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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】バッテリ充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/14 20060101AFI20230616BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230616BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H02J7/14 K
H02M7/12 A
H02P9/04 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019076192
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020174495
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】角本 茂生
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦之
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/073593(WO,A1)
【文献】特開2016-220351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/14
H02M 7/12
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機が出力する三相の交流電圧を整流してバッテリを充電する、各相に対応した整流素子からなる整流部と、
前記整流素子ごとに設けられ、オフ状態で前記交流電圧を整流して前記バッテリを充電させ、オン状態で前記発電機の各相の出力をバッテリの負側と短絡させるスイッチ部と、
前記交流電圧の各相のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部が検出した各相のゼロクロスの検出結果に基づいて、各相に対応した前記スイッチ部をオン/オフするゲート信号を出力するスイッチ制御部と、
前記ゼロクロス検出部の前記ゼロクロスの検出基準を変更する検出基準変更部と
を備えることを特徴とするバッテリ充電装置。
【請求項2】
前記ゼロクロス検出部は、前記交流電圧の各相と基準電圧とを比較して、各相のゼロクロスを検出し、
前記検出基準変更部は、
前記基準電圧を変更する基準電圧変更部を備え、
前記基準電圧変更部が前記基準電圧を変更することで、前記ゼロクロスの検出基準を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電装置。
【請求項3】
前記検出基準変更部は、
所定の負電圧であるオフセット電圧を生成する電圧生成部を備え、
前記電圧生成部が生成した前記オフセット電圧を、前記ゼロクロス検出部が前記交流電圧の各相のゼロクロスを検出する検出ノードに、抵抗を介して供給して、前記ゼロクロスの検出基準を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電装置。
【請求項4】
前記検出基準変更部は、前記バッテリに接続される負荷部の負荷変動に応じて、前記ゼロクロスの検出基準を変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項3にいずれか一項に記載のバッテリ充電装置。
【請求項5】
前記検出基準変更部は、前記交流電圧の各相における下限値に応じて、前記ゼロクロスの検出基準を変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項3にいずれか一項に記載のバッテリ充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二輪車用のバッテリ充電装置では、永久磁石三相交流発電機(ACG)が使用され、ACGの出力を整流するFET(Field Effect Transistor)ショート式のレギュレータが用いられている。FETショート式のレギュレータでは、発熱を低減するために、負電流の流入時に0A(アンペア)になるゼロクロスを検出してスイッチングするゼロクロス制御が一般的である。
ところで、このようなバッテリ充電装置では、ACGの相間における負荷に偏りがあると、ACGの交流出力が持ち上がり、正の電圧領域のみで振幅することがあり、ゼロクロスの検出ができずにゼロクロス制御が困難になる場合がある。この対策として、特許文献1では、三相単位で同期した状態によりスイッチングを制御することで、三相間の負荷の偏りの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表WO2010/073593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、例えば、レース用二輪車などのようにバッテリの電圧が高く、急激な負荷変動が発生する場合には、相間負荷の偏りの発生を充分に抑制することができずに、ゼロクロス制御が困難になる場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができるバッテリ充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、発電機が出力する三相の交流電圧を整流してバッテリを充電する、各相に対応した整流素子からなる整流部と、前記整流素子ごとに設けられ、オフ状態で前記交流電圧を整流して前記バッテリを充電させ、オン状態で前記発電機の各相の出力をバッテリの負側と短絡させるスイッチ部と、前記交流電圧の各相のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、前記ゼロクロス検出部が検出した各相のゼロクロスの検出結果に基づいて、各相に対応した前記スイッチ部をオン/オフするゲート信号を出力するスイッチ制御部と、前記ゼロクロス検出部の前記ゼロクロスの検出基準を変更する検出基準変更部とを備えることを特徴とするバッテリ充電装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記のバッテリ充電装置において、前記ゼロクロス検出部は、前記交流電圧の各相と基準電圧とを比較して、各相のゼロクロスを検出し、前記検出基準変更部は、前記基準電圧を変更する基準電圧変更部を備え、前記基準電圧変更部が前記基準電圧を変更することで、前記ゼロクロスの検出基準を変更することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記のバッテリ充電装置において、前記検出基準変更部は、所定の負電圧であるオフセット電圧を生成する電圧生成部を備え、前記電圧生成部が生成した前記オフセット電圧を、前記ゼロクロス検出部が前記交流電圧の各相のゼロクロスを検出する検出ノードに、抵抗を介して供給して、前記ゼロクロスの検出基準を変更することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記のバッテリ充電装置において、前記検出基準変更部は、前記バッテリに接続される負荷部の負荷変動に応じて、前記ゼロクロスの検出基準を変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記のバッテリ充電装置において、前記検出基準変更部は、前記交流電圧の各相における下限値に応じて、前記ゼロクロスの検出基準を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリ充電装置は、検出基準変更部が、ゼロクロス検出部のゼロクロスの検出基準を変更する。