(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】表示制御システム、表示制御方法および遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230616BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230616BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20230616BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H04N7/18 J
E02F9/26 B
E02F9/20 N
G05D1/00 B
(21)【出願番号】P 2018205854
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】指宿 康洋
(72)【発明者】
【氏名】森永 淳
(72)【発明者】
【氏名】皆川 真範
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-348914(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047826(WO,A1)
【文献】特開平05-096985(JP,A)
【文献】特開2016-111509(JP,A)
【文献】特開2012-001041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
E02F 9/26
E02F 9/20
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を遠隔操作するための遠隔操作装置の運転席に対向する表示装置の表示制御システムであって、
前記作業車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、 前記作業車両のロール角およびピッチ角の少なくとも一方を表す姿勢画像を取得する姿勢画像取得部と、
前記姿勢画像が前記表示装置の前記運転席に対向する位置に表示されるように、前記撮像画像のうち前記作業車両が写り得る領域に前記姿勢画像を配置した表示画像を生成する表示画像生成部と、
前記表示画像を表示させる表示信号を、前記表示装置に出力する表示制御部と
を備え、
前記撮像装置は前記作業車両の運転室内に設けられ、
前記表示画像生成部は、前記撮像画像のうち前記運転室の内部が写る領域に前記姿勢画像を配置する
表示制御システム。
【請求項2】
前記表示画像生成部は、前記表示装置を前記運転席の後方から前記表示装置を平面視したときに前記姿勢画像が前記運転席と重なる領域、または前記表示装置を平面視したときに前記運転席の左右に設けられた操作レバーに挟まれる領域内に表示されるように、前記表示画像を生成する
請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項3】
前記姿勢画像は照準画像を含み、
前記表示装置の幅方向における前記照準画像の位置によって前記作業車両のロール角を表し、
前記表示装置の高さ方向における前記照準画像の位置によって前記作業車両のピッチ角を表す
請求項1
または請求項2に記載の表示制御システム。
【請求項4】
作業車両を遠隔操作するための遠隔操作装置の運転席に対向する表示装置の表示制御方法であって、
前記作業車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得するステップと、
前記作業車両のロール角およびピッチ角の少なくとも一方を表す姿勢画像を取得するステップと、
前記姿勢画像が前記表示装置の前記運転席に対向する位置に表示されるように、前記撮像画像のうち前記作業車両が写り得る領域に前記姿勢画像を配置した表示画像を生成するステップと、
前記表示装置に前記表示画像を表示するステップと
を備え、
前記撮像装置は前記作業車両の運転室内に設けられ、
前記表示画像を生成するステップでは、前記撮像画像のうち前記運転室の内部が写る領域に前記姿勢画像を配置する
表示制御方法。
【請求項5】
作業車両を遠隔操作するための遠隔操作システムであって、
前記作業車両の運転室内に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像、および前記作業車両のロール角およびピッチ角の少なくとも一方を表す姿勢画像を表示する表示装置と、
前記表示装置に対向するように設けられた運転席と、
を備え、
前記姿勢画像は、前記表示装置の幅方向において前記運転席に対向する位置であって、前記撮像画像のうち前記運転室の内部が写る領域に表示される
遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を遠隔操作するための遠隔操作装置における表示装置の表示制御システム、表示制御方法、および遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両を遠隔操作する技術が知られている。作業車両を遠隔操作するためには、外部から作業車両の周囲の状況が認識可能である必要がある。そのため、遠隔操作される作業車両は、周囲の状況を撮像する撮像装置と撮像された画像を外部に送信する通信機を備える。これにより、オペレータは、作業車両から送信される画像を視認しながら操作を行うことができる。
また、特許文献1には、オペレータに作業機械の傾きを認識させるために、表示装置に水準器を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水準器の表示では、オペレータが作業車両の傾きを直感的に認識することができない可能性がある。例えば、運転席の傍に設けられた表示装置の画面が運転席正面に対して斜めまたは横に向けられている場合、オペレータが表示装置に表示される水準器を視認した際に、当該水準器が物理的な水準器と異なる挙動をとるために、オペレータが作業車両の傾きを直感的に認識することができない可能性がある。特に遠隔操作においては、オペレータは撮像画像を見ながら操作を行うため、作業車両の傾きを体感することができず、作業車両の傾きを認識することが困難である。
