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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】タンクの防水及び保持構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B65D90/22 B
B65D90/22 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019004860
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111374
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省消防庁、平成30年度消防防災科学技術研究推進制度に係る委託研究、「危険物屋外貯蔵タンクの津波・水害による滑動等対策工法の確立」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】保延 宏行
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】宇野 州彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 研也
(72)【発明者】
【氏名】竹家 宏治
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-032179(JP,A)
【文献】特開2011-143930(JP,A)
【文献】実開昭60-115892(JP,U)
【文献】特開2014-069844(JP,A)
【文献】特開昭55-126066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水害時に水に浸かり得る地域において、基台の設置面に載置されたタンクの底部と基台の間に対して、前記タンクが水に浸かった場合に水の浸入を防止し、前記タンクに浮力を発生させないとともに、シート状のFRP繊維材の接着力により、前記タンクが前記基台より脱落、漂流を防止するための構造であって、
前記FRP繊維材は、前記タンクの側面下部から前記基台まで連続的に被覆接着され、前記タンクと前記基台との間が防水され、
前記FRP繊維材は、
前記タンクの側面下部を覆うように形成されると共に前記タンクの側面に接着され前記タンクの側面を保持する第1保持部と、前記第1保持部の下端部に連続して形成されると共に前記タンクの下端部の外周から径方向外側に突出して周方向に延びる環状のフランジの上方に空間を形成する第2保持部と、前記第2保持部に連続して形成され、前記基台の側面及び上面を覆うように接着されて形成されると共に前記基台の側面及び上面を保持する第3保持部とを備え
前記FRP繊維材は、地震の揺れや津波、水害の波力により前記タンクが傾いたときの前記タンクおよび前記基台に追従し、前記FRP繊維材の保持部同士の取り付け角度が変わるように変形可能に設けられ、
前記空間内には、前記フランジの上面と前記第2保持部の下面との間に挟持されるように配置された弾性部材備えることを特徴とするタンクの防水及び保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沿岸地域などに設けられたタンクを水害時にタンクの底部と基台の間に水の浸入を防ぐためのタンクの防水及び保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
港などの沿岸地域には、漁船などの船舶に燃料を補給するためのオイルタンク、ガスタンクが設けられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
例えば、漁船に燃料を補給するためのオイルタンクは、屋外に設置され、コンクリート製で環状の防油堤の内部に設けられたコンクリート製の基台等の上に設置されている。
【0004】
この種のタンクは、鋼製で、円筒状の胴部の上側開口をリリーフ弁や開閉口を備えた蓋部で閉塞し、下側開口を底板部で閉塞して密閉可能に形成されている。また、タンクの下端部の外周には、外面から径方向外側に突出し、周方向に延びる環状のフランジが設けられ、このフランジには、周方向に所定の間隔をあけて複数のボルト挿通孔が貫通形成されている。
【0005】
そして、上記のように構成した円筒型のタンクは、コンクリート製の基台に定着するアンカーボルトをフランジのボルト挿通孔に挿通しナットを締結することによって、基台上に固定して設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-149449号公報
【文献】特開2015-227182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、東日本大震災では、沿岸地域に設置された多くのタンクが津波によって流され、タンクから石油、重油等の可燃性の液体が漏洩し、火災、汚染を招いたことが確認、報告されている。