これにより、バッテリ充電装置では、例えば、急激な負荷変動が発生し、発電機の各相の出力が持ち上がって、正の電圧領域のみで振幅するようになったとしても、検出基準変更部によってゼロクロス検出部のゼロクロスの検出基準を変更することで、適切にゼロクロスを検出することができる。よって、バッテリ充電装置は、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態によるバッテリ充電装置の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態におけるゲート検出部の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態におけるゲート検出部の処理の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態における電圧生成部の一例を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態によるバッテリ充電装置の動作の一例を説明する図である。
図6】第2の実施形態によるバッテリ充電装置の一例を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態によるバッテリ充電装置の動作の一例を説明する図である。
図8】第3の実施形態によるバッテリ充電装置の一例を示すブロック図である。
図9】第4の実施形態によるバッテリ充電装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態によるバッテリ充電装置について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるバッテリ充電装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、バッテリ充電装置1は、整流部20と、制御回路30と、検出基準変更部50と、コンデンサ(C1、C2)と、抵抗R1~R6とを備えている。
バッテリ充電装置1は、ACG2から供給されるU相、V相、及びW相の三相の交流信号を整流して、バッテリ3を充電する。
【0015】
ACG2(発電機の一例)は、永久磁石三相交流発電機であり、例えば、二輪車などのエンジンの回転エネルギーに基づいて交流電力を発電し、発電した交流電力として、U相、V相、及びW相の三相の交流信号を出力する。
バッテリ3は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの二次電池であり、負荷部に電力を供給するとともに、バッテリ充電装置1の制御に基づいて、ACG2が発電した電力が充電される。バッテリ3は、プラス側端子(正極端子)が電源線L1に、マイナス側端子(負極端子)が電源線L2にそれぞれ接続されている。
【0016】
コンデンサC1及びコンデンサC2は、平滑コンデンサであり、電源線L1と電源線L2との間に接続されている。コンデンサC1及びコンデンサC2は、電源線L1と電源線L2との間の直流電圧のノイズを除去し、平滑化する。
【0017】
整流部20は、ACG2が出力する三相の交流電圧を整流してバッテリ3を充電する。整流部20は、U相、V相、及びW相の各相に対応したダイオードD1~D3(整流素子)からなる。例えば、整流部20は、ダイオードD1~D3と、スイッチ部10とを備え、ACG2から出力されるU相、V相、及びW相の交流電圧を整流して直流電圧を生成し、バッテリ3を充電する。
【0018】
ダイオードD1~D3(整流素子の一例)の各々は、カソード端子がバッテリ3のプラス側端子(電源線L1)に接続されている。
ダイオードD1は、アノード端子がACG2のU相出力線(ノードN1)に接続されている。また、ダイオードD2は、アノード端子がACG2のV相出力線(ノードN2)に接続されている。また、ダイオードD3は、アノード端子がACG2のW相出力線(ノードN3)に接続されている。
【0019】
スイッチ部10は、ダイオードD1~D3ごとに設けられ、オフ状態で交流電圧を整流してバッテリ3を充電させ、オン状態でACG2の各相(U相、V相、及びW相)の出力をバッテリ3のマイナス側端子(負側)と短絡させる。スイッチ部10には、(MOSトランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor field effect transistor)11~13が含まれる。
【0020】
MOSトランジスタ11は、ドレイン端子がダイオードD1のアノード端子(ノードN1)に、ゲート端子が後述する制御回路30の制御信号S1の信号線に、ソース端子が電源線L2に、それぞれ接続されている。MOSトランジスタ11は、オン状態になることにより、U相出力線(ノードN1)をバッテリ3のマイナス側端子(電源線L2)に短絡する。
【0021】
MOSトランジスタ12は、ドレイン端子がダイオードD2のアノード端子(ノードN2)に、ゲート端子が後述する制御回路30の制御信号S2の信号線に、ソース端子が電源線L2に、それぞれ接続されている。MOSトランジスタ12は、オン状態になることにより、V相出力線(ノードN2)をバッテリ3のマイナス側端子(電源線L2)に短絡する。
【0022】
MOSトランジスタ13は、ドレイン端子がダイオードD3のアノード端子(ノードN3)に、ゲート端子が後述する制御回路30の制御信号S3の信号線に、ソース端子が電源線L2に、それぞれ接続されている。MOSトランジスタ13は、オン状態になることにより、W相出力線(ノードN3)をバッテリ3のマイナス側端子(電源線L2)に短絡する。
【0023】