本発明の態様は、オペレータに作業車両の傾きを直感的に認識させることができる表示制御システム、表示制御方法、および遠隔操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、表示制御装置は、作業車両を遠隔操作するための遠隔操作装置の運転席に対向する表示装置の表示制御システムであって、前記作業車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記作業車両のロール角およびピッチ角の少なくとも一方を表す姿勢画像を取得する姿勢画像取得部と、前記姿勢画像が前記表示装置の前記運転席に対向する位置に表示されるように、前記撮像画像上に前記姿勢画像を配置した表示画像を生成する表示画像生成部と、前記表示画像を表示させる表示信号を、前記表示装置に出力する表示制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、表示制御装置は、オペレータに作業車両の傾きを直感的に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る作業車両の外観図である。
【
図3】第1の実施形態に係る作業車両の撮像装置が撮像する画像の例である。
【
図4】第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】前方カメラが撮像した画像から切り出される画像の例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る表示装置に表示される表示画像の例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置による表示制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《遠隔操作システム》
図1は、第1の実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す概略図である。
遠隔操作システム1は、遠隔操作により動作する作業車両100と、遠隔操作を行うための遠隔運転室500とを備える。作業車両100は、作業現場(例えば、鉱山、採石場)に設けられる。遠隔運転室500は、作業車両100から離れた地点(例えば、市街、作業現場内)に設けられる。作業車両100と遠隔運転室500とは、インターネットなどのネットワークを介して接続される。
遠隔操作システム1は、遠隔運転室500を用いて作業車両100を操作するためのシステムである。
【0009】
作業車両100は、遠隔運転室500から受信する操作信号に従って動作する。
遠隔運転室500は、オペレータの操作により、作業車両100の操作を受け付け、操作信号を作業車両100に送信する。遠隔運転室500は、遠隔操作装置の一例である。
【0010】
《作業車両》
図2は、第1の実施形態に係る作業車両の外観図である。
第1の実施形態に係る作業車両100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る作業車両100は、油圧ショベル以外の例えばホイールローダ、ブルドーザ等の作業車両であってもよい。
作業車両100は、油圧により駆動する作業機130と、作業機130を支持する旋回体120と、旋回体120を支持する走行体110とを備える。
【0011】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133とを備える。ブーム131の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための容器とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0012】
旋回体120には、運転室121が備えられる。運転室121は、作業機130の左側に設けられる。運転室121には、前方カメラ122が設けられる。前方カメラ122は、運転室121内の前部かつ上部に設置される。前方カメラ122は、運転室121前部のフロントガラスを通して、運転室121の前方を撮像する。ここで、「前方」とは、旋回体120において作業機130が装着された方向をいい、「後方」は「前方」の逆方向をいう。「側方」とは、前後方向に対して交差する方向(左右方向)をいう。前方カメラ122の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いた撮像装置が挙げられる。
図3は、第1の実施形態に係る作業車両の撮像装置が撮像する画像の例である。前方カメラ122は、作業機130および運転室121の前方の作業対象が写る範囲を撮像する。つまり、前方カメラ122が撮像する画像P1には、
図3に示すように、作業機130および運転室121の前方の作業対象が写る。また、運転室121が作業機130の左側に設けられるため、画像P1の右側部分には、ブーム131の一部が写りこんでいる。また、画像P1の上側部分には、運転室121の天井部分が写りこんでいる。
【0013】
作業車両100は、前方カメラ122、位置方位演算器123、傾斜計測器124、制御装置125を備える。
【0014】
位置方位演算器123は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器123は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器123は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器123は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。
