(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ソーラーパネル冷却機能付空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20230616BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20230616BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20230616BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20230616BHJP
H02S 40/42 20140101ALI20230616BHJP
【FI】
F24F5/00 L
F24F11/47
F24F11/89
F25B5/02 B
F25B5/02 520A
H02S40/42
(21)【出願番号】P 2019013120
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 優也
(72)【発明者】
【氏名】門田 祐輔
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-038131(JP,A)
【文献】特開2000-171105(JP,A)
【文献】特開2005-337519(JP,A)
【文献】特開2008-111650(JP,A)
【文献】特開2015-014379(JP,A)
【文献】特開2015-218912(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104121725(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 11/00 - 11/89
F25B 5/02
H02S 40/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁及び前記各機器に冷媒を循環させる空調装置用冷媒回路を有する空調装置と、
太陽光を電力に変換するソーラーパネルと、
前記空調装置用冷媒回路の前記室外熱交換器出口側から電子制御弁を介して前記ソーラーパネルの冷却回路を通り前記空調装置用冷媒回路の前記室内熱交換器出口側に冷媒を分岐して導くソーラーパネル冷却用冷媒回路と、
前記空調装置のエネルギー効率に関係する負荷率であって、前記室外熱交換器の容量に対する前記室外熱交換器に発生した負荷の割合である負荷率、及び前記ソーラーパネルの発電時の最大出力に関係する温度特性に基づき前記電子制御弁を制御する弁制御部と、
を
備え、
前記ソーラーパネルの出力電圧が予め設定される許容最大出力電圧以上になる場合には、前記電子制御弁を閉鎖する、
ソーラーパネル冷却機能付空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載のソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、
前記ソーラーパネルの最大出力は、前記ソーラーパネルの温度が低下するほど増大し、
前記弁制御部は、前記空調装置の負荷率について、前記空調装置の負荷に基づいて算出される算出負荷率が、エネルギー効率が最大となるように予め設定される所定負荷率より低くなる場合に、前記電子制御弁を開放し、前記算出負荷率が前記所定負荷率以上となる場合に前記電子制御弁を閉鎖するように制御する、
ソーラーパネル冷却機能付空調システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、
前記電子制御弁は電子制御膨張弁である、
ソーラーパネル冷却機能付空調システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、
前記ソーラーパネルの温度を検出する温度センサを備え
、
前記温度センサの検出値が、前記ソーラーパネルの周囲空気の露点温度以下になる場合に、前記電子制御弁を閉鎖する、
ソーラーパネル冷却機能付空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置、ソーラーパネル、及びソーラーパネル冷却回路を備えるソーラーパネル冷却機能付空調システムに関し、その空調システム全体のエネルギー効率向上に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソーラーパネルの裏面側に配置された熱伝導板を冷媒配管に接触させ、その冷媒配管に液冷媒を流すことで、冷媒配管内で液冷媒を気化させると共に、熱伝導板の温度を低下させるヒートポンプシステムが記載されている。
【0003】
