(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】金属化フィルム及び金属化フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 544
(21)【出願番号】P 2019009472
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】中坂 翔
(72)【発明者】
【氏名】小笹 千一
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-308323(JP,A)
【文献】特開2016-111030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/10
H01G 4/14-4/22
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムに蒸着電極を形成してなる金属化フィルムであって、
蒸着電極が、誘電体フィルムの幅方向の一方端部に設けられた接続部と、絶縁スリットによって分割された略四角形の複数の分割電極と、隣り合う分割電極同士を接続するヒューズ部とを備えており、
分割電極が誘電体フィルムの幅方向に少なくとも3列並んでおり、
誘電体フィルムの幅方向において接続部側の分割電極の列から順に、第1の列、第2の列、第3の列としたときに、
第1の列に属する分割電極同士の間と、第2の列に属する分割電極同士の間とにはヒューズ部が設けられておらず、
第3の列に属する分割電極同士の間にヒューズ部が設けられており、
さらに、第1の列に属する1つの分割電極が第2の列に属する2つの分割電極とヒューズ部を介して接続され、
第2の列に属する1つの分割電極が、第1の列に属する2つの分割電極とヒューズ部を介して接続されているとともに、第3の列に属する1つの分割電極とヒューズ部を介して接続されている、金属化フィルム。
【請求項2】
誘電体フィルムに蒸着電極を形成してなる金属化フィルムであって、
蒸着電極が、誘電体フィルムの幅方向の一方端部に設けられた接続部と、絶縁スリットによって分割された複数の分割電極と、隣り合う分割電極同士を接続するヒューズ部とを備えており、
最も接続部側の分割電極を除く他の分割電極が、分割電極1つにつき3つの分割電極とヒューズ部を介して接続されており、以下の関係が全ての分割電極において成り立っている、金属化フィルム。
(1)ある任意の分割電極を基点分割電極とし、
基点分割電極とヒューズ部を介して接続された分割電極を一次分割電極とし、
一次分割電極と他のヒューズ部を介して接続された分割電極を二次分割電極としたとき、任意の二次分割電極から分割電極を通って基点分割電極に至る経路が2以上形成され、うち1つの経路がヒューズ部を2つだけ通る経路とされ、他の経路はヒューズ部を3つ以上通る経路とされている。
【請求項3】
誘電体フィルムに蒸着電極を形成してなる金属化フィルムであって、
蒸着電極が、絶縁スリットによって分割された略四角形の複数の分割電極と、隣り合う分割電極同士を接続するヒューズ部とを備えており、以下の関係が全ての分割電極において成り立っている、金属化フィルム。
(1)ある任意の分割電極を基点分割電極とし、
基点分割電極とヒューズ部を介して接続された分割電極を一次分割電極とし、
一次分割電極と他のヒューズ部を介して接続された分割電極を二次分割電極としたとき、任意の二次分割電極から分割電極を通って基点分割電極に至る経路が2以上形成され、うち1つの経路がヒューズ部を2つだけ通る経路とされ、他の経路はヒューズ部を3つ以上通る経路とされている。
【請求項4】
誘電体フィルムに蒸着電極を形成してなる金属化フィルムであって、
蒸着電極が、絶縁スリットによって分割された略四角形の複数の分割電極と、隣り合う分割電極同士を接続するヒューズ部とを備えており、以下の関係がある分割電極において成り立っている、金属化フィルム。
(2)ある任意の分割電極を基点分割電極とし、
基点分割電極と第1のヒューズ部を介して接続された一次分割電極と、この一次分割電極と他のヒューズ部を介して接続された2つの二次分割電極とを第1の分割電極群とし、
基点分割電極と第2のヒューズ部を介して接続された一次分割電極と、この一次分割電極と他のヒューズ部を介して接続された2つの二次分割電極とを第2の分割電極群とし、