なお、他の実施形態においては、位置方位演算器123は、ロータリーエンコーダやIMUの計測値に基づいて旋回体120が向く方位を検出してもよい。
【0015】
傾斜計測器124は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器124は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器124は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。傾斜計測器124は、加速度および角速度によらずに傾斜角を検出する傾斜計であってもよい。また、他の実施形態に係る作業車両100は傾斜計測器124を備えなくてもよい。
【0016】
制御装置125は、前方カメラ122が撮像した画像、ならびに旋回体120の旋回速度、位置、方位および傾斜角を、遠隔運転室500に送信する。以下、作業車両100が備える各種センサによって計測され、制御装置125が送信する情報を、車体情報ともいう。制御装置125は、遠隔運転室500から操作信号を受信する。制御装置125は、受信した操作信号に基づいて、作業機130、旋回体120、または走行体110を駆動させる。
【0017】
《遠隔運転室》
遠隔運転室500は、運転席510、第1表示装置520、第2表示装置530、操作装置540、制御装置550を備える。
第1表示装置520は、運転席510と向かい合うように配置される。運転席510に向かい合うように配置されることは、オペレータに対向して配置されることと等価である。第1表示装置520は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの眼前に位置する。第1表示装置520は、
図1に示すように、並べられた中央ディスプレイ521、左ディスプレイ522、右ディスプレイ523、上ディスプレイ524、下ディスプレイ525によって構成される。左ディスプレイ522は中央ディスプレイ521の左側に設けられる。右ディスプレイ523は中央ディスプレイ521の右側に設けられる。上ディスプレイ524は中央ディスプレイ521の上側に設けられる。下ディスプレイ525は中央ディスプレイ521の下側に設けられる。つまり、第1表示装置520のうち中央ディスプレイ521、上ディスプレイ524および下ディスプレイ525は、運転席510の真正面に配置される。なお、中央ディスプレイ521、上ディスプレイ524および下ディスプレイ525には、作業対象物や作業機130のうちバケット133の部分が映る。
なお、他の実施形態においては、第1表示装置520を構成するディスプレイの数はこれに限られない。例えば、第1表示装置520は1つのディスプレイによって構成されてもよい。また、第1表示装置520は、プロジェクタ等によって曲面や球面に画像を投影するものであってもよい。
【0018】
第2表示装置530は、運転席510の斜め前方に、画面が運転席510を向くように配置される。第2表示装置530には、作業車両100から送信された車体情報(燃料残量、エンジン水温)や、作業車両100の異常の通知などが表示される。なお、他の実施形態においては、第2表示装置530の位置は、オペレータによって視認が可能な位置であれば、運転席510の斜め前方でなくてもよい。また他の実施形態に係る遠隔運転室500は第2表示装置530を備えなくてもよい。
【0019】
操作装置540は、運転席510の近傍に配置される。操作装置540は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。操作装置540は、例えば電気式レバーおよび電気式ペダルを備える。オペレータが電気式レバーおよび電気式ペダルを操作することで、操作装置540は、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号、旋回体120の旋回操作信号、ならびに走行体110の走行操作信号を出力する。なお、操作装置540は例えば2つのレバーを備える。2つのレバーは運転席510の両側に設けられる。2つのレバーの位置はオペレータによる運転席510からの乗り降りに影響するため、2つのレバーは、運転席510の左右のひじ掛けの位置など、少なくとも運転席の幅と同等または運転席510の幅より広い間隔で設けられる。なお、2つのレバーは、対向する第1表示装置520の幅よりも狭い間隔で設けられる。
【0020】
制御装置550は、作業車両100から受信した画像および車体情報を、第1表示装置520に表示させる。つまり、制御装置550は、表示制御システムの一例である。また制御装置550は、操作装置540に入力された操作信号を作業車両100に送信する。なお、表示制御システムは、制御装置550を含む遠隔運転室500であってもよいし、さらに作業車両100の制御装置125、および前方カメラ122を備えてもよい。
【0021】
《遠隔運転室の制御装置》
図4は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置550は、プロセッサ910、メインメモリ930、ストレージ950、インタフェース970を備えるコンピュータである。ストレージ950は、プログラムを記憶する。プロセッサ910は、プログラムをストレージ950から読み出してメインメモリ930に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0022】
ストレージ950の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ950は、制御装置550の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース970を介して制御装置550に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ950は、一時的でない有形の記憶媒体である。なお、他の実施形態においては、制御装置550は、上記構成に加えて、または上記構成に代えて、PLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのセミカスタムLSIを備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ910によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0023】