特許文献2には、太陽電池モジュールの集合体(太陽電池アレイ)の裏面に接合した熱交換器に冷媒を流し、その冷媒を屋外に設置されたクーラで冷却する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-195187号
【文献】特開平4-127582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載された構成では、ソーラーパネルまたは太陽電池モジュールの集合体を冷媒により冷却することで、太陽電池モジュール等を含むソーラーパネルの温度が低下し、最大出力を増大できる可能性はある。しかしながら、冷媒を循環させるとともにその冷媒を冷却する装置の消費電力が増えるため、ソーラーパネル及びその冷却装置を含むシステム全体のエネルギー効率を向上させる面から改良の余地がある。
【0006】
一方、建物の室内を冷却する空調装置は、一般に、一定の負荷が与えられることでエネルギー効率が高くなる。このことから、空調装置を利用してソーラーパネルを冷却することが考えられるが、システム全体のエネルギー効率を向上させる面から改良の余地がある。
【0007】
本発明は、空調装置のエネルギー効率を向上させるために、ソーラーパネルを冷却する機能を有するソーラーパネル冷却機能付空調システムであって、システム全体のエネルギー効率を向上させることができるソーラーパネル冷却機能付空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムは、室内熱交換器、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁及び前記各機器に冷媒を循環させる空調装置用冷媒回路を有する空調装置と、太陽光を電力に変換するソーラーパネルと、前記空調装置用冷媒回路の前記室外熱交換器出口側から電子制御弁を介して前記ソーラーパネルの冷却回路を通り前記空調装置用冷媒回路の前記室内熱交換器出口側に冷媒を分岐して導くソーラーパネル冷却用冷媒回路と、前記空調装置のエネルギー効率に関係する負荷率であって、前記室外熱交換器の容量に対する前記室外熱交換器に発生した負荷の割合である負荷率、及び前記ソーラーパネルの発電時の最大出力に関係する温度特性に基づき前記電子制御弁を制御する弁制御部と、を備えるソーラーパネル冷却機能付空調システムである。
【0009】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムによれば、空調装置を利用してソーラーパネルを冷却するとともに、空調装置の負荷率及びソーラーパネルの温度特性に基づき、ソーラーパネル冷却用冷媒回路の電子制御弁が制御される。これにより、空調装置の負荷が増大し、空調装置のエネルギー効率を向上できるとともに、ソーラーパネルの温度を低下させることで最大出力を増大できる。このため、空調装置の負荷率及びソーラーパネルの温度特性に応じてシステム全体のエネルギー効率が高くなる状態でソーラーパネルを冷却することができるので、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0010】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、より好ましくは、前記ソーラーパネルの最大出力は、前記ソーラーパネルの温度が低下するほど増大し、前記弁制御部は、前記空調装置の負荷率について、前記空調装置の負荷に基づいて算出される算出負荷率が、エネルギー効率が最大となるように予め設定される所定負荷率より低くなる場合に、前記電子制御弁を開放し、前記算出負荷率が前記所定負荷率以上となる場合に前記電子制御弁を閉鎖するように制御する。
【0011】
上記構成によれば、算出負荷率が、エネルギー効率が最大となる所定負荷率より低くなる場合に電子制御弁を開放することで、ソーラーパネルが冷却されソーラーパネルの最大出力を増大できる。これとともに、空調装置用冷媒回路に加えて、ソーラーパネル冷却用冷媒回路にも冷媒が分岐して流れるため、室内の冷房状態を維持する場合に、空調装置の冷媒循環量が多くなる。これにより、算出負荷率が高くなるので、算出負荷率を所定負荷率に近づけることができる。この結果、空調装置のエネルギー効率を向上できるとともに、ソーラーパネルの最大出力を増大できるので、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。また、算出負荷率が所定負荷率以上となる場合に電子制御弁を閉鎖することにより、算出負荷率のさらなる増大を抑制できるので、算出負荷率を所定負荷率付近に維持しやすくなる。
【0012】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、より好ましくは、前記電子制御弁は電子制御膨張弁である。
【0013】