基点分割電極と第3のヒューズ部を介して接続された一次分割電極と、この一次分割電極と他のヒューズ部を介して接続された2つの二次分割電極とを第3の分割電極群としたとき、分割電極群間で分割電極の重複が生じていない。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載の金属化フィルムを用いた、金属化フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルム上に蒸着電極を形成してなる金属化フィルム及びそれを用いた金属化フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサにおいて、誘電体フィルムの表面に蒸着された蒸着電極を絶縁スリットによって区画し、区画された分割電極同士をヒューズ部を介して接続することは、例えば特許文献1、2に示すように従来から行われている。このような構成の金属化フィルムコンデンサは、絶縁が欠損した部分の蒸着電極を飛散させることで絶縁を回復する自己回復機能に加えて、自己回復機能で絶縁を回復できなかった場合にヒューズ部を溶断して欠陥電極を切り離し、絶縁を回復させる自己保安機能を備えている。なお、ヒューズ部の溶断は、欠陥電極の周辺に位置し、互いにヒューズ部を介して接続されている分割電極(以下、近隣電極という)から流れ込む電流によって生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6074623号公報
【文献】特開平10-308323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、誘電体フィルムの薄膜化に伴い電位傾度が増加したことで、絶縁不良が生じ易くなっている。そのため、ヒューズ部を確実に動作させることが重要になっているが、1つの分割電極に対して複数のヒューズ部が接続されている場合、近隣電極から欠陥電極に至る経路が複数形成されるため、ある近隣電極からの電流は複数のヒューズ部に分散して欠陥電極に流れ込むことになる。この際、電流が全て均等に分散するのであれば特に問題はないが、ヒューズ部間での寸法差等によって不均等に分散するため、あるヒューズ部には電流が十分流れるが、あるヒューズ部には電流があまり流れないといった状況が生じ、ヒューズ部の動作(溶断)に支障をきたすことがあった。
【0005】
そこで本発明は、ヒューズ部の動作性を改善した金属化フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の金属化フィルムは、誘電体フィルム3に蒸着電極4を形成してなる金属化フィルム2(2A)であって、蒸着電極4が、誘電体フィルム3の幅方向の一方端部に設けられた接続部6と、絶縁スリット8によって分割された略四角形の複数の分割電極13と、隣り合う分割電極13、13同士を接続するヒューズ部14とを備えており、分割電極13が誘電体フィルム3の幅方向に少なくとも3列並んでおり、誘電体フィルム3の幅方向において接続部6側の分割電極13の列から順に、第1の列、第2の列、第3の列としたときに、第1の列に属する分割電極13、13同士の間と、第2の列に属する分割電極13、13同士の間とにはヒューズ部14が設けられておらず、第3の列に属する分割電極13、13同士の間にヒューズ部14が設けられており、さらに、第1の列に属する1つの分割電極13が第2の列に属する2つの分割電極13、13とヒューズ部14を介して接続され、第2の列に属する1つの分割電極13が、第1の列に属する2つの分割電極13、13とヒューズ部14を介して接続されているとともに、第3の列に属する1つの分割電極13とヒューズ部14を介して接続されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の別の金属化フィルムは、誘電体フィルム3に蒸着電極4を形成してなる金属化フィルム2(2A、2B)であって、蒸着電極4が、誘電体フィルム3の幅方向の一方端部に設けられた接続部6と、絶縁スリット8によって分割された複数の分割電極13と、隣り合う分割電極13、13同士を接続するヒューズ部14とを備えており、最も接続部6側の分割電極13を除く他の分割電極13が、分割電極1つにつき3つの分割電極とヒューズ部14を介して接続されており、以下の関係が全ての分割電極13において成り立っていることを特徴としている。
(1)ある任意の分割電極13を基点分割電極Rとし、基点分割電極Rとヒューズ部14を介して接続された分割電極13を一次分割電極R1(R2、R3)とし、一次分割電極R1(R2、R3)と他のヒューズ部14を介して接続された分割電極13を二次分割電極R11、R12(R21、R22、R31、R32)としたとき、任意の二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る経路が2以上形成され、うち1つの経路がヒューズ部14を2つだけ通る経路とされ、他の経路はヒューズ部14を3つ以上通る経路とされている。
【0008】
また、本発明のさらに別の金属化フィルムは、誘電体フィルム3に蒸着電極4を形成してなる金属化フィルム2(2A)であって、蒸着電極4が、絶縁スリット8によって分割された略四角形の複数の分割電極13と、隣り合う分割電極13、13同士を接続するヒューズ部14とを備えており、以下の関係が全ての分割電極13において成り立っていることを特徴としている。
