋外側の部分には、上側へ延びる下框屋外上側延出部4211が設けられている。下框屋内側本体422の屋内側の部分には、上側へ延びる下框屋内上側延出部4221が設けられている。
下框屋外側壁部421と下框屋内側本体422との上部には、見付方向内側である
図2中の上側へ開口するガラスパネル挿入凹部427が形成されている。ガラスパネル挿入凹部427には、見付方向内側である
図2中の上側に開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4271が設けられており、グレージングチャンネル4271の開口には、ガラスパネル45の下部が配置されて固定されている。下框屋外側壁部421には、戸車5が設けられている。上框屋外側壁部411及び上框屋内側本体412の下端部は、上下方向において上枠下側本体213の下面215に一致している。従って、下框42の見え掛かり面は、下枠上側本体223により隠ぺいされる隠し框により構成されている。
【0029】
図3に示すように、戸尻側縦框43は、断面矩形のホロー構造である戸尻側縦框本体部431を備える。戸尻側縦框本体部431の屋内側の部分には、見付方向に平行な板状の屋内側板部材433が固定されている。屋内側板部材433には、気密材246が当接する。また、戸尻側縦框本体部431の戸尻端には、屋内側へ延びL字状に折れ曲がる内側煙返し4311が設けられている。戸尻側縦框本体部431の戸先側には、戸先側へ開口するガラスパネル挿入凹部437が形成されている。ガラスパネル挿入凹部437には、戸先側へ開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4371が設けられており、グレージングチャンネル4371の開口には、ガラスパネル45の戸尻側の部分が配置されて固定されている。戸尻側縦框本体部431及び屋内側板部材433の見付方向内側端部は、見付方向において縦枠内側対向本体242の側面245に一致している。従って、戸尻側縦框43の見え掛かり面は、縦枠内側対向本体242により隠ぺいされる隠し框により構成されている。
【0030】
戸先側縦框44は、屋内側に配置され且つ複数の断面矩形の室に区画されたホロー構造である戸先框屋内側壁部441と、戸先框屋内側壁部441の屋外側に固定され且つ中空部を有する断面矩形のホロー構造である戸先框屋外側本体442と、を備える。戸先框屋内側壁部441には、気密材236が当接する。戸先框屋内側壁部441と戸先框屋外側本体442との戸尻側の部分には、戸尻側へ開口するガラスパネル挿入凹部447が形成されている。ガラスパネル挿入凹部447には、戸尻側に開口する断面コの字形状のグレージングチャンネル4471が設けられており、グレージングチャンネル4471の開口には、ガラスパネル45の戸先側の部分が配置されて固定されている。戸先框屋内側壁部441及び戸先框屋外側本体442の見付方向内側端部は、見付方向において縦枠内側本体233の側面235に一致している。従って、戸先側縦框44の見え掛かり面は、縦枠内側本体233により隠ぺいされる隠し框により構成されている。また、
図3に示すように、側面235と、縦枠屋内側本体232の見付方向内側の面2321との間隔d4は、戸先框屋外側本体442の見え掛かり面d5と略同じ寸法である。
【0031】
図5、
図6に示すように、戸車5は、外側ケース51と、外側ケース51に収納される中ケース52と、中ケース52に収納される内側ケース53と、直径が約30mmの車輪54を4つ備えるユニットにより構成されている。この戸車5が下框42の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられ、合計8つの車輪54で障子4の重量を支えている。外側ケース51は、
図8に示すように、底面が開放された直方体形状(箱型)に形成されている。開放された底面の開口から、後述の車輪54が露出する。
図5は、サッシ1の戸車5の車輪54が最も上側に位置している状態を示す側面図である。
図6は、サッシ1の戸車5の車輪54が最も下側に位置している状態を示す側面図である。
図8は、サッシ1の戸車5の外側ケース51を示す側面図である。
外側ケース51の側面であって外側ケース51の長手方向(
図8の左右方向)における中央部には、外側ケース51の下端部近傍の位置から上面の近傍の位置まで延びる上下方向溝である外側中央貫通孔511が形成されている。外側中央貫通孔511は、外側ケース51の長手方向である横方向に対する縦方向としての上下方向に延びており、外側中央貫通孔511の下端部の幅は、外側ケース51の長手方向(
図8の左右方向)に広がっている。外側中央貫通孔511の上部には、2つの斜辺が接続された角部512が設けられており、角部512には、後述の軸部材6の周面直線状部62が係合可能である。また、外側中央貫通孔511と、外側ケース51の端部との中央部には、長方形状に形成された支持貫通孔513が形成されている。
【0032】
外側ケース51の長手方向における端部(
図8に示す左側の端部)には、外側ケース51の長手方向に貫通する貫通孔514が形成されており、