MOSトランジスタ11~13は、例えば、NチャネルMOSトランジスタであり、ゲート端子がH状態(ハイ状態)である場合にオン状態になり、L状態(ロウ状態)になる。すなわち、制御信号S1がH状態の場合に、MOSトランジスタ11は、オン状態になり、ダイオードD1のアノード端子に接続されたU相出力線を電源線L2に接続させるため、U相出力線がバッテリ3のマイナス側端子とショートし、U相の交流電圧がバッテリ3のマイナス側端子の電圧になる。そのため、この場合、ダイオードD1からU相の交流電圧が出力されない状態になる。
【0024】
また、制御信号S1がL状態の場合に、MOSトランジスタ11は、オフ状態になり、ダイオードD1のアノード端子に接続されたU相出力線と電源線L2とが非接続状態になるため、ダイオードD1からU相の交流電圧が出力される状態になる。
【0025】
同様に、制御信号S2がH状態の場合に、MOSトランジスタ12は、オン状態になり、ダイオードD2のアノード端子に接続されたV相出力線を電源線L2に接続させるため、V相出力線がバッテリ3のマイナス側端子とショートし、V相の交流電圧がバッテリ3のマイナス側端子の電圧になる。そのため、この場合、ダイオードD2からV相の交流電圧が出力されない状態になる。
【0026】
また、制御信号S2がL状態の場合に、MOSトランジスタ12は、オフ状態になり、ダイオードD2のアノード端子に接続されたV相出力線と電源線L2とが非接続状態になるため、ダイオードD2からV相の交流電圧が出力される状態になる。
【0027】
同様に、制御信号S3がH状態の場合に、MOSトランジスタ13は、オン状態になり、ダイオードD3のアノード端子に接続されたW相出力線を電源線L2に接続させるため、W相出力線がバッテリ3のマイナス側端子とショートし、W相の交流電圧がバッテリ3のマイナス側端子の電圧になる。そのため、この場合、ダイオードD3からW相の交流電圧が出力されない状態になる。
【0028】
また、制御信号S3がL状態の場合に、MOSトランジスタ13は、オフ状態になり、ダイオードD3のアノード端子に接続されたW相出力線と電源線L2とが非接続状態になるため、ダイオードD2からW相の交流電圧が出力される状態になる。
【0029】
抵抗R1は、ノードN1とノードN4との間に接続され、抵抗R2は、ノードN2とノードN5との間に接続され、抵抗R3は、ノードN3とノードN6との間に接続されている。すなわち、U相の出力信号は、抵抗R1を介して制御回路30に供給され、V相の出力信号は、抵抗R2を介して制御回路30に供給され、W相の出力信号は、抵抗R3を介して制御回路30に供給される。
【0030】
制御回路30(スイッチ制御部の一例)は、U相、V相、及びW相の出力信号に応じて、スイッチ部10(MOSトランジスタ11~13)を制御する。制御回路30は、U相、V相、及びW相の交流電圧の正電位の位相に対応して制御信号S1~S3をL状態に制御するとともに、U相、V相、及びW相の交流電圧の負電位の位相に対応して制御信号S1~S3をH状態に制御する。
【0031】
制御回路30は、バッテリ3の充電電圧が、予め設定された閾値電圧以上の場合に充電を停止し、予め設定された閾値電圧未満の場合充電を行うように整流部20の制御を行う。さらに、制御回路30は、ACG2から供給される三相の交流電圧において偏励磁発生の要因となる励磁電流の偏りの有無を検出し、この励磁電流の偏りを解消するように、整流部20の制御を行う。
制御回路30は、コンパレータ31~33と、ゲート制御部34~36と、ゲート検出部37と、充電許可部38と、充電電圧検出部40と、ゲートドライバDR1~DR3とを備えている。
【0032】
コンパレータ31~33(ゼロクロス検出部の一例)は、交流電圧の各相のゼロクロスを検出する。すなわち、コンパレータ31~33は、U相、V相及びW相の交流電圧の位相を検出する。コンパレータ31~33は、非反転入力端子(+端子)が接地(バッテリ3のマイナス側端子(0V)に接続)されている。
【0033】
コンパレータ31は、反転入力端子(-端子)がノードN1に接続され、U相の交流電圧が供給されており、出力端子がゲート制御部34に接続されている。コンパレータ31は、接地電位とU相の交流電圧との電圧値の比較を行い、U相の交流電圧が接地電位より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、U相の交流電圧が接地電位より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。これにより、コンパレータ31は、U相の電圧値が負電位(負の極性)の位相の検出を行う。
【0034】
同様に、コンパレータ32は、反転入力端子(-端子)がノードN2に接続され、V相の交流電圧が供給されており、出力端子がゲート制御部35に接続されている。コンパレータ32は、接地電位とV相の交流電圧との電圧値の比較を行い、V相の交流電圧が接地電位より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、V相の交流電圧が接地電位より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。これにより、コンパレータ32は、V相の電圧値が負電位(負の極性)の位相の検出を行う。
【0035】
同様に、コンパレータ33は、反転入力端子(-端子)がノードN3に接続され、W相の交流電圧が供給されており、出力端子がゲート制御部36に接続されている。コンパレータ33は、接地電位とW相の交流電圧との電圧値の比較を行い、W相の交流電圧が接地電位より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、W相の交流電圧が接地電位より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。これにより、コンパレータ33は、W相の電圧値が負電位(負の極性)の位相の検出を行う。
【0036】
充電電圧検出部40は、バッテリ3の充電されている充電電圧値を検出するものであり、この充電電圧値と、満充電を示す設定されている閾値電圧値とを比較する。充電電圧検出部40は、比較結果において、充電電圧値が閾値電圧値未満である場合に、H状態の充電信号を出力し、充電電圧値が閾値電圧以上である場合に、L状態を出力とし、充電信号を出力を行わない。
また、充電電圧検出部40は、基準電源41と、コンパレータ42とを備えている。
【0037】
基準電源41は、充電電圧の電圧値Veが満充電か否かを検出する上記閾値電圧としての基準電圧値Vrefを生成する。
コンパレータ42は、反転入力端子(-端子)に電源線L1が接続され、バッテリ3の充電電圧が反転入力端子(-端子)に供給される。また、図示しないがバッテリ3の充電電圧を分圧し、電圧値Veとして基準電圧値Vレfと比較するように構成してもよい。
【0038】