(1)ある任意の分割電極13を基点分割電極Rとし、基点分割電極Rとヒューズ部14を介して接続された分割電極13を一次分割電極R1(R2、R3)とし、一次分割電極R1(R2、R3)と他のヒューズ部14を介して接続された分割電極13を二次分割電極R11、R12(R21、R22、R31、R32)としたとき、任意の二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る経路が2以上形成され、うち1つの経路がヒューズ部14を2つだけ通る経路とされ、他の経路はヒューズ部14を3つ以上通る経路とされている。
【0009】
また、本発明のさらに別の金属化フィルムは、誘電体フィルム3に蒸着電極4を形成してなる金属化フィルム2(2A、2B)であって、蒸着電極4が、誘電体フィルム3の幅方向の一方端部に設けられた接続部6と、絶縁スリット8によって分割された複数の分割電極13と、隣り合う分割電極13、13同士を接続するヒューズ部14とを備えており、最も接続部6側の分割電極13を除く他の分割電極13が、分割電極1つにつき3つの分割電極とヒューズ部14を介して接続されており、以下の関係がある分割電極13において成り立っていることを特徴としている。
(2)ある任意の分割電極13を基点分割電極Rとし、基点分割電極Rと第1のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R1と、この一次分割電極R1と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R11、R12とを第1の分割電極群とし、基点分割電極Rと第2のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R2と、この一次分割電極R2と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R21、R22とを第2の分割電極群とし、基点分割電極Rと第3のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R3と、この一次分割電極R3と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R31、R32とを第3の分割電極群としたとき、分割電極群間で分割電極13の重複が生じていない。
【0010】
また、本発明のさらに別の金属化フィルムは、誘電体フィルム3に蒸着電極4を形成してなる金属化フィルム2(2A)であって、蒸着電極4が、絶縁スリット8によって分割された略四角形の複数の分割電極13と、隣り合う分割電極13、13同士を接続するヒューズ部14とを備えており、以下の関係がある分割電極13において成り立っていることを特徴としている。
(2)ある任意の分割電極13を基点分割電極Rとし、基点分割電極Rと第1のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R1と、この一次分割電極R1と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R11、R12とを第1の分割電極群とし、基点分割電極Rと第2のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R2と、この一次分割電極R2と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R21、R22とを第2の分割電極群とし、基点分割電極Rと第3のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R3と、この一次分割電極R3と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R31、R32とを第3の分割電極群としたとき、分割電極群間で分割電極13の重複が生じていない。
【0011】
本発明の金属化フィルムコンデンサは、上記いずれかの金属化フィルム2(2A、2B)を用いていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属化フィルムは、分割電極が誘電体フィルムの幅方向に少なくとも3列並んでおり、誘電体フィルムの幅方向において接続部側の分割電極の列から順に、第1の列、第2の列、第3の列としたときに、第1の列に属する分割電極同士の間と、第2の列に属する分割電極同士の間とにはヒューズ部が設けられておらず、第3の列に属する分割電極同士の間にヒューズ部が設けられており、さらに、第1の列に属する1つの分割電極が第2の列に属する2つの分割電極とヒューズ部を介して接続され、第2の列に属する1つの分割電極が、第1の列に属する2つの分割電極とヒューズ部を介して接続されているとともに、第3の列に属する1つの分割電極とヒューズ部を介して接続されているため、第1の列から第3の列の任意の分割電極を基点分割電極とし、基点分割電極とヒューズ部を介して接続される分割電極を一次分割電極とし、一次分割電極とヒューズ部を介して接続する分割電極を二次分割電極としたとき、二次分割電極から分割電極を通って基点分割電極に至る経路が複数形成され、うち1つの経路がヒューズ部を2つだけ通る経路となり、他の経路はヒューズ部を3つ以上通る経路となる。そのため、基点分割電極で絶縁破壊が生じた場合に、二次分割電極からの電流は、ヒューズ部を2つだけ通る経路を通って基点分割電極に流れることとなり、電流の分散が抑制され、ヒューズ部の動作性を良好なものとすることができる。また、分割電極が略四角形であるため、略三角形とされた場合に比べて分割電極の隅部(コーナー部)における電界集中を抑制することができる。