図5に示すように、貫通孔514にはボルト515が螺合している。大型で荷重が非常に大きい障子4を支える戸車5であっても、ボルト515を回転させる際にボルト515のネジ頭が破損しないように、ボルト515の頭部には、六角レンチを挿入して回転可能な図示しない六角形の凹部が形成されている。ボルト515をこのように構成したことにより、ボルト515が高荷重に耐えて破損せず、且つ、戸車5を簡単に組み立てることができる。ボルト515が回転させられることにより、ボルト515が外側ケース51の長手方向(
図8に示す左右方向)に進退し、外側ケース51の内部に収容されている中ケース52を左右方向に移動するように構成されている。
【0033】
中ケース52は、
図9に示すように、上面及び下面が開放された直方体形状(箱型)に形成されている。
図9は、サッシ1の戸車5の中ケース52を示す側面図である。
中ケース52の側面には、中ケース52の長手方向(
図9の左右方向)に等間隔で下部貫通孔521が形成されている。下部貫通孔521は、それぞれ平行四辺形状に形成されている。中央の下部貫通孔521と、中ケース52の長手方向における一方の端部の下部貫通孔521(
図9の左側の下部貫通孔521)との間には、下部凸部522が設けられており、下部凸部522は、外側ケース51の支持貫通孔513に係合している。これにより、中ケース52は、外側ケース51によって、外側ケース51に対して水平方向へ移動可能に、且つ、外側ケース51から外れないように支持されている。即ち、中ケース52は外側ケースに対して下框42の長手方向に移動可能に支持されている。
【0034】
中央の下部貫通孔521と、中ケース52の長手方向における他方の端部の下部貫通孔521(
図9の右側の下部貫通孔521)との間には、中ケース52の上端部から中央の下部貫通孔521に向かって傾斜して延びる傾斜溝である傾斜貫通溝523が形成されている。傾斜貫通溝523は、中ケース52の長手方向、即ち、外側ケース51が中ケース52に対して相対的に移動する方向に対して下方に傾斜しており、傾斜貫通溝523の上端部は、上側に向かって延び、上方に向かって開口している。
【0035】
内側ケース53は、
図10に示すように、上面、正面及び背面及び下面の一部が開放された直方体形状(箱型)に形成されており、中ケース52内において、中ケース52に対して上下方向に移動可能に外側ケース51に支持されている。内側ケース53の長手方向における中央部は、上側に僅かに突出している。
図10は、サッシ1の戸車5の内側ケース53を示す側面図である。
内側ケース53の側面であって内側ケース53の長手方向(
図10の左右方向)における中央部の上部には、円形の内側中央貫通孔531が形成されている。
【0036】
内側ケース53の側面には、車軸挿入貫通孔533が形成されている。車軸挿入貫通孔533は、内側ケース53の長手方向に等間隔で4つ形成されており、
図10に示すように、円形の貫通孔により構成されている。
また、内側ケース53の下面には4つの下部開口534が形成されている。下部開口534には、車輪54の下部が配置される。これにより、戸車5の上下方向の高さが抑えられている。
【0037】
内側ケース53の内側中央貫通孔531には、軸部材6が挿入されて貫通している。軸部材6は、
図11A、
図11Bに示すように、円柱形状の中央部61と、軸部材6の軸方向の両端部を構成する周面直線状部62とを有している。
図11Aは、サッシ1の戸車5の軸部材6を示す側面図である。
図11Bは、サッシ1の戸車5の軸部材6を示す正面図である。
【0038】
周面直線状部62は、内側ケース53の内側中央貫通孔531、中ケース52の傾斜貫通溝523、及び、外側ケース51の外側中央貫通孔511を貫通しており、これにより、内側ケース53は、外側ケース51及び中ケース52に対して僅かに揺動可能である。周面直線状部62の周面は、傾斜貫通溝523の側壁に倣って平行に傾斜する一対の平面である傾斜直線状部621と、外側中央貫通孔511の側壁に倣って平行な直線状の一対の平面である垂直線状部622と、を有している。傾斜直線状部621は、傾斜貫通溝523の側壁に斜面同士面で当接し、垂直線状部622は、外側中央貫通孔511に垂直方向に延びる面同士で当接する。
図11Aに示すように、周面直線状部62の部分は、中央部61よりも小さい。即ち、中央部61の軸方向における端面は、傾斜貫通溝523を形成している中ケース52の部分に当接する。従って、中央部61は、傾斜貫通溝523、外側中央貫通孔511を挿通不能である。
【0039】
車輪54は、
図7等に示すように、樹脂製の外輪部541と、車軸542と、ベアリング543とを備えている。車軸542は外輪部541を貫通している。
図7は、サッシ1の戸車5を示す断面図である。
外輪部541の周面には、レール2213に係合する溝5411が形成されている。外輪部541は、車軸542と同軸的な位置関係で車軸542の外周を取り囲んで配置されている。外輪部541と車軸542との間には、ベアリング543が配置されており、外輪部541は車軸542に対して滑らかに回転可能に構成されている。
図5に示す左側の3つの車軸542は、中ケース52の下部貫通孔521に挿入されている。
【0040】
次に、戸車5の車輪54の上下方向における位置の調整について説明する。先ず、
図5に示すように、外側ケース51に対して車輪54が最も上側に配置されているときには、中ケース52は外側ケース51の内部において、最も