【0008】
また、漁港近くの屋外に設けられ、漁船に燃料を補給するための小型のタンクが数多く津波の影響で流されたことが確認されている。
【0009】
東日本大震災では、満液のタンクも津波の影響で流され、内容液が漏洩し、何らかの要因で着火して火災を引き起こしたことが確認されている。流されたタンクが衝突して建物などの構造物に損傷を与えた可能性もある。
【0010】
また、漁船に燃料を補給するための小型のタンクの多くは、津波の波力による衝撃ではなく、水に浸かり浮力が作用したことによって基台から引き抜け、漂流したことが確認、報告されている。さらに、タンクの底部と基台の間に水が浸入したことによってタンクに大きな浮力が作用し、基台からの脱落を誘発したと考えられている。
【0011】
したがって、水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンクが基台から脱落、漂流することを防止できる手法が強く望まれている。また、タンクは、津波が発生する前に発生する地震の振動による傾きや、水に浸かった際に水が浸入することにより発生する浮力による浮き上りにも耐えうることも強く望まれている。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、タンクに傾きが発生した場合や、水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンクの基台からの浮上、脱落、漂流を比較的簡便に防止できるタンクの防水及び保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明のタンクの防水及び保持構造は、水害時に水に浸かり得る地域において、基台の設置面に載置されたタンクの底部と基台の間に対して、前記タンクが水に浸かった場合に水の浸入を防止し、前記タンクに浮力を発生させないとともに、シート状のFRP繊維材の接着力により、前記タンクが前記基台より脱落、漂流を防止するための構造であって、前記FRP繊維材は、前記タンクの側面下部から前記基台まで連続的に被覆接着され、前記タンクと前記基台との間が防水され、前記FRP繊維材は、前記タンクの側面下部を覆うように形成されると共に前記タンクの側面に接着され前記タンクの側面を保持する第1保持部と、前記第1保持部の下端部に連続して形成されると共に前記タンクの下端部の外周から径方向外側に突出して周方向に延びる環状のフランジの上方に空間を形成する第2保持部と、前記第2保持部に連続して形成され、前記基台の側面及び上面を覆うように接着されて形成されると共に前記基台の側面及び上面を保持する第3保持部とを備え、前記FRP繊維材は、地震の揺れや津波、水害の波力により前記タンクが傾いたときの前記タンクおよび前記基台に追従し、前記FRP繊維材の保持部同士の取り付け角度が変わるように変形可能に設けられ、前記空間内には、前記フランジの上面と前記第2保持部の下面との間に挟持されるように配置された弾性部材備えることを特徴とするタンクの防水及び保持構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタンクの防水及び保持構造においては、タンク保持部がタンクの側面から基台の側面まで形成されているため、水害によってタンクが水に浸かった場合であってもタンクの底部と基台の間に水が浸入することがなく、これに起因した大きな浮力が発生することを防止できる。このように本発明のタンクの防水及び保持構造では、弾性部材やFRP繊維材が変形可能な保持構造によりタンクに過大な応力が発生せず、地震や津波・水害の変形に対して追従し、保持することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、第2保持部に形成された空間内に弾性部材が設けられており、タンクが傾いた際にタンクの下端に設けられたフランジと第2保持部とに弾性部材が押圧されて弾性変形することにより、タンク保持部に対して面的に力を分散し、タンク保持部に局所的な力が加わることを防止することができる。
【0019】
また、本発明は、タンクをアンカーボルトではなく、第1保持部で面的に保持することで、地震や津波などによって大きな外力が作用した際にタンクに局所的な破壊が生じることを防止できる。
【0020】
よって、本発明のタンクの防水及び保持構造によれば、地震の際に生じるタンクに傾きが生じた場合や、津波や高潮、台風、豪雨、ダムや堤防の決壊、越流など、あらゆる水害に伴って水に浸かり得る地域(沿岸地域など)に設置されたタンクが、水害時に水に浸った場合であっても、このタンクが基台から浮上、脱落し漂流することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るタンクの防水及び保持構造を示す図である。
図2】保持構造の一部を拡大した図である。