上記構成によれば、ソーラーパネル冷却用冷媒回路において電子制御膨張弁の他に膨張弁を設ける必要がなくなる。
【0014】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムにおいて、より好ましくは、前記ソーラーパネルの温度を検出する温度センサを備え、前記ソーラーパネルの出力電圧が予め設定される許容最大出力電圧以上になる場合、あるいは、前記温度センサの検出値が、前記ソーラーパネルの周囲空気の露点温度以下になる場合には、前記電子制御弁を閉鎖する。
【0015】
上記構成によれば、ソーラーパネルの出力電圧が許容最大出力電圧以上である場合に、ソーラーパネルの冷却による出力電圧のさらなる上昇を防止でき、ソーラーパネルの電気回路の保護を図れる。これとともに、ソーラーパネルが、周囲空気の露点温度以下である場合に、ソーラーパネルの冷却によってさらに温度が低下することを防止し、結露の発生を抑制することで発電効率の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るソーラーパネル冷却機能付空調システムによれば、空調装置のエネルギー効率及びシステム全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る実施形態のソーラーパネル冷却機能付空調システムを建物に取り付けた状態を示す図である。
【
図2】実施形態のソーラーパネル冷却機能付空調システムの回路図である。
【
図3】実施形態において、空調装置の負荷率とエネルギー効率の指標の1つであるCOPとの関係を表す性能曲線の1例を示す図である。
【
図4】実施形態において、ソーラーパネルの温度特性の1例を示す図である。
【
図5】実施形態において、弁制御部による電子制御弁の制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】ソーラーパネルの非冷却時(a)と冷却時(b)とにおける各要素に出入りするエネルギーの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、数などは、説明のための例示であって、ソーラーパネル冷却機能付空調システムの仕様により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0019】
図1は、実施形態のソーラーパネル冷却機能付空調システム10を建物100に取り付けた状態を示す図である。ソーラーパネル冷却機能付空調システム10は、空調装置12と、ソーラーパネル30と、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40と、弁制御部50(
図2)とを含んで構成される。空調装置12は、例えば建物100の室内等の空間の冷暖房に用いられる。ソーラーパネル30は、建物100の屋根上に取り付けられて、太陽光の受光によって発電する。以下、ソーラーパネル冷却機能付空調システム10は、システム10と記載する。
【0020】
システム10は、空調装置12を循環する冷媒によってソーラーパネル30も冷却することでソーラーパネル30の最大出力を向上させるとともに、ソーラーパネル30の冷却及び非冷却を適切に切り換えることで、システム10全体のエネルギー効率も向上させる。
【0021】
図2は、システム10の回路図である。空調装置12は、室内熱交換器13、圧縮機14、室外熱交換器15、膨張弁16及びこれら各機器13,14,15,16に冷媒を循環させる空調装置用冷媒回路20を有する。空調装置用冷媒回路20は、各機器13,14,15,16を接続する複数の配管により構成される。
図2では、太線矢印により空調装置用冷媒回路20の各配管を示している。
【0022】
空調装置12は室内冷房時に、冷媒を室内熱交換器13、圧縮機14、室外熱交換器15、膨張弁16の順に循環させる。室内熱交換器13及び膨張弁16は、建物100の室内に配置される室内機17の内部に配置される。圧縮機14及び室外熱交換器15は、建物100の外部に配置される室外機18の内部に配置される。
【0023】
室内熱交換器13は、室内冷房時に、室内熱交換器13の内部を流れる冷媒と、室内熱交換器13を通過する室内空気との間で熱交換を行い、冷媒を蒸発させる蒸発器として使用される。室内空気はその熱交換によって冷却され、冷却空気として室内機17から室内に吹き出される。
【0024】
圧縮機14は、室内冷房時に、室内熱交換器13の出口と室外熱交換器15の入口との間に接続され、室内熱交換器13で蒸発した冷媒を圧縮しながら、室外熱交換器15に送り出す。
【0025】
室外熱交換器15は、室内冷房時に、室外熱交換器15の内部を流れる冷媒と、室外熱交換器15を通過する外気との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮させる凝縮器として使用される。