【0013】
本発明の別の金属化フィルムにおいても、二次分割電極から分割電極を通って基点分割電極に至る経路が複数形成され、うち1つの経路がヒューズ部を2つだけ通る経路とされ、他の経路はヒューズ部を3つ以上通る経路とされていることから、基点分割電極で絶縁破壊が生じた場合、二次分割電極からの電流は、ヒューズ部を2つだけ通る経路を通って基点分割電極に流れることとなり、電流の分散が抑制され、ヒューズ部の動作性を良好なものとすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の金属化フィルムにおいては、分割電極群間で分割電極の重複が生じていないため、二次分割電極から基点分割電極に至る経路のうち、通過するヒューズ部の数が最も少ない経路は1つしか形成されないこととなり、電流の分散が抑制され、ヒューズ部の動作性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願発明の実施形態に係る金属化フィルムコンデンサの一部を示す断面図である。
【
図2】本願発明の実施形態に係る金属化フィルムの平面図である。
【
図3】
図2の部分拡大図であって、第3の列に属する分割電極を二次分割電極とした場合の、二次分割電極から基点分割電極への電流の経路を示す。
【
図4】本発明の異なる実施形態に係る金属化フィルムの平面図である。
【
図5】本発明のさらに異なる実施形態に係る金属化フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の金属化フィルムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。金属化フィルム2は、
図1に示すように、誘電体フィルム3の表面にアルミや亜鉛等を蒸着させ、蒸着電極4を形成することで構成されている。
【0017】
蒸着電極4は、
図2に示すように、誘電体フィルム3の幅方向(以下、フィルム幅方向)の一方端部まで設けられている。その一方で、他方端部には誘電体フィルム3の長さ方向(以下、フィルム長さ方向)の全長に亘って設けられていない。これは、金属化フィルム2、2を重ね合わせてコンデンサ素子を製造するにあたって、フィルム幅方向の両端部にそれぞれ設けられるメタリコン電極5、5の双方と蒸着電極4とが接続しないようにするためのものである(
図1参照)。なお、以下、説明のために、フィルム幅方向の一方端部側であってメタリコン電極5と接続される部位を接続部6と称し、フィルム幅方向の他方端部側の非蒸着部を絶縁マージン7と称す。
【0018】
上記構成の蒸着電極4は、細長の非蒸着部からなる絶縁スリット8によって分割されている。具体的には、フィルム長さ方向に平行な複数の第1絶縁スリット8aと、フィルム幅方向に平行な複数の第2絶縁スリット8bによって分割されている。
【0019】
第1絶縁スリット8aは、フィルム幅方向に3本設けられている。最も接続部6側に位置する第1絶縁スリット8aは、フィルム幅方向の略中央に設けられており、蒸着電極4を、接続部側電極11と絶縁マージン側電極12とに分割している。他の2本の第1絶縁スリット8a、8aは、絶縁マージン側電極12をフィルム幅方向に略3等分している。ただし必ずしも略3等分とする必要はない。以下、フィルム幅方向に3分割された蒸着電極を、接続部6に近い側から第1の列、第2の列、第3の列とする。
【0020】
第2絶縁スリット8bは、主に絶縁マージン側電極12に設けられており、第1~第3の列の蒸着電極をフィルム長さ方向に略等間隔に分割している。
図2に示すように、第1の列の第2絶縁スリット8bは、第2、第3の列の第2絶縁スリット8bに対してフィルム長さ方向にずれている。具体的には、フィルム長さ方向における第2絶縁スリット8b、8b間の幅の略半分ずれている。したがって、第1絶縁スリット8aと第2絶縁スリット8bとによって分割された略四角形の分割電極13は、第1の列と、第2、3の列とでフィルム長さ方向にずれている。また、第2絶縁スリット8bは、一定間隔(複数本)毎に接続部側電極11まで延設されている(
図2における符号8b1参照)。これは、接続部側電極11をフィルム長さ方向で区画するためである。接続部側電極11まで延設されている第2絶縁スリット8b1、8b1間の間隔は、例えば20~100mmである。
【0021】
全ての分割電極13は、第1絶縁スリット8aや第2絶縁スリット8bを分断するようにして設けられたヒューズ部14によって隣接する分割電極13や接続部側電極11と接続されている。このヒューズ部14は、定常時は電流の経路になる一方で、分割電極13に絶縁破壊が生じた場合に溶断し、当該分割電極13を他の分割電極13や接続部側電極11から切り離し、コンデンサ全体の絶縁を回復するためのものである。