プロセッサ910は、プログラムの実行により、車体情報受信部911、画像切出部912、水準器画像生成部913、表示画像生成部914、表示制御部915、操作信号送信部916を備える。
【0024】
車体情報受信部911は、前方カメラ122が撮像した画像、ならびに旋回体120の旋回速度、位置、方位および傾斜角を、作業車両100から受信する。つまり、車体情報受信部911は、撮像画像取得部の一例である。
【0025】
図5は、前方カメラが撮像した画像から切り出される画像の例を示す図である。
画像切出部912は、車体情報受信部911が受信した前方カメラ122が撮像した画像P1から、中央ディスプレイ521に表示させるための中央画像P11、左ディスプレイ522に表示させるための左画像P12、右ディスプレイ523に表示させるための右画像P13、上ディスプレイ524に表示させるための上画像P14、下ディスプレイ525に表示させるための下画像P15をそれぞれ切り出す。
図4に示すように、右画像P13の多くの部分には、ブーム131が写りこんでいる。また、上画像P14の上部には、運転室121の天井部分が写りこんでいる。なお、作業機130の姿勢によってブーム131が写る位置は変化し得るが、前方カメラ122の配置および作業車両100の構造上、右画像P13にはブーム131が写る。以下、画像において作業車両100の一部が写りこむ領域を、「作業車両100の一部が写り得る領域」ともいう。つまり、「作業車両100の一部が写り得る領域」は、作業車両100の姿勢によらず作業車両100の一部が常に写る領域に限られない。なお、第1表示装置520が1つのディスプレイから構成される場合、画像切出部912は画像の切り出しを行わなくてもよい。
【0026】
図6は、水準器画像の例を示す図である。
水準器画像生成部913は、車体情報受信部911が受信した旋回体120の傾斜角に基づいて、作業車両100のロール角およびピッチ角を表す水準器を模した水準器画像P2を生成する。水準器画像P2の画素は、互いに直交するX軸およびY軸で表される座標によって規定される。
図6において、右方向が+X方向、左方向が-X方向、上方向が-Y方向、下方向が+Y方向である。水準器画像P2は、作業車両100の姿勢を表す姿勢画像の一例である。
図6に示す水準器画像P2は、気泡式水準器を上面からみた表示態様となっている。水準器画像P2は、筐体画像P21と泡画像P22と標線画像P23とを含む。筐体画像P21は、気泡式水準器の筐体を模した画像である。泡画像P22は、気泡式水準器の気泡を模した画像である。泡画像P22は、筐体画像P21の内側に描画される。泡画像P22の中心位置が旋回体120の傾きの方向および大きさを表す。すなわち、泡画像P22が筐体画像P21の中央に位置するとき、旋回体120のピッチ角およびロール角はいずれもゼロである。泡画像P22が筐体画像P21の中央より+X方向に位置する場合、水準器画像P2は、旋回体120が右に傾いている(右手系でロール角が負値である)ことを表す。泡画像P22が筐体画像P21の中央より-X方向に位置する場合、水準器画像P2は、旋回体120が左に傾いている(右手系でロール角が正値である)ことを表す。泡画像P22が筐体画像P21の中央より+Y方向に位置する場合、水準器画像P2は、旋回体120が前方に傾いている(右手系でピッチ角が負値である)ことを表す。泡画像P22が筐体画像P21の中央より-Y方向に位置する場合、水準器画像P2は、旋回体120が後方に傾いている(右手系でピッチ角が正値である)ことを表す。泡画像P22は、照準画像の一例である。
標線画像P23は、X軸およびY軸ならびに筐体画像P21の中心を示す。
【0027】
図7は、第1の実施形態に係る表示装置に表示される表示画像の例を示す図である。
表示画像生成部914は、水準器画像P2を、画像切出部912が切り出した上画像P14に配置することで、表示用上画像P14aを生成する。このとき、表示画像生成部914は、上画像P14のうち、運転室121の天井部分が写る配置領域R内、かつ上ディスプレイ524に表示させたときに幅方向において運転席510に対向する鉛直線L上の位置に、水準器画像P2を配置する。また、水準器画像P2は、上ディスプレイ524に表示させたときに、ディスプレイの水平方向と標線画像P23のX軸とが平行となるように配置される。なお、水準器画像P2は、オペレータが撮像画像を見ながら視線をあまり動かすことなく操作可能とするため、上ディスプレイ524に表示されることが好ましい。また、他の実施形態においては、上ディスプレイ524に水準器画像P2に加え、ペイロード情報などを表す他の画像を表示させてもよい。
【0028】
表示制御部915は、中央ディスプレイ521に中央画像P11を表示させる。左ディスプレイ522に左画像P12を表示させる。制御装置550は、右ディスプレイ523に右画像P13を表示させる。制御装置550は、上ディスプレイ524に表示用上画像P14aを表示させる。制御装置550は、下ディスプレイ525に下画像P15を表示させる。
【0029】
操作信号送信部916は、オペレータによる操作装置540の操作に基づいて操作信号を生成し、作業車両100に送信する。
【0030】
《遠隔運転室の表示制御方法》
図8は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の制御装置による表示制御方法を示すフローチャートである。作業車両100の遠隔操作が開始されると、制御装置550は、以下に示す表示制御を所定の周期で実行する。