コンパレータ42は、反転入力端子(-端子)に電圧値Veが供給され、非反転入力端子(+端子)に基準電圧Vrefが供給されており、電圧値Veと電圧値Vrefとを比較する。コンパレータ42は、電圧値Veが電圧値Vref未満の場合に、満充電でなく充電を行う必要があると判定し、出力端子からH状態の充電信号を出力する。また、コンパレータ42は、電圧値Veが電圧値Vref以上の場合も、満充電となり充電を停止する必要があると判定し、出力端子からL状態を出力する。すなわち、この場合、コンパレータ42は、充電信号の出力を行わない。
なお、充電電圧検出部40の出力がH状態の場合に、充電信号を出力している状態とする。
【0039】
ゲート制御部34は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ31からの出力がH状態である場合に、出力端子からH状態の信号(制御信号S1)を出力する。また、ゲート制御部34は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ31からの出力がL状態である場合に、出力端子からL状態の信号を出力する。
【0040】
また、ゲート制御部34は、充電電圧検出部40から充電信号が供給されていないか、又は、充電許可部38から充電許可信号が供給されていないかのいずれかの場合に、コンパレータ31の出力の状態に関係なく、出力端子からH状態の信号を出力し、非充電の状態にする。
【0041】
また、同様に、ゲート制御部35は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ32からの出力がH状態である場合に、出力端子からH状態の信号(制御信号S2)を出力する。また、ゲート制御部35は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ31からの出力がL状態である場合に、出力端子からL状態の信号を出力する。
【0042】
また、ゲート制御部35は、充電電圧検出部40から充電信号が供給されていないか、又は、充電許可部38から充電許可信号が供給されていないかのいずれかの場合に、コンパレータ32の出力の状態に関係なく、出力端子からH状態の信号を出力し、非充電の状態にする。
【0043】
また、同様に、ゲート制御部36は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ33からの出力がH状態である場合に、出力端子からH状態の信号(制御信号S3)を出力する。また、ゲート制御部36は、充電電圧検出部40から充電信号が供給され、且つ、充電許可部38から充電許可信号が供給され、コンパレータ32からの出力がL状態である場合に、出力端子からL状態の信号を出力する。
【0044】
また、ゲート制御部36は、充電電圧検出部40から充電信号が供給されていないか、又は、充電許可部38から充電許可信号が供給されていないかのいずれかの場合に、コンパレータ33の出力の状態に関係なく、出力端子からH状態の信号を出力し、非充電の状態にする。
【0045】
このように、ゲート制御部34~36の各々は、充電状態において、対応する各相の交流電圧が負電位の場合、それぞれMOSトランジスタ11~13の各ゲート端子に対して正バイアス(H状態)を印加し、MOSトランジスタ11~13に整流電流が流れて、同期整流が行われる。また、ゲート制御部34~36の各々は、非充電状態において、MOSトランジスタ11~13の各ゲート端子に、同時に正バイアスを印加されて、ACG2の各相をバッテリ3のマイナス側端子と短絡させて、過充電を防止する。
【0046】
充電許可部38は、充電電圧検出部40から充電信号が供給された状態において、ゲート検出部37からゲート正常信号Gが供給されると充電許可信号の出力(H状態の出力)を行う。また、充電許可部38は、充電信号が供給されていない状態において、ゲート検出部37からゲート正常信号Gが供給されると、充電許可信号を停止(L状態を出力)する。
すなわち、充電許可部38は、充電電圧検出部40から充電信号が供給されている場合に、ゲート正常信号Gが供給されると充電許可信号をH状態にて出力されるよう設定し、充電信号が供給されていない場合に、ゲート検出部37からゲート正常信号Gが供給されると、充電許可信号をL状態にて出力されるよう設定する。
【0047】
また、充電許可部38は、充電電圧検出部40から充電信号が供給されている場合に、ゲート検出部37からゲート異常信号Bが供給されると充電許可信号をL状態にて出力するよう設定する。
これにより、ゲート制御部34~36は、MOSトランジスタ11~13のゲート端子に、三相交流の正電位の位相に対応してL状態の電圧を印加し、負電位の位相に対応してH状態の電圧を印加するようにし、バッテリ3に対する充電を行わせる制御を行う。
【0048】
また、充電許可部38は、満充電信号が供給されると、ゲート制御部34~36に対して充電許可信号を出力しないようにする。
これにより、ゲート制御部34~36は、MOSトランジスタ11~13のゲート端子に、三相交流の負電位の位相に関係なく、H状態の電圧を印加するようにし、バッテリ3に対する充電を停止させる制御を行う。
この場合、後述するゲート検出部37は、上述したゲート正常信号Gあるいはゲート異常信号Bを、U相、V相及びW相の三相単位に出力する。このため、バッテリ充電装置1では、充電状態、及び非充電状態の切替の制御が、U相、V相及びW相の三相単位で同期した状態により行われることになり、三相間における励磁電流の偏りの発生を抑制することができる。
【0049】
ゲート検出部37は、U相、V相及びW相の三相単位に励磁電流の偏りの検出を行うため、ゲート制御部34~36から、制御信号S1、S2、S3が順番に出力されているか否かの判定を行う。すなわち、ゲート検出部37は、U相、V相及びW相の三相単位の順番に制御信号S1、S2及びS3が、いずれも欠けずに供給されているか否かの判定を行う。
【0050】
例えば、U相の供給に対応し、ゲート制御部34から制御信号S1にH状態が出力された場合、すなわちU相から充電が開始された場合に、ゲート検出部37は、S1→S2→S3の順番で制御信号が供給されていることを検出すると、ゲート正常信号Gを出力する。同様に、W相の供給に対応し、ゲート制御部36から制御信号S3にH状態が出力された場合、すなわちW相から充電が開始された場合、S3→S1→S2の順番で制御信号が出力されていることを検出すると、ゲート検出部37は、ゲート異常信号Bを出力する。
【0051】
すなわち、ゲート検出部37は、充電状態において、常に制御信号S1→S2→S3の順番により巡回していることを検出し、制御信号S1、S2、S3のいずれかの制御信号が欠損し、制御信号S1、S2、S3が順番に出力されない場合に、ゲート制御部34~36に対してゲート異常信号Bを出力し、異常状態として充電を停止させる。
【0052】