図5における左側に位置している。このとき、軸部材6は、傾斜貫通溝523の中央の位置にある。
【0041】
次に、外側ケース51のボルト515を回転させることにより、
図5に示すボルト515の右端部を、中ケース52を
図5における右方向へ移動させる。この際、中ケース52の側面の上端面526の全体は、外側ケース51の上面を構成する上壁516の内側に当接した状態が維持され、この当接する部分により、障子4の荷重を受けている。この移動により、軸部材6は、中ケース52の傾斜貫通溝523に沿って、相対的に傾斜貫通溝523の左下側へ移動すると共に、外側ケース51の外側中央貫通孔511に沿って、相対的に下側へ移動する。即ち、中ケース52の上端面526を外側ケース51の上壁516に面接触させた状態が維持されて、中ケース52の傾斜貫通溝523に沿って内側ケース53が外側ケース51に対してスライドする。
また、車軸542は、平行四辺形状の下部貫通孔521において、
図5に示す右上の部分から
図6に示すように、左下の部分へ移動する。これにより、車輪54は、内側ケース53と共に、外側ケース51に対して下方向へ移動して、外側ケース51に対して車輪54が最も下側へ配置された状態となる。
【0042】
以上説明した本実施形態の戸車5によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態においては、サッシの枠体20を構成する下枠22には長手方向に沿うレール2213が形成され、障子4の下端部にはレール2213を走行自在な樹脂製の戸車5が設けられ、障子4の下框42は、隠し框により構成される。
具体的には、下枠22は、レール2213を形成する金属製下枠である下枠屋内側本体222と、下枠屋内側本体222の室内側に設けられ、障子4の下框42の見え掛かり面を隠蔽する樹脂製下枠である下枠上側本体223と、を備えている。障子4の框(下框42)の屋内側の見え掛かり面の寸法(d2)が下枠上側本体223の最大寸法d3よりも小さく構成される。また、障子4の下框屋内側本体422見え掛かり面の寸法d2は、下枠上側本体(樹脂製下枠)223の上端面から下枠屋外側本体(金属製下枠)221の網戸レール2216の立ち上がり面2217までの寸法d7よりも小さく構成される。
そのため、本実施形態の大型サッシの障子4では、上框、縦框に比べ、下框42の見え掛かり面の寸法は小さくなっており、これにより、障子4の四方框が隠ぺいされ、障子を閉めた状態ではガラスしか見えず、ノイズレスのデザインを実現することができるものである。なお、隠し框構造としたことにより、四方框の室内側には下枠屋内側本体222、下枠上側本体223が配置されるため、断熱性能、耐風圧性能においても、構造上も有利に働き、框の見え掛かり面の寸法を小さくすることができる。
これにより、戸車5を備える大型の障子4を有する大型のサッシ1において隠し框構造を採ることが可能となる。
【0043】
また、下框42には、戸車5が設けられ、戸車5は、外側ケース51と、外側ケース51に対して水平方向へ移動可能に外側ケース51に支持された中ケース52と、中ケース52に対して上下方向へ移動可能に中ケース52に支持され、車輪54を回転可能に支持する内側ケース53と、を備え、中ケース52には、水平方向及び上下方向に対して傾斜する傾斜溝としての傾斜貫通溝523が形成され、外側ケース51には、上下方向に延びる上下方向溝としての外側中央貫通孔511が形成され、内側ケース53には、軸部材6が貫通可能な軸部材貫通孔としての内側中央貫通孔531が形成され、軸部材6は、傾斜貫通溝523及び外側中央貫通孔511に係合している。
【0044】
これにより、戸車5において車輪54の高さ調整を行う際に、内側ケース53が外側ケース51から離れずに、当接した状態が維持されるため、車輪54にかかる荷重を内側ケース53と外側ケース51との両方で支える事ができる。更に、車輪54の数を多くすることにより、車輪54の一個あたりにかかる重量を分散させることができ、これにより、車輪54の径を小さくすることができ、結果的に下框42の見付けを小さくできる。このため、戸車5を備える下框42を隠す隠し框を備えるサッシ1を提供することができ、ノイズレスなサッシを実現することが可能となる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。例えば、戸車の各部の構成は、本実施形態における戸車5の各部の構成に限定されない。例えば、1つの戸車が備える車輪の数は、本実施形態における戸車5の車輪54の数に限定されない。また、外側ケース、中ケース、内側ケースの構成は、本実施形態における外側ケース51、中ケース52、内側ケース53の構成に限定されない。また、本発明は、上記実施形態では、片引きサッシを例に説明したが、引違いサッシであっても同様である。
【符号の説明】
【0046】
1…サッシ
4…障子
5…戸車
10…開口部
20…枠体
22…下枠
42…下框
51…外側ケース
52…中ケース
53…内側ケース
222…下枠屋内側本体(金属製下枠)
223…下枠上側本体(樹脂製下枠)
511…外側中央貫通孔(縦溝)
523…傾斜貫通溝(傾斜溝)
531…内側中央貫通孔(軸部材貫通孔)
2213…レール
2216…網戸レール
2217…立ち上がり面
d2…寸法
d3…最大寸法
d7…寸法