【0026】
膨張弁16は室内冷房時に、室外熱交換器15の出口と室内熱交換器13の入口との間に接続される。膨張弁16は、冷媒の圧力及び温度を低下させ、蒸発しやすい状態にする。
【0027】
図3は、空調装置12の負荷率とエネルギー効率の指標の1つであるCOPとの関係を表す性能曲線の1例を示している。負荷率を、室外熱交換器の容量に対する室外熱交換器に発生した負荷の割合と定義する。
図3に示すように、空調装置12の性能曲線には最大値が存在し、負荷率LFがLFmaxのときにCOPが最大となる。また、一般的な使用状態で、空調装置12の年平均冷房空調負荷率は負荷率LFmaxを下回り、一般的に空調装置12はエネルギー効率が悪い状態で運転される。実施形態では、後述のように空調装置12の算出負荷率LFが、エネルギー効率が最大となる所定負荷率LFmより低い場合に、空調装置12に流す冷媒を後述のソーラーパネル30の冷却にも用いる。算出負荷率LFは、空調装置12に含まれる温度センサ及び圧力センサ等の検出情報から算出された室外熱交換器15に発生した負荷と、予め設定される室外熱交換器15の容量との割合から算出される。これにより、空調装置用冷媒回路20に加えて、ソーラーパネル30を冷却する後述のソーラーパネル冷却用冷媒回路40にも冷媒が分岐して流れるため、室内の冷房状態を維持する場合に、空調装置12の冷媒循環量が多くなり、算出負荷率LFが大きくなる。したがって、算出負荷率LFを所定負荷率LFmに近づけることができるので、空調装置12を高効率で運転できる。
【0028】
図4は、ソーラーパネル30の温度特性の1例を示す図である。
図4に示すように、ソーラーパネル30の最大出力(最大発生可能出力)は、ソーラーパネル30の温度(パネル温度)が上昇するに従い、例えば直線状に単調減少する。このため、例えば、ソーラーパネル30の温度がt1からt0(t0<t1)に低下する場合に最大出力を増大させることができる。
【0029】
ソーラーパネル30は、電気的に直列に接続された複数の太陽電池モジュールを含んでいる。なお、ソーラーパネル30は、直列接続された複数の太陽電池モジュールを1組として、複数組の太陽電池モジュール同士が並列接続されてもよい。
【0030】
図2に示すように、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40は、電子制御弁である電子制御膨張弁41と、ソーラーパネル冷却回路43と、上流側、中間、及び下流側配管44,45,46とを含んでいる。ソーラーパネル冷却回路43は、例えばソーラーパネル30の受光面とは反対側に配置され、ソーラーパネル30を冷却する。上流側配管44の両端は、空調装置用冷媒回路20における室外熱交換器15の出口及び膨張弁16の間と、電子制御膨張弁41の入口とに接続される。以下では、電子制御膨張弁41はLEV41と記載する。
【0031】
LEV41は、その膨張弁の開度が弁制御部50で制御される。この開度を0とした場合には、室外熱交換器15からの冷媒がソーラーパネル冷却用冷媒回路40の下流側に流れることが阻止される。上記開度を大きくすることで、室外熱交換器15からの冷媒が、LEV41で膨張した後、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40の下流側に流れる。中間配管45の両端は、LEV41の出口とソーラーパネル冷却回路43の入口とに接続される。
【0032】
下流側配管46(
図2)の両端は、ソーラーパネル冷却回路43の出口と、空調装置用冷媒回路20における室内熱交換器13の出口及び圧縮機14の入口の間とに接続される。これにより、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40は、空調装置用冷媒回路20の室外熱交換器15出口側からLEV41を介してソーラーパネル冷却回路43を通り空調装置用冷媒回路20の室内熱交換器13出口側に冷媒を分岐して導く。このため、ソーラーパネル冷却回路43に、LEV41にて膨張された低温の冷媒が流れることで、ソーラーパネル30を冷却できる。弁制御部50によりLEV41が開放(開弁)されることにより、ソーラーパネル30を冷却するモード(ソーラーパネル冷却モード)が実行される。
【0033】
弁制御部50は、空調装置12の負荷率と、ソーラーパネル30の発電時の温度特性である、ソーラーパネル30の温度及び最大出力の関係とに基づきLEV41の開度を制御する。弁制御部50は、演算処理部であるCPUと、ROM,RAM等の記憶部とを有するマイクロコンピュータを含んで構成される。
【0034】