したがって、U相の供給に対応し、ゲート制御部34から制御信号S1にH状態が出力された場合において、U相からの制御信号S1、S2、S3が順番に出力されているか否かの周期的な検出が開始された場合に、最初に検出した制御信号が再度出力されると、ゲート検出部37は、ゲート異常信号Bを出力する。ここで、最初に検出した制御信号が再度出力されるとは、例えば、S1→S2→S1、あるいはS1→S3→S1などのように、途中の番号の制御信号が供給されずに、最初に検出した制御信号(この例では、S1)が再度出力されることを示す。
【0053】
ここで、図2を参照して、ゲート検出部37の構成例について説明する。
図2は、本実施形態におけるゲート検出部37の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、ゲート検出部37は、ラッチ371、ラッチ372、及びラッチ373と、正常確認部374とを備えている。
【0054】
ラッチ371は、制御信号S1にH状態が供給されると、出力としてラッチ信号にH状態を出力する。また、ラッチ372は、制御信号S2にH状態が供給されると、出力としてラッチ信号にH状態を出力する。また、ラッチ373は、制御信号S3にH状態が供給されると、出力としてラッチ信号にH状態を出力する。
【0055】
正常確認部374は、ラッチ371~373の順番(U相、V相、W相の位相の順番)において、最初にH状態を出力したラッチから順に、3つのラッチ全てからのH状態のラッチ信号が供給されると、ゲート正常信号Gを出力する。また、正常確認部374は、最初にH状態のラッチ信号を出力したラッチ以外の2つのラッチのいずれかあるいは双方のH状態の出力が供給されずに、最初にH状態のラッチ信号を出力したラッチから再度H状態が供給されると、ゲート異常信号Bを出力する。すなわち、正常確認部374は、ラッチ371→ラッチ372→ラッチ373の巡回において、3つのラッチが順番に全てH状態のラッチ信号を出力するか否かにより、ゲート正常信号G又はゲート異常信号Bを、ゲート制御部34~36の各々に出力する。
【0056】
例えば、ラッチ372から最初にH状態のラッチ信号が供給され、次にラッチ373からH状態のラッチ信号が供給され、ラッチ371からH状態のラッチ信号が供給されずに、ラッチ371からH状態のラッチ信号が抜けた状態において、再度、H状態のラッチ信号がラッチ372から供給されると、ゲート検出部37はゲート異常信号Bを出力する。
【0057】
すなわち、正常確認部374は、図3のテーブルに示す論理にて動作している。
正常確認部374は、制御信号S1に対応したラッチ371からH状態のラッチ信号が順番に供給されたか否かの検出を行う場合、S1→S2→S3の順番に供給されると、ラッチ371~373に対してリセット信号を出力するとともに、ゲート正常信号Gを充電許可部38に対して出力する。正常確認部374は、このゲート正常信号Gを次のラッチ信号が順番に供給されることを検出する周期、すなわち次のラッチ信号が供給されるまで保持する。
【0058】
また、正常確認部374は、制御信号S1に対応したラッチ371からH状態のラッチ信号が供給された場合、S1→S2→S1、S1→S3→S1あるいはS1→S1の順番に供給されると、すなわち順番に供給される制御信号に対応したラッチ信号のいずれかあるいは双方が抜け、最初に供給された制御信号に対応したラッチ信号が供給されると、ラッチ371~373に対してリセット信号を出力するとともに、パルス状のゲート異常信号Bを出力する。
【0059】
このように、図3に示すように、正常確認部374は、制御信号S2又は制御信号S3からH状態の制御信号の供給が開始された場合も同様に、U相、V相、W相の位相の順番に制御信号が供給されず、最初に供給された相の制御信号の間にある相の、いずれかあるいは双方の相に対応した制御信号が供給されずに、最初に供給された相の制御信号が供給された場合に、ゲート異常として検出する。
【0060】
なお、ゲート制御部34~36の全てには、上記ゲート異常信号Bが供給されており、ゲート制御部34~36は、このゲート異常信号Bが供給されると、充電電圧検出部40から充電信号及び充電許可部38から充電許可信号が供給されていない状態であっても、かつ対応する位相検出信号が供給されていない場合でも、予め設定した時間幅、例えば、三相の周期の整数倍の時間幅の期間により、それぞれ強制的に制御信号(S1、S2、S3)にH状態を出力する。
【0061】
この処理により、何らかの原因により、ゼロクロスが検出されない場合であっても、一旦、ACG2における交流電圧の三相間における偏励磁を発生させる要因となる励磁電流の偏りをリセットすることができ、三相間における電圧値を均等とすることができ、三相単位の同期した充電制御を再開することが可能となる。
【0062】
次に、図1に戻り、ゲートドライバDR1~DR3の各々は、MOSトランジスタ11~13のゲート端子に対して制御信号S1、S2及びS3を出力する。すなわち、ゲートドライバDR1は、ゲート制御部34が出力する制御信号S1を、MOSトランジスタ11の制御用の出力信号に変換し、制御信号S1をMOSトランジスタ11のゲート端子に供給する。また、ゲートドライバDR2は、ゲート制御部35が出力する制御信号S2を、MOSトランジスタ12の制御用の出力信号に変換し、制御信号S2をMOSトランジスタ12のゲート端子に供給する。また、ゲートドライバDR3は、ゲート制御部36が出力する制御信号S3を、MOSトランジスタ13の制御用の出力信号に変換し、制御信号S3をMOSトランジスタ13のゲート端子に供給する。
【0063】
検出基準変更部50は、上述したコンパレータ31~33のゼロクロスの検出基準を変更する。検出基準変更部50は、コンパレータ31~33が交流電圧の各相のゼロクロスを検出する検出ノードであるノードN4~N6に、例えば、マイナス電圧(所定の負電圧)であるオフセット電圧を、抵抗(後述する抵抗R4~R6)を介して供給して、ゼロクロスの検出基準を変更する。
また、検出基準変更部50は、電圧生成部51を備える。
【0064】
電圧生成部51は、所定の負電圧であるオフセット電圧を生成する。電圧生成部51は、例えば、図4に示すような、チャージポンプ回路を利用して、負電圧(例えば、-5V)を生成する。
【0065】
図4は、本実施形態における電圧生成部51の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、電圧生成部51は、電源回路511と、タイマIC512、抵抗R7~R9と、コンデンサC3~C6と、ダイオード(D4、D5)とを備えている。
電源回路511は、例えば、5Vの直流電圧を生成する。また、コンデンサC5は、平滑コンデンサであり、電源回路511が生成した5Vの電源線とGND電源線との間に接続されている。
【0066】
タイマIC512は、例えば、テキサスインスツルメンツ社製のNE555のようなタイマICであり、抵抗R8及び抵抗R9と、コンデンサC6とによるモード設定により、5Vのクロック信号を生成するクロック生成回路(発振回路)として機能する。タイマIC512は、OUT端子から5Vのクロック信号を出力する。