図3】タンクに傾きが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るタンクの防水及び保持構造について説明する。
【0024】
本実施形態のタンクの防水及び保持構造は、津波や高潮、台風、豪雨、ダムや堤防の決壊、越流など、あらゆる水害に伴って水に浸かり得る地域(沿岸地域など)に設置されたタンクを対象とし、水害時に水に浸った場合であってもタンクが浮上し、流されることを防止すると共に、タンクの傾きに対しても耐えうるための構造に関するものである。
【0025】
具体的に、本実施形態のタンク1は、図1に示すように、例えば、漁船などの船舶に燃料を補給するための円筒型のオイルタンクである。タンク1は、例えば、鋼製で、円筒状の胴部1aの上側開口をリリーフ弁や開閉口を備えた蓋部1bで閉塞し、下側開口を底板部1cで閉塞して密閉可能に形成されている。また、タンク1の下端部の外周には、外面から径方向外側に突出し、周方向に延びる環状のフランジ1dが設けられ、コンクリート製の基台6の載置面上に設置されている。タンク1は、既設のものであってもよいし、新設のものであってもよい。基台6は、例えば、円柱形に形成されている。基台6は、矩形柱状に形成されていてもよく、他の形状であってもよい。
【0026】
一方、本実施形態のタンクの防水及び保持構造Rは、図1及び図2に示されるように、FRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維材と樹脂材の複合材料、繊維強化プラスチック)で一体に形成されたタンク保持部Aと弾性体で形成された弾性部材Dとを備える。タンク保持部Aは、タンク1の側面1eから基台6の設置面(上面6b)を経て側面6aまで連続的に被覆接着されている。これにより、タンク保持部Aは、タンク1を基台6に対して保持する。タンク保持部Aは、例えば、タンク1の胴部1aを保持する第1保持部A1を備える。
【0027】
第1保持部A1は、胴部1aの下部において側面1eの周方向に沿って延在すると共に、側面1eを覆うように円筒状に形成されている。第1保持部A1は、後述のように胴部1aの下部の側面1eに接着されており、タンク1の下部を保持している。第1保持部A1の下端部に連続して第2保持部A2が形成されている。
【0028】
第2保持部A2は、例えば、第1保持部A1の下端部の周囲に延在し、タンク1の軸線O1に対して径方向の外方に向かって突出した円環状の頂部A2Tと、頂部A2Tの周端部から下方に垂下して延在する側面部A2Sとを備える。頂部A2Tの内径は、フランジ1dよりも大きくなるように形成されている。側面部A2Sの内径もフランジ1dよりも大きくなるように形成されている。これにより、第2保持部A2の内部には、フランジ1dの上方に円環状の空間Sが形成されている。第2保持部A2の下端部に連続して第3保持部A3が形成されている。
【0029】
第3保持部A3は、例えば、第2保持部A2の側面部A2Sの下端部の周囲に延在し、タンク1の軸線O1に対して径方向の外方に向かって突出した円環状の頂部A3Tと、頂部A3Tの周端部から下方に垂下して延在する側面部A3Sとを備える。円環状の頂部A3Tは、後述のように基台6の上面6bに接着されている。第3保持部A3は、基台6の側面6aの上方において周方向に沿って延在すると共に、側面6aを覆うように円筒状に形成されている。第3保持部A3は、後述のように基台6の側面6aの上部に接着されており、基台6の上部を保持している。
【0030】
第2保持部A2内の空間S内において、例えば、円環状に形成された弾性部材Dが設けられている。弾性部材Dは、フランジ1dの上面と第2保持部A2の頂部A2Tの下面との間挟持されるように設けられている。弾性部材Dは、例えば、ゴム、ウレタンスポンジ等の弾性体により形成されている。弾性部材Dは、必ずしも一体に形成されていなくてもよい。弾性部材Dは、フランジ1d上において周方向に等間隔で配置された複数の弾性体により形成されていてもよい。
【0031】
次に、タンクの防水及び保持構造Rの施工について説明する。上述のようにタンク保持部Aは、FRPにより一体成型される。FRPは、繊維材を接着対象領域に貼り付けた後、樹脂材を繊維材に含侵させ、樹脂材が硬化することで部材を所望の形状に形成するものである。
【0032】
FRPの繊維材としては、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等が用いられる。上記材料に限らず、FRPに適用可能であれば他の繊維材を用いてもよい。
【0033】
また、繊維方向を一方向に揃えてシート状に形成、あるいは、例えば繊維方向を一方向と一方向に直交する他方向に向け、繊維を織り込んでシート状に形成したものなどが好適な繊維材として挙げられる。なお、繊維材の繊維の種類、繊維方向等は必ずしも限定しなくてもよい。また、タンク保持部Aは、FRPだけでなく、他の素材が組み合わされた複合材料が用いられてもよい。
【0034】