【0022】
ヒューズ部14は、接続部側電極11と第1の列に属する分割電極13との間、第1の列に属する分割電極13と第2の列に属する分割電極13との間、第2の列に属する分割電極13と第3の列に属する分割電極13との間、第3の列に属する分割電極13、13同士の間に設けられている。第1の列に属する分割電極13、13同士の間と、第2の列に属する分割電極13、13同士の間とには設けられていない。またヒューズ部14は、1つの分割電極13に対して3つ接続されている。第1の列の1つの分割電極13を例に挙げると、接続部6側において、接続部側電極11と1つのヒューズ部14で接続され、絶縁マージン7側において、第2の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。第2の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第1の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続され、第3の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続されている。第3の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第2の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続され、フィルム長さ方向で隣接する2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。なお、この状態は、最も接続部6側の分割電極13(第1の列に属する分割電極)を除く他の分割電極13(第2、3の列に属する分割電極)が、1つの分割電極13につき3つの分割電極13とヒューズ部14を介してそれぞれ直接的に(ヒューズ部以外を介在させること無く)接続されているといえる。いずれのヒューズ部14も、1つの分割電極13のフィルム長さ方向における中心軸に対して左右対称となるように設けられている。なお、以下、必要に応じて、第1絶縁スリット8aを分断するヒューズ部を縦ヒューズ部14a、第2絶縁スリット8bを分断するヒューズ部を横ヒューズ部14bと称す。
【0023】
上記構成の金属化フィルム2は、
図2に示すように、ある任意の分割電極13を基点分割電極Rとし、基点分割電極Rとヒューズ部14を介して接続された分割電極13を一次分割電極R1、R2、R3とし、一次分割電極R1と他のヒューズ部14(基点分割電極Rと一次分割電極R1、R2、R3とを接続するヒューズ部14とは異なるヒューズ部)を介して接続された分割電極13を二次分割電極R11、R12、R21、R22、R31、R32としたとき、任意の二次分割電極から分割電極13(接続部側電極11を含まない)を通って基点分割電極Rに至る複数の経路のうち、ヒューズ部14を2つだけ通る経路が1つとされ、他はヒューズ部14を3つ以上通る経路とされている。
【0024】
また、基点分割電極Rに接続されている3つのヒューズ部14をそれぞれ第1、第2、第3のヒューズ部とし、基点分割電極Rと第1のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R1と、この一次分割電極R1と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R11、R12とを第1の分割電極群とし、基点分割電極Rと第2のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R2と、この一次分割電極R2と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R21、R22とを第2の分割電極群とし、基点分割電極Rと第3のヒューズ部14を介して接続された一次分割電極R3と、この一次分割電極R3と他のヒューズ部14を介して接続された2つの二次分割電極R31、R32とを第3の分割電極群としたとき、分割電極群間で分割電極13の重複が生じていない。すなわち、いずれの分割電極13も2つ以上の分割電極群に属していない。なお、第1の列の分割電極13を基点分割電極Rとすると、3つのヒューズ部14のうちの1つが接続部側電極11と接続されているため、形成される分割電極群は2つである。この2つの分割電極群を第1、第2の分割電極群とすれば、分割電極群間で分割電極13の重複は生じない。また、任意の二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る複数の経路のうち、ヒューズ部14を2つだけ通る経路は1つである。
【0025】