【0067】
抵抗R8と、抵抗R9と、コンデンサC6とは、-5Vの電源線とGND電源線との間に直列に接続されている。抵抗R8と抵抗R9との間のノードがタイマIC512のDIS端子に接続され、抵抗R9とコンデンサC6との間のノードが、タイマIC512のTHRS端子及びTRIG端子に接続されている。抵抗R8及び抵抗R9の抵抗値と、コンデンサC6の静電容量値とにより、タイマIC512がOUT端子から出力するクロック信号の周波数が決定される。
【0068】
ダイオードD4は、カソード端子がノードN8に、アノード端子がノードN7にそれぞれ接続されている。また、ダイオードD5は、カソード端子がノードN7に、アノード端子がGND電源線にそれぞれ接続されている。ダイオードD4とダイオードD5とは、ノードN8とGND電源線との間に、ノードN8からGND電源線に順方向に直列に接続されている。
【0069】
コンデンサC4は、タイマIC512のOUT端子と、ノードN7との間に接続されており、ノードN7に、クロック信号を供給する。
コンデンサC3及び抵抗R7は、ノードN8とGND電源線との間に接続されている。
ダイオードD4及びダイオードD5と、コンデンサC3及び抵抗R7と、コンデンサC4とは、直列接続されたダイオード(D4、D5)の間(ノードN7)にコンデンサC4を介してクロック信号が入力されて、ノードN8に-5Vを生成するチャージポンプ回路を構成する。
【0070】
電圧生成部51は、ノードN8から-5Vを抵抗R4~R6を介してオフセット電圧を、検出ノード(ノードN4~N6)に供給して、ゼロクロスの検出基準を変更する。
抵抗R4~R6は、電圧生成部51のノードN8と、検出ノード(ノードN4~N6)との間に接続され、適切な負電圧のオフセット電圧を供給するための調整用の抵抗である。抵抗R4は、ノードN8とノードN4との間に接続され、コンパレータ31によるU相のゼロクロスの検出基準を変更するオフセット電圧を調整する。また、抵抗R5は、ノードN8とノードN5との間に接続され、コンパレータ32によるV相のゼロクロスの検出基準を変更するオフセット電圧を調整する。また、抵抗R6は、ノードN8とノードN6との間に接続され、コンパレータ33によるW相のゼロクロスの検出基準を変更するオフセット電圧を調整する。
【0071】
このように、検出基準変更部50は、電圧生成部51が生成したオフセット電圧を、コンパレータ31~33が交流電圧の各相のゼロクロスを検出する検出ノードに、抵抗を介して供給して、ゼロクロスの検出基準を変更する。
【0072】
次に、図5を参照して、本実施形態による検出基準変更部50の動作について説明する。
図5は、本実施形態によるバッテリ充電装置1の動作の一例を説明する図である。
図5(a)は、比較のために、本実施形態による検出基準変更部50を用いない場合のゼロクロス制御の動作の一例を示している。また、図5(b)は、検出基準変更部50を用いた場合の本実施形態におけるゼロクロス制御の動作の一例を示している。
【0073】
図5(a)において、波形W1は、ノードN4の電圧波形を示している。また、グラフの横軸は、時間を示している。また、時刻T1から時刻T2の期間TR1及び時刻T3以降の期間TR3がMOSトランジスタ11のオフ期間である。また、時刻T2から時刻T3の期間TR2がMOSトランジスタ11のオン期間である。
また、図5(b)において、波形W2は、本実施形態の検出基準変更部50を用いた場合の、図5(a)の波形W1に対応する波形を示している。
【0074】
図5(a)において、例えば、レース用二輪車などのようにバッテリの電圧が高く、急激な負荷変動が発生する場合には、充電許可部38の制御だけでは、相間負荷の偏りの発生を充分に抑制することができないことがある。すなわち、波形W1のゼロクロスのポイントである時刻T3のように、ACG2の交流出力が持ち上がり、ゼロクロス制御のための十分な負の電圧領域の振幅が得られない場合が発生するため、従来技術では、ゼロクロス制御が困難になることがあった。
【0075】
これに対して、図5(b)に示すように、本実施形態の検出基準変更部50を用いた場合には、波形W2に示すように、検出基準変更部50が、所定の負電圧であるオフセット電圧を供給して、検出ノード(ノードN4)の電位を負電圧側にシフトさせるため、負の電圧領域の振幅が十分に確保される。これにより、バッテリ充電装置1は、例えば、レース用二輪車などのようにバッテリの電圧が高く、急激な負荷変動が発生する場合であっても、適切にゼロクロス制御を行うことができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリ充電装置1は、整流部20と、スイッチ部10と、コンパレータ31~33(ゼロクロス検出部)と、制御回路30(スイッチ制御部)と、検出基準変更部50とを備える。整流部20は、ACG2(発電機)が出力する三相(例えば、U相、V相、W相)の交流電圧を整流してバッテリ3を充電する、各相に対応したダイオードD1~D3(整流素子)からなる。スイッチ部10(MOSトランジスタ11~13)は、ダイオードD1~D3ごとに設けられ、オフ状態で交流電圧を整流してバッテリ3を充電させ、オン状態でACG2の各相の出力をバッテリ3の負側と短絡させる。コンパレータ31~33(ゼロクロス検出部)は、交流電圧の各相のゼロクロスを検出する。制御回路30(スイッチ制御部)は、コンパレータ31~33が検出した各相のゼロクロスの検出結果に基づいて、各相に対応したスイッチ部10をオン/オフするゲート信号を出力する。検出基準変更部50は、コンパレータ31~33のゼロクロスの検出基準を変更する。
【0077】
これにより、本実施形態によるバッテリ充電装置1は、例えば、急激な負荷変動が発生し、ACG2の各相(例えば、U相、V相、W相)の出力が持ち上がって、正の電圧領域のみで振幅するようになったとしても、検出基準変更部50によってコンパレータ31~33のゼロクロスの検出基準を変更することで、適切にゼロクロスを検出することができる。よって、本実施形態によるバッテリ充電装置1は、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができる(図5(b)参照)。
【0078】
また、本実施形態では、検出基準変更部50は、所定の負電圧であるオフセット電圧を生成する電圧生成部51を備え、電圧生成部51が生成したオフセット電圧を、コンパレータ31~33が交流電圧の各相(例えば、U相、V相、W相)のゼロクロスを検出する検出ノード(例えば、ノードN4~N6)に、抵抗(例えば、抵抗R4~R6)を介して供給して、ゼロクロスの検出基準を変更する。
これにより、本実施形態によるバッテリ充電装置1は、電圧生成部51を備え、検出ノード(例えば、ノードN4~N6)に、抵抗(例えば、抵抗R4~R6)を介して、所定の負電圧であるオフセット電圧を供給することで、簡易な構成で容易にゼロクロスの検出基準を変更することができる。