システム10は、さらにソーラーパネル30の温度を検出するパネル温度センサ47と、ソーラーパネル30の周囲空気の温度を検出する外気温度センサ48と、この周囲空気の湿度を検出する湿度センサ49とを有する。各センサ47,48,49の検出信号は、弁制御部50に送信される。弁制御部50は、各センサ47,48,49の検出信号に基づいても、LEV41の開度を制御する。この制御において、ソーラーパネル30の出力電圧が、ソーラーパネル30の電気回路の保護の面から予め設定される許容最大出力電圧以上になる場合を第1の場合とする。また、外気温度センサ48及び湿度センサ49の検出値からソーラーパネル30の周囲空気の露点温度が算出される。このとき、パネル温度センサ47の検出値が、露点温度の算出値以下になる場合を第2の場合とする。弁制御部50は、第1の場合あるいは第2の場合にLEV41を閉鎖して、ソーラーパネル冷却モードを停止する。
【0035】
図5を用いて弁制御部50を用いたLEV41の制御方法を説明する。
図5は、弁制御部50によるLEV41の制御方法を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、弁制御部50により実行される。システム10の電源がオンされ、弁制御部50が起動されると、まずステップS11において、空調装置12の算出負荷率LFが0か否か、すなわち空調装置12が停止しているか否かが判定される。空調装置12が停止している(ステップS11の判定がYESの)場合にはステップS16に移行し、空調装置12が運転中である(ステップS11の判定がNOの)場合にはステップS12に移行する。ステップS16では、LEV41を閉鎖し、ソーラーパネル冷却モードを停止する。ステップS16の処理の終了後は、ステップS11に戻る。
【0036】
ステップS12では、ソーラーパネル30の出力電圧Vpが、許容最大出力電圧Vpm以上(Vp≧Vpm)か否かが判定される。ステップS12の判定処理は、ソーラーパネル30の出力電圧が高すぎる場合に、ソーラーパネル30の冷却を停止することでソーラーパネル30の電気回路の保護を図るために実行される。
【0037】
ソーラーパネル30の出力電圧Vpが許容最大出力電圧Vpm未満の場合(ステップS12の判定がNOの場合)には、ステップS13に移行する。
【0038】
ステップS13では、パネル温度センサ47の検出値である、ソーラーパネル30の温度Tpが、ソーラーパネル30の周囲空気の露点温度Td以下(Tp≦Td)か否かが判定される。ステップS13の判定処理は、ソーラーパネル30の温度Tpが周囲空気の露点温度Td以下である場合に、ソーラーパネル30の冷却を停止することでソーラーパネル30の温度がさらに低下することを防止し、結露の発生によるソーラーパネル30の発電効率低下を抑制するために実行される。
【0039】
ソーラーパネル30の温度Tpが、周囲空気の露点温度Tdを上回る場合(ステップS13の判定がNOの場合)には、ステップS14に移行する。
【0040】
次に、ステップS14では、室外熱交換器15の容量に対する室外熱交換器15に発生した負荷の割合である算出負荷率LFが、エネルギー効率が最大となるように予め設定される所定負荷率LFm以上(LF≧LFm)か否かが判定される。算出負荷率LFは、上記のように、空調装置12に含まれる温度センサ及び圧力センサ等の検出情報から算出された室外熱交換器15に発生した負荷と、予め設定される室外熱交換器15の容量との割合から算出される。算出負荷率LFが所定負荷率LFmより低い場合(ステップS14の判定がNOの場合)には、ステップS15に移行する。
【0041】
ステップS15では、LEV41を開放し、ソーラーパネル冷却モードを実行する。ステップS15の処理の後では、ステップS11に戻る。
【0042】
一方、ステップS12、S13、S14において判定がYESの場合には、ステップS11の判定がYESの場合と同様に、ステップS16に移行し、LEV41が閉鎖される。
図5のステップS11~S14の処理は順序が入れ替えられてもよい。
【0043】
上記のシステム10によれば、空調装置12を利用してソーラーパネル30を冷却するとともに、空調装置12のエネルギー効率に関係する負荷率及びソーラーパネル30の発電時の最大出力に関係する温度特性に基づき、ソーラーパネル冷却回路43より冷媒上流側のLEV41が制御される。これにより、空調装置12の負荷が増大し、空調装置12のエネルギー効率を向上できるとともに、ソーラーパネル30の温度を低下させることで最大出力を増大できる。このため、システム全体のエネルギー効率が高くなる状態でソーラーパネル30を冷却することができるので、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。また、ソーラーパネル30を冷却するための空調装置12以外の冷却媒体(例えば水等)を用意する必要がなくなる。これにより、その冷却媒体を流すための動力源等を用意する必要もなくなり、かつ、その品質を管理する必要もなくなる。