FRPの樹脂材としては、接着部分の不陸修正、表面処理、下塗り、繊維材への含浸、仕上げ等にそれぞれ適した樹脂材を適宜選択的に用いればよい。例えば、下塗り、繊維材への含浸等には、所望の接着強度、含浸性能等を発現、具備するエポキシ樹脂やアクリル樹脂など、仕上げ材には、所望の耐候性、見栄えの確保が可能なウレタン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。なお、FRPの樹脂材においても特に限定を必要としない。
【0035】
まず、基台6の上面6bに設置されたタンク1のフランジ1d上に弾性部材Dが載置される。その後、タンク1の側面1e、基台6の上面6b、側面6aが適宜不陸修正され、下地処理されたのち、下塗り、繊維シートの含浸接着が行われる。このとき、タンク1の側面1e、弾性部材Dの露出面、基台6の上面6b、基台6の側面6aに連続して繊維材が貼り付けられる。
【0036】
そして、タンク1の側面1e、弾性部材Dの露出面、フランジ1dの端部、基台6の上面6b、基台6の側面6aの繊維方向が上下方向を向くように、タンク1の側面1eの接着対象領域V1と弾性部材Dの露出面及びフランジ1dの端部の接着対象領域V2と基台6の上面6bと基台6の側面6aの接着対象領域V3とに連続的に一層目の繊維シート(第一の繊維シート)8が貼設される。また、タンク1の上下方向に延びる軸線O1周りの周方向に連続的に一層目の繊維シート8が並ぶように、複数の一層目の繊維シート8が上記と同様に連続的にタンク1の周方向全体に接着される。
【0037】
ここで、弾性部材Dは、後述のようにフランジ1dと共に移動し、また変形するので、弾性部材Dの露出面及びフランジ1dの端部の接着対象領域V2においては、繊維シート8は接着されなくてもよく、樹脂材の含侵だけでよい。従って、弾性部材Dの露出面及びフランジ1dの端部には、離型剤が塗布されてもよい。
【0038】
なお、タンク1の側面1e、フランジ1dの端部、基台6の上面6b、側面6aを適宜不陸修正、表面処理としては、例えば、ケレン作業、高圧洗浄、角部のR仕上げ、パテ塗りなどが挙げられる。上記手段は、繊維シート8の接着性確保の観点から必要に応じて選択的に実施される。
【0039】
次に、一層目の繊維シート8の上に繊維方向を周方向(横方向)に向けて二層目の繊維シート(第二の繊維シート)9が貼設される。このとき、二層目の繊維シート9は、一層目の繊維シート8の接着対象領域V1~V3に連続的に巻回される。一層目の繊維シート8のタンク側の接着対象領域V1と基台側の接着対象領域V3とをそれぞれタンク1との間に挟み込んで拘束するようにそれぞれ個別に貼設される。これに加えて、一層目の繊維シート8の弾性部材Dの露出面上及びフランジ1dの端部の接着対象領域V2にも二層目の繊維シート9がさらに別途貼設される。
【0040】
なお、二層目の繊維シート9の上に、さらに繊維方向を上下方向や周方向に向けて繊維シートを積層し、繊維シートが多重で貼設されてもよい。
【0041】
また、タンク1の側面1eに繊維シート8、9を接着するタンク1側の接着対象領域V1は、特に限定を必要としないが、例えば、象足座屈、提灯座屈、ダイヤモンド座屈など、地震などの外力がタンク1に作用したときに生じ得るタンク座屈の位置(タンク座屈発生予想位置)を考慮し、この座屈位置が補強されて座屈耐力が向上するように設置範囲が設定されることが望ましい。すなわち、地震などの外力によるタンク1の損傷が抑止/防止されるようにタンク1側の接着対象領域V1が設定されることが望ましい。
【0042】
また、タンク保持部Aは、予め上下方向に分割されて形成された部材を接着対象領域に接着し、分割部分を塞いで補強するようにFRPが施工されてもよい。また、この分割部分を塞ぐように予め形成された部材を接着するようにしてもよい。予め部材を形成する場合、接着対象領域を三次元スキャナー等で計測して型を作成してもよい。
【0043】
また、第1保持部A1の端部とタンク1の側面1eとの間及び第2保持部A2の端部と基台6の側面6aとの間には、シール材が充填され、タンク保持部Aの水密性が確保される。
【0044】
最後に、タンク保持部Aの表面の仕上げ塗装が行われる。この時、仕上げ塗装は、弾性部材Dの劣化を防止するために紫外線を遮断する塗料が用いられてもよい。また、仕上げ塗装の代わりにタンク保持部Aの表面をフィルムなどの被覆材で覆ってもよい。上記工程により、本実施形態のタンク1の保持構造Rが完成する。なお、必ずしも仕上げ塗装を行わなくてもよい。
【0045】
次に、タンク1が動いた際の保持構造Rの状態について説明する。
【0046】
図3に示されるように、タンク1に地震などにより外力が加わって傾いた場合、底板部1cが基台6の上面6bから上方に離間する。この時、第1保持部A1は、タンク1を保持すると共に、第3保持部A3は、基台6を保持する。この状態において、第2保持部A2は、第1保持部A1と第3保持部A3とに引張されて、頂部A2Tと側面部A2Sとの取り付け角度が広がるように変形する。
【0047】