【0079】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態によるバッテリ充電装置1aについて説明する。
本実施形態では、第1の実施形態のオフセット電圧の代わりに、コンパレータ31~33の基準電圧を変更してゼロクロスの検出基準を変更する変形例について説明する。
【0080】
図6は、本実施形態によるバッテリ充電装置1aの一例を示すブロック図である。
図6に示すように、バッテリ充電装置1aは、整流部20と、制御回路30と、検出基準変更部50aと、コンデンサ(C1、C2)とを備えている。
なお、図6において、図1と同一の構成には同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0081】
本実施形態におけるコンパレータ31~33の非反転端子(+端子)には、接地(0V)の代わりに、基準電圧が供給される。コンパレータ31は、検出基準変更部50aから供給される基準電圧とU相の交流電圧との電圧値の比較を行い、U相の交流電圧が基準電圧より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、U相の交流電圧が基準電圧より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。
【0082】
また、コンパレータ32は、検出基準変更部50aから供給される基準電圧とV相の交流電圧との電圧値の比較を行い、V相の交流電圧が基準電圧より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、V相の交流電圧が基準電圧より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。
また、コンパレータ33は、検出基準変更部50aから供給される基準電圧とW相の交流電圧との電圧値の比較を行い、W相の交流電圧が基準電圧より低い場合にH状態の信号を出力端子から出力し、W相の交流電圧が基準電圧より高い場合にL状態の信号を出力端子から出力する。
【0083】
検出基準変更部50aは、コンパレータ31~33の非反転端子(+端子)に所定の基準電圧を変更することで、コンパレータ31~33のゼロクロスの検出基準を変更する。また、検出基準変更部50aは、基準電圧生成部51aを備える。
基準電圧生成部51a(基準電圧変更部の一例)は、所定の正電圧を生成して、ゼロクロス検出の検出基準を0Vから所定の正電圧に変更する。
【0084】
次に、図7を参照して、本実施形態によるバッテリ充電装置1aの動作について説明する。
図7は、本実施形態によるバッテリ充電装置1aの動作の一例を説明する図である。
図7において、波形W3は、本実施形態におけるノードN4の電圧波形を示している。また、グラフの横軸は、時間を示している。また、期間TR1~期間TR3は、図5と同様である。
【0085】
図7に示すように、バッテリ充電装置1aの基準電圧生成部51aは、基準電圧を0Vから0Vより高い所定の正電圧に変更する。基準電圧生成部51aは、基準電圧を所定の正電圧に変更することで、上述した図5(b)と同様に、各相(例えば、U相、V相、W相)の出力の基準電圧以下の電圧領域の振幅が十分に確保される。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリ充電装置1aでは、コンパレータ31~33は、交流電圧の各相(例えば、U相、V相、W相)と基準電圧とを比較して、各相(例えば、U相、V相、W相)のゼロクロスを検出し、検出基準変更部50aを備える。検出基準変更部50aは、基準電圧を変更する基準電圧生成部51aを備え、基準電圧生成部51aが基準電圧を変更することで、ゼロクロスの検出基準を変更する。
これにより、本実施形態によるバッテリ充電装置1aは、コンパレータ31~33のゼロクロスを検出する基準電圧を変更することで、例えば、急激な負荷変動が発生し、ACG2の各相(例えば、U相、V相、W相)の出力が持ち上がって、正の電圧領域のみで振幅するようになったとしても、適切にゼロクロスを検出することができる。よって、本実施形態によるバッテリ充電装置1aは、上述した第1の実施形態と同様に、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができる。
【0087】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態によるバッテリ充電装置1bについて説明する。
本実施形態では、バッテリ3に接続される負荷部4の負荷変動に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する変形例について説明する。なお、本実施形態では、一例として、第2の実施形態において、負荷変動に応じてゼロクロスの検出基準を変更する場合について説明する。
【0088】
図8は、本実施形態によるバッテリ充電装置1bの一例を示すブロック図である。
図8に示すように、バッテリ充電装置1bは、整流部20と、制御回路30と、検出基準変更部50bと、電流検出部60と、コンデンサ(C1、C2)とを備えている。
なお、図8において、図6と同一の構成には同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0089】
電流検出部60は、例えば、シャント抵抗などを用いて、負荷部4に流れる電流値を検出する。
【0090】
検出基準変更部50bは、バッテリ3に接続される負荷部4の負荷変動に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する。検出基準変更部50bは、例えば、電流検出部60が検出した電流値に基づいて、負荷変動を検出し、当該負荷変動に応じて、ゼロクロスの基準電圧を高める変更を行う。
また、検出基準変更部50bは、基準電圧生成部51bと、変更判定部52とを備える。
【0091】
変更判定部52は、電流検出部60が検出した電流値を取得し、取得した電流値の変化に基づいて、負荷変動を検出する。変更判定部52は、負荷変動に応じて、ゼロクロスの基準電圧を変更させる指示を基準電圧生成部51bに出力する。なお、変更判定部52は、負荷変動が所定の閾値以上になった場合に、ゼロクロスの基準電圧を変更させる指示を基準電圧生成部51bに出力するようにしてもよい。
【0092】
基準電圧生成部51b(基準電圧変更部の一例)は、変更判定部52の指示に基づいてゼロクロス検出の検出基準を変更する。基準電圧生成部51bは、例えば、変更判定部52からの指示に応じて、ゼロクロス検出の検出基準を0Vから所定の正電圧に変更する。なお、基準電圧生成部51bは、複数種類の基準電圧を生成可能であり、変更判定部52の指示に基づいて、複数種類の基準電圧を切り替えて出力するようにしてもよい。なお、基準電圧には、0V(接地電圧)が含まれる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリ充電装置1bは、検出基準変更部50bを備え、検出基準変更部50bは、バッテリ3に接続される負荷部4の負荷変動に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する。