【0044】
ここで、システム全体のエネルギー効率は、次のように定義できる。
図6は、ソーラーパネル30の非冷却時(a)と冷却時(b)とにおける各要素に出入りするエネルギーの概要を示している。ソーラーパネル30の非冷却時における空調装置12の消費電力、冷房能力、ソーラーパネル30の出力を、それぞれCac、Qac、Gacとする。このとき、システム全体のエネルギー効率E1は、E1=Qac/Cacで定義される。
【0045】
一方、ソーラーパネル30の冷却時において、ソーラーパネル30の冷却に利用可能な空調装置12の冷房能力DQでソーラーパネル30を冷却する場合に、その冷却によってソーラーパネル30の出力がDG分増大すると仮定する。この場合に、空調装置12の消費電力、冷房能力、ソーラーパネル30の出力を、それぞれCpv(=Cac+DC)、Qpv(=Qac+DQ)、Gpv(=Gac+DG)とする。このとき、システム全体のエネルギー効率E2は、E2=Qac/(Cpv-DG)で定義される。
【0046】
上記の式は、E2=Qac/{Cac-(DG-DC)}と変形できるので、ソーラーパネル30の冷却により増大する出力DGが、空調装置12の消費電力の増大分DCを上回っていれば、ソーラーパネル30の冷却によってシステム全体のエネルギー効率E2をE1より高くできる。上記の実施形態によれば、システム全体のエネルギー効率E2がE1より高くなるようにソーラーパネル30を冷却できる。これについては後で試算結果を用いて説明する。
【0047】
さらに、ソーラーパネル30の最大出力は、ソーラーパネル30の温度が低下するほど増大し、弁制御部50は、算出負荷率LFが、エネルギー効率が最大となる所定負荷率LFmより低くなる場合に、LEV41を開放するように制御される。これにより、算出負荷率LFが所定負荷率LFmより低い場合にLEV41を開放することで、ソーラーパネル30が冷却され最大出力を増大できる。これとともに、空調装置用冷媒回路20に加えて、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40にも冷媒が分岐して流れるため、室内の冷房状態を維持する場合に、空調装置12の冷媒循環量が多くなる。このため、算出負荷率LFを、所定負荷率LFmに近づけるように大きくすることができる。この結果、空調装置12のエネルギー効率を向上できるとともに、ソーラーパネル30の最大出力を増大できるので、システム全体のエネルギー効率を向上させることができる。また、算出負荷率LFが所定負荷率LFm以上となる場合にLEV41を閉鎖するように制御されるので、算出負荷率LFのさらなる増大を抑制でき、所定負荷率LFm付近に維持しやすくなる。
【0048】
さらに、弁制御部50により制御される電子制御弁がLEV41であるので、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40においてLEV41の他に膨張弁を設ける必要がなくなる。なお、弁制御部50により制御される電子制御弁を、ソーラーパネル冷却用冷媒回路40に設けられた電子開閉弁とし、その電子開閉弁の下流側に膨張弁を設けてもよいが、この場合には上記の実施形態と異なり、部品点数が増大する。
【0049】
さらに、弁制御部50は、ソーラーパネル30の出力電圧が予め設定される許容最大出力電圧以上になる場合、あるいは、パネル温度センサ47の検出値が、ソーラーパネル30の周囲空気の露点温度以下になる場合には、LEV41を閉鎖する。これにより、ソーラーパネル30の出力電圧が許容最大出力電圧以上である場合に、ソーラーパネル30の冷却による出力電圧のさらなる上昇を防止でき、ソーラーパネル30の電気回路の保護を図れる。これとともに、ソーラーパネル30が、周囲空気の露点温度以下になる場合に、ソーラーパネル30の冷却によってさらに温度が低下することを防止し、結露の発生を抑制することで発電効率の低下を抑制できる。
【0050】
なお、パネル温度センサ47の検出値が、ソーラーパネル30の周囲空気の露点温度以下か否かの判定には、外気温度センサ48及び湿度センサ49の代わりに、ソーラーパネル30の周囲空気の露点温度を検出する露点温度センサを用いてもよい。この場合には、弁制御部50が、露点温度センサの検出値と、パネル温度センサ47の検出値とからソーラーパネル30の温度が周囲空気の露点温度以下か否かを判定する。
【0051】
図5に示した制御方法において、ステップS12及びステップS13の処理を省略することもできる。ステップS12を省略する場合には、例えば、ステップS12の処理とは別の手段によって、ソーラーパネル30の電気回路を保護する。
【0052】
次に、実施形態のように、空調装置12の負荷率を、エネルギー効率が最大となる負荷率に近づけるように、空調装置12によりソーラーパネル30を冷却することが効率的であることを確認するために行った試算の結果を説明する。