すなわち、どの分割電極13を基点分割電極Rとしたとしても、分割電極群間において分割電極13の重複が生じておらず、二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る複数の経路のうち、ヒューズ部14を2つだけ通る経路は1つとされている。
【0026】
従って、上記構成の金属化フィルム2を用いて製造された金属化フィルムコンデンサ1では、分割電極13に絶縁破壊が生じた際、以下のように動作する。まず、
図3に示すように、分割電極13に絶縁破壊Bが生じると、周囲の分割電極13の電荷が、絶縁破壊が生じた分割電極13に流れ込む。この際、絶縁破壊が生じた分割電極13を基点分割電極Rとすると、例えば二次分割電極R32から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る経路としては、
図3の実線矢印や破線矢印で示すように複数形成されるが、ヒューズ部14を2つだけ通る経路(実線矢印で示す経路)は1つだけであって、他の経路は3つ以上のヒューズ部14を通る。ヒューズ部14は分割電極13に比べて幅が狭く抵抗が大きいため、電流はなるべくヒューズ部14を避けて流れようとする。そのため、二次分割電極R32からの電流は、複数の経路のうち、分割電極13を通りつつヒューズ部14を2つだけ通る経路(通過するヒューズ部14の数が最少となる経路)を流れることとなり、電荷の分散が抑制される結果、所望のヒューズ部14に十分な電流を流すことができ、ヒューズ部14を確実に溶断(動作)させることができる。
【0027】
次に、本発明の別の金属化フィルム2Aについて説明する。
図4に示すように、この金属化フィルム2Aでは、蒸着電極4が6本の第1絶縁スリット8aによってフィルム幅方向に分割されている。フィルム幅方向に6分割された蒸着電極4を、接続部6に近い側から第1の列、第2の列、第3の列、第4の列、第5の列、第6の列とすると、第1の列の分割電極13に対して、第2、第3、第4の列の分割電極13がフィルム長さ方向にずれている。ずれ幅は、1つの分割電極13のフィルム長さ方向の幅の略半分である。第5、第6の列の分割電極13は、第1の列の分割電極13に対してずれていない。
【0028】
ヒューズ部14は、1つの分割電極13に対して3つ接続されている。第1の列の1つの分割電極13を例に挙げると、接続部6側において、接続部側電極11と1つのヒューズ部14で接続され、絶縁マージン7側において、第2の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。第2の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第1の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続され、第3の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続されている。第3の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第2の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続され、フィルム長さ方向で隣接する1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続され、第4の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続されている。第4の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第3の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続され、第5の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。第5の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第4の列の2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続され、第6の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続されている。第6の列の1つの分割電極13を例に挙げると、第5の列の1つの分割電極13と1つのヒューズ部14で接続され、フィルム長さ方向で隣接する2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。従って、第1、第2、第4、第5の列の分割電極13には縦ヒューズ部14aのみが接続され、第3、第6の列の分割電極13には、縦ヒューズ部14aに加えて横ヒューズ部14bが接続されている。
【0029】
上記構成の金属化フィルム2Aも、どの分割電極13を基点分割電極Rとしたとしても、分割電極群間において分割電極13の重複が生じておらず、さらに二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る複数の経路のうち、ヒューズ部14を2つだけ通る経路は1つとされている。そのため、この金属化フィルム2Aを用いた金属化フィルムコンデンサでは、上記金属化フィルムコンデンサ1と同様の作用効果を奏する。