これにより、本実施形態によるバッテリ充電装置1bは、第2の実施形態と同様の効果を奏し、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができる。また、本実施形態によるバッテリ充電装置1bは、負荷変動に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更するため、負荷変動が発生していない正常な状態の場合に、0Vを検出基準にすることが可能であり、スイッチングによる消費電力をさらに低減することができる。
【0094】
[第4の実施形態]
次に、図面を参照して、第4の実施形態によるバッテリ充電装置1cについて説明する。
本実施形態では、ACG2の交流電圧の各相における下限値に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する変形例について説明する。なお、本実施形態では、一例として、第2の実施形態において、交流電圧の各相における下限値に応じてゼロクロスの検出基準を変更する場合について説明する。
【0095】
図9は、本実施形態によるバッテリ充電装置1cの一例を示すブロック図である。
図9に示すように、バッテリ充電装置1cは、整流部20と、制御回路30と、検出基準変更部50cと、電圧検出部61と、コンデンサ(C1、C2)とを備えている。
なお、図9において、図8と同一の構成には同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0096】
電圧検出部61は、例えば、ADC(Analog to Digital Converter)やコンパレータなどを用いて、ACG2の各相(U相、V相、W相)の出力電圧を検出する。
【0097】
検出基準変更部50cは、交流電圧の各相における下限値に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する。検出基準変更部50cは、例えば、電圧検出部61が検出した各相の電圧値に基づいて、各相の下限値(下限電圧値)を検出し、当該下限電圧値に応じて、ゼロクロスの基準電圧を高める変更を行う。
また、検出基準変更部50cは、基準電圧生成部51bと、変更判定部52aとを備える。
【0098】
変更判定部52aは、電圧検出部61が検出した各相の電圧値を取得し、取得した各相の電圧値に基づいて、下限電圧値を検出する。変更判定部52aは、下限電圧値に応じて、ゼロクロスの基準電圧を変更させる指示を基準電圧生成部51bに出力する。なお、変更判定部52aは、下限電圧値が所定の閾値以上になった場合に、ゼロクロスの基準電圧を変更させる指示を基準電圧生成部51bに出力するようにしてもよい。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリ充電装置1cは、検出基準変更部50cを備え、検出基準変更部50cは、ACG2の交流電圧の各相(例えば、U相、V相、W相)における下限値に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更する。
これにより、本実施形態によるバッテリ充電装置1cは、第2の実施形態と同様の効果を奏し、急激な負荷変動が発生する場合であっても、ゼロクロス制御を行うことができる。また、本実施形態によるバッテリ充電装置1cは、ACG2の交流電圧の各相(例えば、U相、V相、W相)における下限値に応じて、ゼロクロスの検出基準を変更するため、負荷変動が発生していない正常な状態の場合に、0Vを検出基準にすることが可能であり、スイッチングによる消費電力をさらに低減することができる。
【0100】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、バッテリ充電装置1(1a~1c)は、ゲート検出部37及び充電許可部38を備え、三相間における励磁電流の偏りの発生を抑制する機能を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ゲート検出部37及び充電許可部38を備えない形態であってもよい。
【0101】
また、上記の第2及び第3の実施形態において、第2の実施形態に適用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、第1の実施形態に適用してもよい。すなわち、第1の実施形態に、第3の実施形態の電流検出部60及び変更判定部52を適用するようにしてもよい。また、第1の実施形態に、第4の実施形態の電圧検出部61及び変更判定部52aを適用するようにしてもよい。なお、この場合、電圧生成部51は、複数種類のオフセット電圧を生成可能であり、これらのオフセット電圧を切り替えて出力するようにしてもよい。
【0102】
また、上記の各実施形態において、検出基準変更部50(50a~50c)は、ゼロクロスの検出基準を三相同時に変更する例を説明したが、これに限定されるものではなく、三相を個別に変更するようにしてもよい。
【0103】
なお、上述したバッテリ充電装置1(1a~1c)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したバッテリ充電装置1(1a~1c)が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したバッテリ充電装置1(1a~1c)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0104】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b、1c バッテリ充電装置
2 ACG
3 バッテリ
10 スイッチ部
11、12、13 MOSトランジスタ
20 整流部
30 制御回路
31、32、33、42 コンパレータ
34、35、36 ゲート制御部
37 ゲート検出部
38 充電許可部
40 充電電圧検出部
41 基準電源
50、50a、50b、50c 検出基準変更部
51 電圧生成部
51a、51b 基準電圧生成部
52、52a 変更判定部
60 電流検出部
61 電圧検出部
371、372、373 ラッチ
374 正常確認部
511 電源回路
512 タイマIC
C1、C2、C3、C4、C5、C6 コンデンサ
D1、D2,D3、D4、D5 ダイオード
DR1、DR2、DR3 ゲートドライバ
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9