【0053】
試算は、特定の場所及び時期(5月)を設定するとともに、外気条件と室内条件とを仮定して行った。また、試算は、空調装置12の算出負荷率LFが所定負荷率LFm(=25.0%)に近づくように、弁制御部50がLEV41を制御することを条件とした。所定負荷率LFmでは、空調装置12においてエネルギー効率の指標の1つであるCOPが最大となる。
【0054】
このとき、空調装置12の定格冷房運転と、5月の平均温度及び平均湿度での平均状態の運転(平均運転)と、COPが最大となる場合の運転(COP最大運転)とにおいて、空調装置12の冷房能力、消費電力、及びCOP(またはCOP比)が、表1に示すように算出された。
【0055】
【0056】
表1中、COPは、COP=(冷房能力)/(消費電力)で算出される。COP比は、負荷率85.0%の定格冷房運転におけるCOPに対する、5月の平均運転またはCOP最大運転のCOPの比率である。
【0057】
このときソーラーパネル30の冷却に利用可能な空調装置12の冷房能力は、表1から次の(1)式のように算出される。
【0058】
(COP最大運転での冷房能力)-(5月の平均運転での冷房能力)=2.14-1.43=0.71(kW)・・・(1)
【0059】
また、空調装置12において、ソーラーパネル30の冷却により増加する消費電力は、表1から次の(2)式のように算出される。
【0060】
(COP最大運転での消費電力)-(5月の平均運転での消費電力)=0.189-0.132=0.057(kW)・・・(2)
【0061】
また、ソーラーパネル30は、周囲空気から与えられる熱量Qairが、冷媒に奪われる熱量Qrefと等しくなるまで温度が低下する。ソーラーパネル30が非冷却の場合には、熱量Qair(=Qref)=0であり、ソーラーパネル30が冷却される場合には、熱量Qair(=Qref)>0である。(1)式より、熱量Qair(=熱量Qref)は、0.71kWである。
【0062】
また、試算における他の条件は以下とした。
5月の空気温度:25.1℃
空調装置12により冷却されたソーラーパネル30の温度の仮定値:15.0℃
熱伝達率:5.0W/m2K
ソーラーパネル30を構成する太陽電池モジュール1枚当たりの最大出力:275W
【0063】
上記の条件で、熱量Qairが0.71kWとなるためのソーラーパネル30の面積を算出し、その面積を太陽電池モジュールの枚数に換算すると、8.5枚となった。
【0064】
この結果、ソーラーパネル30の冷却運転を開始し、ソーラーパネル30の冷却に利用可能な空調装置12の冷房能力(=0.71kW)でソーラーパネル30の温度が15℃まで低下すると仮定したときに、冷却可能な太陽電池モジュールの枚数は8.5枚であることが分かった。また、ソーラーパネル30は温度が10℃低下すると、最大出力が5%増加することが分かっている。このことから、ソーラーパネル30の冷却により増加するソーラーパネル30の最大出力は、太陽電池モジュール1枚当たりで0.01375kWとなり、これに太陽電池モジュールの枚数(8.5枚)を乗じると、0.117kWとなった。これにより、ソーラーパネル30の冷却により増加する最大出力の合計が0.117kWと算出された。
【0065】
この算出値(0.117kW)は、(2)式で得られた、ソーラーパネル30の冷却により増加する空調装置12の消費電力(0.057kW)を上回っている。これにより、空調装置12による冷却で増加するソーラーパネル30の出力DG(
図6)が、ソーラーパネル30の冷却により増加する空調装置12の消費電力DC(
図6)を上回ることを確認できた。このため、ソーラーパネル30の冷却によって、上記のエネルギー効率E2をソーラーパネル30が非冷却の場合のエネルギー効率E1より高くできることを確認できた。この結果、空調装置12の消費電力の増加分を考慮した場合に、空調装置12の負荷率を、エネルギー効率が最大となる負荷率に近づけるようにソーラーパネル30を冷却することが効率的であることを確認できた。
【0066】
なお、ソーラーパネル冷却用冷媒回路は、空調装置用冷媒回路に複数接続される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 ソーラーパネル冷却機能付空調システム(システム)、12 空調装置、13 室内熱交換器、14 圧縮機、15 室外熱交換器、16 膨張弁、17 室内機、18 室外機、20 空調装置用冷媒回路、30 ソーラーパネル、40 ソーラーパネル冷却用冷媒回路、41 電子制御膨張弁(LEV)、43 ソーラーパネル冷却回路、44 上流側配管、45 中間配管、46 下流側配管、47 パネル温度センサ、48 外気温度センサ、49 湿度センサ、50 弁制御部、100 建物。