【0030】
図5は、本発明のさらに別の金属化フィルムである。
図5に示すように、この金属化フィルム2Bでは、分割電極13が一部、略三角形とされている。具体的に説明すると、フィルム長さ方向に平行な第1絶縁スリット8aと、フィルム幅方向に平行な第2絶縁スリット8bに加えて、第1絶縁スリット8aと第2絶縁スリット8bとの交点を結ぶようにして第3絶縁スリット8cが設けられており、絶縁マージン側電極12が略三角形に分割されている。ただ、最も絶縁マージン7側に位置する列には第3絶縁スリット8cは設けられておらず、この列の分割電極13については略四角形である。略三角形の分割電極13には、略三角形を構成する辺にそれぞれ1つずつヒューズ部14(縦ヒューズ部14a、横ヒューズ部14b、斜めヒューズ部14c(第3絶縁スリット8cを分断するようにして設けられたヒューズ部))が接続されており、隣接する分割電極13や接続部側電極11とこれらヒューズ部14を介して接続している。略四角形の分割電極13については、フィルム幅方向で隣接する略三角形の分割電極13と1つのヒューズ部14で接続されているとともに、フィルム長さ方向で隣接する2つの分割電極13、13とそれぞれ1つのヒューズ部14で接続されている。従って、略三角形の分割電極13も略四角形の分割電極13も、それぞれ3つのヒューズ部14が接続されているといえる。
【0031】
上記構成の金属化フィルム2Bについても、どの分割電極13を基点分割電極Rとしたとしても分割電極群間において分割電極13の重複が生じておらず、さらに二次分割電極から分割電極13を通って基点分割電極Rに至る複数の経路のうち、ヒューズ部14を2つだけ通る経路は1つとされている。そのため、この金属化フィルム2Bを用いた金属化フィルムコンデンサについても、上記金属化フィルムコンデンサ1と同様の作用効果を奏する。
【0032】
本発明の金属化フィルムコンデンサ1は、
図1に示すように、上記構成の複数枚の金属化フィルム2(2A、2B)を、絶縁マージン7の位置が上下で互い違いとなるように、且つ蒸着電極4、4間に誘電体フィルム3が介在するようにして複数重ね合わせるとともに、フィルム幅方向の両端部にそれぞれメタリコン電極5、5を形成することで製造される。なお、
図1は概略図であって誘電体フィルム3や蒸着電極4の厚みが誇張されている。実際の厚みは、誘電体フィルム3が例えば2~8μm、蒸着電極4が50~500Åと極めて薄い。なお、誘電体フィルム3のフィルム幅方向の長さは25~150mmである。
図2、4、5に示す金属化フィルムはフィルム長さ方向に連続している。
【0033】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態では、接続部側電極11と分割電極13との間、隣接する分割電極13、13同士の間に1つのヒューズ部14が設けられていたが、2つ以上のヒューズ部14を設けても良い。すなわち、1つの接続部側電極11と1つの分割電極13との間に2以上のヒューズ部14を設けても良いし、1つの分割電極13とそれに隣接する1つの分割電極13との間に2つ以上のヒューズ部14を設けても良い。また、列の数は3以上であれば適宜変更可能である。また接続部6としては、分割電極13よりも肉厚の蒸着電極を用いる、いわゆるヘビーエッジを採用しても良い。金属化フィルム2、2を複数重ね合わせる方法としては単に積層する他、巻回によって重ね合わせても良い。また、1枚の誘電体フィルム3の両面に蒸着電極4を形成した両面金属化フィルムと誘電体フィルム3とを重ね合わせてコンデンサを形成しても良い。さらに、必ずしも同じ蒸着パターンの金属化フィルムを用いる必要は無く、異なる蒸着パターンの金属化フィルムを組み合わせてコンデンサを形成しても良い。また、接続部側電極11は必ずしも設ける必要は無く、接続部6を除く蒸着部分を絶縁スリットによって分割しても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 金属化フィルムコンデンサ
2、2A、2B 金属化フィルム
3 誘電体フィルム
4 蒸着電極
5 メタリコン電極
6 接続部
7 絶縁マージン
8 絶縁スリット
8a 第1絶縁スリット
8b 第2絶縁スリット
8b1 接続部側まで延設された第2絶縁スリット
8c 第3絶縁スリット
11 接続部側電極
12 絶縁マージン側電極
13 分割電極
14 ヒューズ部
14a 縦ヒューズ部
14b 横ヒューズ部
14c 斜めヒューズ部
R 基点分割電極
R1 第1の分割電極群の一次分割電極
R11、R12 第1の分割電極群の二次分割電極
R2 第2の分割電極群の一次分割電極
R21、R22 第2の分割電極群の二次分割電極
R3 第3の分割電極群の一次分割電極
R31、R32 第3の分割電極群の二次分割電極
B 絶縁が破壊した部分