車体情報受信部911は、作業車両100の制御装置125から車体情報を受信する(ステップS11)。次に、画像切出部912は、受信した車体情報のうち前方カメラ122が撮像した画像P1から、中央画像P11、左画像P12、右画像P13、上画像P14、および下画像P15をそれぞれ切り出す(ステップS12)。
【0031】
水準器画像生成部913は、受信した車体情報のうち旋回体120の傾斜角に基づいて、旋回体120の傾きを表す水準器画像P2を生成する(ステップS13)。表示画像生成部914は、水準器画像P2を上画像P13の配置領域R内かつ運転席510に対向する鉛直線L上の位置に配置することで、表示用上画像P14aを生成する(ステップS14)。表示制御部915は、中央画像P11、左画像P12、右画像P13、表示用上画像P14a、および下画像P15を、第1表示装置520に表示させるための表示信号を生成し、第1表示装置520に送信する(ステップS15)。
【0032】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る遠隔運転室500の制御装置550は、水準器画像P2が第1表示装置520の幅方向において運転席510に対向する鉛直線L上の位置に表示されるように、上画像P14上に水準器画像P2を配置する。つまり、運転席510と第1表示装置520とは互いに対向するように設けられる。オペレータは運転席510に座ることで中央ディスプレイ521に正対する。そのため、オペレータは、左右方向へ顔を向けることなく、上ディスプレイ524に表示された水準器画像P2を視認することができる。またこれにより、撮像画像P1の左右方向と水準器画像P2の左右方向とが一致するため、上ディスプレイ524に表示された水準器画像P2は、撮像画像P1と矛盾のない挙動をとる。したがって、オペレータは、作業車両100の傾きを直感的に認識することができる。なお、水準器画像P2は、左ディスプレイ522または右ディスプレイ523に表示されてもよいが、オペレータに作業車両100の傾きを直感的に認識させるためには、水準器画像P2はオペレータに正対する中央ディスプレイ521、上ディスプレイ524、または下ディスプレイ525に表示されることが好ましい。
【0033】
なお、水準器画像P2が、例えば第2表示装置530に表示される場合、第2表示装置530は運転席の斜め前に、画面が運転席を向くように配置される。そのため、中央ディスプレイ521に表示される撮像画像P1の左右方向と、第2表示装置530に表示される水準器画像P2の左右方向とが一致しなくなる。この場合、オペレータは、作業車両100の傾きを直感的に認識することができることが困難となる。
【0034】
また、第1の実施形態に係る制御装置550は、撮像画像P1のうち作業車両100が写る配置領域Rに水準器画像を配置する。これにより、表示画像において作業対象を隠すことなく水準器画像P2を表示することができる。したがって、水準器画像P2がオペレータによる作業車両100の操作の邪魔になることを防ぐことができる。なお、第1の実施形態に係る制御装置550は、運転室121の天井が写る領域に水準器画像P2を表示するが、これに限られない。例えば、他の実施形態において、下画像P15に運転室121の床面が写る領域がある場合、当該領域に水準器画像P2を表示してもよい。他方、他の実施形態においては、水準器画像P2がオペレータに対向する表示装置の任意の位置に配置されていてもよい。このとき、水準器画像P2は、画像中心が鉛直線L上に位置するように配置されてもよいし、画像の少なくとも一部分が鉛直線Lに重なるように配置されてもよい。また、例えば、水準器画像P2は、第1表示装置520のうち後方からの平面視において運転席510と重なる幅方向の領域La、もしくは第1表示装置520のうち後方からの平面視において操作レバーに挟まれる幅方向の領域Lbに少なくとも一部分が重なるように配置されてもよい。また、鉛直線Lの画面上の位置は、必ずしも画面中央を通るとは限らない。
【0035】
また、第1の実施形態に係る水準器画像P2は泡画像P22を含み、第1表示装置520の幅方向における泡画像P22の位置によって作業車両100のロール角を表し、第1表示装置520の高さ方向における泡画像P22の位置によって作業車両100のピッチ角を表す。
なお、他の実施形態においては、水準器画像P2は、気泡式水準器を模したものでなくてもよい。例えば、他の実施形態においては、水準器画像P2は航空機の姿勢指示器やレーザー水準器を模したものであってもよい。また例えば、水準器画像P2に代えて、俯瞰画像において、画像中央に表示された作業車両100の画像がロール角またはピッチ角に応じて傾くような他の姿勢画像が表示されてもよい。つまり、他の実施形態に係る姿勢画像は、ロール角およびピッチ角の少なくとも一方を表示するものであればよい。
【0036】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
上述した実施形態では、作業車両100から受信した車両情報に基づいて制御装置550が水準器画像P2を生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、作業車両100の制御装置125や、外部のサーバ装置が水準器画像P2を生成し、制御装置550がこれを受信して表示するものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…遠隔操作システム 100…作業車両 110…走行体 120…旋回体 121…運転室 122…前方カメラ 123…位置方位演算器 124…傾斜計測器 125…制御装置 130…作業機 131…ブーム 132…アーム 133…バケット 500…遠隔運転室 510…運転席 第1520…表示装置 第2530…表示装置 540…操作装置 550…制御装置 911…車体情報受信部 912…画像切出部 913…水準器画像生成部 914…表示画像生成部 915…表示制御部 916…操作信号送信部