そして、第2保持部A2内の空間Sにおいて、弾性部材Dはフランジ1dの上面と第2保持部A2の頂部A2Tの下面とに押圧されて潰れるように弾性変形する。弾性変形した弾性部材Dは、タンク1の変位により生じた力を第2保持部A2の頂部A2Tに対して面的に応力分散する。これにより、タンク保持部Aに局所的に力が加わり破損することを防止する。
【0048】
地震が発生した後、津波が押し寄せた際、上記のように構成した本実施形態のタンク1の保持構造Rにおいては、FRP(繊維シート8、9)がタンク1の側面1eから基台6の側面6aまで貼設され、且つタンク1及び基台6の周方向に連続して環状に貼設されているため、水害によってタンク1が水に浸かった場合であってもタンク1の底板部1cと基台6の間に水が浸入することがなく、これに起因した大きな浮力が発生することを防止できる。更に上記のように、地震が発生した際のタンク保持部Aの破損が防止されているため、タンク1の底板部1cと基台6の間に水が浸入することがない。
【0049】
また、接着対象領域の少なくとも一層目の繊維シート8がその繊維方向を上下方向に向けてタンク1の側面1eから基台6の側面6aまで貼設されているため、タンク1に地震時や水害時に外力が作用した場合であっても、繊維方向を上下方向に向けて配設された繊維シート8の強靭な引張耐力を有効に利用し、タンク1を効果的に保持することが可能になる。
【0050】
さらに、繊維方向を上下方向に向けてタンク1の側面1eから基台6の側面6aまで貼設された繊維シート8のタンク側接着部3と基台側面接着部7がそれぞれ、タンク1や基台6を連続的に巻き回して貼設された二層目の繊維シート9で挟持されて拘束されているため、タンク1に大きな外力が作用してもタンク1や基台6から繊維シート8、9が剥離することを効果的に抑止/防止できる。
【0051】
また、タンク1をアンカーボルトではなく、FRPによって支持することで、点ではなく面で支持することが可能になり、地震や津波などによって大きな外力が作用した際にタンク1に局所的な破壊が生じることを防止できる。
【0052】
さらに、繊維シート8の接着対象領域V1を、少なくともタンク1の座屈発生予測位置を含むように設定することによって、効果的にタンク1を補強することができ、地震などが発生した際にタンク1の座屈、損傷を第1保持部A1によって防止することが可能になる。
【0053】
よって、本実施形態のタンクの防水及び保持構造Rによれば、タンク1に傾きが生じてもタンク1を確実に保持することができる。また、タンクの防水及び保持構造Rによれば、弾性部材Dによりタンク保持部Aに局所的な力が加わることを防止してタンク保持部Aが破損することを防止すると共に、タンク1に生じる振動を減衰することができる。
【0054】
また、タンクの防水及び保持構造Rによれば、津波や高潮、台風、豪雨、ダムや堤防の決壊、越流など、あらゆる水害に伴って水に浸かり得る地域(沿岸地域など)に設置されたタンク1が、水害時に水に浸った場合であっても、タンク1の変位によるタンク保持部Aの破損が防止されると共に、タンク1が基台6から脱落し漂流することが防止される。
【0055】
さらに、本実施形態のタンクの防水及び保持構造Rにおいては、溶接などの火花が発生する機器を使用することなくタンク1に設けることができるため、漁港などの沿岸地域に多数設けられているオイルタンクやガスタンクなどに対しても好適に採用することができる。
【0056】
以上、本発明に係るタンクの防水及び保持構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、タンク保持部Aと基台6とが剥離するのを防止するために適宜アンカーボルト及びナット等を用いて締結する補強が施されてもよい。
【0057】
また、基台6の側面6aと上面6bとが公差する角部が滑らかに連続する曲面で形成されていてもよい。または、繊維シート8、9を施工する際に基台6の側面6aと上面6bとが公差する角部を削り取るか、基台6にコンクリートを補充して角部が曲面になるように形成してもよい。これにより、第3保持部A3の側面部A3Sと頂部A3Tとが交差する角部が曲面になるように形成されていてもよい。これにより、タンク1が傾いて、第3保持部A3が変形した際に第3保持部A3の破損を防止して水の侵入を防止するようにしてもよい。同様に、第2保持部A2の頂部A2Tと側面部A2Sとが交差する角部や、第2保持部A2と第3保持部A3とが接続される隅部が曲面になるように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 タンク
1a 胴部
1b 蓋部
1c 底板部
1d フランジ
1e 側面
6 基台
6a 側面
6b 上面
8 一層目の繊維シート(第一の繊維シート)
9 二層目の繊維シート(第二の繊維シート)
A タンク保持部
A1 第1保持部
A2 第2保持部
A3 第3保持部
D 弾性部材
O1 軸線
R タンクの防水及び保持構造
V1~V3 接着対象領域
図1
図2
図3